説明

電解液

【課題】耐電圧に優れ、低温及び高温でも特性が良好な電解液を提供する。
【解決手段】式(I−1):
[化1]


(式中、Rは、炭素−炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい、炭素数が2以上のアルキル基、炭素数が2以上の含フッ素アルキル基、アルコキシ基又は含フッ素アルコキシ基)で示される環状カーボネート(I−1)、環状カーボネート(I−1)とは異なる環状カーボネート(I−2)、及び、電解質塩(II)、を含むことを特徴とする電解液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池や太陽電池、ラジカル電池、キャパシタの電解質塩用溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類が使用されている。しかし、引火点が低く燃焼性が高いために過充電・過加熱による発火爆発の危険性がある、また、粘性が高く低温での伝導率が低くなるために出力が低下するといった問題がある。
【0003】
また、リチウム二次電池では、高容量化のために電解液の耐電圧の向上が求められている。さらには、キャパシタにおいては、負極・正極ともにハードカーボンであることが、特には3V以上で安定して使用できることが望ましいが、プロピレンカーボネートやジメチルカーボネートなどの従来から用いられている電解質塩用の溶媒では、3V以上では電解液の分解が起こってしまうため、使用できない。
【0004】
そこで、含フッ素環状カーボネートを電解液として使用することが提案されている。たとえばエチレンカーボネートの水素原子の一部をフッ素原子で置換した化合物を使用する提案(特許文献1〜4)、プロピレンカーボネートのメチル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した化合物を使用する提案(特許文献5〜6)がある。
【0005】
しかし、エチレンカーボネートの水素原子の一部をフッ素原子で置換した化合物は、合成や単離が困難であるうえ、難燃性が充分ではない。また、プロピレンカーボネートのメチル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した化合物では、電解質塩の溶解性の低下、放電効率の低下、さらには粘性の増大などがみられ、必ずしも要求性能を満足させるものではなかった。またさらに、リチウム2次電池やキャパシタなどの電解液は、−20℃以上で液体であることが望ましいが、トリフルオロメチル環状カーボネートは−20℃では固体であるため、これらの用途に制限がある。
【0006】
またさらに、リチウム二次電池と同様に充放電を繰り返すキャパシタやラジカル電池の電解液においては、難燃性や耐電圧の向上のほか、低温でも粘性が高くならずしかも伝導率の低下が少ないという低温特性の向上が望まれている。
【0007】
この問題を解決するために、特許文献7では、含フッ素エーテル基または炭素数2以上の含フッ素アルキル基を有する含フッ素環状カーボネートと電解質塩とを含む電解液が提案された。
【0008】
更に、非特許文献1及び2には、含フッ素エーテル基または炭素数2以上の含フッ素アルキル基を有する含フッ素環状カーボネートを含む有機フッ素化合物について、リチウムイオン電池における電気化学的な挙動、熱的安定性及び電気化学的特性が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−325985号公報
【特許文献2】特開平10−189043号公報
【特許文献3】特開2001−313075号公報
【特許文献4】特開2003−168480号公報
【特許文献5】特開平8−37025号公報
【特許文献6】特開平10−233345号公報
【特許文献7】国際公開第2006/106655号パンフレット
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Takashi Achiha,外6名,“Electrochemical Behavior of Nonflammable Organo−Fluorine Compounds for Lithium Ion Batteries”, Journal of The Electrochemical Society,156(6),A483−A488(2009)
【非特許文献2】Takashi Achiha,外6名,“Thermal Stability and Electrochemical Properties of Fluorine Compounds as Nonflammable Solvents for Lithium−Ion Batteries”, Journal of The Electrochemical Society,157(6),A707−A712(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、更に耐電圧が改善された電解液が求められている。また、従来の電解液では、低温特性及び高温サイクル特性が悪く、高い温度での使用を継続すると抵抗が上昇し、サイクル特性はさらに悪くなる。
【0012】
本発明は、これらの問題点を解決しようとするものであって、耐電圧に優れ、低温及び高温でも特性が良好な電解液を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、式(I−1):
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、Rは、炭素−炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい、炭素数が2以上のアルキル基、炭素数が2以上の含フッ素アルキル基、アルコキシ基又は含フッ素アルコキシ基)で示される環状カーボネート(I−1)、環状カーボネート(I−1)とは異なる環状カーボネート(I−2)、及び、電解質塩(II)、を含むことを特徴とする電解液である。
【0016】
環状カーボネート(I−1)が0.2〜8.0体積%であることが好ましい。
【0017】
鎖状カーボネート(I−3)を含むことが好ましい。
【0018】
環状カーボネート(I−1)、環状カーボネート(I−2)及び鎖状カーボネート(I−3)の体積比が0.5〜8.0/10.0〜92.0/0〜89.5であることが好ましい。
【0019】
式(I−1)におけるRが式(Ia−1):
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、Rはフッ素原子を有していてもよいアルキル基;Rはフッ素原子を有していてもよいアルキレン基;n1は1〜3の整数;ただし、RおよびRの少なくとも1つはフッ素原子を有している)で示される含フッ素エーテル基であることが好ましい。
【0022】
式(I−1)におけるRが式(Ic−1):
20−R21− (Ic−1)
(式中、R20はフッ素原子を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基;R21は炭素数1〜3のアルキレン基;ただし、R20およびR21の少なくとも一方はフッ素原子を有している)で示される含フッ素アルキル基であることが好ましい。
【0023】
式(I−1)におけるRのフッ素含有率が10〜76質量%であることが好ましい。
【0024】
環状カーボネート(I−2)は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び、ビニレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の環状カーボネートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電解液は、耐電圧に優れ、低温及び高温でも抵抗が低く、発熱しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の電解液は、環状カーボネート(I−1)、環状カーボネート(I−2)及び電解質塩(II)を含む。
【0027】
環状カーボネート(I−1)は、電解液に対して0.2〜8.0体積%であることが好ましく、0.5〜8.0体積%であることがより好ましく、0.5〜5.0体積%であることが更に好ましい。本発明者らは、電解液が極めて限定された量の特定の環状カーボネートを含むと、驚くべきことに耐電圧が向上し、低温及び高温でも抵抗が低く、発熱も抑制されることを見出した。
【0028】
環状カーボネート(I−1)は、式(I−1):
【0029】
【化3】

【0030】
(式中、Rは、炭素−炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい炭素数が2以上のアルキル基(但し含フッ素アルキル基を除く)、炭素−炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい炭素数が2以上の含フッ素アルキル基、炭素−炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよいアルコキシ基(但し含フッ素アルコキシ基を除く)又は炭素−炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい含フッ素アルコキシ基)で示される。
【0031】
炭素数が2以上のアルキル基としては、エチル基、プロピル基及びブチル基からなる群より選択される少なくとも1種のアルキル基であることが好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロキシ基及びブトキシ基からなる群より選択される少なくとも1種のアルコキシ基であることが好ましい。
【0032】
Rは、低温での粘性の低下、引火点の上昇、さらには電解質塩の溶解性の向上が期待できることから、含フッ素エーテル基(Ia)、好ましくは炭素数2〜17の含フッ素エーテル基であるか、または含フッ素アルコキシ基(Ib)、好ましくは炭素数1〜17の含フッ素アルコキシ基であるか、または炭素数2以上の含フッ素アルキル基(Ic)、好ましくは炭素数2〜17の含フッ素アルキル基であることが好ましい。
【0033】
Rのフッ素含有率は10質量%以上が好ましく、フッ素含有率が少ないと、低温での粘性向上効果や引火点の向上効果が充分に得られない。この観点からRのフッ素含有率は20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。上限は通常76質量%である。なお、Rのフッ素含有率は、構成原子の組成から算出する。
【0034】
また、含フッ素環状カーボネート(I−1)全体のフッ素含有率は10質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、上限は通常76質量%である。含フッ素環状カーボネート全体のフッ素含有率の測定方法は後述する燃焼法による。
【0035】
含フッ素エーテル基(Ia)の炭素数は2〜17が好ましい。炭素数が17を超えると、環状カーボネート(I−1)の粘性が高くなり、また、フッ素含有基が多くなることから、誘電率の低下による電解質塩の溶解性低下や、他の溶剤との相溶性の低下がみられることがある。この観点からRの炭素数は2〜10が好ましく、2〜7がより好ましい。
【0036】
含フッ素エーテル基(Ia)のエーテル部分を構成するアルキレン基は直鎖型や分岐鎖型のアルキレン基でよい。そうした直鎖型や分岐鎖型のアルキレン基を構成する最小構造単位の一例を下記に示す。
【0037】
(i)直鎖型の最小構造単位:
−CH−、−CHF−、−CF−、−CHCl−、−CFCl−、−CCl
【0038】
(ii)分岐鎖型の最小構造単位:
【0039】
【化4】

【0040】
アルキレン基は、これらの最小構造単位を単独で、または直鎖型(i)同士、分岐鎖型(ii)同士またはこれらを適宜組み合わせて構成される。好ましい具体例は、後述する。
【0041】
なお、以上の例示のなかでも、塩基による脱HCl反応が起こらず、より安定なことから、Clを含有しない構成単位から構成されることが好ましい。
【0042】
さらに好ましい含フッ素エーテル基(Ia)としては、式(Ia−1):
【0043】
【化5】

【0044】
(式中、Rはフッ素原子を有していてもよい、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基;Rはフッ素原子を有していてもよい、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基;n1は1〜3の整数;ただし、RおよびRの少なくとも1つはフッ素原子を有している)で示される含フッ素エーテル基があげられる。
【0045】
より具体的には、つぎの組合せが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
【0046】
(a)Rとしては、式(1):XC−(Rn2−(3つのXは同じかまたは異なりいずれもHまたはF;Rは炭素数1〜5のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基;n2は0または1)で表されるアルキル基がさらに好ましい。
【0047】
n2が0の場合、Rとしては、CH−、CF−、HCF−、HCF−などがあげられる。
【0048】
n2が1の場合の具体例としては、Rが直鎖状のものとして、CFCH−、CFCF−、CFCHCH−、CFCFCH−、CFCFCF−、CFCHCF−、CFCHCHCH−、CFCFCHCH−、CFCHCFCH−、CFCFCFCH−、CFCFCFCF−、CFCFCHCF−、CFCHCHCHCH−、CFCFCHCHCH−、CFCHCFCHCH−、CFCFCFCHCH−、CFCFCFCFCH−、CFCFCHCFCH−、CFCFCHCHCHCH−、CFCFCFCFCHCH−、CFCFCHCFCHCH−、HCFCH−、HCFCF−、HCFCHCH−、HCFCFCH−、HCFCHCF−、HCFCFCHCH−、HCFCHCFCH−、HCFCFCFCF−、HCFCFCHCHCH−、HCFCHCFCHCH−、HCFCFCFCFCH−、HCFCFCFCFCHCH−、FCHCH−、FCHCF−、FCHCFCH−、FCHCFCH−、CHCF−、CHCH−、CHCFCH−、CHCFCF−、CHCHCH−、CHCFCHCF−、CHCFCFCF−、CHCHCFCF−、CHCHCHCH−、CHCFCHCFCH−、CHCFCFCFCH−、CHCFCFCHCH−、CHCHCFCFCH−、CHCFCHCFCH−、CHCFCHCFCHCH−、CHCHCFCFCHCH−、CHCFCHCFCHCH−などが例示でき、分岐鎖状のものとしては、
【0049】
【化6】

【0050】
などがあげられる。
【0051】
ただし、−CHや−CFという分岐を有していると粘性が高くなりやすいため、直鎖型がより好ましい。
【0052】
【化7】

【0053】
n1は1〜3の整数であり、好ましくは1または2である。なお、n1=2または3のとき、Rは同じでも異なっていてもよい。
【0054】
の好ましい具体例としては、つぎの直鎖型または分岐鎖型のものが例示できる。
【0055】
直鎖型のものとしては、−CH−、−CHF−、−CF−、−CHCH−、−CFCH−、−CFCF−、−CHCF−、−CHCHCH−、−CHCHCF−、−CHCFCH−、−CHCFCF−、−CFCHCH−、−CFCFCH−、−CFCHCF−、−CFCFCF−などが例示でき、分岐鎖型のものとしては、
【0056】
【化8】

【0057】
などがあげられる。
【0058】
Rは、炭素数1〜17、好ましくは炭素数1〜6の含フッ素アルコキシ基(Ib)であってもよい。
【0059】
特に式(2):XC−(Rn4−O−(3つのXは同じかまたは異なりいずれもHまたはF;Rは好ましくは炭素数1〜5のフッ素原子を有していてもよいアルキレン基;n4は0または1;ただし3つのXのいずれかはフッ素原子を含んでいる)で表される含フッ素アルコキシ基がさらに好ましい。
【0060】
含フッ素アルコキシ基(Ib)としては、前記式(1a−1)で示されるRとして例示したアルキル基の末端に酸素原子が結合した含フッ素アルコキシ基があげられる。
【0061】
Rは、さらに炭素数2以上の含フッ素アルキル基(Ic)であってもよい。含フッ素アルキル基の炭素数は、好ましくは2〜17、さらには2〜7、特に2〜5である。炭素数が大きくなりすぎると低温特性が低下したり、電解質塩の溶解性が低下したりし、炭素数が1の場合、上記のように電解質塩の溶解性の低下、放電効率の低下、さらには粘性の増大などがみられる。
【0062】
特に式(Ic−1):
20−R21− (Ic−1)
(式中、R20はフッ素原子を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基;R21はフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基;ただし、R20およびR21の少なくとも一方はフッ素原子を有している)で示される含フッ素アルキル基が、電解質塩の溶解性が良好な点から好ましく例示できる。
【0063】
20は、フッ素原子を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基、好ましくは炭素数1〜16、さらには1〜6、特に1〜3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基である。
【0064】
20は具体的には、CH−、CHCH−、CHCHCH−、CHCHCHCH−、
【0065】
【化9】

【0066】
などの非フッ素系アルキル基;
CF−、CFCH−、CFCF−、CFCHCH−、CFCFCH−、CFCFCF−、CFCHCF−、CFCHCHCH−、CFCFCHCH−、CFCHCFCH−、CFCFCFCH−、CFCFCFCF−、CFCFCHCF−、CFCHCHCHCH−、CFCFCHCHCH−、CFCHCFCHCH−、CFCFCFCHCH−、CFCFCFCFCH−、CFCFCHCFCH−、CFCFCHCHCHCH−、CFCFCFCFCHCH−、CFCFCHCFCHCH−、HCF−、HCFCH−、HCFCF−、HCFCHCH−、HCFCFCH−、HCFCHCF−、HCFCFCHCH−、HCFCHCFCH−、HCFCFCFCF−、HCFCFCHCHCH−、HCFCHCFCHCH−、HCFCFCFCFCH−、HCFCFCFCFCHCH−、FCH−、FCHCH−、FCHCF−、FCHCFCH−、FCHCFCF−、CHCFCH−、CHCFCF−、CHCHCH−、CHCFCHCF−、CHCFCFCF−、CHCHCFCF−、CHCFCHCFCH−、CHCFCFCFCH−、CHCFCFCHCH−、CHCHCFCFCH−、CHCFCHCFCH−、CHCFCHCFCHCH−、CHCFCHCFCHCH−、HCFClCFCH−、HCFCFClCH−、HCFCFClCFCFClCH−、HCFClCFCFClCFCH−などの直鎖状のものとしての例があげられ、また分岐鎖状のものとしては、
【0067】
【化10】

【0068】
【化11】

【0069】
などの含フッ素アルキル基が好ましくあげることができる。ただし、−CHや−CFという分岐を有していると粘性が高くなりやすいため、その数は少ない(1個)かゼロの方がより好ましい。
【0070】
21はフッ素原子を有していてもよいアルキレン基などの直鎖型や分岐鎖型の炭素数1〜3のアルキレン基である。そうした直鎖型や分岐鎖型のアルキレン基を構成する最小構造単位の一例を下記に示す。R21はこれらの単独または組合せで構成される。
【0071】
(i)直鎖型の最小構造単位:
−CH−、−CHF−、−CF−、−CHCl−、−CFCl−、−CCl
【0072】
(ii)分岐鎖型の最小構造単位:
【0073】
【化12】

【0074】
なお、以上の例示のなかでも、塩基による脱HCl反応が起こらず、より安定なことから、Clを含有しない構成単位から構成されることが好ましい。
【0075】
さらにはR21が直鎖型のものとしては、−CH−、−CHCH−または−CF−、特に電解質塩の溶解性をより一層向上させることができる点から−CH−、−CHCH−が好ましい。
【0076】
21が分岐鎖型のものとしては、−(CX1011)−(X10はH、F、CHまたはCF;X11はCHまたはCF。ただし、X11がCFの場合、X10はHまたはCHである)が好ましく例示でき、これらは特に電解質塩の溶解性をより一層向上させることができる。
【0077】
好ましい含フッ素アルキル基(Ic)としては、たとえばCFCF−、HCFCF−、HCFCF−、CHCF−、CFCFCF−、HCFCFCF−、HCFCFCF−、CHCFCF−、CFCH−、HCFCH−、CFCFCH−、HCFCFCH−、HCFCFCH−、CHCFCH−、CFCFCFCH−、CFCFCFCFCH−、HCFCFCFCH−、HCFCFCFCH−、CHCFCFCH−、CFCHCH−、HCFCHCH−、CFCFCHCH−、HCFCFCHCH−、HCFCFCHCH−、CHCFCHCH−、CFCFCFCHCH−、HCFCFCFCHCH−、HCFCFCFCHCH−、CHCFCFCHCH−、
【0078】
【化13】

【0079】
【化14】

【0080】
【化15】

【0081】
などがあげられる。
【0082】
21が直鎖型の好ましい含フッ素アルキル基(Ic)の具体例としては、たとえばCFCH−、HCFCH−、CFCFCH−、HCFCFCH−、HCFCFCH−、CHCFCH−、CFCFCFCH−、HCFCFCFCH−、HCFCFCFCH−、CHCFCFCH−、CFCHCH−、HCFCHCH−、CFCFCHCH−、HCFCFCHCH−、HCFCFCHCH−、CHCFCHCH−、CFCFCFCHCH−、HCFCFCFCHCH−、HCFCFCFCHCH−、CHCFCFCHCH−、
【0083】
【化16】

【0084】
などがあげられる。
【0085】
21が分岐鎖型の好ましい含フッ素アルキル基(Ic)の具体例としては、たとえば
【0086】
【化17】

【0087】
などがあげられる。
【0088】
本発明において、特に好ましい含フッ素エーテル基含有環状カーボネートおよび含フッ素アルコキシ基含有環状カーボネートの具体例をつぎにあげるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
【化18】

【0090】
【化19】

【0091】
【化20】

【0092】
【化21】

【0093】
【化22】

【0094】
【化23】

【0095】
本発明において、特に好ましい含フッ素アルキル基含有環状カーボネートの具体例をつぎにあげるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
【化24】

【0097】
【化25】

【0098】
【化26】

【0099】
【化27】

【0100】
【化28】

【0101】
環状カーボネート(I−2)は、環状カーボネート(I−1)とは異なる環状カーボネートである。環状カーボネート(I−2)としては、非フッ素化環状カーボネート又は含フッ素環状カーボネートが好ましい。
【0102】
非フッ素化環状カーボネートとしては、誘電率が高く、また電解質塩の溶解性に特に優れていることから、エチレンカーボネート(EC)又はプロピレンカーボネート(PC)が好ましい。また、黒鉛系材料を負極に用いる場合には、安定な被膜を負極に形成させることもできる。また、ビニルエチレンカーボネートやビニレンカーボネートなどを使用することもできる。これらの中でも、特に、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種であることが、誘電率、粘度の点から好ましい。
【0103】
非フッ素化環状カーボネートを含有させることにより、低温特性、粘性低下により負荷特性向上といった効果が得られる。
【0104】
含フッ素環状カーボネートとしては、下記式(3):
【0105】
【化29】

【0106】
(式中、X21〜X24は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−CF、−CFH、又は−CFH;ただし、X21〜X24の少なくとも1つは−F又は−CFである)で示される含フッ素環状カーボネートが好ましい。含フッ素環状カーボネートを含有させることにより、誘電率を上昇させる作用や耐酸化性、イオン伝導度の向上といった効果が得られる。
【0107】
式(3)において、X21〜X24の少なくとも1つが−F又は−CFであれば、−H、−F、−CF、−CFH又は−CFHは、X〜Xの1箇所のみに置換していてもよいし、複数の箇所に置換していてもよい。なかでも、誘電率、耐酸化性が良好な点から、置換箇所は1〜2個が好ましく、フルオロエチレンカーボネート(FEC)がより好ましい。
【0108】
環状カーボネート(I−2)は、上記のなかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及びビニレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の環状カーボネートであることが好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及び、フルオロエチレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の環状カーボネートであることがより好ましい。
【0109】
本発明の電解液は、鎖状カーボネート(I−3)を含むことが好ましい。鎖状カーボネート(I−3)としては、非フッ素化鎖状カーボネート又は含フッ素鎖状カーボネートが好ましい。
【0110】
非フッ素化鎖状カーボネートとしては、たとえば、CHCHOCOOCHCH(ジエチルカーボネート:DEC)、CHCHOCOOCH(エチルメチルカーボネート:EMC)、CHOCOOCH(ジメチルカーボネート:DMC)、CHOCOOCHCHCH(メチルプロピルカーボネート)などの炭化水素系鎖状カーボネートなどの1種または2種以上があげられる。これらのうち沸点が高く、粘性が低く、かつ低温特性が良好なことから、DEC、EMC及びDMCからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0111】
含フッ素鎖状カーボネートとしては、たとえば下記式:
RfOCOORf
(式中、RfおよびRfは同じかまたは異なり、炭素数1〜4の含フッ素アルキル基)で示される含フッ素カーボネートが、難燃性が高く、かつレート特性や耐酸化性が良好な点から好ましい。
【0112】
RfおよびRfとしては、たとえば−CF、−CFCF、−CH(CF、CFCH−、CCH−、HCFCFCH−、CFCFHCFCH−などが例示でき、なかでもCFCH−、CCH−が、難燃性が高く、レート特性や耐酸化性が良好な点から特に好ましい。
【0113】
含フッ素鎖状カーボネートの具体例としては、たとえばCFCHOCOOCHCF、CFCFCHOCOOCHCFCF、CFCFCHOCOOCH、CFCHOCOOCHなどの含フッ素鎖状カーボネートの1種または2種以上が例示でき、なかでもCFCHOCOOCHCF、CFCFCHOCOOCHCFCFが、粘性が適切で、難燃性、他溶媒との相溶性およびレート特性が良好な点から特に好ましい。また、たとえば特開平06−219992号公報、特開2000−327634号公報、特開2001−256983号公報などに記載された化合物も例示できる。
【0114】
含フッ素鎖状カーボネートを配合するときは、耐酸化性向上という効果が期待できる。
【0115】
本発明の電解液は、環状カーボネート(I−1)、環状カーボネート(I−2)及び鎖状カーボネート(I−3)の体積比が0.2〜8.0/10.0〜92.0/0〜89.8であることが好ましく、0.5〜8.0/10.0〜92.0/0〜89.5であることがより好ましく、0.5〜5.0/10.0〜45.0/50.0〜89.5であることが更に好ましい。
本発明の電解液は、ビニレンカーボネートやビニルエチレンカーボネートなどの不飽和環状カーボネートを電解液に対して3体積%以下の量で含むものであってもよく、0.1体積%以上含むものであってもよい。
【0116】
本発明の電解液は、含フッ素エーテル、含フッ素エステル、含フッ素ラクトン、フルオロアミド、及び、非フッ素エステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むものであってもよい。
【0117】
(含フッ素エーテル)
含フッ素エーテルを含有させることにより、高温高電圧での安定性、安全性が向上する。
【0118】
含フッ素エーテルとしては、たとえば下記式(6):
Rf−O−Rf (6)
(式中、RfおよびRfは同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のフルオロアルキル基;ただし、少なくとも一方はフルオロアルキル基)で示される化合物が例示できる。
【0119】
含フッ素エーテルの具体例としては、たとえばHCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、HCFCFCHOCFCFHCF、CFCFCHOCFCFHCF、C13OCH、C13OC、C17OCH、C17OC、CFCFHCFCH(CH)OCFCFHCF、HCFCFOCH(C、HCFCFOC、HCFCFOCHCH(C、HCFCFOCHCH(CHなどがあげられ、特に、HCFCFCHOCFCFH、CFCFCHOCFCFH、HCFCFCHOCFCFHCF、CFCFCHOCFCFHCFが、相溶性が高く、電解液に用いた場合の抵抗が小さい点から好ましい。
【0120】
また、本発明で用いる含フッ素エーテルのフッ素含有率は50質量%以上であることが、耐酸化性、安全性が良好な点から好ましい。特に好ましいフッ素含有率は55〜66質量%である。フッ素含有率は構造式から算出したものである。
【0121】
含フッ素エーテルを配合する場合は、本発明の電解液中に60体積%以下含ませることが好ましい。含フッ素エーテルの含有量が60体積%を超えると、相溶性が低くなるほか、レート特性が悪くなる傾向にある。好ましくは相溶性、レート特性が良好な点から45体積%以下、さらに好ましくは40体積%以下である。下限は、耐酸化性、安全性が良好な点から5体積%、さらに好ましくは10体積%である。
【0122】
(含フッ素エステル)
含フッ素エステルとしては、下記式(7):
RfCOORf (7)
(式中、Rfは炭素数1〜2の含フッ素アルキル基、Rfは炭素数1〜4の含フッ素アルキル基)で示される含フッ素エステルが、難燃性が高く、かつ他溶媒との相溶性や耐酸化性が良好な点から好ましい。
【0123】
Rfとしては、たとえばCF−、CFCF−、HCFCF−、HCF−、CHCF−、CFCH−などが例示でき、なかでもCF−、CFCF−が、レート特性が良好な点から特に好ましい。
【0124】
Rfとしては、たとえば−CF、−CFCF、−CH(CF、−CHCF、−CHCHCF、−CHCFCFHCF、−CH、−CHCFCFH、−CHCH、−CHCFCF、−CHCFCFCFなどが例示でき、なかでも−CHCF、−CH(CF−CH、−CHCFCFHが、他溶媒との相溶性が良好な点から特に好ましい。
【0125】
含フッ素エステルの具体例としては、たとえばCFC(=O)OCHCF、CFC(=O)OCHCHCF、CFC(=O)OCH、CFC(=O)OCHCFCFH、CFC(=O)OCH(CFなどの1種または2種以上が例示でき、なかでもCFC(=O)OCH、CFC(=O)OCHCFCFH、CFC(=O)OCHCF、CFC(=O)OCH(CFが、他溶媒との相溶性およびレート特性が良好な点から特に好ましい。
【0126】
含フッ素エステルを配合するときは、耐酸化性向上という効果が期待できる。
【0127】
(含フッ素ラクトン)
含フッ素ラクトンとしては、たとえば、下記式(8):
【0128】
【化30】

【0129】
(式中、X〜X10は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CHまたは含フッ素アルキル基;ただし、X〜X10の少なくとも1つは含フッ素アルキル基である)
で示される含フッ素ラクトンがあげられる。
【0130】
〜X10における含フッ素アルキル基としては、たとえば、−CFH、−CFH、−CF、−CHCF、−CFCF、−CHCFCF、−CF(CFなどがあげられ、耐酸化性が高く、安全性向上効果がある点から−CHCF、−CHCFCFが好ましい。
【0131】
〜X10の少なくとも1つが含フッ素アルキル基であれば、−H、−F、−Cl、−CHまたは含フッ素アルキル基は、X〜X10の1箇所のみに置換していてもよいし、複数の箇所に置換していてもよい。好ましくは、電解質塩の溶解性が良好な点から1〜3箇所、さらには1〜2箇所である。
【0132】
含フッ素アルキル基の置換位置はとくに限定されないが、合成収率が良好なことから、Xおよび/またはXが、特にXまたはXが含フッ素アルキル基、なかでも−CHCF、−CHCFCFであることが好ましい。含フッ素アルキル基以外のX〜X10は、−H、−F、−Clまたは−CHであり、とくに電解質塩の溶解性が良好な点から−Hが好ましい。
【0133】
含フッ素ラクトンとしては、前記式で示されるもの以外にも、たとえば、下記式(9):
【0134】
【化31】

【0135】
(式中、AおよびBはいずれか一方がCX1617(X16およびX17は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CF、−CHまたは水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキレン基)であり、他方は酸素原子;Rfはエーテル結合を有していてもよい含フッ素アルキル基または含フッ素アルコキシ基;X11およびX12は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Cl、−CFまたは−CH;X13〜X15は同じかまたは異なり、いずれも−H、−F、−Clまたは水素原子がハロゲン原子で置換されていてもよくヘテロ原子を鎖中に含んでいてもよいアルキル基;n=0または1)
で示される含フッ素ラクトンなどもあげられる。
【0136】
式(9)で示される含フッ素ラクトンとしては、下記式(10):
【0137】
【化32】

【0138】
(式中、A、B、Rf、X11、X12およびX13は式(9)と同じである)
で示される5員環構造が、合成が容易である点、化学的安定性が良好な点から好ましくあげられ、さらには、AとBの組合せにより、下記式(11):
【0139】
【化33】

【0140】
(式中、Rf、X11、X12、X13、X16およびX17は式(9)と同じである)
で示される含フッ素ラクトンと、下記式(12):
【0141】
【化34】

【0142】
(式中、Rf、X11、X12、X13、X16およびX17は式(9)と同じである)
で示される含フッ素ラクトンがある。
【0143】
これらのなかでも、高い誘電率、高い耐電圧といった優れた特性が特に発揮できる点、そのほか電解質塩の溶解性、内部抵抗の低減が良好な点で本発明における電解液としての特性が向上する点から、
【0144】
【化35】

が好ましい。
【0145】
その他、
【0146】
【化36】

【0147】
なども使用できる。
【0148】
含フッ素ラクトンを含有させることにより、イオン伝導度の向上、安全性の向上、高温時の安定性向上といった効果が得られる。
【0149】
(フルオロアミド)
フルオロアミドは、式:
【0150】
【化37】

【0151】
で示される化合物である。
【0152】
Rfは、−CF、−CFCF、フルオロフェニル基またはフルオロアルキルフェニル基である。フルオロフェニル基としてはフッ素原子を1〜5個含むものが好ましく、耐酸化性が良好な点から特に3〜5個含むものがさらに好ましい。また、フルオロアルキルフェニル基のフルオロアルキル基としては、たとえば−CF、−C、−HC(CFなどがあげられ、相溶性が良好な点、粘性が低くできる点から−CF、−Cが好ましい。
【0153】
およびRは同じかまたは異なり、いずれも炭素数1〜8のアルキル基である。具体的には、−CH、−C、−C、−Cなどが例示でき、なかでも粘性が低い点から−CH、−Cが好ましい。
【0154】
フルオロアミドとして特に好ましい化合物は、つぎの化合物である。
【0155】
【化38】

【0156】
フルオロアミドは本発明の電解液中に10体積%以下含ませてもよい。フルオロアミドの含有量が10体積%を超えると、粘度が高くなりイオン伝導性が低くなる傾向にある。好ましくは粘度を下げても高温高電圧での安定性が良好な点から6体積%以下、さらに好ましくは高温高電圧での安定性が特に良好な点から3体積%以下である。好ましい下限は、高温高電圧での安定性の点から0.01体積%、さらには0.05体積%である。
【0157】
(非フッ素エステル)
非フッ素エステルはレート特性を向上させる効果がある。非フッ素エステルとしては、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、ブチル酸エステル、などが好ましい。添加量としては、30体積%以下、さらには20体積%以下が電解質塩との相溶性を担保するうえで好ましい。レート特性の向上の点から下限は1体積%、さらには3体積%である。
【0158】
さらに、本発明の電解液には、本発明の効果を損なわない範囲で、不燃(難燃)化剤、界面活性剤、高誘電化添加剤、サイクル特性およびレート特性改善剤や過充電防止剤などの他の添加剤を配合してもよい。
【0159】
不燃性や難燃性の向上のため配合する不燃(難燃)化剤としてはリン酸エステルがあげられる。
【0160】
リン酸エステルとしては、含フッ素アルキルリン酸エステル、非フッ素系アルキルリン酸エステル、アリールリン酸エステルなどがあげられるが、含フッ素アルキルリン酸エステルが電解液の不燃化に寄与する程度が高く、少量で不燃効果をあげることから好ましい。
【0161】
含フッ素アルキルリン酸エステルとしては、特開平11−233141号公報に記載された含フッ素ジアルキルリン酸エステル、特開平11−283669号公報に記載された環状のアルキルリン酸エステルのほか、含フッ素トリアルキルリン酸エステルがあげられる。
【0162】
難燃性を向上させることを目的として、(CHO)P=O、(CFCHO)P=Oなどの難燃化剤も添加することができる。
【0163】
また、界面活性剤は、容量特性、レート特性の改善を図るために配合してもよい。
【0164】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよいが、含フッ素界面活性剤が、サイクル特性、レート特性が良好な点から好ましい。
【0165】
たとえば、下記式(14):
Rf10COO (14)
(式中、Rf10は炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;MはLi、Na、KまたはNHR’(R’は同じかまたは異なり、いずれもHまたは炭素数が1〜3のアルキル基)である)で示される含フッ素カルボン酸塩や、下記式(15):
Rf11SO (15)
(式中、Rf11は炭素数3〜10のエーテル結合を含んでいてもよい含フッ素アルキル基;MはLi、Na、KまたはNHR’(R’は同じかまたは異なり、いずれもHまたは炭素数が1〜3のアルキル基)である)で示される含フッ素スルホン酸塩などが好ましく例示される。
【0166】
界面活性剤の配合量は、充放電サイクル特性を低下させずに電解液の表面張力を低下させるという点から、本発明の電解液の0.01〜2質量%が好ましい。
【0167】
高誘電化添加剤としては、たとえばスルホラン、メチルスルホラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、アセトニトリル、プロピオニトリルなどが例示できる。
【0168】
過充電防止剤としては、たとえばヘキサフルオロベンゼン、フルオロベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ジクロロアニリン、トルエンなどが例示できる。
【0169】
サイクル特性およびレート特性改善剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが例示できる。
【0170】
つぎに本発明の電解液の他方の成分である電解質塩(II)について説明する。
【0171】
本発明で使用可能な電解質塩(II)は従来公知の金属塩、液体状の塩(イオン性液体)、無機高分子型の塩、有機高分子型の塩などがあげられる。
【0172】
これらの電解質塩は電解液の使用目的によって特に好適な化合物がある。つぎに用途別に好適な電解質塩を例示するが、例示した具体例に限定されるものではなく、また、他の用途においては、以下の例示の電解質塩を適宜使用することができる。
【0173】
まず、リチウム二次電池の金属塩としては、ホウ素アニオン型、酸素アニオン型、窒素アニオン型、炭素アニオン型、リンアニオン型などの各種有機金属塩を用いることができ、酸素アニオン型、窒素アニオン型を用いることが好ましい。
【0174】
酸素アニオン型としては、具体的には、CFSOLi、CSOLi、C17SOLi、CHSOLi、CSOLi、LiSOSOLi、CFCOLi、CCOLi、Liなどを用いればよく、特に、CFSOLi、CSOLi、C17SOLiを用いることが好ましい。
【0175】
窒素アニオン型としては、(CFSONLi(TFSI)、(CSONLi(BETI)、(CFSO)(CSO)NLi、(CFSO)(C17SO)NLi、(CFCO)NLi、(CFCO)(CFCO)NLi、((CFCHOSONLi、(CCHOSONLiなどを用いればよく、特に、(CFSONLi(TFSI)、(CSONLi(BETI)を用いることが好ましい。
【0176】
無機金属塩としては、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClOなどを用いることができ、特に、LiPF、LiBFを用いることが好ましい。
【0177】
キャパシタ用としては、有機金属塩としては、(Me)(Et)N(Meはメチレン、Etはエチレン、xおよびyは同じかまたは異なり0〜4の整数で、かつx+y=4)で示されるテトラアルキル4級アンモニウム塩、具体的にはEtNBF、EtNClO、EtNPF、EtNAsF、EtNSbF、EtNCFSO、EtN(CFSON、EtNCSO、EtMeBF、EtMeClO、EtMePF、EtMeAsF、EtMeSbF、EtMeCFSO、EtMe(CFSON、EtMeCSOを用いればよく、特に、EtNBF、EtNPF、EtNSbF、EtNAsFを用いることが好ましい。また、テトラアルキル4級アンモニウム塩のうち、アルキル基の1個か2個がエーテルである4級アンモニウム塩を用いることが粘性低下の点で望ましい。たとえば、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム塩などは粘性が低いために好ましい。また、スピロビピロリジニウム、またはスピロビピリジニウムの水素原子を一部フッ素原子で置換した塩も粘性が低く、特に低温特性が優れているために好ましい。また、テトラアルキル4級アンモニウム塩のうち、アルキル基が1つ以上の含フッ素アルキル基、または含フッ素エーテル基であるものが、耐酸化性向上、粘性低下の点から好ましい。更には、フッ素原子または含フッ素アルキル基、含フッ素エーテル基を含有するイミダゾリウム塩も耐酸化性向上、粘性低下の点から好ましい。塩のアニオン種としては、耐酸化性の優れたBF、PF、AsF、SbFが好ましい。
【0178】
無機金属塩としては、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、NaPF、NaBF、NaAsF、NaClO、KPF、KBF、KAsF、KClOなどを用いることができ、特に、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、NaPF、NaBFを用いることが好ましい。
【0179】
色素増感太陽電池用としては、RNI(R〜Rは同じかまたは異なり、炭素数1〜3のアルキル基)、LiI、NaI、KI、
【0180】
【化39】

【0181】
などが例示できる。
【0182】
電解質塩(II)として液体状の塩を使用するときは、リチウム二次電池やキャパシタ、色素増感太陽電池用として、有機および無機のアニオンとポリアルキルイミダゾリウムカチオン、N−アルキルピリジニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、エーテル鎖を含むテトラアルキルアンモニウムカチオン、テトラアルキルフォスフォニウムカチオン、スピロビピロリジニウムカチオンとの塩があげられ、特に1,3−ジアルキルイミダゾリウム塩、スピロビピロリジニウム塩、エーテル鎖を含むアルキルアンモニウム塩が好ましい。また、上記塩のカチオンの一部がフッ素に置換されたものが粘性低下、耐酸化性向上の点から望ましい。
【0183】
ポリアルキルイミダゾリウムカチオンとしては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(EMI)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン(BMI)などの1,3−ジアルキルイミダゾリウムカチオン;1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン(DMPI)などのトリアルキルイミダゾリウムカチオンなどが好ましい。また、これらの水素原子の一部がフッ素原子に置換されたものが更に好ましい。
【0184】
好ましい無機アニオンとしては、たとえばAlCl、BF、PF、AsF、Iなどが、有機アニオンとしてはたとえばCHCOO、CFCOO、CCOO、CFSO、CSO、(CFSO、(CSOなどがあげられる。
【0185】
具体例としては、EMIAlCl、EMIBF、EMIPF、EMIAsF、EMII、EMICHCOO、EMICFCOO、EMICCOO、EMICFSO、EMICSO、EMI(CFSON、EMI(CSON、BMIAlCl、BMIBF、BMIPF、BMIAsF、BMII、BMICHCOO、BMICFCOO、BMICCOO、BMICFSO、BMICSO、BMI(CFSON、BMI(CSON、DMPIAlCl、DMPIBF、DMPIPF、DMPIAsF、DMPII、DMPICHCOO、DMPICFCOO、DMPICCOO、DMPICFSO、DMPICSO、DMPI(CFSON、DMPI(CSONなどが例示できる。
【0186】
特に色素増感太陽電池用としては、EMII、BMII、DMPIIなどのヨウ化物が好適である。
【0187】
電解質塩(II)の濃度は要求される電流密度、用途、電解質塩の種類などによって異なるが、0.3モル/リットル以上、さらには0.5モル/リットル以上、特に0.8モル/リットル以上で、3.6モル/リットル以下、さらには2.0モル/リットル以下、特に1.6モル/リットル以下とすることが好ましい。
【0188】
本発明の電解液は、電解質塩(II)を環状カーボネート(I−1)及び(I−2)を含む溶媒に溶解させることで調製される。
【0189】
また、本発明の電解液は、本発明の電解液に使用する溶媒に溶解または膨潤する高分子材料と組み合わせてゲル状(可塑化された)のゲル電解液としてもよい。
【0190】
かかる高分子材料としては、従来公知のポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、それらの変性体(特開平8−222270号公報、特開2002−100405号公報);ポリアクリレート系ポリマー、ポリアクリロニトリルや、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂(特表平4−506726号公報、特表平8−507407号公報、特開平10−294131号公報);それらフッ素樹脂と炭化水素系樹脂との複合体(特開平11−35765号公報、特開平11−86630号公報)などがあげられる。特には、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体をゲル電解質用高分子材料として用いることが望ましい。
【0191】
そのほか、特願2004−301934号明細書に記載されているイオン伝導性化合物も使用できる。
【0192】
このイオン伝導性化合物は、式(1−1):
A−(D)−B (1−1)
[式中、Dは式(2−1):
−(D1)−(FAE)−(AE)−(Y)− (2−1)
(式中、D1は、式(2a):
【0193】
【化40】

【0194】
(式中、Rfは架橋性官能基を有していてもよい含フッ素エーテル基;R10はRfと主鎖を結合する基または結合手)で示される側鎖に含フッ素エーテル基を有するエーテル単位;
FAEは、式(2b):
【0195】
【化41】

【0196】
(式中、Rfaは水素原子、架橋性官能基を有していてもよい含フッ素アルキル基;R11はRfaと主鎖を結合する基または結合手)で示される側鎖に含フッ素アルキル基を有するエーテル単位;
AEは、式(2c):
【0197】
【化42】

【0198】
(式中、R13は水素原子、架橋性官能基を有していてもよいアルキル基、架橋性官能基を有していてもよい脂肪族環式炭化水素基または架橋性官能基を有していてもよい芳香族炭化水素基;R12はR13と主鎖を結合する基または結合手)で示されるエーテル単位;
Yは、式(2d−1)〜(2d−3):
【0199】
【化43】

【0200】
の少なくとも1種を含む単位;
nは0〜200の整数;mは0〜200の整数;pは0〜10000の整数;qは1〜100の整数;ただしn+mは0ではなく、D1、FAE、AEおよびYの結合順序は特定されない);
AおよびBは同じかまたは異なり、水素原子、フッ素原子および/または架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基、フッ素原子および/または架橋性官能基を含んでいてもよいフェニル基、−COOH基、−OR14(R14は水素原子またはフッ素原子および/または架橋性官能基を含んでいてもよいアルキル基)、エステル基またはカーボネート基(ただし、Dの末端が酸素原子の場合は−COOH基、−OR14、エステル基およびカーボネート基ではない)]で表される側鎖に含フッ素基を有する非晶性含フッ素ポリエーテル化合物である。
【0201】
本発明の電解液には必要に応じて、他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、たとえば金属酸化物、ガラスなどがあげられる。
【0202】
本発明の電解液は、難燃性、低温特性、耐電圧、電解質塩の溶解性および炭化水素系溶媒との相溶性を同時に向上させることができるので、電気化学デバイスの電解液として好適である。
【0203】
電気化学デバイスとしては、リチウム二次電池、キャパシタ(電解二重層キャパシタ)、ラジカル電池、太陽電池(特に色素増感型太陽電池)、燃料電池、各種電気化学センサー、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサなどがあげられ、リチウム二次電池、電解二重層キャパシタが好適である。耐電圧が3.0V以上で安定なことが高容量の電気二重層キャパシタには求められるが、本発明の電気二重層キャパシタは充分にその要求を満たすものである。
【0204】
そのほか、本発明の電解液は、帯電防止用コーティング材のイオン伝導体などとしても使用できる。
【0205】
そのなかでも、正極、負極、セパレータおよび本発明の電解液を備えるリチウムイオン二次電池用として使用することが好適であり、とくに、正極に使用する正極活物質が、コバルト系複合酸化物、ニッケル系複合酸化物、マンガン系複合酸化物、鉄系複合酸化物およびバナジウム系複合酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることがエネルギー密度の高く、高出力な二次電池となることから好ましい。
【0206】
コバルト系複合酸化物としては、LiCoOが例示され、ニッケル系複合酸化物としては、LiNiOが例示され、マンガン系複合酸化物としては、LiMnOが例示される。また、LiCoNi1−x(0<x<1)で示されるCoNiの複合酸化物や、LiCoMn1−x(0<x<1)で示されるCoMnの複合酸化物や、LiNiMn1−x(0<x<1)、LiNiMn2−x(0<x<2)で示されるNiMnの複合酸化物や、LiNi1−x−yCoMn(0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)で示されるNiCoMnの複合酸化物でもよい。これらのリチウム含有複合酸化物は、Co、Ni、Mnなどの金属元素の一部が、Mg、Al、Zr、Ti、Crなどの1種以上の金属元素で置換されたものであってもよい。
【0207】
また、鉄系複合酸化物としては、たとえばLiFeO、LiFePOが例示され、バナジウム系複合酸化物としては、たとえばVが例示される。
【0208】
正極活物質として、上記の複合酸化物のなかでも、容量を高くすることができる点から、ニッケル系複合酸化物またはコバルト系複合酸化物が好ましい。とくに小型リチウムイオン二次電池では、コバルト系複合酸化物を用いることはエネルギー密度が高い点と安全性の面から望ましい。
【0209】
本発明においてとくにハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池に使用される場合は、高出力が要求されるため、正極活物質の粒子は二次粒子が主体となり、その二次粒子の平均粒子径が40μm以下で平均一次粒子径1μm以下の微粒子を0.5〜7.0体積%含有することが好ましい。
【0210】
平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を含有させることにより電解液との接触面積が大きくなり電極と電解液の間でのリチウムイオンの拡散をより早くすることができ出力性能を向上させることができる。
【0211】
本発明で負極に使用する負極活物質は炭素材料があげられ、リチウムイオンを挿入可能な金属酸化物や金属窒化物などもあげられる。炭素材料としては天然黒鉛、人造黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、メソカーボンマイクロビーズ、炭素ファイバー、活性炭、ピッチ被覆黒鉛などがあげられ、リチウムイオンを挿入可能な金属酸化物としては、スズやケイ素を含む金属化合物、たとえば酸化スズ、酸化ケイ素などがあげられ、金属窒化物としては、Li2.6Co0.4Nなどがあげられる。
【0212】
本発明に使用できるセパレータはとくに制限はなく、微孔性ポリエチレンフィルム、微孔性ポリプロピレンフィルム、微孔性エチレン−プロピレンコポリマーフィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルムなどがあげられる。
【0213】
また、本発明の電解液は不燃性であることから、上記のハイブリッド自動車用や分散電源用の大型リチウムイオン二次電池用の電解液として特に有用であるが、そのほか小型のリチウムイオン二次電池などの非水系電解液としても有用である。
【実施例】
【0214】
つぎに本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明はかかる例のみに限定されるものではない。以下の実施例および比較例で使用した各化合物は以下のとおりである。
【0215】
成分(I−1)
(I−1a):
【0216】
【化44】

【0217】
(I−1b):
【0218】
【化45】

【0219】
(I−1c):
【0220】
【化46】

【0221】
(I−1d):
【0222】
【化47】

【0223】
成分(I−2)
(I−2a):エチレンカーボネート
(I−2b):プロピレンカーボネート
(I−2c):フルオロエチレンカーボネート
(I−2d):ビニレンカーボネート
【0224】
成分(I−3)
(I−3a):ジメチルカーボネート
(I−3b):メチルエチルカーボネート
(I−3c):ジエチルカーボネート
(I−3d):CFCHOCOOCH
【0225】
成分(I−4)
(I−4a):HCFCFCHOCFCF
(I−4b):HCFCFCHOCFCFHCF
【0226】
合成例1 4−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシメチル)−(1,3)−ジオキソラン−2−オン(I−1a)の合成
【0227】
ステンレススチール製の100mLオートクレーブに、
【0228】
【化48】

【0229】
を40g(212mmol)、LiBrを350.0mg(4.03mmol)及びN−メチルピロリドン(NMP)を40ml入れ、攪拌下にオートクレーブ内を真空にした。ついで室温で1MPaに相当するCOを系内に加え、系内の温度を100℃に上げて反応を開始した。反応の進行に伴い圧力が低下するので、系内圧力が1MPaで安定するまでCOをさらに加えた。系内圧力が安定した時点で系内温度を室温に戻し、反応を終了した。得られた反応溶液を1N−HCl水溶液に加えた。
【0230】
得られた下層を減圧(2mmHg)下に蒸留し、133℃の留分として含フッ素エーテル環状カーボネートを得た。
【0231】
合成例2 (I−1b):4−(2,2,2−トリフルオロエトキシメチル)−(1,3)−ジオキソラン−2−オンの合成
【0232】
ステンレススチール製の100mLオートクレーブに、
【0233】
【化49】

【0234】
を33.1g(212mmol)、LiBrを350.0mg(4.03mmol)及びN−メチルピロリドン(NMP)を40ml入れ、攪拌下にオートクレーブ内を真空にした。ついで室温で1MPaに相当するCOを系内に加え、系内の温度を100℃に上げて反応を開始した。反応の進行に伴い圧力が低下するので、系内圧力が1MPaで安定するまでCOをさらに加えた。系内圧力が安定した時点で系内温度を室温に戻し、反応を終了した。得られた反応溶液を1N−HCl水溶液に加えた。
【0235】
得られた下層を減圧(2mmHg)下に蒸留し、130℃の留分として含フッ素エーテル環状カーボネートを得た。
【0236】
合成例3 (I−1c)の合成
ステンレススチール製の100mLオートクレーブに、
【0237】
【化50】

【0238】
を33.1g(212mmol)、LiBrを350.0mg(4.03mmol)及びN−メチルピロリドン(NMP)を40ml入れ、攪拌下にオートクレーブ内を真空にした。ついで室温で1MPaに相当するCOを系内に加え、系内の温度を100℃に上げて反応を開始した。反応の進行に伴い圧力が低下するので、系内圧力が1MPaで安定するまでCOをさらに加えた。系内圧力が安定した時点で系内温度を室温に戻し、反応を終了した。得られた反応溶液を1N−HCl水溶液に加えた。
【0239】
得られた下層を減圧(2mmHg)下に蒸留し、含フッ素アルキル環状カーボネートを得た。
【0240】
合成例4 (I−1d)の合成
ステンレススチール製の100mLオートクレーブに、
【0241】
【化51】

【0242】
を33.1g(212mmol)、LiBrを350.0mg(4.03mmol)及びN−メチルピロリドン(NMP)を40ml入れ、攪拌下にオートクレーブ内を真空にした。ついで室温で1MPaに相当するCOを系内に加え、系内の温度を100℃に上げて反応を開始した。反応の進行に伴い圧力が低下するので、系内圧力が1MPaで安定するまでCOをさらに加えた。系内圧力が安定した時点で系内温度を室温に戻し、反応を終了した。得られた反応溶液を1N−HCl水溶液に加えた。
【0243】
得られた下層を減圧(2mmHg)下に蒸留し、含フッ素アルキル環状カーボネートを得た。
【0244】
実施例1
成分(I−1)として4−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシメチル)−(1,3)−ジオキソラン−2−オン、成分(I−2)としてエチレンカーボネート、成分(I−3)としてジメチルカーボネートを3/30/67体積%比となるように混合し、この電解質塩溶解用溶媒にさらに電解質塩としてLiPFを1.0モル/リットルの濃度となるように加え、25℃にて充分に撹拌し本発明の非水電解液を調製した。
【0245】
(コイン型電池の作製)
LiNi1/3Mn1/3Co1/3とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製、商品名KF−7200)を92/3/5(質量%比)で混合した正極活物質をN−メチル−2−ピロリドンに分散してスラリー状とした正極合剤スラリーを準備した。アルミ集電体上に、得られた正極合剤スラリーを均一に塗布し、乾燥して正極合剤層(厚さ50μm)を形成し、その後、ローラプレス機により圧縮成形して、正極積層体を製造した。正極積層体を打ち抜き機で直径1.6mmの大きさに打ち抜き、円状の正極を作製した。
【0246】
別途、人造黒鉛粉末に、蒸留水で分散させたスチレン−ブタジエンゴムを固形分で6質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥し、負極合剤層を形成した。その後、ローラプレス機により圧縮成形し、打ち抜き機で直径1.6mmの大きさに打ち抜き円状の負極を作製した。
【0247】
上記の円状の正極を厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルム(セパレータ)を介して正極と負極を対向させ、電解液を注入し、電解液がセパレータなどに充分に浸透した後、封止し予備充電、エージングを行い、コイン型のリチウム二次電池を作製した。
【0248】
(電池特性の測定)
コイン型リチウム二次電池について、つぎの要領で高電圧でのサイクル特性と低温負荷特性を調べた。
【0249】
充放電条件
充電:0.5C、4.4Vにて充電電流が1/10Cになるまでを保持(CC・CV充電)
放電:0.5C 3.0Vcut(CC放電)
【0250】
(高電圧高温サイクル特性)
サイクル特性については、温度を60℃に設定し上記の充放電条件(1.0Cで所定の電圧にて充電電流が1/10Cになるまで充電し1C相当の電流で3.0Vまで放電する)で行う充放電サイクルを1サイクルとし、5サイクル後の放電容量と100サイクル後の放電容量を測定する。サイクル特性は、つぎの計算式で求められた値を容量維持率の値とする。その結果を表1に示す。
【0251】
【数1】

【0252】
(低温特性)
低温負荷特性については上記の充電条件で充電しその電池を−20℃の恒温槽に入れ2時間放置して上記の放電条件で放電容量を調べた。評価は、比較例1の放電容量の結果を100とした指数で行う。
【0253】
実施例2〜7
実施例1と同様にして、成分(I−1)、成分(I−2)、成分(I−3)を表1に示す種類と量を用いて本発明の非水電解液を調製し実施例1と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0254】
比較例1
成分(I−2)としてエチレンカーボネート、成分(I−3)ジメチルカーボネートを30/70体積%比となるように混合し、この電解質塩溶解用溶媒にさらに電解質塩としてLiPFを1.0モル/リットルの濃度となるように加え、25℃にて充分に撹拌し本発明の非水電解液を調製し実施例1と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0255】
【表1】

【0256】
実施例8〜28
実施例1と同様にして、成分(I−1)、成分(I−2)、成分(I−3)、成分(I−4)を表2〜4に示す種類と量を用いて本発明の非水電解液を調製し実施例1と同様にして電池を作製し試験を行った。
【0257】
【表2】

【0258】
【表3】

【0259】
【表4】

【0260】
実施例29〜35、比較例2
正極活物質をLiFePOにし、充電終止電圧を3.6Vにしたほかは実施例1と同様の手順でおこなった。
【0261】
【表5】

【0262】
実施例36〜42、比較例3
正極活物質をLiMnOにし、充電終止電圧を4.3Vにしたほかは実施例1と同様の手順でおこなった。
【0263】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0264】
本発明の電解液は、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I−1):
【化1】

(式中、Rは、炭素−炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい、炭素数が2以上のアルキル基、炭素数が2以上の含フッ素アルキル基、アルコキシ基又は含フッ素アルコキシ基)で示される環状カーボネート(I−1)、
環状カーボネート(I−1)とは異なる環状カーボネート(I−2)、及び、
電解質塩(II)、
を含むことを特徴とする電解液。
【請求項2】
環状カーボネート(I−1)が0.2〜8.0体積%である請求項1記載の電解液。
【請求項3】
鎖状カーボネート(I−3)を含む請求項1又は2記載の電解液。
【請求項4】
環状カーボネート(I−1)、環状カーボネート(I−2)及び鎖状カーボネート(I−3)の体積比が0.5〜8.0/10.0〜92.0/0〜89.5である請求項3記載の電解液。
【請求項5】
式(I−1)におけるRが式(Ia−1):
【化2】

(式中、Rはフッ素原子を有していてもよいアルキル基;Rはフッ素原子を有していてもよいアルキレン基;n1は1〜3の整数;ただし、RおよびRの少なくとも1つはフッ素原子を有している)で示される含フッ素エーテル基である請求項1、2、3又は4記載の電解液。
【請求項6】
式(I−1)におけるRが式(Ic−1):
20−R21− (Ic−1)
(式中、R20はフッ素原子を有していてもよい炭素数1以上のアルキル基;R21はフッ素原子を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基;ただし、R20およびR21の少なくとも一方はフッ素原子を有している)で示される含フッ素アルキル基である請求項1、2、3又は4記載の電解液。
【請求項7】
式(I−1)におけるRのフッ素含有率が10〜76質量%である請求項1、2、3、4、5又は6記載の電解液。
【請求項8】
環状カーボネート(I−2)は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート及び、ビニレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種の環状カーボネートである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の電解液。

【公開番号】特開2012−216551(P2012−216551A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−83992(P2012−83992)
【出願日】平成24年4月2日(2012.4.2)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】