説明

電解質組成物及びそれを用いた色素増感太陽電池

【課題】優れた光電変換効率及び長期の安定性を示し、色素増感太陽電池を提供する。
【解決手段】(a)有機アミンヨウ化水素酸塩、金属ヨウ化物、イミダゾリウム塩又はこれらの組み合わせと、(b)ヨウ素と、(c)チオシアン酸グアニジンと、(d)ベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体又はこれらの組み合わせと(e)ポリエチレングリコール及び炭酸プロピレンとを含む電解質組成物、及び該電解質を含み、光陽極と陰極とを有する色素増感太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質(electrolyte)組成物に関するものであり、さらに詳しくは、色素増感太陽電池に好適な電解質組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
文明の発達に伴って、世界はエネルギー危機と環境汚染に関するやや緊急の問題に直面している。地球上のエネルギー危機を解決し、環境汚染を低減するために、太陽エネルギーを電力に転換することが可能である光電太陽電池が代替手段として提案されている。太陽電池の中でも色素増感太陽電池はその優れた特性のために展望を示している。たとえば、それは大規模な製造用に設計することができ、製造コストが低く、柔軟性や光学透明性を有するので、建造物に適用することができる。
【0003】
Graetzelらは、その実用性を裏付ける色素増感太陽電池に関する一連の報告を提示している(たとえば、O’Regan, B.; Gratzel, M. Nature 1991, 353, 737))。一般に、色素増感太陽電池には、陰極、陽極、ナノ酸化チタン、色素及び電解質が含まれ、電解質は電池の効率に決定的な役割を担う。色素増感太陽電池では、理想的な電解質は不揮発性であるべきであり、容易に梱包することが可能であり、色素及びそのほかの成分に対して漏出も悪影響も有さないようにすべきである。
【0004】
利用可能な知識に基づいて、液体電解質はさらに高い光電変換効率を有する。しかしながら、液体電解質は普通、揮発性であり、容易に梱包することができず、液体電解質の漏出が起き易い。前述の問題を未然に防ぐために、研究者らは、たとえば、イオン性の液体(N. Papageorgiou et al., J. Electrochem. Soc, 1996, 143, 3099)、及びポリマーと有機融解塩から成るゲル電解質(米国特許第6,245,847号)を提案した。
【0005】
電解質は色素増感太陽電池の効率に決定的な役割を担うので、色素増感太陽電池の効率を改善する方法の1つは、色素増感太陽電池の効率を高めることが可能である電解質を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,245,847号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】O’Regan, B.; Gratzel, M. Nature 1991, 353, 737
【非特許文献2】N. Papageorgiou et al., J. Electrochem. Soc, 1996, 143, 3099
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、色素増感太陽電池に好適な新規のゲル電解質組成物を提供する。本発明に係る電解質組成物の優れた光電変換効率と長期の安定性のために、そこで使用される本発明に係るゲル電解質組成物を伴う色素増感太陽電池は優れた光電特性を示す。
【0009】
本発明はさらに、改善された光電変換効率を有する色素増感太陽電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、(a)2〜30重量%の有機アミンヨウ化水素酸塩、金属ヨウ化物、イミダゾリウム塩又はこれらの組み合わせ、(b)1〜5重量%のヨウ素、(c)0.5〜3重量%のチオシアン酸グアニジン(GuNCS)、(d)2〜10重量%のベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体又はこれらの組み合わせ、及び(e)52〜94.5重量%のポリエチレングリコール(PEG)と炭酸プロピレン(PC)を含む電解質組成物を提供する。好ましくは、成分(a)は5〜20重量%であり、成分(b)は1〜3重量%であり、成分(c)は0.5〜2重量%であり、成分(d)は5〜10重量%であり、及び成分(e)は65〜88.5重量%である。最も好ましくは、成分(a)は13.9重量%であり、成分(b)は2.1重量%であり、成分(c)は1重量%であり、成分(d)は7.2重量%であり、及び成分(e)は75.8重量%である。
【0011】
上述の成分(a)の有機アミンヨウ化水素酸塩は、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩(THI)、トリプロピルアミンヨウ化水素酸塩、トリブチルアミンヨウ化水素酸塩、トリペンチルアミンヨウ化水素酸塩、トリヘキシルアミンヨウ化水素酸塩、又はこれらの混合物であってもよい。好ましくは、それは、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩、トリプロピルアミンヨウ化水素酸塩、トリブチルアミンヨウ化水素酸塩、又はこれらの混合物である。最も好ましくは、それはトリエチルアミンヨウ化水素酸塩である。
【0012】
上述の成分(a)の金属ヨウ化物は、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム又はこれらの混合物であってもよく、好ましくはヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム又はこれらの混合物である。
【0013】
上述の成分(a)のイミダゾリウム塩は、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム(PMII)、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ペンチル−イミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘプチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−プロピル−3−ブチルイミダゾリウム、又はこれらの混合物であってもよい。好ましくは、それは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ペンチル−イミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−プロピル−3−ブチルイミダゾリウム、又はこれらの混合物である。さらに好ましくは、それは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ペンチル−イミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−ブチルイミダゾリウム、又はこれらの混合物である。最も好ましくは、それは、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ペンチル−イミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、又はこれらの混合物である。
【0014】
上述(d)のベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体又はこれらの組み合わせは、N−メチルベンズイミダゾール(NMBI)、N−ブチルベンズイミダゾール(NBB)、4−tert−ブチルピリジン(4−TBP)、又はこれらの混合物であってもよい。
【0015】
上述の成分(e)のポリエチレングリコールと炭酸プロピレンの重量比(ポリエチレングリコール/炭酸プロピレン)は、20/80〜40/60であってもよく、好ましくは25/75〜35/65である。
【0016】
加えて本発明は、上述の電解質組成物を含む色素増感太陽電池をさらに提供する。本発明に係る色素増感太陽電池は、色素化合物を含む光陽極;陰極;光陽極と陰極の間に配置され、上述の電解質組成物を含む電解質層を含む。
【0017】
本発明に係る色素増感太陽電池では、光陽極は、透明な基材、透明な導電性膜、多孔性の半導体膜及び色素化合物を含む。
【0018】
本発明に係る色素増感太陽電池では、光陽極の透明な基材の材料は、特に限定されることはなく、透明な材料を使用することができる。好ましくは、透明な基材の材料は、色素増感太陽電池の外側からの水分や気体を上手く遮ることが可能であり、溶媒耐性及び耐候性を有する透明な材料である。具体的には、透明な基材には、石英基材やガラス基材のような無機基材;並びにポリエチレンテレフタレート(PET)基材、ポリ(エチレンナフタレン−2,6−ジカルボキシレート(PEN)基材、ポリカーボネート(PC)基材、ポリエチレン(PE)基材、ポリプロピレン(PP)基材及びポリイミド(PI)基材のような透明なプラスチック基材が挙げられる。しかしながら、透明な基材はこれらに限定されない。さらに、透明な基材の厚さは特に限定されず、色素増感太陽電池の透明性及び特徴に基づいて設計することができる。好ましくは透明な基材はガラス製である。
【0019】
本発明に係る色素増感太陽電池では、透明な導電性の膜の材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga23、ZnO−Al23、又はスズ系酸化物であってもよい。
【0020】
本発明に係る色素増感太陽電池では、多孔性の半導体膜は、半導体微粒子から作られてもよい。好適な微粒子には、シリコン微粒子、二酸化チタン微粒子、二酸化スズ微粒子、酸化亜鉛微粒子、三酸化タングステン微粒子、五酸化ニオブ微粒子、三酸化ストロンチウムチタン(strontium titanium trioxide)微粒子及びこれらの組み合わせが挙げられてもよい。好ましくは、半導体微粒子は二酸化チタン微粒子である。半導体微粒子は5〜50ナノメータ、好ましくは10〜50ナノメータの平均直径であってもよい。多孔性半導体膜は5〜25マイクロメータの厚さであってもよい。
【0021】
さらに、色素増感太陽電池で使用される陰極の材料は特に限定されることはなく、どのような導電性材料を含んでもよい。或いは、陰極は絶縁性材料で作られ、導電性の層が光陽極に向く表面上に形成される。陰極には電気化学的に安定な材料を使用してもよく、陰極の好適な材料には、たとえば、白金、金、炭素などが挙げられる。
【0022】
色素増感太陽電池では、本発明に係る電解質組成物は電解質層として使用される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
金属ヨウ化物(たとえば、LiI、NaI、KIなど)、有機アミンヨウ化水素酸塩(たとえば、THI、TEAIなど)及びイミダゾリウム塩(たとえば、PMII、EMIIなど)を、N−ブチルベンズイミダゾール(又はN−メチルベンズイミダゾール又は4−tert−ブチルピリジン)及びチオシアン酸グアニジンと一緒に、単独で用い、又は混合して用い、20〜40重量%のポリエチレングリコール(PEG)及び80〜60重量%の炭酸ポリプロピレン(PC)をゲル溶媒として用いて、好適な濃度にて電解質組成物を調製する。
【0024】
本発明に従って色素増感太陽電池を製造する方法は特に限定されず、従来の方法のいずれであることもできる。
【0025】
透明な基材の材料は特に限定されず、透明な材料であることができる。好ましくは、透明な基材の材料は、色素増感太陽電池の外側からの水分や気体を上手く遮ることが可能であり、溶媒耐性及び耐候性を有する透明な材料である。具体的には、透明な材料には、石英基材やガラス基材のような無機基材;並びにポリエチレンテレフタレート(PET)基材、ポリ(エチレンナフタレン−2,6−ジカルボキシレート(PEN)基材、ポリカーボネート(PC)基材、ポリエチレン(PE)基材、ポリプロピレン(PP)基材及びポリイミド(PI)基材のような透明なプラスチック基材が挙げられる。しかしながら、透明な基材はこれらに限定されない。透明な基材の厚さは特に限定されず、色素増感太陽電池の透明性及び特徴に基づいて設計することができる。実施態様では、透明な基材はガラス基材である。
【0026】
透明な導電性の膜の材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、ZnO−Ga23、ZnO−Al23、又はスズ系酸化物から成る群から選択されてもよい。実施態様では、透明な導電性の膜はフッ素をドープした酸化スズから作られる。
【0027】
多孔性の半導体膜は、半導体微粒子から作られる。好適な微粒子には、シリコン微粒子、二酸化チタン微粒子、二酸化スズ微粒子、酸化亜鉛微粒子、三酸化タングステン微粒子、五酸化ニオブ微粒子、三酸化ストロンチウムチタン微粒子及びこれらの組み合わせが挙げられてもよい。
【0028】
半導体微粒子は先ず、ペースト形態で調製され、透明な基材の上に被覆される。本明細書では、ブレードコーティング、スクリーン印刷、スピンコーティング及びスプレーコーティングのような一般の湿式コーティング法を実施することができる。さらに、コーティング法を1回以上実施して好適な厚さを達成することができる。半導体膜は単層又は多層であってもよい。本明細書では、用語「多層」は、異なる層における半導体微粒子の直径が多様であることを指す。たとえば、5〜50ナノメータの半導体微粒子を先ず5〜20マイクロメータの厚さに被覆し、次いで200〜400ナノメータの半導体微粒子を3〜5マイクロメータの厚さに被覆してもよい。多層の半導体膜を得るように、50〜100℃の範囲内の温度にて乾燥させた後、400〜500℃の範囲内の温度にて焼結を30分間実施する。
【0029】
色素(たとえば、N719)を好適な溶媒に溶解して色素溶液を調製する。好適な溶媒には、アセトニトリル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ジメチルホルミド、N−メチルピロリドン又はこれらの混合物が挙げられる。しかしながら、それはこれらに限定されない。本明細書では、色素溶液中で基材が十分に色素を吸収するまで、半導体膜で被覆された透明な基材を色素溶液に浸し、次いで乾燥させる。その結果、色素増感太陽電池の光陽極が得られる。
【0030】
陰極の材料は特に限定されることはなく、どのような導電性材料を含んでもよい。或いは、陰極は絶縁性材料で作られ、導電性の層が光陽極に向く表面上に形成される。さらに、陰極には電気化学的に安定な材料を使用してもよく、陰極の好適な材料には、たとえば、白金、金、炭素などが挙げられる。
【0031】
本発明に係る電解質組成物は電解質層にて使用される。
【0032】
本発明に従って色素増感太陽電池を調製する方法を具体的に以下のように記載する。
【0033】
先ず、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)で覆ったガラス基材上に、直径20〜30ナノメータの酸化チタン微粒子を含有するペーストをスクリーン印刷法にて1回以上被覆し、次いで450℃にて30分間焼結する。
【0034】
アセトニトリルとt−ブタノールの混合物(1:1、v/v)に色素を溶解して色素溶液を調製する。その後、色素が十分に吸収されるまで多孔性酸化チタン膜を含有する上記ガラス基材を色素溶液に浸し、その後乾燥させる。その結果、光陽極が得られる。
【0035】
フッ素ドープ酸化スズで覆ったガラス基材に、それを介して注入される電解質組成物のための直径0.75ミリメータの穴をドリルで開ける。次に、フッ素ドープ酸化スズで覆ったガラス基材をH2PtCl6溶液で被覆し、次いで陰極を形成するように400℃にて15分間加熱する。
【0036】
次いで、厚さ60マイクロメータの熱可塑性ポリマー膜を光陽極と陰極の間に配置する。120〜140℃の温度にて2つの電極に圧力を適用してそれらを合わせる。
【0037】
本発明に係る電解質組成物を上記穴に注入し、次いで本発明に係る色素増感太陽電池を得るように熱可塑性ポリマー膜でこの穴を封印する。
【0038】
本発明を説明するためにそれら以下の実施例を提供する。本発明の範囲はそれらに限定されない。
【実施例】
【0039】
実施例1〜5及び比較例1〜4
比較例1〜4及び実施例1〜5において、金属ヨウ化物(たとえば、LiI、NaI、KIなど)、有機アミンヨウ化水素酸塩(たとえば、THI、TEAIなど)及びイミダゾリウム塩(たとえば、PMII、EMIIなど)を、N−ブチルベンズイミダゾール(又はN−メチルベンズイミダゾール又は4−tert−ブチルピリジン)及びチオシアン酸グアニジン(GuNCS)と一緒に、単独で用い、又は混合して用い、20〜40重量%のポリエチレングリコール(PEG)及び80〜60重量%の炭酸ポリプロピレン(PC)をゲル溶媒として用いる。
【0040】
比較例1〜4及び実施例1〜5の電解質成分を表1及び表3に列記する。光電効果試験では、色素増感太陽電池を調製するために比較例1〜4及び実施例1〜5の電解質組成物を用い、短絡電流(JSC)、開路電圧(VOC)、光電変換効率(η)及び充填比(FF)をAM1.5の照明で測定する。結果を表2及び表4に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
比較例1の組成物は、主成分としてのKIとI2及びゲル溶媒としてのPEG/PCから成る従来型である。比較例2の組成物は、主成分としてのヨウ化イミダゾリウムとI2から成り、その効率は比較例1よりも高い。実施例1〜3では、金属ヨウ化物(たとえば、LiI、NaI、KIなど)、有機アミンヨウ化水素酸塩(たとえば、THI、TEAIなど)及びイミダゾリウム塩(たとえば、PMII、EMIIなど)を、N−ブチルベンズイミダゾール(又はN−メチルベンズイミダゾール又は4−tert−ブチルピリジン)及びチオシアン酸グアニジン(GuNCS)と一緒に、単独で用い、又は混合して用い、20〜40重量%のポリエチレングリコール(PEG)及び80〜60重量%の炭酸ポリプロピレン(PC)をゲル溶媒として用いる。実施例1〜3の効率は比較例1〜2よりも高い。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
比較例3は、一般に用いられる液体電解質を使用し、3−MPNを溶媒として用いる。実施例4〜5では、金属ヨウ化物(たとえば、LiI、NaI、KIなど)、有機アミンヨウ化水素酸塩(たとえば、THI、TEAIなど)及びイミダゾリウム塩(たとえば、PMII、EMIIなど)を、N−ブチルベンズイミダゾール(又はN−メチルベンズイミダゾール又は4−tert−ブチルピリジン)及びチオシアン酸グアニジン(GuNCS)と一緒に、単独で用い、又は混合して用い、30重量%のポリエチレングリコール(PEG)及び70重量%の炭酸ポリプロピレン(PC)をゲル溶媒として用いる。実施例4〜5の効率は液体電極(比較例3)の約77〜95%である。
【0047】
色素増感太陽電池では、電解質は酸化/還元反応に関係する。色素増感太陽電池の効率及び安定性は電解質の成分に左右される。従って、電流と電圧を高めるための成分及び高沸点溶媒から成る電解質は高い電気化学的安定性を示す。一般に用いられる金属ヨウ化物(たとえば、LiI、NaI、KIなど)に加えて、本発明は、高い化学的安定性を持つ電解質組成物を得ることができるように、さらに、有機アミンヨウ化水素酸塩(たとえば、THI、TEAIなど)と共にイミダゾリウム塩(たとえば、PMII、EMIIなど)、N−ブチルベンズイミダゾール(又はN−メチルベンズイミダゾール又は4−test−ブチルピリジン)、チオシアン酸グアニジン、及び高い沸点と高い粘度のゲル溶媒を使用する。従って、高い光電変換効率及び長期の安定性を達成することができる。
【0048】
本発明をその好ましい実施態様に関して説明してきたが、以下に請求されるような本発明の範囲から逸脱することなく、多数のそのほかの改変及び変化を行うことができることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質組成物であって、
(a)2〜30重量%の有機アミンヨウ化水素酸塩、金属ヨウ化物、イミダゾリウム塩又はこれらの組み合わせと、
(b)1〜5重量%のヨウ素と、
(c)0.5〜3重量%のチオシアン酸グアニジンと、
(d)2〜10重量%のベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体又はこれらの組み合わせと、
(e)52〜94.5重量%のポリエチレングリコール及び炭酸プロピレンとを含む電解質組成物。
【請求項2】
成分(a)が有機アミンヨウ化水素酸塩である請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
成分(a)が金属ヨウ化物である請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項4】
成分(a)がイミダゾリウム塩である請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項5】
(a)有機アミンヨウ化水素酸塩が、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩、トリプロピルアミンヨウ化水素酸塩、トリブチルアミンヨウ化水素酸塩、トリペンチルアミンヨウ化水素酸塩、トリヘキシルアミンヨウ化水素酸塩、又はこれらの混合物である請求項2に記載の電解質組成物。
【請求項6】
(a)金属ヨウ化物が、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム又はこれらの混合物である請求項3に記載の電解質組成物。
【請求項7】
(a)イミダゾリウム塩が、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ペンチル−イミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘプチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−プロピル−3−ブチルイミダゾリウム、又はこれらの混合物である請求項4に記載の電解質組成物。
【請求項8】
(d)ベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体又はこれらの組み合わせが、N−メチルベンズイミダゾール、N−ブチルベンズイミダゾール、4−tert−ブチルピリジン又はこれらの混合物である請求項5に記載の電解質組成物。
【請求項9】
成分(e)のポリエチレングリコールと炭酸プロピレンの重量比(ポリエチレングリコール/炭酸プロピレン)が20/80〜40/60である請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項10】
成分(e)のポリエチレングリコールと炭酸プロピレンの重量比(ポリエチレングリコール/炭酸プロピレン)が20/80〜40/60である請求項5に記載の電解質組成物。
【請求項11】
成分(e)のポリエチレングリコールと炭酸プロピレンの重量比(ポリエチレングリコール/炭酸プロピレン)が20/80〜40/60である請求項8に記載の電解質組成物。
【請求項12】
成分(a)が13.9重量%であり、成分(b)が2.1重量%であり、成分(c)が1重量%であり、成分(d)が7.2重量%であり、及び成分(e)が75.8重量%である請求項11に記載の電解質組成物。
【請求項13】
色素増感太陽電池であって、
(A)光陽極と
(B)陰極と、
(C)電解質層とを含み、電解質層は、(a)有機アミンヨウ化水素酸塩、金属ヨウ化物、イミダゾリウム塩又はこれらの組み合わせ、(b)ヨウ素、(c)チオシアン酸グアニジン、(d)ベンズイミダゾール誘導体、ピリジン誘導体又はこれらの組み合わせ、及び(e)ポリエチレングリコールと炭酸プロピレンを含む色素増感太陽電池。
【請求項14】
成分(a)の有機アミンヨウ化水素酸塩が、トリエチルアミンヨウ化水素酸塩、トリプロピルアミンヨウ化水素酸塩、トリブチルアミンヨウ化水素酸塩、トリペンチルアミンヨウ化水素酸塩、トリヘキシルアミンヨウ化水素酸塩、又はこれらの混合物である請求項13に記載の色素増感太陽電池。
【請求項15】
成分(a)の金属ヨウ化物が、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム又はこれらの混合物である請求項13に記載の色素増感太陽電池。
【請求項16】
成分(a)のイミダゾリウム塩が、ヨウ化1−メチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−エチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ペンチル−イミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−ヘプチルイミダゾリウム、ヨウ化1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−ジエチルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−エチル−3−ブチルイミダゾリウム、ヨウ化1,3−プロピルイミダゾリウム、ヨウ化1−プロピル−3−ブチルイミダゾリウム、又はこれらの混合物である請求項13に記載の色素増感太陽電池。
【請求項17】
成分(e)のポリエチレングリコールと炭酸プロピレンの重量比(ポリエチレングリコール/炭酸プロピレン)が20/80〜40/60である請求項13に記載の色素増感太陽電池。
【請求項18】
成分(e)のポリエチレングリコールと炭酸プロピレンの重量比(ポリエチレングリコール/炭酸プロピレン)が20/80〜40/60である請求項14に記載の色素増感太陽電池。

【公開番号】特開2012−104427(P2012−104427A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−253494(P2010−253494)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(598062332)エバーライト ユーエスエー、インク (13)
【Fターム(参考)】