説明

電話制御装置および電話端末

【課題】使用可能な無線通信チャネル数が低減した場合でも、通信品質の低下をある程度抑制でき、さらには改善することも可能とする。
【解決手段】電話制御装置1の通信状況確認手段15Cにより、無線通信チャネルを用いた電話端末2での無線通信状況を確認し、この無線通信状況に応じてミニマムチャネル数調整手段15Dにより電話端末2のミニマムチャネル数を調整し、チャネル管理手段15Bにより、調整後の新たなミニマムチャネル数を当該電話端末2へ通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話制御技術に関し、特にブルートゥース(登録商標:Bluetooth)通信方式で用いるスペクトラム拡散変調方式の周波数ホッピング技術を用いて音声通話を行う電話制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通信回線に接続される電話制御装置と、内線伝送路を介して電話制御装置に収容される複数の電話端末とからなり、電話制御装置により、任意の電話端末を通信回線に交換接続する電話システムでは、電話端末(親機)とハンドセット(子機)の間を、汎用無線インターフェースであるブルートゥース無線通信方式で接続する構成がある。
【0003】
ブルートゥース無線通信方式では、変調方式として周波数ホッピング・スペクトラム拡散(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)変調方式が用いられている(非特許文献1など参照)。この周波数ホッピング・スペクトラム拡散変調方式は、一定時間ごとに搬送波周波数を変えてすなわち周波数ホッピングして伝送する方式である。
一般に、任意の帯域幅の電力は周波数ホッピングする周期に対して十分長い時間で平均すると低くなるので他のシステムの通信を妨害しにくく、また特定の周波数に妨害波が存在してもすぐ別の周波数にホッピングするので他のシステムからの干渉に強いといわれている。
【0004】
ブルートゥース無線通信方式では、2.4GHz帯に1MHz間隔で79個または23個のチャネルを設け、通信開始時にマスタ側とスレーブ側との間で設定したチャネル選択順に基づき、1600回/秒という速度で周波数ホッピングを繰り返し、その際、選択したチャネルを用いて相手無線装置と所望のパケットを送受信することにより、データ通信を行うものとなっている。
【0005】
従来、このような周波数ホッピング技術として、他の機器から送信されている電波により任意のチャネルでパケット送受信のエラーが発生した場合、そのチャネルを使用不可とするアダプティブ周波数ホッピング(AFH:Adaptive Frequency Hopping)方式が使用される(例えば、非特許文献2など参照/Bluetooth 1.2)。
このアダプティブ周波数ホッピング方式によれば、使用不可と判断されたチャネルはチャネル選択順から除外されるため、そのチャネルに対してそれ以降周波数ホッピングが行われなくなり、当該チャネルの搬送波周波数における他の機器との電波の相互干渉や、同種の電話端末との当該チャネルにおけるパケット送受信の衝突による無線通信の途切れを低減できる。
【0006】
また、アダプティブ周波数ホッピング方式では、使用可能ブルートゥースチャネル数の下限値としてミニマムチャネル数が予め設定されている。したがって、パケット送受信エラーが発生したブルートゥースチャネルを順次使用不可と設定した場合、これに応じて使用可能ブルートゥースチャネル数が削減されるが、使用可能ブルートゥースチャネル数がミニマムチャネル数に到達した以降は、任意のブルートゥースチャネルでパケット送受信エラーが発生してもそのブルートゥースチャネルは使用不可と設定されない。これにより、最低限のブルートゥースチャネル数が確保される。
【0007】
【非特許文献1】http://www.bluetooth.org/spec/
【非特許文献2】http://www.ericsson.com/bluetooth/files/whitepaper_on_afh_final.pdf
【非特許文献3】http://grouper.ieee.org/groups/802/11/
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来技術では、他の機器から送信されている電波により任意のチャネルでパケット送受信のエラーが発生した場合には、アダプティブ周波数ホッピング方式に基づいて当該チャネルを使用不可とするため、使用可能チャネル数が低減した状況で、データパケットを利用した高負荷な音声通話を電話端末により行う場合には、使用可能チャネル数が不足し、当該音声通話について所望の通信品質が得られないという問題点があった。
【0009】
一般に、データパケットを利用した音声通話や動画通信などのストリーミング系の無線通信では、データ量が多いためデータパケットを間断なく順次転送する必要があり、このようなストリーミング系の無線通信である音声通話をブルートゥース無線通信方式の電話端末で行う場合、当該電話端末によるチャネル使用頻度が大きく上昇する。
このため、使用可能なブルートゥースチャネル数が低減した状況において、このようなストリーミング系の無線通信がいずれかの電話端末で開始された場合、当該電話端末によるチャネル使用頻度が上昇し、同一無線エリアで併用される電話端末間で使用可能ブルートゥースチャネル数が不足してチャネル衝突が発生しやすくなる。
【0010】
したがって、電話システムにおいて電話端末(親機)とハンドセット(子機)の間をブルートゥース無線通信方式で接続する場合、同一無線エリアで複数の音声通話が同時期に並行して行われる可能性が高い。このため、間欠的にデータパケットを送受信する一般的な無線データ通信と比較して、長期間に渡りブルートゥースチャネルの使用頻度が上昇し、チャネル衝突が発生しやすくなる。また、音声通話では、無線通信状況が悪化してデータパケットをスムーズに転送できなくなると音声の途切れが発生するため、ユーザはより顕著に通信品質の悪化を感じてしまう。
【0011】
また、ブルートゥース無線通信方式はISMバンドに設けられたブルートゥースチャネルを使用するため、例えば無線LAN通信方式(非特許文献3など参照)などの同一ISMバンドを用いる装置での無線通信環境へ影響を及ぼす場合もある。
この際、無線通信環境が悪化をブルートゥース無線方式の電話端末側で回避する技術として、無線LAN通信方式で用いる無線LANチャネルなど、ブルートゥース無線通信方式以外の装置で使用する周波数帯域を優先して確保し、これら装置で使用していない周波数帯域をブルートゥース無線通信方式のチャネルとして用いる方法が考えられる。
【0012】
しかし、このような方法では、使用可能なブルートゥースチャネル数が制限されるため、いずれかの電話端末で音声通話が開始された場合、長期間に渡りブルートゥースチャネルの使用頻度が上昇し、これにより各電話端末の無線通信状況がさらに悪化して通信品質の低下が顕著となるという問題点があった。
【0013】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、使用可能な無線通信チャネル数が低減した場合でも、通信品質の低下をある程度抑制でき、さらには改善することも可能な電話制御装置および電話端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために、本発明にかかる電話制御装置は、搬送波周波数の異なる複数の無線通信チャネルからなる無線回線を介してハンドセットと接続する複数の電話端末と、通信網からの通信回線を接続するとともに内線伝送路を介して電話端末を収容し、電話端末と通信回線、または電話端末相互間を交換接続することにより電話端末での通話を実現する電話制御装置とからなり、電話端末は、無線通信チャネルを電話端末相互間で共用するとともに、当該電話端末における各無線通信チャネルの使用可否を示すチャネル管理情報を記憶し、無線通信チャネルのうちチャネル管理情報で使用可と設定されている使用可チャネルから所定周期で順次切替選択した無線通信チャネルを用いて当該電話端末のハンドセットと無線通信を行い、選択した無線通信チャネルが電波干渉により使用できない場合には当該無線通信チャネルを使用不可チャネルとしてチャネル管理情報に設定するとともに、使用可チャネルの数をミニマムチャネル数以上に保持する電話システムで用いられる電話制御装置であって、各電話端末から内線伝送路を介して取得したチャネル使用状況を当該電話端末に対応付けて記憶部へ保存するとともに、記憶部から読み出した電話端末のミニマムチャネル数を内線伝送路を介して当該電話端末へ通知して設定するチャネル管理手段と、チャネル使用状況に基づいて電話端末のうち無線通信チャネルを用いて通話を行う通話端末での無線通信状況を確認する通信状況確認手段と、通信状況確認手段により確認された無線通信状況に応じて通話端末のミニマムチャネル数を調整するミニマムチャネル数調整手段とを備えている。
【0015】
この際、ミニマムチャネル数調整手段により、通信状況確認手段での無線通信状況の悪化に応じて通話端末のミニマムチャネル数を増加させるようにしてもよい。
【0016】
また、通信状況確認手段で、各電話端末のうち通話状態にある電話端末を示す通話端末数を、記憶部に保存されている通話端末のチャネル管理情報から計数した通話端末の使用可能チャネル数で除算することにより通信状況指数を算出し、ミニマムチャネル数調整手段は、通信状況指数の値に応じて通話端末のミニマムチャネル数を調整するようにしてもよい。
【0017】
また、通信状況確認手段で、通話端末から内線伝送路を介して通知された所定の操作入力に応じて無線通信状況が悪化したと判定するようにしてもよい。
【0018】
また、本発明にかかる電話端末は、搬送波周波数の異なる複数の無線通信チャネルについてそれぞれの使用可否を示すチャネル管理情報を記憶し、無線通信チャネルのうちチャネル管理情報で使用可と設定されている使用可チャネルから所定周期で順次切替選択した無線通信チャネルを用いてハンドセットと無線通信を行い、選択した無線通信チャネルが電波干渉により使用できない場合には当該無線通信チャネルを使用不可チャネルとしてチャネル管理情報に設定するとともに、使用可チャネルの数をミニマムチャネル数以上に保持する電話端末であって、無線回線を介して接続されたハンドセットを用いた音声通話の有無に基づき無線通信状況を確認する通信状況確認手段と、通信状況確認手段により確認された無線通信状況に応じて通話端末のミニマムチャネル数を調整するミニマムチャネル数調整手段とを備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電話制御装置の通信状況確認手段により、無線通信チャネルを用いた電話端末での無線通信状況が確認され、この無線通信状況に応じてミニマムチャネル数調整手段により電話端末のミニマムチャネル数が調整されて、チャネル管理手段により、調整後の新たなミニマムチャネル数が当該電話端末へ通知されて設定されるため、電話端末の無線通信状況に応じて電話端末のミニマムチャネル数、すなわちアダプティブ周波数ホッピング方式に基づき選択できるチャネル候補数を調整することができる。
したがって、当該電話端末が通話する際、その無線通信状況が悪化してデータパケットをスムーズに転送できなくなった場合に発生する音声の途切れやノイズを低減でき、結果としてユーザが感じる通信品質の低下をある程度抑制でき、さらには改善することも可能となる。
【0020】
また、本発明によれば、電話端末の通信状況確認手段により、無線通信チャネルを用いた当該電話端末での無線通信状況を確認し、この無線通信状況に応じてミニマムチャネル数調整手段により電話端末のミニマムチャネル数を調整するようにしたので、電話端末の無線通信状況に応じて当該電話端末のミニマムチャネル数、すなわちアダプティブ周波数ホッピング方式に基づき選択できるチャネル候補数を調整することができる。
したがって、当該電話端末が通話する際、その無線通信状況が悪化してデータパケットをスムーズに転送できなくなった場合に発生する音声の途切れやノイズを低減でき、結果としてユーザが感じる通信品質の低下をある程度抑制でき、さらには改善することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置とその電話システムの構成を示すブロック図である。
【0022】
この電話システムは、一般的なボタン電話システムやPBXシステムなど、通信網(図示せず)からの通信回線10に接続される電話制御装置1と、内線伝送路5を介して電話制御装置1に収容される複数の電話端末2とからなり、電話制御装置1において、任意の電話端末2と通信回線10、または任意の電話端末2相互間を交換接続することにより、任意の電話端末2での通話を実現する。
【0023】
また、電話端末2は、無線回線4を介してハンドセット3と接続されている。この際、電話端末(マスタ側)2は、ブルートゥース(登録商標:Bluetooth)無線通信方式のアダプティブ周波数ホッピング(AFH:Adaptive Frequency Hopping)方式に基づいて、無線回線4を介してハンドセット(スレーブ側)3と無線データ通信を行うことにより、ハンドセット3の制御や音声データをやり取りする。
【0024】
本実施の形態は、電話制御装置1により、各電話端末から内線伝送路を介して取得したそれぞれのチャネル管理情報を当該電話端末に対応付けて記憶部へ保存するとともに、更新されたチャネル管理情報を内線伝送路を介して当該電話端末へ通知して設定し、電話端末のうち無線通信チャネルを用いて通話を行う通話端末での無線通信状況を確認し、確認された無線通信状況に応じて通話端末のミニマムチャネル数を調整するようにしたものである。
【0025】
[電話制御装置]
次に、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置の構成について詳細に説明する。
電話制御装置1は、図1に示すように、通信機能を有するコンピュータなどの情報処理装置であり、外線インターフェース部(以下、外線I/F部という)11、内線インターフェース部(以下、内線I/F部という)12、スイッチ部13、記憶部14、および制御部15が設けられている。
【0026】
外線I/F部11は、通信回線10を接続する回路部からなり、所定のプロトコルに基づき通信回線10を終端制御することにより、着信検出、発信、通話などの回線制御を行う機能を有している。この際、通信網は、PSTN、ISDN、IP電話網、PBX内線網、専用回線網などからなり、通信回線10は、PSTN回線、ISDN回線、IP電話回線(インターネット)、PBX内線、専用回線などからなる。
【0027】
内線I/F部12は、内線伝送路5を介して電話端末2とデータ伝送を行う回路部からなり、電話端末2との間で制御コマンドや音声データなどの各種データをやり取りする機能を有している。
スイッチ部13は、外線I/F部11と内線I/F部12との間の通話パスを切り替える回路部からなり、制御部15からの指示に基づき通話パスの切替を行うことにより、電話端末2と通信回線10とを任意に交換接続する機能を有している。
【0028】
記憶部14は、メモリやハードディスクなどの記憶装置からなり、制御部15での呼制御処理や子機登録処理に用いる各種処理情報やプログラム14Pを記憶する機能を有している。
プログラム14Pは、当該電話制御装置1の製造時に他の装置から記憶部14へ書き込まれ、あるいは外線I/F部11など電話制御装置1に設けられた入出力インターフェースを介して外部装置や記録媒体から記憶部14へ書き込まれる。
【0029】
記憶部14で記憶する主な処理情報としては、呼制御情報14Aおよびチャネル管理情報14Bがある。呼制御情報14Aは、通信回線10や電話端末2の状態を示す状態情報、各種設定内容を示す設定情報から構成されており、制御部15で呼制御を行う際に参照され呼制御の内容に応じて更新される。チャネル管理情報14Bは、内線伝送路5を介して取得した各電話端末2のチャネル管理情報である。
【0030】
図3は、チャネル管理情報の構成例である。ここでは、電話端末ごとに、各チャネル番号のチャネルの使用可否状況(可/不可)とミニマムチャネル数とが登録されている。これらチャネル管理情報14Bは、制御部15により、内線伝送路5を介して各電話端末2から取得され、当該電話端末に対応付けて記憶部14に保存される。また、調整後のミニマムチャネル数は、制御部15により、内線伝送路5を介して当該電話端末2へ通知されて設定される。
【0031】
チャネル管理情報14Bにおける各チャネルの使用可否は、後述する電話端末2の無線モジュールでのアダプティブ周波数ホッピング方式に基づく無線通信制御により無線モジュールのチャネルテーブルに設定された各ブルートゥースチャネルの使用可否状況の内容に応じて更新される。また、電話制御装置1から電話端末2へ通知されたミニマムチャネル数は、当該電話端末2内の無線モジュールのミニマムチャネル数に反映され、アダプティブ周波数ホッピング方式に基づき変化する使用可チャネルの数の下限値として用いられる。
【0032】
制御部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14のプログラム14Pを読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラム14Pとを協働させて各種機能手段を実現する機能部である。
制御部15で実現される主な機能手段としては、呼制御手段15A、チャネル管理手段15B、通信状況確認手段15C、およびミニマムチャネル数調整手段15Dがある。
【0033】
呼制御手段15Aは、外線I/F部11および通信回線10を介して通信網(図示せず)さらには相手電話機(図示せず)と各種データをやり取りすることにより通信回線10を用いた通話路の接続や切断を行う機能と、内線I/F部12および内線伝送路5を介して電話端末2と各種制御コマンドや操作情報をやり取りすることにより電話端末2の制御を行う機能と、スイッチ部13を制御して外線I/F部11と内線I/F部12との間の通話パスを切り替えることにより、電話端末2と通信回線10とを任意に交換接続する機能を有している。
【0034】
チャネル管理手段15Bは、各電話端末2から内線伝送路5を介して取得したそれぞれのチャネル使用状況を当該電話端末2に対応するチャネル管理情報14Bとして記憶部14へ保存する機能と、ミニマムチャネル数調整手段15Dにより調整されたチャネル管理情報14B内のミニマムチャネル数を内線伝送路5を介して当該電話端末2へ通知して設定する機能とを有している。
【0035】
通信状況確認手段15Cは、電話端末2のうち無線通信チャネルを用いて通話を行う通話端末2Aでの無線通信状況を確認する機能を有している。具体的には、各電話端末2のうち通話状態にある電話端末を示す通話端末数を、記憶部14に保存されている通話端末のチャネル管理情報14Bから計数した通話端末の使用可能チャネル数で除算することにより通信状況指数を算出する。
ミニマムチャネル数調整手段15Dは、通信状況確認手段15Cにより確認された電話端末2での無線通信状況に基づいて通話端末2Aのミニマムチャネル数を調整する機能を有している。
【0036】
[電話端末]
次に、図2を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置とともに用いられる電話端末の構成について詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施の形態にかかる電話システムで用いられる電話端末の構成を示すブロック図である。
電話端末2は、図2に示すように、内線伝送路5を介して電話制御装置1に収容されているとともに、無線回線4を介してハンドセット3と接続されている電話機である。この電話端末(マスタ側)2は、ブルートゥース(登録商標:Bluetooth)無線通信方式のアダプティブ周波数ホッピング(AFH:Adaptive Frequency Hopping)方式に基づいて、無線回線4を介してハンドセット(スレーブ側)3と無線データ通信を行うことにより、ハンドセット3の制御や音声データをやり取りする。
【0037】
電話端末2には、内線インターフェース部(以下、内線I/F部という)20、音声処理部21、表示部22、操作入力部23、記憶部24、制御部25、および無線モジュール26が設けられている。
内線I/F部20は、内線伝送路5を介して電話制御装置1とデータ伝送を行う回路部からなり、電話制御装置1との間で制御コマンドや音声データなどの各種データをやり取りする機能を有している。
【0038】
音声処理部21は、専用の信号処理回路からなり、音声処理部21に設けられているマイクやスピーカ(図示せず)で入出力される音声信号や無線モジュール26で送受信される音声データと内線I/F部20で送受信される音声データを相互に変換(符号化/復号化)処理を行う機能と、内線I/F部20を介して電話制御装置1から受信した各種制御データに基づき着信音などの各種音声信号を出力する機能とを有している。
【0039】
表示部22は、LCDやLEDなどの表示装置からなり、制御部25からの指示に応じて各種可視表示を行う機能を有している。
操作入力部23は、操作キーなどの操作入力装置からなり、ユーザの操作を検出して制御部25へ出力する機能を有している。
【0040】
記憶部24は、メモリなどの記憶装置からなり、制御部25での処理動作に用いる各種処理情報やプログラム24Pを記憶する機能を有している。プログラム24Pは、予め外部装置や記録媒体から読み込まれて記憶部24へ格納される。
記憶部24で記憶される主な処理情報としては、チャネル管理情報24Aがある。チャネル管理情報24Aは、当該電話端末2の無線データ通信で使用する各ブルートゥースチャネルの使用可否とミニマムチャネル数を示す情報である。
【0041】
図4は、チャネル管理情報の構成例である。ここでは、各チャネル番号のチャネルの使用可否状況(可/不可)とミニマムチャネル数とが登録されている。このチャネル管理情報24Aにおける各チャネルの使用状況は、無線モジュール26でのアダプティブ周波数ホッピング方式に基づく無線通信制御により、後述する無線モジュール26内のチャネルテーブル29Aに設定された各ブルートゥースチャネルの使用可否状況に応じて、制御部25により更新される。また、電話制御装置1からの要求に応じて、制御部25によりチャネル管理情報24Aのミニマムチャネル数が更新され、無線モジュール26内のミニマムチャネル29Bに反映される。
【0042】
制御部25は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部24のプログラム24Pを読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラムとを協働させ各種機能手段を実現する機能を有している。
主な機能手段としては、呼制御手段25Aおよびチャネル管理手段25Bがある。
【0043】
呼制御手段25Aは、内線伝送路5および内線I/F部20を介して電話制御装置1から各種制御コマンドを受信する機能と、これら制御コマンドに基づき音声処理部21を制御するとともに無線モジュール26から無線回線4を介してハンドセット3へ制御コマンドを送信することによりハンドセット3の動作を制御する機能と、無線回線4および無線モジュール26を介してハンドセット3から操作情報を受信する機能と、操作入力部23からユーザ操作を検出する機能と、これら操作情報を内線I/F部20および内線伝送路5を介して電話制御装置1へ送信する機能とを有している。
【0044】
チャネル管理手段25Bは、無線モジュール26から読み取ったチャネル使用可否状況に基づきチャネル管理情報24Aを更新する機能と、内線伝送路5および内線I/F部20を介して電話制御装置1から受信した転送要求に応じて、チャネル管理情報24Aを内線I/F部20から内線伝送路5を介して電話制御装置1へ送信する機能と、電話制御装置1から受信した設定要求に応じて、当該設定要求に含まれている新たなミニマムチャネル数を記憶部24のチャネル管理情報24Aへ保存するとともに、そのミニマムチャネル数を無線モジュール26へ反映する機能とを有している。
【0045】
無線モジュール26は、ブルートゥース無線通信方式に準拠した無線インターフェースを提供する機能モジュールであり、個々の機能を実現する回路部や処理部が電話端末2を構成する1つの構成要素として一体に実装されている。
この無線モジュール26には、無線送受信部27、モジュール制御部28、およびモジュール記憶部29が設けられている。
【0046】
無線送受信部27は、ブルートゥース無線通信方式に準拠して無線信号を送受信する回路部であり、ハンドセット3との間で無線信号を送受信することにより無線回線4を介した無線データ通信を行う機能を有している。この際、無線送受信部27は、アダプティブ周波数ホッピング方式に基づき2.4GHz帯に1MHz間隔で設けた79個または23個のチャネルをモジュール制御部28からの指示に基づき周波数ホッピングを繰り返し、その周波数ホッピングで選択したチャネルを用いてハンドセット3とデータ通信を行うとともに、パケット送受信エラーが任意のチャネルで発生した場合、使用可能チャネル数を順次使用不可と設定する。また使用可能チャネル数がミニマムチャネル数を下回った場合、使用不可チャネルのいずれかを使用可と設定することにより使用可能チャネル数をミニマムチャネル数以上に保持する。
【0047】
モジュール記憶部29は、メモリなどの記憶装置からなり、モジュール制御部28での処理動作に用いる各種処理情報を記憶する機能を有している。モジュール記憶部29で記憶する主な処理情報として、チャネルテーブル29Aとミニマムチャネル数29Bとがある。
チャネルテーブル29Aは、周波数ホッピング・スペクトラム拡散変調方式で順次選択する各チャネルの使用可否を管理するための処理情報であり、チャネル番号ごとに当該チャネルの使用可否情報が対応付けて登録されている。ミニマムチャネル数29Bは、モジュール制御部28で使用可能チャネル数を保持する際の下限値となるチャネル数であり、予めモジュール制御部28により設定される。
このほか、モジュール記憶部29には、モジュール制御部28に読み込まれて実行されることにより各種機能手段を実現するためのプログラムなどを予め格納しておいてもよい。
【0048】
モジュール制御部28は、CPUとその周辺回路からなるハードウェアとこれらCPUあるいは周辺回路に設けたメモリ(図示せず)やモジュール記憶部29に予め格納されているプログラムとを協働させることにより、ブルートゥース無線通信方式に準拠して無線送受信部27を制御するための機能手段を実現する。
【0049】
このモジュール制御部28で実現される主な機能手段としては、通信制御手段28Aがある。
通信制御手段28Aは、無線送受信部27を制御してハンドセット3と制御部25との間のデータ通信を制御する機能と、アダプティブ周波数ホッピング方式に基づき、ハンドセット3との間でデータ通信開始時に取り決めたチャネル選択順に基づき各チャネルのうちからいずか1つを順次選択して無線送受信部27へ指示する機能とを有している。この際、通信制御手段28Aは、モジュール記憶部29のチャネルテーブル29Aを参照し、チャネル選択順にしたがって選択される次のチャネルが使用不可の場合、後続する使用可のチャネルまでスキップし、その使用可のチャネルを選択する。
【0050】
このほか、通信制御手段28Aは、データ通信時にアダプティブ周波数ホッピング方式で選択したチャネルでのハンドセット3との通信状況を制御部25へ通知する機能と、制御部25からの指示に応じてモジュール記憶部29のミニマムチャネル数29Bを任意の値に更新する機能と、制御部25からの指示に応じてモジュール記憶部29のチャネルテーブル29Aをハンドセット3へ通知して更新する機能とを有している。
【0051】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置の動作について説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置の動作としてミニマムチャネル数調整処理を示すフローチャートである。
ここでは、通信回線10からの着信時に、ユーザ操作に応じて電話端末2により応答してハンドセット3を用いた音声通話が開始される場合を例として説明する。
【0052】
電話制御装置1は、通信回線10を介して通信網(図示せず)からの着信を外線I/F部11で検出した場合、制御部15は、呼制御手段15Aにより、内線I/F部12から内線伝送路5を介して電話端末2へ着信通知コマンドを送信する。
電話端末2の制御部25は、内線I/F部20を介して着信通知コマンドを受信した場合、呼制御手段25Aにより、音声処理部21を制御して着信音をスピーカ(図示せず)から送出するとともに表示部22のLEDを制御して着信表示を行う。また、呼制御手段25Aは、無線モジュール26から無線回線4を介してハンドセット3へ着信音の送出や着信表示を指示する制御コマンドを送信し、ハンドセット3により着信表示を行う。
【0053】
その後、電話端末2において、ユーザにより応答操作が行われた場合、制御部25は、呼制御手段25Aによりその応答操作を検出し、その操作情報を内線I/F部20および内線伝送路5を介して電話制御装置1へ送信する。
電話制御装置1の制御部15は、内線I/F部12を介して電話端末2から応答操作を示す操作情報を受信し、呼制御手段15Aにより、その応答操作に応じてスイッチ部13を制御して外線I/F部11の各音声パスのうち着信検出された通信回線10の音声パスと、内線I/F部12の各音声パスのうち応答操作が通知された電話端末2の音声パスとを接続する。
【0054】
また、呼制御手段15Aは、内線I/F部12から内線伝送路5を介して電話端末2へ、音声通話の開始を指示する通話開始コマンドを送信するとともに、当該通信回線10と電話端末2が通話状態となったことを記憶部14の呼制御情報14Aへ保存する。
電話端末2の制御部25は、内線I/F部20を介して電話制御装置1から通話開始コマンドを受信した場合、呼制御手段15Aにより、音声処理部21を制御するとともに、無線モジュール26から無線回線4を介してハンドセット3へ制御コマンドを送信する。これにより、音声処理部21により、無線モジュール26で送受信される音声データと内線I/F部20で送受信される音声データが相互に変換され、無線回線4を介したハンドセット3での音声通話が開始される。
【0055】
このようにして、電話端末2のいずれかで無線回線4を用いた音声通話が開始される場合、制御部15は、図5のミニマムチャネル数調整処理を実行する。
まず、制御部15は、通信状況確認手段15Cにより、記憶部14の呼制御情報14Aを参照して、現在通話状態にある電話端末2の台数すなわち通話端末数を取得する(ステップ100)。この際、通話端末数には、通話が開始された通話端末2Aも含まれる。次に、通信状況確認手段15Cは、記憶部14のチャネル管理情報14Bから通話端末2Aでの使用可能チャネル数を計数し、通話端末数を使用可能チャネル数で除算することにより通話端末2Aの通信状況指数を算出する(ステップ101)。この際、チャネル管理情報14Bは、チャネル管理手段15Bにより、逐次、各電話端末2から取得され更新されているものとする。
【0056】
この通信状況指数は、任意の電話端末2における1つの使用可能チャネルがどの程度の音声通話を負担しているかを示す指数である。ブルートゥース無線通信方式では、予め設定された、搬送波周波数の異なる複数の無線通信チャネルのうち、他の機器からの無線電波の干渉がない使用可能なチャネルを各無線モジュールで共用して無線通信を行う。
ここで、データパケットを利用した音声通話や動画通信などのストリーミング系の無線通信では、データ量が多いためデータパケットを間断なく順次転送する必要があり、このようなストリーミング系の無線通信をブルートゥース無線通信方式で行う場合、その無線通信が終了するまでの期間中は、常に使用可能チャネルのいずれかが使用されることになり、チャネル使用頻度が大きく上昇する。
【0057】
本実施の形態は、通話端末2Aの通信状況指数を求めることにより、このようなストリーミング系の無線通信によるチャネル使用頻度の上昇、すなわち音声通話による通信状況の悪化を判定している。通話端末2Aにおける通信状況は、音声通話の数すなわち通話端末数が増加すれば使用可能チャネル数が減るため、アダプティブ周波数ホッピングで選択候補となるチャネル数が低減して、電話端末2相互間でチャネル選択時の衝突が発生しやすくなり、音声通話中のノイズや音切れが発生しやすくなる。また、電話端末2以外の機器との電波干渉により使用可能チャネル数が低減する場合もあり、同様の要因で音声通話中のノイズや音切れが発生しやすくなる。通話状況指数は、通話端末数が増加すればその指数値が上昇して通信状況の悪化を示し、使用可能チャネル数が低減した場合もその指数値が上昇して通信状況の悪化を示す。
【0058】
通信状況確認手段15Cは、このようにして求めた通話端末2Aの通信状況指数に基づいて、この通信状況指数に応じたミニマムチャネル数を導出する(ステップ102)。この際、通信状況確認手段15Cは、通話端末2Aの無線通信状態の悪化に応じてミニマムチャネル数を増加させればよい。これにより、通話端末2Aでより多くの使用可能チャネル数が確保され、通話端末2Aでの音声通話の品質低下が抑制される。
ミニマムチャネル数については、通信状況指数とミニマムチャネル数との関係を示す関数や判断式、さらにはテーブルなどを用いて、通信状況指数に応じたミニマムチャネル数を導出すればよい。また、実際のミニマムチャネル数については、電話端末2で行う音声通話でのチャネル使用状況や、音声通信に必要とする通信品質に応じて適宜決定すればよい。
【0059】
チャネル管理手段15Bは、このようにして得られた通話端末2Aの新たなミニマムチャネル数を、記憶部14のチャネル管理情報14Bに設定されている既存のミニマムチャネル数と比較する(ステップ103)。
ここで、両者が異なる場合は(ステップ103:YES)、新たなミニマムチャネル数を記憶部14のチャネル管理情報14Bに設定するとともに、その新たなミニマムチャネル数を含む設定要求を内線I/F部12および内線伝送路5を介して通話端末2Aへ通知し(ステップ104)、一連のミニマムチャネル数調整処理を終了する。
【0060】
この後、通話端末2Aの制御部25は、電話制御装置1から受信した設定要求に応じて、チャネル管理手段25Bにより、当該設定要求に含まれている新たなミニマムチャネル数を記憶部24のチャネル管理情報24Aへ保存するとともに、その新たなミニマムチャネル数を無線モジュール26のミニマムチャネル数29Bに反映する。
これにより、無線モジュール26での使用可能チャネル数の下限値が調整され、アダプティブ周波数ホッピング方式に基づき使用可能チャネル数がミニマムチャネル数以上に保持される。
【0061】
このように、本実施の形態は、電話制御装置1の通信状況確認手段15Cにより、無線通信チャネルを用いた電話端末2での無線通信状況を確認し、この無線通信状況に応じてミニマムチャネル数調整手段15Dにより電話端末2のミニマムチャネル数を調整し、チャネル管理手段15Bにより、調整後の新たなミニマムチャネル数を当該電話端末2へ通知するようにしたので、電話端末2の無線通信状況に応じて電話端末2のミニマムチャネル数、すなわちアダプティブ周波数ホッピング方式に基づき選択できるチャネル候補数を調整することができる。
【0062】
複数の電話端末を通信回線に交換接続する電話システムにおいて、電話端末(親機)とハンドセット(子機)の間をブルートゥース無線通信方式で接続する場合、これら電話端末が用いられる同一無線エリアでストリーミング系無線通信である音声通話が同時期に並行して行われる可能性が高い。
このため、間欠的にデータパケットを送受信し、転送エラー発生に応じて当該データパケットを再送可能な一般的な無線データ通信と比較して、長期間に渡りブルートゥースチャネルの使用頻度が上昇し、チャネル衝突が発生しやすくなる。また、音声通話では、無線通信状況が悪化してデータパケットをスムーズに送受信できなくなると音声の途切れやノイズが発生するため、ユーザはより顕著に通信品質の悪化を感じてしまう。
【0063】
これに対して、本実施の形態を適用して、無線通信チャネルを用いた電話端末2での無線通信状況の悪化に応じて電話端末2のミニマムチャネル数を増加させることにより、無線モジュール26のアダプティブ周波数ホッピング方式に基づき、電話端末2の使用可能チャネル数がミニマムチャネル数以上に保持される。これにより、同一無線エリアで複数の音声通話が同時に行われる場合でも、ある程度の使用可能チャネル数を確保することができる。したがって、無線通信状況が悪化してデータパケットをスムーズに転送できなくなった場合に発生する音声の途切れやノイズを低減でき、結果としてユーザが感じる通信品質の低下をある程度抑制でき、さらには改善することも可能となる。
【0064】
また、本実施の形態では、無線通信チャネルを用いた通話端末2Aでの無線通信状況を確認する際、通信状況確認手段15Cにより、各電話端末2のうち通話状態にある電話端末を示す通話端末数を、記憶部14に保存されている通話端末2Aのチャネル管理情報から計数した通話端末2Aの使用可能チャネル数で除算することにより通信状況指数を算出し、この通信状況指数が所定の判定値を超える場合は通話端末2Aの無線通信状況が悪化していると判定するようにしたので、電話システム全体での通話状況に基づいて通話端末2Aの無線通信状況を電話制御装置1により的確かつ容易に判定することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、通話端末2Aでの音声通話を開始する際、図4のミニマムチャネル数調整処理を実行するようにしたので、通信品質の低下が顕著となる音声通話を開始する際、十分な使用可能チャネル数を得ることができ、通信品質の悪化が発生する事前に対応を行うことができる。また、ミニマムチャネル数調整処理を常時実行する場合と比較して、処理実行を必要最小限に留めることができ、当該電話制御装置1の制御部15での処理負担を軽減できる。
なお、ミニマムチャネル数調整処理を実行するタイミングについては、音声通話の開始時点に限定されるものではなく、例えば制御部15での処理能力に余裕がある場合には、音声通話の有無に関係なく常時実行しておいてもよい。
【0066】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる電話制御装置について説明する。
第1の実施の形態では、通信状況確認手段15Cにより、無線通信チャネルを用いた通話端末2Aでの無線通信状況を確認する際、通話端末数を通話端末2Aの使用可能チャネル数で除算して得られた通信状況指数に基づき無線通信状況が悪化していると判定する場合について説明した。
【0067】
音声通話についてユーザが主観的に感じる通信品質は、ユーザごとの個人的なばらつきや音声通話でやり取りする内容や状況によるばらつきなど、各種の要因により通信品質が左右される。
本実施の形態では、通話端末2Aでのユーザ操作に応じて、通信状況確認手段15Cにより、無線通信状況が悪化していると判定することにより、ユーザの意図に応じて無線通信状況の悪化を判定しうるようにしたものである。
【0068】
すなわち、電話制御装置1の制御部15は、所定のユーザ操作を示す操作情報を通話端末2Aから内線伝送路5を介して受信した場合、通信状況確認手段15Cにより、当該通話端末2Aで無線通信状況が悪化していると判定し、図5のミニマムチャネル数調整処理を実行する。この際のユーザ操作は、無線通信状況の悪化あるいは改善を示す操作であってもよく、使用可能チャネル数の増加を要求する操作であってもよく、音声通話の開始を指示する操作であってもよい。
これにより、ユーザの意図に応じた任意の状況やタイミングで、当該通話端末2Aのミニマムチャネル数を調整することができ、無線通信状況の悪化に応じて通話端末のミニマムチャネル数を増加させるにより、音声通話についてユーザが主観的に感じる通信品質をリアルタイムで改善することができる。
【0069】
なお、通信状況確認手段15Cにおいて、通話端末2Aからのユーザ操作に応じて無線通信状況が悪化していると判定する際、記憶部14の呼制御情報14Aを参照して、通話端末2Aでの音声通話の実施を確認し、通話端末2Aでの音声通話の開始時または通話中にのみ、上記ユーザ操作に応じて無線通信状況が悪化していると判定するようにしてもよい。これにより無用なミニマムチャネル数調整処理の実施を回避できる。
【0070】
また、本実施の形態では、ユーザ操作が検出された場合に無線通信状況が悪化していると判定する場合を例として説明したが、無線通信状況の悪化判定についてはこれに限定されるものではなく、他の判定方法を用いてもよい。
【0071】
例えば、通信状況確認手段15Cにより、各電話端末2での音声通話の実施有無を監視し、音声通話の実施検出に応じて当該電話端末2での無線通信状況が悪化していると判定するようにしてもよい。この際、音声通話の実施有無については、記憶部14の呼制御情報14Aから取得すればよい。
これにより、音声通話の開始とほぼ同時に自動的に当該電話端末2のミニマムチャネル数を増加することができ、音声通話による通信品質の低下を抑制できる。
【0072】
また、同様にして、音声通話の終了検出に応じて当該電話端末2での無線通信状況が良化していると判定するようにしてもよい。これにより、音声通話の終了とほぼ同時に自動的に当該電話端末2のミニマムチャネル数を低減することができ、音声通話が終了した後の過度のチャネル保持を回避でき、他の通話端末2Aでの通信品質に対する影響を抑制できる。
【0073】
[第3の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる電話端末について説明する。図6は、本発明の第3の実施の形態にかかる電話端末の構成を示すブロック図であり、図2と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。図7は、本発明の第3の実施の形態にかかる電話端末の動作としてミニマムチャネル数調整処理を示すフローチャートである。
【0074】
第1および第2の実施の形態では、本発明を電話システムに適用し、各電話端末2のミニマムチャネル数を電話制御装置1から調整する場合について説明した。本実施の形態では、前述した電話システムに接続される電話端末で、自己のミニマムチャネル数を調整する場合について説明する。
【0075】
本実施の形態にかかる電話端末(図6参照)は、前述した図2と比較して、制御部25に通信状況確認手段25Cとミニマムチャネル数調整手段25Dが追加されている。
通信状況確認手段25Cは、無線通信チャネルを用いて通話を行う当該電話端末2での無線通信状況を確認する機能を有している。具体的には、呼制御手段25Aに問い合わせて、あるいは呼制御手段25Aの呼制御内容を示す記憶部24の呼制御情報(図示せず)を参照して、当該電話端末2での音声通話の有無を確認し、音声通話が行われている場合には無線通信状況が悪化していると判定し、音声通話が行われていない場合には無線通信状況が良化していると判定する。
【0076】
ミニマムチャネル数調整手段25Dは、通信状況確認手段25Cにより確認された当該電話端末2での無線通信状況に基づいて通話端末2Aのミニマムチャネル数を調整する機能を有している。具体的には、通信状況確認手段25Cにより無線通信状況の悪化が確認された場合はミニマムチャネル数を増加させ、無線通信状況の良化が確認された場合はミニマムチャネル数を低減する。
【0077】
制御部25は、定期的に、前述した図7のミニマムチャネル数調整処理を実行する。
まず、通信状況確認手段25Cにより、当該電話端末2で無線回線4を用いた音声通話の有無(開始または終了)に応じて無線通信状況の悪化/良化を確認し(ステップ110)、この無線通信状況に応じたミニマムチャネル数を導出する(ステップ111)。この際、音声通話が行われている場合と音声通話が行われていない場合のミニマムチャネル数を予め設定しておき、無線通信状況の確認結果に基づきいずれかを選択してもよい。
【0078】
チャネル管理手段25Bは、このようにして得られた新たなミニマムチャネル数を、記憶部24のチャネル管理情報24Aに設定されている既存のミニマムチャネル数と比較する(ステップ112)。
ここで、両者が異なる場合は(ステップ112:YES)、新たなミニマムチャネル数を記憶部14のチャネル管理情報14Bに設定するとともに、その新たなミニマムチャネル数を無線モジュール26のミニマムチャネル数29Bへ反映させ(ステップ113)、一連のミニマムチャネル数調整処理を終了する。
【0079】
このように、本実施の形態は、電話端末2の通信状況確認手段25Cにより、無線通信チャネルを用いた当該電話端末2での無線通信状況を確認し、この無線通信状況に応じてミニマムチャネル数調整手段25Dにより電話端末2のミニマムチャネル数を調整し、チャネル管理手段15Bにより、調整後の新たなミニマムチャネル数を無線モジュール26へ設定するようにしたので、電話端末2の無線通信状況に応じて当該電話端末2のミニマムチャネル数、すなわちアダプティブ周波数ホッピング方式に基づき選択できるチャネル候補数を調整することができる。
【0080】
これにより、当該電話端末2と同一無線エリアで複数の音声通話が同時に行われる場合でも、ある程度の使用可能チャネル数を確保することができる。したがって、無線通信状況が悪化してデータパケットをスムーズに転送できなくなった場合に発生する音声の途切れやノイズを低減でき、結果としてユーザが感じる通信品質の低下をある程度抑制でき、さらには改善することも可能となる。
【0081】
また、本実施の形態では、電話システム全体を制御する電話制御装置1に内線伝送路5を介して接続されている各電話端末2にミニマムチャネル数調整機能を設けたので、前述した第1および第2の実施の形態のように電話制御装置1で集中して各電話端末2のミニマムチャネル数を調整する場合と比較して、電話制御装置1の処理負担を軽減できる。
なお、本実施の形態では、電話システムの内線電話機に相当する電話端末2にミニマムチャネル数調整機能を設けた場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、通信網からの通信回線10に直接接続される電話端末(親機)と、無線回線4を介して電話端末に接続されるハンドセット(子機)とからなる単独電話機(親子電話装置)にも前述と同様に適用でき、同様の作用効果が得られる。
【0082】
また、本実施の形態では、無線通信チャネルを用いた電話端末2での無線通信状況を確認する際、当該電話端末2での音声通話の有無に基づき無線通信状況の悪化/良化を判定する場合について説明したが、前述した第2の実施の形態と同様にして、操作入力部23で検出された所定のユーザ操作に応じて無線通信状況の悪化/良化を判定してもよい。
これにより、ユーザの意図に応じた任意の状況やタイミングで、当該電話端末2のミニマムチャネル数を調整することができ、無線通信状況の悪化に応じて通話端末のミニマムチャネル数を増加させるにより、音声通話についてユーザが主観的に感じる通信品質をリアルタイムで改善することができる。
【0083】
[実施の形態の拡張]
以上の各実施の形態では、電話端末2で用いられる無線通信方式がブルートゥース無線通信方式である場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、ブルートゥース無線通信方式と同等のアダプティブ周波数ホッピング方式を用いる無線通信方式であれば、前述と同様にして各実施の形態を適用でき、同様の作用効果が得られる。
また、各実施の形態では、それぞれの実施の形態を個別に実施した場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、各実施の形態を任意に組合せて実施してもよく、それぞれの持つ作用効果を併せ持つ電話システムを実現できる。
【0084】
また、各実施の形態では、ストリーミング系無線通信が音声通話である場合を例として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、電話端末2で通信網(図示せず)から通信回線10を介して映像データを受信し、無線回線4を介して接続されたハンドセット3に代わる表示端末(図示せず)で映像データを再生するという映像通信を行う場合であっても、前述と同様にして各実施の形態を適用でき、使用可能な無線通信チャネル数が低減した場合でも、映像通信の通信品質の低下をある程度抑制でき、さらには改善することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置とその電話システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置とともに用いられる電話端末の構成を示すブロック図である。
【図3】電話制御装置で用いられるチャネル管理情報の構成例である。
【図4】電話端末で用いられるチャネル管理情報の構成例である。
【図5】本発明の第1の実施の形態にかかる電話制御装置のミニマムチャネル数調整処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる電話端末の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態にかかる電話端末のミニマムチャネル数調整処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0086】
1…電話制御装置、10…通信回線、11…外線I/F部、12…内線I/F部、13…スイッチ部、14…記憶部、14A…呼制御情報、14B…チャネル管理情報、15…制御部、15A…呼制御手段、15B…チャネル管理手段、15C…通信状況確認手段、15D…ミニマムチャネル数調整手段、2…電話端末、2A…通話端末、20…内線I/F部、21…音声処理部、22…表示部、23…操作入力部、24…記憶部、24A…チャネル管理情報、24P…プログラム、25…制御部、25A…呼制御手段、25B…チャネル管理手段、25C…通信状況確認手段、25D…ミニマムチャネル数調整手段、26…無線モジュール、27…無線送受信部、28…モジュール制御部、28A…通信制御手段、29…モジュール記憶部、29A…チャネルテーブル、29B…ミニマムチャネル数、3…ハンドセット、4…無線回線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送波周波数の異なる複数の無線通信チャネルからなる無線回線を介してハンドセットと接続する複数の電話端末と、通信網からの通信回線を接続するとともに内線伝送路を介して前記電話端末を収容し、前記電話端末と前記通信回線、または前記電話端末相互間を交換接続することにより前記電話端末での通話を実現する電話制御装置とからなり、前記電話端末は、前記無線通信チャネルを前記電話端末相互間で共用するとともに、当該電話端末における前記各無線通信チャネルの使用可否を示すチャネル管理情報を記憶し、無線通信チャネルのうち前記チャネル管理情報で使用可と設定されている使用可チャネルから所定周期で順次切替選択した無線通信チャネルを用いて当該電話端末のハンドセットと無線通信を行い、前記選択した無線通信チャネルが電波干渉により使用できない場合には当該無線通信チャネルを使用不可チャネルとして前記チャネル管理情報に設定するとともに、使用可チャネルの数を前記ミニマムチャネル数以上に保持する電話システムで用いられる電話制御装置であって、
前記各電話端末から前記内線伝送路を介して取得したチャネル使用状況を当該電話端末に対応付けて記憶部へ保存する機能と、前記記憶部から読み出した前記電話端末のミニマムチャネル数を前記内線伝送路を介して当該電話端末へ通知して設定する機能とを有するチャネル管理手段と、
前記チャネル使用状況に基づいて前記電話端末のうち前記無線通信チャネルを用いて通話を行う通話端末での無線通信状況を確認する通信状況確認手段と、
前記通信状況確認手段により確認された無線通信状況に応じて前記通話端末のミニマムチャネル数を調整するミニマムチャネル数調整手段と
を備えることを特徴とする電話制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電話制御装置において、
前記ミニマムチャネル数調整手段は、前記通信状況確認手段での無線通信状況の悪化に応じて前記通話端末のミニマムチャネル数を増加させることを特徴とする電話制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電話制御装置において、
前記通信状況確認手段は、前記各電話端末のうち通話状態にある電話端末を示す通話端末数を、前記記憶部に保存されている前記通話端末のチャネル管理情報から計数した前記通話端末の使用可能チャネル数で除算することにより通信状況指数を算出し、
前記ミニマムチャネル数調整手段は、前記通信状況指数の値に応じて前記通話端末のミニマムチャネル数を調整することを特徴とする電話制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電話制御装置において、
前記通信状況確認手段は、前記通話端末から前記内線伝送路を介して通知された所定の操作入力に応じて前記無線通信状況が悪化したと判定することを特徴とする電話制御装置。
【請求項5】
搬送波周波数の異なる複数の無線通信チャネルについてそれぞれの使用可否を示すチャネル管理情報を記憶し、無線通信チャネルのうち前記チャネル管理情報で使用可と設定されている使用可チャネルから所定周期で順次切替選択した無線通信チャネルを用いてハンドセットと無線通信を行い、前記選択した無線通信チャネルが電波干渉により使用できない場合には当該無線通信チャネルを使用不可チャネルとして前記チャネル管理情報に設定するとともに、使用可チャネルの数を前記ミニマムチャネル数以上に保持する電話端末であって、
前記無線回線を介して接続されたハンドセットを用いた音声通話の有無に基づき無線通信状況を確認する通信状況確認手段と、
前記通信状況確認手段により確認された無線通信状況に応じて前記通話端末のミニマムチャネル数を調整するミニマムチャネル数調整手段と
を備えることを特徴とする電話端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−208461(P2007−208461A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22977(P2006−22977)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】