説明

電鋳条件決定装置、電鋳装置、電鋳条件決定方法及び電鋳方法

【課題】めっき皮膜の内部応力を所定値に保ちながらめっきを行えるようにする。
【解決手段】準備槽20の3組の陰極及び陽極にそれぞれ1A/dm2、5A/dm2、10A/dm2の電流密度で電流を同時に供給してニッケル電鋳を行う。100秒経過後、ひずみゲージ24で測定されたひずみ量に基いてめっき皮膜の内部応力をひずみ測定器23で算出し、算出結果をコンピュータ25へ出力する。コンピュータ25はテーブルを用いてめっき皮膜の内部応力がゼロとなる電流密度を決定し、決定された電流密度に対応する信号を整流器15に出力する。本槽10ではめっき皮膜の内部応力がゼロとなる電流密度として電流を陰極及び陽極に供給してニッケル電鋳を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電鋳条件決定装置、電鋳装置、電鋳条件決定方法及び電鋳方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の微細化、高機能化に伴い電子部品に施されるめっき皮膜に高い品質、性能が要求されるようになった。
【0003】
例えば、厚さ数μmの薄膜部材にめっきを施す場合、めっき皮膜に内部応力が発生すると、この内部応力によって薄膜部材がそる。そりを少なくするためには、めっき析出時にめっき皮膜に生じる内部応力を減少させる必要がある。
【0004】
めっき皮膜の内部応力を測定する方法としては、例えばひずみゲージを用いた測定方法が知られている(特開2005−281803号公報参照)。この測定方法によれば、めっき析出時にリアルタイムでめっき皮膜の内部応力を確認することができる。
【特許文献1】特開2005−281803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の測定方法では、製品の製造時のめっきを行うときにめっき皮膜の内部応力を確認する方法ではなく、製品の製造前に試験的にめっきを行ったときのめっき皮膜の内部応力を確認している方法にすぎない。したがって、この方法を実施して得られた結果を製品を製造するときのめっき液を管理するデータとして使用することはできるが、めっき皮膜の内部応力を正確に測定してめっき皮膜のそりを減少させることは難しい。
【0006】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題はめっき皮膜の内部応力を所定値に保ちながらめっきを行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、めっき液を貯留する第1のめっき槽と、前記第1のめっき槽のめっき液に浸漬され、対応する陰極及び陽極間でそれぞれ異なる電流密度で電流が供給される、ひずみゲージが設けられた複数の第1の陰極及び複数の第1の陽極と、前記各ひずみゲージで測定されたひずみ量に基いて計算されためっき皮膜の応力値が所定値になる電流値を決定する電流値決定手段とを備えていることを特徴とする電鋳条件決定装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の電鋳条件決定装置において、前記電流値決定手段はコンピュータであり、前記所定値はゼロであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2記載の電鋳条件決定装置において、前記第1の陰極の数は少なくとも3以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載の電鋳条件決定装置において、前記ひずみゲージはパルス電源に接続されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の電鋳条件決定装置において、前記めっき液はスルファミン酸ニッケル溶液であることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載の電鋳条件決定装置と、前記第1のめっき槽とパイプを介して連結された第2のめっき槽と、前記第2のめっき槽のめっき液に浸漬される第2の陰極及び第2の陽極と、前記電流値決定手段で決定された電流値で電流を前記第2の陰極及び前記第2の陽極に供給する電源装置とを備えていることを特徴とする電鋳装置である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、第1のめっき槽のめっき液に浸漬される複数の第1の陰極及び複数の第1の陽極の対応する陰極及び陽極間でそれぞれ異なる電流密度で電流を供給し、前記複数の第1の陰極及び複数の第1の陽極のうちの前記複数の第1の陰極にそれぞれ設けられたひずみゲージで測定されたひずみ量に基いてめっき皮膜の応力値を計算する応力値計算工程と、前記応力値が所定値になる電流値を決定する電流値決定工程とを備えていることを特徴とする電鋳条件決定方法である。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載の電鋳条件決定方法において、前記応力値計算工程の前に、スルファミン酸ニッケル溶液からなる前記めっき液に浸漬された前記第1の陰極及び第1の陽極のそれぞれに電流密度1〜10A/dm2 の範囲内の異なる電流密度で電流を供給する電流供給工程を備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項7又は8記載のいずれか1項記載の電鋳条件決定方法において、前記電流値決定工程で決定された電流値の電流を前記第1の陰極及び第1の陽極に供給した後、その逆電流を前記第1の陰極及び第1の陽極に供給する逆電解工程を備えていることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜9のいずれか1項記載の電鋳条件決定方法と、第2のめっき槽のめっき液に浸漬される第2の陰極及び第2の陽極に、前記電流値決定工程で決定された電流値で電流を供給して電鋳を行う電鋳工程を備えていることを特徴とする電鋳方法である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、めっき皮膜の内部応力を所定値に保ちながらめっきを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は準備槽と本槽との関係を説明する概念図である。
【0020】
この電鋳装置は本槽(第2のめっき槽)10と準備槽(第1のめっき槽)20とを備えている。本槽10と準備槽20とはパイプ40を介して連結されている。そのため、本槽10と準備槽20との間をめっき液が流通でき、本槽10と準備槽20とで同じ電鋳条件で電鋳を行うことができる。
【0021】
図2(a)は電鋳条件決定装置の縦断面を示す概念図、図2(b)は電鋳条件決定装置の横断面を示す概念図である。図2において、ひずみゲージ24の電源の図示は省略されている。
【0022】
電鋳条件決定装置5は準備槽20と陰極(第1の陰極)21と陽極(第1の陽極)22とひずみゲージ24と直流電源27とひずみ測定器23とコンピュータ(電流値決定手段)25とを備えている。
【0023】
準備槽20はめっき液26を貯留する。めっき液26は例えばスルファミン酸ニッケル溶液である。
【0024】
陰極21及び陽極22とはめっき液26中に3枚ずつ対向して浸漬されている。陰極21と陽極22とはそれぞれ電線Wrを介して直流電源27に接続されている。
【0025】
陰極21は例えばニッケル板である。各陰極21の表面にはひずみゲージ24がそれぞれ専用の接着剤で貼り付けられている。ひずみゲージ24は機械的な微小変化であるひずみを電気信号として検出する素子であり、薄い電気絶縁物のベース上に格子状の抵抗線又はフォトエッチング加工した抵抗箔であり、引出線とともに陰極21に貼り付けられる。ひずみゲージ24は例えばホイートストンブリッジ回路(図示せず)を備える。
【0026】
次に、ひずみゲージ24によるひずみ量を計測する原理を説明する。
【0027】
ひずみ量は1式で定義される。
【0028】
ε=ΔL/L=(ΔR/R)/K 1式
ここで、
ε:ひずみ量
L:抵抗線の長さ
ΔL:外力(ひずみ力)を受けたときの抵抗線の長さの変化量
R:ゲージ抵抗
ΔR:外力を受けたときの抵抗変化量
K:ゲージ率
【0029】
上述のように長さに比例したひずみゲージ24の抵抗変化量は電気的なホイートストンブリッジ回路によって差動電圧として計測される。ホイートストンブリッジ回路によれば長さを100万分の1の変化レベルで測定することができる。
【0030】
ホイートストンブリッジ回路の出力電圧は2式で表される。
【0031】
e=[(R1・R3−R2・R4)/{(R1+R2)(R3+R4)}]V 2式
ここで、
e:出力電圧
V:入力電圧
R1:ひずみゲージの抵抗値
R2,R3,R4:固定抵抗値
ここで、R=R1=R2=R3=R4とする。
【0032】
ひずみゲージ24に外力が加わり、ひずみゲージ24の抵抗値RがR+ΔRになったとき、出力電圧eの変化分Δeは3式で表される。
【0033】
Δe={ΔR/(4R+2ΔR)E 3式
ΔR≪Rのとき
Δe=(ΔR/4R)E 4式
4式から
ΔR=(Δe・4R)/E 5式
【0034】
5式を1式に代入することによってひずみ量εを計測することができる。
【0035】
陽極22として、精錬ニッケルチップ28を入れたチタンメッシュ製のバスケットが用いられる。金属チタンは酸化保護膜を有し、溶液へ直接電流を導くことはできないが、バスケット内にニッケルチップ28が入ると、ニッケルチップ28は酸化膜を介してチタンと導通するので、ニッケルチップ28の溶解が可能になる。ニッケルチップ28の溶解に伴ってニッケルチップ28がバスケット内に補充される。
【0036】
ひずみ測定器23はひずみゲージ24で計測されたひずみ量をモニタし、ひずみ量εからめっき皮膜の内部応力を算出する。
【0037】
ところで、電鋳の際、電流密度はめっき皮膜の内部応力に影響を与える。電流密度とめっき皮膜の内部応力との間には電流密度が大きくなるにしたがって内部応力が圧縮応力から引張応力に変化する関係がある。この電流密度とめっき皮膜の内部応力との関係はコンピュータ25に例えばテーブルとして記憶されている。なお、横軸を電流密度とし、縦軸をめっき皮膜の内部応力としたとき、電流密度とめっき皮膜の内部応力とは右肩上がりの曲線で表される関係にある。
【0038】
コンピュータ25はひずみ測定器23で算出されためっき皮膜の内部応力からテーブルを用いて例えば応力がゼロとなる電流密度(電流値)を決定する。
【0039】
図3は電鋳装置の構成を示す概念図であり、図2と共通する部分は同一符号を付してその説明を省略する。なお、図3では陰極21、陽極22、直流電源27等の図示は省略されている。
【0040】
この電鋳装置は電鋳条件決定装置5と整流器(電源装置)15と本槽10とを備えている。
【0041】
3つのひずみゲージ24にはそれぞれパルス電源29が接続されている。パルス電源29は安定化回路(図示せず)を備え、ひずみゲージ24に変動の少ない電流を供給することができる。
【0042】
本槽10には準備槽20と同じ特性のめっき液(図示せず)が貯留され、めっき液には図示しない陰極(第2の陰極)及び陽極(第2の陽極)が浸漬されている。陰極及び陽極には整流器15からコンピュータ25で決定された電流密度の電流が供給される。
【0043】
次に上記電鋳装置を用いた電鋳方法を図2〜4を参照して説明する。
【0044】
図4はこの発明の第1実施形態に係る電鋳方法を説明するタイミングチャートである。なお、図4(a)は準備槽でのめっきのタイミングチャートを示し、図4(b)は本槽でのめっきのタイミングチャートを示す。また、縦軸及び横軸はそれぞれ電流及び時間を示す。
【0045】
本槽10でめっきされる対象物(図示せず)は、微細パターンが施された直径300mmの円盤状のガラス板にニッケルスパッタで導電膜を付けたものである。ガラス板の周縁部には環状の陰極が設けられている。
【0046】
準備槽20では、まず、パルス電源29をオンにして、ひずみゲージ24に電流を供給する。
【0047】
ひずみ測定器23でひずみ量をモニタし、ひずみゲージ24の出力が安定した時点で、準備槽20の3組の陰極21及び陽極22に、それぞれ1A/dm2、5A/dm2、10A/dm2の電流密度で電流を同時に供給して、ニッケル電鋳を行う(電流供給工程)。
【0048】
陰極21及び陽極22に電流を供給し始めてから100秒が経過した後、ひずみ測定器23はひずみゲージ24で測定されたひずみ量に基いてめっき皮膜の内部応力を算出し(応力値計算工程)、算出結果をコンピュータ25へ出力する。コンピュータ25はテーブルを用いてめっき皮膜の内部応力がゼロとなる電流密度を決定し(電流値決定工程)、決定された電流密度に対応する信号を整流器15に出力する。
【0049】
一方、本槽10では、陰極21及び陽極22に電流を供給し始めてから100秒が経過した後、コンピュータ25で決定された電流密度で電流を陰極及び陽極に供給して製品のニッケル電鋳(電解処理)を20秒間行う(電鋳工程)。
【0050】
また、陰極21及び陽極22に電流を供給し始めてから100秒が経過した後、準備槽20では直流電源27の極性を反転させて逆電解処理を10秒間行ない、陰極21に付着したニッケル電鋳の一部を剥離する(逆電解工程)。陰極21に析出するめっき皮膜が厚くなる(例えば100μm以上)と、徐々にめっき皮膜のそり量が変わらなくなり、見かけ上の応力値が小さくなることを防止するためである。なお、めっき皮膜の内部応力とそり量との関係を6式に示した。
【0051】
σ=Eb2δ/{3(1−γ)c2d} 6式
ここで、
σ:めっき皮膜内部応力
E:ひずみゲージが設けられた陰極のヤング率
b:陰極の厚さ
δ:陰極のそり量
γ:陰極のポアソン比
c:陰極のめっきされる部分の長さ
d:めっき皮膜の厚さ
【0052】
その後、準備槽20では再度直流電源27の極性を反転させる(元の極性に戻す)。準備槽20の3組の陰極21に、それぞれ1A/dm2、5A/dm2、10A/dm2の電流密度で電流を再び供給し、陰極21のニッケル電鋳を10秒間行なう。
【0053】
このとき、ひずみ測定器23で算出されためっき皮膜の内部応力がコンピュータ25に入力される。コンピュータ25はテーブルを用いて応力がゼロとなる電流密度を再度決定し、この新たに決定された電流密度に対応する信号を整流器15に送って対象物のニッケル電鋳を行う。
【0054】
以後、準備槽20では10秒間の剥離と10秒間の電鋳とを繰り返し、本槽10では20秒ごとに新たに決定された信号密度の電流で電鋳を行なう。
【0055】
所定時間(例えば4A/dm2の電流密度で最適な条件の場合、62.5hr)経過後、厚さ3mmのめっき皮膜を有するニッケル電鋳品が得られた。ニッケル電鋳品の転写面を表面形状測定装置(図示せず)で測定したところ、中心部の直径100mmの範囲内ではほとんどそりが見られなかった。
【0056】
この実施形態によれば、準備槽20で電鋳を行う際に陰極21に発生したひずみ量に基いて決定された、めっき皮膜の内部応力がゼロとなる電流密度の電流で本槽10の対象物の電鋳を行うので、めっき皮膜の内部応力をゼロに保ちながら電鋳を行うことができる。その結果、めっき皮膜のそりを少なくすることができる。
【0057】
陰極21の数を3本としたので、陰極21の数が1本や2本の場合と比べてめっき皮膜の内部応力がゼロとなる電流密度を精度良く決定することができる。なお、陰極21の数は3本に限られるものではなく、4本以上であってもよく、電流密度をより精度良く決定することができる。
【0058】
準備槽20で所定時間毎に逆電解をかけられ、陰極21に付着したニッケル電鋳の一部が剥離されるので、陰極21のめっき皮膜の厚さが所定値以上に厚くならず、その内部応力を精確に測定することができる。
【0059】
パルス電源29としたので、ひずみゲージ24に供給する電流の変動を小さくでき、安定したひずみ量の計測を行うことができる。
【0060】
本槽10と準備槽20とをパイプ40を介して連結したので、本槽10と準備槽20とで同じ電鋳条件で電鋳を行うことができる。
【0061】
なお、上記実施形態ではめっき皮膜の内部応力をゼロとしたが、例えばめっき皮膜をそらせたい場合にはそりの度合いに応じてめっき皮膜の内部応力をゼロでない任意の値とすればよい。
【0062】
図5はこの発明の第2実施形態に係る電鋳方法を説明するタイミングチャートであり、第1実施形態と共通する部分の説明は省略する。なお、図5(a)は準備槽でのめっきのタイミングチャートを示し、図5(b)は本槽でのめっきのタイミングチャートを示す。また、縦軸及び横軸はそれぞれ電流及び時間を示す。
【0063】
この実施形態は本槽10の電鋳を準備槽20の電鋳と同時に開始するようにした点で第1実施形態と相違する。
【0064】
準備槽20では、陰極21及び陽極22に電流を供給し始めてから100秒が経過するまでは、5秒毎に剥離と電鋳とを行なう。
【0065】
一方、本槽10では、陰極21及び陽極22に電流を供給し始めてから100秒が経過するまでは、10秒毎にコンピュータ24で決定された新たな電流密度(内部応力がゼロとなる値)の電流でニッケル電鋳を行なう。
【0066】
陰極21及び陽極22に電流を供給し始めてから100秒が経過した後は、第1実施形態と同様のタイミングで準備槽20、本槽10の両方でニッケル電鋳を行なう。
【0067】
この実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、第1実施形態よりも迅速に製品の電鋳を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は準備槽と本槽との関係を説明する概念図である。
【図2】図2(a)は電鋳条件決定装置の縦断面を示す概念図、図2(b)は電鋳条件決定装置の横断面を示す概念図である。
【図3】図3は電鋳装置の構成を示す概念図である。
【図4】図4はこの発明の第1実施形態に係る電鋳方法を説明するタイミングチャートである。
【図5】図5はこの発明の第2実施形態に係る電鋳方法を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0069】
5:電鋳条件決定装置、10:本槽(第2のめっき槽)、15:整流器(電源装置)、20:準備槽(第1のめっき槽)、21:陰極、22:陽極、24:ひずみゲージ、25:コンピュータ(電流値決定手段)、26:めっき液、29:パルス電源、40:パイプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を貯留する第1のめっき槽と、
前記第1のめっき槽のめっき液に浸漬され、対応する陰極及び陽極間でそれぞれ異なる電流密度で電流が供給される、ひずみゲージが設けられた複数の第1の陰極及び複数の第1の陽極と、
前記各ひずみゲージで測定されたひずみ量に基いて計算されためっき皮膜の応力値が所定値になる電流値を決定する電流値決定手段と
を備えていることを特徴とする電鋳条件決定装置。
【請求項2】
前記電流値決定手段はコンピュータであり、前記所定値はゼロであることを特徴とする請求項1記載の電鋳条件決定装置。
【請求項3】
前記第1の陰極の数は少なくとも3以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の電鋳条件決定装置。
【請求項4】
前記ひずみゲージはパルス電源に接続されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電鋳条件決定装置。
【請求項5】
前記めっき液はスルファミン酸ニッケル溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の電鋳条件決定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の電鋳条件決定装置と、
前記第1のめっき槽とパイプを介して連結される第2のめっき槽と、
前記第2のめっき槽のめっき液に浸漬される第2の陰極及び第2の陽極と、
前記電流値決定手段で決定された電流値で電流を前記第2の陰極及び前記第2の陽極に供給する電源装置と
を備えていることを特徴とする電鋳装置。
【請求項7】
第1のめっき槽のめっき液に浸漬される複数の第1の陰極及び複数の第1の陽極の対応する陰極及び陽極間でそれぞれ異なる電流密度で電流を供給し、前記複数の第1の陰極及び複数の第1の陽極のうちの前記複数の第1の陰極にそれぞれ設けられたひずみゲージで測定されたひずみ量に基いてめっき皮膜の応力値を計算する応力値計算工程と、
前記応力値が所定値になる電流値を決定する電流値決定工程と
を備えていることを特徴とする電鋳条件決定方法。
【請求項8】
前記応力値計算工程の前に、スルファミン酸ニッケル溶液からなる前記めっき液に浸漬された前記第1の陰極及び第1の陽極のそれぞれに電流密度1〜10A/dm2 の範囲内の異なる電流密度で電流を供給する電流供給工程を備えていることを特徴とする請求項7記載の電鋳条件決定方法。
【請求項9】
前記電流値決定工程で決定された電流値の電流を前記第1の陰極及び第1の陽極に供給した後、その逆電流を前記第1の陰極及び第1の陽極に供給する逆電解工程を備えていることを特徴とする請求項7又は8記載のいずれか1項記載の電鋳条件決定方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項記載の電鋳条件決定方法と、
第2のめっき槽のめっき液に浸漬される第2の陰極及び第2の陽極に、前記電流値決定工程で決定された電流値で電流を供給して電鋳を行う電鋳工程を備えていることを特徴とする電鋳方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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