説明

電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物

【課題】
非ハロゲン系難燃剤により難燃化されており、かつポリアルキレンテレフタレート樹脂の優れた特性を保持している電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
(A)10重量%以下の他の樹脂を含有していてもよいポリアルキレンテレフタレート樹脂から成る熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、
(B)電離放射線の照射により重合する架橋剤0.5〜25重量部、
(C)下記のホスフィン酸塩、燐酸メラミン化合物およびホスファゼン化合物より成る群から選ばれた難燃剤10〜40重量部、
(D)アミノ基含有トリアジン化合物の塩0〜90重量部、及び
(E)無機充填剤0〜150重量部、を含有することを特徴とする電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、特に耐トラッキング特性(CTI)に優れた成形品を与えるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物に関するものである。特に本発明は、ハロゲン系難燃剤によらずに上記の特性を発現させたポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂に代表されるポリアルキレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れ、かつ加工性が良好なので、エンジニアリングプラスチックとして電気・電子部品、自動車電装部品などの広い用途に用いられている。特にポリブチレンテレフタレート樹脂は良好な電気的特性を有しており、かつ流動性に優れ、結晶化速度が速く成形サイクルの短縮が可能なので、小型の電気・電子部品等に用いられている。
【0003】
これらの用途では、一般に難燃剤を配合して難燃化したポリブチレンテレフタレート樹脂が用いられている。難燃剤としては、従来は主としてハロゲン系難燃剤が用いられてきた。しかしハロゲン系難燃剤には、使用済みの樹脂成形品を焼却処分すると環境汚染を引き起こす危険があるなど幾多の問題があるので、近年では非ハロゲン系の難燃剤を用いることが強く求められている。また最近では、電気・電子部品の小型化と高機能化に伴いより一層の難燃化が求められており、ハロゲン系難燃剤では要求性能を満足させるのが困難になりつつある。
【0004】
熱可塑性樹脂を難燃化する非ハロゲン系難燃剤としては、燐酸エステル、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸塩、その他のリン化合物、メラミン塩などの窒素化合物をはじめ、種々の化合物が提案されている(例えば特許文献1〜5参照)。また熱可塑性樹脂にトリアリルイソシアヌレートなどの電離放射線で重合する架橋剤を含有させ、成形後に電離放射線を照射して架橋剤を重合させることも提案されている。例えば、融点が225℃のポリブチレンテレフタレート樹脂にトリアリルイソシアヌレートやトリアリルシアヌレートを配合し、成形後に電子線を照射して重合することにより、260℃のハンダ浴に1分間浸漬後も形状を保持し得ることが記載されている(例えば特許文献6参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−73720号公報
【特許文献2】特開昭51−36266号公報
【特許文献3】特開平7−216235号公報
【特許文献4】特開2003−82211号公報
【特許文献5】特開2004−91584号公報
【特許文献6】特開昭57−212216号公報
【0006】
熱可塑性樹脂の難燃化には樹脂の種類が大きく影響するので、樹脂の種類に応じて難燃化の処方を選択する必要がある。また難燃剤は、共存する他の成分によりその特性の発現状況が異なるので、特に最近の様に高度の難燃化が求められる場合には、熱可塑性樹脂と、これに適した難燃化方法との組み合わせを見出すには、熟練者といえども試行錯誤の繰り返しと実験結果の解析を伴う多大の検討が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はハロゲン系難燃剤を用いずに、高度に難燃化された成形品を与えるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を提供しようとするものである。また本発明は、高度に難燃化されており且つポリアルキレンテレフタレート樹脂本来の優れた諸特性を有する成形品を与えるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂に特定の非ハロゲン系難燃剤と電離放射線により重合する架橋剤を含有させることにより、好ましくはこれに更にアミノ基含有トリアジン化合物の塩を含有させることにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち本発明の要旨は、(A)10重量%以下の他の樹脂を含有していてもよいポリアルキレンテレフタレート樹脂から成る熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、(B)電離放射線により重合する架橋剤0.5〜25重量部、(C)下記のホスフィン酸塩、ホスファゼン化合物及び燐酸エステル化合物よりなる群から選ばれた難燃剤10〜40重量部、(D)アミノ基含有トリアジン化合物の塩である難燃剤0〜90重量部、及び(E)無機充填剤0〜150重量部を含有させたことを特徴とする、電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物に存する。
【0010】
ホスフィン酸塩;アニオン部分が式(1)又は式(2)で表されるホスフィン酸のカルシウム又はアルミニウム塩であるホスフィン酸塩。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよいアリーレン基又はこれらの混合基を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリアルキレンテレフタレート樹脂の優れた諸特性を保持し、かつ難燃性、特にCTIに優れた成形品を与えるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を提供できる。この樹脂組成物から得られる成形品は、小型でかつ高機能の電子・電気部品、特に厚さが2mm以下の部分を有する部品として好適に用いることができる。
【0014】
具体的な用途としては、リレー、スイッチ、センサー、アクチュエーター、コネクター、マイクロスイッチ、マイクロセンサー、マイクロアクチュエーターなどが挙げられる。本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、厚さが2mm以下という薄肉部分でも難燃性に優れているので、これらの用途において、この厚さが2mm以下の部分が0.2アンペアを超える定格電流が流れる接続部を直接支持するか、又は該接続部から3mm以内に位置するように用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(A)熱可塑性樹脂成分;
本発明では熱可塑性樹脂成分として、ポリアルキレンテレフタレート樹脂又はこの樹脂に他の樹脂を混合したものでその含有量が10重量%以下のものを用いる。ポリアルキレンテレフタレート樹脂は1種類でも2種類以上の混合物であってもよい。通常はポリブチレンテレフタレート樹脂又は40重量%以上がポリブチレンテレフタレート樹脂であるポリアルキレンテレフタレート樹脂混合物を用いる。例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合物は、本発明で用いる熱可塑性樹脂成分として好ましいものの一つである。
【0016】
ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂は、周知のように、テレフタル酸又はそのエステルと1,4−ブタンジオール又はエチレングリコールとの反応により、大規模に製造されている。本発明では市場で入手し得るこれらの樹脂を用いることができる。ポリアルキレンテレフタレート樹脂には、テレフタル酸成分と1,4−ブタンジオール成分又はエチレングリコール成分以外の共重合成分が少量、通常は10重量%以下含有されていてもよい。
【0017】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は通常、0.5〜1.5dl/gであり、特に0.6〜1.3dl/gであることが好ましい。0.5dl/gより小さいと機械的特性に優れた樹脂組成物を得ることが困難となる場合があり、また1.5dl/gより大きいと、樹脂組成物の流動性低下により成形性が低下する場合がある。尚、固有粘度はフェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)混合溶媒中、30℃での測定値である。また末端カルボキシル基量は30eq/g以下であることが好ましい。更に1,4−ブタンジオールに由来するテトラヒドロフランの含有量は、300ppm以下であることが好ましい。
【0018】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂の固有粘度は、上記の条件で測定して、0.4〜1.0dl/g、特に0.5〜0.8dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.4未満であると機械的特性が低下しやすく、1.0を越えると流動性が低下しやすい。
【0019】
本発明ではポリアルキレンテレフタレート樹脂と他の樹脂との混合物を用いることもできる。他の樹脂の含有量は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂の特性を損なわないように、10重量%以下、特に8.5重量%以下にとどめることが好ましい。このような樹脂としてはポリアルキレンテレフタレート樹脂と相溶性のあるものであれば、いずれも用いることができる。中でもスチレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
スチレン系樹脂とは、スチレン又はこれと共重合しうるモノマーとの重合体を示し、本発明に用いるものとしては、具体的には例えばポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリルースチレン樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂、メチルメタクリレートーブタジエンースチレン樹脂、スチレンーエチレンープロピレンースチレン樹脂などが挙げられる。
【0021】
またこれらの樹脂を無水マレイン酸やグリシジルメタクリレートなどで変性したスチレン系樹脂を用いることもできる。後記する難燃剤としてホスファゼン化合物や燐酸エステル化合物を用いる場合には、ポリアルキレンテレフタレート樹脂とスチレン系樹脂、なかでもエポキシ基を有するスチレン系樹脂との混合物を用いることが好ましい。
【0022】
(B)電離放射線により重合する架橋剤;
架橋剤としては、従来から樹脂組成物に用いられている架橋剤、即ちエチレン性不飽和結合を2個以上有していて、電離放射線の照射により重合する化合物であれば、いずれも用いることができる。中でも、シアヌル酸又はイソシアヌル酸とアリルアルコールとのジ又はトリエステルを用いることが好ましく、特にトリエステルが好ましい。またこれらのエステルのオリゴマーを用いることもできる。(イソ)シアヌル酸はs−トリアジン骨格を有しており、難燃剤としても作用すると考えられる。
【0023】
(B)架橋剤は(A)熱可塑性樹脂成分100重量部に対して0.5〜25重量部となるように用いる。0.5重量部未満では架橋による難燃性の向上が十分に発現しない。また25重量部より多いと、成形品の色調が悪化し、且つ機械的強度も低下する。
【0024】
なお(イソ)シアヌル酸のアリルアルコールエステルは沸点が低く、樹脂組成物や樹脂組成物からの成形品の製造に際し、架橋剤が気化して飛散する恐れがあるので、密閉下に取り扱うことが好ましい。また高温では架橋剤が変質する恐れもあるので、樹脂組成物や成形品の製造に際しては、必要以上に高温に曝されないようにすべきである。架橋剤の好適な配合量は2〜10重量部である。
【0025】
(C)難燃剤;
本発明では、ホスフィン酸塩、ホスファゼン化合物及び燐酸エステル化合物という3種類の化合物のいずれかを難燃剤として用いることが必要である。これらはいずれも燐原子を有する化合物であり、併用してもよい。
【0026】
(C−1)ホスフィン酸塩としては、アニオン部分が下記式(1)又は(2)で表されるホスフィン酸のカルシウム塩又はアルミニウム塩を用いる。
【0027】
【化2】

【0028】
上記式において、R及びRは、相互に同一でも異なっていてもよく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基など炭素数1〜6のアルキル基や、フェニル基、o−,m−又はp−メチルフェニル基、種々のジメチルフェニル基、α―又はβ―ナフチル基などの置換されていてもよいアリール基を表す。好ましくはR及びRはメチル基又はエチル基である。
【0029】
はメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、2−エチルヘキシレン基などの炭素数1〜10のアルキレン基、o―、m−又はp−フェニレン基、1,8−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基などのアリーレン基、又はメチレンフェニレン基、エチレンフェニレン基などの上記2種の混合基を表す。Rは好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基又はフェニレン基である。
【0030】
ホスフィン酸塩の具体例としては、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチルーn―プロピルホスフィン酸アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウム、
【0031】
メタンビス(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、メタンビス(ジメチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼンー1,4−ビス(ジメチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼンー1,4−ビス(ジメチルホスフィン酸)アルミニウムなどが挙げられる。なかでも難燃性及び電気特性の点からして、ジエチルホスフィン酸アルミニウムが好ましい。
【0032】
樹脂組成物から得られる成形品の外観や機械的強度の点で、ホスフィン酸塩はレーザー回折法で測定して粒径100μm以下、特に50μm以下に粉砕した粉末を用いることが好ましい。なかでも平均粒径が0.5〜20μmのものは、高い難燃性を発現するばかりでなく、成形品の強度が著しく高くなるので、特に好ましい。ホスフィン酸塩は単独でも難燃剤として作用するが、後記するアミノ基含有トリアジン化合物の塩、なかでもシアヌル酸メラミン化合物や燐酸メラミン化合物と併用すると、少ない配合量で優れた難燃性と電気特性を発現する。
【0033】
(C−2)ホスファゼン化合物としては、従来から樹脂の難燃剤として用いることが知られているものであれば、いずれも用いることができる。例えばJames E.Mark、Harry R.Allcock、Robert West 著 「Inorganic Polymers」 Pretice−Hall International、Inc.1992、p61〜p140に記載されている構造を有するものや、下記式(3)で表される環状ホスファゼン化合物、下記式(4)で表される鎖状ホスファゼン化合物等が挙げられる。
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
上記式において、nは3〜25の整数、mは3〜10000の整数を示し、置換基Xは相互に異なっていてもよく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜11のアリール基、フッ素原子、下記式(5)で示される置換基を有するアリールオキシ基、ナフチルオキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びアルコキシ置換アルコキシ基より成る群から選ばれる。
【0037】
尚、これらの置換基の水素原子は、フッ素原子、水酸基又はシアノ基などで置換されていてもよい。また、式中のYは−N=P(O)(X)又は−N=P(X)を表し、Zは−P(X)又は−P(O)(X)(これらにおけるXは一般式(3)、(4)におけるXと同義である。)を表す。
【0038】
【化5】

【0039】
上記式において、Y1、Y2、Y3、Y4及びY5は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基、フェニル基、ヘテロ元素含有基より成る群から選ばれる。
【0040】
ホスファゼン化合物の難燃剤としての効果を決定する要因の一つは、分子に占める燐原子の濃度であり、概して濃度が高いほうが難燃効果が大きい。この点からして、一般的には分子末端に置換基を有する鎖状ホスファゼン化合物よりも環状ホスファゼン化合物のほうが好ましい。
【0041】
上記式(3)及び(4)における置換基Xの具体例としては、メチル基、エチル基、n―プロピル基、イソプロピル基、s−ブチル基、tert−ブチル基、n―アミル基、イソアミル基などのアルキル基;フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、4−tert−ブチルフェニル基、2−メチルー4−tert−ブチルフェニル基、ナフチル基などのアリール基;メトキシ基、エトキシ基、n―プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n―ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、n―アミルオキシ基,n―ヘキシルオキシ基などのアルコキシ基;
【0042】
メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、メトキシエトキシメトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、メトキシプロピルオキシ基などのアルコキシ置換アルコキシ基;フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、
【0043】
2−エチルフェノキシ基、3−エチルフェノキシ基、4−エチルフェノキシ基、2,6−ジエチルフェノキシ基、2,5−ジエチルフェノキシ基、2,4−ジエチルフェノキシ基、3,5−ジエチルフェノキシ基、3,4−ジエチルフェノキシ基、4−n―プロピルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、2−フェニルフェノキシ基、4−フェニルフェノキシ基などのアルキル又はアリール置換フェノキシ基、ナフチルオキシ基などが挙げられる。
【0044】
さらにホスファゼン化合物は、国際公開番号W000/09518号に開示されている技術により、フェニレン基、ビフェニレン基又は下記式(6)に示す基により架橋されていてもよい。
【0045】
【化6】

【0046】
上記式において、X’は−C(CH−、−SO−,−S−又は−O―を表し、yは0又は1を表す。これらの架橋構造を有するホスファゼン化合物は、例えばジクロロホスファゼンオリゴマーにフェノールのアルカリ金属塩及び芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩を反応させることにより製造することができる。この際、これらのアルカリ金属塩はジクロロホスファゼンオリゴマーに対して、理論値よりも若干過剰に用いる。
【0047】
ホスファゼン化合物は通常は環状三量体、環状四量体などの環状体や鎖状ホスファゼン、さらには架橋体などの構造の異なるものの混合物であるが、樹脂組成物とした場合には環状三量体、四量体、架橋体などの含有率が高いほど加工性が良い傾向がある。従ってホスファゼン化合物としては環状三量体、四量体、架橋体の含有率が70重量%以上、特に80重量%以上のものを用いることが好ましい。
【0048】
尚、環状、鎖状を問わず、水酸基を有する(即ち、P−OH又はそのオキソ体である、X−P(=O)NH−結合(但しXは、一般式(3)、(4)におけるXと同義である。)を有する)ホスファゼン化合物の含有量は、少量、通常は1重量%未満であることが好ましい。
【0049】
ホスファゼン化合物はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の含有量が少ないもことが好ましく、全アルカリ金属含有量として50ppm以下であることが好ましい。塩素の含有量も少ないことが好ましく、具体的には500ppm以下、特に300ppm以下であることが好ましい。また水分含有量は、電気特性、耐加水分解性などの点からして、500ppm以下、特に300ppm以下であることが好ましく、JIS K6751に基づき測定される酸価jは1.0以下、特に0.5以下であることが好ましい。
【0050】
ホスファゼン化合物は耐加水分解性、耐吸湿性などの点から、水への溶解度(試料を0.1g/mlの濃度となるように蒸留水に加え、25℃で1時間攪拌したときに溶解した量)は50ppm以下、特に25ppm以下であることが好ましい。
【0051】
(C−3)燐酸エステル化合物としては、例えば最も簡単な炭素数1〜10の置換されていてもよいアルコール又はフェノール類と燐酸とのエステル、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどを用いることができる。好ましくは下記式(7)で表されるヒドロキシ芳香族化合物と燐酸との(ポリ)エステルを用いる。
【0052】
【化7】

【0053】
上記式(7)において、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rはp−フェニレン基、m−フェニレン基、4,4−ビフェニレン基又は下記式(8)から選ばれる2価の基を表す。mは0〜4の整数を表す。
【0054】
【化8】

【0055】
一般式(7)において、R〜Rは炭素数6以下のアルキル基であることが好ましく、中でもメチル基又はエチル基、特にメチル基であることが好ましい。Rがメチル基又はエチル基であるエステルを用いた樹脂組成物は一般に他のエステルを用いたものよりも耐加水分解性に優れている。Rはm−又はp−フェニレン基、特にm−フェニレン基であることが好ましい。
【0056】
ポリブチレンテレフタレート樹脂を多量、通常は40重量%以上含有するポリアルキレンテレフタレート樹脂は、難燃剤としてホスファゼン化合物や燐酸エステル化合物を用いた際に樹脂組成物の乾燥工程などで高温に曝されると難燃剤がブリードし易い。この対策としては、乾燥温度を下げる方法もあるが、ポリアルキレンテレフタレート樹脂にスチレン系樹脂を含有させることが好ましい。特にエポキシ基を有するスチレン系樹脂を含有させたものはブリードを防止する効果が大きい。
【0057】
(C)難燃剤は熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、10〜40重量部となるように用いる。10重量部未満では十分な難燃性が発現しない。逆に40重量部を超えて多量に用いると、樹脂組成物の機械的物性が低下し易い。またブルーミングを起こしたり、ガス発生量が多くなったりし易い。(C)難燃剤の好ましい含有量は、15〜40重量部である。
【0058】
本発明の樹脂組成物には更に(D)アミノ基含有トリアジン化合物の塩を含有させることが好ましい。アミノ基含有トリアジン化合物の塩は難燃剤であり、単独でも難燃効果を発現するが、ホスフィン酸塩と併用すると難燃効果が著しい。
【0059】
アミノ基含有トリアジン化合物(アミノ基を有するトリアジン化合物)としては、通常、1,3,5−トリアジン環を有する化合物を用いる。例えば、メラミン、置換メラミン(2−メチルメラミン、グアニルメラミンなど)、メラミン縮合物(メラム、メレム、メロンなど)、メラミンの共縮合樹脂(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂など)、シアヌル酸アミド類(アンメリン、アンメリドなど)、グアナミン又はその誘導体(グアナミン、メチルグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、サクシノグアナミン、アジポグアナミン、フタログアナミン、CTU−グアナミンなど)などが挙げられる。
【0060】
アミノ基含有トリアジン化合物と塩(塩とは付加物をも意味する)を形成する酸としては、無機酸でも有機酸でもよい。無機酸としては、硝酸、塩素酸(塩素酸、次亜塩素酸など)、リン酸(リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ポリリン酸など)、硫酸(硫酸や亜硫酸などの非縮合硫酸、ペルオクソ二硫酸やピロ硫酸などの縮合硫酸など)、ホウ酸、クロム酸、アンチモン酸、モリブデン酸、タングステン酸などが挙げられる。これらのうち、リン酸や硫酸が好ましい。
【0061】
有機酸としては、有機スルホン酸(メタンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、トルエンスルホン酸やベンゼンスルホン酸などの芳香族スルホン酸など)、環状尿素類(尿酸、バルビツル酸、シアヌル酸、アセチレン尿素など)などが挙げられる。これらのうち、メタンスルホン酸などの炭素数1〜4のアルカンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの炭素数1〜3のアルキル置換基を有するアリールスルホン酸、シアヌル酸が好ましい。
【0062】
アミノ基含有トリアジン化合物の塩としては、例えば、シアヌル酸メラミン・メラム・メレム複塩、リン酸メラミン類(ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩など)、硫酸メラミン類(硫酸メラミン、硫酸ジメラミン、ピロ硫酸ジメラムなど)、スルホン酸メラミン類(メタンスルホン酸メラミン、メタンスルホン酸メラム、メタンスルホン酸メレム、メタンスルホン酸メラミン・メラム・メレム複塩、トルエンスルホン酸メラミン、トルエンスルホン酸メラム、トルエンスルホン酸メラミン・メラム・メレム複塩など)などが挙げられる。これらのアミノ基含有トリアジン化合物の塩は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0063】
これらのアミノ基含有トリアジン化合物の塩のなかで本発明において好ましく使用されるのは、ポリ燐酸メラミン又はシアヌル酸若しくはイソシアヌル酸とアミノ基含有トリアジン化合物との塩であり、通常は1対1(モル比)、場合により1対2(モル比)の組成を有するものである。
【0064】
より具体的にはシアヌル酸メラミン、シアヌル酸ベンゾグアミン、シアヌル酸アセトグアナミンであり、更にはシアヌル酸メラミンである。これらの塩は、公知の方法で製造されるが、例えば、アミノ基含有トリアジン化合物とシアヌル酸またはイソシアヌル酸の混合物を水スラリーとし、良く混合して両者の塩を微粒子状に形成させた後、このスラリーを濾過、乾燥することにより、一般には粉末状で得られる。また、上記の塩は純粋である必要は無く、未反応のアミノ基含有トリアジン化合物やシアヌル酸、イソシアヌル酸が多少残存していても良い。
【0065】
アミノ基含有トリアジン化合物の塩の粒径は、成形品の難燃性、機械的強度、耐湿熱性、滞留安定性、表面性などの点からして、レーザー回折法で測定して、100μm以下、特に平均粒径で1〜80μmであることが好ましい。アミノ基含有トリアジン化合物の塩の分散性が悪い場合には、トリス(β―ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどの分散剤や公知の表面処理剤などを併用してもよい。
【0066】
アミノ基含有トリアジン化合物の塩は、熱可塑性樹脂成分100重量部に対して90重量部以下、好ましくは80重量部以下の量で含有させる。但しアミノ基含有トリアジン化合物の塩の含有効果を十分に発現させるには、7重量部以上、特に10重量部以上含有させることが好ましい。
【0067】
本発明の樹脂組成物には、機械的強度を向上させるため、更に無機充填剤を含有させることが好ましい。無機充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、セラミックスウイスカー、ワラストナイトなどの繊維状充填剤を用いることが好ましいが、ガラスフレーク、マイカ、タルク、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウムなど公知の種々のものを用いることができる。なかでも好ましいのは、高い強度及び剛性を有する成形品を与える点で、ガラス繊維である。
【0068】
無機充填剤は収束剤や表面処理剤と組み合わせて用いてもよい。このような剤としては、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などが挙げられる。無機充填剤は熱可塑性樹脂成分100重量部に対して150重量部以下、好ましくは100重量部以下、特に50〜100重量部含有させることが好ましい。
【0069】
本発明の樹脂組成物にはその特性を損なわない範囲で、上記した以外の常用の種々の助剤を含有させることができる。然しながらハロゲン系難燃剤は、樹脂組成物のCTIを著しく低下させるので、含有させないことが好ましい。若し何らかの理由により含有させる場合にはその含有量はできるだけ少量に止めるべきであり、5重量部、更には3重量部以下が好ましい。なお、後記する実施例と比較例との対比からあきらかなように、ハロゲン系難燃剤を多量、例えば10〜20重量部含有させても、CTIが高い樹脂組成物を与えるという本発明の効果そのものは基本的には維持される。
【0070】
本発明の樹脂組成物に含有させる助剤の例としては、滴下防止剤としてのフッ素樹脂、ホウ酸亜鉛や三酸化アンチモンなどの無機難燃剤、ヒンダードフェノール系化合物などの酸化防止剤、離型剤、流動性改良剤、滑剤、着色剤などが挙げられる。
【0071】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法;
本発明のポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物は、熱可塑性樹脂について一般に用いられている溶融・混練装置により、原料を均一になるように溶融混練することにより製造することができる。溶融・混練装置としては、一軸ないし多軸押出機、ロールなどが挙げられる。特にニ軸押出機を用いることが好ましく、全原料を所定の比率でミキサーに入れ、均一に混合した後、ニ軸押出機のホッパーに投入し、溶融・混練し、ペレット化するという一般的な方法で製造することができる。
【0072】
尚、架橋剤の(イソ)シアヌル酸とアリルアルコールとのエステルは沸点が低いので、気化させないように密閉下で溶融・混練する。また無機充填剤として繊維状のものを用いる場合には、ニ軸押出機のシリンダー途中のサイドフイーダーから供給するのが、押出機の損傷防止、充填剤の破砕の防止などの点で好ましい。
【0073】
本発明の樹脂組成物から成形品を製造する方法は、樹脂組成物について一般に採用されている成形法によることができる。すなわち射出成形法、中空成形法、押出成形法、シート成形法、回転成形法、プレス成形法などを採用することができるが、射出成形法が好ましい。
【0074】
成形品には次いで電離放射線を照射して、含有されている(B)架橋剤を重合させる。電離放射線としては、従来から樹脂成形品に照射して重合を起こさせるのに用いられているもの、例えば加速電子線、X線、α線、β線、γ線等が挙げられる。中でも加速電子線が好ましい。照射線量は樹脂組成物の組成、成形品の肉厚、所望の架橋度等により適宜選択して決定すればよいが、通常は10kGy以上、好ましくは70kGy以上であるが、過剰な照射は成形品を劣化させるので、その上限は通常、1000kGy、好ましくは750kGyである。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。実施例、比較例にて使用した各成分とその略号、物性等は以下の通りである。
【0076】
BR−1;ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製5008、固有粘度0.85)
【0077】
BR−2;ポリエチレンテレフタレート樹脂(三菱化学社製PBK−1、固有粘度0.70)
【0078】
BR−3;グリシジルメタアクリレート変性アクリロニトリル−スチレン共重合体(UMG社製AP−G)
【0079】
架橋剤;トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製TAIC)
【0080】
難燃剤―1;ジエチルホスフィン酸アルミニウム(クラリアント社製OP1230)
【0081】
難燃剤―2;燐酸エステル(大八化学社製PX200)
【0082】
難燃剤―3;フェニルホスファゼン(伏見製薬所社製FP−110)
【0083】
難燃剤―4;シアヌル酸メラミン(サンケミカル社製MCA)
【0084】
難燃剤―5;ポリ燐酸メラミン(チバ・ジャパン社製melapur200/70)
【0085】
無機充填剤;ガラス繊維(オーエンスコーニングジャパン社製03JA―FT592)
【0086】
ホウ酸亜鉛;ボラックス社製FireBrake ZB 組成2ZNO・3B・3.5H
【0087】
フェニルシリコーンレジン;東レ・ダウシリコーン社製217FLAKE
【0088】
硫酸バリウム;堺化学社製B−54
【0089】
炭酸カルシウム;同和カルファイン社製KSS1000
【0090】
フッ素樹脂;住友3M社製品 TF1750
【0091】
三酸化アンチモン;鈴裕化学社製AT―3CN
【0092】
ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート);ICL社製品 FR−1025
【0093】
安定剤−1;チバ・ジャパン社製イルガノックス1010(ヒンダードフェノール系化合物)
【0094】
安定剤―2;ADEKA社製PEP−36
【0095】
離型剤;日本精蝋社製FT100
【0096】
実施例1〜7、比較例1
<樹脂組成物の調製>
ガラス繊維以外の各成分を表―1に示す配合量(重量部)で秤量し、タンブラーミキサーで混合した。得られた混合物を2軸押出機(日本製綱所製、型式:TEX30HCT、30mm)のホッパーに供給し、ガラス繊維はサイドフイーダーを通じて供給し、シリンダー温度270℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量15kg/hの条件で溶融・混練して、ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを製造した。
【0097】
<成形品の製造>
上記のペレットを80℃で10時間真空乾燥したのち、射出成形機(日本製綱所製、型式:J75ED)を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度80℃で試験片を成形した。この試験片に日本電子サービス社 関西センターにて、下記の条件で電子線を照射した。照射に際しては、試験片を支持台が敷かれた照射用カートに平置し、支持台はカート面より約30mm浮かした状態で、上部方向より電子線照射を行った。
【0098】
<試験片電離放射線照射条件>
電子線照射装置:RDI社製ダイナミトロン型5MeV電子加速器
線量測定装置:CTA線量計 日立製作所 U―2001分光光度計
電圧:4.6MeV
電流:20mA
カート速度:6.3m/min
照射方法:片面30回
表面線量:600kGy(20kGyx30)
【0099】
<試験方法>
電離放射線照射を行う前後の試験片について、難燃性、耐トラッキング特性及び耐グローワイヤー特性を測定した。また電子線照射後の試験片について250℃での貯蔵弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
難燃性:
UL94規格に従って難燃性を評価した。
厚さ0.8mmの試験片をクランプに垂直に取り付け、20mm炎による10秒間接炎を2回行い、その際の燃焼挙動によりV−0、V−1、V−2、不適合の判定を行った。
【0101】
耐トラッキング特性(CTI):
IEC60112規格に従って耐トラッキング特性を評価した。
60x60x3mmtの試験片を白金製電極間に装着し、電圧を印加し、電解液を滴下した。50滴を滴下しても5個の試験片が全てトラッキング破壊を起こさない最大電圧を求めた。
【0102】
耐グローワイヤー特性(GWIT):
IEC60695−2−13規格に従って耐グローワイヤー特性を評価した。
試験温度のグローワイヤーを60x60x3mmtの試験片に30±1秒間押し付けている間、及びその後30秒間で、着火を起こさない最高温度を求めた。試験温度の間隔を25℃とし、同じ温度で3回連続して試験した。着火とは、炎をあげて燃えた場合、及びストローブマツが焦げた場合の何れかが起きた場合とした。なおGWITの温度としては、試験で求めた最高温度より25℃高い温度を用いた。
【0103】
250℃での貯蔵弾性率E(Pa):
難燃性の試験に用いたと同じ試験片から、30x5.5x0.8mmの試験片を切り出し、これについてユービーエム社製の動的粘弾性測定装置Rheogel−E4000を用いて、周波数110Hz、測定温度25〜250℃で測定した。
【0104】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)10重量%以下の他の樹脂を含有していてもよいポリアルキレンテレフタレート樹脂から成る熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、
(B)電離放射線により重合する架橋剤0.5〜25重量部
(C)下記のホスフィン酸塩、ホスファゼン化合物及び燐酸エステル化合物よりなる群から選ばれた難燃剤10〜40重量部
(D)アミノ基含有トリアジン化合物の塩である難燃剤0〜90重量部、及び
(E)無機充填剤0〜150重量部
を含有させたことを特徴とする電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
ホスフィン酸塩;アニオン部分が式(1)又は式(2)で表されるホスフィン酸のカルシウム又はアルミニウム塩。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基又は置換されていてもよいアリール基を表し、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、置換されていてもよいアリール基又はこれらの混合基を表す。)
【請求項2】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂の40重量%以上がポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする請求項1記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
(B)架橋剤が、シアヌル酸若しくはイソシアヌル酸とアリルアルコールとのジ又はトリエステル及びそのオリゴマーより成る群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
(D)アミノ基含有トリアジン化合物の塩7〜80重量部を含有させたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂が40重量%以上を占めるポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合物、及びこれらの樹脂と他の樹脂との混合物で他の樹脂の含有量が10重量%以下である樹脂より成る群から選ばれた熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、
(B)シアヌル酸若しくはイソシアヌル酸とアリルアルコールとのジ若しくはトリエステル及びそのオリゴマーより成る群から選ばれた電離放射線により重合する架橋剤2〜10重量部
(C)下記のホスフィン酸塩、ホスファゼン化合物及び燐酸エステル化合物よりなる群から選ばれた難燃剤15〜40重量部
(D)アミノ基含有トリアジン化合物の塩である難燃剤0〜80重量部、及び
(E)無機充填剤0〜100重量部
を含有させたことを特徴とする電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
ホスフィン酸塩;アニオン部分が下記式(1)又は(2)で表されるホスフィン酸のカルシウム又はアルミニウ
ム塩。
【化2】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキレン基又はフェニレン基を表す。)
【請求項6】
ポリブチレンテレフタレート樹脂が、末端カルボキシル基量が30eq/g以下で、かつテトラヒドロフラン含有量が300ppm以下であることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項7】
(C)難燃剤としてホスフィン酸塩を含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項8】
(A)熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項9】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂が40重量%以上を占めるポリブチレンテレフタレート樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂との混合物に、少なくとも一部がエポキシ基含有スチレン系樹脂であるスチレン系樹脂を配合して成り、該スチレン系樹脂の含有量が10重量%以下である熱可塑性樹脂成分100重量部に対し、
(B)シアヌル酸若しくはイソシアヌル酸とアリルアルコールとのジ若しくはトリエステルである架橋剤2〜10重量部
(C)ホスファゼン化合物及び燐酸エステル化合物よりなる群から選ばれた難燃剤15〜40重量部
(D)アミノ基含有トリアジン化合物の塩である難燃剤0〜80重量部、及び
(E)無機充填材0〜100重量部
を含有させたことを特徴とする電子放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項10】
(E)無機充填材としてガラス繊維50〜100重量部を含有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を成形し、これに(B)架橋剤を重合させることのできる電離放射線を照射することを特徴とする難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物成形品の製造方法。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかに記載の電離放射線照射用難燃ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を、厚さが2mm以下の部分を有するように成形し、これに(B)架橋剤を重合させることのできる電離放射線を照射して成る成形品。
【請求項13】
請求項12に記載の成形品が、その厚さが2mm以下の部分が0.2Aを超える定格電流が流れる接続部を直接支持するか、又はその厚さが2mm以下の部分が該接続部から3mm以内に位置するように配置されていることを特徴とする電気・電子部品。
【請求項14】
電気・電子部品が、リレー、スイッチ、コネクター、センサー、アクチュエーター、マイクロスイッチ、マイクロセンサー及びマイクロアクチュエーターからなる群よりから選ばれる有接点部品であることを特徴とする請求項12に記載の電気・電子部品。

【公開番号】特開2010−155900(P2010−155900A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334416(P2008−334416)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】