説明

露光装置

【課題】 カラーバランスのずれを防止でき、そして寿命も長い露光装置を得る。
【解決手段】 それぞれ発光素子20が1列に並設されてなり、互いが該発光素子20の並び方向と略直角な方向に並設された、相異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイ6R,6G,6Bと、これら複数種類の発光素子アレイ6R,6G,6Bから発せられた光が照射される位置にカラー感光材料40を保持し、このカラー感光材料40と複数種類の発光素子アレイ6R,6G,6Bとを、該複数の発光素子アレイ6R,6G,6Bの並設方向に相対移動させる副走査手段51とを備えてなる露光装置において、前記複数種類の発光素子アレイ6R,6G,6Bのうちの少なくとも1種類において発光素子20を、発光構造が複数積層されてなる多段積層素子として構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露光装置に関し、特に詳細には、互いに異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイを用いてカラー感光材料を露光させる露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1や特許文献2に示されるように、それぞれが赤、緑および青等の互いに異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイからなる露光ヘッドを用いて、カラー感光材料を露光する装置が公知となっている。
【0003】
上記の発光素子アレイは、同じ波長領域の光を発する複数の有機EL(エレクトロルミネッセンス)発光素子等の発光素子が1列あるいは複数列に並設されてなるものである。そして通常、上記露光ヘッドは、互いに異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイが互いに発光素子の並び方向と略直角な方向に並設されるとともに、各アレイから発せられた光をカラー感光材料上に集光させるレンズアレイが設けられてなるものである。
【0004】
このような露光ヘッドを用いる露光装置は、各発光素子アレイから発せられた光が照射される位置にカラー感光材料を保持し、このカラー感光材料と発光素子アレイとを(上記レンズアレイが設けられる場合は該レンズアレイも)、複数の発光素子アレイの並び方向に相対移動させる副走査手段をさらに設けて構成されている。
【0005】
特に特許文献1には、発光素子の列を上記相対移動の方向に複数連ねてなる発光素子アレイを用いて、カラー感光材料の同一箇所を多重露光可能することも記載されている。
【0006】
またこの種の露光装置において発光素子アレイを構成する発光素子の一つとして、特許文献3に示されているように、発光構造が複数積層されてなる多段積層型の有機EL発光素子も知られている。
【特許文献1】特開2001−356422号公報
【特許文献2】特開2001−260416号公報
【特許文献3】特開2003−045676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように赤、緑および青等の互いに異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイを用いてカラー感光材料を露光する装置においては、従来、各種類の発光素子アレイの間の劣化率(劣化時定数)が異なるため、使用を重ねるうちに各波長領域の光の強度比が変動し、それによって露光画像のカラーバランスがずれるという問題が認められている。このカラーバランスがずれると、最悪の場合は露光画像に、副走査方向に延びる濃度ムラが発生することになる。
【0008】
この濃度ムラの発生を防止するには、カラーバランスがずれた時点を露光装置の寿命と考えて、それ以上装置を使用しなければよいが、そうすると、露光装置の寿命は劣化が最も速い発光素子アレイによって決まる短いものとなってしまう。
【0009】
以上、有機EL発光素子等の自己発光型の発光素子からなるアレイを用いた露光装置における問題について説明したが、液晶やPLZT等の調光素子と光源との組み合わせからなる素子のアレイを用いた露光ヘッドにおいても、当然、同様の問題が発生し得る。なお本明細書においては、上述の調光素子と光源との組み合わせからなる素子も、露光光を発する素子という意味で「発光素子」と称することとする。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みて、カラーバランスのずれを防止でき、そして寿命も長い露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による第1の露光装置は、
前述したように、それぞれ発光素子が1列に並設されてなり、互いが該発光素子の並び方向と略直角な方向に並設された、相異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイと、
これら複数種類の発光素子アレイから発せられた光が照射される位置にカラー感光材料を保持し、このカラー感光材料と前記複数種類の発光素子アレイとを、該複数の発光素子アレイの並設方向に相対移動させる副走査手段とを備えてなる露光装置において、
前記複数種類の発光素子アレイのうちの少なくとも1種類において発光素子が、発光構造が複数積層されてなる多段積層素子として構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明による第2の露光装置は、
上記と同様に、それぞれ発光素子が1列に並設されてなり、互いが該発光素子の並び方向と略直角な方向に並設された、相異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイと、
これら複数種類の発光素子アレイから発せられた光が照射される位置にカラー感光材料を保持し、このカラー感光材料と前記複数種類の発光素子アレイとを、該複数の発光素子アレイの並設方向に相対移動させる副走査手段とを備えてなる露光装置において、
少なくとも2種類の発光素子アレイの間で、発光素子の発光面積が不均一とされていることを特徴とするものである。
【0013】
なお、上述した第1あるいは第2の露光装置においては、複数種類の発光素子アレイのうちの少なくとも1種類が、発光素子の列を前記相対移動の方向に複数連ねた構成とされて、カラー感光材料の同一箇所を多重露光可能とされていることが望ましい。そして、このようにして多重露光可能とする場合は、発光素子アレイの各種類毎に、前記同一箇所の露光回数をM、前記発光構造の積層数をN、前記発光構造1段の露光時の発光輝度における劣化時定数をτ、該発光素子の発光面積をSとしたとき、M×N×τ×Sの値が、複数種類の発光素子アレイの間で互いに略同じに設定されていることが望ましい。
【0014】
また本発明の露光装置においては、前記複数種類の発光素子アレイとして、例えば赤、緑および青の波長領域の光を発する3種類の発光素子アレイが用いられていることが望ましい。そしてそのような発光素子アレイとしては、有機EL発光素子アレイ等を好適に用いることができる。
【0015】
また本発明の露光装置は、カラー感光材料としてハロゲン化銀カラーぺーパーを用いるように構成されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明による第1の露光装置においては、複数種類の発光素子アレイのうちの少なくとも1種類において発光素子が、発光構造が複数積層されてなる多段積層素子として構成されているので、その発光素子アレイ(発光構造の積層数をNとする)においては、同じ露光量を得ることを前提として、積層型ではない通常の発光素子アレイと比較すると、1つの発光構造の発光輝度を1/Nに抑えることができる。それにより、発光素子アレイの寿命は略N倍になり、露光装置の高寿命化が実現される。
【0017】
また、複数種類の発光素子アレイ間で、素子構造の違いにより劣化時定数に差がある場合は、それらの発光素子アレイ間で発光構造の積層数Nを互いに変えることにより、発光素子アレイどうしの劣化速度を均一化することも可能となる。そうであれば、露光装置の使用を重ねても複数種類の発光素子アレイ間の光の強度比を一定に保つことができ、露光画像のカラーバランスがずれることを防止できる。
【0018】
一方、同じ露光量を得る上では、発光素子の発光面積をある値からS倍にすれば発光輝度を1/Sに抑えて、発光素子アレイの寿命を略S倍に高めることができる。本発明による第2の露光装置は、少なくとも2種類の発光素子アレイの間で、発光素子の発光面積を不均一とするものであるので、複数種類の発光素子アレイの間で、素子構造の違いにより劣化時定数に差がある場合は、発光素子の面積Sを互いに変えることにより、発光素子アレイどうしの劣化速度を均一化することも可能となる。そうであれば、露光装置の使用を重ねても複数種類の発光素子アレイ間の光の強度比を略一定に保つことができ、そこで、露光画像のカラーバランスがずれることを防止できる。
【0019】
なお、上述した第1あるいは第2の露光装置において、複数種類の発光素子アレイのうちの少なくとも1種類が、発光素子の列を前記相対移動の方向に複数連ねた構成とされて、カラー感光材料の同一箇所をM回に亘り多重露光可能とされている場合は、1つの発光素子アレイの発光輝度を、1回だけ露光の場合と比べて1/Mに抑えることができる。それにより、発光素子アレイの寿命は略M倍になり、露光装置の高寿命化が実現される。
【0020】
また、複数種類の発光素子アレイ間で、素子構造の違いにより劣化時定数に差がある場合は、それらの発光素子アレイ間で上記露光の回数Mを互いに変えることにより、発光素子アレイどうしの劣化速度を均一化することも可能となる。つまり、この露光の回数Mを増やすほど、1つの発光素子アレイの発光輝度もしくは発光時間を低下させることができるので、それにより劣化速度を小さくすることができる。そうであれば、露光装置の使用を重ねても複数種類の発光素子アレイ間の光の強度比を略一定に保つことができ、露光画像のカラーバランスがずれることを防止可能となる。
【0021】
また、感光材料の同一箇所を上記のようにして多重露光可能とする場合、発光素子アレイの各種類毎に、カラー感光材料の同一箇所の露光回数をM、前記発光構造の積層数をN、発光構造1段の露光時の発光輝度における劣化時定数をτ、該発光素子の発光面積をSとしたとき、発光輝度Lは、初期発光輝度をLo、発光時間をtとして、L=Loexp(−t/τ)となる。そしてM、NおよびSの各々の値と、発光素子アレイの発光輝度との間には上述の通りの関係があるから、M×N×τ×Sの値が複数種類の発光素子アレイの間で互いに略同じに設定されていれば、それら各種類の発光素子アレイの劣化速度が一定に揃えられるようになる。そうであれば、露光画像のカラーバランスがずれることをより厳密に防止可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態による露光装置5の側面形状を示すものである。図示の通りこの露光装置5は露光ヘッド1を有し、この露光ヘッド1は、透明基板10と、この透明基板10の上に蒸着により形成された多数の有機EL発光素子20からなる赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bと、該有機EL発光素子20の発光光による像をカラー感光体40上に結像させる等倍結像光学系としての屈折率分布型レンズアレイ30(30R,30G,30B)と、上記透明基板10や屈折率分布型レンズアレイ30を支持する支持体50とを備えている。
【0024】
そして露光装置5は、上記露光ヘッド1に加えて、カラー感光体40を矢印Yで示す副走査方向に定速搬送する、例えばニップローラ等からなる副走査手段51を備えて構成されている。
【0025】
上記有機EL発光素子20は、ガラス等からなる透明基板10上に、透明陽極21、発光層を含んで1画素単位にパターニングされた有機化合物層22、および金属陰極23が順次蒸着により積層されて形成されてなるものである。この有機EL発光素子20を構成する要素は、例えばステンレス製の缶等からなる封止部材25内に配置されている。つまり、この封止部材25の縁部と透明基板10とが接着され、乾燥窒素ガスが充填された封止部材25内に有機EL発光素子20が封止されている。
【0026】
上記構成の有機EL発光素子20において、透明陽極21と金属陰極23との間に所定電圧が印加されると、有機化合物層22に含まれる発光層が発光し、発光光が透明陽極21および透明基板10を介して取り出される。このような有機EL発光素子20は、波長安定性に優れる特性がある。なお、有機EL発光素子20の配列状態については、後に詳しく説明する。
【0027】
ここで透明陽極21は、400nm〜700nmの可視光の波長領域において、少なくとも50パーセント以上、好ましくは70パーセント以上の光透過率を有するものが好ましい。透明陽極21の材料としては、酸化錫、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム等、透明電極材料として従来公知の化合物を適宜用いることができるが、その他、金や白金など仕事関数が大きい金属からなる薄膜を用いてもよい。また、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールまたはこれらの誘導体などの有機化合物を用いることもできる。なお、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」シーエムシー社刊(1999年)には、透明導電膜について詳細な記載があり、そこに示されているものを本発明に適用することも可能である。また透明陽極21は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などによって透明基板10上に形成することができる。
【0028】
一方、有機化合物層22は、発光層のみからなる単層構造であってもよいし、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子注入層、電子輸送層等のその他の層を適宜有する積層構造であってもよい。有機化合物層22および電極の具体的な層構成としては、陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極とする構成や、陽極/発光層/電子輸送層/陰極、陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極とする構成等が挙げられる。また、発光層、ホール輸送層、ホール注入層、電子注入層は、それぞれ複数設けられてもよい。
【0029】
金属陰極23は、仕事関数の低いLi、Kなどのアルカリ金属、Mg、Caなどのアルカリ土類金属、およびこれらの金属とAgやAlなどとの合金や混合物等の金属材料から形成されるのが好ましい。陰極における保存安定性と電子注入性とを両立させるために、上記材料で形成した電極を、仕事関数が大きく導電性の高いAg、Al、Auなどで更に被覆してもよい。なお、金属陰極23も透明陽極21と同様に、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法などの公知の方法で形成することができる。
【0030】
次に、有機EL発光素子20の配列状態について詳しく説明する。図2は、露光ヘッド1における透明陽極21および金属陰極23の配置状態を示すものであり、また図3はそれらの配置状態を拡大して示すものである。図示のように透明陽極21は、ほぼ副走査方向に長く延びる所定形状にパターニングされて、この方向に配列される有機EL発光素子20についての共通電極とされている。本例ではこれらの透明陽極21が、主走査方向に260×30=7800本並べて配設されている。他方、金属陰極23は、主走査方向に直線状に延びる形状を有するもので、この方向に配列される有機EL発光素子20についての共通電極とされている。本例ではこれらの金属陰極23が、副走査方向に16本並べて配設されている。
【0031】
上記透明陽極21および金属陰極23はそれぞれ、いわゆるコラム(列)電極、ロウ(行)電極とされており、図1に示す駆動回路80により、画像信号に応じて選択された透明陽極21と、線順次駆動される金属陰極23との間に所定の電圧が印加される。すると、電圧印加している透明陽極21と金属陰極23との交差部分に積層されている有機化合物層22に含まれる発光層が発光し、この発光光が透明基板10側から取り出される。つまり本実施形態では、透明陽極21と金属陰極23との交差部分単位で1つの有機EL発光素子20が構成されており、該有機EL発光素子20が複数主走査方向に所定ピッチで配設されてライン状発光素子アレイが構成されている。
【0032】
なお本実施形態では、上述の通り、いわゆるパッシブマトリクス(passive matrix)駆動方式を採用しており、その駆動は適宜公知の方法によって行えばよいものであるから、それについての詳しい説明は省略する。また、このようなパッシブマトリクス駆動方式に限らず、TFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子を用いたアクティブマトリクス(active matrix)」駆動方式を採用することも可能である。
【0033】
本実施形態においてカラー感光体40としては、シアンに発色する第1感光材料を含む層、マゼンタに発色する第2感光材料を含む層、およびイエローに発色する第3感光材料を含む層を有するネガ型ハロゲン化銀カラーペーパーが用いられており、露光ヘッド1は、このカラー感光体40にフルカラー画像を露光可能に形成されている。以下、そのための構成を詳しく説明する。
【0034】
有機EL発光素子20はより詳しくは、有機化合物層22に含まれる発光層の組成に応じて赤色光を発するもの、緑色光を発するもの、および青色光を発するものからなり、以下、それらを区別して説明する場合は各々、有機EL発光素子20R、有機EL発光素子20G、および有機EL発光素子20Bと称することとする。上記カラー感光体40の第1感光材料は有機EL発光素子20Rから発せられた赤色光に感光してシアンに発色し、第2感光材料は有機EL発光素子20Gから発せられた緑色光に感光してマゼンタに発色し、そして第3感光材料は有機EL発光素子20Bから発せられた青色光に感光してイエローに発色する。
【0035】
本実施形態において有機EL発光素子20R、有機EL発光素子20G、および有機EL発光素子20Bは、上記有機化合物層22が複数積層されてなる多段積層素子として構成されている。ここで図4を参照して、この多段積層素子の構成について、有機EL発光素子20Bを例に挙げて説明する。本素子は、前述した通り透明基板10の上に透明陽極21、有機化合物層22および金属陰極23が順次形成されてなるものであるが、有機化合物層22は正孔輸送層22a、発光層22b、電子輸送層22cからなる発光構造が2段、間に電荷発生層22dを介して積層された構成を有する。したがってこの有機EL発光素子20Bにおいては、直流電源24から透明陽極21と金属陰極23との間に電流が流されると、2つの発光層22bから発光が取り出される。
【0036】
本実施形態において、有機EL発光素子20Bは上記の通り2段積層素子とされているが、他の有機EL発光素子20Rおよび有機EL発光素子20Gは積層数を変えて、それぞれ6段積層素子として形成されている。
【0037】
有機EL発光素子20Rは、図2に示すR領域に配置されており、主走査方向に並ぶ7800個で1つのライン状赤色発光素子アレイが構成され、そしてこのライン状赤色発光素子アレイが副走査方向に10個並設されて赤色発光素子アレイ6Rが構成されている。なお図1では、この赤色発光素子アレイ6Rを構成するライン状発光素子アレイの個数は便宜的に示してある。
【0038】
有機EL発光素子20Gは、図2に示すG領域に配置されており、主走査方向に並ぶ7800個で1つのライン状緑色発光素子アレイが構成され、そしてこのライン状緑色発光素子アレイが副走査方向に5個並設されて緑色発光素子アレイ6Gが構成されている。
【0039】
有機EL発光素子20Bは、図2に示すB領域に配置されており、主走査方向に並ぶ7800個で1つのライン状青色発光素子アレイが構成され、それが青色発光素子アレイ6Bとされている。
【0040】
ここで本実施形態では、図2に示したR、GおよびB領域を1枚のガラス基板上に形成して、G、RおよびB領域を同時独立にパッシブマトリクス駆動するようにしている。そして、G領域の透明陽極駆動用に260ch(チャンネル)の陽極駆動ICがカスケード接続で30個直列に配置され、金属陰極駆動用に16chの陰極駆動ICが1個設けられている。
【0041】
以下、本実施形態の露光装置の作用について説明する。図1に示す露光装置5において、カラー感光体40に画像露光する際には、露光ヘッド1の赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bが、それぞれ前記駆動回路80によりシアン画像データ、マゼンタ画像データおよびイエロー画像データに基づいて駆動され、それとともに副走査手段51によってカラー感光体40が矢印Yで示す副走査方向に定速搬送される。
【0042】
このとき、赤色発光素子アレイ6Rの10個のライン状赤色発光素子アレイからの赤色光による像、緑色発光素子アレイ6Gの5個のライン状緑色発光素子アレイからの緑色光による像、および青色発光素子アレイ6Bからの青色光による像が、それぞれ屈折率分布型レンズアレイ30R,30G,30Bによってカラー感光体40上に等倍で結像される。それにより、赤色光で露光された部分が、次いで緑色光で露光され、さらに青色光で露光される。
【0043】
ここで赤色露光については、カラー感光材料40の副走査移動に伴ってその同一箇所が、赤色発光素子アレイ6Rの10個のライン状赤色発光素子アレイからの赤色光で多重(10回)露光され、その10回の露光の合計で、シアン画像データに対応した所定の露光量がその箇所に与えられるようになっている。また緑色露光については、カラー感光材料40の副走査移動に伴ってその同一箇所が、緑色発光素子アレイ6Gの5個のライン状緑色発光素子アレイからの緑色光で多重(5回)露光され、その5回の露光の合計で、マゼンタ画像データに対応した所定の露光量がその箇所に与えられるようになっている。他方青色露光については、カラー感光材料40のある箇所は青色発光素子アレイ6Bにより1回だけ露光され、それによって、イエロー画像データに対応した所定の露光量がその箇所に与えられるようになっている。
【0044】
そして、上述のようにして形成されるフルカラーの主走査ラインが、カラー感光体40の搬送に伴って副走査方向に順次並んで形成され、カラー感光体40に2次元フルカラー画像の潜像が露光、記録される。この潜像は図示しない公知の現像手段によって現像処理され、顕像化される。
【0045】
なお、赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bの各有機EL発光素子20R、20Gおよび20Bは、パルス状に発光するように駆動され、例えばそのパルス幅を画像データに基づいて制御する等により、各画素毎に階調を出して、カラー感光体40に連続調画像が露光される。
【0046】
次に、本実施形態においてカラーバランスのずれを防止し、そして長寿命化を実現する点について説明する。本実施形態において、画像露光の解像度は600dpiで、主走査方向画素ピッチは42.3μmである。また、カラー感光材料40の特性から、赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bに求められる発光輝度Ir、IgおよびIbは、
Ir=18750cd/m2
Ig=25000cd/m2
Ib=500cd/m2
である。
【0047】
また、これらの必要発光輝度における赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bの発光構造1段の劣化時定数τr、τgおよびτbは、事前測定の結果、下記であることが判った。
【0048】
τr=100h(時間)
τg=200h
τb=3200h
また、有機EL発光素子20R、有機EL発光素子20Gおよび有機EL発光素子20Bの発光サイズはそれぞれ40×40μm、40×40μm、40×37.5μmであり、これより各々の発光面積Sr、SgおよびSbは、
Sr=1600μm2
Sg=1600μm2
Sb=1500μm2
となる。
【0049】
一方、先に述べた通り、有機EL発光素子20R、有機EL発光素子20Gおよび有機EL発光素子20Bの発光構造積層数Nr、NgおよびNbは、
Nr=6
Ng=6
Nb=2
であり、また赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bによる多重露光回数Mr、MgおよびMbは、
Mr=10
Mg=5
Mb=1
である。
【0050】
したがって、前述したM×N×τ×Sの値を各色毎に求めると、
Mr×Nr×τr×Sr=9600000(h・μm2
Mg×Ng×τg×Sg=9600000(h・μm2
Mb×Nb×τb×Sb=9600000(h・μm2
と、互いに同じ値となる。そこで本実施形態の露光装置においては、使用を重ねても赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bの相互間の光の強度比を略一定に保つことができ、露光画像のカラーバランスがずれることを防止できる。その理由は先に述べた通りである。
【0051】
また、赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bに発光構造を積層した多段構造を採用して1つの発光構造の発光輝度を低く抑えるとともに、赤色発光素子アレイ6Rおよび緑色発光素子アレイ6Gはライン状発光素子アレイが複数並設されてなるものとして、それらにより多重露光するようにしたので、該発光素子アレイ6R、6Gおよび6Bの高寿命化つまりは露光装置の高寿命化が実現される。その詳しい理由も、先に述べた通りである。
【0052】
ここで、本第1の実施形態における上記各数値をまとめて下の(表1)に示す。
【表1】

【0053】
なお、本実施形態のようにパルス幅変調した光で露光する場合は、基本的な駆動方法および露光方法は、下記の通りとするのが好ましい。まず、露光装置の出荷前に赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bのそれぞれを適切な定電流値で駆動し、そのとき屈折率分布型レンズアレイ30R,30G,30Bを通過した露光光の強度を測定する。また、この露光光強度のバラツキを補正するように駆動パルス幅を補正する補正係数を求めておく。そして、実際にカラー感光材料40に露光する際には、画像データおよび上記補正係数に基づいて、露光光のパルス幅変調を行う。
【0054】
また、有機EL発光素子20を構成する透明陽極21および金属陰極23は、図3に示した直線状の形状とする他、図5に示すような形状を採用することもできる。この図5の例では、有機EL発光素子20の主走査方向配列が1本の金属陰極23当たり2行形成されており、一方の行の有機EL発光素子20と他方の行の有機EL発光素子20は、互いに主走査方向に隙間を置かずに配置されている。この場合は、例えば一方の行の有機EL発光素子20によって主走査ラインの奇数番目の画素を露光し、他方の行の有機EL発光素子20によって同一主走査ラインの偶数番目の画素を露光するように駆動すれば、1本の主走査ラインは画素間に隙間が無い状態に露光されるようになる。
【0055】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による露光装置について説明する。この第2実施形態は上述した第1実施形態と比較すると、有機EL発光素子20Bの発光サイズが異なる点が異なり、その他の点は基本的に同様に構成されたものである。すなわち本実施形態において有機EL発光素子20R、有機EL発光素子20Gおよび有機EL発光素子20Bの発光サイズは全て共通の40×40μmとされ、これより各々の発光面積Sr、SgおよびSbは、
Sr=1600μm2
Sg=1600μm2
Sb=1600μm2
となっている。
【0056】
そこで本実施形態においては、前述したM×N×τ×Sの値を各色毎に求めると、
Mr×Nr×τr×Sr=9600000(h・μm2
Mg×Ng×τg×Sg=9600000(h・μm2
Mb×Nb×τb×Sb=10240000(h・μm2
となる。Mb×Nb×τb×Sbの値は、Mr×Nr×τr×Srの値およびMg×Ng×τg×Sgの値と異なっているが、この程度の差であれば、露光画像のカラーバランスが顕著にずれることを防止可能である。一般には、M×N×τ×Sの値が各色間で1:2程度の比率内に収まっていれば、露光画像のカラーバランスが顕著にずれることを防止可能である。
【0057】
なおこの場合、青色発光素子アレイ6Bは輝度が469cd/m2(=500cd/m2×1500/1600)となるように駆動され、それにより発光輝度×発光面積の値が、第1実施形態の場合と等しく設定される。
【0058】
ここで、本第2の実施形態における上記各数値をまとめて下の(表2)に示す。
【表2】

【0059】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態による露光装置について説明する。この第3実施形態も、基本構成は第1実施形態と同様で、M、N、τ、Sの数値が異なるものである。本第3の実施形態における上記各数値をまとめて下の(表3)に示す。
【表3】

【0060】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、M×N×τ×Sの値が各色間で互いに等しくなっているので、露光画像のカラーバランスがずれることを厳密に防止できる。
【0061】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態による露光装置について説明する。この第4実施形態も、基本構成は第1実施形態と同様で、M、N、τ、Sの数値が異なるものである。また本実施形態において、画像露光の解像度は400dpiで、主走査方向画素ピッチは63.5μmである。そして、カラー感光材料40の特性から、赤色発光素子アレイ6R、緑色発光素子アレイ6Gおよび青色発光素子アレイ6Bに求められる発光輝度Ir、IgおよびIbは、
Ir=12000cd/m2
Ig=16000cd/m2
Ib=300cd/m2
である。
【0062】
本第4の実施形態における上記各数値を、まとめて下の(表4)に示す。なお、有機EL発光素子20R、有機EL発光素子20Gおよび有機EL発光素子20Bの発光サイズは共通の50×50μmであり、これより各々の発光面積Sr、SgおよびSbは、2500μm2となっている。
【表4】

【0063】
本実施形態においても、M×N×τ×Sの値が各色間で互いに略等しくなっているので、露光画像のカラーバランスがずれることを厳密に防止できる。
【0064】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態による露光装置について説明する。この第5実施形態は第4実施形態と比較すると、有機EL発光素子20Bの発光サイズが変えられたものである。すなわち本実施形態において、有機EL発光素子20Bの発光サイズは50×52.5μm、発光面積Sbは2625μm2となっている。本第5の実施形態における上記各数値をまとめて下の(表5)に示す。
【表5】

【0065】
なお、青色発光素子アレイ6Bは、輝度が285.7cd/m2(=300cd/m2×2500/2625)となるように駆動され、それにより発光輝度×発光面積の値が、第4実施形態の場合と等しく設定される。
【0066】
上述した各実施形態ではカラーフィルターを使用していないが、混色を抑制する等の目的から、3色それぞれの露光光スペクトルを狭窄化するために、バンドパスフィルター、ローパスフィルター、ハイパスフィルター等からなるカラーフィルターを装荷してもよい。その際の各色の素子劣化時定数としては、カラーフィルター透過後の光強度が、露光に必要な光強度と一致する条件での1段素子の劣化時定数を用いればよい。
【0067】
ここで、前述した多重露光回数M、発光構造の積層数N、発光素子の発光面積Sの決め方の手順について、一例を説明する。
【0068】
(1)まず、露光装置に求められる解像度(例えば600dpi等)から、発光素子サイズを仮決めする。
【0069】
(2)次いで、感光材料感度、レンズ透過率、露光スピード等を考慮し、各色毎に必要な露光エネルギー(発光輝度)を算出する。
【0070】
(3)上記の仮決めした発光素子サイズで、各色それぞれに発光構造の積層数N=1の発光素子を作製し、(2)で算出した発光輝度での劣化時定数τを求める。
【0071】
(4)各色についてのM×N×τの値が略同じになるように、M、Nの組み合わせを決定する。
【0072】
(5)さらに、発光面積Sの値を微調整することにより、M×N×τ×Sの値が各色間で近い値をとるようにする。
【0073】
ここで、発光構造の積層数Nに応じて有機EL発光素子の駆動電圧はN倍になるので、上記(4)の過程においては、使用する駆動ICの耐電圧を考慮してNの値を決定する必要がある。また、発光構造の積層数がNである多段積層型の有機EL発光素子の成膜には、発光構造を1段だけ有する有機EL発光素子と比べて、N倍の成膜時間が必要となる。上記の耐電圧および成膜時間の双方を考慮すると、実用上、積層数Nは10程度が略上限である。また多重露光回数Mを増やすと、副走査方向の露光ヘッドサイズが大きくなるので、並列列数は少ない方がより好ましい。したがって、発光構造の積層数Nは10以下程度でできるだけ多くし、また多重露光回数Mはできるだけ小さい値を選択するのが好ましい。
【0074】
なお、上記各実施形態の露光装置は、赤色光、緑色光および青色光によってそれぞれシアン、マゼンタおよびイエローを発色させるように構成されているが、その他の波長領域の光、例えば赤外域の3波長の光等でそれぞれシアン、マゼンタおよびイエローを発色させることも可能であり、本発明はそのように構成された露光装置に適用することも勿論可能である。さらに本発明は、ハロゲン化銀カラーペーパー以外のカラー感光材料を露光させる露光装置に対しても、同様に適用可能である。
【0075】
また発光素子アレイは、有機EL発光素子以外の発光素子を採用して構成することも勿論可能であり、先に説明したLEDとアパーチャマスクを組み合わせてなる素子、液晶シャッタ素子、PLZT素子等も適宜採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施形態による露光装置の側面図
【図2】上記露光装置の露光ヘッド部の概略平面図
【図3】上記露光ヘッド部の電極の形状を示す平面図
【図4】上記露光装置の発光素子の積層構造を説明する概略図
【図5】露光ヘッド部の電極形状の他の例を示す平面図
【符号の説明】
【0077】
1 露光ヘッド
5 露光装置
6R 赤色発光素子アレイ
6G 緑色発光素子アレイ
6B 青色発光素子アレイ
10 透明基板
20R 赤色有機EL発光素子
20G 緑色有機EL発光素子
20B 青色有機EL発光素子
21 透明陽極
22 有機化合物層
22a 正孔輸送層
22b 発光層
22c 電子輸送層
22d 電荷発生層
23 金属陰極
30R,30G,30B 屈折率分布型レンズアレイ
40 カラー感光体
51 副走査手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ発光素子が1列に並設されてなり、互いが該発光素子の並び方向と略直角な方向に並設された、相異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイと、
これら複数種類の発光素子アレイから発せられた光が照射される位置にカラー感光材料を保持し、このカラー感光材料と前記複数種類の発光素子アレイとを、該複数の発光素子アレイの並設方向に相対移動させる副走査手段とを備えてなる露光装置において、
前記複数種類の発光素子アレイのうちの少なくとも1種類において前記発光素子が、発光構造が複数積層されてなる多段積層素子として構成されていることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
それぞれ発光素子が1列に並設されてなり、互いが該発光素子の並び方向と略直角な方向に並設された、相異なる波長領域の光を発する複数種類の発光素子アレイと、
これら複数種類の発光素子アレイから発せられた光が照射される位置にカラー感光材料を保持し、このカラー感光材料と前記複数種類の発光素子アレイとを、該複数の発光素子アレイの並設方向に相対移動させる副走査手段とを備えてなる露光装置において、
少なくとも2種類の発光素子アレイの間で、発光素子の発光面積が不均一とされていることを特徴とする露光装置。
【請求項3】
前記複数種類の発光素子アレイのうちの少なくとも1種類が、前記発光素子の列を前記相対移動の方向に複数連ねた構成とされて、前記カラー感光材料の同一箇所を多重露光可能とされていることを特徴とする請求項1または2記載の露光装置。
【請求項4】
前記発光素子アレイの各種類毎に、前記同一箇所の露光回数をM、前記発光構造の積層数をN、前記発光構造1段の露光時の発光輝度における劣化時定数をτ、該発光素子の発光面積をSとしたとき、M×N×τ×Sの値が、前記複数種類の発光素子アレイの間で互いに略同じに設定されていることを特徴とする請求項3記載の露光装置。
【請求項5】
前記複数種類の発光素子アレイとして、3種類の発光素子アレイが用いられていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の露光装置。
【請求項6】
前記3種類の発光素子アレイが、それぞれ赤、緑および青の波長領域の光を発するものであることを特徴とする請求項5記載の露光装置。
【請求項7】
前記複数種類の発光素子アレイとして、有機EL発光素子アレイが用いられていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の露光装置。
【請求項8】
前記カラー感光材料として、ハロゲン化銀カラーペーパーを用いることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−38969(P2006−38969A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215132(P2004−215132)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】