説明

露光装置

【課題】液晶の配向変化に基づく屈折率分布により形成されたレンズを用いた露光において、露光に要する時間を短縮することができる露光装置を提供する。
【解決手段】露光装置1は、第1の光の照射によって配向変化を発生する液晶板22と、液晶板22に第1の光を照射して液晶板22に配光変化を誘起して屈折率分を形成し、屈折率分布が緩和する前に第2の光を液晶板22に形成された屈折率分布に照射して第2の光の照射に感光する感光体3に集光させる光源20とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光路中に液晶レンズを配置し、感光体に配光すべき画像光の光学補正を行う露光装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された露光装置は、円筒状に形成されて露光の副走査方向に回転する感光体ドラムと、感光体ドラムに光を照射する光源と、電極によって制御され、電極が形成する電界分布により液晶の配向を変化させて屈折率分布によりレンズを形成して光源の光を光学補正する液晶レンズと、光の照射方向を副走査方向に偏向させるよう液晶レンズの電極に電圧を印加する制御回路と、感光体ドラムの副走査方向における移動誤差を超音波で検出する超音波センサとを有し、制御回路は、超音波センサが検出した誤差に基づいて液晶レンズの電極に対する電圧印加を制御することで、感光体の回転ムラに応じた副走査方向への光軸を偏向する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−350769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、液晶の配向変化に基づく屈折率分布により形成されたレンズを用いた露光において、露光に要する時間を短縮することができる露光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の露光装置を提供する。
【0007】
[1]第1の光を発光する第1の発光素子と、第2の光を発光する第2の発光素子と、前記第1及び第2の発光素子と前記第2の光の照射によって感光する感光体との間に設けられ、前記第1の光の照射によって配向変化を生じて凸型の屈折率分布を形成し、前記第2の光を前記屈折率分布によって前記感光体に集光する液晶板とを有する露光装置。
【0008】
[2]前記第1の発光素子は、前記第1の光を偏光して照射し、前記液晶板は、前記第1の光の偏光方向と直交する偏光光を透過する前記[1]に記載の露光装置。
【0009】
[3]第1の光を発光する第1の発光ダイオードと、前記第1の光を偏光する第1の偏光板と、第2の光を発光する第2の発光ダイオードと、前記第2の光を前記第1の偏光板の偏光方向と直交する方向に偏光する第2の偏光板と、前記第1及び第2の発光素子と前記第2の光の照射に感光する感光体との間に設けられ、前記第1の光の照射によって配向変化を生じて凸型の屈折率分布を形成し、前記第2の偏光板と同一方向の偏光光を透過することで、前記第2の光を前記屈折率分布によって前記感光体に集光する液晶板とを有する露光装置。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、液晶レンズを用いた露光において、露光に要する時間を短縮することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、感光体に対する露光ノイズを減少することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、液晶レンズを用いた露光において、露光に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る露光装置の構成例を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、露光装置の構成例を示す主走査方向から見た側面図である。
【図3】図3は、露光装置を含む画像形成装置の主要部の制御系の構成例を示すブロック図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、露光装置の動作例を示す側面図である。
【図5】図5は、露光装置の動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】図6は、露光装置の他の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る露光装置の構成例を示す分解斜視図である。
【0015】
この露光装置1は、複写機、プリンタ等の画像形成装置の一部を構成するものであり、後述する光源駆動部によって駆動され、感光体3に露光光を照射する露光部2を有し、副走査方向Dに移動する感光体3に露光部2から出射された露光光を主走査方向Dに走査することで、感光体3上に静電潜像を形成する。感光体3上の静電潜像は、画像形成装置の画像形成部でトナー像として現像された後、トナー像が記録用紙に転写、定着される。
【0016】
なお、感光体3は、平面状に図示されているが、円筒状の感光体ドラムを用いて回転させることで副走査方向Dに走査されるよう構成してもよい。また、感光体3を固定して露光部2を副走査方向Dに移動するように構成してもよい。
【0017】
露光部2は、主走査方向Dに所定のピッチで配置された第1の発光素子20A〜20A(これらを総称して20Aという。)及び第2の発光素子20B〜20B(これらを総称して20Bともいう。)を備える光源20と、互いに偏光方向が直交する第1の偏光板21A及び第2の偏光板21Bと、露光により配向変化を誘起する液晶板22と、第2の偏光板21Bと偏光方向が同一の第3の偏光板23とを有する。
【0018】
光源20は、液晶板22に配向変化を誘起するために光を照射する複数の第1の発光素子20A〜20Aと、感光体3に光を照射する複数の第2の発光素子20B〜20Bとを基板20a上に有する。
【0019】
第1の発光素子20A〜20Aは、例えば、20×20μmの発光面積を有し、それぞれ主走査方向Dに20μm程度のピッチで複数個設けられる。第1の発光素子20A〜20Aは、発光波長が、液晶板22を構成する液晶材料の配向変化を誘起する発光ダイオードである。
【0020】
第2の発光素子20B〜20Bは、例えば、20×20μmの発光面積を有し、それぞれ主走査方向Dに20μm程度のピッチで複数個設けられる。第2の発光素子20B〜20Bは、発光波長が、例えば、780nmの近赤外光の発光ダイオードである。
【0021】
なお、第1の発光素子20A〜20Aと第2の発光素子20B〜20Bとはそれぞれペアで配置されるが、図示するような副走査方向Dに並べた配置に限らず、互いに近傍に配置されていればよい。また、同図では、第1の発光素子20A〜20Aと第2の発光素子20B〜20Bとは5個ずつ設けられているが、個数を限定するものではなく、単数又は複数個設けても良い。
【0022】
液晶板22は、所定の波長の光を照射することにより液晶の配向変化を誘起する光応答性材料、例えば、アゾベンゼンやバクテリオロドプシン等を用いて構成される。
【0023】
図2は、露光装置1の構成例を示す主走査方向Dから見た側面図である。
【0024】
第1及び第2の偏光板21A及び21Bは、第1及び第2の発光素子20A及び20Bにそれぞれ接触するように配置される。第3の偏光板23は、液晶板22に接触するよう配置される。なお、これらの配置は、接触せずに近傍に配置されるものでもよいが、露光装置1を小型化するために接触しているのが望ましい。
【0025】
光源20と液晶板22とは、距離dを隔てて配置され、液晶板22と感光体3とは、距離dを隔てて配置される。距離d及びdは、第2の発光素子20Bが照射する光が、液晶板22によって光学補正された結果、感光体3に集光されるように設定する。
【0026】
光源20は、幅WA1の第1の発光素子20Aと幅WB1の第2の発光素子20BとをピッチPで配置する。幅WA1及びWB1は、上述したように、例えば、20μmである。また、ピッチPは、例えば、数十μmである。
【0027】
図3は、露光装置1を含む画像形成装置の主要部の制御系の構成例を示すブロック図である。
【0028】
露光装置1は、第1及び第2の発光素子20A及び20Bを発光させるためにそれぞれ駆動電圧を印加する第1及び第2の光源駆動部40A及び40Bと、感光体3を副走査方向Dに移動する感光体駆動部41と、第1及び第2の光源駆動部40A及び40Bと感光体操作部41との動作するタイミングを制御するCPU(Central Processing Unit)等の制御部4とを有する。
【0029】
(実施の形態の動作)
以下に、本発明の実施の形態における露光装置1の動作を各図を参照しつつ、(1)屈折率分布の形成動作、(2)感光体に対する照射動作、(3)屈折率分布の緩和に分けて説明する。
【0030】
図4(a)〜(c)は、露光装置1の動作例を示す側面図である。
【0031】
(1)屈折率分布の形成動作
まず、図4(a)に示すように、制御部4は、第1の光源駆動部40Aを制御して図1において左端に位置する第1の発光素子20Aを発光させ、第1の偏光板21Aによって偏光された照射光lを液晶板22に照射して、液晶板22の範囲Eに配向変化を誘起し、液晶に、第2の発光素子からの出射光が偏光板21Bを透過した偏光にとって、凸型の屈折率分布Rを形成する。なお、照射光lは、偏光方向の直交する第3の偏光板23によって遮られるため、感光体3へは照射されない。
【0032】
液晶板22にアゾベンゼンやバクテリオロドプシン等を用いた場合、光に対する配向変化の反応速度は、例えば、照射する光の波長を532nm、強度を数十mW/cmに設定した場合、数nsec〜数百μsecである。
【0033】
図5は、露光装置1の動作例を示すタイミングチャートである。また、図6は、露光装置1の他の動作例を示すタイミングチャートである。
【0034】
制御部4は、図5に示すように、上述した第1の光源駆動部40Aの駆動電圧を時刻t11からt12まで予め定めた電圧Vに制御する。その結果、図1において左端に位置する第1の発光素子20Aが発光し、照射光lが液晶板22に照射されることで、中心の屈折率がnとなる屈折率分布Rが形成される。
【0035】
(2)感光体に対する照射動作
次に、図4(b)に示すように、「(1)屈折率分布の形成動作」で形成した屈折率分布Rが緩和する前に、つまり、図5における時刻t21より前に、露光装置1の制御部4は、第2の光源駆動部40Bを制御して第1の発光素子20Aに対応する第2の発光素子20Bを発光させ、例えば、時刻t12〜t13の間、第2の偏光板21Bによって偏光された照射光lを液晶板22に照射する。なお、図5では、第1の光源駆動部40Aの駆動が時刻t12において終了した後に、第2の光源駆動部40Bの駆動を開始しているが、第1及び第2の光源駆動部40A及び40Bの駆動が同時に行われる時間帯が存在してもよい。例えば、図6のように、第1の発光素子が発光している時間帯に第2の発光素子が発光を開始し、かつ、終了するようにしても良い。
【0036】
範囲Eに含まれる範囲Eに照射されたものは、屈折率分布Rによって感光体3に集光lとして集光され、照射光lは、偏光方向が同一の第3の偏光板23を透過する。なお、集光lが照射される範囲がWA2=WA1となるよう、先述した距離d及びd並びに屈折率分布Rが調整される。また、集光lが集光される範囲は、第1の発光素子20Aの発光面の中心からピッチP=Pだけオフセットされた位置となる。
【0037】
また、照射光lのうち、範囲E外の幅P=Pに照射されたものは、ノイズ光lとして第3の偏光板23を透過する。なお、ノイズ光lを減少するため、照射光lの照射範囲が範囲Eにすべて入るように構成してもよい。
【0038】
感光体3は、集光lによって光電変換し、発生した電荷により静電潜像を形成する。
【0039】
(3)屈折率分布の緩和
次に、図4(c)に示すように、制御部4は、第2の光源駆動部40Bを制御して図5に示す時刻t13において第2の発光素子20Bの発光を止め、屈折率分布Rが緩和する時刻t21まで待機する。少なくとも、主走査方向Dにおいて次に発光する隣の第2の発光素子20Bが、照射光lを照射する範囲に、1つ前の屈折率分布Rが残っている間は、制御部4は、第2の発光素子20Bの隣の第2の発光素子20Bの発光を待機する必要がある。なお、液晶板22の屈折率分布Rの緩和時間は、数十nsec〜数十μsecである。
【0040】
以上に説明した(1)〜(3)の動作は、第1及び第2の発光素子20A及び20Bのペアについて、主走査方向Dに順番に実行される。すなわち、時刻t11〜t21の間は、第2の発光素子20B及び20Bが発光し、時刻t21〜t31の間は、第2の発光素子20B及び20Bが発光する。
【0041】
主走査方向Dの露光が完了すると、副走査方向Dに1ライン分移動した後、再び主走査方向Dに(1)〜(3)の動作を開始する。これらの動作を繰り返して、感光体3に静電潜像を形成する。なお、主走査方向Dの露光は、第2の発光素子20B及び20Bのペアについて、それぞれ数msecの間隔で実行する。
【0042】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。
【0043】
例えば、第2の発光素子20B及び20Bが偏光を発光するもの、例えば、直線偏光のレーザー光等を発光するものであれば、第2の偏光板21B及び21Bは設けなくてもよい。ただし、第2の偏光板21Bは、第2の発光素子20Bの円偏光や楕円偏光によるノイズを除去するために設けてもよい。
【0044】
また、第1及び第2の発光素子20A及び20Bのペアについて主走査方向Dに順番に走査する方式を説明したが、走査方法はこれに限るものではなく、複数の発光素子の同時発光や、予め定めたパターンで発光させるものであってもよい。好ましくは、液晶板22に形成された屈折率分布Rが緩和する前に影響を与えない位置に他の屈折率分布Rを形成するような発光パターンを選択し、走査に要する時間を短縮する。
【符号の説明】
【0045】
1…露光装置、2…露光部、3…感光体、20…光源、20A…第1の発光素子、20B…第2の発光素子、21A…第1の偏光板、21B…第2の偏光板、22…液晶板、23…第3の偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を発光する第1の発光素子と、
第2の光を発光する第2の発光素子と、
前記第1及び第2の発光素子と前記第2の光の照射によって感光する感光体との間に設けられ、前記第1の光の照射によって配向変化を生じて凸型の屈折率分布を形成し、前記第2の光を前記屈折率分布によって前記感光体に集光する液晶板とを有する露光装置。
【請求項2】
前記第1の発光素子は、前記第1の光を偏光して照射し、
前記液晶板は、前記第1の光の偏光方向と直交する偏光光を透過する請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
第1の光を発光する第1の発光ダイオードと、
前記第1の光を偏光する第1の偏光板と、
第2の光を発光する第2の発光ダイオードと、
前記第2の光を前記第1の偏光板の偏光方向と直交する方向に偏光する第2の偏光板と、
前記第1及び第2の発光素子と前記第2の光の照射に感光する感光体との間に設けられ、前記第1の光の照射によって配向変化を生じて凸型の屈折率分布を形成し、前記第2の偏光板と同一方向の偏光光を透過することで、前記第2の光を前記屈折率分布によって前記感光体に集光する液晶板とを有する露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152676(P2011−152676A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14526(P2010−14526)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】