説明

露出用コンパウンド、露出プロセス及び露出装置

本発明は、明確なSi結晶を含む材料の表面、特に、明確な初晶Siを含むアルミニウム材料から製造されたシリンダ壁を露出させるための物質に関する。本発明の露出物質は、特に好ましい形として、4μm〜0.1μmの範囲の粒径の炭化ケイ素粒体及び/又はAlセラミックファイバーから構成されるきわめて微粒の露出材料を好適に含んでおり、この露出材料は粘弾性体のプラスチック担体コンパウンドの中に埋入されている。本発明のこの露出物質を使用する本発明による方法及び対応する装置も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、例えば明確な初晶Siを含む材料から製造されたシリンダ壁のような表面を露出させるための露出用コンパウンド、露出プロセス、及び露出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車技術の分野では、今日、部品の稼動寿命を大幅に延長することができるが可能な限り軽量化を実現し得るような材料特性を有する材料の使用が増大している。例えば、現代のエンジンメーカは、軽量のアルミニウム材料の使用量をますます増大させているが、これらのアルミニウム材料は、例えば、この種のアルミニウム材料から製造されるクランクケース中のシリンダ内径表面をできるだけ摩耗しないようにするための添加物を含んでいる。純粋なアルミニウムを使用したのでは、それが比較的柔軟であるためにこの耐摩耗性を得ることができないからである。これらのシリンダ内径表面又はシリンダ壁に主として使用される材料は、例えば、ロカシル(Locasil)、シリテック(Silitec)、SAE390のような商品名の材料として、あるいは過共晶のアルミニウムとして知られている。これらの材料は、アルミニウム材料の中に埋入された明確な初晶Siを含むことができるが、この初晶Siがこれらの材料の所要の強度を確保している。
【0003】
従来のねずみ鋳鉄材料を使用する場合にも必要であるが、明確な初晶Siを含む上記の最新の材料を使用する際には、これらの材料から形成されるシリンダ壁を、運転中の擦過痕の形成を防止し得るように、最終の機械仕上げ段階で精密仕上げすることが必要である。特に例えばねずみ鋳鉄のような従来材料の場合には、このタイプの精密仕上げはホーニング及び/又はラッピングとして知られている。アルミニウムの中に埋入された明確な初晶Siを含む最新の材料の場合には、これらの初晶Siを、埋入母体のアルミニウムから機械的な方法、化学的な方法あるいは水溶液法によって露出させて、最も耐久性の高いシリンダ壁を提供できるようにすることが必要である。
【0004】
例えば、粘結ホーニング砥石によって初晶Siを機械的に露出させる方法が知られている。この場合は、ホーニング砥石がシリンダ壁上を摺動することによって、同時に材料の初晶Siが丸められ、これによって、ピストンリングが、明確な初晶Siを含むアルミニウム材料から製造されたシリンダの仕上げられた表面上を円滑に滑動することができる。しかし、大きな空隙を有する多孔質の露出用ホーニング砥石が柔らかいアルミニウムを研削する能力は限られている。該当する工具を短時間使用しただけでも、この露出用ホーニング砥石は、その表面に柔らかいアルミニウムが詰まり、露出用ホーニング砥石の空隙が埋め込まれるかあるいは閉塞される結果に至る。このことは、又、露出用ホーニング砥石それ自体が鋭くなることはあり得ないので、工具の実際寿命を超えて露出用ホーニング砥石を使用し続けると、柔らかいアルミニウムが、仕上げされ露出加工されるべきシリンダ壁の全面にわたって付着し始めることを意味しており、これは、ベアリング表面に擦過痕又はピッチングの形の損傷をもたらす結果を招来する。周知のこのタイプの露出用ホーニング砥石を使用した場合は、4〜8μmの結晶サイズの初晶Siを有する材料の露出用としては、シリンダ内径の大量の連続生産に要求されるような長い稼動寿命を効率的に得ることはできない。
【0005】
水酸化ナトリウム溶液を用いて行う水による表面初晶Si露出法として知られる方法が一般的に知られており、現在、連続生産に標準的に用いられている。しかし、この場合は、この方法で露出される初晶Siが丸くならず、鋭いエッジをほぼそのまま残している。この鋭いエッジのために、明確な初晶Siを有するシリンダ壁におけるピストンリングの円滑な滑動が不可能になる。この円滑な滑動は、上記の機械的な当該初晶Siの露出法の場合には可能であったものである。
【0006】
サービス部門分野においてサンネン(Sunnen)社の露出法として知られる方法で、露出用にラッピングペーストを使用する方法もそれ自体として周知されている。
【0007】
しかし、これら後者の2つの解決方法は、高コストであるために大量の連続生産には不経済であり、及び/又は、これらの方法の場合、SiC粒子が同伴されるという欠点にも悩まされる。このSiC粒子は、例えば、廃水からろ過することが困難あるいは不可能で、特に軸受け表面部分における摩耗を増大させる恐れがある。
【0008】
現在、炭化ケイ素の粒体が露出材料としてすでに使用されているが、これは、5μmを超える粒子径というきわめて粗大な粒子のみがオイルベースのラッピングペーストにおいて使用されているだけである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、大量の連続生産条件の下で最大可能なプロセスの信頼性を実現し、同時に製造コストの低い露出用コンパウンド、露出プロセス、及び露出装置を提供することにある。さらに同時に、仕上げられる材料中の露出されるべき初晶Siのエッジが丸められ、初晶Siの削剥された部分又は断片化された部分を仕上げ表面から完全に除去することができ、さらに又、このタイプの表面における潤滑油の付着と軽快な滑動特性とを改善するために、仕上げられた表面の改善された残留基礎粗さを作り出すことができるような材料、プロセス、及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のこの目的は、請求項1に記載の本発明による露出用コンパウンド、請求項12に記載の本発明による露出プロセス、及び請求項15に記載の本発明による装置によって解決される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態がそれぞれの従属請求項に規定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
特に、明確な初晶Siを含む材料からなるシリンダ壁を露出させるための本発明による露出用コンパウンドは、本発明によれば、粘弾性体のプラスチック担体コンパウンドに埋入された露出材料を含んでいる。この露出材料を粘弾性体のプラスチック担体コンパウンドに埋入することによって、一方では、大量の連続生産条件の下で、達成されるべき良好な露出機能が実現され、他方では、露出され、部分的に削剥された初晶Si又はその部分を、仕上げられる表面領域から、すなわち、特に露出されるべきシリンダ壁の領域から完全に除去することが簡単に可能になる。
【0013】
本発明による露出材料は、4μm〜1μmの範囲の粒径を有する炭化ケイ素の粒体から構成するのが望ましい。
【0014】
この場合、この粒径分布は、所定の平均値を中心とした狭い分布のものであることが望ましい。本発明では、本発明による比較的細かい範囲の粒径を有する炭化ケイ素の粒体を選定していることによって、露出対象である平均粒径8μmの結晶構造の初晶Siの間の柔らかいアルミニウム母体生地を特に簡単に排除離散させ、露出されるべき材料である硬質で耐摩耗性の初晶Siを覆っている柔らかいアルミニウム表皮を除去することが可能になる。
【0015】
構成成分として炭化ケイ素の粒体を含有する上記の従来型ラッピングペーストを使用することも可能であるが、この従来型ペーストにおいては、粒径がさらに大きく、粒径分布の幅が広い炭化ケイ素粒体が用いられている。この炭化ケイ素粒体はオイル基質の中に固定されない形で自由に分布している。このタイプの炭化ケイ素粒体は先行技術から知られるものであるが、ホーニングオイル中のSiC粒子による微粒初晶Siの露出法は、アルミニウム母体生地を確実に除去し、初晶Siを露出させる機能を果たす。
【0016】
本発明の特に好ましい実施態様においては、露出材料としてセラミックファイバーを、炭化ケイ素粒体の代わりに、あるいはそれと組み合わせて、本発明に従って用いることも可能である。この場合、セラミックファイバーはAl製とすることができるが、これが特に好ましい。このファイバーは、本発明が提供する露出用コンパウンドの粘弾性体プラスチック担体コンパウンドの中で特に良好な付着性を備えている。
【0017】
本発明に基づく露出用コンパウンドの好ましい実施態様においては、露出用コンパウンドが、セルロース、好ましくは木材繊維及び/又はサイザル繊維の有機添加物を、露出用コンパウンドの60容積%まで含んでいる。この添加物は、一方では、粘着性のないアルミニウムの微小片を結合するのに特に効果的であり、その表面が枝分かれしているために、露出用コンパウンドへのアルミニウムの集積を改善し、それによって、前段の加工段階からのアルミニウムとあらゆる残留オイルとを保留する露出用コンパウンドの能力を増大させる。又他方、洗浄用の水によって浮上分離する選択肢をも提供する。
【0018】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、露出用コンパウンドが、40容積%までの有機性の結合剤を含むことができ、この場合、この有機結合剤は、特に、天然ワックスの形で供されると好ましい。さらに、本発明による露出用コンパウンドは、露出用コンパウンドの20容積%までのでんぷん粉末の添加物、及び/又は、露出用コンパウンドの40容積%までの天然の動物性及び/又は植物性の油脂添加物を好ましくは含むことができる。又、本発明による露出用コンパウンドの好ましい実施形態は、露出用コンパウンドの20容積%までの樹脂添加物を含むことができる。
【0019】
上記の添加物は、比較的高い温度の洗浄プロセスにおいて、例えば、沈降分離又は浮上分離することができるので、これらをリサイクルすることが可能である。同時に、露出用コンパウンドを架橋して付着性を持たせるために、上記の添加物を用いることができる。さらに、上記の添加物は、本発明による露出用コンパウンドを、仕上げるべき表面が前段の加工段階の加工油汚染によってまだ汚染されているが、それにも拘らず前洗浄段階なしに露出ステップを行うことができるようなプロセスに使用可能にすることに寄与する。このプロセスは、本発明によるこのタイプの露出用コンパウンドを大量の連続生産に用いる場合に特に、プロセス上の特性を大きく改善することができる。さらに、上記の添加物は、露出用コンパウンドの粘度をさらに付加的に増大させることができ、従ってその粘着特性をさらに増進させ得る可能性があるが、これは、削剥されたあらゆる初晶Si、又はこの初晶Siの部分の完全な除去を一層改善するという結果をもたらす。
【0020】
本発明による露出用コンパウンドに用いられる粘弾性体のプラスチック担体コンパウンドとしては、問題にしている特殊な大量の連続生産用途と、露出されるべき表面の材料とを考慮すれば、いかなる適切な粘弾性体プラスチック担体コンパウンド材料を使用してもよいことに留意されたい。
【0021】
本発明による露出用コンパウンドは、リサイクル化可能な実施形態が特に好ましい。リサイクル化の可能性は、本発明に基づくプロセスと関連させて以下に詳述するリサイクルステップに従って、有利に作り出すことができる。
【0022】
加工部品を表面仕上げするための本発明に基づくプロセス、特に、明確な初晶Siを有する材料から製造されたシリンダ壁を露出させるためのプロセスであって、特に請求項1〜11のいずれか一項に記載の露出用コンパウンドを使用するプロセスは、次のステップを含んでいる。すなわち、
加工部品、特にシリンダ壁を粗仕上げするステップと、
加工部品を精密切削するステップと、
粘弾性体プラスチック担体コンパウンドと、粘弾性体プラスチック担体コンパウンドの中に埋入された露出材料とを含む露出用コンパウンドによって露出加工するステップと、
の各ステップである。シリンダ内径をホーニング加工する標準的なステップの必要性がなく、プロセスがきわめて経済的になる。
【0023】
本発明による露出プロセスは、特に、仕上げられる表面の良好なあるいは目標として定めた残留基礎粗さを実現する。この結果、精密切削仕上げに引き続いて粘弾性露出加工によって加工条痕を深めるために、本発明によるプロセスによって仕上げられた表面に付着し得る油膜の保留量を高めることが可能になり、このため滑動特性が改善される。新しい滑動特性は、又、ピストンリングが接触するシリンダ壁の部分ではなく、ピストンスカートが接触するシリンダ壁の下部において、目標に合わせて実現される。これらの滑動特性は、表面の粗さあるいは加工条痕の深さを利用して潤滑油の保有容積を目標に合わせて設定することによって可能になる。
【0024】
緩やかな、表面が丸められた微小な潤滑油流路を有する新しい交互にクロスする旋回構造を作り出したことによって、特に低粘度油を使用した場合、良好な非常時滑動特性と大きな潤滑油膜保有能力とを備えた低摩擦の滑動面が実現される。
【0025】
これとは対照的に、精密ホーニングによって生成されるクロスハッチは、主として、定位置で機械仕上げする(かつホーニング砥石の一部分を形成する)切削粒体が使用されるために、又、ホーニング工具の回転速度と往復動作のストロークとを制御することによって決められる螺旋状の動きによるために、一般的に直線状の表面パターン/条痕構造を有している。
【0026】
本発明による粘弾性露出プロセスは、これとは異なって、表面における材料除去特性の異なった、非定常的な種々の状況を作り出すので、波状の流れ構造が生成される。
【0027】
本発明による露出プロセスは、又、前段の切削加工によって形成された加工条痕を平準化し、減少させることができるが、これは、同様に、この方法で仕上げられた表面の滑動特性を改善する結果をもたらす。本発明によるプロセスはプロセスのステップ数が少ないので比較的簡単に活用できるという点から、大量の連続生産の条件の下で、特に高いプロセスの信頼性を、同時に低い製造コストと合わせて得ることができる。
【0028】
本発明によるプロセスの実施形態としては、露出ステップを、異なる露出用コンパウンドを使用する少なくとも2つ以上の露出ステップに分割する方式が特に望ましい。この場合、例えば、まず第一に、相対的に粗粒の露出用コンパウンドによって、仕上げられる表面の粗さを、表面が顕微鏡的に平滑に仕上げられるまで低減し、次いで、仕上げられた表面の粗さを、別のさらに微粒の露出用コンパウンドを用いて改善することができる。このステップにおいて、表面粗さを0.1μmを超える範囲に設定することができるが、これは、0.1μm未満の表面粗さ範囲では、低粘度油を該当する仕上げ表面に潤滑油として使用した場合、油膜の断裂が生じる潜在的危険性があるからである。連続する複数の露出ステップを採用し、露出ステップ中に対応する生産パラメータを制御することによって、結果的に、本発明によるプロセスによって仕上げられた材料又はその表面の残留基礎粗さを改善することができ、これによって油膜断裂の危険性を避けることが可能になる。露出用コンパウンドを異なる所定量供給し、又異なる成分に調整することによって、上記の個々のステップを単一の仕上げ機械ステーションの中で組み合わせることができる。
【0029】
本発明によるプロセスの特に好ましい実施形態においては、リサイクルのステップが設けられる。この場合は、露出ステップを実行した後、使用済みの露出用コンパウンド、もしくは−露出ステップを2つ以上のステップで行う場合は−複数の使用済みの露出用コンパウンドをリサイクルするために、水による処理を実施する。この処理では、使用済みのコンパウンドに水酸化ナトリウムの溶液を加えて、露出用コンパウンドの成分を、好ましくはセルロース成分、油脂、及び軽量の浮上成分と、重質の露出材料とに、沈降及びスクリーン分離によって分離する。
【0030】
水による処理は、使用済みの露出用コンパウンドに4.5%濃度の水酸化ナトリウム溶液を加えて行い、その後、乾燥して、セルロース成分をコンポスト化する方式が特に望ましい。油脂及び容易に浮上する成分はすくい取って、元に戻すことができる。露出材料を構成する重質の炭化ケイ素成分は、設けられる沈降分離槽の底部に沈殿するので、管理された方法で槽から排除し、処理、スクリーン分離して戻した後、新しい露出用コンパウンドとして使用することができる。水によって処理された使用済み露出用コンパウンド中に存在するあらゆる懸濁粒子は、通常のろ過技術を用いて、生産プロセスから除去することができる。水による処理に使用したプロセス水は、水酸化ナトリウム溶液を加えているので僅かに塩基性であるが、これは、どのような形の廃水であれ、存在するであろう酸性の工業廃水に供給して中和することができる。これによって、本発明によるプロセスの環境適合性をさらに改善することができる。
【0031】
表面仕上げ用の装置、特に明確な初晶Siを含む材料から製造されたシリンダベアリングを露出させるための本発明による装置であって、特に請求項12〜14のいずれか一項に記載のプロセスを実行するための装置であり、かつ、特に請求項1〜11のいずれか一項に記載の露出用コンパウンドを使用する装置は、次の構成要素を含んでいる。すなわち、
スピンドルと、
少なくとも1つの露出用回転マンドレルと、
露出用コンパウンド保持用の少なくとも1つの貯留容器と、
仕上げられる加工部品の輪郭に合致され得る制御可能な弾性スライド平板と
露出用コンパウンド供給用の少なくとも1つの螺旋旋回台と、
循環システムであって、少なくとも1つの貯留容器から少なくとも1つの露出用回転マンドレルに露出用コンパウンドを供給するための1つのポンプユニットとを備え、使用済みの露出用コンパウンドを戻すための少なくとも1つの戻り流通路を少なくとも1つの露出用マンドレルの中に具備し、かつ、戻された使用済みの露出用コンパウンドを捕集するための少なくとも1つの捕集容器を備えた循環システム、
の各要素である。
【0032】
本発明による露出装置の制御可能な弾性スライド平板はフッ素ゴム製とするのが望ましい。この場合、制御可能な弾性スライド平板は、本発明による装置を、機械仕上げによって露出されるべきシリンダ表面の種々の内径/変位に適合可能にする。露出用コンパウンド供給用の螺旋旋回台も、溝状の凹所を有することができ、ねじに似た形態を備えることができる。本発明による露出装置の循環システムのポンプユニットは、露出用コンパウンドを貯留容器から循環システムを通して引き抜き、それを露出用回転マンドレルに移送して1次圧力を生成するために、かつ又、使用済みの露出用コンパウンドを少なくとも1つの戻り流通路の中に送り込み、使用済みの露出用コンパウンドを捕集容器の中に移送するために用いられる。
【0033】
本発明による露出装置は、一方では、きわめて単純な設計とすることができるために、大量の連続生産条件の下で露出操作のプロセスの信頼性を増大させ、他方同時に、露出操作中に発生する材料を完全に除去するので特に良好な表面仕上げが可能となり、仕上げられた表面の好適な残留基礎粗さを作り出すことができる。
【0034】
本発明による装置の好ましい実施形態によれば、この装置は、循環システムの中に組み込まれる1つの中空シリンダを含んでおり、この中空シリンダが、このシリンダと露出されるべき加工部品の仕上げ表面との間に介在する露出用コンパウンドを、露出されるべき加工部品の仕上げ表面特にシリンダの内壁面に、制御可能な予圧力をもって押圧するように、この中空シリンダを制御することができる。この中空シリンダは、使用済みの露出用コンパウンドを戻すための、少なくとも1つの別の戻り流通路を備えていることが望ましい。
【0035】
本発明による装置の特に好ましい実施形態においては、露出用コンパウンドを、加工部品のための予め定められた仕上げ方向に沿って、特に仕上げられるべきシリンダのシリンダ内径の縦軸の方向に沿って、好ましくは少なくとも1つの露出用回転マンドレルの中の小空間を通して導くことができる。露出用コンパウンドを方向付けて導くこと、例えばシリンダ内径に沿って導くことが、シャドウ(影)の形成として知られる現象を避けることに寄与している。このシャドウ(影)が生じると、加工部品材料における露出されるべきSi結晶の周りの材料が不均等に除去されることになり、露出される材料の表面特性の劣化を招く結果に至る。
【0036】
本発明による装置には、マガジン供給システムを装備することが特に好ましい。これによって、露出用コンパウンドをタブレットの形で少なくとも1つの貯留容器の中に保持し、及び/又は、使用済みの露出用コンパウンドを自動排出システムによって排出することが可能になる。この結果、この装備を施した本発明による露出装置の利用度が、特に大量の連続生産条件の下において格段に向上する。
【0037】
本発明による装置においては、異なる貯留容器に貯留することができる複数の露出用コンパウンドを使用することができる点に留意されたい。この場合は、異なる制御可能な弾性スライド平板、異なるあるいは複数の螺旋旋回台、及び、もし適切であれば、本発明に従って設けられる循環システムにおける複数の異なる供給ラインを、それぞれ異なる露出用コンパウンド用として装備することも可能である。さらに又、異なる露出用コンパウンド用として、複数の露出用回転マンドレルを設けることも可能である。しかし、使用可能な複数の露出用コンパウンドを、それに対応して構成された露出装置(上記参照)において用いる場合においても、戻される使用済みの異なる露出用コンパウンド用としての捕集容器は、本発明に従ってただ1つの捕集容器を使用することが有利である。これによって、これらの複数の露出用コンパウンドをまとめて処理し、あるいはリサイクルすることができる。
【0038】
本発明による装置の特に好ましい別の実施形態によれば、例えば、装置をシリンダの仕上げに用いる場合に、少なくとも1つの露出用回転マンドレルをシリンダの中に導入する前に、振れ止め又は短管をシリンダの開口の上に置くことができる。これによって確実かつ再現可能な装置の中心合わせを効果的に実施できるようになり、特に大量の連続生産条件の下で高い出費なしにプロセスの信頼性を大きく改善することができる。
【0039】
除去するべき材料がアルミニウムである場合は、本発明による装置は、好ましくは、少なくとも0.1cmの容積の材料除去を達成するために使用することができ、0.15μm〜0.8μmの範囲の露出深さに露出させる場合には、シリンダ内径ごとに約0.01cmの材料除去容積を目標とすることができる。
【0040】
本発明の特に好ましい実施形態においては、少なくとも1つの露出用回転マンドレルにおける露出用コンパウンドの保持容積の、露出されるべき材料の材料除去容積に対する比は、1:20〜1:100の範囲、好ましくは1:50である。
【0041】
本発明による装置の特に好ましいさらに別の実施形態においては、少なくとも1つの露出用回転マンドレルの動きの方向に、露出用マンドレルの前面に配置された分離膜で、仕上げられる加工部品をオーバーフローする露出用コンパウンドからシールするための分離膜が設けられており、オーバーフローする露出用コンパウンドを、分離膜の対応する領域から特に捕集容器の中に戻すことができるようになっている。
【0042】
露出用コンパウンドの粘度を、露出操作中の異なるプロセス条件又は異なる除去対象材料に適合させるために、又、本発明による装置の材料除去能力を増大させるために、本発明による装置に、1つの好ましい実施形態に従って全体的にあるいは好ましくは少なくとも部分的に微小振動を付与することができる。すなわち、1つの好ましい実施形態によれば、本発明による装置に、振動運動を少なくとも部分的に印加することができる。振動運動を付与する装置は、例えばそれ自体周知の偏心装置でよく、明細書簡素化のためにここでは詳述しない。
【0043】
本発明による露出用コンパウンドを特に簡単な方法で確実にリサイクルし得るようにするために、又、本発明によるプロセスに関連付けて前記したリサイクルのステップを実行するために、本発明による装置は、1つの好ましい実施形態によれば、浮上装置、沈降装置、及びスクリーン分離装置も含んでいる。
【0044】
以上の記述のとおり、本発明は、先行技術に比べて改善された露出用コンパウンドと、改善された露出プロセスと、改善された露出装置とを提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、明確な初晶Siを含む材料から製造されたシリンダ壁を露出させるための露出用コンパウンドが、
粘弾性体のプラスチック担体コンパウンドと、同粘弾性体プラスチック担体コンパウンドの中に埋入された露出材料とを含むことを特徴とする露出用コンパウンド。
【請求項2】
前記露出材料が、4μm〜0.1μmの範囲の粒径の炭化ケイ素粒体から成ることを特徴とする請求項1に記載の露出用コンパウンド。
【請求項3】
前記露出材料がセラミックファイバーから成ることを特徴とする請求項1に記載の露出用コンパウンド。
【請求項4】
前記セラミックファイバーがAlから成ることを特徴とする請求項3に記載の露出用コンパウンド。
【請求項5】
前記露出材料が、炭化ケイ素粒体とセラミックファイバーとから成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の露出用コンパウンド。
【請求項6】
前記露出用コンパウンドが、セルロース、好ましくは木材繊維及び/又はサイザル繊維の有機添加物を、露出用コンパウンドの60容積%まで含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の露出用コンパウンド。
【請求項7】
前記露出用コンパウンドが、露出用コンパウンドの40容積%までの有機結合剤を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の露出用コンパウンド。
【請求項8】
前記露出用コンパウンドが、露出用コンパウンドの20容積%までのでんぷん粉末の添加物を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の露出用コンパウンド。
【請求項9】
前記露出用コンパウンドが、露出用コンパウンドの40容積%までの天然の動物性及び/又は植物性の油脂添加物を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の露出用コンパウンド。
【請求項10】
前記露出用コンパウンドが、露出用コンパウンドの20容積%までの樹脂添加物を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の露出用コンパウンド。
【請求項11】
前記露出用コンパウンドをリサイクルすることができることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の露出用コンパウンド。
【請求項12】
加工部品を表面仕上げするためのプロセス、特に、明確な初晶Siを有する材料から製造されたシリンダ壁を露出させるためのプロセスであって、特に請求項1〜11のいずれか一項に記載の露出用コンパウンドを使用するプロセスにおいて、
前記加工部品を粗仕上げするステップと、
前記加工部品を精密切削するステップと、
粘弾性体プラスチック担体コンパウンドと、同粘弾性体プラスチック担体コンパウンドの中に埋入された露出材料とを含む露出用コンパウンドによって露出加工するステップと、
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項13】
前記露出加工のステップを、異なる露出用コンパウンドを使用する少なくとも2つ以上の露出ステップに分割することを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記露出ステップを実行した後、使用済みのコンパウンドに水酸化ナトリウムの溶液を加えて、沈降及びスクリーン分離する方式で、前記使用済みの露出用コンパウンドを水によって処理することにより、露出用コンパウンドの成分を、好ましくはセルロース成分、油脂、及び軽量の浮上成分と、重質の露出材料とに分離するリサイクルのステップが設けられることを特徴とする請求項12あるいは13に記載のプロセス。
【請求項15】
特に明確な初晶Siを含む材料から製造されたシリンダ壁を露出させるための表面仕上げ用の装置であって、特に請求項12〜14のいずれか一項に記載のプロセスを実行し、特に請求項1〜11のいずれか一項に記載の露出用コンパウンドを使用する装置において、
スピンドルと、
少なくとも1つの露出用回転マンドレルと、
露出用コンパウンド保持用の少なくとも1つの貯留容器と、
仕上げられる加工部品の輪郭に合致され得る制御可能な弾性スライド平板と、
前記露出用コンパウンド供給用の少なくとも1つの螺旋旋回台と、
少なくとも1つの前記貯留容器から少なくとも1つの前記露出用回転マンドレルに前記露出用コンパウンドを供給するための1つのポンプユニットと、使用済みの露出用コンパウンドを戻すための少なくとも1つの戻り流通路を少なくとも1つの前記露出用マンドレルの中に具備し、戻された前記使用済みの露出用コンパウンドを捕集するための少なくとも1つの捕集容器を備えた循環システムと、
を有することを特徴とする装置。
【請求項16】
前記装置が、前記循環システムの中に組み込まれる1つの中空シリンダを含み、該中空シリンダが、該中空シリンダと露出されるべき加工部品の仕上げ表面との間に介在する前記露出用コンパウンドを、前記露出されるべき加工部品の仕上げ表面、特にシリンダの内壁面に、制御可能な予圧力をもって押圧するよう、該中空シリンダを制御し、該中空シリンダは、使用済みの露出用コンパウンドを戻すための、少なくとも1つの別の戻り流通路を備えていることを特徴とする請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記露出用コンパウンドを、加工部品のための予め定められた仕上げ方向に沿って、特に仕上げられるべきシリンダのシリンダ内径の縦軸の方向に沿って、好ましくは少なくとも1つの前記露出用回転マンドレルの中の小空間を通して導くことを特徴とする請求項15あるいは16に記載の装置。
【請求項18】
前記装置が、マガジン供給システムを有し、前記露出用コンパウンドをタブレットの形で少なくとも1つの前記貯留容器の中に保持し、及び/又は、使用済みの露出用コンパウンドを自動排出システムによって排出することを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記装置をシリンダの仕上げに用いる場合に、少なくとも1つの前記露出用回転マンドレルをそのシリンダの中に導入する前に、振れ止めをシリンダの開口の上に置くことができることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
除去するべき材料がアルミニウムである場合は、前記装置を、0.15μm〜0.8μmの範囲の露出深さに対して少なくとも0.1cmの容積の材料除去を達成するために使用することを特徴とする請求項15〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記装置が、少なくとも1つの前記露出用回転マンドレルにおける前記露出用コンパウンドの保持容積の、露出されるべき材料の材料除去容積に対する比として、1:20〜1:100の範囲、好ましくは1:50の値を有することを特徴とする請求項15〜20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
少なくとも1つの前記露出用回転マンドレルの動きの方向に、前記露出用マンドレルの前面に配置された分離膜で、オーバーフローする露出用コンパウンドから加工部品をシールするための分離膜が設けられ、このオーバーフローする露出用コンパウンドを戻すことを特徴とする請求項15〜21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記装置に、少なくとも部分的に微小振動を付与することを特徴とする請求項15〜22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記装置が、前記露出用コンパウンドをリサイクルするための浮上装置、沈降装置、及びスクリーン分離装置を有することを特徴とする請求項15〜23のいずれか一項に記載の装置。


【公表番号】特表2007−533782(P2007−533782A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529696(P2006−529696)
【出願日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/004269
【国際公開番号】WO2004/103640
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】