説明

青果物内部検査装置

【課題】各青果物の解析工程を簡素化する青果物内部検査装置を提供する。
【解決手段】青果物内部検査装置(200)は、青果物(205)を搬送する青果物搬送手段(210)と、青果物の通過を検出する通過検出センサ(220)と、青果物の各々に近赤外光を照射する光照射手段(230)と、減光器(100)と、各青果物を透過した透過光を分光する分光器(240)と、分光器により分光された透過光を受光し、各青果物を撮像するCCDカメラ(250)と、CCDカメラが撮像した分光エネルギーのスペクトルを解析し、各青果物の内部品質を計測するとともに、減光器及びCCDカメラの動作を制御する中央制御装置(260)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は青果物の糖度、酸度その他の内部品質を非破壊的に検査する青果物内部検査装置、特に、青果物内部検査装置の一部を構成する減光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
みかん、リンゴ、メロンその他の青果物に近赤外光を照射すると、青果物に含まれる糖質などの成分が特定の波長帯の光を吸収する。このため、青果物を透過した透過光の吸光度を計測することにより、青果物の糖度、酸度、腐敗部分の有無その他の内部品質を非破壊的に判定することが可能であることが知られている。
【0003】
この原理を応用した青果物内部検査装置も既に数多く提案されており、そのような青果物内部検査装置の一例として特許第3712247号公報(特開平11−337480号公報)に記載されたものがある。
【0004】
図7は同公報に記載された青果物内部検査装置の構造を示す概略図である。
【0005】
この青果物内部検査装置500は、青果物505をX方向に連続的に搬送する搬送手段510と、搬送手段510により搬送される各青果物505の位置を測定する位置測定センサ520と、搬送手段510上の所定の位置Aにおいて各青果物505に近赤外光を照射する近赤外光照射手段530と、各青果物505を透過した透過光を受光する受光素子540と、受光素子540が受光した透過光を解析し、各青果物505の内部品質を算出する信号処理装置550と、から構成されている。
【0006】
信号処理装置550における透過光の解析は基準光との比較において行われる。ここに、基準光とは、青果物505を透過せずに、近赤外光照射手段530から直接に受光素子540において受光された近赤外光を指す。近赤外光照射手段530から照射される近赤外光の輝度や照度は、近赤外光照射手段530を駆動する電源の電圧の変動、外気温の変動その他の外的要因に起因して、時間の経過とともに変化する。このため、基準光は、青果物505に近赤外光を照射する前に、青果物505毎に得ることが要求される。すなわち、青果物505とその一つ前の青果物505との間において、そのつど、基準光を得ることが望ましい。
【0007】
受光素子540は透過光を受光すると、光電変換を行い、その光量に応じた電流を発生させる。さらに、信号処理装置550は受光素子540が発生させた電流を電圧に変換する。
【0008】
このため、受光素子540が透過光を直接受光すると、信号処理装置550において過度の電圧が発生し、その結果として、信号処理装置550の内部回路の温度が上昇する。このように信号処理装置550の内部回路の温度が上昇すると、それが原因となって、信号処理装置550の信号処理能力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3712247号公報(特開平11−337480号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この問題を解決するため、青果物内部検査装置500は比較回路及び制御回路(ともに図示せず)を設けている。
【0011】
比較回路は、信号処理装置550内において発生する電圧Vと予め定められた基準電圧Vとの比較を行う。制御回路は、比較回路による比較結果に応じて、信号処理装置550の内部に発生する電圧を調整する。
【0012】
V>Vの場合には、比較回路は受光素子540が透過光を直接受光しているものと判定し、制御回路は、遮光状態のときに受光素子540が発生する電圧に等しい電圧を信号処理装置550において発生させる。
【0013】
V≦Vの場合には、比較回路は受光素子540が各青果物505を透過した透過光を受光しているものと判定し、制御回路は、電圧Vをそのまま信号処理装置550において発生させる。
【0014】
以上のように、青果物内部検査装置500は信号処理装置550内において発生する電圧Vと予め定められた基準電圧Vとの比較を行うことにより、信号処理装置550の内部に過度の電圧が発生することを防止している。
【0015】
しかしながら、青果物内部検査装置500においては、青果物505毎に電圧Vと基準電圧Vとの比較を行わなければならないため、青果物内部検査装置500の解析系の構造が複雑になることは避けられず、さらに、各青果物505の内部品質の解析前に実施すべき処理工程数の増加も避けられない。
【0016】
本発明は、このような従来の青果物内部検査装置における問題点に鑑みてなされたものであり、実施すべき処理工程数を必要以上に増加させることなく、各青果物の解析工程を簡素化することを可能にする青果物内部検査装置、特に、青果物内部検査装置の一部を構成する減光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明は、検査対象物である青果物(205)に光照射手段(230)から近赤外光を照射し、前記青果物(205)を透過した透過光を解析することにより、前記青果物(205)の内部品質を計測する青果物内部検査装置(200)に使用される減光装置であって、前記近赤外光が通過するスリット(110)が形成されているスリット形成部材(111)と、前記近赤外光の進行方向において前記スリット形成部材(111)の下流側に配置された減光用フィルター(120)と、前記減光用フィルター(120)が前記スリット(110)と重なり合う第一位置と、前記減光用フィルター(120)が前記スリット(110)と重なり合わない第二位置との間において前記減光用フィルター(120)を往復運動させるフィルター移動手段(130)と、前記近赤外光が前記青果物(205)を透過しないときに前記減光用フィルター(120)を前記第一位置に、前記近赤外光が前記青果物(205)を透過するときに前記減光用フィルター(120)を前記第二位置にそれぞれ移動させるように前記フィルター移動手段(130)を制御する制御装置(260)と、を備える減光装置を提供する。
【0018】
前記制御装置(260)は、前記光照射手段(230)から照射される近赤外光と同一光量の近赤外光が既知の透過率を有する基準減光用フィルターを通過した際に得られる各波長の透過率を基準透過率として記憶したメモリ(261)と、前記光照射手段(230)から照射された近赤外光が前記減光用フィルター(120)を通過した際に得られる各波長の透過率と前記基準透過率とを比較し、前記基準減光用フィルターに対する前記減光用フィルター(120)の誤差を算出する比較装置(262)と、を備えることが好ましい。
【0019】
前記フィルター移動手段は、例えば、前記減光用フィルター(120)を前記第一位置と前記第二位置との間において移動させるソレノイドからなる。
【0020】
あるいは、前記フィルター移動手段は、例えば、前記減光用フィルター(120)を前記第一位置と前記第二位置との間において移動させるステップモーターからなるものとすることもできる。
【0021】
本発明は、さらに、検査対象物である青果物(205)を一定の方向に搬送する青果物搬送手段(210)と、前記青果物(205)に近赤外光を照射する光照射手段(230)と、前記青果物(205)を透過した透過光を受光し、受光した光を減光する上記減光装置と、前記減光装置から受光した光を分光する分光器(240)と、前記分光器(240)から光を受光し、前記青果物を撮像するCCDカメラ(250)と、を備える青果物内部検査装置(200)を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、検査対象物である青果物(205)に近赤外光を照射し、前記青果物(205)を透過した透過光を解析することにより、前記青果物(205)の内部品質を計測する青果物内部検査方法において前記近赤外光を減光する方法であって、前記近赤外光が通過するスリット(110)が形成されているスリット形成部材(111)の前記近赤外光の進行方向における下流側に減光用フィルター(120)が配置されている場合において、前記近赤外光が前記青果物(205)を透過しないときに、前記減光用フィルター(120)を前記スリット(110)と重なり合う第一位置に移動させる過程と、前記近赤外光が前記青果物(205)を透過するときに、前記減光用フィルター(120)を前記スリット(110)と重なり合わない第二位置に移動させる過程と、を備える減光方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る減光装置または減光方法によれば、スリットのみを遮断することにより、青果物と青果物との間のギャップを通過する照射光を遮光することが可能である。このため、本発明に係る減光装置または減光方法によれば、分光器への過剰光量の入射を防止し、分光器の内部において過剰電圧が発生することを防止することが可能になる。
【0024】
また、従来の青果物内部検査装置においては、光源が発する近赤外光の光量が一定になるまでに光源を余熱する時間が必要となるが、本発明に係る減光装置または減光方法によれば、光源が発する近赤外光の光量が一定になる前に、青果物の内部検査を開始することが可能である。
【0025】
また、本発明に係る減光装置においては、光照射手段から照射される近赤外光と同一光量の近赤外光が既知の透過率を有する基準減光用フィルターを通過した際に得られる各波長の透過率を基準透過率として記憶したメモリを用いることにより、複数の減光用フィルターを使用する場合に、各減光用フィルターの透過率の個体差を解消することができ、より正確に吸光度を計測することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る減光装置を備える青果物内部検査装置の概略的なブロック図である。
【図2】図2(A)及び図2(B)は本実施形態に係る減光装置を構成する減光器の構造を示す概略図である。
【図3】コンベア上における各青果物の位置と、受光センサからの検出信号と、ソレノイド動作信号と、CCDカメラ撮像タイミング信号との相関関係を示すシグナルチャートである。
【図4】図4(A)−(D)は、本発明の第一の実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置の従来の青果物内部検査装置に対する効果を示す概略図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置において、青果物にハロゲンランプからの近赤外光を透過させる状況を示す概略図である。
【図6】本発明の第二の実施形態における中央制御装置の構造を示すブロック図である。
【図7】従来の青果物内部検査装置の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態に係る減光装置を備える青果物内部検査装置200の概略的なブロック図である。
【0028】
青果物内部検査装置200は、検査対象物である青果物205を一定の方向Xに搬送する青果物搬送手段としてのコンベア210と、青果物205のコンベア210上における通過を検出する通過検出センサ220と、コンベア210上を搬送される青果物205の各々に近赤外光を照射する光照射手段としてのハロゲンランプ230と、減光器100と、各青果物205を透過した透過光及び減光器100により減光された近赤外光を受光し、分光を行う分光器240と、分光器240により分光された透過光を受光し、各青果物205を撮像するCCDカメラ250と、CCDカメラ250が撮像した分光エネルギーのスペクトルを解析し、各青果物205の内部品質を計測するとともに、減光器100及びCCDカメラ250の動作を制御する中央制御装置260と、中央制御装置260による画像の解析結果を表示するディスプレイ270と、中央制御装置260による画像の解析結果を格納するメモリ280と、を備えている。
【0029】
本実施形態に係る減光装置は、減光器100と、中央制御装置260と、によって構成されている。なお、中央制御装置260は、例えば、中央処理装置(CPU)として構成される。
【0030】
コンベア210は青果物205を一定の方向Xに連続的に搬送する。コンベア210の搬送速度は一定であり、例えば、60m/分である。
【0031】
ハロゲンランプ230は、近赤外光を青果物205に対してコンベア210がなす平面と平行に(すなわち、青果物205の横方向から)照射する。
【0032】
あるいは、ハロゲンランプ230は青果物205の直上から青果物205に対して近赤外光を照射することも可能である。
【0033】
通過検出センサ220は投光センサ221と、投光センサ221から発せられる光を受光する受光センサ222とから構成される。
【0034】
投光センサ221は受光センサ222に対して常に光を投光し続けている。コンベア210上を青果物205が通過すると、投光センサ221からの光は青果物205に遮られ、受光センサ222には到達しない。受光センサ222は投光センサ221からの光が遮断されている間(すなわち、青果物205が投光センサ221の前方を通過している間)、中央制御装置260に検出信号を送信し続ける。中央制御装置260は受光センサ222からの検出信号の受信開始時刻及び受信終了時刻を計測し、受光センサ222から検出信号を受信し続けた時間とコンベア210の搬送速度とから、各青果物205の大きさ(コンベア210の進行方向Xにおける長さ)とコンベア210上における各青果物205の位置とを算出し、さらに、各青果物205がハロゲンランプ230の前方に到達する時刻を算出する。
【0035】
図2(A)及び図2(B)は本実施形態に係る減光装置を構成する減光器100の構造を示す概略図である。
【0036】
減光器100は、スリット110が形成されているスリット形成部材111と、減光器100に入射した入射光の進行方向においてスリット110の下流側に配置され、入射した光の光量を減少させる減光用フィルター120と、減光用フィルター120を往復運動させるフィルター移動手段と、から構成されている。
【0037】
スリット形成部材111はスリット110を形成し得る部材であれば、どのような部材でも用いることができる。例えば、スリット形成部材111は遮光性の表面を有するボードからなる。
【0038】
フィルター移動手段は、減光器100に入射した入射光の進行方向と直交する方向において、減光用フィルター120に往復運動を行わせる。具体的には、フィルター移動手段は、減光用フィルター120がスリット110と重なり合う第一位置(図2(A)に示す位置)と、減光用フィルター120がスリット110と重なり合わない第二位置(図2(B)に示す位置)との間において減光用フィルター120を往復運動させる。
【0039】
具体的には、フィルター移動手段は、減光用フィルター120を第二位置に移動させるソレノイド130と、ソレノイド130が第一位置にあるようにソレノイド130を第一位置の方向に付勢する付勢手段としてのスプリング131と、から構成されている。
【0040】
中央制御装置260は、コンベア210上における各青果物205の位置に基づいて、ハロゲンランプ230から照射された近赤外光が各青果物205を透過しないときに(すなわち、近赤外光が青果物205と青果物205との間のギャップを通過するときに)、減光用フィルター120が第一位置(図2(A)に移動するようにソレノイド130の動作を制御する。すなわち、ソレノイド130の動作をオフとする。
【0041】
減光用フィルター120は、例えば、内部検査の対象物である青果物205と同様の透過率を有するものを選定する。
【0042】
また、中央制御装置260は、ハロゲンランプ230から照射された近赤外光が各青果物205を透過するときに、減光用フィルター120が第二位置(図2(B)に移動するようにソレノイド130の動作を制御する。すなわち、ソレノイド130の動作をオンとする。
【0043】
図3は、コンベア210上における各青果物205の位置と、受光センサ222からの検出信号223と、ソレノイド動作信号291と、CCDカメラ撮像タイミング信号292との相関関係を示すシグナルチャートである。
【0044】
図3に示すように、受光センサ222は投光センサ221からの光を受光している間(すなわち、各青果物205が投光センサ221の前方を通過していない間)においては、中央制御装置260に対して検出信号223を送信しない(検出信号223がOFF)。これに対して、受光センサ222は投光センサ221からの光が遮断されている間(すなわち、各青果物205が投光センサ221の前方を通過している間)においては、中央制御装置260に対して検出信号223を送信し続ける(検出信号223がON)。
【0045】
中央制御装置260は、受光センサ222から受信した検出信号223に基づいて、青果物205がハロゲンランプ230の前方を通過し始める時刻と、ハロゲンランプ230の前方を通過し終わる時刻とを算出する。
【0046】
中央制御装置260は、青果物205がハロゲンランプ230の前方を通過し始めると(すなわち、ハロゲンランプ230が近赤外光を青果物205に照射し始めると)、ソレノイド130に対してソレノイド動作信号291を送信する(ソレノイド動作信号291がON)。
【0047】
中央制御装置260からソレノイド動作信号291を受信すると、ソレノイド130はその動作を開始し(動作オン)、スプリング131の引張力に抗して、減光用フィルター120を第一位置(図2(A)に示す位置)から第二位置(図2(B)に示す位置)に移動させる。この結果、減光用フィルター120はスリット110とは重なり合わなくなり、減光器100に入射した光は減光用フィルター120を通過することなく、そのままの状態で分光器240に送られる。すなわち、青果物205を透過した透過光は減光用フィルター120により減光されることなく分光器240に送られる。
【0048】
中央制御装置260は、青果物205がハロゲンランプ230の前方を通過し終わると(すなわち、ハロゲンランプ230の前方に青果物205は存在しなくなると)、ソレノイド130に対するソレノイド動作信号291の送信を停止する(ソレノイド動作信号291がOFF)。
【0049】
中央制御装置260からのソレノイド動作信号291の送信が停止されると、ソレノイド130はその動作を停止する(動作オフ)。この結果、スプリング131の引張力によって、減光用フィルター120は第二位置(図2(B)に示す位置)から第一位置(図2(A)に示す位置)に移動する。これにより、減光用フィルター120はスリット110と重なり合い、減光器100に入射した光は減光用フィルター120を通過する。すなわち、青果物205の透過光ではない光(青果物205と青果物205との間のギャップを通過した光)は減光用フィルター120を通過し、減光された状態で分光器240に送られる。
【0050】
中央制御装置260は、ソレノイド130に対してソレノイド動作信号291を送信することに加えて、CCDカメラ250にCCDカメラ撮像タイミング信号292を送信する。
【0051】
例えば、各青果物205がハロゲンランプ230の前方を通過している間(すなわち、ソレノイド動作信号291がON)においては、青果物205のサイズに応じて、3本乃至15本程度のCCDカメラ撮像タイミング信号292を一定間隔でCCDカメラ250に対して送信する。CCDカメラ撮像タイミング信号292を受信したCCDカメラ250は受信のつど青果物205を撮像する。
【0052】
一方、各青果物205がハロゲンランプ230の前方を通過していない間(すなわち、ソレノイド動作信号291がOFF)においては、5本乃至10本程度のCCDカメラ撮像タイミング信号292を一定間隔でCCDカメラ250に対して送信する。CCDカメラ撮像タイミング信号292を受信したCCDカメラ250は受信のつど撮像を行う。すなわち、CCDカメラ250はハロゲンランプ230からの照射光が減光器100により減光された後の照射光を基準光として受光する。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る減光装置によれば、各青果物205がハロゲンランプ230の前方にある間においては、減光用フィルター120は第二位置(図2(B)に示す位置)に位置しているため、各青果物205を透過した透過光は減光用フィルター120により減光されることなく、スリット110を通過した後、そのまま分光器240に入射する。
【0054】
これに対して、各青果物205がハロゲンランプ230の前方に位置していない間においては、減光用フィルター120は第一位置(図2(A)に示す位置)に位置しているため、青果物205と青果物205との間のギャップを通過した光(すなわち、ハロゲンランプ230からの直接照射光)は、スリット110を通過した後、減光用フィルター120により減光され、その後、分光器240に入射する。
【0055】
図4(A)−(D)は、本実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置200の従来の青果物内部検査装置500に対する効果を示す概略図である。
【0056】
例えば、図7に示した従来の青果物内部検査装置500において減光用フィルター120及びソレノイド130を使用した場合を想定する(スリット110は使用しない)。
【0057】
この場合、青果物205と青果物205との間のギャップに対応して減光用フィルター120が第一位置(図2(A)に示す位置)に移動される。具体的には、青果物205がハロゲンランプ230の前方を通過し終わると、中央制御装置260からソレノイド130に送信されるソレノイド動作信号291もOFFになり、その結果として、減光用フィルター120は第二位置(図2(B)に示す位置)から第一位置(図2(A)に示す位置)に移行する。
【0058】
この場合、減光用フィルター120の第二位置から第一位置への移動には多少の時間を必要とする。このため、実際に減光用フィルター120が第一位置に移動した時点においては、図4(A)に示すように、各青果物205が減光用フィルター120の移動に要した時間に対応した距離Sだけ移動しているため、この距離Sの間において、ハロゲンランプ230からの直射光が分光器240に入射することになり、分光器240に過剰光量の照射光が入射されることになる。
【0059】
これに対して、本実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置200においては、青果物205と青果物205との間のギャップを通過したハロゲンランプ230からの照射光の大部分はスリット形成部材111に当たり、一部のみがスリット110を通過する。このため、スリット110を通過する照射光のみを遮光することができれば、分光器240に過剰の照射光が入射されることを防止することができる。
【0060】
スリット110を通過する照射光を遮光することは、以下に述べるように、容易に実現することが可能である。
【0061】
例えば、ソレノイド130に送信されるソレノイド動作信号291がOFFになったときに、減光用フィルター120が第二位置(図2(B)に示す位置)から第一位置(図2(A)に示す位置)に移行する際に図4(A)に示すような距離Sの遅延が生じたとしても、この遅延に起因して青果物205と青果物205との間のギャップを通過した照射光はスリット形成部材111により遮光される。ハロゲンランプ230からの照射光がスリット110を通過する時点においては、減光用フィルター120がスリット110と重なり合う位置に移行しているため、ハロゲンランプ230からの照射光が直接的に分光器240に入射することはない。
【0062】
なお、スリット110の幅は、コンベア210の速度、青果物205間の間隔、ソレノイド130の動作速度などの要因に応じて、適宜決定される。
【0063】
さらに、本実施形態に係る減光装置によれば、極めて短時間のうちにスリット110を遮断することが可能である。
【0064】
例えば、図7に示した従来の青果物内部検査装置500に減光用フィルター120及びソレノイド130を使用した場合、コンベア210の搬送速度が60m/分、青果物205間の間隔が10mmであるとすると、ソレノイド130を作動させて減光用フィルター120によって青果物205と青果物205との間のギャップを塞ぐためには、約40乃至60msの時間を必要とする。
【0065】
これに対して、本実施形態に係る減光装置においては、スリット110を塞ぐ時間は約1msで足りる(例えば、ソレノイド130が2mm移動するのに約10msecを要し、スリット110の幅を0.2mmとした場合)。
【0066】
このように、本実施形態に係る減光装置によれば、青果物205と青果物205との間のギャップを塞ぐ時間を短縮化することが可能である。
【0067】
なお、単純計算を行えば、青果物205間の間隔が10mmであるとすると、例えば、スリット110の幅を0.5mmに設定すれば、本実施形態に係る減光装置は、青果物205と青果物205との間のギャップを塞ぐ時間を1/20に短縮化することが可能である。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置200によれば、分光器240への過剰光量の入射を防止し、分光器240の内部において過剰電圧が発生することを防止することが可能になる。
【0069】
また、青果物205と青果物205との間のギャップを塞ぐ時間を短縮化することが可能になったことに伴い、青果物205一つ当たりのデータ取得個数を増やすことも可能になる。
【0070】
図5は、本実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置200において、青果物205にハロゲンランプ230からの近赤外光を透過させる状況を示す概略図である。
【0071】
青果物205と青果物205との間のギャップを塞ぐ時間を短縮化することが可能になったことにより、青果物内部検査装置200は数ミリ秒で1スキャンすることが可能になっている。すなわち、数ミリ秒毎にハロゲンランプ230は近赤外光を各青果物205に照射することが可能になっている。このため、図5に示すように、一つの青果物205について多数回の近赤外光の照射が可能になり、照射の回数に等しい数のデータを収録することができる。
【0072】
データの収録回数は青果物205の大きさに比例する。また、透過光量は、小さい青果物205を透過する場合と比較して、大きい青果物205を透過する場合の方が、減衰する程度は大きくなる。このため、透過光毎に得られたデータ300A−300J(図5参照)を全て加算することにより、青果物205が大きくなることに起因して、得られた信号のレベルが小さくなっても、データの取得数は増えるため、各青果物205の大きさに起因するデータ量の差異を小さくすることが可能になる。
【0073】
図4に示したように、図7に示した従来の青果物内部検査装置500に減光用フィルター120を適用した場合、減光用フィルター120を光路に挿入する時間が長くなるため、近赤外光の照射は各青果物505のほぼ中央に限られていた。すなわち、各青果物505一つについて一つの透過光データしか得ることができなかった。
【0074】
通常、青果物の中央はその青果物において最も幅が厚い部位であるため、光の透過率は最も小さくなり、透過光の信号レベルは超微弱となる。このため、この超微弱なレベルの信号を増幅しても、信頼性には乏しい。
【0075】
これに対して、本実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置200によれば、青果物205一つについて多数個の透過光データを取得することができるため、得られたデータの信頼性を高めることができる。
【0076】
さらに、青果物205の種類によっては、糖度値や酸度値の分布が一様ではないものがある。例えば、「ミカン」は、糖や酸が偏在しており、糖度値や酸度値の分布は一様ではない。このため、青果物のほぼ中央における透過光データのみに基づいて糖度値や酸度値を決定すると、実際値から大きく離れた計測結果になるおそれが大きい。
【0077】
これに対して、本実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置200によれば、青果物205一つについて多数個の透過光データを取得することができるため、それら多数個の透過光データを平均化することによって、より実際値に近い計測結果を得ることができる。
【0078】
なお、本実施形態に係る減光装置は上述の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【0079】
本実施形態に係る減光装置においては、フィルター移動手段は、ソレノイド130が第一位置にあるようにソレノイド130を第一位置の方向に付勢する付勢手段としてのスプリング131を備えるものとして構成されているが、スプリング131を使用しないタイプのソレノイドを用いることも可能である。この場合のソレノイドは、中央制御装置260から送信されるソレノイド動作信号に従って、減光用フィルター120に対して、第二位置(図2(B)に示す位置)と第一位置(図2(A)に示す位置)との間での往復運動を行わせる。
【0080】
例えば、本実施形態に係る減光装置においては、フィルター移動手段はソレノイド130及びスプリング131として構成されているが、例えば、フィルター移動手段をステップモーターとして構成することも可能である。ステップモーターを正転または逆転させることにより、減光用フィルター120を第一位置と第二位置との間を往復運動させることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る減光装置を備えた青果物内部検査装置200においては、減光器100は、青果物205に対して、近赤外光の進行方向の下流側に配置されているが、減光器100の配置位置はこの位置に限定されるものではない。必要に応じて、青果物205に対して、近赤外光の進行方向の上流側に配置することも可能である。
【0082】
(第二の実施形態)
前述のように、青果物に含まれる糖質その他の内部品質は青果物を透過した透過光の吸光度に基づいて算出され、吸光度は基準光と透過光量との比較に基づいて算出される。このため、複数の減光用フィルター120を使用する場合の各減光用フィルター120の透過率は同一であることが要求される。
【0083】
しかしながら、複数の減光用フィルター120を使用する場合、各減光用フィルター120の透過率には個体差が存在するため、同一の透過率を実現することは困難であることが多い。
【0084】
この問題を解決するため、本発明の第二の実施形態に係る減光装置における中央制御装置260は各減光用フィルター120の透過率の誤差を検出する機能を有するように構成されている。
【0085】
図6は、本実施形態における中央制御装置260の構造を示すブロック図である。
【0086】
図6に示すように、本実施形態における中央制御装置260は、メモリ261と、比較装置262と、中央処理装置(CPU)263と、から構成されている。
【0087】
メモリ261には、ハロゲンランプ230と同一の光量の近赤外光を発する光源から照射された近赤外光が既知の減光率を有する基準減光用フィルターを通過した際に得られる透過率が基準透過率として波長毎に予め記憶されている。
【0088】
中央処理装置263は、ハロゲンランプ230から照射された近赤外光が減光用フィルター120を通過した際に得られる波長毎の透過率をCCDカメラ250が撮像した分光エネルギーのスペクトルに基づいて算出する。
【0089】
次いで、中央処理装置263はこのようにして得られた透過率をメモリ261に記憶されている基準透過率と比較し、次式(1)に基づいて基準減光用フィルターに対する減光用フィルター120の誤差を算出する。
【0090】
E=(F−F)/F×100[%] (1)
E:誤差
:基準透過率
F:減光用フィルター120の透過率
【0091】
誤差を算出した後、中央処理装置263はこの誤差に基づいて、得られた透過率に対して必要な修正を行う。
【0092】
以上のように、本実施形態に係る減光器によれば、各減光用フィルター120の個体差に基づく誤差を消去することができ、より正確に吸光度を算出することが可能になる。
【符号の説明】
【0093】
100 減光器
110 スリット
111 スリット形成部材
120 減光用フィルター
130 ソレノイド
131 スプリング
200 青果物内部検査装置
205 青果物
210 コンベア
220 通過検出センサ
230 ハロゲンランプ
240 分光器
250 CCDカメラ
260 中央制御装置
261 メモリ
262 比較装置
263 中央処理装置
270 ディスプレイ
280 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物である青果物に光照射手段から近赤外光を照射し、前記青果物を透過した透過光を解析することにより、前記青果物の内部品質を計測する青果物内部検査装置に使用される減光装置であって、
前記近赤外光が通過するスリットが形成されているスリット形成部材と、
前記近赤外光の進行方向において前記スリット形成部材の下流側に配置された減光用フィルターと、
前記減光用フィルターが前記スリットと重なり合う第一位置と、前記減光用フィルターが前記スリットと重なり合わない第二位置との間において前記減光用フィルターを往復運動させるフィルター移動手段と、
前記近赤外光が前記青果物を透過しないときに前記減光用フィルターを前記第一位置に、前記近赤外光が前記青果物を透過するときに前記減光用フィルターを前記第二位置にそれぞれ移動させるように前記フィルター移動手段を制御する制御装置と、
を備える減光装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記光照射手段から照射される近赤外光と同一光量の近赤外光が既知の透過率を有する基準減光用フィルターを通過した際に得られる各波長の透過率を基準透過率として記憶したメモリと、
前記光照射手段から照射された近赤外光が前記減光用フィルターを通過した際に得られる各波長の透過率と前記基準透過率とを比較し、前記基準減光用フィルターに対する前記減光用フィルターの誤差を算出する比較装置と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の減光装置。
【請求項3】
前記フィルター移動手段は、前記減光用フィルターを前記第一位置と前記第二位置との間において移動させるソレノイドからなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の減光装置。
【請求項4】
前記フィルター移動手段は、前記減光用フィルターを前記第一位置と前記第二位置との間において移動させるステップモーターからなるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の減光装置。
【請求項5】
検査対象物である青果物を一定の方向に搬送する青果物搬送手段と、
前記青果物に近赤外光を照射する光照射手段と、
前記青果物を透過した透過光を受光し、受光した光を減光する請求項1乃至3の何れか一項に記載された減光装置と、
前記減光装置から受光した光を分光する分光器と、
前記分光器から光を受光し、前記青果物を撮像するCCDカメラと、
を備える青果物内部検査装置。
【請求項6】
前記青果物の各々について前記近赤外光を複数回透過させ、得られた複数個の透過光データを加算するものである請求項5に記載の青果物内部検査装置。
【請求項7】
検査対象物である青果物に近赤外光を照射し、前記青果物を透過した透過光を解析することにより、前記青果物の内部品質を計測する青果物内部検査方法において前記近赤外光を減光する方法であって、
前記近赤外光が通過するスリットが形成されているスリット形成部材の前記近赤外光の進行方向における下流側に減光用フィルターが配置されている場合において、
前記近赤外光が前記青果物を透過しないときに、前記減光用フィルターを前記スリットと重なり合う第一位置に移動させる過程と、
前記近赤外光が前記青果物を透過するときに、前記減光用フィルターを前記スリットと重なり合わない第二位置に移動させる過程と、
を備える減光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−8098(P2012−8098A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146583(P2010−146583)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000135254)株式会社ニレコ (41)
【Fターム(参考)】