説明

青色、赤色及び黄色染料化合物並びにそれらからなる黒色インク組成物

【課題】新規な黒色インク組成物の提供。
【解決手段】インク組成物中に、例えば式(I-1)に示す青色染料化合物、式(III-1)に示す黄色染料化合物、及び5−スルホアントラニル酸又はその塩類と2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸またはその塩類,4−ジアミノベンゼンスルホン酸から合成したジアゾ化合物を赤色染料化合物として含む黒色インク組成物。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色インク組成物に関し、特に、その染料化合物としては、青色、赤色及び黄色染料化合物を用いてなる黒色インク組成物であり、特に、インクジェット印刷において有用な黒色インクを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷技術は、非衝撃式の印刷技術の一つであり、その技術的特性として下記に示す多くの要求を満たすことが求められている。例えば、鮮映で滲みのない影像を提供すること、優れた耐水性、耐光性及び光学密度を有すること、速乾で保存安定性に優れること、印刷が滑らかであること、ノズルが詰まらないことなどが挙げられる。このインクジェット印刷技術の応用上、又はインクジェット印刷物に利用される場合、インク染料組成分としての染料化合物は、その耐光度に特に重要な影響を与えることが知られている。
【0003】
すでに、インクジェット印刷に用いられる多くの染料化合物が文献により提出されているが、依然としてそれぞれ多くの欠点を有している。例えば、米国特許第4694303号(特許文献1)、第5062892号(特許文献2)及び第7288142号(特許文献3)においては、食用黒色色素2号(C.I.Food Black 2)が黒色インク染料組成物として開示されているが、それら組成物の耐光性は低く、印刷上の要求を満たすことができない。また、台湾特許(発明専利)第1265193号(特許文献4)と台湾発明専利公開第200628564号(特許文献5)においても、染料混合物による黒色インク組成物の調合が開示されているが、その耐光性も同様にして印刷の要求を満たすものではない。その後、米国特許第7387667号(特許文献6)において、前記の特許文献4および5に対し、より好ましい耐光度を示す黒色インク組成物が提出されているが、インクの耐光度については、さらなる向上が求められている。
【0004】
従って、従来のインクジェット印刷用インクの染料組成物において、染料化合物の性状を改良し、前述した要求される特性を満たすインク組成物を提供することがなお求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4694303号明細書
【特許文献2】米国特許第5062892号明細書
【特許文献3】米国特許第7288142号明細書
【特許文献4】台湾特許第1265193号明細書
【特許文献5】台湾特開第200628564号明細書
【特許文献6】米国特許第7387667号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述した目的とその他の目的を達成することができる新規な黒色インク組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、黒色インク組成物に、(A)0.1〜15重量%の染料化合物、(B)5〜60重量%の有機溶剤、及び、(C)水を含有させることによって、前記した課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1]下記式(I)に示す構造を有する青色染料化合物。
【化1】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHから選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
[2]下記式(I−1)に示す構造を有する前記[1]に記載の青色染料化合物。
【化2】

[3]下記式(II)に示す構造を有する赤色染料化合物。
【化3】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHから選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
[4]下記式(II−1)に示す構造を有する前記[3]に記載の赤色染料化合物。
【化4】

[5]下記式(III)に示す構造を有する黄色染料化合物。
【化5】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHから選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
[6]下記式(III−1)に示す構造を有する前記[5]に記載の黄色染料化合物。
【化6】

[7](A)請求項1に記載の式(I)に示す化合物と、請求項3に記載の式(II)に示す化合物と、請求項5に記載の式(III)に示す化合物と、を含む0.1〜15重量%の染料化合物、(B)5〜60重量%の有機溶剤、及び、(C)水
を含有することを特徴とする黒色インク組成物。
[8]前記染料化合物は、請求項2に記載の式(I−1)に示す化合物と、請求項4に記載の式(II−1)に示す化合物と、請求項6に記載の式(III−1)に示す化合物とを含有することを特徴とする前記[7]に記載の黒色インク組成物。
[9]前記組成物中の染料化合物の総重量に対して、前記式(I)に示す化合物の含有量は25〜65重量%であり、前記式(II)に示す化合物の含有量は15〜45重量%であり、前記式(III)に示す化合物の含有量は10〜40重量%であることを特徴とする前記[7]に記載の黒色インク組成物。
[10]前記(B)の有機溶剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、及びトリエタノールアミンからなる群より選ばれることを特徴とする前記[7]に記載の黒色インク組成物。
[11](D)0.1〜1重量%の界面活性剤をさらに含有することを特徴とする前記[7]に記載の黒色インク組成物。
[12]前記界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤又はアルコキシ基化合物系界面活性剤であることを特徴とする前記[11]に記載の黒色インク組成物。
[13](E)0.01〜0.5重量%の静菌剤をさらに含有することを特徴とする前記[7]に記載の黒色インク組成物。
[14]有機基材上への印刷又は染色に供することを特徴とする前記[7]に記載の黒色インク組成物。
[15]前記有機基材は、紙又はナイロンから選ばれることを特徴とする前記[14]に記載の黒色インク組成物。
【0009】
本発明の黒色インク組成物において、(A)染料化合物としては、
(A−1)下記式(I)に示す構造を有する青色染料化合物と、
【化7】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHから選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である);
(A−2)下記式(II)に示す構造を有する赤色染料化合物:
【化8】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHより選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である);
(A−3)下記式(III)に示す構造を有する黄色染料化合物と、を含有する。
【化9】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHより選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
【発明の効果】
【0010】
具体的には、本発明は、青色染料化合物、赤色染料化合物及び黄色染料化合物を含有する新規な黒色インク組成物を提供するものである。さらに、これら染料化合物は、黒色インク組成物として調合され、インクジェット印刷又は染色法により、例えば、羊毛、シルク、ナイロン、紙又は皮革などの有機基材上に付着され、特に、紙又はナイロンに用いられた場合、優れた色度と耐光性の印刷又は染色品質を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の式(I−1)に示す構造を有する染料化合物の13C NMRスペクトルである。
【図2】図2は、本発明の式(II−1)に示す構造を有する染料化合物の13C NMRスペクトルである。
【図3】図3は、本発明の式(III−1)に示す構造を有する染料化合物の13C NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を特定の具体的な実施例により説明するが、この技術分野に精通した者は、本明細書の開示内容によって本発明の特徴と効果を十分に理解することができる。又、本発明は、その他の異なる実施形態により応用又は施行することも可能であり、本明細書における各細部は、異なる観点と応用に基づき本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の修正と変更が可能である。
【0013】
本発明の黒色インク組成物を得るために、本発明において、先ず、下記式(I)に示す構造を有する新規な青色染料化合物を提供する。
【化10】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHより選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
【0014】
具体的な実施例において、本発明の上記式(I)に示す構造を有する染料化合物を下記式(I−1)と式(I−2)に示す。
【化11】

【化12】

上記式(I)に示す構造を有する染料化合物は、青色染料であり、インクジェット用インクの青色インクの組成物の調製に適用される。
【0015】
本発明の具体的な製造例において、本発明の上記式(I)に示す構造を有する染料化合物は、下記の工程により製造される。先ず、5−スルホアントラニル酸又はその塩に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加え、ジアゾ化反応を行う。ジアゾ化反応の温度は0〜10℃であり、より好ましくは5〜8℃である。次に、カップリング反応において、pH0.5〜2.0で、より好ましくはpH0.8〜1.2で、ジアゾニウム塩溶液とH酸又はその塩(1−アミノ−8−ナフト−ル−3,6−ジスルホン酸又はその塩)とを酸性下で結合させる。続いて、アントラニル酸又はその塩を上記の方法によりジアゾ化反応させた後、前記のカップリング生成物とアルカリ性下で結合させる。最後に、NaClを用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、前記式(I−1)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。
【0016】
本発明は、下記式(II)に示す構造を有する新規な赤色染料化合物をも提供する。
【化13】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHより選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
【0017】
具体的な実施例の一つにおいて、本発明の上記式(II)に示す構造を有する染料化合物を下記式(II−1)と式(II−2)に示す。
【化14】

【化15】

上記式(II)に示す構造を有する染料化合物は、赤色染料であり、インクジェット用インクの赤色インクの組成物の調製に適用される。
【0018】
本発明の具体的な製造例において、本発明の上記式(II)に示す構造を有する染料化合物は、下記の工程により製造される。先ず、5−スルホアントラニル酸又はその塩に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加え、ジアゾ化反応を行う。ジアゾ化反応温度は0〜10℃であり、より好ましくは5〜8℃である。次に、カップリング反応において、pH0.5〜2.0で、より好ましくはpH0.8〜1.2で、ジアゾ二ウム塩溶液とJ酸又はその塩(2−アミノ−5−ナフト−ル−7−スルホン酸又はその塩)とを、先ず酸性下で結合させ、次いでアルカリ性下で結合させる。最後に、NaClを用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、前記式(II−1)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。
【0019】
又、本発明は、下記式(III)に示す構造を有する新規な黄色染料化合物をも提供する。
【化16】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHより選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
【0020】
具体的な実施例の一つにおいて、本発明の上記式(III)に示す構造を有する染料化合物を下記式(III−1)と式(III−2)に示す。
【化17】

【化18】

上記式(III)に示す構造を有する染料化合物は、黄色染料であり、インクジェット用インクの黄色インクの組成物の調製に適用される。
【0021】
本発明の一つの具体的な製造例において、本発明の上記式(III)に示す構造を有する染料化合物は、下記の工程により製造される。先ず、5−スルホアントラニル酸又はその塩に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加え、ジアゾ化反応を行う。ジアゾ化反応の温度は0〜10℃であり、5〜8℃がより好ましい。次に、カップリング反応において、pH0.5〜2.0で、より好ましくはpH0.8〜1.2で、ジアゾニウム塩溶液と2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸又はその塩とを、先ず酸性下で結合させ、次いでアルカリ性下で結合させる。最後に、NaClを用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、前記式(III−1)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。
【0022】
具体的な実施例の一つにおいて、本発明の新規な黒色インク組成物は、下記成分を含む。
(A)下記式(I)、式(II)及び式(III)の化合物を含む、インクの色を提供するための染料化合物0.1〜15重量%。
【化19】

【化20】

【化21】

(上式中、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立してCl、COOM、NO又はOCHより選ばれ、Mは、H、Na、Li或いはNHを示し、mは0或いは1の整数、nは0或いは1の整数である。)
(B)前記染料化合物を溶解するための有機溶剤。当該有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びトリエタノールアミンからなる群より選ばれる一種又は多種を含む。
(C)その他の成分としての水。ここで、使用される水としては、蒸留水又は脱イオン水が挙げられ、好ましくは脱イオン水が挙げられる。
【0023】
本発明のインク組成物において、有機溶剤の含有量は、ノズルの保湿性、印刷の際の安定性及び保存の安定性などを考慮して適宜設定される。インク組成物総重量に対し、有機溶剤の含有量は、通常、5〜60重量%であり、10〜40重量%がより好ましい。
【0024】
前記青色染料化合物の具体例において、前記式(I)に示す化合物中、RとRはCOOMであり、MはNaを示し、mとnは0であることがより好ましい。即ち、当該青色染料化合物は下記式(I−1)に示す構造を有する。
【化22】

又は、前記式(I)に示す化合物中、RはCOOMであり、RはOCHを示し、MはNaを示し、mとnは0であることもより好ましい。即ち、当該青色染料化合物は下記式(I−2)に示す構造を有する。
【化23】

【0025】
前記赤色染料化合物の具体例において、前記式(II)に示す化合物中、RとRはCOOMであり、MはNaを示し、mとnは1であることがより好ましい。即ち、当該赤色染料化合物は下記式(II−1)に示す構造を有する。
【化24】

又は、前記式(II)に示す化合物中、RとRはOCHであり、MはNaを示し、mとnは1であることもより好ましい。即ち、当該赤色染料化合物は下記式(II−2)に示す構造を有する。
【化25】

【0026】
前記黄色染料化合物の具体例において、前記式(III)に示す化合物中、RとRはCOOMであり、MはNaを示し、mとnは1であることがより好ましい。即ち、当該黄色染料化合物は下記式(III−1)に示す構造を有する。
【化26】

又は、前記式(III)に示す化合物中、RとRはOCHであり、MはNaを示し、mとnは1であることもより好ましい。即ち、当該黄色染料化合物は下記式(III−2)に示す構造を有する。
【化27】

【0027】
本発明において、黒色インク組成物は、総量0.1〜15重量%の染料化合物を含有し、通常は2〜12重量%であり、好ましくは3〜10重量%である。上記含量の重量%は、当該インク組成物総重量当たりの含有量である。
【0028】
本発明の黒色インク組成物において、各染料化合物組成の含有比率は、当該黒色インク組成物中の染料化合物総重量に対して、前記式(I)の化合物含量は、通常、25〜65重量%であり、好ましくは35〜55重量%であり、前記式(II)の化合物含量は、通常、15〜45重量%であり、好ましくは20〜40重量%であり、前記式(III)の化合物含量は、通常、10〜40重量%であり、好ましくは15〜35重量%である。
【0029】
本発明の黒色インク組成物は、さらに、インクの粘度を増加し、かつノズルが詰まるのを防止するために、(D)界面活性剤を含有することができる。当該界面活性剤の含有量は、黒色インク組成物総重量当たり、0.1〜1重量%であり、通常は0.1〜0.5重量%であり、好ましくは0.1〜0.2重量%である。適当な界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤又はアルコキシ化合物系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アセチレングリコール系界面活性剤の具体例としては、サーフィノール485、サーフィノール465、サーフィノール440、サーフィノール420、サーフィノール104(Air Products & Chemicals社販売)が挙げられる。アルコキシ化合物系界面活性剤の具体例としては、テルギトール15−S−5、テルギトール15−S−7、テルギトール15−S−9(Union Carbide社販売)などが挙げられる。
【0030】
又、上記の組成の外、本発明の黒色インク組成物は、さらに、当該黒色インク組成物の物理的及び化学的性質を維持するために、(E)静菌剤を含有することができる。当該静菌剤の含有量は、黒色インク組成物総重量当たり、0.01〜0.5重量%である。適当な静菌剤としては、例えば、NUOSEPT(Huls Americal社の一部門であるNudex社販売)、UCARCIDE(Union Carbide社販売)、VANCIDE(RT Vanderbilt社販売)及びPROXEL(ICI Americas社販売)などが挙げられる。
【0031】
本発明には、前記染料化合物を用いた黒色染料組成物も含まれる。黒色染料組成物の具体的な調製例としては、式(I)に示す構造のジアゾ染料化合物と、式(II)に示す構造のジアゾ染料化合物と、式(III)に示す構造のジアゾ染料化合物とを混合して調製されるものが挙げられる。これら混合又は調製の方法は、この技術を熟知するものにとっては周知であり、ここではその説明を省略する。
【0032】
例えば、本発明の黒色インク組成物の調製例の一つとして、黒色インク組成物は、(A’)含量が0.1〜15重量%の黒色染料組成物と、(B’)含量が20〜30重量%の有機溶剤と、(C’)含量が55〜70重量%の脱イオン水と、を含有するものである。本発明の黒色インク組成物の成分と比率は、すでに詳述したとおりであり、その混合又は調製法はこれら技術を熟知するものにとっては周知であり、ここではその説明を省略する。
【0033】
本発明の黒色インク組成物は、さらに、その成分として(D’)界面活性剤を含有することができる。当該界面活性剤は、例えば、アセチレングリコール誘導体−サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノール420及びサーフィノール104からなる群(Air Products & Chemicals社販売)から選ばれ、下記式(IV)に示す構造を有する。
【化28】

(式中、nとmの合計は0〜50の整数範囲内にある。)
【0034】
本発明の黒色インク組成物は、必要な場合、さらに慣用の添加剤を加えることができる。当該添加剤としては、例えば、黒色インク組成物の酸性、アルカリ性を保持するための緩衝剤が挙げられる。適当な緩衝剤としては、例えば、酢酸、酢酸塩、リン酸、リン酸塩、硼砂、硼酸塩又はクエン酸塩などが使用される。その他の添加剤としては、例えば、粘度調整剤(例えば、ポリエチレンアルコールとセルロース系誘導体)、消泡剤などが挙げられる。
【0035】
本発明の黒色インク組成物中、染料化合物として、前記の染料化合物又はそのアルカリ金属塩が単独又は混合されて利用される。より好ましくは、含塩量の低いものを選出して使用する。即ち、染料化合物の重量当たり、0.5重量%以下の総含塩量の染料化合物を用いることが好ましい。ここで、調製によって生成された、及び/又は後続する希釈剤の添加により生成された、相対的に高い含塩量を有する染料化合物は脱塩を行ってよく、例えば、フィルム分離法(例えば、限外濾過、ナノ濾過、逆浸透法又は透析法)により塩を除去する。
【0036】
以上のように、本発明の新規な染料化合物は、インクジェット印刷用インク又は有機基材染色に応用可能であり、インクジェット印刷又は染色の方法によりそのインク又は染料組成物を有機基材材料上に付着させて使用することができる。当該有機基材として、例えば、羊毛、シルク、ナイロン、紙及び皮革などが挙げられ、より好ましくは、紙又はナイロンである。特に、本発明の黒色インク組成物は、耐光度に優れた印刷性状を提供するものである
【0037】
本発明の黒色インク組成物の調製法は、特に限定されず、一般的な従来の方法により、各成分を必要量の平衡水分中に混合して調製することで達成される。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の特許請求の範囲はこれら実施例により限定されるものではない。実施例において、より具体的に説明するために、本発明により提供される式(I)、式(II)、式(III)の構造を有するジアゾ染料化合物、黒色染料組成物、黒色インク組成物などの具体的な実施例を挙げているが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。特に、化合物は遊離酸として示しているが、実際には、金属塩であってよく、さらにはアルカリ金属塩であってもよく、特にナトリウム塩の場合でもあり得る。特に説明がない限り、実施例中に示される部数又は%は重量単位であり、温度は℃単位で表示される。
【0039】
以下、本発明の黒色インク組成物中の染料化合物の製造方法について説明するが、この実施例の範囲に限定されるものではない。
【0040】
製造例1
本発明において、式(I)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、5−スルホアントラニル酸又はその塩類43.4部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液とH酸又はその塩類(1−アミノ−8−ナフトール−3,6−ジスルホン酸又はその塩類)44.24部とを酸性下で結合させる。続いて、アントラニル酸又はその塩類32.56部を上記の方法によりジアゾ化反応させた後、前記のカップリング化合物とアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl800部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、式(I−1)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。図1にその13C NMRスペクトルを示す。
【0041】
製造例2
本発明において、式(II)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、5−スルホアントラニル酸又はその塩類43.4部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液とJ酸又はその塩類(2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸又はその塩類)23.44部とを、先ず酸性下で結合させ、次いでアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl800部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、式(II−1)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。図2にその13C NMRスペクトルを示す。
【0042】
製造例3
本発明において、式(III)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、5−スルホアントラニル酸又はその塩類43.4部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液と2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸又はその塩類18.4部とを、先ず酸性下で結合させ、次いでアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl800部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、式(III−1)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。図3にその13C NMRスペクトルを示す。
【0043】
製造例4
本発明において、式(I)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、3−アミノ−4−メトキシベンゼンスルホン酸又はその塩類10.85部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液とH酸又はその塩類15.8部とを酸性下で結合させる。続いて、アントラニル酸又はその塩類8.14部を上記の方法によりジアゾ化反応させた後、前記のカップリング化合物とアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl200部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、式(I−2)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。
【0044】
製造例5
本発明において、式(II)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、3−アミノ−4−メトキシベンゼンスルホン酸又はその塩類10.85部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液とJ酸又はその塩類5.86部とを、先ず酸性下で結合させ、次いでアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl200部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、式(II−2)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。
【0045】
製造例6
本発明において、式(III)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、3−アミノ−4−メトキシベンゼンスルホン酸又はその塩類21.7部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液と2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸又はその塩類9.2部とを、先ず酸性下で結合させ、次いでアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl200部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法によりで脱塩し、噴霧乾燥することにより、式(III−2)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。
【0046】
製造例7
本発明において、式(I)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸ナトリウム又はその塩類46.4部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液とH酸又はその塩類44.24部とを酸性下で結合させる。続いて、アントラニル酸又はその塩類32.56部を上記の方法によりジアゾ化反応させた後、前記のカップリング化合物とアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl800部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、下記式(I−3)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。
【化29】

【0047】
製造例8
本発明において、式(II)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸ナトリウム又はその塩類23.33部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液とJ酸又はその塩類23.44部とを、先ず酸性下で結合させ、次いで3−アミノ−4−メトキシベンゼンスルホン酸又はその塩類21.73部を加え、水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、その後、先の反応生成物とアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl800部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、下記式(II−3)に示す構造を有するジアゾ染料化合物を得る。
【化30】

【0048】
製造例9
本発明において、式(III)に示すジアゾ染料化合物の製造は、先ず、2−ニトロアニリン−4−スルホン酸ナトリウム又はその塩類46.6部に水を加えて溶解した後、モル比率で1:1.05の亜硝酸ナトリウムと氷塩酸水溶液を加えて、0〜10℃の温度でジアゾ化反応を行い、次に、カップリング反応においてpH0.5〜2.0の条件下で、ジアゾニウム塩溶液と2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸又はその塩類18.4部とを、先ず酸性下で結合させ、次いでアルカリ性下で結合させる。最後に、NaCl800部を用いて塩析し、ケーキ状物を濾取し、これを水に溶解し、45%の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整し、逆浸透法により脱塩し、噴霧乾燥することにより、下記式(III−3)に示すジアゾ染料化合物を得る。
【化31】

【0049】
実施例1 黒色染料組成物の調製
本発明の前記製造例の式(I−1)に示すジアゾ染料化合物3.53部を取り、次に、本発明の式(II−1)に示すジアゾ染料化合物2.54部を加え、さらに、本発明の式(III−1)に示すジアゾ染料化合物1.52部を加え、ミキサーで充分均一に混合して、黒色染料組成物約7.59部を得る。
【0050】
実施例2 黒色染料組成物の調製
本発明の前記製造例の式(I−2)に示すジアゾ染料化合物5.33部を取り、次に、本発明の式(II−2)に示すジアゾ染料化合物3.26部を加え、さらに、本発明の式(III−2)に示すジアゾ染料化合物1.84部を加え、ミキサーで充分均一に混合して、黒色染料組成物約10.43部を得る。
【0051】
実施例3 黒色染料組成物の調製
本発明の前記製造例の式(I−3)に示すジアゾ染料化合物4.83部を取り、次に、本発明の式(II−3)に示すジアゾ染料化合物2.91部を加え、さらに、本発明の式(III−3)に示すジアゾ染料化合物1.90部を加え、ミキサーで充分均一に混合して、黒色染料組成物約9.64部を得る。
【0052】
実施例4 黒色インク組成物の調製
実施例1の黒色染料組成物7.52部を取り、脱イオン水64.18部を加え、水酸化ナトリウム水溶液で調整し溶解させた後、次に、ジエチレングリコール10部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10部、グリセリン7部、界面活性剤1部及び静菌剤0.3部の順序で添加し、均一に混合した後、32%の塩酸溶液を用いてpH7〜7.5に調整し、濾過して黒色インク組成物を得る。
【0053】
実施例5 黒色インク組成物の調製
実施例2の黒色染料組成物10.43部を取り、脱イオン水61.27部を加え、水酸化ナトリウム水溶液で調整し溶解させた後、次に、ジエチレングリコール10部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10部、グリセリン7部、界面活性剤1部及び静菌剤0.3部の順序で加え、均一に混合した後、32%の塩酸溶液を用いてpH7〜7.5に調整し、濾過して黒色インク組成物を得る。
【0054】
実施例6 黒色インク組成物の調製
実施例3の黒色染料組成物9.64部を取り、脱イオン水62.06部を加え、水酸化ナトリウム水溶液で調整し溶解させた後、次に、ジエチレングリコール10部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10部、グリセリン7部、界面活性剤1部及び静菌剤0.3部の順序で加え、均一に混合した後、32%の塩酸溶液を用いてpH7〜7.5に調整し、濾過して黒色インク組成物を得る。
【0055】
比較例1
バイエル社製品のBayscrip黒色SP 20部を取り、脱イオン水51.7部を加え、水酸化ナトリウム水溶液により調整し溶解させた後、ジエチレングリコール10部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10部、グリセリン7部、界面活性剤1部及び静菌剤0.3部の順序で加え、均一に混合した後、32%の塩酸溶液を用いてpH7〜7.5に調整し、濾過して黒色インク組成物を得る。
【0056】
比較例2
永光化学社の製品EVERMAX黒色SF−R LIQ 20部を取り、脱イオン水51.7部を加え、水酸化ナトリウム水溶液により調整し溶解させた後、ジエチレングリコール10部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル10部、グリセリン7部、界面活性剤1部及び静菌剤0.3部の順序で加え、均一に混合した後、32%の塩酸溶液を用いてpH7〜7.5に調整し、濾過して黒色インク組成物を得る。
【0057】
以下の試験例は、表1に示す成分のインク組成物について耐光度の測定を行った結果である。
【表1】

DEG:ジエチレングリコール。
DEGMBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル。
S−465:前記Air Products & Chemicals社販売の界面活性剤の商品名を示す。
PROXEL−XL2:前記バイエル社販売の静菌剤の商品名を示す。
DI−water:脱イオン水。
【0058】
試験例
下記の印刷試験条件下で印刷した後、日光に対する耐性を測定し、現在商品として常用されている黒色インク組成物であるバイエル社の製品Bayscrip黒色SP及び永光化学社製品のEVERMAX黒色SF−R LIQと比較し、その結果を表2に示す。
プリンター:EPSONSTYLUS PHOTO 830U型。
印刷用紙:プレインペーパー
【0059】
耐光度試験:
印刷後の印刷用紙をキセノンアーク灯を用い、総エネルギー量50KJの条件下で照射し、DATACOLOR分光測色計を用い、キセノンアーク灯照射前後の色差の変化を調べた。ここで、DE値が大きい程、照射前後の色彩の変化が大きく、耐光度が劣ることを示す。
【表2】

注:耐光度DE値の変化は、DE値が小さい程、照射前後の色彩の変化が小さく、耐光度が優れていることを示す。
【0060】
上記表2の結果から分かるように、本発明の染料化合物を用いて調製した黒色インク組成物は耐光度に優れ、印刷品質を向上し得るものである。
【0061】
以上のように、本発明は、その目的、方法及び効果を問わず、又、その技術面や研究開発における設計のいずれにおいても、従来技術とは大きく異なる優れた特性を有することを示している。注意すべき点は、上記の多くの実施例は本発明について説明をするための便宜上の例示に止まり、本発明を限定するものではなく、本発明の主張する権利範囲は、当然特許請求の範囲に基づくものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この黒色インク組成物は、特に、インクジェット印刷に適用され、優れた印刷安定性を示し、耐光度も高く、印刷品質をも高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)に示す構造を有する青色染料化合物。
【化1】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHから選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
【請求項2】
下記式(I−1)に示す構造を有する請求項1に記載の青色染料化合物。
【化2】

【請求項3】
下記式(II)に示す構造を有する赤色染料化合物。
【化3】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHから選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
【請求項4】
下記式(II−1)に示す構造を有する請求項3に記載の赤色染料化合物。
【化4】

【請求項5】
下記式(III)に示す構造を有する黄色染料化合物。
【化5】

(式中、RとRは、それぞれ独立して、Cl、COOM、NO又はOCHから選ばれ、Mは、H、Na、Li又はNHを示し、mは0又は1の整数、nは0又は1の整数である。)
【請求項6】
下記式(III−1)に示す構造を有する請求項5に記載の黄色染料化合物。
【化6】

【請求項7】
(A)請求項1に記載の式(I)に示す化合物と、請求項3に記載の式(II)に示す化合物と、請求項5に記載の式(III)に示す化合物と、を含む0.1〜15重量%の染料化合物、(B)5〜60重量%の有機溶剤、及び、(C)水
を含有することを特徴とする黒色インク組成物。
【請求項8】
前記染料化合物は、請求項2に記載の式(I−1)に示す化合物と、請求項4に記載の式(II−1)に示す化合物と、請求項6に記載の式(III−1)に示す化合物とを含有することを特徴とする請求項7に記載の黒色インク組成物。
【請求項9】
前記組成物中の染料化合物の総重量に対して、前記式(I)に示す化合物の含有量は25〜65重量%であり、前記式(II)に示す化合物の含有量は15〜45重量%であり、前記式(III)に示す化合物の含有量は10〜40重量%であることを特徴とする請求項7に記載の黒色インク組成物。
【請求項10】
前記(B)の有機溶剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリドン、及びトリエタノールアミンからなる群より選ばれることを特徴とする請求項7に記載の黒色インク組成物。
【請求項11】
(D)0.1〜1重量%の界面活性剤をさらに含有することを特徴とする請求項7に記載の黒色インク組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤又はアルコキシ基化合物系界面活性剤であることを特徴とする請求項11に記載の黒色インク組成物。
【請求項13】
(E)0.01〜0.5重量%の静菌剤をさらに含有することを特徴とする請求項7に記載の黒色インク組成物。
【請求項14】
有機基材上への印刷又は染色に供することを特徴とする請求項7に記載の黒色インク組成物。
【請求項15】
前記有機基材は、紙又はナイロンから選ばれることを特徴とする請求項14に記載の黒色インク組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1721(P2012−1721A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135815(P2011−135815)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(510291909)エバーライト ユーエスエー,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】