説明

青色感光性組成物及びそれを用いたカラーフィルタ、ディスプレイ

【課題】着色剤として光散乱のない染料を使用すると共に、光重合性モノマーの硬化に起因する黄変を防いで、分光透過率すなわち明度の高い青色パターンを形成することのできる組成物を提供すること。
【解決手段】(A)バインダー樹脂、(B)光重合性モノマー(C)青色染料、(D)光開始剤、(E)溶剤を含有する青色感光性組成物において、前記(B)光重合性モノマーの官能基数が2〜4であることを特徴とする青色感光性組成物を用いる。実験データから分かるように、顔料を使用する組成物と異なり、青色染料を用いた感光性組成物においては、光重合性モノマーの官能基数が2〜4である場合、その明度(Y値)が高いものが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光特性に優れたカラーフィルタの青色画素を提供しうる着色組成物、これを用いて形成された画素を有するカラーフィルタ、並びに該カラーフィルタを用いて形成された液晶及び有機ELのカラーディスプレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の多様化等にともなって、従来から一般に使用されているCRTに比べて消費電力や空間占有面積が少ない平面表示ディスプレイのニーズが高まり、このような平面表示ディスプレイの一つとして液晶ディスプレイや有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いたカラーディスプレイが注目されている。
【0003】
現在では、環境配慮としてカラーディスプレイにおいても、消費電力の低減が求められている。液晶ディスプレイの簡略的な構造を図1に示す。液晶ディスプレイは1枚の基板にカラーフィルタ、対向基板にTFTを形成した基板の基板間に液晶を封入し、2枚の基板の外側には偏光板を張り合わせたパネルとバックライトからなる。液晶ディスプレイの場合、液晶に電荷を印加し、液晶の複屈折性を利用してバックライトからの光の明暗をつけることで表示ができている。この場合、偏光板でバックライトの光を50%遮断し、カラーフィルタで70%の光を遮断することになる。その為、カラーフィルタとしては、より透過率の高いカラーフィルタが求められている。
【0004】
有機ELディスプレイの簡略図を図2に示す。有機ELディスプレイのトップエミッション構造においては、液晶ディスプレイと同様に、1枚の基板にカラーフィルタが形成され、対向の基板にTFT及び有機EL素子が形成され、2枚の基板間に接着層が設けられている。有機ELディスプレイの重要な課題としては、素子の寿命拡大と消費電力の削減が挙げられる。その為、素子としては発光効率を向上することが活発に研究されている。これまでは蛍光の発光を利用した発光素子が支流であったが、その蛍光を放つためには必要な一重項の生成確率は統計的に25%であることが知られている。そのため、理論的には注入した電子と正孔のうちの1/4しか光として取り出すことができないことになる。これに対し、励起三重項からの燐光を用いた有機EL素子が提案され(非特許文献1等参照)、近年では室温で燐光を示す材料の研究が盛んに行われている。上記の通り、素子は、発光効率の向上、即ち発光効率を向上させ、素子の寿命を拡大する及び消費電力を削減することが重要な課題として取り組まれている。その為、色再現性という意味では十分な性能が得られていない。その為、カラーフィルタが必要であり、カラーフィルタが発光素子からの色を補正する役目を担うことになる。しかし、カラーフィルタにより色再現領域が拡大できても、カラーフィルタでEL素子からの光を多く遮ってしまうと、EL素子の発光効率を向上させたことによる効果が薄くなる。
【0005】
その為、カラーフィルタとしては、より透過率の高いカラーフィルタが求められている。
【0006】
従来のカラーフィルタの製造法においては、色素として、顔料を用いていた。色素として顔料を用いる代表的な製造法としては、顔料分散法がある。
【0007】
顔料分散法では、樹脂、光開始剤、光重合性モノマー、分散剤、溶剤、及び顔料を含んでいる感光性着色液を用いる。この感光性着色液を基板上に塗布し、乾燥、露光、現像工程を経てパターンを形成する方法が顔料分散法である。この製造方法では色素として顔料を用いているために耐熱性、耐光性が優れている。
【0008】
しかしながら、上記の方法においても問題点がないわけではない。色素として顔料を用いると、顔料は粒径が大きいため光散乱を起こし、透明性、コントラスト、色純度の点で問題がある。近年では、顔料の微細化技術の開発も進められ高コントラスト、色純度の高い顔料が開発されている。しかし、顔料を微細化した結果、分散性を安定化させる為に分散剤を多く添加する必要がある。分散剤は若干ながらも黄色く着色している為、分散剤の量が多くなることで、特に青色の分光において、その分散剤の着色が大きく影響を受け、青色の透過率低下を招くという課題がある。
【0009】
また、感光性着色液を用い、カラーフィルタを形成する方法では、光重合性モノマーが含まれているが、カラーフィルタの硬化工程で黄色く変色するものがあり、その着色が青色の分光透過率や明度(色度図でのY値)の低下を招くことがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.A.Baldoら, Nature,395巻,151頁(1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、着色剤として光散乱のない染料を使用すると共に、前記光重合性モノマーの硬化に起因する黄変を防いで、分光透過率すなわち明度の高い青色パターンを形成することのできる組成物を提供することを課題とする。
【0012】
また、こうして得られた組成物を利用することによって、色特性に優れ、特に透過度が高く、明度の高いカラーフィルタとカラーディスプレイを提供することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、(A)バインダー樹脂、(B)光重合性モノマー(C)青色染料、(D)光開始剤、(E)溶剤を含有する青色感光性組成物において、前記(B)光重合性モノマーの官能基数が2〜4であることを特徴とする青色感光性組成物である。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、(B)光重合性モノマーが青色感光性組成物の固形分中に10%〜40%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の青色感光性組成物である。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、(C)青色染料がトリアリールメタン染料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の青色感光性組成物である。
【0016】
さらに、請求項4に記載の発明は、(C)青色染料が青色感光性組成物の固形分中に2%〜10%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の青色感光性組成物である。
【0017】
また、請求項5及び6に記載の発明は、それぞれ、上記青色感光性組成物を用いて製造したカラーフィルタと、そのカラーフィルタを用いた液晶及び有機ELディスプレイである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、青色画素の色特性に優れ、特に透過度が高く、したがって明度の高い
カラーフィルタを得ることができ、またこのようなカラーフィルタを使用することによりカラー表示時の効率を低下させず、低消費電力、長寿命で明るく鮮明なカラー画像を有するカラーディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】液晶ディスプレイの簡略的な構造を説明するための断面説明図
【図2】有機ELディスプレイの簡略的な構造を説明するための断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明の青色着色組成物を構成する各成分について説明する。
【0021】
本発明の青色着色組成物は、(A)バインダー樹脂、(B)光重合性モノマー(C)青色染料、(D)光開始剤、(E)溶剤を必須成分とするものである。この他、増感剤、界面活性剤、熱重合抑制剤、可塑剤、接着促進剤、充填剤、消泡剤、レベリング剤などを含有するものであってもよい。
【0022】
本発明の(B)光重合性モノマーは官能基の数が2〜4であることが必要である。光重合性モノマーの官能基数が2未満であると露光工程での感度が不足してしまうことでパターニングが出来なくなり、また、官能基数が4をこえるとカラーフィルタ製造時の加熱工程において透過率が低下することで明度が低下してしまう。
【0023】
このような(B)光重合性モノマーとしては、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルなどが代表例に挙げられる。
【0024】
また、上記(B)光重合性モノマーは、固形分中に10%〜40%の範囲であることが望ましい。なぜなら、10%未満であると露光工程における感度が低下する。また、40%よりも多いと、塗膜の表面付近が塗膜の深部に比べて著しく硬化するため、パターンの形状が逆テーパーとなるオーバーハングが起こりやすくなる。
【0025】
(D)光開始剤としては、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサンソン系光開始剤、トリアジン系光開始剤、オキシムエステル系光開始剤、ホスフィン系光開始剤、キノン系光開始剤、ボレート系光開始剤、カルバソール系光開始剤、イミダゾール系光開始剤、チタノセン系光開始剤等が使用できる。これらは1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
アセトフェノン系光開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が例示できる。
【0027】
また、ベンゾイン系光開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベン
ゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が例示できる。
【0028】
ベンゾフェノン系光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等が例示できる。
【0029】
チオキサンソン系光開始剤としては、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等が例示できる。
【0030】
トリアジン系光開始剤としては、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等が例示できる。
【0031】
オキシムエステル系光開始剤としては、1,2−オクタンジオン、1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]、o−(アセチル)−N−(1−フェニル−2−オキソ−2−(4’−メトキシ−ナフチル)エチリデン)ヒドロキシルアミン等が例示できる。
【0032】
ホスフィン系光開始剤としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が例示できる。
【0033】
キノン系光開始剤としては、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等が例示できる。
【0034】
光開始剤の使用量は、感光性着色組成物の全固形分量(溶剤以外の成分)を基準として0.5〜50重量%が好ましく、より好ましくは3〜30重量%である。
【0035】
また、光開始剤に併用する増感剤としては、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0036】
本発明の(C)青色染料としては、銅フタロシアニン、ナフトキノン、トリアリールメタン系染料などを使用することができるが、より好ましくはトリアリールメタン染料を使用する。
【0037】
トリアリールメタン系染料としては、従来公知のトリアリールメタン系の着色染料を広く使用できるが、具体的には、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、ビクトリアブルーB、OIL Blue613(オリエント化学工業社製)VALIFAST B
lue 1621(オリエント化学社製)、SBN Blue 701(保土ヶ谷化学社製)及びこれらの誘導体が好ましい。これらトリアリールメタン系色素は単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
また、本発明に使用するトリアリールメタン系染料は、固形分中に2%〜10%の範囲であることが望ましい。なぜなら、2%未満であると色濃度が不足しカラーフィルタとするときに膜厚を厚くする必要があり、好ましくない。また、10%よりも多いと感光性組成物中における感光性成分の比率が低下し、露光感度が低下してしまうためである。
【0039】
(A)バインダー樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の透明樹脂である。透明樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および感光性樹脂が含まれ、これらを単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0041】
感光性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する線状高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を該線状高分子に導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合体やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合体等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0042】
本発明の(E)溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
【0043】
次に、必要に応じて青色感光性組成物に添加する成分について説明する。前述のように、この成分としては、光開始剤に併用する増感剤のほか、界面活性剤、熱重合抑制剤、可塑剤、接着促進剤、充填剤、消泡剤、レベリング剤が挙げられる。
【0044】
界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等のフッ素界面活性剤、高級脂肪酸アルカリ塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等のアニオン系界面活性剤、高級アミンハロゲン酸塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等の非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤を用いることが
でき、これらは組み合わせて用いてもよい。
また、熱重合抑制剤としては、アニソール、ハイドロキノン、ピロカテコール、第三ブチルカテコール、フェノチアジン等が例示できる。
【0045】
本発明のカラーフィルタは、フォトリソグラフィ法により、本発明の着色組成物、赤色着色組成物および緑色着色組成物を用いて透明基板上に各色のフィルタセグメントを形成することにより製造することができる。例えば、透明基板上に着色組成物を塗布し、画素パターン状に露光・現像して、前記画素パターン状の被膜を残存させることによって青色のフィルタセグメントを形成することができる。そして、この工程を、赤色着色組成物および緑色着色組成物についても繰り返すことによって、カラーフィルタを製造することが可能となる。
【0046】
透明基板としては、透明性があり、ある程度の剛性があればとくに限定されるものではないが、ガラスやポリエステルやポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂などのフィルム又は薄板を用いることができる。
【0047】
現像液としては、炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ現像液が使用できる。また、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることもできる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。なお、紫外線露光感度を上げるために、上記着色組成物を塗布乾燥後、水溶性あるいはアルカリ可溶性樹脂、例えばポリビニルアルコールや水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【0048】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例および比較例中、「部」とは「重量部」を意味する。
【実施例】
【0049】
[バインダー樹脂の調整]
(バインダー樹脂の合成例)
反応容器にシクロヘキサノン70部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら80℃に加熱して、同温度でベンジルメタクリレート12.3部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4.6部、メタクリル酸5.3部、単量体(a)としてパラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)7.4部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4部の混合物を2時間かけて滴下して重合反応を行った。滴下終了後、さらに80℃で3時間反応させた後、アゾビスイソブチロニトリル0.2部をシクロヘキサノン10部に溶解させたものを添加し、さらに80℃で1時間反応を続けて、非感光性透明樹脂共重合体溶液を得た。室温まで冷却した後、非感光性透明樹脂溶液約2gをサンプリングして180℃、20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に合成した非感光性透明樹脂溶液に不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加して非感光性樹脂溶液を調製した。得られた透明樹脂1の重量平均分子量Mwは20000であった。
【0050】
[感光性組成物の調製]
下記の要領で青色感光性着色組成物を調製した。
【0051】
・青色感光性組成物1
SBN Blue701(保土ヶ谷化学社製トリアリールメタン染料) 0.4部
バインダー樹脂 83.1部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irg907」) 1.0部
光重合性モノマー(東亞合成社製「アロニックスM309」:トリメチロールプロハン
トリアクリレート) 2.0部
シクロヘキサノン 13.5部

上記の組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、0.5μmのフィルタで濾過して、青色感光性組成物1を得た。
【0052】
・青色感光性組成物2
SBN Blue701(保土ヶ谷化学社製トリアリールメタン染料) 1.0部
バインダー樹脂 50.0部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irg907」) 3.0部
光重合性モノマー(東亞合成社製「アロニックスM309」:トリメチロールプロハントリアクリレート) 6.0部
シクロヘキサノン 40.0部
上記の組成の混合物を使用して、青色感光性組成物1と同様に、青色感光性組成物2を得た。
【0053】
・青色感光性組成物3
SBN Blue701(保土ヶ谷化学社製トリアリールメタン染料) 2.0部
バインダー樹脂 30.1部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irg907」) 4.0部
光重合性モノマー(東亞合成社製「アロニックスM309」:トリメチロールプロハントリアクリレート) 8.0部
シクロヘキサノン 56.0部
上記の組成の混合物を使用して、青色感光性組成物1と同様に、青色感光性組成物3を得た。
【0054】
・青色感光性組成物4
青色感光性着色組成物2において用いた光重合性モノマーを東亞合成社性「アロニックスM270」:ポリプロピレングリコールジアクリレートに変更した以外は同様にして青色感光性着色組成物4を得た。
【0055】
・青色感光性組成物5
青色感光性着色組成物2において用いた光重合性モノマーを東亞合成社性「アロニックスM408」:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートに変更した以外は同様にして青色感光性着色組成物5を得た。
【0056】
・青色感光性組成物6
SBN Blue701(保土ヶ谷化学社製トリアリールメタン染料) 1.0部
バインダー樹脂 87.5部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irg907」) 0.5部
光重合性モノマー(東亞合成社製「アロニックスM309」:トリメチロールプロハントリアクリレート) 1.0部
シクロヘキサノン 10.0部
上記の組成の混合物を使用して、青色感光性組成物1と同様に、青色感光性組成物6を得た。
【0057】
・青色感光性組成物7
SBN Blue701(保土ヶ谷化学社製トリアリールメタン染料) 1.0部
バインダー樹脂 27.5部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irg907」) 4.5部
光重合性モノマー(東亞合成社製「アロニックスM309」:トリメチロールプロハントリアクリレート) 9.0部シクロヘキサノン 58.0部
上記の組成の混合物を使用して、青色感光性組成物1と同様に、青色感光性組成物7を得た。
【0058】
・青色感光性組成物8
SBN Blue701(保土ヶ谷化学社製トリアリールメタン染料) 0.3部
バインダー樹脂 53.3部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irg907」) 3.0部
光重合性モノマー(東亞合成社製「アロニックスM309」:トリメチロールプロハントリアクリレート) 6.0部
シクロヘキサノン 37.4部
上記の組成の混合物を使用して、青色感光性組成物1と同様に、青色感光性組成物8を得た。
【0059】
・青色感光性組成物9
SBN Blue701(保土ヶ谷化学社製トリアリールメタン染料) 2.4部
バインダー樹脂 42.9部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irg907」) 3.0部
光重合性モノマー(東亞合成社製「アロニックスM309」:トリメチロールプロハントリアクリレート) 6.0部
シクロヘキサノン 45.7部
上記の組成の混合物を使用して、青色感光性組成物1と同様に、青色感光性組成物9を得た。
【0060】
・青色感光性組成物10
C.I.Pigment Blue 15:6(東洋インキ製造社製「リオノールブルーES」) 10.0部
分散剤( ゼネカ社製「ソルスバーズ20000」) 2.0部
バインダー樹脂( 固形分2 0%) 40.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 48.0部
上記組成の混合物を均一に攪拌混合した後、直径1mmのガラスビースを用いて、サンドミルで5 時間分散した後、5μmのフィルタで濾過して青色顔料分散体を作製した。
【0061】
上記分散体 12.9部
バインダー樹脂 42.1部
光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「Irg907」) 3.0部
光重合性モノマー(東亞合成社製「アロニックスM309」:トリメチロールプロハントリアクリレート) 6.0部
シクロヘキサノン 36.1部
その後、上記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、5μmのフィルターで濾過して青色感光性組成物10を得た。
【0062】
・青色感光性組成物11
青色感光性着色組成物2において用いた光重合性モノマーを東亞合成社性「アロニックスM111」(ノニルフェノールEO 変性アクリレート)に変更した以外は同様にして青色感光性着色組成物11を得た。
【0063】
・青色感光性組成物12
青色感光性着色組成物2において用いた光重合性モノマーを東亞合成社性「アロニックスM402」(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート)に変更した以外は同様にして青色感光性着色組成物12を得た。
【0064】
カラーフィルタ作製用青色感光性組成物として、青色感光性組成物1〜9を実施例1〜9、青色感光性組成物10〜12を比較例1〜3とした。
【0065】
[評価項目]
(感度評価)
上記各実施例及び比較例で調製した各青色感光性組成物について、その感度を、以下のようにして評価を行った。
【0066】
まず、ガラス基板上に、上記実施例及び比較例で得られた青色感光性組成物(1)〜(12)をC光源におけるCIE色度座標のyの値が0.15になるようにスピンコート法により塗布した後乾燥させ、青色感光層を形成した。次に、70℃で20分間のプリベークを行なった後、プロキシミティーアライナーによる近接露光方式で、50μmの細線パターンを備えたフォトマスクを介して紫外線露光を行なった。露光量は10、20、30、50、80、100、150、200、300、400、500mJ/cmの11水準とした。必要な膜厚(残膜)を確保できる露光量は、少ない方が生産性を高くすることができ、好ましい。
【0067】
次に、1.25質量%の炭酸ナトリウム溶液を用いてシャワー現像した後、水洗して、パターニングを完了した。得られたフィルタセグメントの膜厚を未露光・未現像部分の膜厚で割ってその残膜率を算出した。そして、横軸を露光量の常用対数、縦軸を現像後残膜率として露光感度曲線をプロットした。得られた露光感度曲線から、現像後残膜率が85%以上に達する最小露光量を飽和露光量、すなわち青色感光性組成物の感度とし、300mJ/cm未満のものを〇とし、300mJ/cm以上のものを×判定とした。
【0068】
(膜厚)
ガラス基板上に、上記実施例及び比較例で得られた青色感光性組成物(1)〜(12)をC光源におけるCIE色度座標のyの値が0.15になるようにスピンコート法により塗布した後乾燥させ、青色感光層を形成した。その後、70℃で20分間のプリベークを行なった後、プロキシミティーアライナーによる近接露光方式により、各青色感光性組成物の飽和露光量で露光した。次に、1.25質量%の炭酸ナトリウム溶液を用いてシャワー現像した後、水洗して、パターニングを完了した後、クリーンオーブン中で180℃20分間焼成を行ない、放熱後、青色パターンの膜厚を測定した。
【0069】
このとき、膜厚が4.0μm以下であれば〇とし、4.0μm以上となるものを×判定とした。薄い膜厚で形成できることは、使用材料を減らすため好ましい。
【0070】
(パターン形状)
ガラス基板上に、上記実施例及び比較例で得られた青色感光性組成物(1)〜(12)をC光源におけるCIE色度座標のyの値が0.15になるようにスピンコート法により
塗布した後乾燥させ、青色感光層を形成した。その後、70℃で20分間のプリベークを行なった後、プロキシミティーアライナーによる近接露光方式により、各青色感光性組成物の飽和露光量で露光した。次に、1.25質量%の炭酸ナトリウム溶液を用いてシャワー現像した後、水洗して、パターニングを完了した後。クリーンオーブン中で180℃20分間焼成を行ない評価用基板とした。
【0071】
得られた青色パターンの形状をSEM観察し、順テーパー形状のものを○、オーバーハング形状のものを×とした。オーバーハング(カラーフィルタの基板側接触面でのパターン細り)は、カラーフィルタの形状不良やムラにつながり好ましくない。
【0072】
(明度評価)
ガラス基板上に、上記実施例及び比較例で得られた青色感光性組成物(1)〜(12)をC光源におけるCIE色度座標のyの値が0.15になるようにスピンコート法により塗布した後乾燥させ、青色感光層を形成した。その後、70℃で20分間のプリベークを行なった後、プロキシミティーアライナーによる近接露光方式により、各青色感光性組成物の飽和露光量で露光した。
【0073】
次に、1.25質量%の炭酸ナトリウム溶液を用いてシャワー現像した後、水洗して、パターニングを完了した後。クリーンオーブン中で180℃で20分間焼成を行ない評価用基板とした。
【0074】
得られた青色パターンの色度をオリンパス社製「OSP−2000」にて測定し、Y値を比較した。このとき、Y値が23.0以上を〇とし、23.0未満のものを×とした。Y値は高い方が明るい表示を得ることができる。
【0075】
[評価結果]
実施例1〜9、比較例1〜3の結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

表1の結果から、以下のことが明らかである。
【0077】
(a)実施例1〜9及び比較例2の結果から、着色剤として染料を使用した青色感光性組成物において、官能基数が1〜4の光重合性モノマーを用いることで明度(Y値)が高いものが得られることが分かる。他方、官能基数がこれを越える比較例3ではその明度(Y値)が劣っている。また、着色剤として顔料を使用した比較例1では、官能基数が1〜4の光重合性モノマーを用いてもその明度(Y値)が劣っていることから、この結果が染料を使用した場合に特有であることが分かる。なお、次に述べるように、組成物の感度の点から官能基数は2以上であることが望ましい。
【0078】
(b)比較例2の結果から、単官能の光重合性モノマーを用いた場合にも、明度(Y値)が高いものが得られることが分かる。しかしながら、この場合には、その感度が低く、400mJ/cmの露光量を必要とする。この結果から、官能基数が2以上の光重合性モノマーが望ましいことが分かる。
【0079】
(c)実施例6の結果から、光重合性モノマーの官能基数が2〜4であっても、その含有率が低い場合(5.0%)には、その感度が低く、500mJ/cmの露光量を必要とする。他方、光重合性モノマーの含有率が10.0%以上の実施例1〜5では、いずれも、100〜150mJ/cmの露光量で十分であった。この結果から、光重合性モノマーの含有率が10.0%以上であることが望ましいことが分かる。なお、次に述べるように、得られる画素パターンの形状から、光重合性モノマーの含有率は40.0%以下で
あることが望ましい
(d)実施例7の結果から、光重合性モノマーの官能基数が2〜4であっても、その含有率が高い場合(45.0%)には、得られた画素パターンが逆テーパー状となり、いわゆるオーバーハンギングが生じることが分かる。これに対し、その含有率が40.0%以下の実施例1〜6及び実施例8〜9では、いずれも、順テーパーである。この結果から、光重合性モノマーの含有量が40.0%以下であることが望ましいことが分かる。
【0080】
(e)実施例8の結果から、染料の含有率が低い場合(1.7%)には、色濃度が不足し、カラーフィルタとして必要な色濃度を確保するために膜厚を厚くする必要がある(4.47μm)。これに対し、染料の含有率を2.0%とした実施例1においては、その膜厚が3.80μmであり、この結果から、染料の含有率は2.0%以上が望ましいことが分かる。なお、染料の含有率を5.0%とした実施例2,実施例4及び実施例5では、その膜厚が1.65〜1.85μmでよいことから、より望ましくは5.0%以上である。また、次に述べるように、染料の含有率は10.0%以下であることが望ましい。
【0081】
(f)実施例9の結果から、光重合性モノマーの官能基数が2〜4であり、かつ、その含有率が高くても(30.0%)、染料の含有率が高い場合(12.0%)には、組成物の感度が低く、300mJ/cmの露光量を必要とする。染料の含有率が10.0%である実施例3では150mJ/cmの露光量で十分であることから、染料の含有率を10.0%以下とすることが望ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0082】
1 カラーフィルタ
2 液晶
3 TFTアレイ
4 バックライト
5 透明基板
6a 赤色着色層
6b 緑色着色層
6c 青色着色層
7 ブラックマトリクス
8 オーバーコート層
9 TFT
10 透明電極
11 偏向板
12 有機EL層
13 バリア層
14a 赤色発光層
14b 緑色発光層
14c 青色発光層
15 反射陰極
16 封止剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)バインダー樹脂、(B)光重合性モノマー(C)青色染料、(D)光開始剤、(E)溶剤を含有する青色感光性組成物において、前記前記(B)光重合性モノマーの官能基数が2〜4であることを特徴とする青色感光性組成物。
【請求項2】
前記(B)光重合性モノマーが青色感光性組成物の固形分中に10%〜40%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の青色感光性組成物。
【請求項3】
前記(C)青色染料がトリアリールメタン染料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の青色感光性組成物。
【請求項4】
前記(C)青色染料が青色感光性組成物の固形分中に2%〜10%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の青色感光性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の青色感光性組成物を用いて製造したカラーフィルタ。
【請求項6】
請求項5に記載のカラーフィルタを用いたディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−282050(P2010−282050A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135939(P2009−135939)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】