説明

青色発光化合物およびこれを利用した有機電界発光素子

【課題】青色発光の色純度の高い青色発光化合物、これを用いた寿命特性に優れた有機電界発光素子の提供。
【解決手段】青色発光化合物は、式1で表されるアミノピレン化合物である。


(式中、A〜Aは、C〜C10のアルキル基、C〜C10のアリール基等であり、これらは置換基として少なくともひとつのシアノ基及びアルキルシリル基又はアリールシリル基を含む。nは0又は1である。)該アミノピレン化合物を発光層のゲスト材料とし、アントラセン誘導体等をホスト材料とすることにより寿命特性に優れた青色発光有機電界発光素子が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子に係り、更に詳細には、青色発光の色純度および寿命特性に優れた有機電界発光素子を製造するために用いることができる青色発光化合物および青色発光化合物を用いて製造された有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの大型化につれて、できる限り省スペースな平面表示装置の要求が増大している。代表的な平面表示装置である液晶ディスプレイは、既存の陰極線管(CRT)に比べて軽量化できるという長所はあるが、視野角(viewing angle)が制限され、背面光(back light)が必然的に必要であるなどの短所を有している。新たな型の平面表示装置である有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)は、自己発光表示素子である。有機発光ダイオードは、広視野角を有し、液晶ディスプレイに比べて、軽量、薄厚、小型、速い応答速度などの長所を有している。
【0003】
代表的有機発光ダイオードは、1969年グル二ー(Gurnee)によって報告された(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、この有機発光ダイオードは、その性能上の限界によってその使用が制限されてきた。1987年にイーストマンコダック社が多層有機発光ダイオードを発表(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)して以来、既存素子の問題点を克服することのできる有機発光ダイオードの発展がなされてきた。有機電界発光素子は、プラズマディスプレイパネル(PDP)や無機電界発光素子ディスプレイ以上に、低い駆動電圧(例えば、10V以下)、広い視野角、高速応答性、高コントラストなどの優れた特徴を有している。これらの利点を基に、有機電界発光素子は、グラフィックディスプレイ、テレビ映像ディスプレイおよび表面光源の画素として使うことができる。また、有機電界発光素子は、可撓性透明基板の上にも形成することができ、厚さ、重さを減らすことができ、良い色彩表現を有している。そのために次世代平面ディスプレイ(FPD)を約束された素子として認識されている。
【0004】
このような有機電界発光素子は、正孔注入電極(アノード)である第1電極と電子注入電極(カソード)である第2電極と前記アノードと前記カソードの間に形成された有機発光層とを含み、カソードから注入された電子とアノードから注入された正孔は、前記有機発光層で互いに結合し電子正孔対(励起子)を形成する。それから、前記励起子は励起状態から基底状態に遷移しながら崩壊して発光する。有機電界発光素子のフルカラーディスプレイへの適用性が期待されている。フルカラーを具現するためには、三原色、例えば、緑色、赤色、青色それぞれに発光する画素をパネルの上に配列する必要がある。パネル上に画素を配列するための様々な方法が提案されている。そのような方法の例として、i)青色、緑色、赤色を発光する3種類の有機電界発光素子をそれぞれ配列する方法、ii)白色(赤色、緑色、青色(RGB)の混合色)発光素子からカラーフィルターを介して3原色に分離する方法、および、iii)蛍光発光源としての青色発光有機発光素子からの発光を用いて緑色および赤色の光に変換させる方法などを含む。どんな場合でも青色発光は基本的に必須である。従って、高輝度、高効率および高色純度の青色を発光できる物質に対する必要性が切実になっている。
【0005】
特許文献3には、青色発光物質として、2,2−(ジアリル)ビニルホスフィン(2,2−(Diaryl)vinylphosphine)が開示されている。更に、特許文献4には、中心部にジフェニルアントラセン(diphenylanthracene)構造を有し、その末端にアリル基に置き換えされた特定構造を有する青色発光化合物および前記青色発光化合物を利用した有機電界発光素子が開示されている。しかしながら、この有機電界発光素子は発光効率および輝度が十分ではないという問題点があった。
【0006】
更に、特許文献5には、ジフェニルアミン誘導体に置換されたピレン化合物を利用した有機電界発光素子が開示されている。この有機電界発光素子は、x=0.146、y=0.205の色度座標を有している。これは、前記素子は、青色の色純度が低く、濃い(deep)青色発光を達成することが難しいということである。従って、前記素子は天然色素を作り出すフルカラーディスプレイの製造に問題を有する。
【0007】
特許文献6もまた、ジフェニルアミン誘導体に置換されたピレン化合物を利用した有機電界発光素子が開示されている。しかしながら、この素子は青色発光の色純度が劣るため実質的に青緑色の光を発し、一部分は低輝度の青味がかった光を発する。
【0008】
更に、特許文献7には、ジフェニルアミン誘導体に置換されたピレン化合物を利用した有機電界発光素子が開示されている。しかしながら、この素子は青色発光の色純度が低く、濃い青色(deep blue)発光の達成が難しい。そのため前記素子は天然色素を作り出すフルカラーディスプレイの製造に問題を有する。
【0009】
また、特許文献8には、置換または非置換のジフェニルアミン基がピレン化合物に直接置換された芳香族アミン誘導体が開示されている。しかしながら、前記芳香族アミン誘導体はピレン環に直接アリールまたはアルキル基が存在しているために青緑色の光を発する。
【特許文献1】米国特許第3,172,862号明細書
【特許文献2】米国特許第3,173,050号明細書
【特許文献3】米国特許第6,455,720号明細書
【特許文献4】韓国特許第2002−0070333号明細書
【特許文献5】韓国特許第525408号明細書
【特許文献6】米国特許第5,153,073号明細書
【特許文献7】国際公開第04/083162A1号パンフレット
【特許文献8】国際公開第05/108348A1号パンフレット
【非特許文献1】C.W.Tang et al.、Appl.Phys.Lett .、51,913(1987)
【非特許文献2】J.Applied Phys.、65,3610(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の第一の課題は、青色の色純度に優れて寿命が長い有機電界発光素子を製造することができる青色発光化合物を提供することである。
【0011】
本発明の第二の課題は、前記青色発光化合物を利用した有機電界発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の目的を達成するための本発明の態様によれば、式1の青色発光化合物を提供する。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、A〜Aは、それぞれ独立して、C〜C10のアルキル基、C〜C10のアルコキシ基、シアノ基、C〜C10のアルキルアミノ基、C〜C10のアルキルシリル基、ハロゲン基、C〜C10のアリール基、C〜C10のアリールオキシ基、C〜C10のアリールアミノ基、C〜C10のアリールシリル基および水素原子からなる群から選ばれた基で置換または非置換されたC〜C20のアリール基、または、N、SおよびO原子から選ばれた少なくとも一つのヘテロ原子を含むC〜C19のヘテロアリール基である。ただし、A〜Aの置換基は少なくとも一つのシアノ基および少なくとも一つのアルキルシリル基またはアリールシリル基を含み、nは0または1である。)
本発明の一実施形態によれば、前記青色発光化合物は、下記化合物(2)からなる群から選ばれてもよい。
【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
前記化合物(2)中、TMSはトリメチルシリル基を意味する。
【0026】
本発明の望ましい実施形態によれば、前記青色発光化合物は、下記化合物(3)からなる群から選ばれてもよい。
【0027】
【化12】

【0028】
前記第二の課題を達成するための本発明の態様により、アノード、有機発光層およびカソードを含む有機電界発光素子において、前記有機発光層は、式1で示される前記青色発光化合物を含む有機電界発光素子を提供する。
【0029】
一実施形態では、前記有機発光層は下記化合物(4)から選ばれたアントラセンホスト化合物を更に含んでもよい。
【0030】
【化13】

【0031】
本発明による有機電界発光素子は、前記アノードと前記有機発光層との間に正孔輸送層が更に配置され、前記カソードと前記有機発光層との間に電子輸送層が更に配置されてもよい。
【0032】
本発明の有機電界発光素子は、前記正孔輸送層の下層に正孔注入層が更に配置されてもよい。
【0033】
本発明の有機電界発光素子は、前記電子輸送層の上層に電子注入層が更に配置されてもよい。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、前記正孔輸送層は、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)またはN,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)で形成されてよい。
【0035】
本発明の望ましい実施形態によれば、前記正孔注入層は、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4,4−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)またはDAPEBで形成されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明による有機電界発光素子は、輝度の減少なしに青色の色純度および寿命特性に優れているためにフルカラーディスプレイに有用に使われうる。
【0037】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0038】
本発明による青色発光化合物(例えば、ピレン誘導体)中に、対応するフェニル基に結合した少なくとも一つのシアノ基の存在は、色純度を向上させた有機電界発光素子の製造に前記青色発光化合物の使用を可能にする。また、本発明による青色発光化合物中に、少なくとも一つのアルキルシリル基またはアリールシリル基の存在は、寿命特性を向上させた有機電界発光素子の製造に前記青色発光化合物の使用を可能にする。一般的に、様々な高い電気陰性度の電子吸引基(electron−withdrawing group)の化合物への導入は、色純度を向上させるが、効率が大幅に減少するために青色発光化合物として使用することを不可能とする。一方、本発明によれば前記青色発光化合物の使用は、前記有機電界発光素子の効率を維持しつつ有機電界発光素子の色純度向上を導くことができる。また、本発明の青色発光化合物のアルキルシリル基またはアリールシリル基の機能は、有機電界発光素子の寿命特性を向上させるという長所がある。
【0039】
本発明の有機電界発光素子は、有機発光層とアノードおよびカソードとを含み、前記有機発光層は前記化学式1で示される青色発光化合物を含む。本発明の有機電界発光素子は優れた色純度を有しているので、フルカラーディスプレイの製造に用いることが可能である。本発明による有機電界発光素子のもう一つの利点は、寿命が長いことである。
【0040】
前記有機発光層は以下の化合物(4)から選択されるアントラセンホスト化合物を更に含んでよい。この場合、本発明のピレン誘導体はゲスト材料として機能し、前記アントラセン化合物はホスト材料として機能する。すなわち、前記アントラセン化合物の光吸収は前記ピレン誘導体より短波長帯で起こり、そして、前記アントラセン化合物のピーク吸収波長は前記ピレン誘導体の吸収波長でほぼ構成される。従って、前記アントラセン化合物とピレン誘導体との両方が有機発光層内に存在するとき、前記ゲスト材料に励起エネルギーが移動する間、前記ホスト材料は自発光することなしに基底状態に遷移する。また、前記ゲスト材料だけが励起状態で青色光として励起エネルギーを放出するので、青色発光の発光効率は向上する。一般的に、発光分子が薄膜の形成に単独で用いられ、または薄膜中に高濃度で存在する場合、発光分子が互いに近接近しており、それ故、発光分子間で相互作用が生じ、濃度消光により発光効率が低下する。一方、本発明による有機電界発光素子の前記有機発光層を形成するために、ゲスト化合物とホスト化合物の併用は、ゲスト分子が比較的低濃度で分散している状態で可能となる。それ故前記ゲスト分子効率的に濃度消光現象を抑制できる。
【0041】
本発明による有機電界発光素子は、前記アノードと前記有機発光層との間に配置された正孔輸送層(HTL)および前記カソードと前記有機発光層との間に配置された電子輸送層(ETL)を更に含む。前記正孔輸送層はアノードからの正孔の注入を容易にするために形成された。前記正孔輸送層の典型的な材料として、イオン化ポテンシャルが小さな電子供与化合物が使われる。広く用いられている電子供与化合物の例として、基本骨格がトリフェニルアミンをであるジアミン誘導体、トリアミン誘導体またはテトラアミン誘導体が含まれる。通常、当業界で使われる材料であれば、本発明の正孔輸送層を形成するために用いてもよく、例えば、その例として、以下で表わされるN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)またはN,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)などを使うことができるが、これに制限されない。
【0042】
【化14】

【0043】
本発明の有機電解発光素子は、前記正孔輸送層の下層に配置される正孔注入層(HIL)を更に含んでもよい。通常、当業界で使われる材料であれば、本発明の正孔注入層を形成するために特別な制限をせず用いてもよい。前記正孔注入層に適した材料として、下記で表わされるCuPcおよび星型(Starburst−type)アミン、例えばTCTA、m−MTDATA、DAPEBが含まれる。
【0044】
【化15】

【0045】
本発明による有機電界発光素子の電子輸送層は、前記カソードから前記有機発光層に十分な電子の輸送を供給し、前記有機発光層で結合していない正孔の移動を抑制することによって、結合していない正孔が発光層内で再結合する機会を増加させる。通常、当業界で使われるものであればどんな材料でも特別な制限することなしに前記電子輸送層の形成に使うことができると理解される。前記電子輸送層の適した材料の例として、以下で列挙されているいくつか、PBD、BMD、BNDまたはAlqのようなアントラセン誘導体、ピレン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が含まれる。
【0046】
【化16】

【0047】
本発明の有機電界発光素子は、前記カソードからの電子の注入を促進する電子輸送層上に配置された電子注入層(EIL)を更に含んでもよい。前記電子注入層の形成は、前記素子の出力効率を向上させることに寄与する。通常、当業界で使われる材料であれば、本発明の電子注入層を形成するために用いてもよく、その例として、LiF、NaCl、CsF、LiOおよびBaOなどを含むが、これに特別制限されない。
【0048】
図1は、本発明の一実施形態による有機電界発光素子の構造を表わす断面図である。本発明による有機電界発光素子は、アノード20、正孔輸送層40、有機発光層50、電子輸送層60およびカソード80を含む。必要であれば、前記有機電界発光素子は正孔注入層30と電子注入層70とを更に含んでもよい。前記正孔注入層および電子注入層に加えて、前記有機電界発光素子は正孔阻止層または電子阻止層を更に含んでもよい。
【0049】
図1を参照して、本発明の有機電界発光素子およびその製造方法について説明する。まず、基板10上にアノード材料をコーティングしてアノード20を形成する。基板10は通常の有機電界発光(EL)素子で使われる基板を使用してよい。透明性、表面平滑性、取り扱い容易性および防水性の点から有機基板または透明プラスチック基板であることが望ましい。アノード材料として、高い透明性および電導性物質が用いられ、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などである。正孔注入物質は前記アノード20に真空熱蒸着またはスピンコーティングにより付着させ、正孔注入層30を形成し、前記正孔注入層30に正孔輸送物質を真空熱蒸着またはスピンコーティングにより付着させ、正孔輸送層40を形成する。その後、有機発光層50は前記正孔輸送層40上に形成される。所望により、正孔阻止層(図示しない)を前記有機発光層50上に真空蒸着またはスピンコーティングによって形成してもよい。正孔が有機発光層を通過してカソードに流入するときに直面する問題、例えば、素子の短寿命および低効率を解消するために、非常に低いHOMOレベルを有する物質で前記正孔阻止層は形成される。このとき使われる正孔阻止物質は、特別に制限されないが電子輸送能力および前記発光化合物より高いイオン化ポテンシャルを有していなければならない。代表的な正孔阻止物質は、BAlq(Bis−(2−methyl−8−quinolinolate)−4−(phenylphenolate)aluminium)、BCP(Bathocuproine)、TPBI(2−2’−2”−(1,3,5−benzin−etriyl)tris−(1−phenyl−1−H−benzimi−dazole)などである。電子輸送層60は前記正孔輸送層上に真空蒸着またはスピンコーティングによって形成され、電子注入層70はその上に形成される。カソード金属は、前記電子注入層70上に真空熱蒸着によって付着されカソード80を形成し、前記有機EL素子の製造が完成する。前記カソード金属として、例えばリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウムリチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウムインジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを用いてもよい。ITOまたはIZOで作られた光透過型カソードは表面発光素子を製造するために用いてもよい。
【0050】
以下、望ましい実施形態を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0051】
1−(1):N−(4−シアノベンゾ)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミンの合成
3口丸底フラスコ中で、4−トリメチルシリルブロモベンゼン(150g、0.65mol)および4−アミノベンゾニトリル(92.8g、0.79mol)をトルエン2500mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(5.9g、0.03mol)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(16.3g、0.03mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(sodium t−butoxide)(94.4g、0.98mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を85℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、その後、得られた濃縮液をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を完全に除去し、56.9g(0.21mol、32.6%)の表題産物を得た。
【0052】
1−(2):1−[N−(4−シアノベンゾ)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミノ]ピレンの合成(BD01)の合成
3口丸底フラスコ中で、1−ブロモピレン(20g、0.07mol)、N−(4−シアノベンゾ)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミン(22.7g、0.08mol)をトルエン400mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.63g、0.002mol)、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(1.77g、0.002mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(13.6g、0.14mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮して茶色の結晶を得て、その後、得られた茶色の結晶をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を完全に除去し、5.6g(0.012mol、17%)の表題産物を固体として得た。
【0053】
H NMR(300MHz、CDCl):δ8.30−8.33(d、1H)、8.25−8.13(m、4H)、8.10−8.14(d、2H)、8.05−8.08(d、1H)、7.89−7.93(d、1H)、7.48−7.51(d、2H)、7.41−7.45(d、2H)、7.21−7.24(d、2H)、6.92−6.96(d、2H)、0.27(s、9H)
1−(3):有機電界発光素子の製造
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、前記実施例1−(2)で製造されたBD01(5%)+BH−1(200Å)、ETL−1(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【実施例2】
【0054】
2−(1):N−(4−トリフェニルシリルベンゾ)−N’−(4−シアノベンゾ)アミンの合成
3口丸底フラスコ中で、4−トリフェニルシリルブロモベンゼン(30g、0.072mol)および4−アミノベンゾニトリル(10.2g、0.086mol)をトルエン600mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.65g、0.003mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(1.8g、0.003mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(13.88g、0.144mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、その後、得られた濃縮液をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を完全に除去し、19.6g(0.04mol、60%)の表題産物を固体として得た。
【0055】
2−(2):1−[N−(4−トリフェニルシリルベンゾ)−N’−(4−シアノベンゾ)アミノ]ピレンの合成(BD07)
3口丸底フラスコ中で、1−ブロモピレン(10g、0.035mol)、N−(4−トリフェニルシリルベンゾ)−N’−(4−シアノベンゾ)アミン(19g、0.042mol)をトルエン200mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.9g、0.004mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(2.57g、0.004mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(9.84g、0.07mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して72時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮して茶色の結晶を得て、その後、得られた茶色の結晶をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を完全に除去し、4.6g(0.007mol、20%)の表題産物を固体として得た。
【0056】
H NMR(300MHz、CDCl):δ8.25−8.28(d、1H)、8.22−8.10(m、4H)、8.08−8.12(d、2H)、8.03−8.06(d、1H)、7.90−7.93(d、1H)、7.47−7.81(m、17H)、7.41−7.45(d、2H)、7.21−7.24(d、2H)、6.92−6.96(d、2H)
2−(3):有機電界発光素子の製造
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、前記実施例2−(2)で製造されたBD07(5%)+BH−2(200Å)、ETL−2(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【実施例3】
【0057】
3−(1):N−(3−シアノベンゾ)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミンの合成
3口丸底フラスコ中で、4−トリメチルシリルブロモベンゼン(40g、0.17mol)および3−アミノベンゾニトリル(24.7g、0.21mol)をトルエン800mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.8g、0.003mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(2.2g、0.003mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(33.5g、0.35mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して80時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、その後、得られた濃縮液をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を完全に除去し、15.4g(0.06mol、33.1%)の表題産物を液体として得た。
【0058】
3−(2):1,6−ジ[N−(3−シアノベンゾ)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミノ]ピレンの合成(BD27)
3口丸底フラスコ中で、1,6−ジブロモピレン(8.5g,0.024mol)、N−(3−シアノベンゼン)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミン(15.4g、0.057mol)をトルエン300mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.2g、0.001mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(0.6g、0.001mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(9.1g、0.09mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、その後、得られた濃縮液をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を除去し、2.7g(0.005mol、19.5%)の表題産物を黄色結晶として得た。
【0059】
H NMR(300MHz、CDCl):δ8.18−8.21(d、2H)、8.08−8.12(d、2H)、7.98−8.02(d、2H)、7.83−7.87(d、2H)、7.41−7.45(d、4H)、7.12−7.24(m、12H)、0.27(s、18H)
3−(3):有機電界発光素子の製造
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、前記実施例3−(2)で製造されたBD27(5%)+BH−3(200Å)、ETL−3(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【実施例4】
【0060】
4−(1):N,N’−ジ(2−トリメチルシリルベンゾ)アミンの合成
3口丸底フラスコ中で、2−トリメチルシリルブロモベンゼン(50g、0.218mol)および2−アミノベンゾニトリル(43.2g、0.262mol)をトルエン500mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.98g、0.004mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(2.7g、0.004mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(42g、0.43mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して24時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。そのろ液を50℃減圧下で濃縮し、結晶を得た。前記結晶はジクロロメタン2Lに溶かし、その後、該ジクロロメタン溶液は水で層分離された。その有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で濃縮し結晶を得た。前記結晶をジクロロメタンを溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。ジクロロメタン抽出物を濃縮し、前記溶離液を取り除き、少量のメタノールと混合して、該濃縮液を洗浄し、ろ過することで表題産物を結晶として30.5g(0.098mol、45%)得た。
【0061】
4−(2):N−(2−トリメチルシリルベンゾ)−N’−(2−シアノベンゾ)アミンの合成
3口丸底フラスコ中で、2−トリメチルシリルブロモベンゼン(40g、0.17mol)、2−シアノベンゾアミン(24.7g、0.21mol)をトルエン500mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.8g、0.003mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(2.2g、0.003mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(33.5g,0.35mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して80時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、その後、得られた濃縮液をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を完全に除去し、22.3g(0.083mol、48%)の表題産物を得た。
【0062】
4−(3):1−[N,N’−ジ(2−トリメチルシリルベンゾ)アミノ]−6−ブロモピレンの合成
3口丸底フラスコ中で、1,6−ジブロモピレン(30g、0.083mol)、N,N’−ジ(2−トリメチルシリルベンゾ)アミン(31.3g、0.1mol)をトルエン600mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.74g、0.004mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(2.07g、0.004mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(16g、0.16mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、その後、該濃縮液をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を除去し、黄色結晶を得た。前記結晶をジクロロメタンに溶解し、前記結晶の過飽和溶液を生成した。少量の石油エーテルを前記過飽和溶液に加え、17.2g(0.029、mol,35%)の表題産物を結晶として得た。
【0063】
4−(4):1−[N,N’−ジ(2−トリメチルシリルベンゾ)アミノ]−6−[N−(2−トリメチルシリルベンゾ)−N’−(2−シアノベンゾ)アミノ]ピレンの合成(BD41)
3口丸底フラスコ中で、1−(N,N’−ジ(2−トリメチルシリルベンゾ)アミノ)−6−ブロモピレン(15g、0.025mol)、N−(2−トリメチルシリルベンゾ)−N’−(2−シアノベンゾ)アミン(8.9g、0.03mol)をトルエン300mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.22g、0.001mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル((0.63g、0.001mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(4.8g、0.05mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して72時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、茶色結晶を得た。前記茶色結晶をアセトンで洗浄し、テトラヒドロフランで溶解し、活性炭で処理し、そして減圧下で濃縮して過飽和溶液を生成した。過量のアセトンを前記過飽和溶液に加え、結晶を得た。前記結晶をろ過し、2.9g(0.004mol、15%)の表題産物を固体として得た。
【0064】
H NMR(300MHz、CDCl):δ8.15−8.18(d、2H)、8.05−8.07(d、2H)、8.01−8.04(d、2H)、7.76−7.80(d、2H)、7.40−7.48(m、4H)、7.31−7.37(m、4H)、7.21−7.28(m、4H)、6.90−6.98(m、4H)、0.27(s、27H)
4−(5):有機電界発光素子の製造
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、前記実施例4−(4)で製造されたBD41(5%)+BH−1(200Å)、ETL−1(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【実施例5】
【0065】
5−(1):4−トリメチルシリル−1−ブロモベンゼンの合成
4口丸底フラスコ中で、1,4−ジブロモベンゼン(500g、2.12mol)をTHF(3.5L)に溶解させた。前記フラスコを−78℃に冷却し、その後1.6M n−BuLi(1600ml、2.56mol)をそこへ急速に滴加した。同様の温度で、該混合物を2時間反応させた。それから、クロロトリメチルシラン(362ml、2.86mol)を該反応混合物へゆっくり滴加した。得られた混合物は、室温まで暖めながら5時間反応させた。前記反応の終了後、トリエチルアミン(100ml)、メタノール(200ml)混合物を前記反応混合物に添加した。得られた混合物は1時間撹拌し結晶を得た。前記結晶を濾過した後、濾液を60℃減圧下で濃縮し、結晶を得た。前記結晶を濾過除去し、該ろ液をジクロロメタンで希釈した。該ジクロロエタン溶液を水で層分離した。有機層は無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、60℃減圧下で濃縮した。液状有機物質の形態である該濃縮物は蒸溜され、純表題産物として230g(1mol、47%)を得た。
【0066】
5−(2):N−(4−シアノベンゾ)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミンの合成
3口丸底フラスコ中で、4−トリメチルシリル−1−ブロモベンゼン(150g、0.65mol)、4−アミノベンゾニトリル(92.8g、0.79mol)をトルエン2,500mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(5.9g、0.03mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(16.3g、0.03mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(94.4g、0.98mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を85℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、その後、得られた濃縮液をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を除去し、56.9g(0.21mol、32.6%)の表題産物を得た。
【0067】
5−(3):1,6−ジ[N−(4−シアノベンゾ)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミン]ピレンの合成
3口丸底フラスコ中で、1,6−ジブロモピレン(45g、0.125mol)、N−(4−シアノベンゾ)−N’−(4−トリメチルシリルベンゾ)アミン(80g、0.3mol)をトルエン1,000mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(1.1g、0.005mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(3.1g、0.005mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(48g、0.5mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、茶色結晶を得た。前記茶色結晶をアセトンで洗浄し、テトラヒドロフランで溶解し、活性炭で処理し、そして減圧下で濃縮し、過飽和溶液を生成した。過量のアセトンを前記過飽和溶液に加え、結晶を得た。前記結晶はろ過され、43g(0.06mol、47.1%)の表題産物を固体として得た。
【0068】
H NMR(300MHz、CDCl):δ8.20−8.23(d、2H)、8.08−8.12(d、2H)、8.01−8.04(d、2H)、7.86−7.90(d、2H)、7.45−7.48(d、4H)、7.41−7.45(d、4H)、7.21−7.24(d、4H)、6.92−6.96(d、4H)、0.27(s、18H)
5−(4):有機電界発光素子の製造
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、前記実施例5−(3)で製造されたBD68(5%)+BH−2(200Å)、ETL−2(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【実施例6】
【0069】
6−(1):N−[3,5−ジ(トリメチルシリル)]−N’−(4−シアノベンゾ)アミンの合成
3口丸底フラスコ中で、3,5−ジ(トリメチルシリル)ブロモベンゼン(50g、0.166 mol)、4−アミノベンゾニトリル(23.5g、0.2mol)をトルエン1,000mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(1.78g、0.008mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(4.95g、0.008mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(38.3g、0.4mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、その後、得られた濃縮液をヘキサンとエチルアセテート(4/1)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィによって精製した。展開溶媒を完全に除去し、30.8g(0.091、55%)の表題産物を固体として得た。
【0070】
6−(2):1,6−ジ[N−(3,5−ジ(トリメチルシリル))−N’−(4−シアノベンゾ)アミノ]ピレンの合成(BD71)
3口丸底フラスコ中で、1,6−ジブロモピレン(5g、0.0138mol)、N−(3,5−ジ(トリメチルシリル))−N’−(4−シアノベンゾ)アミン(11.2g、0.033mol)をトルエン200mlに溶解させた。該溶液にパラジウム(II)アセテート(0.12g、0.001mol)、2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(0.35g、0.001mol)およびTert-ブトキシドナトリウム(2.7g、0.028mol)を加えた。該混合物をフラスコの温度を90℃まで昇温して48時間反応させた。反応終了後、熱い反応液を、セリットを敷いたビューナーファンネルで濾過した。その濾液を50℃減圧下で濃縮し、茶色結晶を得た。前記茶色結晶をアセトンで洗浄し、テトラヒドロフランで溶解し、活性炭で処理し、そして減圧下で濃縮し、過飽和溶液を生成した。過量のアセトンを前記過飽和溶液に加え、結晶を得た。前記結晶はろ過され、2.6g(0.003mol、22%)の表題産物を固体として得た。
【0071】
H NMR(300MHz、CDCl):δ8.22−8.25(d、2H)、8.10−8.14(d、2H)、8.04−8.07(d、2H)、7.88−7.91(d、2H)、7.21−7.30(m、6H)、6.91−7.10(m、8H)、0.27(s、36H)
6−(3):有機電界発光素子の製造
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、前記実施例5−(3)で製造されたBD68(5%)+BH−2(200Å)、ETL−2(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
[比較例1]
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、式8の化合物(5%)+BH−1(200Å)、Alq3(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【0072】
【化17】

【0073】
[比較例2]
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、式9の化合物(5%)+BH−2(200Å)、Alq3(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【0074】
【化18】

【0075】
[比較例3]
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、式9の化合物(5%)+BH−3(200Å)、Alq3(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【0076】
【化19】

【0077】
[比較例4]
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、式10の化合物(5%)+BH−1(200Å)、Alq3(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【0078】
【化20】

【0079】
[比較例5]
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、式11の化合物(5%)+BH−2(200Å)、Alq3(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【0080】
【化21】

【0081】
[比較例6]
ITO蒸着ガラス基板は3mmx3mmの発光領域になるようにパターン化され、続いて洗浄された。基板を真空チャンバに装着した後、チャンバの圧力を1x10−6torr(1.33x10−4Pa)に調節した。前記ITO上に、HIL−4(DAPEB、650Å)、HTL−2(α−NPD、400Å)、式12の化合物(5%)+BH−3(200Å)、Alq3(350Å)、LiF(5Å)およびAl(1000Å)を、この順序で各被膜を形成し、有機電界発光素子の製造を完成させた。
【0082】
【化22】

【0083】
[試験例1]
実施例1〜6と比較例1〜6とによって製造された有機電界発光素子は、電圧、電流、輝度、色度座標および寿命を測定された。その結果を下記表1に示す。T80は、各素子の輝度が初期輝度の80%に減少するのにかかる時間を意味する。
【0084】
【表1】

【0085】
前記試験例の結果から分かるように、本発明による有機電界発光素子は、従来の青色発光化合物を使った場合より優れた色純度を示した。また、本発明による素子の輝度は従来の青色発光化合物の輝度と比べて同等であるか、または優れていた。更に、本発明による素子の寿命特性は、従来の青色発光化合物各々を用いた素子の寿命特性より優れていた。これらの利点を基にすると、本発明の有機電界発光素子はフルカラーディスプレイの製造に用いることに適していた。一方、比較例1〜3で製造された素子は高輝度および優れた寿命特性示したが、低色純度という不利点を有した。比較例4で製造された素子は非常に低い輝度と低寿命特性を示した。比較例5または6で製造された素子は高輝度と優れた寿命特性を示したが、低色純度という不利点を有した。
【0086】
上記記述から明らかなように、本発明の有機電界発光素子は優れた青色発光の色純度、および輝度の低下なしで優れた寿命特性を示す。そのため、本発明の有機電界発光素子はフルカラーディスプレイの製造に適切に用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で表されることを特徴とする青色発光化合物:
【化1】


(式中、A〜Aは、それぞれ独立して、C〜C10のアルキル基、C〜C10のアルコキシ基、シアノ基、C〜C10のアルキルアミノ基、C〜C10のアルキルシリル基、ハロゲン基、C〜C10のアリール基、C〜C10のアリールオキシ基、C〜C10のアリールアミノ基、C〜C10のアリールシリル基および水素原子からなる群から選ばれた基で置換または非置換されたC〜C20のアリール基、または、N、SおよびO原子から選ばれた少なくとも一つのヘテロ原子を含むC〜C19のヘテロアリール基である。ただし、A〜Aの置換基は少なくとも一つのシアノ基および少なくとも一つのアルキルシリル基またはアリールシリル基を含み、nは0または1である。)
【請求項2】
前記青色発光化合物は、下記化学式(2)からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の青色発光化合物。
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】

【請求項3】
アノード、有機発光層およびカソードを含む有機電界発光素子において、前記有機発光層は、請求項1による青色発光化合物を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項4】
前記有機発光層は、ホスト化合物として下記化合物(3)から選択された化合物を更に含むことを特徴とする請求項3記載の有機電界発光素子。
【化12】

【請求項5】
前記アノードと前記有機発光層との間に配置された正孔輸送層、および前記カソードと前記有機発光層との間に配置された電子輸送層を更に含み、前記電子輸送層は下記化合物(4)から選択された化合物で形成されていることを特徴とする請求項3記載の有機電界発光素子。
【化13】

【請求項6】
前記正孔輸送層の下層に配置された正孔注入層を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記電子輸送層の上層に配置された電子注入層を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記正孔輸送層は、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)またはN,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)で形成されていることを特徴とする請求項5記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記正孔注入層は、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4,4‐トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)またはDAPEBで形成されていることを特徴とする請求項6記載の有機電界発光素子。

【図1】
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【公開番号】特開2008−214332(P2008−214332A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133381(P2007−133381)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(507074834)エスエフシー カンパニー リミテッド (3)
【Fターム(参考)】