説明

青色発光蛍光体

【課題】放電ガスに水銀ガスを用いた冷陰極蛍光ランプに使用した場合に、水銀などの付着による発光輝度の低下が起こりにくいCMS:Eu2+青色発光蛍光体を提供する。
【解決手段】基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表される青色発光蛍光体粒子を、青色発光蛍光体粒子100質量部に対して4〜18質量部の範囲となる量のアルミニウム含有酸化物からなる被膜にて被覆してなる青色発光蛍光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷陰極蛍光ランプ、特に放電ガスに水銀ガスを用いた冷陰極蛍光ランプ用の青色発光材料として有用な青色発光蛍光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷陰極蛍光ランプは、液晶表示装置のバックライト光源として広く利用されている。このような目的に使用される冷陰極蛍光ランプは、一般に、紫外線又は真空紫外線により励起されて可視光を発光する蛍光体からなる蛍光体層を内壁に備えたガラス管、ガラス管の両端に備えられた電極、そしてガラス管内に封入された放電ガスから構成されている。放電ガスとしては、水銀ガスが広く利用されている。
【0003】
冷陰極蛍光ランプ用の青色発光材料としては、BaMgAl1017:Eu2+やBaMg2Al1627:Eu2+などのEu付活バリウム・マグネシウム・アルミニウム酸化物蛍光体が知られている。Eu付活バリウム・マグネシウム・アルミニウム酸化物蛍光体は、結晶の構造が不安定であるため、発光輝度の経時的な低下が起こり易いという問題がある。このため、結晶の構造が比較的安定なディオプサイド(CaMgSi26)のカルシウムの一部をユウロピウムで置換したCaMgSi26:Eu2+(以下、CMS:Eu2+ともいう)で表される青色発光蛍光体を青色発光材料として利用することが検討されている。
【0004】
特許文献1には、CMS:Eu2+青色発光蛍光体を青色発光材料として用いた冷陰極蛍光ランプが開示されている。この特許文献には、CMS:Eu2+青色発光蛍光体を用いた冷陰極蛍光ランプは、BaMg2Al1627:Eu2+青色発光蛍光体を用いた冷陰極蛍光ランプと比較して、発光輝度が高く、発光輝度の維持率も高いと記載されている。
【0005】
冷陰極蛍光ランプは、小型化や高輝度化に伴って、蛍光体層の単位面積当たりに掛かる負荷が高くなる傾向にある。放電ガスに水銀ガスを用いた冷陰極蛍光ランプにおいては、蛍光体層の単位面積当たりの負荷が高くなると、放電ガス中の水銀もしくはその化合物が蛍光体の表面に付着して、蛍光体の発光輝度が経時的に低下することがあることが知られている。
【0006】
特許文献2には、水銀などの付着による蛍光体の発光輝度の低下を防止するために、蛍光体表面を、Al23粒子、MgO粒子、BaO粒子、CaO粒子及びSrO粒子から選ばれた少なくとも一種の第一酸化物粒子とSiO2粒子からなる第二酸化物粒子とからなる酸化物粒子混合物で被覆することが開示されている。この特許文献2には、蛍光体の具体例として、二価のEu付活アルミン酸塩蛍光体、二価のEu及びMn付活アルミン酸塩蛍光体及び二価のEu付活ハロ燐酸塩蛍光体などの青色乃至青緑色発光蛍光体、三価のTb付活アルミン酸・珪酸・燐酸塩蛍光体、三価のTb付活硼酸・珪酸・燐酸塩蛍光体及び三価のTb付活アルミン酸(硼酸)塩蛍光体などの緑色発光蛍光体、三価のEu付活酸化イットリウム蛍光体及び三価のEu付活酸硫化イットリウム蛍光体などの赤色発光蛍光体が記載されているが、CMS:Eu2+青色発光蛍光体に関する記載はない。
【特許文献1】特開2002−285147号公報
【特許文献2】特開平5−70774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が、CMS:Eu2+青色発光蛍光体からなる蛍光体層を備えた冷陰極蛍光ランプ(放電ガスは水銀ガス)について、発光輝度の経時的な変化を評価したところ、蛍光体層の単位面積当たりの負荷が比較的高い条件で冷陰極蛍光ランプを点灯させると、水銀などの付着による経時的な発光輝度の低下が起こり易くなることが観察された。
従って、本発明の目的は、放電ガスに水銀ガスを用いた冷陰極蛍光ランプに使用した場合において、水銀などの付着による発光輝度の低下が起こりにくいCMS:Eu2+青色発光蛍光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、加熱によりアルミニウム含有酸化物を生成するアルミニウム含有化合物が極性溶媒中に溶解している溶液にCMS:Eu2+青色発光蛍光体粒子が分散されている青色発光蛍光体粒子スラリーを調製し、該スラリーの極性溶媒を蒸発除去して表面がアルミニウム含有化合物により被覆された青色発光蛍光体粒子を得て、次いでその被覆青色発光蛍光体粒子を加熱すると、表面が連続的なアルミニウム含有酸化物被膜で被覆された青色発光蛍光体が得られることを見出した。
さらに、本発明者は、表面が特定量のアルミニウム含有酸化物被膜で被覆されたCMS:Eu2+青色発光蛍光体は、被膜で被覆されていないCMS:Eu2+青色発光蛍光体と比較して、波長254nmの紫外線(水銀の励起線)での励起による発光強度が向上し、かつ放電ガスに水銀ガスを用いた冷陰極蛍光ランプに使用した場合には、発光輝度の経時的な低下が抑えられることを確認して、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表される青色発光蛍光体粒子を、青色発光蛍光体粒子100質量部に対して4〜18質量部の範囲となる量のアルミニウム含有酸化物からなる被膜にて被覆してなる青色発光蛍光体にある。
【0010】
本発明の青色発光蛍光体の好ましい態様は、次の通りである。
(1)アルミニウム含有酸化物からなる被膜が、アルミニウム含有酸化物を、青色発光蛍光体粒子100質量部に対して6〜16質量部の範囲の量にて含む。
(2)アルミニウム含有酸化物が酸化アルミニウムである。
【0011】
本発明はまた、加熱によりアルミニウム含有酸化物を生成するアルミニウム含有化合物が極性溶媒中に溶解している溶液に、基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表される青色発光蛍光体粒子が、青色発光蛍光体粒子100質量部に対してアルミニウム含有化合物の量が生成するアルミニウム含有酸化物の量として4〜18質量部の範囲となる割合にて分散されている青色発光蛍光体粒子スラリーを調製する工程、該スラリーから極性溶媒を蒸発除去することにより、表面がアルミニウム含有化合物により被覆された青色発光蛍光体粒子を得る工程、そして該被覆青色発光蛍光体粒子を加熱する工程からなる本発明の青色発光蛍光体の製造方法にもある。
【0012】
本発明はさらに、本発明の青色発光蛍光体を含む蛍光体層を備える冷陰極蛍光ランプにもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の青色発光蛍光体は、後記の実施例に示すデータから明らかなようにアルミニウム含有酸化物を含む被膜で被覆されていない従来のCMS:Eu2+青色発光蛍光体と比べて初期の発光輝度が高い。本発明の青色発光蛍光体を冷陰極蛍光ランプの青色蛍光材料として使用した場合、蛍光体内部のCMS:Eu2+青色発光蛍光粒子にはランプ内部に封入された放電ガスに直接接触せず、水銀やその化合物が付着しにくいので、付着物による青色発光蛍光体の発光輝度の低下が起こりにくい。従って、本発明の青色発光蛍光体を含む蛍光体層を備えた冷陰極蛍光ランプの発光は、輝度が高いレベルで長期間にわたって安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明に従う青色発光蛍光体の一例の断面図である。
図1において、本発明の青色発光蛍光体は、核となる青色発光蛍光体粒子1と、その青色発光蛍光体粒子1を被覆するアルミニウム含有酸化物からなる被膜2とから構成されている。アルミニウム含有酸化物被膜2の主成分となるアルミニウム含有酸化物の量は、青色発光蛍光体粒子100質量部に対して、4〜18質量部の範囲、好ましくは6〜16質量部の範囲にある。
【0015】
アルミニウム含有酸化物被膜2の主成分であるアルミニウム含有酸化物は、酸化アルミニウム、もしくはアルミニウムと他の金属との複合酸化物である。アルミニウムと他の金属との複合酸化物の例としては、アルミン酸マグネシウム(MgAl24)を挙げることができる。アルミニウム含有酸化物は、酸化アルミニウム(Al23)であることが好ましい。被覆層には、アルミニウム含有酸化物以外に、青色発光蛍光体粒子1を構成するカルシウム、ユウロピウム、マグネシウム及び珪素の各元素が少量混在することがある。
【0016】
アルミニウム含有酸化物被膜2は、青色発光蛍光体粒子の表面全体に均一に形成されていることが好ましい。表面を被覆した青色発光蛍光体のFE−SEM観察により測定される平均粒子径は、発光輝度や冷陰極蛍光ランプのガラス管に蛍光体層を塗布により形成する際の塗布性の面から0.1〜50.0μmの範囲にあることが好ましく、0.5〜10.0μmの範囲にあることがより好ましく、1.0〜5.0μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0017】
本発明の青色発光蛍光体において核となる青色発光蛍光体粒子1は、基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表されるCMS:Eu2+青色発光蛍光体粒子である。青色発光蛍光体粒子に含まれるカルシウム(Ca)、ユウロピウム(Eu)、マグネシウム(Mg)及び珪素(Si)の比率は、モル比で0.90〜0.985:0.10〜0.015:1:1.90〜2.10(Ca:Eu:Mg:Si)の範囲にあることが好ましく、カルシウムとユウロピウムとの総モル数に対するユウロピウムのモル比[Eu/(Ca+Eu)]が0.015〜0.10の範囲にあることが好ましい。
【0018】
CMS:Eu2+青色発光蛍光体粒子は、カルシウム源粉末、ユウロピウム源粉末、マグネシウム源粉末及び珪素源粉末を、CMS:Eu2+青色発光蛍光体を形成する割合で混合し、得られた粉末混合物を還元性雰囲気中にて焼成することによって製造することができる。
【0019】
カルシウム源粉末の例としては、酸化カルシウム粉末、炭酸カルシウム粉末、水酸化カルシウム粉末、硝酸カルシウム粉末を挙げることができる。ユウロピウム源粉末の例としては、フッ化ユウロピウム粉末、酸化ユウロピウム粉末を挙げることができる。マグネシウム源粉末の例としては、酸化マグネシウム粉末、炭酸マグネシウム粉末、水酸化マグネシウム粉末、硝酸マグネシウム粉末を挙げることができる。珪素源粉末の例としては二酸化珪素粉末を挙げることができる。
【0020】
粉末混合物の焼成温度は、1000〜1500℃の範囲にあることが好ましい。粉末混合物の焼成を行なう際の還元性雰囲気は、水素ガスを1〜10体積%の範囲にて含むアルゴンガスあるいは窒素ガス雰囲気であることが好ましい。焼成時間は、一般に1〜100時間の範囲である。
【0021】
本発明の青色発光蛍光体は、加熱によりアルミニウム含有酸化物を生成するアルミニウム含有化合物が極性溶媒中に溶解している溶液に、CMS:Eu2+青色発光蛍光体粒子が、青色発光蛍光体粒子100質量部に対してアルミニウム含有化合物の量が生成するアルミニウム含有酸化物の量として4〜18質量部の範囲となる割合にて分散されている青色発光蛍光体粒子スラリーを調製する工程、該スラリーから極性溶媒を蒸発除去することにより、表面がアルミニウム含有化合物により被覆された青色発光蛍光体粒子を得る工程、そして該被覆青色発光蛍光体粒子を加熱する工程からなる方法によって有利に製造することができる。
【0022】
アルミニウム含有化合物は、大気雰囲気下、200〜600℃の温度にて加熱することによって酸化アルミニウム(Al23)を生成する化合物であることが好ましい。アルミニウム含有化合物はまた、水又はメタノールやエタノールなどの低級アルコールに代表される極性溶媒に溶解するものであることが好ましい。アルミニウム含有化合物の例としては、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、及びアルミニウムアルコキシドを挙げることができる。
【0023】
アルミニウム含有化合物が溶解している青色発光蛍光体粒子スラリーの調製方法としては、アルミニウム含有化合物と青色発光蛍光体粒子とをアルミニウム含有化合物の溶媒中で混合する方法、及びアルミニウム含有化合物の溶液と青色発光蛍光体粒子の分散液とを混合する方法を挙げることができる。青色発光蛍光体粒子分散液の分散媒には、アルミニウム含有化合物の溶媒及び該溶媒と相溶性を有する液体を用いることができる。分散媒は、水、低級アルコール又はこれらの混合液であることが好ましい。
【0024】
青色発光蛍光体粒子スラリーから分散媒を蒸発除去して、表面がアルミニウム含有化合物により被覆された青色発光蛍光体粒子を得る方法としては、加熱乾燥、噴霧乾燥及び減圧乾燥などの通常のスラリーの乾燥に用いられる方法を用いることができる。
【0025】
アルミニウム含有化合物により被覆された青色発光蛍光体粒子の加熱は、大気雰囲気中にて行なうことが好ましい。加熱温度は、アルミニウム含有化合物がアルミニウム含有酸化物となる温度であれば特に制限はないが、一般に300〜800℃の範囲、好ましくは500〜700℃の範囲である。加熱時間は、一般に0.001〜50時間の範囲、好ましくは0.1〜30時間の範囲、さらに好ましくは0.5〜3時間の範囲である。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
炭酸カルシウム粉末(純度:99.99質量%、レーザー回折散乱法により測定された平均粒子径:3.87μm)、酸化ユウロピウム粉末(純度:99.9質量%、レーザー回折散乱法により測定された平均粒子径:2.71μm)、酸化マグネシウム粉末(気相酸化反応法により製造したもの、純度:99.99質量%、BET比表面積から換算された平均粒子径:0.05μm)、そして二酸化珪素(純度99.9質量%、レーザー回折散乱法により測定された平均粒子径:3.87μm)を、Ca:Eu:Mg:Siのモル比が0.98:0.02:1:2.00となるようにそれぞれ秤量し、エタノール溶媒中にてボールミルを用いて24時間湿式混合した。得られた粉末混合物を乾燥して、エタノールを蒸発させた。乾燥後の粉末混合物をアルミナ坩堝に入れ、2体積%水素−98体積%アルゴンの混合ガス雰囲気中にて1050℃の温度で3時間焼成した。
【0027】
得られた粉末焼成物を、0.1モル/Lの塩酸水溶液で洗浄した後、イオン交換水で洗浄した。次いで、洗浄後の粉末焼成物を、アルミナ坩堝に入れ、大気中600℃の温度で1時間加熱した。
【0028】
得られた粉末焼成物のX線回折パターンを測定したところ、ディオプサイド(CaMgSi26:Eu2+)のX線回折パターンが確認された。また、粉末焼成物に波長254nmの紫外線を照射したところ、青色の発光が確認された。これらの結果から、粉末焼成物は、CMS:Eu2+青色発光蛍光体であることが確認された。
【0029】
容量50mLのビーカーに、上記のようにして製造したCMS:Eu2+青色発光蛍光体1g、エタノール20mL及び硝酸アルミニウム9水和物(シグマアルドリッチ(株)製)を酸化アルミニウム(Al23)換算で0.075g(青色発光蛍光体粒子100質量部に対して7.5質量部)となる量にて加えた後、室温にてマグネチックスターラーを用いて1時間撹拌して、青色発光蛍光体粒子スラリーを調製した。このスラリーを1時間静置した後、減圧下、40℃の温度に加熱して、スラリー中のエタノールを蒸発させた。次いで、残部の固形物(硝酸アルミニウム被覆CMS:Eu2+青色発光蛍光体粒子)を、大気雰囲気中にて600℃の温度で1時間加熱して、アルミニウム酸化物被膜を備えたCMS:Eu2+青色発光蛍光体を得た。
【0030】
得られたアルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体について、FE−SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−4800)及びエネルギー分散型蛍光X線分析装置(エダックス・ジャパン(株)製、Genesis)を用いて、アルミニウムの元素分布分析を行なった。その結果、蛍光体粒子表面からアルミニウムが均一に検出され、蛍光体粒子表面が均一なアルミニウム酸化物被膜により被覆されていることが確認された。
【0031】
アルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体の発光スペクトルを、励起波長254nmとした分光蛍光光度計(日本分光(株)製、FP6500)により測定した。得られた発光スペクトルの最大発光強度値を、アルミニウム酸化物被膜形成前の青色発光蛍光体の発光スペクトルの最大発光強度値に対する相対比として、下記の表1に示す。
【0032】
[実施例2]
青色発光蛍光体1gに対する硝酸アルミニウム9水和物の添加量を、酸化アルミニウム換算で0.150g(青色発光蛍光体粒子100質量部に対して15.0質量部)となる量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体を得た。得られたアルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体について、実施例1と同様にアルミニウムの元素分布分析を行なった結果、蛍光体粒子表面からアルミニウムが均一に検出され、蛍光体粒子表面が均一なアルミニウム酸化物被膜により被覆されていることが確認された。このアルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体の発光スペクトル(励起波長:254nm)を、実施例1と同様に測定した。得られた発光スペクトルの最大発光強度値を、アルミニウム酸化物被膜形成前の青色発光蛍光体の発光スペクトルの最大発光強度値に対する相対比として、下記の表1に示す。
【0033】
[比較例1]
青色発光蛍光体1gに対する硝酸アルミニウム9水和物の添加量を、酸化アルミニウム換算で0.020g(青色発光蛍光体粒子100質量部に対して2.0質量部)となる量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体を得た。得られたアルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体について、実施例1と同様にアルミニウムの元素分布分析を行なった結果、蛍光体粒子表面からアルミニウムが均一に検出され、蛍光体粒子表面が均一なアルミニウム酸化物被膜により被覆されていることが確認された。このアルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体の発光スペクトル(励起波長:254nm)を、実施例1と同様に測定した。得られた発光スペクトルの最大発光強度値を、アルミニウム酸化物被膜形成前の青色発光蛍光体の発光スペクトルの最大発光強度値に対する相対比として、下記の表1に示す。
【0034】
[比較例2]
青色発光蛍光体1gに対する硝酸アルミニウム9水和物の添加量を、酸化アルミニウム換算で0.200g(青色発光蛍光体粒子100質量部に対して20.0質量部)となる量に変えたこと以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体を得た。得られたアルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体について、実施例1と同様にアルミニウムの元素分布分析を行なった結果、蛍光体粒子表面からアルミニウムが均一に検出され、蛍光体粒子表面が均一なアルミニウム酸化物被膜により被覆されていることが確認された。このアルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体の発光スペクトル(励起波長:254nm)を、実施例1と同様に測定した。得られた発光スペクトルの最大発光強度値を、アルミニウム酸化物被膜形成前の青色発光蛍光体の発光スペクトルの最大発光強度値に対する相対比として、下記の表1に示す。
【0035】
[発光輝度の維持率の測定]
実施例1〜2及び比較例1〜2にて製造したアルミニウム酸化物被膜を備えた青色発光蛍光体と、アルミニウム酸化物被膜形成前の青色発光蛍光体とを用いて、放電ガスに水銀ガスを用いた冷陰極蛍光ランプを作成し、発光輝度の維持率を測定した。
青色発光蛍光体を濃度が10質量%となるようにエチルセルロース濃度7.5質量%のエタノール溶液に分散させて調製したペーストを、ガラス管(直径2.0mm、長さ300mm)の内壁に塗布し、乾燥した後550℃の温度で30分熱処理して、ガラス管の内壁に厚さ10μmの蛍光体層を形成した。この蛍光体層付きガラス管を用いて、常法に従って、放電ガスとして水銀ガス、アルゴンガス及びネオンガスの混合ガスを封入した冷陰極蛍光ランプを作成した。この冷陰極蛍光ランプを10Wの電力で点灯させ、冷陰極蛍光ランプの発光輝度を放射輝度計を用いて測定した。点灯開始から700時間経過後の発光輝度の維持率を、点灯開始直後の発光輝度を100%とした相対値として算出した。その結果を表1に示す。なお、アルミニウム酸化物被膜形成前の青色発光蛍光体の結果は、参考例1に示した。
【0036】
表1
────────────────────────────────────────
蛍光体粒子100質量部に対する 最大発光強度 輝度維持率
酸化アルミニウムの含有量(質量部)*) (相対比) (%)
────────────────────────────────────────
実施例1 7.5 1.06 93
実施例2 15.0 1.02 94
────────────────────────────────────────
比較例1 2.0 0.98 86
比較例2 20.0 0.93 95
────────────────────────────────────────
参考例1 0 1 73
────────────────────────────────────────
*)硝酸アルミニウム9水和物の添加量からの換算値。
【0037】
表1の結果から明らかなように、アルミニウム酸化物被膜を特定の範囲の量にて備えた本発明のCMS:Eu2+青色発光蛍光体は、被膜で被覆されていない従来のCMS:Eu2+青色発光蛍光体と比べて発光輝度が高い。また、本発明のCMS:Eu2+青色発光蛍光体を用いた冷陰極蛍光ランプは、従来のCMS:Eu2+青色発光蛍光体を用いた冷陰極蛍光ランプと比較して発光輝度の維持率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に従う青色発光蛍光体の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 青色発光蛍光体粒子
2 アルミニウム含有酸化物被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表される青色発光蛍光体粒子を、青色発光蛍光体粒子100質量部に対して4〜18質量部の範囲となる量のアルミニウム含有酸化物からなる被膜にて被覆してなる青色発光蛍光体。
【請求項2】
被膜が、アルミニウム含有酸化物を青色発光蛍光体粒子100質量部に対して6〜16質量部の範囲の量にて含む請求項1に記載の青色発光蛍光体。
【請求項3】
アルミニウム含有酸化物が酸化アルミニウムである請求項1もしくは2に記載の青色発光蛍光体。
【請求項4】
加熱によりアルミニウム含有酸化物を生成するアルミニウム含有化合物が極性溶媒中に溶解している溶液に、基本組成式がCaMgSi26:Eu2+で表される青色発光蛍光体粒子が、青色発光蛍光体粒子100質量部に対してアルミニウム含有化合物の量が生成するアルミニウム含有酸化物の量として4〜18質量部の範囲となる割合にて分散されている青色発光蛍光体粒子スラリーを調製する工程、該スラリーから極性溶媒を蒸発除去することにより、表面がアルミニウム含有化合物により被覆された青色発光蛍光体粒子を得る工程、そして該被覆青色発光蛍光体粒子を加熱する工程からなる請求項1に記載の青色発光蛍光体の製造方法。
【請求項5】
請求項1もしくは2に記載の青色発光蛍光体を含む蛍光体層を備える冷陰極蛍光ランプ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−62527(P2009−62527A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205334(P2008−205334)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】