説明

静圧気体軸受及びその製造方法

【課題】自励振動を起こすことがなく、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受及びその製造方法を提供すること
【解決手段】基部4、該基部4の一方の面5から一体的に突設されている環状突出部6、一端7では該環状突出部6の突出端面8で開口している一方、他端9では基部4の外周面10で開口すると共に環状突出部6及び基部4に設けられた給気通路11を備えた合成樹脂製の軸受基体2と、基部4の一方の面5に対面している一方の面41に形成されていると共に軸受基体2の環状突出部6を受容した環状凹所42、他方の面43で開口した環状凹溝44及び一端45では環状凹溝44に連通していると共に他端46では環状凹所42に開口した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔47を有した合成樹脂製の軸受体3とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静圧気体軸受及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静圧気体軸受は、超低摩擦、超高精度及び超高速運動を実現することのできる軸受として、物品の搬送や、水平移動させて超精密加工や超精密測定を行う等の用途に用いられる。この静圧気体軸受の空気吹出し口の絞りの形式としては、多孔質絞り、表面絞り、オリフィス絞り、自成絞り等があり、それぞれ用途に応じて負荷容量及び軸受剛性等を調節しながら使用している。
【0003】
例えば、特許文献1には、比較的高い剛性を保ちながら、高い減衰性を実現した気体軸受装置として、2つの相対向する実質的に平行な軸受面及び両軸受面間の軸受隙間に、オリフィスを通じて気体を供給する少なくとも1つの気体ダクトを有する気体軸受装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、多孔質体からなる母材と、この母材上に接合され、予め所望の空気透過量になるように、貫通孔の径及び分布を調整して作製された多孔板からなる表面絞り層とを備え、表面絞り層を介して気体を噴出させ、その静圧によって被支持部材を支持する静圧気体軸受が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2006−510856号公報
【特許文献2】特開2001−56027号公報
【特許文献3】特開2008−82449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の静圧気体軸受は、超低摩擦、超高精度及び超高速運動を実現することができるものの、軸受材料として、主に、高強度の金属やセラミックが用いられるとともに、高精度の研削仕上げ等を行う必要があるため、必然的に高価となるという問題がある。
【0007】
しかしながら、超低摩擦、超高精度及び超高速運動までは要求されないが、例えば、液晶スクリーン等の物品を非接触で搬送したり、温度変化を生じさせることなく物品を水平移動させたりする場合には、静圧気体軸受を用いると装置の構成が簡単になる等の利点を有する反面、静圧気体軸受自体が高価なため、当該用途には広く活用されていないのが実情である。
【0008】
上記実情に鑑み、種々の分野で活用可能な安価な静圧気体軸受を提供するべく本出願人は先に、上面に自成絞り形状又はオリフィス形状の複数の空気吹出口を、下面に該複数の空気吹出口と連通する給気溝を有する樹脂製軸受部材と、該樹脂製軸受部材の下面に前記給気溝を覆うように接合され、該給気溝と連通する給気口を有する基体とを備える静圧気体軸受を提案した(特許文献3)。
【0009】
この特許文献3に記載された静圧気体軸受によれば、静圧気体軸受を構成する樹脂製軸受部材を、金型を用いて射出成形によって形成することができ、機械的な加工を不要とすることができるとともに、基体の構造も樹脂製軸受部材と連通する給気口を形成するのみで、樹脂製軸受部材と基体とを接合するだけで静圧気体軸受を組み立てることができ、静圧気体軸受の大量生産が可能になり、安価な静圧気体軸受を提供することができるというものである。
【0010】
しかしながら、特許文献3に記載された静圧気体軸受における空気吹出口は、直径が0.2〜0.4mm程度の自成絞り形状あるいはオリフィス形状であるため、当該空気吹出口からの空気吹出量が多すぎて自励振動を起こす虞があり、やはり実用化するには改良が必要である。
【0011】
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自励振動を起こすことがなく、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の静圧気体軸受は、基部、該基部の一方の面から一体的に突設されている環状突出部、一端では該環状突出部の突出端面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口すると共に環状突出部及び基部に設けられた給気通路を備えた合成樹脂製の軸受基体と、基部の一方の面に対面している一方の面に形成されていると共に軸受基体の環状突出部を受容した環状凹所、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔を有した合成樹脂製の軸受体とを具備しており、該軸受体は、該環状凹所を規定する軸受体の外側内周面及び内側内周面で環状突出部の外周面及び内周面に溶着接合されて、軸受基体に一体化されており、環状凹溝は、少なくとも0.3mmの幅と、少なくとも0.01mmの深さとを有しており、空気吹出孔は、その一端で少なくとも30μmの直径を有して、環状凹所と環状凹溝との間で自成絞りを形成していることを特徴とする。
【0013】
本発明の静圧気体軸受によれば、合成樹脂製の軸受体の環状突出部が合成樹脂製の軸受体の環状凹所に受容されていると共に該環状突出部の外周面及び内周面が該環状凹所を規定する軸受体の外側内周面及び内側内周面に溶着接合されているために、合成樹脂製の軸受体と軸受基体とが強固に一体化されており、また、合成樹脂製の軸受体が他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口した複数個の空気吹出孔を有しており、環状凹溝が少なくとも0.3mmの幅と少なくとも0.01mmの深さとを有しており、空気吹出孔がその一端で少なくとも30μmの直径を有して、環状凹所と環状凹溝との間で自成絞りを形成しているために、空気吹出孔からの多量の空気の吹き出しが抑制され、当該空気吹出口からの多量の空気吹出し量に起因する自励振動の発生を抑制することができる。
【0014】
好ましい例では、環状凹溝は、0.3〜1.0mm又は0.3〜0.7mmの幅と、0.01〜0.05mm又は0.01〜0.03mmの深さとを有しており、該空気吹出孔は、その一端で30〜120μmの直径を有している。
【0015】
環状凹溝及び複数の空気吹出孔の夫々は、好ましくは、レーザー加工により形成されている。加工用レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等から選択される。
【0016】
環状凹溝及び複数の空気吹出孔の夫々をレーザー加工により形成すると、切削等の機械加工等と比較して、瞬時にこれらを形成でき、大量生産が可能となるばかりでなく、安価に製作することができる。
【0017】
本発明の静圧気体軸受において、好ましい例では、軸受基体の環状突出部の外周面は、円筒外壁面と、該円筒外壁面に連続して該円筒外壁面から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面と、該截頭円錐外壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒外壁面よりも大径の円筒外壁面とを有しており、軸受基体の環状突出部の内周面は、円筒内壁面と、該円筒内壁面に連続して該円筒内壁面から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面と、該截頭円錐内壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒内壁面よりも小径の円筒内壁面とを有しており、該軸受体の該環状凹所を規定する外側内周面は、当該環状凹所の開口端の外縁を規定する環状の周縁を有した外側円筒内壁面を具備しており、該軸受体の該環状凹所を規定する内側内周面は、当該環状凹所の開口端の内縁を規定する環状の周縁を有した内側円筒内壁面を有しており、該軸受体は、外側円筒内壁面を環状突出部の外周面の円筒外壁面に、内側円筒内壁面を環状突出部の内周面の円筒内壁面に夫々嵌合せしめると共に該環状凹所の開口端の外縁を規定する外側円筒内壁面の環状の周縁を環状突出部の外周面の截頭円錐外壁面に、該環状凹所の開口端の内縁を規定する内側円筒内壁面の環状の周縁を環状突出部の内周面の截頭円錐内壁面に夫々接触させており、該軸受体は、当該互いに接触する部位で超音波溶着により溶着接合されて、軸受基体に一体化されている。
【0018】
斯かる例では、該軸受基体と軸受体との互いに接触する部位が所謂シェア・ジョイントであるので、シェア・ジョイントでの超音波による溶着接合となり、気密性がよく、非常に強い溶着強度が得られて、軸受体と軸受基体とが強固に一体化された静圧気体軸受を提供できる。
【0019】
また、本発明の静圧気体軸受において、好ましい例では、軸受基体の環状突出部の外周面は、円筒外壁面と、該円筒外壁面に連続して該円筒外壁面から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面と、該截頭円錐外壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒外壁面よりも大径の円筒外壁面とを有しており、軸受基体の環状突出部の内周面は、円筒内壁面と、該円筒内壁面に連続して該円筒内壁面から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面と、該截頭円錐内壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒内壁面よりも小径の円筒内壁面とを有しており、該軸受体の該環状凹所を規定する外側内周面は、外側円筒内壁面と、該外側円筒内壁面から徐々に拡径していると共に該環状凹所の開口端の外縁を規定する環状の周縁を有した外側截頭円錐内壁面とを具備しており、該軸受体の該環状凹所を規定する内側内周面は、内側円筒内壁面と、該内側円筒内壁面から徐々に縮径していると共に該環状凹所の開口端の内縁を規定する環状の周縁を有した内側截頭円錐内壁面とを具備しており、該軸受体は、外側円筒内壁面を環状突出部の外周面の円筒外壁面に、内側円筒内壁面を環状突出部の内周面の円筒内壁面に夫々嵌合せしめると共に外側截頭円錐内壁面を截頭円錐外壁面に、内側截頭円錐内壁面を截頭円錐内壁面に夫々接触させており、該軸受体は、当該互いに接触する部位で超音波溶着により溶着接合されて、軸受基体に一体化されている。
【0020】
斯かる他の例では、軸受基体と軸受体との当該互いに接触する部位が所謂スカーフ・ジョイントであるので、当該スカーフ・ジョイントで超音波により一様な発熱が得られ、大きな溶着面積が得られるので、気密性がよく、非常に強い溶着強度が得られ、軸受体と軸受基体とがより強固に一体化された静圧気体軸受を提供できる。
【0021】
本発明の静圧気体軸受において、軸受体は、環状凹溝に加えて、該環状凹溝の外側に該環状凹溝を囲む大径環状凹溝と、一方の端部が該環状凹溝に開口すると共に他方の端部が大径環状凹溝に開口する複数個の第一の放射状凹溝と、該環状凹溝の内側に形成された小径環状凹溝と、一方の端部が環状凹溝に開口すると共に他方の端部が小径環状凹溝に開口する複数個の第二の放射状凹溝とを具備していてもよく、これら大径環状凹溝、小径環状凹溝並びに第一及び第二の放射状凹溝は、軸受体の一方の面に形成されているとよい。
【0022】
本発明の静圧気体軸受において、軸受体は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性合成樹脂から形成されているのが好ましく、また軸受基体は、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性合成樹脂又はこれらの熱可塑性合成樹脂にガラス繊維、ガラス粉末、炭素繊維もしくは無機充填材を30〜50質量%含有した補強充填材含有熱可塑性合成樹脂から形成されているのが好ましい。これら軸受体及び軸受基体は、合成樹脂素材を機械加工して形成しても、金型を用いて射出成形により形成してもよい。
【0023】
本発明の合成樹脂製の軸受基体と該軸受基体に溶着接合された合成樹脂製の軸受体とからなる静圧気体軸受の製造方法は、(a)基部、該基部の一方の面から一体的に突設されている環状突出部、一端では該環状突出部の突出端面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口すると共に環状突出部及び基部に設けられた給気通路を備えており、環状突出部の外周面が、円筒外壁面と、該円筒外壁面に連続して該円筒外壁面から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面と、該截頭円錐外壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒外壁面よりも大径の円筒外壁面とを有しており、環状突出部の内周面が、円筒内壁面と、該円筒内壁面に連続して該円筒内壁面から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面と、該截頭円錐内壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒内壁面よりも小径の円筒内壁面とを有している合成樹脂製の軸受基体を準備する工程と、(b)一方の面に形成されている環状凹所、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口した複数個の空気吹出孔を備えており、該環状凹所を規定する外側内周面が、当該環状凹所の開口端の外縁を規定する環状の周縁を有した外側円筒内壁面を具備しており、該環状凹所を規定する内側内周面が、当該環状凹所の開口端の内縁を規定する環状の周縁を有した内側円筒内壁面を有している合成樹脂製の軸受体を準備する工程と、(c)基部の一方の面に軸受体の一方の面を対面させると共に軸受基体の環状突出部を軸受体の環状凹所に受容させ、該環状凹所の開口端の外縁を規定する外側円筒内壁面の環状の周縁を環状突出部の外周面の截頭円錐外壁面に、該環状凹所の開口端の内縁を規定する内側円筒内壁面の環状の周縁を環状突出部の内周面の截頭円錐内壁面に夫々接触させて該軸受体と軸受基体との組立体を形成する工程と、(d)該組立体における軸受体に工具ホーンを押し当て、加圧力0.098〜0.60MPa、振動振幅20〜80μm、発信時間0.1〜1.5秒、ホールド時間0.5〜1.0秒の溶着条件で超音波振動を与え、該接触部位において該軸受基体に軸受体を溶着接合する工程と、(e)少なくとも0.3mmの幅と少なくとも0.01mmの深さとを有した環状凹溝と、一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口しており、一端で少なくとも30μmの直径を有した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔とを形成するように、軸受基体に溶着接合した軸受体の他方の面へレーザーを照射する工程とからなる。
【0024】
本製造方法によれば、組立体の該軸受体と軸受基体との互いの接触部位にシェア・ジョイントが形成されているので、超音波溶着により当該シェア・ジョイントにおいて機密性がよく、非常に強い溶着強度が得られ、軸受体と軸受基体とは強固な接合一体化が行われる。
【0025】
本発明の合成樹脂製の軸受基体と該軸受基体に溶着接合された合成樹脂製の軸受体とからなる静圧気体軸受の他の製造方法は、(a)基部、該基部の一方の面から一体的に突設されている環状突出部、一端では該環状突出部の突出端面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口すると共に環状突出部及び基部に設けられた給気通路を備えており、環状突出部の外周面が、円筒外壁面と、該円筒外壁面に連続して該円筒外壁面から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面と、該截頭円錐外壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒外壁面よりも大径の円筒外壁面とを有しており、環状突出部の内周面が、円筒内壁面と、該円筒内壁面に連続して該円筒内壁面から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面と、該截頭円錐内壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒内壁面よりも小径の円筒内壁面とを有している合成樹脂製の軸受基体を準備する工程と、(b)一方の面に形成されている環状凹所、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口した複数個の空気吹出孔を備えており、該環状凹所を規定する外側内周面が、外側円筒内壁面と、該外側円筒内壁面から徐々に拡径していると共に該環状凹所の開口端の外縁を規定する環状の周縁を有した外側截頭円錐内壁面とを具備しており、該環状凹所を規定する内側内周面が、内側円筒内壁面と、該内側円筒内壁面から徐々に縮径していると共に該環状凹所の開口端の内縁を規定する環状の周縁を有した内側截頭円錐内壁面とを具備している合成樹脂製の軸受体を準備する工程と、(c)基部の一方の面に軸受体の一方の面を対面させると共に軸受基体の環状突出部を軸受体の環状凹所に受容させ、外側截頭円錐内壁面を截頭円錐外壁面に、内側截頭円錐内壁面を截頭円錐内壁面に夫々接触させて該軸受体と軸受基体との組立体を形成する工程と、(d)該組立体における軸受体に工具ホーンを押し当て、加圧力0.098〜0.60MPa、振動振幅20〜80μm、発信時間0.1〜1.5秒、ホールド時間0.5〜1.0秒の溶着条件で超音波振動を与え、該接触部位において該軸受基体に軸受体を溶着接合する工程と、(e)少なくとも0.3mmの幅と少なくとも0.01mmの深さとを有した環状凹溝と、一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口しており、一端で少なくとも30μmの直径を有した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔とを形成するべく、軸受基体に溶着接合した軸受体の他方の面にレーザーを照射する工程とからなる。
【0026】
斯かる他の製造方法によれば、組立体の該軸受体と軸受基体との互いの接合部に截頭円錐面(斜面)での面接触である所謂スカーフ・ジョイントが形成されているので、超音波により一様な発熱が得られ、大きな溶着面積が得られて、当該スカーフ・ジョイントにおいて気密性がよく、非常に強い溶着強度が得られ、軸受体と軸受基体とは強固な接合一体化が行われる。
【0027】
また、いずれの製造方法でも、環状凹溝と複数個の空気吹出孔とをレーザーにより形成しているので、機械加工等を不要とでき、大量生産が可能となるばかりでなく、安価な静圧気体軸受を得ることができる。
【0028】
上記したいずれの製造方法においても、軸受基体に溶着接合した軸受体の他方の面にレーザーを照射する工程は、0.3〜1.0mm又は0.3〜0.7mmの幅と0.01〜0.05mm又は0.01〜0.03mmの深さとを有した環状凹溝と、一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口しており、その一端で30〜120μmの直径を有している複数個の空気吹出孔とを形成するようになっていてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、自励振動を起こすことがなく、大量生産が可能で安価な静圧気体軸受及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の好ましい例の平面説明図である。
【図2】図2は、図1のII−II線矢視断面説明図である。
【図3】図3は、図2の一部拡大断面説明図である。
【図4】図4は、図2の断面斜視説明図である。
【図5】図5は、軸受基体の平面説明図である。
【図6】図6は、図5のVI−VI線矢視断面説明図である。
【図7】図7は、図6の一部拡大断面説明図である。
【図8】図8は、図6の一部拡大断面説明図である。
【図9】図9は、軸受体の底面説明図である。
【図10】図10は、図9のX−X線矢視断面説明図である。
【図11】図11は、軸受体と軸受基体との組立体の平面説明図である。
【図12】図12は、図11のXII−XII線矢視断面説明図である。
【図13】図13は、図12の一部拡大断面説明図である。
【図14】図14は、軸受体の他の実施の形態の断面説明図である。
【図15】図15は、本発明の実施の形態の好ましい他の例の断面説明図である。
【図16】図16は、図15の一部拡大断面説明図である。
【図17】図17は、軸受体の他の実施の形態の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に何等限定されないのである。
【0032】
図1から4において、静圧気体軸受1は、好ましくは、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性合成樹脂又はこれらの熱可塑性合成樹脂にガラス繊維、ガラス粉末、炭素繊維もしくは無機充填材を30〜50質量%含有した補強充填材含有熱可塑性合成樹脂から形成されている合成樹脂製の軸受基体2と、軸受基体2に一体的に溶着接合されていると共に好ましくはポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等の熱可塑性合成樹脂から形成されている合成樹脂製の軸受体3とを具備している。
【0033】
軸受基体2は、特に、図5から図8に示すように、基部4と、基部4の一方の円形の面5から一体的に突設されている環状突出部6と、一端7では環状突出部6の円形の突出端面8で開口している一方、他端9では基部4の円筒状の外周面10で開口すると共に環状突出部6及び基部4に設けられた給気通路11と、基部4の他方の円形の面12に形成されている有底の円柱状の穴13とを備えている。
【0034】
環状突出部6は、外周面14を有した外側環状突出部15と、内周面16を有した内側環状突出部17を具備している。
【0035】
外側環状突出部15の外周面14は、特に図7に示すように、円筒外壁面18と、円筒外壁面18に連続して円筒外壁面18から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面19と、截頭円錐外壁面19と連続して基部4の一方の面5に連なると共に円筒外壁面18よりも大径の円筒外壁面20とを有している。
【0036】
内側環状突出部17の内周面16は、特に図8に示すように、円筒内壁面22と、円筒内壁面22に連続して円筒内壁面22から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面23と、截頭円錐内壁面23と連続して基部4の一方の面5に連なると共に円筒内壁面22よりも小径の円筒内壁面24とを有している。
【0037】
軸受基体2に設けられた給気通路11は、一端7において突出端面8で開口している円環状の開口31を有すると共に環状突出部6及び基部4に設けられた有底の円環状凹部32と、基部4に設けられていると共に一端では円環状凹部32に連通する一方、給気通路11の他端9でもある他端では基部4の円筒状の外周面10で開口する一対の給気口33とを有している。
【0038】
円環状凹部32は、基部4の外側円筒内壁面35と、外側円筒内壁面35に対面した基部4の内側円筒内壁面36と、基部4の円環状の底壁面37とによって規定されており、各給気口33は、一端が外側円筒内壁面35で開口して円環状凹部32に連通している。
【0039】
軸受体3は、特に図9及び図10に示すように、基部4の一方の面5に対面している一方の円形の面41に形成されていると共に軸受基体2の環状突出部6を受容した環状凹所42と、他方の円形の面43で開口した環状凹溝44と、一端45では環状凹溝44に連通していると共に他端46では環状凹所42に開口した複数個の空気吹出孔47と、円筒状の外周面48とを有している。
【0040】
軸受体3の環状面49と互いに対面する円筒面50とによって規定された環状凹溝44は、少なくとも0.3mmの幅Wと、少なくとも0.01mmの深さdとを有しており、空気吹出孔47は、その一端45で、本例では一端45から他端46に亘って少なくとも30μmの直径Dを有して、環状凹所42と環状凹溝44との間で自成絞りを形成している。
【0041】
環状凹所42は、空気吹出孔47の他端46が開口する円環状の天井面51と、天井面51の外縁に連接されている外側内周面52と、天井面51の内縁に連接されている内側内周面53とにより規定されている。
【0042】
環状凹所42を規定する外側内周面52は、天井面51の外縁に連接されている小径縁を有した環状の截頭円錐外壁面61と、截頭円錐外壁面61の大径縁に連接されている小径縁を有していると共に外側環状突出部15の突出端面8に対して隙間62をもって対面した円環状の段部壁面63と、段部壁面63の大径縁に連接されている周縁を有すると共に環状凹所42の円形の開口端64の外縁を規定する円環状の周縁65を有した外側円筒内壁面66とを具備している。
【0043】
環状凹所42を規定する内側内周面53は、天井面51の内縁に連接されている大径縁を有した環状の截頭円錐内壁面71と、截頭円錐内壁面71の小径縁に連接されている大径縁を有していると共に内側環状突出部17の突出端面8に対して隙間72をもって対面した円環状の段部壁面73と、段部壁面73の小径縁に連接されている周縁を有すると共に環状凹所42の円形の開口端64の内縁を規定する円環状の周縁75を有した内側円筒内壁面76とを有している。
【0044】
軸受体3は、外側円筒内壁面66を外側環状突出部15の外周面14の円筒外壁面18に、内側円筒内壁面76を内側環状突出部17の内周面16の円筒内壁面22に夫々接触嵌合せしめると共に環状凹所42の開口端64の外縁を規定する外側円筒内壁面66の環状の周縁65を外側環状突出部15の外周面14の截頭円錐外壁面19に、環状凹所42の開口端64の内縁を規定する内側円筒内壁面76の環状の周縁75を内側環状突出部17の内周面16の截頭円錐内壁面23に夫々接触させており、軸受体3は、互いに接触する部位、即ち、周縁65と截頭円錐外壁面19との接触する部及び周縁75と截頭円錐内壁面23との接触する部での超音波溶着、所謂シェア・ジョイントにより、周縁65と截頭円錐外壁面19との接触する部及び周縁75と截頭円錐内壁面23との接触する部に加えて、外側円筒内壁面66と円筒外壁面18との接触する部及び内側円筒内壁面76と円筒内壁面22との接触する部で溶着接合されて、軸受基体2に一体化されている。
【0045】
静圧気体軸受1においては、軸受体3の面43での幅Wが少なくとも0.3mmで、深さdが少なくとも0.01mmの環状凹溝44と、一端45では環状凹溝44に開口して他端46では環状凹所42に開口する直径が少なくとも30μmの複数個の自成絞り形状の複数個の空気吹出孔47とを例えばレーザー加工により瞬時に形成してもよい。
【0046】
以上の静圧気体軸受1では、軸受体3は、周縁65と截頭円錐外壁面19との接触する部、周縁75と截頭円錐内壁面23との接触する部、外側円筒内壁面66と円筒外壁面18との接触する部及び内側円筒内壁面76と円筒内壁面22との接触する部で超音波溶着により瞬時に気密性をもって軸受基体2に溶着接合されているので、大量生産が可能となるばかりでなく、安価とすることができる。
【0047】
次に図1から4に示す静圧気体軸受1の製造方法の例を説明すると、まず、図5から図8に示すような合成樹脂製の軸受基体2と、環状凹溝44及び複数個の空気吹出孔47が未形成の図9及び図10に示すような合成樹脂製の軸受体3を準備し、図11から図13に示すように、基部4の一方の面5に軸受体3の一方の面41を対面させると共に軸受基体2の環状突出部6を軸受体3の環状凹所42に受容させ、環状凹所42の開口端64の外縁を規定する外側円筒内壁面66の環状の周縁65を外側環状突出部15の外周面14の截頭円錐外壁面19に、環状凹所42の開口端64の内縁を規定する内側円筒内壁面76の環状の周縁75を内側環状突出部17の内周面16の截頭円錐内壁面23に夫々接触させて軸受体3と軸受基体2との組立体81を形成する。
【0048】
組立体81における軸受体3の面43に工具ホーン(図示せず)を押し当て、加圧力0.098〜0.60MPa、振動振幅20〜80μm、発信時間0.1〜1.5秒、ホールド時間0.5〜1.0秒の溶着条件で超音波振動を与え、周縁65と截頭円錐外壁面19との接触部及び周縁75と截頭円錐内壁面23との接触部とのシェア・ジョイントにおいて径方向の溶着代X及び入り込み方向の溶着代Yをもって溶着接合させ、軸受基体2と軸受体3とを接合一体化させる。
【0049】
ここで、30質量%のガラス繊維を含有したポリフェニレンサルファイド樹脂から形成された軸受基体2の外側環状突出部15の円筒外壁面20の直径をD1、円筒外壁面18の直径をD2、内側環状突出部17の円筒内壁面22の直径をD3、円筒内壁面24の直径をD4とし、ポリフェニレンサルファイド樹脂から形成された軸受体3の環状凹所42の外側円筒内壁面66の直径をd1、環状凹所42の内側円筒内壁面76の直径をd2として、次の寸法諸元の軸受基体2と軸受体3の組立体81を、次の溶着条件で超音波溶着した例について説明する。
【0050】
<寸法諸元>
D1(円筒外壁面20の直径) φ41mm(公差+0.1、0)

D2(円筒外壁面18の直径) φ40mm(公差0、−0.05)

D3(円筒内壁面22の直径) φ20mm(公差0.05、0)

D4(円筒内壁面23の直径) φ19mm(公差0、−0.1)

d1(外側円筒内壁面66の直径) φ40mm(公差+0.10、+0.05)

d2(内側円筒内壁面76の直径) φ20mm(公差−0.05、−0.10)

<溶着条件>
加圧力:0.1MPa 振動振幅:40μm 発振時間:0.5秒 ホールド時間:0.5秒
【0051】
上記寸法諸元及び溶着条件にて超音波溶着した軸受基体2と軸受体3との組立体81は、周縁65と截頭円錐外壁面19との接合部及び周縁75と截頭円錐内壁面23との接合部において、気密性よく溶着接合されており、強固な溶着強度をもって接合一体化されているのを確認した。
【0052】
このように接合一体化された組立体81における軸受体3の面43に、レーザー加工機によりレーザーを照射し、幅W0.3〜1.0mm、深さd0.01〜0.05mmの環状凹溝44と、環状凹溝44を規定する環状面49に環状面49から軸受体3を貫通して天井面51で環状凹所42に開口する直径が少なくとも30μm、好ましくは30〜120μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔47を形成する。
【0053】
用いる加工用レーザーとしては、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー、UVレーザー又はエキシマレーザー等から選択されるが、好ましくは、炭酸ガスレーザーを用いる。
【0054】
直径30mmの円弧を中心として幅0.5mm、深さ0.05mmの環状凹溝44は、レーザー出力9.5Wの炭酸ガスレーザーを使用して、スキャンスピード1000mm/s、重ね印字回数1回、加工時間2秒でポリフェニレンサルファイド樹脂から形成された軸受体3の面43に形成、加工することができ、また、環状凹溝44の環状面49に、環状面49から軸受体3を貫通して天井面51で環状凹所42に開口する直径0.065mmの自成絞り形状の空気吹出孔47は、レーザー出力14W、加工時間15秒で円周方向に10等配の位置に10個加工することができた。
【0055】
上記の例では、軸受体3の外側内周面52は、截頭円錐外壁面61、段部壁面63及び外側円筒内壁面66を具備しており、軸受体3の内側内周面53は、截頭円錐内壁面71、段部壁面73及び内側円筒内壁面76を具備しているが、これ代えて、図14から図16に示すように、外側内周面52は、截頭円錐外壁面61、段部壁面63及び外側円筒内壁面66に加えて、外側円筒内壁面66の一端に連接されて当該一端から徐々に拡径していると共に環状凹所42の開口端64の外縁を規定する円環状の周縁85を有した外側截頭円錐内壁面86を更に具備しており、内側内周面53は、截頭円錐内壁面71、段部壁面73及び内側円筒内壁面76に加えて、内側円筒内壁面76の一端に連接されて当該一端から徐々に縮径していると共に環状凹所42の開口端64の内縁を規定する円環状の周縁87を有した内側截頭円錐内壁面88を更に具備していてもよく、図14から図16に示す静圧気体軸受1では、軸受体3は、外側円筒内壁面66を外側環状突出部15の外周面14の円筒外壁面18に、内側円筒内壁面76を内側環状突出部17の内周面16の円筒内壁面22に夫々嵌合せしめると共に外側截頭円錐内壁面86を截頭円錐外壁面19に、内側截頭円錐内壁面88を截頭円錐内壁面23に夫々接触させており、軸受体3は、当該互いに接触する部位、即ち、外側截頭円錐内壁面86と截頭円錐外壁面19との接触する部及び内側截頭円錐内壁面88と截頭円錐内壁面23との接触する部での超音波溶着、所謂スカーフ・ジョイント(軸方向の溶接代X、入り込み方向の溶着代Y)により、外側截頭円錐内壁面86と截頭円錐外壁面19との接触する部及び内側截頭円錐内壁面88と截頭円錐内壁面23との接触する部で溶着接合されて、軸受基体2に一体化されている。
【0056】
図14から図16に示す静圧気体軸受1によれば、外側截頭円錐内壁面86と截頭円錐外壁面19との接触する部及び内側截頭円錐内壁面88と截頭円錐内壁面23との接触する部で面接触(斜面接触)からなる所謂スカーフ・ジョイントが形成されているために、超音波溶着において面接触(斜面接触)で一様な発熱が得られ、大きな溶着面積が得られる結果、スカーフ・ジョイントにおいて気密性がよく、非常に強い溶着強度が得られ、軸受体3と軸受基体2とは強固に一体化されている。
【0057】
図14から図16に示す静圧気体軸受1を製造するには、図5から図8に示す合成樹脂製の軸受基体2と、図14に示す軸受体3を準備し、図15及び図16に示すように、基部4の一方の面5に軸受体3の一方の面41を対面させると共に軸受基体2の環状突出部6を軸受体3の環状凹所42に受容させ、外側截頭円錐内壁面86を截頭円錐外壁面19に、内側截頭円錐内壁面88を截頭円錐内壁面23に夫々接触させて軸受体3と軸受基体2との組立体81を形成し、以下、上記と同様にして、超音波振動の付与とレーザー照射とを行い、外側截頭円錐内壁面86と截頭円錐外壁面19との接触する部及び内側截頭円錐内壁面88と截頭円錐内壁面23との接触する部の溶着接合と、環状凹溝44と複数個の空気吹出孔47との形成を行う。
【0058】
更に上記の静圧気体軸受1の軸受体3は、一個の環状凹溝44を具備しているが、環状凹溝44に加えて、軸受体3は、図17に示すように、軸受体3の一方の面43に形成されているとともに、環状凹溝44の外側に環状凹溝44を囲むと共に環状凹溝44と同心の大径環状凹溝91と、一方の端部が環状凹溝44に開口すると共に他方の端部が大径環状凹溝91に開口する複数個の放射状凹溝92と、環状凹溝44の内側に形成されていると共に環状凹溝44と同心の小径環状凹溝93と、一方の端部が環状凹溝44に開口すると共に他方の端部が小径環状凹溝93に開口する複数個の放射状凹溝94とを具備していてもよい。
【0059】
図17に示す軸受体3を有した静圧気体軸受1では、環状凹溝44に給気された空気は、放射状凹溝92及び94を介して大径環状凹溝91及び小径環状凹溝93に供給されるので、供給面積が大きくなり、例えば物品の浮上において、安定した浮上を行なうことができる。
【0060】
以上のように、軸受体及び軸受基体は、金型を用いて射出成形により形成されるので機械加工を必要とせず、合成樹脂製の軸受体は、環状凹所の内、外周面を軸受基体の円環状突出部の内、外周面に夫々嵌挿させると共に接触部において軸受基体に強固に一体的に溶着接合されており、また軸受体には、幅が少なくとも0.3mmで、深さが少なくとも0.01mmの環状凹溝と、直径が少なくとも30μmの複数個の自成絞り形状の空気吹出孔が形成されているので、空気吹出孔から多量の空気の吹き出しが抑制され、空気吹出孔からの多量の空気吹出しに起因する自励振動の発生を抑制することができ、大量生産が可能となるばかりでなく、安価な静圧気体軸受及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 静圧気体軸受
2 軸受基体
3 軸受体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部、該基部の一方の面から一体的に突設されている環状突出部、一端では該環状突出部の突出端面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口すると共に環状突出部及び基部に設けられた給気通路を備えた合成樹脂製の軸受基体と、基部の一方の面に対面している一方の面に形成されていると共に軸受基体の環状突出部を受容した環状凹所、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口した自成絞りとしての複数個の空気吹出孔を有した合成樹脂製の軸受体とを具備しており、該軸受体は、該環状凹所を規定する軸受体の外側内周面及び内側内周面で環状突出部の外周面及び内周面に溶着接合されて、軸受基体に一体化されており、環状凹溝は、少なくとも0.3mmの幅と、少なくとも0.01mmの深さとを有しており、空気吹出孔は、その一端で少なくとも30μmの直径を有して、環状凹所と環状凹溝との間で自成絞りを形成していることを特徴とする静圧気体軸受。
【請求項2】
環状凹溝は、0.3〜1.0mm又は0.3〜0.7mmの幅と、0.01〜0.05mm又は0.01〜0.03mmの深さとを有しており、該空気吹出孔は、その一端で30〜120μmの直径を有している請求項1に記載の静圧気体軸受。
【請求項3】
環状凹溝及び空気吹出孔の夫々は、レーザー加工により形成されている請求項1又は2に記載の静圧気体軸受。
【請求項4】
軸受基体の環状突出部の外周面は、円筒外壁面と、該円筒外壁面に連続して該円筒外壁面から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面と、該截頭円錐外壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒外壁面よりも大径の円筒外壁面とを有しており、軸受基体の環状突出部の内周面は、円筒内壁面と、該円筒内壁面に連続して該円筒内壁面から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面と、該截頭円錐内壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒内壁面よりも小径の円筒内壁面とを有しており、該軸受体の該環状凹所を規定する外側内周面は、当該環状凹所の開口端の外縁を規定する環状の周縁を有した外側円筒内壁面を具備しており、該軸受体の該環状凹所を規定する内側内周面は、当該環状凹所の開口端の内縁を規定する環状の周縁を有した内側円筒内壁面を有しており、該軸受体は、外側円筒内壁面を環状突出部の外周面の円筒外壁面に、内側円筒内壁面を環状突出部の内周面の円筒内壁面に夫々嵌合せしめると共に該環状凹所の開口端の外縁を規定する外側円筒内壁面の環状の周縁を環状突出部の外周面の截頭円錐外壁面に、該環状凹所の開口端の内縁を規定する内側円筒内壁面の環状の周縁を環状突出部の内周面の截頭円錐内壁面に夫々接触させており、該軸受体は、当該互いに接触する部位で超音波溶着により溶着接合されて、軸受基体に一体化されている請求項1から3のいずれか一項に記載の静圧気体軸受。
【請求項5】
軸受基体の環状突出部の外周面は、円筒外壁面と、該円筒外壁面に連続して該円筒外壁面から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面と、該截頭円錐外壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒外壁面よりも大径の円筒外壁面とを有しており、軸受基体の環状突出部の内周面は、円筒内壁面と、該円筒内壁面に連続して該円筒内壁面から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面と、該截頭円錐内壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒内壁面よりも小径の円筒内壁面とを有しており、該軸受体の該環状凹所を規定する外側内周面は、外側円筒内壁面と、該外側円筒内壁面から徐々に拡径していると共に該環状凹所の開口端の外縁を規定する環状の周縁を有した外側截頭円錐内壁面とを具備しており、該軸受体の該環状凹所を規定する内側内周面は、内側円筒内壁面と、該内側円筒内壁面から徐々に縮径していると共に該環状凹所の開口端の内縁を規定する環状の周縁を有した内側截頭円錐内壁面とを具備しており、該軸受体は、外側円筒内壁面を環状突出部の外周面の円筒外壁面に、内側円筒内壁面を環状突出部の内周面の円筒内壁面に夫々嵌合せしめると共に外側截頭円錐内壁面を截頭円錐外壁面に、内側截頭円錐内壁面を截頭円錐内壁面に夫々接触させており、該軸受体は、当該互いに接触する部位で超音波溶着により溶着接合されて、軸受基体に一体化されている請求項1から3のいずれか一項に記載の静圧気体軸受。
【請求項6】
軸受体は、環状凹溝に加えて、その一方の面に形成されていると共に、該環状凹溝の外側に該環状凹溝を囲む大径環状凹溝と、一方の端部が該環状凹溝に開口すると共に他方の端部が大径環状凹溝に開口する複数個の第一の放射状凹溝と、該環状凹溝の内側に形成された小径環状凹溝と、一方の端部が環状凹溝に開口すると共に他方の端部が小径環状凹溝に開口する複数個の第二の放射状凹溝とを具備している請求項1から5のいずれか一項に記載の静圧気体軸受。
【請求項7】
(a)基部、該基部の一方の面から一体的に突設されている環状突出部、一端では該環状突出部の突出端面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口すると共に環状突出部及び基部に設けられた給気通路を備えており、環状突出部の外周面が、円筒外壁面と、該円筒外壁面に連続して該円筒外壁面から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面と、該截頭円錐外壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒外壁面よりも大径の円筒外壁面とを有しており、環状突出部の内周面が、円筒内壁面と、該円筒内壁面に連続して該円筒内壁面から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面と、該截頭円錐内壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒内壁面よりも小径の円筒内壁面とを有している合成樹脂製の軸受基体を準備する工程と、(b)一方の面に形成されている環状凹所、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口した複数個の空気吹出孔を備えており、該環状凹所を規定する外側内周面が、当該環状凹所の開口端の外縁を規定する環状の周縁を有した外側円筒内壁面を具備しており、該環状凹所を規定する内側内周面が、当該環状凹所の開口端の内縁を規定する環状の周縁を有した内側円筒内壁面を有している合成樹脂製の軸受体を準備する工程と、(c)基部の一方の面に軸受体の一方の面を対面させると共に軸受基体の環状突出部を軸受体の環状凹所に受容させ、該環状凹所の開口端の外縁を規定する外側円筒内壁面の環状の周縁を環状突出部の外周面の截頭円錐外壁面に、該環状凹所の開口端の内縁を規定する内側円筒内壁面の環状の周縁を環状突出部の内周面の截頭円錐内壁面に夫々接触させて該軸受体と軸受基体との組立体を形成する工程と、(d)該組立体における軸受体に工具ホーンを押し当て、加圧力0.098〜0.60MPa、振動振幅20〜80μm、発信時間0.1〜1.5秒、ホールド時間0.5〜1.0秒の溶着条件で超音波振動を与え、該接触部位において該軸受基体に軸受体を溶着接合する工程と、(e)軸受基体に溶着接合した軸受体の他方の面にレーザーを照射し、少なくとも0.3mmの幅と少なくとも0.01mmの深さとを有した環状凹溝と、一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口しており、一端で少なくとも30μmの直径を有した複数個の空気吹出孔を自成絞りとして形成する工程とからなる静圧気体軸受の製造方法。
【請求項8】
(a)基部、該基部の一方の面から一体的に突設されている環状突出部、一端では該環状突出部の突出端面で開口している一方、他端では基部の外周面で開口すると共に環状突出部及び基部に設けられた給気通路を備えており、環状突出部の外周面が、円筒外壁面と、該円筒外壁面に連続して該円筒外壁面から外方に徐々に拡径する環状の截頭円錐外壁面と、該截頭円錐外壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒外壁面よりも大径の円筒外壁面とを有しており、環状突出部の内周面が、円筒内壁面と、該円筒内壁面に連続して該円筒内壁面から内方に徐々に縮径する環状の截頭円錐内壁面と、該截頭円錐内壁面と連続して該基部の一方の面に連なると共に円筒内壁面よりも小径の円筒内壁面とを有している合成樹脂製の軸受基体を準備する工程と、(b)一方の面に形成されている環状凹所、他方の面で開口した環状凹溝及び一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口した複数個の空気吹出孔を備えており、該環状凹所を規定する外側内周面が、外側円筒内壁面と、該外側円筒内壁面から徐々に拡径していると共に該環状凹所の開口端の外縁を規定する環状の周縁を有した外側截頭円錐内壁面とを具備しており、該環状凹所を規定する内側内周面が、内側円筒内壁面と、該内側円筒内壁面から徐々に縮径していると共に該環状凹所の開口端の内縁を規定する環状の周縁を有した内側截頭円錐内壁面とを具備している合成樹脂製の軸受体を準備する工程と、(c)基部の一方の面に軸受体の一方の面を対面させると共に軸受基体の環状突出部を軸受体の環状凹所に受容させ、外側截頭円錐内壁面を截頭円錐外壁面に、内側截頭円錐内壁面を截頭円錐内壁面に夫々接触させて該軸受体と軸受基体との組立体を形成する工程と、(d)該組立体における軸受体に工具ホーンを押し当て、加圧力0.098〜0.60MPa、振動振幅20〜80μm、発信時間0.1〜1.5秒、ホールド時間0.5〜1.0秒の溶着条件で超音波振動を与え、該接触部位において該軸受基体に軸受体を溶着接合する工程と、(e)軸受基体に溶着接合した軸受体の他方の面にレーザーを照射して、少なくとも0.3mmの幅と少なくとも0.01mmの深さとを有した環状凹溝と、一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口しており、一端で少なくとも30μmの直径を有した複数個の空気吹出孔を自成絞りとして形成する工程とからなる静圧気体軸受の製造方法。
【請求項9】
軸受基体に溶着接合した軸受体の他方の面にレーザーを照射して、少なくとも0.3mm又は0.3〜1.0mmの幅と少なくとも0.01mm又は0.01〜0.1mmの深さとを有した環状凹溝と、一端では環状凹溝に連通していると共に他端では環状凹所に開口しており、一端で少なくとも30μm又は30〜120μmの直径を有した複数個の空気吹出孔を形成する工程とからなる請求項7又は8に記載の静圧気体軸受の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−64433(P2013−64433A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202749(P2011−202749)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】