静圧気体軸受直線案内装置
【課題】可動体を浮上させる圧縮空気をガイドレールから噴出させることで、可動体をチューブレス構造とした静圧気体軸受直線案内装置の提供。
【解決手段】基台に固定されるガイドレール2、ガイドレール2の延出方向に沿って往復移動可能な可動体4(垂直方向受板42、水平方向受板44)、圧縮空気を噴出して可動体4をガイドレール2に対して浮上させて非接触に支持する静圧気体軸受部(多孔質部材)6、磁気吸引力により可動体4をガイドレール2に引き寄せる吸引部8(磁気吸引部材8a、永久磁石8b)を備え、静圧気体軸受部6からの圧縮空気による可動体4のガイドレール2に対する浮上力と、可動体4をガイドレール2へ引き寄せる吸引部8からの磁気吸引力とを調整してバランスを図り、可動体4をガイドレール2に対して浮上させつつ、往復移動させるべく、静圧気体軸受部6をガイドレール2に配し、可動体4へ向けて圧縮空気を噴出させる。
【解決手段】基台に固定されるガイドレール2、ガイドレール2の延出方向に沿って往復移動可能な可動体4(垂直方向受板42、水平方向受板44)、圧縮空気を噴出して可動体4をガイドレール2に対して浮上させて非接触に支持する静圧気体軸受部(多孔質部材)6、磁気吸引力により可動体4をガイドレール2に引き寄せる吸引部8(磁気吸引部材8a、永久磁石8b)を備え、静圧気体軸受部6からの圧縮空気による可動体4のガイドレール2に対する浮上力と、可動体4をガイドレール2へ引き寄せる吸引部8からの磁気吸引力とを調整してバランスを図り、可動体4をガイドレール2に対して浮上させつつ、往復移動させるべく、静圧気体軸受部6をガイドレール2に配し、可動体4へ向けて圧縮空気を噴出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、精密形状測定機などにおいて、試料、工具や検出器などを移動させる際に用いられる静圧気体軸受直線案内装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
精密形状測定機などにおいては、試料、工具や検出器などを高精度で位置決めする必要がある。このため、例えば、試料などの載置台を位置決めする装置として、摩擦のほとんど生じない静圧気体軸受直線案内装置(以下、直線案内装置ともいう)が従来から用いられている。
かかる直線案内装置には、ガイドレールに対して可動体を非接触に浮上して移動させる静圧気体軸受装置が設けられている。静圧気体軸受装置には、試料などの載置台となる可動体とガイドレールとの間に圧縮空気を噴出して可動体をガイドレールに対して浮上させ、当該可動体を非接触に支持する静圧気体軸受部と、可動体とガイドレールとの間に永久磁石などの磁性材による磁気吸引力を発生させて可動体をガイドレールに引き寄せる吸引部が備えられている。
【0003】
図11には、このような直線案内装置50の一構成を例示している。この場合、ガイドレール54が基台52の上に所定方向(一例として、当該基台52の長尺方向)へ直線状に延設され、当該ガイドレール54の上面(垂直方向上面)に可動体(可動テーブル)56が摺動自在に嵌合されている。可動体56の下部には、ガイドレール54を両側から挟み込み、当該ガイドレール54の両側面と対向するように、テーブル側レール58がガイドレール54と平行をなして設けられている。
【0004】
テーブル側レール58の下部(基台52との対向部)には、所定の多孔質部材からなる静圧気体軸受部(垂直方向静圧気体軸受部)60がそれぞれ設けられているとともに、当該テーブル側レール58の内側部(ガイドレール54の両側面との対向部)にも、所定の多孔質部材からなる静圧気体軸受部(水平方向静圧気体軸受部)62がそれぞれ設けられている。これらの静圧気体軸受部60,62は、基台52およびガイドレール54の両側面に圧縮空気を噴出して可動体56をガイドレール54に対して浮上させ、当該可動体56を非接触に支持する構造となっている。また、基台52の両端部(一例として、短尺方向の両端部)には、一対の吸引レール64がガイドレール54と同一方向(一例として、基台52の長尺方向)へ平行な直線状をなして延設されている。そして、可動体56の下部両端部には、これらの吸引レール64の上面(垂直方向上面)と対向するように、永久磁石やヨークなどからなる一対の吸引部66が設けられている。すなわち、これらの吸引部66から吸引レール64に対して磁気吸引力を発生させることで、可動体56を当該吸引レール64、ひいてはガイドレール54および基台52へ引き寄せる構造となっている。
【0005】
このように、直線案内装置50は、静圧気体軸受部(垂直方向静圧気体軸受部60および水平方向静圧気体軸受部62)から噴出される圧縮空気による浮上力と、吸引部66による磁気吸引力とを調整してバランスを図ることにより、可動体56をガイドレール54に対して浮上させつつ、当該ガイドレール54に沿って自在に往復移動させることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−50271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる直線案内装置50においては、可動体56をガイドレール54に対して浮上させるべく、圧縮空気を噴出するための空気噴出部である静圧気体軸受部(垂直方向静圧気体軸受部60および水平方向静圧気体軸受部62)が可動体56のテーブル側レール58に配設された構造となっている。したがって、静圧気体軸受部60,62から圧縮空気を噴出させるためには、所定の供給源(図示しない)から配管(一例として、チューブ)68を引き回し、当該配管68を可動体56と連結させる必要がある。
その一方で、直線案内装置50の稼働中、可動体56は、ガイドレール54に沿って(換言すれば、基台52に対して)常に移動し、その位置変動を繰り返している。
【0008】
このため、直線案内装置50のように空気噴出部(静圧気体軸受部60,62)を可動体56に配設した構造では、上述したように、圧縮空気供給源と可動体56との間で配管68の引き回しや連結などの手間を生じさせることが不可避となるだけでなく、当該配管68が可動体56とともに位置変動を繰り返すこととなる。この結果、その変動の程度によっては、配管68の寿命を縮め、配管68自体や配管68と可動体56との連結部分70などからの漏気を誘発させる虞があり、可動体56の移動精度に悪影響を及ぼしてしまう虞もある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、可動体をガイドレールに対して浮上させるための圧縮空気を当該ガイドレールから噴出させることで、可動体をチューブレス構造とした静圧気体軸受直線案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明に係る静圧気体軸受直線案内装置は、所定方向に延出し、基台に固定されるガイドレールと、当該ガイドレールに跨設され、その延出方向に沿って往復移動可能な可動体と、圧縮空気を噴出して前記可動体を前記ガイドレールに対して浮上させ、当該可動体を非接触に支持する静圧気体軸受部と、磁気吸引力により前記可動体を前記ガイドレールに引き寄せる吸引部とを備え、前記静圧気体軸受部からの圧縮空気による前記可動体の前記ガイドレールに対する浮上力と、前記可動体を前記ガイドレールへ引き寄せる前記吸引部からの磁気吸引力とを調整してバランスを図り、前記可動体を前記ガイドレールに対して浮上させつつ、当該ガイドレールに沿って往復移動させている。かかる静圧気体軸受直線案内装置において、前記静圧気体軸受部は、前記ガイドレールに配され、前記可動体へ向けて圧縮空気を噴出させる。
【0011】
前記静圧気体軸受部は、多孔質部材で構成し、前記ガイドレールの表面のうち、垂直方向の上面および延出方向に沿った両側面の3面から、当該3面と前記可動体が対向する面へ向けて圧縮空気を噴出させるように配すればよい。
その際、前記多孔質部材は、前記可動体が前記ガイドレールの上面および両側面と対向する面のうち、当該可動体の移動方向に対する長さの半分以上を占める面域と常時対向可能となるように、前記ガイドレールの上面および両側面に対して複数個整列して配することが好ましい。
【0012】
なお、前記吸引部は、磁気吸引部材と永久磁石でなり、前記磁気吸引部材は、前記ガイドレールの上面に、当該ガイドレールの延出方向と直交する方向に対する幅寸法の略中央部位へ前記延出方向に沿って一直線状に配し、前記永久磁石は、前記可動体が前記ガイドレールの上面と対向する面に、前記磁気吸引部材と対向可能に配する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る静圧気体軸受直線案内装置によれば、可動体をガイドレールに対して浮上させるための圧縮空気を当該ガイドレールから噴出させることで、可動体をチューブレス構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の要部断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の全体側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置のガイドレールの延出方向に対する端面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置を垂直方向の上方から示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置を垂直方向の下方から示す平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の要部断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の全体側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置のガイドレールの延出方向に対する端面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置を垂直方向の上方から示す平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置を垂直方向の下方から示す平面図である。
【図11】従来の静圧気体軸受直線案内装置のガイドレールの延出方向に対する端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置(以下、直線案内装置ともいう)について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明に係る静圧気体軸受直線案内装置は、主として精密形状測定機などにおいて、試料、工具や検出器などを移動させる際に用いられる場合を一例として想定するが、その用途はこれに限定されるものではない。例えば、高精度な工作機械、加工装置、検査装置、および半導体製造装置などにおける試料等の移動用などとしても適用することが可能である。
【0016】
図1から図5には、本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置が示されている。かかる直線案内装置は、所定方向に延出し、基台(図示しない)に固定されるガイドレール2と、当該ガイドレール2に跨設され、その延出方向に沿って往復移動可能な可動体4と、圧縮空気を噴出して前記可動体4を前記ガイドレール2に対して浮上させ、当該可動体4を非接触に支持する静圧気体軸受部6と、磁気吸引力により前記可動体4を前記ガイドレール2に引き寄せる吸引部8とを備えている。
【0017】
ガイドレール2は、可動体4を往復移動させる方向へ直線状に延出した略直方体状をなしており、前記基台の上面(垂直方向(図1から図3においては、上下方向)の上方へ向く面)に対して所定の固定部材により固定されている。本実施形態においては、図5に示すように、ガイドレール2の底面2aに固定用のねじ穴2bを形成し、当該ねじ穴2bへ前記基台を介してねじを螺合させることで、ガイドレール2が前記基台に締結固定されている。なお、ガイドレール2の前記基台への固定方法は、このようなねじによる締結の他、リベットやビス止め、接着剤による接合、溶接など、任意の方法で構わない。
【0018】
可動体4は、垂直方向受板42と水平方向受板44で構成されている。垂直方向受板42は、可動体4がガイドレール2に跨設された状態で下面45がガイドレール2の上面2cと対向する、略矩形の平板状をなしている。水平方向受板44は、垂直方向受板42の下面45の両端部(可動体4の移動方向と直交する方向(図1および図3においては、左右方向)に対する端部)から当該下面45と略直角をなして延出される一対の略矩形の平板状をなしており、垂直方向受板42と一体的に組み付けられ、可動体4がガイドレール2に跨設された状態で内面46がガイドレール2の側面2dと対向している。
本実施形態においては、図1に示すように、垂直方向受板42の前記両端部には、当該垂直方向受板42を垂直方向に貫通するボルト孔47が穿孔されており、水平方向受板44には、当該ボルト孔47と連通するボルト穴48が形成されている。そして、連通するボルト孔47およびボルト穴48へボルト(一例として、六角穴付ボルト)10を螺合させることで、垂直方向受板42と水平方向受板44が一体的に組み付けられている。この場合、ボルト孔47は、ボルト10の頭部を固定する(埋め込む)ための座ぐり付きの孔として穿孔されている。これにより、垂直方向受板42と水平方向受板44をボルト10で締結固定した状態であっても、当該ボルト10の頭部がボルト孔47から突出せず、垂直方向受板42の上面(すなわち、可動体4の上面)43を略平坦状に保つことができる。なお、垂直方向受板42と水平方向受板44の固定方法は、このようなボルト10による締結の他、リベットやビス止め、接着剤による接合、溶接など、任意の方法で構わない。また、垂直方向受板42と水平方向受板44を別体構成ではなく、一体構成とすることも想定可能である。
【0019】
静圧気体軸受部(空気噴出部)6は、ガイドレール2に配され、可動体4へ向けて圧縮空気を噴出させる。本実施形態において、静圧気体軸受部6は、多孔質部材でなり、ガイドレール2の表面のうち、垂直方向の上面2cおよび延出方向に沿った両側面2dの3面から、当該3面2c,2dと可動体4が対向する面である垂直方向受板42の下面45および水平方向受板44の内面46へ向けて圧縮空気を噴出させるように配されている。
静圧気体軸受部6を構成する多孔質部材は円板状をなしており、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dに当該多孔質部材の円板形態(形状、径寸法および肉厚)に対応して形成された穴部20,21へ埋設されている。なお、静圧気体軸受部(多孔質部材)6とガイドレール2は、静圧気体軸受部(多孔質部材)6を穴部20,21へ埋設した状態で一体研削し、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の肉厚(別の捉え方をすれば、穴部20,21の深さ)を調整することで、穴部20,21から露出される静圧気体軸受部(多孔質部材)6の円板面がガイドレール2の上面2cおよび両側面2dとそれぞれ面一となるように仕上げられている。これにより、静圧気体軸受部(多孔質部材)6が穴部20,21から突出することがなく、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dを略平坦状に保ち、可動体4をガイドレール2に沿って移動させる際の障害となることを防止している。
【0020】
なお、静圧気体軸受部(多孔質部材)6は、可動体4がガイドレール2の上面2cおよび両側面2dと対向する面(垂直方向受板42の下面45と水平方向受板44の内面46)のうち、各面45,46の可動体4の移動方向に対する長さ(図2、図4および図5における左右方向に対する長さ(以下、可動体全長という))の半分以上を占める面域と常時対向可能となるように、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dに対して複数個整列して配することが好ましい。すなわち、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の外径寸法と配設間隔は、可動体4がガイドレール2の延出方向のいずれに位置付けられていても、可動体全長に対して静圧気体軸受部(多孔質部材)6の長さ(例えば、図2に示す状態においては、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の外径寸法の略5倍の長さに相当)が、最低でも当該可動体全長の半分以上を占めて可動体4の下面45および内面46とそれそれ対向するように設定すればよい。
これにより、静圧気体軸受部(多孔質部材)6から圧縮空気を可動体4の下面45および内面46へ向けて噴出させた際、当該可動体4をガイドレール2に対して安定して浮上させることができるとともに、当該ガイドレール2に沿って移動させる際の安定性も維持することができる。なお、このような可動体4の移動安定性の観点からは、可動体4の下面45および内面46と静圧気体軸受部(多孔質部材)6とが対向する面長さの可動体全長に占める割合(以下、可動体4と静圧気体軸受部6との対向割合という)はできるだけ長い方が好ましい。
【0021】
一例として、本実施形態においては、ガイドレール2の上面2cの両側面2dに沿った両端部にそれぞれ9個の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を延出方向へ略等間隔で1列ずつ(合計2列)配するとともに、当該ガイドレール2の両側面2dにそれぞれ9個の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を延出方向へ略等間隔(前記上面2cに配した各列と同一間隔)で1列ずつ配した構成(ガイドレール2全体で、4列で合計36個の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を配した構成)としている(図2、図4および図5)。ただし、可動体4と静圧気体軸受部6との対向割合が可動体全長の半分以上となっていれば、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の配設数、外径寸法、および配設間隔は、任意に設定することが可能である。
【0022】
また、ガイドレール2には、静圧気体軸受部(多孔質部材)6に対して圧縮空気を供給するためにその内部を延出方向へ貫通し、当該延出方向の両端面2eにおいて開口(以下、当該開口を軸受給気口31という)する通し孔(同、軸受給気主孔という)30が形成されている。さらに、軸受給気主孔30と静圧気体軸受部(多孔質部材)6とを連通させるために、当該軸受給気主孔30から枝分かれし、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dに配された各静圧気体軸受部(多孔質部材)6へ向けて延出する枝孔(以下、軸受給気枝孔という)34が形成されている。
【0023】
一例として、本実施形態においては、ガイドレール2の一方(一例として、図1の左側)の側面2d(22)寄りに当該ガイドレール2の内部を延出方向へ貫通する軸受給気主孔30(32)と、他方(一例として、同図の右側)の側面2d(23)寄りに当該ガイドレール2の内部を延出方向へ貫通する軸受給気主孔30(33)の2本の軸受給気主孔30(32,33)を延出方向(貫通方向)へ平行に、かつ垂直方向に対して同一高さで形成した構成としている。そして、ガイドレール2の側面22寄りの軸受給気主孔32から枝分かれし、側面22および上面2cの当該側面22寄りに配された各静圧気体軸受部(多孔質部材)6へ向けて1本ずつ、合計18本の軸受給気枝孔34(35)を延出させている。同様に、ガイドレール2の側面23寄りの軸受給気主孔33から枝分かれし、側面23および上面2cの当該側面23寄りに配された各静圧気体軸受部(多孔質部材)6へ向けて1本ずつ、合計18本の軸受給気枝孔34(36)を延出させている。
【0024】
この場合、各軸受給気主孔30(32,33)はいずれも同一径寸法(同一孔径)に設定されているとともに、各軸受給気枝孔34(35,36)もすべて同一径寸法(同一孔径)に設定されている。また、各軸受給気枝孔34(35,36)の孔径は、軸受給気主孔30(32,33)の孔径よりも小寸に設定されている。軸受給気主孔30(32,33)および軸受給気枝孔34(35,36)の孔径をこのような設定とすることで、ガイドレール2の上面2cおよび側面2d(22,23)に配された静圧気体軸受部(多孔質部材)6に対し、均一の所定圧で圧縮空気を供給(給気)することができる。なお、軸受給気主孔30には、軸受給気口31を介して所定の供給源(図示しない)から圧縮空気を送出させる。その際、ガイドレール2の両端面2eに開口する軸受給気口31のうち、いずれか一方、もしくは双方から軸受給気主孔30に対し、前記供給源から送出された圧縮空気を給気すればよい。いずれか一方の端面2eの軸受給気口31からのみ軸受給気主孔30に対して圧縮空気を給気する場合、他方の端面2eの軸受給気口31は、所定の封止部材で塞いだ状態にすればよい。
【0025】
このように、本実施形態によれば、可動体4をガイドレール2に対して浮上させるための圧縮空気を当該ガイドレール2に配した静圧気体軸受部(多孔質部材)6から可動体4へ向けて噴出させることで、従来のように空気噴出部である静圧気体軸受部を可動体4に配する必要がなく、当該可動体4をチューブレス構造とすることができる。
なお、前記圧縮空気供給源と軸受給気主孔30とは、軸受給気口31に連結した配管などで連通させればよいが、かかる配管などで連通させた場合であっても、ガイドレール2は前記基台に固定して静置されているため、当該配管の引き回しや連結などの手間を従来よりも軽減させることができる。また、かかる配管が位置変動を繰り返すことがないため、従来よりも配管の長寿命化を図ることができ、漏気の防止や可動体4の移動精度の向上を図ることも可能となる。
【0026】
吸引部8は、磁気吸引部材8aと永久磁石8bでなり、磁気吸引部材8aは、ガイドレール2の上面2cに、当該ガイドレール2の延出方向と直交する方向(図1および図3においては左右方向、つまり短尺方向)に対する幅寸法の略中央部位へ前記延出方向(図4においては、左右方向、つまり長尺方向)に沿って一直線状に配されている。これに対し、永久磁石8bは、可動体4がガイドレール2の上面2cと対向する面(垂直方向受板42の下面45)に、磁気吸引部材8aと対向可能に配されている。
【0027】
吸引部8を構成する磁気吸引部材8aは、磁性体金属、永久磁石やヨークなどからなり、その長尺方向の寸法がガイドレール2の延出方向の寸法と略同寸の平板状をなしており、ガイドレール2の上面2cに当該磁気吸引部材8aの平板形態(形状、幅寸法や肉厚)に対応して形成された溝部24へ埋設されている。なお、磁気吸引部材8aの肉厚と溝部24の深さは、磁気吸引部材8aを溝部24へ埋設した状態で、当該溝部24から露出される磁気吸引部材8aの平板面がガイドレール2の上面2cと略面一となるように相互に設定されている。これにより、磁気吸引部材8aが溝部24から突出することがなく、ガイドレール2の上面2cを略平坦状に保ち、可動体4をガイドレール2に沿って移動させる際の障害となることを防止している。また、ガイドレール2には、溝部24と連通するとともに、当該ガイドレール2を垂直方向に貫通して底面2aに開口するボルト孔2hが穿孔されており、磁気吸引部材8aには、当該ボルト孔2hと連通するボルト穴80が形成されている。そして、連通するボルト孔2hおよびボルト穴80へボルト(一例として、六角穴付ボルト)12を螺合させることで、磁気吸引部材8aを溝部24に対して位置決め固定している。この場合、ボルト孔2hは、ボルト12の頭部を固定する(埋め込む)ための座ぐり付きの孔として穿孔されている。これにより、磁気吸引部材8aをボルト12で締結固定した状態であっても、当該ボルト12の頭部がボルト孔2hから突出することがなく、ガイドレール2の底面2a(前記基台に対する固定面)を略平坦状に保ち、ガイドレール2を基台に対して固定する際の障害となることを防止している。
【0028】
一方、吸引部8を構成する永久磁石8bは円板状をなしており、可動体4の垂直方向受板42の下面45に当該永久磁石8bの円板形態(形状、径寸法および肉厚)に対応して形成された穴部49へ埋設されている。なお、永久磁石8bの肉厚と穴部49の深さは、永久磁石8bを穴部49へ埋設した状態で、当該穴部49から露出される永久磁石8bの円板面が垂直方向受板42の下面45と略面一となるように相互に設定されている。これにより、永久磁石8bが穴部49から突出することがなく、垂直方向受板42の下面45を略平坦状に保ち、可動体4がガイドレール2に沿って移動する際の障害となることを防止している。この場合、例えば、螺旋状の溝部(一例として、雄ねじ部)を穴部49から永久磁石8bへ向けて露出させるようなボルト14を可動体4の垂直方向受板42に埋設し、永久磁石8bに当該ボルト14の溝部と螺合可能な溝部(一例として、雌ねじ部)を有する穴部を形成し、双方の溝部を螺合させる構成とすれば、永久磁石8bを穴部49に対して位置決め固定するとともに、当該永久磁石8bと磁気吸引部材8aとの対向間隔(隙間)を調整し、これらの間で生じさせる磁気吸引力の調整を容易に行うことも可能となる。
一例として、本実施形態においては、可動体4(垂直方向受板42)の下面45の移動方向と直交する方向(図1および図3においては左右方向)に対する幅寸法の略中央部位へ前記移動方向(図4においては、左右方向)の両側寄りに1つずつ、合計2つの永久磁石8bを配した構成としている。ただし、永久磁石8bの形状や大きさ(径寸法および肉厚)、配設位置や配設数などは、磁気吸引部材8aとの間で発生させる磁気吸引力の大きさなどに応じて任意に設定することが可能である。
【0029】
このように、磁気吸引部材8aと永久磁石8bをガイドレール2と可動体4に対向可能に配し、これらの磁気吸引部材8aおよび永久磁石8bのうちいずれか一方をS極、他方をN極とすることで、磁石部8からの磁気吸引力(磁気吸引部材8aと永久磁石8bとの間に作用する磁気吸引力)を可動体4に対して作用させることができ、当該可動体4をガイドレール2へ引き寄せることができる。
そして、ガイドレール2に静圧気体軸受部(多孔質部材)6を配するとともに、吸引部8の磁気吸引部材8aを配し、当該磁気吸引部材8aと対向可能に吸引部8の永久磁石8bを配することで、静圧気体軸受部(多孔質部材)6からの圧縮空気による可動体4のガイドレール2に対する浮上力と、当該可動体4をガイドレール2へ引き寄せる磁石部8からの磁気吸引力(磁気吸引部材8aと永久磁石8bとの間に作用する磁気吸引力)とを調整してバランスを図ることができる。これにより、可動体4をガイドレール2に対して浮上させつつ、当該ガイドレール2に沿って往復移動させることが可能となる。その際、可動体4の往復移動および停止は、所定の位置決め機構(例えば、ボールねじ機構、ベルト機構、およびリニアモータ機構など)によって行えばよい。
【0030】
なお、上述した第1実施形態(図1から図5)においては、静圧気体軸受部(多孔質部材)6を円板状とし、当該円板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を複数個(一例として、9個)、ガイドレール2の上面2cに2列、各側面2d(22,23)に1列ずつ合計4列、延出方向へ略等間隔で配した構成としているが、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の構成はこれに限定されない。例えば、図6から図10に示す本発明の第2実施形態に係る構成とすることで、より一層、可動体4のガイドレール2に対する浮上量を安定させることが可能となるとともに、ガイドレール2に対してより一層高度な真直度で可動体4を往復移動させることが可能となる。以下、本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置について説明する。なお、本実施形態に係る直線案内装置の基本的な構成は、上述した第1実施形態に係る直線案内装置(図1から図5)と同様であり、同一もしくは類似の構成部材については、図面上で同一符号を付してその説明を省略もしくは簡略化し、以下においては、本実施形態に係る直線案内装置(具体的には、静圧気体軸受部(多孔質部材)6)に特有の構成についての説明に止める。
【0031】
本実施形態において、静圧気体軸受部6を構成する多孔質部材は、その長尺方向の寸法がガイドレール2の延出方向の寸法と略同寸の平板状をなしており、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dに当該多孔質部材の平板形態(形状、短尺方向に対する幅寸法、肉厚)に対応して形成された穴部20,21へ埋設されている。なお、静圧気体軸受部(多孔質部材)6とガイドレール2は、静圧気体軸受部(多孔質部材)6を穴部20,21へ埋設した状態で一体研削し、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の肉厚(別の捉え方をすれば、穴部20,21の深さ)を調整することで、穴部20,21から露出される静圧気体軸受部(多孔質部材)6の平板面がガイドレール2の上面2cおよび両側面2dとそれぞれ面一となるように仕上げられている。これにより、静圧気体軸受部(多孔質部材)6が穴部20,21から突出することがなく、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dを略平坦状に保ち、可動体4をガイドレール2に沿って移動させる際の障害となることを防止していることは、上述した第1実施形態の場合と同様である。
一例として、本実施形態においては、ガイドレール2の上面2cの両側面2dに沿った両端部にそれぞれ平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を延出方向へ1枚ずつ(合計2枚)配するとともに、当該ガイドレール2の両側面2dにそれぞれ同様の平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を延出方向へ1枚ずつ配した構成(ガイドレール2全体で4枚の平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を配した構成)としている(図6から図10)。ただし、平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6の配設数、短尺方向に対する幅寸法は、任意に設定することが可能である。
【0032】
このように、静圧気体軸受部(多孔質部材)6を長尺方向の寸法がガイドレール2の延出方向の寸法と略同寸の平板状とすることで、可動体4がガイドレール2の延出方向のいずれに位置付けられていても、可動体4とガイドレール2との対向割合を可動体全長の半分以上とすることができるのみならず、可動体4の下面45および内面46に対し、可動体全長に亘って隙間なく静圧気体軸受部(多孔質部材)6から圧縮空気を噴出させることができる。したがって、上述した第1実施形態よりも、可動体4をガイドレール2に対してより安定して浮上させること(浮上量を安定させること)が可能となるとともに、当該ガイドレール2に沿って移動させる際の安定性も高めることが可能となる。結果として、ガイドレール2に対してより一層高度な真直度で可動体4を往復移動させることも可能となる。
【0033】
また、本実施形態においては、ガイドレール2の上面2cの穴部20および両側面2dの穴部21よりも小さな平板状をなす溝部(以下、給気連通溝という)25,26が各穴部20,21と連通するように、これらの穴部20,21よりもガイドレール2の内方にそれぞれ形成されている。このように給気連通溝25,26を形成することで、軸受給気枝孔34(35,36)から各静圧気体軸受部(多孔質部材)6に対して供給(給気)した圧縮空気を給気連通溝25,26で流動させることができる。これにより、かかる圧縮空気を給気連通溝25,26を介して各静圧気体軸受部(多孔質部材)6の全体にそれぞれ略均一の所定圧で供給(給気)させることができる。なお、本実施形態においては、軸受給気主孔30(32,33)から枝分かれし、ガイドレール2の上面2cおよび側面2d(22,23)に配した4枚の平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6へ向けて9本ずつ、合計36本の軸受給気枝孔34(35,36)を延出させた構成としているが、軸受給気枝孔34(35,36)の本数は特に限定されず、任意に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
2 ガイドレール
4 可動体
6 静圧気体軸受部(多孔質部材)
8 吸引部
8a 磁気吸引部材
8b 永久磁石
42 垂直方向受板
44 水平方向受板
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、精密形状測定機などにおいて、試料、工具や検出器などを移動させる際に用いられる静圧気体軸受直線案内装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
精密形状測定機などにおいては、試料、工具や検出器などを高精度で位置決めする必要がある。このため、例えば、試料などの載置台を位置決めする装置として、摩擦のほとんど生じない静圧気体軸受直線案内装置(以下、直線案内装置ともいう)が従来から用いられている。
かかる直線案内装置には、ガイドレールに対して可動体を非接触に浮上して移動させる静圧気体軸受装置が設けられている。静圧気体軸受装置には、試料などの載置台となる可動体とガイドレールとの間に圧縮空気を噴出して可動体をガイドレールに対して浮上させ、当該可動体を非接触に支持する静圧気体軸受部と、可動体とガイドレールとの間に永久磁石などの磁性材による磁気吸引力を発生させて可動体をガイドレールに引き寄せる吸引部が備えられている。
【0003】
図11には、このような直線案内装置50の一構成を例示している。この場合、ガイドレール54が基台52の上に所定方向(一例として、当該基台52の長尺方向)へ直線状に延設され、当該ガイドレール54の上面(垂直方向上面)に可動体(可動テーブル)56が摺動自在に嵌合されている。可動体56の下部には、ガイドレール54を両側から挟み込み、当該ガイドレール54の両側面と対向するように、テーブル側レール58がガイドレール54と平行をなして設けられている。
【0004】
テーブル側レール58の下部(基台52との対向部)には、所定の多孔質部材からなる静圧気体軸受部(垂直方向静圧気体軸受部)60がそれぞれ設けられているとともに、当該テーブル側レール58の内側部(ガイドレール54の両側面との対向部)にも、所定の多孔質部材からなる静圧気体軸受部(水平方向静圧気体軸受部)62がそれぞれ設けられている。これらの静圧気体軸受部60,62は、基台52およびガイドレール54の両側面に圧縮空気を噴出して可動体56をガイドレール54に対して浮上させ、当該可動体56を非接触に支持する構造となっている。また、基台52の両端部(一例として、短尺方向の両端部)には、一対の吸引レール64がガイドレール54と同一方向(一例として、基台52の長尺方向)へ平行な直線状をなして延設されている。そして、可動体56の下部両端部には、これらの吸引レール64の上面(垂直方向上面)と対向するように、永久磁石やヨークなどからなる一対の吸引部66が設けられている。すなわち、これらの吸引部66から吸引レール64に対して磁気吸引力を発生させることで、可動体56を当該吸引レール64、ひいてはガイドレール54および基台52へ引き寄せる構造となっている。
【0005】
このように、直線案内装置50は、静圧気体軸受部(垂直方向静圧気体軸受部60および水平方向静圧気体軸受部62)から噴出される圧縮空気による浮上力と、吸引部66による磁気吸引力とを調整してバランスを図ることにより、可動体56をガイドレール54に対して浮上させつつ、当該ガイドレール54に沿って自在に往復移動させることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−50271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる直線案内装置50においては、可動体56をガイドレール54に対して浮上させるべく、圧縮空気を噴出するための空気噴出部である静圧気体軸受部(垂直方向静圧気体軸受部60および水平方向静圧気体軸受部62)が可動体56のテーブル側レール58に配設された構造となっている。したがって、静圧気体軸受部60,62から圧縮空気を噴出させるためには、所定の供給源(図示しない)から配管(一例として、チューブ)68を引き回し、当該配管68を可動体56と連結させる必要がある。
その一方で、直線案内装置50の稼働中、可動体56は、ガイドレール54に沿って(換言すれば、基台52に対して)常に移動し、その位置変動を繰り返している。
【0008】
このため、直線案内装置50のように空気噴出部(静圧気体軸受部60,62)を可動体56に配設した構造では、上述したように、圧縮空気供給源と可動体56との間で配管68の引き回しや連結などの手間を生じさせることが不可避となるだけでなく、当該配管68が可動体56とともに位置変動を繰り返すこととなる。この結果、その変動の程度によっては、配管68の寿命を縮め、配管68自体や配管68と可動体56との連結部分70などからの漏気を誘発させる虞があり、可動体56の移動精度に悪影響を及ぼしてしまう虞もある。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、可動体をガイドレールに対して浮上させるための圧縮空気を当該ガイドレールから噴出させることで、可動体をチューブレス構造とした静圧気体軸受直線案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明に係る静圧気体軸受直線案内装置は、所定方向に延出し、基台に固定されるガイドレールと、当該ガイドレールに跨設され、その延出方向に沿って往復移動可能な可動体と、圧縮空気を噴出して前記可動体を前記ガイドレールに対して浮上させ、当該可動体を非接触に支持する静圧気体軸受部と、磁気吸引力により前記可動体を前記ガイドレールに引き寄せる吸引部とを備え、前記静圧気体軸受部からの圧縮空気による前記可動体の前記ガイドレールに対する浮上力と、前記可動体を前記ガイドレールへ引き寄せる前記吸引部からの磁気吸引力とを調整してバランスを図り、前記可動体を前記ガイドレールに対して浮上させつつ、当該ガイドレールに沿って往復移動させている。かかる静圧気体軸受直線案内装置において、前記静圧気体軸受部は、前記ガイドレールに配され、前記可動体へ向けて圧縮空気を噴出させる。
【0011】
前記静圧気体軸受部は、多孔質部材で構成し、前記ガイドレールの表面のうち、垂直方向の上面および延出方向に沿った両側面の3面から、当該3面と前記可動体が対向する面へ向けて圧縮空気を噴出させるように配すればよい。
その際、前記多孔質部材は、前記可動体が前記ガイドレールの上面および両側面と対向する面のうち、当該可動体の移動方向に対する長さの半分以上を占める面域と常時対向可能となるように、前記ガイドレールの上面および両側面に対して複数個整列して配することが好ましい。
【0012】
なお、前記吸引部は、磁気吸引部材と永久磁石でなり、前記磁気吸引部材は、前記ガイドレールの上面に、当該ガイドレールの延出方向と直交する方向に対する幅寸法の略中央部位へ前記延出方向に沿って一直線状に配し、前記永久磁石は、前記可動体が前記ガイドレールの上面と対向する面に、前記磁気吸引部材と対向可能に配する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る静圧気体軸受直線案内装置によれば、可動体をガイドレールに対して浮上させるための圧縮空気を当該ガイドレールから噴出させることで、可動体をチューブレス構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の要部断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の全体側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置のガイドレールの延出方向に対する端面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置を垂直方向の上方から示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置を垂直方向の下方から示す平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の要部断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置の全体側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置のガイドレールの延出方向に対する端面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置を垂直方向の上方から示す平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置を垂直方向の下方から示す平面図である。
【図11】従来の静圧気体軸受直線案内装置のガイドレールの延出方向に対する端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置(以下、直線案内装置ともいう)について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明に係る静圧気体軸受直線案内装置は、主として精密形状測定機などにおいて、試料、工具や検出器などを移動させる際に用いられる場合を一例として想定するが、その用途はこれに限定されるものではない。例えば、高精度な工作機械、加工装置、検査装置、および半導体製造装置などにおける試料等の移動用などとしても適用することが可能である。
【0016】
図1から図5には、本発明の第1実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置が示されている。かかる直線案内装置は、所定方向に延出し、基台(図示しない)に固定されるガイドレール2と、当該ガイドレール2に跨設され、その延出方向に沿って往復移動可能な可動体4と、圧縮空気を噴出して前記可動体4を前記ガイドレール2に対して浮上させ、当該可動体4を非接触に支持する静圧気体軸受部6と、磁気吸引力により前記可動体4を前記ガイドレール2に引き寄せる吸引部8とを備えている。
【0017】
ガイドレール2は、可動体4を往復移動させる方向へ直線状に延出した略直方体状をなしており、前記基台の上面(垂直方向(図1から図3においては、上下方向)の上方へ向く面)に対して所定の固定部材により固定されている。本実施形態においては、図5に示すように、ガイドレール2の底面2aに固定用のねじ穴2bを形成し、当該ねじ穴2bへ前記基台を介してねじを螺合させることで、ガイドレール2が前記基台に締結固定されている。なお、ガイドレール2の前記基台への固定方法は、このようなねじによる締結の他、リベットやビス止め、接着剤による接合、溶接など、任意の方法で構わない。
【0018】
可動体4は、垂直方向受板42と水平方向受板44で構成されている。垂直方向受板42は、可動体4がガイドレール2に跨設された状態で下面45がガイドレール2の上面2cと対向する、略矩形の平板状をなしている。水平方向受板44は、垂直方向受板42の下面45の両端部(可動体4の移動方向と直交する方向(図1および図3においては、左右方向)に対する端部)から当該下面45と略直角をなして延出される一対の略矩形の平板状をなしており、垂直方向受板42と一体的に組み付けられ、可動体4がガイドレール2に跨設された状態で内面46がガイドレール2の側面2dと対向している。
本実施形態においては、図1に示すように、垂直方向受板42の前記両端部には、当該垂直方向受板42を垂直方向に貫通するボルト孔47が穿孔されており、水平方向受板44には、当該ボルト孔47と連通するボルト穴48が形成されている。そして、連通するボルト孔47およびボルト穴48へボルト(一例として、六角穴付ボルト)10を螺合させることで、垂直方向受板42と水平方向受板44が一体的に組み付けられている。この場合、ボルト孔47は、ボルト10の頭部を固定する(埋め込む)ための座ぐり付きの孔として穿孔されている。これにより、垂直方向受板42と水平方向受板44をボルト10で締結固定した状態であっても、当該ボルト10の頭部がボルト孔47から突出せず、垂直方向受板42の上面(すなわち、可動体4の上面)43を略平坦状に保つことができる。なお、垂直方向受板42と水平方向受板44の固定方法は、このようなボルト10による締結の他、リベットやビス止め、接着剤による接合、溶接など、任意の方法で構わない。また、垂直方向受板42と水平方向受板44を別体構成ではなく、一体構成とすることも想定可能である。
【0019】
静圧気体軸受部(空気噴出部)6は、ガイドレール2に配され、可動体4へ向けて圧縮空気を噴出させる。本実施形態において、静圧気体軸受部6は、多孔質部材でなり、ガイドレール2の表面のうち、垂直方向の上面2cおよび延出方向に沿った両側面2dの3面から、当該3面2c,2dと可動体4が対向する面である垂直方向受板42の下面45および水平方向受板44の内面46へ向けて圧縮空気を噴出させるように配されている。
静圧気体軸受部6を構成する多孔質部材は円板状をなしており、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dに当該多孔質部材の円板形態(形状、径寸法および肉厚)に対応して形成された穴部20,21へ埋設されている。なお、静圧気体軸受部(多孔質部材)6とガイドレール2は、静圧気体軸受部(多孔質部材)6を穴部20,21へ埋設した状態で一体研削し、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の肉厚(別の捉え方をすれば、穴部20,21の深さ)を調整することで、穴部20,21から露出される静圧気体軸受部(多孔質部材)6の円板面がガイドレール2の上面2cおよび両側面2dとそれぞれ面一となるように仕上げられている。これにより、静圧気体軸受部(多孔質部材)6が穴部20,21から突出することがなく、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dを略平坦状に保ち、可動体4をガイドレール2に沿って移動させる際の障害となることを防止している。
【0020】
なお、静圧気体軸受部(多孔質部材)6は、可動体4がガイドレール2の上面2cおよび両側面2dと対向する面(垂直方向受板42の下面45と水平方向受板44の内面46)のうち、各面45,46の可動体4の移動方向に対する長さ(図2、図4および図5における左右方向に対する長さ(以下、可動体全長という))の半分以上を占める面域と常時対向可能となるように、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dに対して複数個整列して配することが好ましい。すなわち、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の外径寸法と配設間隔は、可動体4がガイドレール2の延出方向のいずれに位置付けられていても、可動体全長に対して静圧気体軸受部(多孔質部材)6の長さ(例えば、図2に示す状態においては、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の外径寸法の略5倍の長さに相当)が、最低でも当該可動体全長の半分以上を占めて可動体4の下面45および内面46とそれそれ対向するように設定すればよい。
これにより、静圧気体軸受部(多孔質部材)6から圧縮空気を可動体4の下面45および内面46へ向けて噴出させた際、当該可動体4をガイドレール2に対して安定して浮上させることができるとともに、当該ガイドレール2に沿って移動させる際の安定性も維持することができる。なお、このような可動体4の移動安定性の観点からは、可動体4の下面45および内面46と静圧気体軸受部(多孔質部材)6とが対向する面長さの可動体全長に占める割合(以下、可動体4と静圧気体軸受部6との対向割合という)はできるだけ長い方が好ましい。
【0021】
一例として、本実施形態においては、ガイドレール2の上面2cの両側面2dに沿った両端部にそれぞれ9個の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を延出方向へ略等間隔で1列ずつ(合計2列)配するとともに、当該ガイドレール2の両側面2dにそれぞれ9個の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を延出方向へ略等間隔(前記上面2cに配した各列と同一間隔)で1列ずつ配した構成(ガイドレール2全体で、4列で合計36個の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を配した構成)としている(図2、図4および図5)。ただし、可動体4と静圧気体軸受部6との対向割合が可動体全長の半分以上となっていれば、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の配設数、外径寸法、および配設間隔は、任意に設定することが可能である。
【0022】
また、ガイドレール2には、静圧気体軸受部(多孔質部材)6に対して圧縮空気を供給するためにその内部を延出方向へ貫通し、当該延出方向の両端面2eにおいて開口(以下、当該開口を軸受給気口31という)する通し孔(同、軸受給気主孔という)30が形成されている。さらに、軸受給気主孔30と静圧気体軸受部(多孔質部材)6とを連通させるために、当該軸受給気主孔30から枝分かれし、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dに配された各静圧気体軸受部(多孔質部材)6へ向けて延出する枝孔(以下、軸受給気枝孔という)34が形成されている。
【0023】
一例として、本実施形態においては、ガイドレール2の一方(一例として、図1の左側)の側面2d(22)寄りに当該ガイドレール2の内部を延出方向へ貫通する軸受給気主孔30(32)と、他方(一例として、同図の右側)の側面2d(23)寄りに当該ガイドレール2の内部を延出方向へ貫通する軸受給気主孔30(33)の2本の軸受給気主孔30(32,33)を延出方向(貫通方向)へ平行に、かつ垂直方向に対して同一高さで形成した構成としている。そして、ガイドレール2の側面22寄りの軸受給気主孔32から枝分かれし、側面22および上面2cの当該側面22寄りに配された各静圧気体軸受部(多孔質部材)6へ向けて1本ずつ、合計18本の軸受給気枝孔34(35)を延出させている。同様に、ガイドレール2の側面23寄りの軸受給気主孔33から枝分かれし、側面23および上面2cの当該側面23寄りに配された各静圧気体軸受部(多孔質部材)6へ向けて1本ずつ、合計18本の軸受給気枝孔34(36)を延出させている。
【0024】
この場合、各軸受給気主孔30(32,33)はいずれも同一径寸法(同一孔径)に設定されているとともに、各軸受給気枝孔34(35,36)もすべて同一径寸法(同一孔径)に設定されている。また、各軸受給気枝孔34(35,36)の孔径は、軸受給気主孔30(32,33)の孔径よりも小寸に設定されている。軸受給気主孔30(32,33)および軸受給気枝孔34(35,36)の孔径をこのような設定とすることで、ガイドレール2の上面2cおよび側面2d(22,23)に配された静圧気体軸受部(多孔質部材)6に対し、均一の所定圧で圧縮空気を供給(給気)することができる。なお、軸受給気主孔30には、軸受給気口31を介して所定の供給源(図示しない)から圧縮空気を送出させる。その際、ガイドレール2の両端面2eに開口する軸受給気口31のうち、いずれか一方、もしくは双方から軸受給気主孔30に対し、前記供給源から送出された圧縮空気を給気すればよい。いずれか一方の端面2eの軸受給気口31からのみ軸受給気主孔30に対して圧縮空気を給気する場合、他方の端面2eの軸受給気口31は、所定の封止部材で塞いだ状態にすればよい。
【0025】
このように、本実施形態によれば、可動体4をガイドレール2に対して浮上させるための圧縮空気を当該ガイドレール2に配した静圧気体軸受部(多孔質部材)6から可動体4へ向けて噴出させることで、従来のように空気噴出部である静圧気体軸受部を可動体4に配する必要がなく、当該可動体4をチューブレス構造とすることができる。
なお、前記圧縮空気供給源と軸受給気主孔30とは、軸受給気口31に連結した配管などで連通させればよいが、かかる配管などで連通させた場合であっても、ガイドレール2は前記基台に固定して静置されているため、当該配管の引き回しや連結などの手間を従来よりも軽減させることができる。また、かかる配管が位置変動を繰り返すことがないため、従来よりも配管の長寿命化を図ることができ、漏気の防止や可動体4の移動精度の向上を図ることも可能となる。
【0026】
吸引部8は、磁気吸引部材8aと永久磁石8bでなり、磁気吸引部材8aは、ガイドレール2の上面2cに、当該ガイドレール2の延出方向と直交する方向(図1および図3においては左右方向、つまり短尺方向)に対する幅寸法の略中央部位へ前記延出方向(図4においては、左右方向、つまり長尺方向)に沿って一直線状に配されている。これに対し、永久磁石8bは、可動体4がガイドレール2の上面2cと対向する面(垂直方向受板42の下面45)に、磁気吸引部材8aと対向可能に配されている。
【0027】
吸引部8を構成する磁気吸引部材8aは、磁性体金属、永久磁石やヨークなどからなり、その長尺方向の寸法がガイドレール2の延出方向の寸法と略同寸の平板状をなしており、ガイドレール2の上面2cに当該磁気吸引部材8aの平板形態(形状、幅寸法や肉厚)に対応して形成された溝部24へ埋設されている。なお、磁気吸引部材8aの肉厚と溝部24の深さは、磁気吸引部材8aを溝部24へ埋設した状態で、当該溝部24から露出される磁気吸引部材8aの平板面がガイドレール2の上面2cと略面一となるように相互に設定されている。これにより、磁気吸引部材8aが溝部24から突出することがなく、ガイドレール2の上面2cを略平坦状に保ち、可動体4をガイドレール2に沿って移動させる際の障害となることを防止している。また、ガイドレール2には、溝部24と連通するとともに、当該ガイドレール2を垂直方向に貫通して底面2aに開口するボルト孔2hが穿孔されており、磁気吸引部材8aには、当該ボルト孔2hと連通するボルト穴80が形成されている。そして、連通するボルト孔2hおよびボルト穴80へボルト(一例として、六角穴付ボルト)12を螺合させることで、磁気吸引部材8aを溝部24に対して位置決め固定している。この場合、ボルト孔2hは、ボルト12の頭部を固定する(埋め込む)ための座ぐり付きの孔として穿孔されている。これにより、磁気吸引部材8aをボルト12で締結固定した状態であっても、当該ボルト12の頭部がボルト孔2hから突出することがなく、ガイドレール2の底面2a(前記基台に対する固定面)を略平坦状に保ち、ガイドレール2を基台に対して固定する際の障害となることを防止している。
【0028】
一方、吸引部8を構成する永久磁石8bは円板状をなしており、可動体4の垂直方向受板42の下面45に当該永久磁石8bの円板形態(形状、径寸法および肉厚)に対応して形成された穴部49へ埋設されている。なお、永久磁石8bの肉厚と穴部49の深さは、永久磁石8bを穴部49へ埋設した状態で、当該穴部49から露出される永久磁石8bの円板面が垂直方向受板42の下面45と略面一となるように相互に設定されている。これにより、永久磁石8bが穴部49から突出することがなく、垂直方向受板42の下面45を略平坦状に保ち、可動体4がガイドレール2に沿って移動する際の障害となることを防止している。この場合、例えば、螺旋状の溝部(一例として、雄ねじ部)を穴部49から永久磁石8bへ向けて露出させるようなボルト14を可動体4の垂直方向受板42に埋設し、永久磁石8bに当該ボルト14の溝部と螺合可能な溝部(一例として、雌ねじ部)を有する穴部を形成し、双方の溝部を螺合させる構成とすれば、永久磁石8bを穴部49に対して位置決め固定するとともに、当該永久磁石8bと磁気吸引部材8aとの対向間隔(隙間)を調整し、これらの間で生じさせる磁気吸引力の調整を容易に行うことも可能となる。
一例として、本実施形態においては、可動体4(垂直方向受板42)の下面45の移動方向と直交する方向(図1および図3においては左右方向)に対する幅寸法の略中央部位へ前記移動方向(図4においては、左右方向)の両側寄りに1つずつ、合計2つの永久磁石8bを配した構成としている。ただし、永久磁石8bの形状や大きさ(径寸法および肉厚)、配設位置や配設数などは、磁気吸引部材8aとの間で発生させる磁気吸引力の大きさなどに応じて任意に設定することが可能である。
【0029】
このように、磁気吸引部材8aと永久磁石8bをガイドレール2と可動体4に対向可能に配し、これらの磁気吸引部材8aおよび永久磁石8bのうちいずれか一方をS極、他方をN極とすることで、磁石部8からの磁気吸引力(磁気吸引部材8aと永久磁石8bとの間に作用する磁気吸引力)を可動体4に対して作用させることができ、当該可動体4をガイドレール2へ引き寄せることができる。
そして、ガイドレール2に静圧気体軸受部(多孔質部材)6を配するとともに、吸引部8の磁気吸引部材8aを配し、当該磁気吸引部材8aと対向可能に吸引部8の永久磁石8bを配することで、静圧気体軸受部(多孔質部材)6からの圧縮空気による可動体4のガイドレール2に対する浮上力と、当該可動体4をガイドレール2へ引き寄せる磁石部8からの磁気吸引力(磁気吸引部材8aと永久磁石8bとの間に作用する磁気吸引力)とを調整してバランスを図ることができる。これにより、可動体4をガイドレール2に対して浮上させつつ、当該ガイドレール2に沿って往復移動させることが可能となる。その際、可動体4の往復移動および停止は、所定の位置決め機構(例えば、ボールねじ機構、ベルト機構、およびリニアモータ機構など)によって行えばよい。
【0030】
なお、上述した第1実施形態(図1から図5)においては、静圧気体軸受部(多孔質部材)6を円板状とし、当該円板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を複数個(一例として、9個)、ガイドレール2の上面2cに2列、各側面2d(22,23)に1列ずつ合計4列、延出方向へ略等間隔で配した構成としているが、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の構成はこれに限定されない。例えば、図6から図10に示す本発明の第2実施形態に係る構成とすることで、より一層、可動体4のガイドレール2に対する浮上量を安定させることが可能となるとともに、ガイドレール2に対してより一層高度な真直度で可動体4を往復移動させることが可能となる。以下、本発明の第2実施形態に係る静圧気体軸受直線案内装置について説明する。なお、本実施形態に係る直線案内装置の基本的な構成は、上述した第1実施形態に係る直線案内装置(図1から図5)と同様であり、同一もしくは類似の構成部材については、図面上で同一符号を付してその説明を省略もしくは簡略化し、以下においては、本実施形態に係る直線案内装置(具体的には、静圧気体軸受部(多孔質部材)6)に特有の構成についての説明に止める。
【0031】
本実施形態において、静圧気体軸受部6を構成する多孔質部材は、その長尺方向の寸法がガイドレール2の延出方向の寸法と略同寸の平板状をなしており、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dに当該多孔質部材の平板形態(形状、短尺方向に対する幅寸法、肉厚)に対応して形成された穴部20,21へ埋設されている。なお、静圧気体軸受部(多孔質部材)6とガイドレール2は、静圧気体軸受部(多孔質部材)6を穴部20,21へ埋設した状態で一体研削し、静圧気体軸受部(多孔質部材)6の肉厚(別の捉え方をすれば、穴部20,21の深さ)を調整することで、穴部20,21から露出される静圧気体軸受部(多孔質部材)6の平板面がガイドレール2の上面2cおよび両側面2dとそれぞれ面一となるように仕上げられている。これにより、静圧気体軸受部(多孔質部材)6が穴部20,21から突出することがなく、ガイドレール2の上面2cおよび両側面2dを略平坦状に保ち、可動体4をガイドレール2に沿って移動させる際の障害となることを防止していることは、上述した第1実施形態の場合と同様である。
一例として、本実施形態においては、ガイドレール2の上面2cの両側面2dに沿った両端部にそれぞれ平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を延出方向へ1枚ずつ(合計2枚)配するとともに、当該ガイドレール2の両側面2dにそれぞれ同様の平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を延出方向へ1枚ずつ配した構成(ガイドレール2全体で4枚の平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6を配した構成)としている(図6から図10)。ただし、平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6の配設数、短尺方向に対する幅寸法は、任意に設定することが可能である。
【0032】
このように、静圧気体軸受部(多孔質部材)6を長尺方向の寸法がガイドレール2の延出方向の寸法と略同寸の平板状とすることで、可動体4がガイドレール2の延出方向のいずれに位置付けられていても、可動体4とガイドレール2との対向割合を可動体全長の半分以上とすることができるのみならず、可動体4の下面45および内面46に対し、可動体全長に亘って隙間なく静圧気体軸受部(多孔質部材)6から圧縮空気を噴出させることができる。したがって、上述した第1実施形態よりも、可動体4をガイドレール2に対してより安定して浮上させること(浮上量を安定させること)が可能となるとともに、当該ガイドレール2に沿って移動させる際の安定性も高めることが可能となる。結果として、ガイドレール2に対してより一層高度な真直度で可動体4を往復移動させることも可能となる。
【0033】
また、本実施形態においては、ガイドレール2の上面2cの穴部20および両側面2dの穴部21よりも小さな平板状をなす溝部(以下、給気連通溝という)25,26が各穴部20,21と連通するように、これらの穴部20,21よりもガイドレール2の内方にそれぞれ形成されている。このように給気連通溝25,26を形成することで、軸受給気枝孔34(35,36)から各静圧気体軸受部(多孔質部材)6に対して供給(給気)した圧縮空気を給気連通溝25,26で流動させることができる。これにより、かかる圧縮空気を給気連通溝25,26を介して各静圧気体軸受部(多孔質部材)6の全体にそれぞれ略均一の所定圧で供給(給気)させることができる。なお、本実施形態においては、軸受給気主孔30(32,33)から枝分かれし、ガイドレール2の上面2cおよび側面2d(22,23)に配した4枚の平板状の静圧気体軸受部(多孔質部材)6へ向けて9本ずつ、合計36本の軸受給気枝孔34(35,36)を延出させた構成としているが、軸受給気枝孔34(35,36)の本数は特に限定されず、任意に設定することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
2 ガイドレール
4 可動体
6 静圧気体軸受部(多孔質部材)
8 吸引部
8a 磁気吸引部材
8b 永久磁石
42 垂直方向受板
44 水平方向受板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延出し、基台に固定されるガイドレールと、
当該ガイドレールに跨設され、その延出方向に沿って往復移動可能な可動体と、
圧縮空気を噴出して前記可動体を前記ガイドレールに対して浮上させ、当該可動体を非接触に支持する静圧気体軸受部と、
磁気吸引力により前記可動体を前記ガイドレールに引き寄せる吸引部とを備え、
前記静圧気体軸受部からの圧縮空気による前記可動体の前記ガイドレールに対する浮上力と、前記可動体を前記ガイドレールへ引き寄せる前記吸引部からの磁気吸引力とを調整してバランスを図り、前記可動体を前記ガイドレールに対して浮上させつつ、当該ガイドレールに沿って往復移動させる静圧気体軸受直線案内装置であって、
前記静圧気体軸受部は、前記ガイドレールに配され、前記可動体へ向けて圧縮空気を噴出させることを特徴とする静圧気体軸受直線案内装置。
【請求項2】
前記静圧気体軸受部は、多孔質部材でなり、前記ガイドレールの表面のうち、垂直方向の上面および延出方向に沿った両側面の3面から、当該3面と前記可動体が対向する面へ向けて圧縮空気を噴出させるように配されていることを特徴とする請求項1に記載の静圧気体軸受直線案内装置。
【請求項3】
前記多孔質部材は、前記可動体が前記ガイドレールの上面および両側面と対向する面のうち、当該可動体の移動方向に対する長さの半分以上を占める面域と常時対向可能となるように、前記ガイドレールの上面および両側面に対して複数個整列して配されていることを特徴とする請求項2に記載の静圧気体軸受直線案内装置。
【請求項4】
前記吸引部は、磁気吸引部材と永久磁石でなり、
前記磁気吸引部材は、前記ガイドレールの上面に、当該ガイドレールの延出方向と直交する方向に対する幅寸法の略中央部位へ前記延出方向に沿って一直線状に配され、
前記永久磁石は、前記可動体が前記ガイドレールの上面と対向する面に、前記磁気吸引部材と対向可能に配されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の静圧気体軸受直線案内装置。
【請求項1】
所定方向に延出し、基台に固定されるガイドレールと、
当該ガイドレールに跨設され、その延出方向に沿って往復移動可能な可動体と、
圧縮空気を噴出して前記可動体を前記ガイドレールに対して浮上させ、当該可動体を非接触に支持する静圧気体軸受部と、
磁気吸引力により前記可動体を前記ガイドレールに引き寄せる吸引部とを備え、
前記静圧気体軸受部からの圧縮空気による前記可動体の前記ガイドレールに対する浮上力と、前記可動体を前記ガイドレールへ引き寄せる前記吸引部からの磁気吸引力とを調整してバランスを図り、前記可動体を前記ガイドレールに対して浮上させつつ、当該ガイドレールに沿って往復移動させる静圧気体軸受直線案内装置であって、
前記静圧気体軸受部は、前記ガイドレールに配され、前記可動体へ向けて圧縮空気を噴出させることを特徴とする静圧気体軸受直線案内装置。
【請求項2】
前記静圧気体軸受部は、多孔質部材でなり、前記ガイドレールの表面のうち、垂直方向の上面および延出方向に沿った両側面の3面から、当該3面と前記可動体が対向する面へ向けて圧縮空気を噴出させるように配されていることを特徴とする請求項1に記載の静圧気体軸受直線案内装置。
【請求項3】
前記多孔質部材は、前記可動体が前記ガイドレールの上面および両側面と対向する面のうち、当該可動体の移動方向に対する長さの半分以上を占める面域と常時対向可能となるように、前記ガイドレールの上面および両側面に対して複数個整列して配されていることを特徴とする請求項2に記載の静圧気体軸受直線案内装置。
【請求項4】
前記吸引部は、磁気吸引部材と永久磁石でなり、
前記磁気吸引部材は、前記ガイドレールの上面に、当該ガイドレールの延出方向と直交する方向に対する幅寸法の略中央部位へ前記延出方向に沿って一直線状に配され、
前記永久磁石は、前記可動体が前記ガイドレールの上面と対向する面に、前記磁気吸引部材と対向可能に配されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の静圧気体軸受直線案内装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−163151(P2012−163151A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23538(P2011−23538)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]