説明

静電センサの製造方法及び保護フィルム付静電センサ

【課題】本発明は、表面に積層された保護フィルムを容易に、かつ安定して剥離することが可能な静電センサ及び静電センサの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】透明電極層が形成された透明基材21を有する静電センサ1の製造方法であって、
a)前記透明基材21と支持基材13とを光学粘着層15を介して貼り合わせた積層部材20を用意して、センサ外形形状11の外周の前記透明基材21及び前記光学粘着層15を除去して、前記センサ外形形状11よりも外周に延出する延出部16を前記支持基材13に形成する工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電センサの製造方法及び保護フィルム付静電センサに関し、特に、表面を保護するための保護フィルムを容易に剥離することが可能な静電センサの製造方法及び保護フィルム付静電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯用の電子機器などの表示部として、表示画像のメニュー項目やオブジェクトを直接指などで操作して座標入力を行うための透光型入力装置が用いられている。このような入力装置は、液晶パネル等の表示装置に重ねて配置されて電子機器の表示部等に組み込まれている。このような入力装置の動作方式には種々のものが挙げられるが、その中で静電容量式のタッチパネルが多く用いられている。
【0003】
静電容量式のタッチパネルには、静電容量の変化を検出することができる静電センサが用いられており、静電センサの表面に保護パネルや加飾フィルムが貼り合わされて使用される。
【0004】
図7(a)〜図7(c)には、従来の静電センサ101における製造方法の課題を説明するための工程図を示す。図7の各左図には、各工程における静電センサ101の斜視図を示し、各右図には図7(a)のVII−VII線に対応する箇所で切断したときの断面図を示す。
【0005】
従来の静電センサ101の製造方法は、まず、図7(a)に示すように光学粘着層125を介して貼り合わされた第1透明基材121と第2透明基材131、及び両面粘着テープ112を用意する。第1透明基材121及び第2透明基材131のセンサ外形形状111の内方には、静電容量を検出するための透明電極層(図示しない)が形成されている。図7(b)に示す工程において、両面粘着テープ112の一方の面に貼り付けられた剥離フィルム114を剥離して光学粘着層115を露出させて、第1透明基材121の表面に光学粘着層115及び支持基材113を貼り合わせる。このようにして積層部材120が形成される。そして、この積層部材120をセンサ外形形状111に切断する。これにより、センサ外形形状111の外周が分離されて、図7(c)に示すように、静電センサ101が形成される。
【0006】
近年、静電センサの用途の多様化や製造工程の違いによって、保護パネルや加飾フィルム等の表面部材を貼り付けずに、図7(c)に示すように、透明基材121に支持基材113を積層した状態で輸送される場合や次の工程へと運搬される場合が増加している。この場合、支持基材113は表面を保護する保護フィルムとしての機能を兼ねることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−113373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7(c)に示す静電センサ101は、その後、表面の支持基材113が光学粘着層115から剥離されて、保護パネルや加飾フィルムあるいは電子機器の筐体などと貼り合わされて、電子機器の表示部上の入力部として使用される。
【0009】
しかしながら、支持基材113を剥離する場合に、光学粘着層115と支持基材113との粘着力が強いために支持基材113が光学粘着層115側に残留してしまうという問題が生じる場合がある。また、第1透明基材121及び第2透明基材131は薄いフィルム状材料であり、支持基材113と光学粘着層115との粘着力により各透明基材も引っ張られてしまい、形状の歪みや損傷が生じる場合がある。そして、外観品質の劣化や、損傷が大きい場合には品質不良となり製造コストが増大するという問題が生じてしまう。
【0010】
さらに、静電センサ101を輸送する場合、あるいは後の工程に運搬する場合において、剥離を容易にするために別途剥離用テープをつける、あるいは、あらかじめ支持基材113を剥離して別の剥離容易な保護フィルムを貼り付けて出荷することが要求される場合がある。この場合、工程の増加とともに新たな部材が必要となるため、製造コストの増大につながる。
【0011】
この問題を解決するために、支持基材113と光学粘着層115との結合力を低下させると、図7(a)〜図7(c)の工程において不必要な剥離が発生して、支持基材113の保護機能が低下する場合がある。また、図7(a)の工程において、所望の支持基材113とは反対側の剥離フィルム114が剥離されてしまい、両面粘着テープ112が使用できなくなるという問題が生じてしまう。
【0012】
また、特許文献1には、各透明基材、粘着層及び保護パネル等の部材を積層した後に、一体でセンサ外形形状に切断する工程が開示されている。この場合、全積層部材の合計厚みが厚くなってしまい、プレス加工により切断すると座屈が生じてセンサ外形形状が歪んでしまうという問題が生じる。
【0013】
本発明は、上記課題を解決し、表面に積層された保護フィルムを容易に剥離することが可能な静電センサの製造方法及び保護フィルム付き静電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の静電センサの製造方法は、透明電極層が形成された透明基材を有する静電センサの製造方法であって、
a)前記透明基材と支持基材とを光学粘着層を介して貼り合わせた積層部材を用意して、センサ外形形状の外周の前記透明基材及び前記光学粘着層を除去して、前記センサ外形形状よりも外周に延出する延出部を前記支持基材に形成する工程を有することを特徴とする。
【0015】
これによれば、センサ外形形状よりも外周に延出する延出部を形成することができる。そして、この延出部を把持して容易に支持基材を剥離することができる。また、延出部を把持することにより、支持基材を剥離する方向や剥離力を一定に制御しやすくなるため、安定して剥離することができる。したがって、剥離工程において光学粘着層や透明基材が支持基材側に引っ張られて損傷を受けることを防止できるため、外観不良や品質不良等の発生を抑制して製造コストを低減させることができる。
【0016】
前記a)の工程において、
b)前記透明基材と前記支持基材とを前記光学粘着層を介して貼り合わせた積層部材を用意して、前記透明基材及び前記光学粘着層を、センサ外形形状に切断する工程と、
c)前記センサ外形形状の外周の前記透明基材及び前記光学粘着層を剥離して、前記センサ外形形状に切断された前記透明基材及び前記光学粘着層よりも外周に延出する延出部を前記支持基材に形成する工程と、を有することが好適である。
【0017】
これによれば、透明基材と光学粘着層とをセンサ外形形状に切断する工程と、切断されたセンサ外形形状の外周の透明基材及び光学粘着層を剥離することにより、簡単な工程で確実にセンサ形状よりも外周に延出する延出部を形成することができる。
【0018】
前記b)の工程において、前記センサ外形形状の外周の一部に延出する延出部領域を設定して、少なくとも前記延出部領域と前記センサ外形形状とが平面視で隣接する境界部について、前記透明基材及び前記光学粘着層を切断する工程と、前記支持基材、前記光学粘着層、及び前記透明基材を、前記延出部領域と前記センサ外形形状とを合わせた支持基材外形形状に切断する工程と、を有することが好ましい。これによれば、簡単な工程でセンサ外形形状の外周の一部に延出する延出部をタブ状に形成することができる。支持基材を剥離する場合にタブを把持して剥離することができるため、一定の方向に一定の剥離力に制御して支持基材を剥離することができる。したがって、容易にかつ安定して剥離することが可能であり、また、外観不良や品質不良の発生を抑制して製造コストを低減させることができる。
【0019】
前記a)の工程又は前記c)の工程の後に、
d)前記静電センサを固定して、前記延出部を把持して前記支持基材を前記光学粘着層から剥離する工程を有することが好ましい。これによれば、支持基材を容易に、かつ安定して剥離して光学粘着層を露出させることができる。また、自動機でも容易に剥離可能であり、作業者が剥離する場合においても特別な熟練を要しないことから、生産性を向上させることができる。
【0020】
前記d)の工程の後に、
e)表面部材と前記透明基材とを、前記光学粘着層を介して貼り合わせる工程を有することが好適である。こうすれば、表面部材と一体に電子機器の表示部分に組み込むことが可能となる。
【0021】
前記b)の工程において、レーザ加工により切断することが好ましい。これによれば、センサ外形形状を精度良く加工して切断することができる。
【0022】
前記b)の工程において、プレス加工により切断することも可能である。これによれば、センサ外形形状切断加工における加工時間を短くして、生産性を向上させることができる。
【0023】
本発明の保護フィルム付静電センサは、静電容量値の変化を検出する透明電極層と、前記透明電極層が形成された透明基材とを有する静電センサと、保護フィルムとなる支持基材と、を有し、前記透明基材に、光学粘着層を介して前記支持基材が貼り合わされており、前記支持基材には、前記透明基材及び前記光学粘着層よりも外周に延出する延出部が形成されていることを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、延出部を把持して容易に支持基材を剥離することができる。また、延出部を把持することにより、支持基材を剥離する方向や剥離力を一定に制御しやすくなるため、安定して剥離することができる。したがって、剥離工程において光学粘着層や透明基材が支持基材側に引っ張られて損傷を受けることを防止できるため、外観不良や品質不良等の発生を抑制して製造コストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の静電センサの製造方法及び保護フィルム付静電センサによれば、延出部を把持して容易に支持基材を剥離することができる。また、延出部を把持することにより、支持基材を剥離する方向や、剥離力を一定に制御しやすくなるため、安定して剥離することができる。したがって、剥離工程において光学粘着層や透明基材が支持基材側に引っ張られて損傷を受けることを防止できるため、外観不良や品質不良等の発生を抑制して製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態における保護フィルム付静電センサの分解斜視図である。
【図2】第1の実施形態における静電センサの製造方法を示す工程図である。
【図3】第1の実施形態における静電センサの製造方法を示す工程図である。
【図4】第2の実施形態における保護フィルム付静電センサの分解斜視図である。
【図5】第2の実施形態における静電センサの製造方法を示す工程図である。
【図6】第2の実施形態における静電センサの製造方法を示す工程図である。
【図7】従来例の静電センサの製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1の実施形態>
図1には、第1の実施形態における保護フィルム付静電センサ1の分解斜視図を示す。なお、各図面の寸法は、見やすくするために適宜変更して示している。
【0028】
図1に示すように、第1の実施形態の静電センサ1は、第1透明基材21、第2透明基材31、及び支持基材13を有して構成されている。第1透明基材21と第2透明基材31とは光学粘着層25を介して貼り合わされている。また、第1透明基材21の表面には光学粘着層15を介して支持基材13が貼り合わされている。
【0029】
第1透明基材21には、静電容量変化を検出するための第1透明電極層22が形成されている。第1透明電極層22は、Y1−Y2方向に延出する複数の透明電極層から構成されており、この複数の透明電極層がX1−X2方向に間隔を設けて配列されている。そして、第1透明電極層22のY1方向端部には第1引出電極層23が接続されており、第1透明電極層22と第1接続部24とは第1引出電極層23を介して電気的に接続されている。
【0030】
また、第2透明基材31には、同様に第2透明電極層32が形成されている。第2の透明電極層32は、X1−X2方向に延出する複数の透明電極層から構成されており、互いにY1−Y2方向に間隔を設けて配列されている。第2透明電極層32のX1方向端部、またはX2方向端部には第2引出電極層33が接続されており、第2透明電極層32と第2接続部34とは第2引出電極層33を介して電気的に接続されている。第1接続部24及び第2接続部34にはフレキシブルプリント基板(図示しない)が接続されて、入力位置情報が出力される。
【0031】
第1透明基材21と第2透明基材31とが、光学粘着層25を介して積層されることにより、第1透明電極層22と第2透明電極層32との間で、静電容量が発生する。静電センサ1は、指などを近づけたときの静電容量の変化を検出することにより、入力位置情報を出力することが可能となる。
【0032】
第1透明基材21及び第2透明基材31には、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明樹脂フィルムを用いることができ、その厚みは50μm〜200μm程度に形成されている。
【0033】
第1透明電極層22及び第2透明電極層32は、可視光領域で透光性を有するITO(Indium Tin Oxide)、SnO、ZnO等の透明導電材料を用いて、スパッタ法や蒸着法により成膜される。その厚みは、0.01μm〜0.05μm、例えば0.02μm程度で形成される。また、第1透明電極層22及び第2透明電極層32の製造方法は特に限定されるものではない。スパッタ法や蒸着法以外の方法では、あらかじめ透明電極膜が形成されたフィルムを用意して透明電極膜のみを基材に転写する方法や、液状の原料を塗布する方法により成膜することも可能である。
【0034】
本実施形態の静電センサ1において、第1透明基材21の入力面側に光学粘着層15を介して支持基材13が貼り合わされている。支持基材13は、製造工程における取り扱いや運搬等において、静電センサ1に異物、汚れ等が付着することを防止する保護フィルム12として設けられている。
【0035】
光学粘着層15及び光学粘着層25には、アクリル系両面テープを用いることができ、その厚みは50μm〜100μm程度である。アクリル系両面テープは、アクリル系光学粘着層の両面が1対の支持基材によって挟まれた構成となっている。アクリル系両面テープを使用する場合には、その一方の面に貼り合わされた支持基材を剥離して、光学粘着層を露出させて、例えば第1透明基材21の表面に貼り付けることができる。本実施形態の静電センサ1においては、アクリル系両面テープの他方の面に貼り合わされた支持基材13は、光学粘着層15と一緒に第1透明基材21に貼り合わされる。そして、支持基材13は、上述のように静電センサ1の表面を保護するための保護フィルム12としての機能も兼ねることになる。
【0036】
本実施形態において、支持基材13(保護フィルム12)は、センサ外形形状11よりも平面視で大きい面積を有するように形成されている。すなわち、図1に示すように、支持基材13は、第1透明基材21、第2透明基材31、光学粘着層15、25よりも外周に延出する延出部16を有して構成されている。
【0037】
静電センサ1は、電子機器の表示部上に組み込まれて使用されることになるため、後の工程で支持基材13(保護フィルム12)が剥離されて、光学粘着層15の表面に保護パネルや加飾フィルム等の表面部材が貼り合わされる。図1に示すように、本実施形態の静電センサ1は、延出部16が設けられていることにより、延出部16を把持して容易に支持基材13を剥離することができるため、容易に光学粘着層15を露出させることができる。また、延出部16を把持して、所望の方向に剥離することができ、また、剥離力を制御することが容易になるため、支持基材13を安定して剥離することができる。これにより、支持基材13の剥離工程において、第1透明基材21、第2透明基材31、光学粘着層15、及び光学粘着層25が支持基材13側に引っ張られて、形状の歪みの発生や損傷を受けることを防止できるため、外観不良や品質不良等の発生を抑制して製造コストを低減することができる。
【0038】
<第1の実施形態の製造方法>
図2及び図3には、第1の実施形態における静電センサ1の製造方法を説明するための工程図を示す。図2(a)〜図2(c)の各左図には第2透明基材31側から見た時の静電センサ1の平面図を示し、各右図には、図2(a)のII−II線に沿って切断した時の静電センサ1の断面図を示す。
【0039】
まず図2(a)の工程では、積層部材20を用意する。積層部材20は、第1透明基材21と第2透明基材31と支持基材13とを有して構成されており、第1透明基材21と第2透明基材31とが光学粘着層25を介して貼り合わされており、支持基材13と第1透明基材21とが光学粘着層15を介して貼り合わされている。なお、図2(a)各右図では、支持基材13を下側にして示している。また、図2(a)左図に示すように、積層部材20にはセンサ外形形状11が設定されており、第1透明基材21及び第2透明基材31のセンサ外形形状11の内方には、図1で示した各透明電極層、各引出電極層等がそれぞれ形成されている。
【0040】
光学粘着層15及び光学粘着層25には、アクリル系両面テープを用いることができる。アクリル系両面テープとして、アクリル系光学粘着層が1対の支持基材で挟まれて構成されたものを用いることができる。1対の透明基材は、PET等のフィルム状基材の表面にシリコンコーティング等の表面処理を施したものであり、それぞれの剥離性を異ならせるように表面処理方法やPETフィルム厚を変えて形成されている。一般的に、光学粘着層の一方の面には光学粘着層からの剥離が困難な(粘着力が強い)重剥離フィルムが貼り合わされ、他方の面には比較的剥離し易い軽剥離フィルムが貼り合わされて用いられる。これにより、アクリル系両面テープを使用する際に所定の面のフィルム(軽剥離フィルム)から剥離することができる。
【0041】
図2(a)に示す積層部材20は、アクリル系両面テープの軽剥離フィルムを剥離して光学粘着層15を露出させて、第1透明基材21の一方の面に貼り合わされて形成される。したがって、重剥離フィルム(支持基材13)は光学粘着層15とともに第1透明基材21と貼り合わされることになる。支持基材13は、製造工程中に光学粘着層15に異物、汚れ、傷などが付着しないように、また、第1透明基材21及び第2透明基材31を保護する目的で、表面に貼り付けられた状態で図2(b)以下の工程が進められる。
【0042】
図2(b)の工程では、積層部材20のうち光学粘着層15、第1透明基材21、光学粘着層25、及び第2透明基材31について、センサ外形形状11に沿って切断する。すなわち、支持基材13については切断されずセンサ外形形状11の外周部分が残ることになる。切断加工には、レーザによって加工する方法や、金型を用いてプレス加工する方法などがある。切断加工方法は特に限定されるものではないが、レーザ加工によれば精度良く外形形状11を切断することができる。また、加工形状を変更する場合や多品種の生産を行う場合において金型等の作製が不要であるため、製造コストを低減することが可能である。金型を用いたプレス加工では、切断加工が短時間で済むため大量生産に適している。
【0043】
次に、図2(b)の工程で切断されたセンサ外形形状11の外周部分について、光学粘着層15、第1透明基材21、光学粘着層25、及び第2透明基材31を支持基材13から剥離する。これにより、図2(c)に示すように静電センサ1を形成することでできる。図2(a)〜図2(c)に示す製造方法により、センサ外形形状11の外周の第1透明基材21,光学粘着層25、及び第2透明基材31を除去して、センサ外形形状11よりも外周に延出する延出部16を支持基材13に形成することができる。
【0044】
センサ外形形状11の外周部分の剥離においては、各透明基材と各光学粘着層との積層体の合計厚さが支持基材13よりも厚く、また、外周部分の面積がセンサ外形形状11よりも小さいことから、問題なく剥離することが可能である。なお、図2(b)の工程で切断する際には、切断深さを調整して第2透明基材31側からレーザや金型の刃を入れて切断することになる。その切断深さは、光学粘着層15と支持基材13との境界まで切断されていることが好ましいが、製造装置の誤差等により、光学粘着層15の厚み方向の一部が切断されていない場合や、支持基材13の一部まで切断される場合が生じる。これらの場合であっても、各透明基材及び各光学粘着層を支持基材13から問題なく剥離して延出部16を形成することができる。
【0045】
静電センサ1は、最終的には支持基材13が剥離されて、光学粘着層15を介して保護パネルや加飾フィルムなどの表面部材に貼り付けられて使用される。しかし、近年ではサプライチェーンの多様化や、製造工程の違いによって、保護パネルや加飾フィルム等の表面部材を貼り付けずに、支持基材13が貼り付けられた状態で輸送される場合が増加している。この場合、各工程や運搬時に光学粘着層15に異物、汚れ、傷等が付いてしまうことを支持基材13によって防止することができる。すなわち、支持基材13は静電センサ1の表面を保護するための保護フィルム12としての機能を兼ね備えることができる。また、支持基材13が延出部16を有することによって、各透明基材及び各光学粘着層の側面が運搬用の治具や、製造装置等に接触した場合でも延出部16が緩衝材となり、損傷を受けることを抑制することができる。
【0046】
本実施形態の静電センサ1の製造方法によれば、支持基材13の延出部16を容易に形成することができる。また、アクリル系両面テープの一方の面に貼り合わされた重剥離フィルムを、支持基材13として利用することができる。これによれば支持基材13を剥離して新たに別の保護フィルムを新たに貼る工程を省略することができるため、製造コストの低減につながる。
【0047】
図3(a)は、支持基材13を剥離する工程を示す断面図である。まず、図2(c)に示した静電センサ1を吸着ステージ55上に載置して、真空引き等の方法により固定して吸着する。静電センサ1は、第2透明基材31が吸着ステージ55側に面するように載置される。なお、吸着ステージ55には多孔質セラミック材料や、吸引用の加工孔が施された金属板などが用いられる。
【0048】
そして、延出部16について、指または自動機の治具等で把持して、例えば、図3(a)のX1−X2方向のX2方向に剥離する。上述のように、支持基材13は重剥離フィルムであるため、光学粘着層15と支持基材13とは強い粘着力を有している。しかし、図2(a)〜図2(c)の工程で作製した静電センサ1によれば、延出部16を把持して、一定の方向に引っ張ることが容易であり、また所定の剥離力で剥離することが容易であるため、支持基材13を安定して剥離することができる。特に、剥離が開始される部分(例えば光学粘着層15のX1側端部)での剥離のきっかけがスムーズに与えられるため、容易に剥離することができる。これにより、支持基材13が剥離されずに残留する問題や、各透明基材、あるいは光学粘着層15の一部が支持基材13と一緒に引き剥がされて、傷、汚れなどの損傷を受けてしまうことを防止することができる。
【0049】
また、従来例の静電センサ101においては、図7(c)に示すように第1透明基材121及び第2透明基材131と支持基材113は側端面が一致しており、また、支持基材113は薄いフィルム状材料である。そのため、自動機を用いて剥離することが困難であり、作業者が剥離する場合には熟練が必要となる。本実施形態の製造方法によれば、容易に延出部16を形成することができるため、自動機を用いた場合でも延出部16を把持して剥離することが可能となり生産性を向上させることができる。また、作業者が剥離する場合でも、特別な熟練を要せずに不良の発生を低減できるため、製造コストの増大を抑制することができる。
【0050】
そして、図3(b)に示す工程では、露出された光学粘着層15の表面に表面部材50を貼り合わせる。表面部材50は特に限定されるものではなく、樹脂基板やガラス基板、またはこれらの複合部材からなる保護パネルが用いられる。または、樹脂フィルムに加飾印刷が施された加飾フィルムであっても良い。これにより、静電センサ1は表面部材50と貼り合わされて、電子機器の表示部として組み込まれる。
【0051】
以上のように、本実施形態の静電センサ1の製造方法によれば、延出部16を把持して容易に支持基材13を剥離することができる。また、延出部16を把持することにより、支持基材13を剥離する方向や、剥離力を一定に制御しやすくなるため、安定して剥離することができる。したがって、剥離工程において光学粘着層15や第1透明基材21が支持基材13側に引っ張られて損傷を受けることを防止できるため、外観不良や品質不良等の発生を抑制して製造コストを低減させることができる。
【0052】
<第2の実施形態>
図4には、第2の実施形態における保護フィルム付静電センサ2の分解斜視図を示す。第1の実施形態の静電センサ1と同じ部材については同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施形態の静電センサ2において、第1の実施形態の静電センサ1と異なる点は保護フィルム12として設けられた支持基材13の延出部16の形状である。図4に示すように、第1透明基材21、第2透明基材31、光学粘着層15、光学粘着層25については、第1の実施形態と同様の構成のものを用いることができ、第1透明電極層22、第2透明電極層32等の電極パターンも第1の実施形態の静電センサ1と同様である。
【0054】
図4に示すように、本実施形態の静電センサ2の保護フィルム12として設けられた支持基材13においては、センサ外形形状11の外周の一部に延出する延出部16が設けられている。図4に示すように、本実施形態の延出部16は、支持基材13のY1方向の外縁の中央部に、タブ状に形成されている。延出部16が形成された箇所以外の支持基材13の外形形状はセンサ外形形状11と同形状に形成されている。
【0055】
このような構成においても、タブ状の延出部16を把持して容易に支持基材13を剥離することができる。タブ状の延出部16を設けることにより、剥離工程において剥離する方向や、剥離力を一定に制御し易くなり、安定して剥離することが可能となる。特に、剥離が開始される時に、剥離のきっかけとなる力を所望の箇所に集中して加えることができるため、よりスムーズに剥離工程を行うことができる。また、支持基材13を容易に、かつ安定して剥離することができるため、第1透明基材21、第2透明基材31、光学粘着層15、及び光学粘着層25が支持基材13側に引っ張られて、歪みや損傷を受けることを防止できる。これにより、外観不良や品質不良の発生を抑制して製造コストの増大を防ぐことができる。
【0056】
<第2の実施形態の製造方法>
図5及び図6には、第2の実施形態における静電センサ2の製造方法を示す。図5及び図6の各左図には、それぞれ各工程の平面図を示し、右図には、図5(a)のV−V線、及び図6(a)のVI−VI線に対応する箇所で切断した時の断面図を示す。
【0057】
図5(a)に示す工程では、第1の実施形態の場合と同様に積層部材20を用意する。そして、静電センサ2の外形形状となるセンサ外形形状11を設定するとともに、センサ外形形状11の外周の一部に延出する延出部領域17を設定する。なお、図5及び図6では省略しているが、各透明基材のセンサ外形形状11の内方には、図4で示したような各透明電極層、各引出電極層等が形成されている。
【0058】
そして、図5(b)に示す工程では、少なくとも延出部領域17とセンサ外形形状11とが平面視で隣接する境界部19について、積層部材20のうち光学粘着層15、第1透明基材21、光学粘着層25、及び第2透明基材31を切断する。すなわち、支持基材13については切断されないことになる。
【0059】
図6(a)の工程では、積層部材20を支持基材外形形状18に切断する。支持基材外形形状18とは、センサ外形形状11と延出部領域17とを合わせた外形形状である。図5(b)及び図6(a)の切断工程によって、第1透明基材21、第2透明基材31、光学粘着層15、及び光学粘着層25はセンサ外形形状11に切断されて、支持基材13は支持基材外形形状18に切断されることになる。なお、図5(b)及び図6(a)の工程は、この順番に限定されず、図6(a)の工程で支持基材外形形状18に切断した後に、図5(b)に示すように、少なくとも延出部領域17とセンサ外形形状11とが平面視で隣接する境界部19について切断する工程を行うことも可能である。
【0060】
図5(b)及び図6(a)の切断工程においては、レーザによって加工する方法や、金型を用いてプレス加工する方法によって切断することができる。金型を用いたプレス加工では、切断加工が短時間で済むため大量生産に適しているという利点がある。また、レーザ加工の場合は、本実施形態のように比較的複雑な形状であっても精度良く加工することが容易である。また、加工形状を変更する場合や多品種の生産においても複数の金型の作製が不要であるため、製造コストを低減することが可能である。
【0061】
図5(b)及び図6(a)の工程の後、支持基材外形形状18の外周部分は分離される。そして、センサ外形形状11外周の延出部領域17に位置する各透明基材及び各光学粘着層が支持基材13から剥離される。これにより、図6(b)に示すような静電センサ2が形成される。図5及び図6の工程によって、静電センサ2には、センサ外形形状11の外周の一部に延出する延出部16を形成することができ、例えば図6(b)に示すようなタブ状の延出部16を形成することができる。
【0062】
図6(b)に示すように、タブ状の延出部16は、静電センサ2のセンサ外形形状11のY1側の端部の中央付近に形成されているが、このような位置に限定されるものではなく、例えば角部の一つに延出部16を形成することや、X1側またはX2側の端部に形成することも可能である。また、形状、大きさも図6(b)に示すようなタブ状に限定されない。
【0063】
そして、図5及び図6の工程の後、図3(a)及び図3(b)に示した工程と同様の工程によって、タブ状の延出部16を把持して支持基材13を剥離する。そして、露出された光学粘着層15に保護パネルや加飾フィルム等の表面部材50が貼り合わされて、電子機器の表示部に組み込まれる。
【0064】
本実施形態の製造方法によれば、支持基材13にタブ状の延出部16を容易に形成することができる。これにより、支持基材13の剥離工程においてタブ状の延出部16を把持して剥離することができるため、剥離する方向や、剥離力を一定に制御し易くなり、安定して剥離することが可能となる。特に、剥離が開始される時に、剥離のきっかけとなる力をタブ状の延出部16が形成されたセンサ外形部分に集中して加えられるため、よりスムーズに剥離を行うことができる。さらに、タブ状の延出部16とすることにより、自動機でも容易に剥離することが可能であり、また、作業者が剥離する場合でも特別な熟練を必要とせず容易に剥離できることから、生産性を向上させることが可能となる。
【0065】
また、支持基材13を容易に、かつ安定して剥離することができるため、第1透明基材21、第2透明基材31、光学粘着層15、及び光学粘着層25が支持基材13側に引っ張られて、歪みや損傷を受けることを防止できる。これにより、外観不良や品質不良の発生を抑制して製造コストの増大を防ぐことができる。
【0066】
また、支持基材13を貼り付けた状態で出荷または他の工程に運搬する場合において、剥離を容易に行うための剥離用テープ等の別部材を付加することが不要となる。また、支持基材13が静電センサ2の表面を保護する機能も有することから別に保護フィルムを貼り付ける必要が無いことから、製造コストの増大を抑制することができる。本実施形態の静電センサ2によれば、支持基材13についても延出部16を除くセンサ外形形状11の外周が切断されているため、運搬や保管においても比較的小さい面積で済むという利点も有する。
【0067】
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態においては、1対の透明基材が積層された構成の静電センサについて示したが、このような態様に限られない。例えば、1枚の透明基材の両面、あるいは片面に透明電極パターンを形成して静電容量変化を検出する構成であっても、本発明を適用することができ、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0068】
1、2 静電センサ
11 センサ外形形状
12 保護フィルム
13 支持基材
15 光学粘着層
16 延出部
17 延出部領域
18 支持基材外形形状
19 境界部
20 積層部材
21 第1透明基材
22 第1透明電極層
25 光学粘着層
31 第2透明基材
32 第2透明電極層
50 表面部材
55 吸着ステージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極層が形成された透明基材を有する静電センサの製造方法であって、
a)前記透明基材と支持基材とを光学粘着層を介して貼り合わせた積層部材を用意して、センサ外形形状の外周の前記透明基材及び前記光学粘着層を除去して、前記センサ外形形状よりも外周に延出する延出部を前記支持基材に形成する工程を有することを特徴とする静電センサの製造方法。
【請求項2】
前記a)の工程において、
b)前記透明基材と前記支持基材とを前記光学粘着層を介して貼り合わせた積層部材を用意して、前記透明基材及び前記光学粘着層をセンサ外形形状に切断する工程と、
c)前記センサ外形形状の外周の前記透明基材及び前記光学粘着層を剥離して、前記センサ外形形状に切断された前記透明基材及び前記光学粘着層よりも外周に延出する延出部を前記支持基材に形成する工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の静電センサの製造方法。
【請求項3】
前記b)の工程において、
前記センサ外形形状の外周の一部に延出する延出部領域を設定して、
少なくとも前記延出部領域と前記センサ外形形状とが平面視で隣接する境界部について、前記透明基材及び前記光学粘着層を切断する工程と、
前記支持基材、前記光学粘着層、及び前記透明基材を、前記延出部領域と前記センサ外形形状とを合わせた支持基材外形形状に切断する工程と、を有することを特徴とする請求項2に記載の静電センサの製造方法。
【請求項4】
前記a)の工程又は前記c)の工程の後に、
d)前記静電センサを固定して、前記延出部を把持して前記支持基材を前記光学粘着層から剥離する工程を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電センサの製造方法。
【請求項5】
前記d)の工程の後に、
e)表面部材と前記透明基材とを、前記光学粘着層を介して貼り合わせる工程を有することを特徴とする、請求項4に記載の静電センサの製造方法。
【請求項6】
前記b)の工程において、レーザ加工により切断することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の静電センサの製造方法。
【請求項7】
前記b)の工程において、プレス加工により切断することを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の静電センサの製造方法。
【請求項8】
静電容量値の変化を検出する透明電極層と、前記透明電極層が形成された透明基材とを有する静電センサと、
保護フィルムとなる支持基材と、を有し、
前記透明基材に、光学粘着層を介して前記支持基材が貼り合わされており、
前記支持基材には、前記透明基材及び前記光学粘着層よりも外周に延出する延出部が形成されていることを特徴とする保護フィルム付静電センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−25373(P2013−25373A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156711(P2011−156711)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】