説明

静電塗装用塗装ガン

【課題】エアモータと同じ筐体にCCVユニットを配置する構成としつつ、コンパクトな構成を実現できる静電塗装用塗装ガンを提供する。
【解決手段】高電圧を発生させるための高電圧発生装置6と、高電圧が印加されるモータ部であるエアモータ4と、エアモータ4の回転軸4a上に支持され、高電圧が印加されるベルカップ5と、ベルカップ5に複数種類の塗料を切り換えて供給するCCVユニット7と、高電圧発生装置6、エアモータ4、CCVユニット7、を内蔵するケーシングであるガン本体3と、該ガン本体3をロボットアーム8に連結するための部位であり、アースに接地された連結部3cと、を備える塗装ガン2であって、エアモータ4とCCVユニット7を第一の抵抗器である第一抵抗器11を介して電気的に接続するとともに、連結部3cとCCVユニット7を第二の抵抗器である第二抵抗器12を介して電気的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の塗料を切り換えて使用できる静電塗装用塗装ガンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電塗装を行うための塗装ガンにおいて、複数種類の塗料を短時間で切り換えて塗装を行うことができるようにするために、複数の塗料を切り換えるための色換えバルブ(以下、CCV(Color Change Valveの略)と呼ぶ)を備える構成とした多色塗装用の塗装ガンが知られている。
また近年では、多色塗装用の塗装ガンを使用する場合において、色換えに要する時間を短縮するために、複数のCCVを有する色換えユニット(以下、CCVユニットと呼ぶ)を塗装ガンのエアモータ等が内蔵される筐体内に配置する構成とした多色塗装用の塗装ガンが採用されるようになっており、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
【0003】
特許文献1に開示された従来技術に係る塗装ガンでは、CCVユニットをエアモータが内蔵される筐体内の当該エアモータの直後に配置して、CCVユニットからベルカップに至るまでの塗料の供給経路を可及的に短くする構成としている。
このような構成により、CCVユニットからベルカップに至るまでの塗料の供給経路において残存する塗料を可及的に少なくすることができ、色換えに要する時間の短縮を図るとともに、無駄になる塗料の低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−50336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、静電塗装用の塗装ガンの筐体に内蔵されるエアモータおよびエアモータに支持されるベルカップ等には、高電圧発生装置により高電圧が印加されている。
また、塗装ガンが変位可能に支持されているロボットアームは、通常アースに接続されており、電位が「0」に保持されている。
このため、従来の静電塗装用塗装ガンでは、エアモータのように高電圧が印加される部位(以下、高圧領域と呼ぶ)と、塗装ガンにおいてアースに接続された部位(以下、アース領域と呼ぶ)との間には、電位差が生じているため、エアモータ(高圧領域)はアース領域に対して、絶縁破壊を生じることがない距離(即ち、絶縁距離)を十分に確保する必要がある。尚、ここでいう「絶縁距離」は、沿面距離と空間距離を含む概念である。
【0006】
特許文献1に開示された塗装ガンでは、エアモータと同じ高電圧がCCVユニットにも印加される構成としており、CCVユニットも高圧領域に属する部位となっているため、CCVユニットとアース領域との間で絶縁距離を確保する必要がある。そして、このような場合に、CCVユニットとアース領域との間の絶縁距離を確保しようとすると、筐体を大型化する等の対策を講じなければならず、塗装ガンの筐体内にCCVユニットを内蔵する場合には、静電塗装用塗装ガンをコンパクトに構成することが困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、エアモータと同じ筐体にCCVユニットを配置する構成としつつ、コンパクトな構成を実現できる静電塗装用塗装ガンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、高電圧を発生させるための高電圧発生装置と、高電圧が印加されるモータ部と、前記モータ部の回転軸上に支持され、高電圧が印加されるベルカップと、前記ベルカップに複数種類の塗料を切り換えて供給するCCVユニットと、前記高電圧発生装置、前記モータ部、前記CCVユニット、を内蔵するケーシングと、前記ケーシングをロボットアームに連結するための部位であり、アースに接地された連結部と、を有する静電塗装用塗装ガンであって、前記モータ部と前記CCVユニットを第一の抵抗器を介して電気的に接続するとともに、前記連結部と前記CCVユニットを第二の抵抗器を介して電気的に接続するものである。
【0010】
請求項2においては、前記第一の抵抗器と前記第二の抵抗器は、抵抗値を可変とした可変抵抗器により構成するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
請求項1においては、CCVユニットの周囲に確保すべき絶縁距離を短縮することができる。これにより、CCVユニットを内蔵した塗装ガンをよりコンパクトな構成とすることができる。
【0013】
請求項2においては、使用する塗料の種類や種類数を変更する場合であっても、CCVユニットに対する印加電圧を一定に調整することができる。これにより、CCVユニットに対する印加電圧を、ガン本体においてCCVユニットの周囲に確保可能な絶縁距離に見合った印加電圧に確実に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る塗装ガンを備える静電塗装装置の全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る塗装ガンを示す断面模式図。
【図3】CCVユニットに対する印加電圧を示す模式図、(a)本発明の第一の実施形態に係る塗装ガンの場合、(b)従来の塗装ガンの場合。
【図4】本発明の第二の実施形態に係る塗装ガンを示す断面模式図。
【図5】CCVユニットに対する印加電圧を示す模式図、(a)本発明の第一の実施形態に係る塗装ガンの場合、(b)本発明の第二の実施形態に係る塗装ガンの場合。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明に係る塗装ガンを備える静電塗装装置の全体構成について、図1および図2を用いて説明をする。
図1および図2に示す如く、静電塗装装置1は、塗装を施す対象物である被塗物に対して、静電塗装を行うための装置であり、本発明の第一の実施形態に係る静電塗装用の塗装ガンである塗装ガン2、ロボットアーム8等を備えている。
【0016】
塗装ガン2は、被塗装物に対して微粒化され帯電した塗料を噴霧するための装置であり、ガン本体3、エアモータ4、ベルカップ5、高電圧発生装置6、CCVユニット7等を備えている。
塗装ガン2は、ベルカップ5をエアモータ4により回転させて、CCVユニット7によりベルカップ5の内面に供給される液体塗料を展延させるとともに、遠心力の作用によって微粒化させることができる回転霧化型の塗装装置である。
【0017】
ガン本体3は、塗装ガン2のケーシング部分を構成する部位であり、第一筐体部3a、第二筐体部3b、連結部3c、シェーピングエアリング3d等からなる構成としている。
第一筐体部3aは、塗装ガン2により噴霧する塗料を供給し、微粒化させるために必要な各部(即ち、エアモータ4およびCCVユニット7等)を内蔵するための部位である。
【0018】
また、第二筐体部3bは、第一筐体部3aを塗料の噴霧に適した所定の角度で支持するために、第一筐体部3aに対して所定の角度だけ傾斜させて突設される部位であり、高電圧発生装置6等が内蔵されている。
そして、第二筐体部3bの端部には、塗装ガン2をロボットアーム8に対して連結するための部位である連結部3cが形成されている。
【0019】
また、第一筐体部3aの塗料の噴霧方向に対する前部には、シェーピングエアリング3dを付設している。
シェーピングエアリング3dは、その前部に配置されるベルカップ5によって微粒化された塗料に推進力を付与するとともに、該塗料を所定のパターンで拡散させるために、ベルカップ5の後部から所定のパターンでシェーピングエアを噴出させるための部位であり図示しないエア配管が接続されている。
【0020】
エアモータ4は、ベルカップ5を回転駆動するための部位であり、第一筐体部3aに内臓されている。またエアモータ4は、エアを供給することによって回転する軸部である回転軸4aを備えており、該回転軸4aを、第一筐体部3aから塗料の噴霧方向に向けて突設させている。そして、回転軸4a上に、ベルカップ5を支持している。
【0021】
ベルカップ5は、塗料を微粒化させるための部位であり、回転軸4a上に該回転軸4aの軸心と、ベルカップ5の軸心を一致させた状態で軸支されている。
また、エアモータ4の回転軸4aの軸心上には、塗料が流通する軸方向に貫通する孔部である塗料供給孔4bが形成されている。
さらにベルカップ5の軸心上には、該ベルカップ5の内面に塗料を供給するための軸心方向に貫通する孔部である塗料供給孔5aが形成されている。
【0022】
また、ガン本体3の第一筐体部3aには、高電圧発生装置6が内蔵されている。
高電圧発生装置6は、塗装ガン2により噴霧する塗料に印加する高電圧を発生させるための装置である。
【0023】
そして、高電圧発生装置6には、低電圧ケーブル13を介して図示しない電源部が接続されており、当該電源部から高電圧発生装置6に所定の電圧が供給される。そして、高電圧発生装置6によって、供給された電圧を所定の高電圧に昇圧して、高電圧ケーブル14を介して、エアモータ4に高電圧を印加する構成としている。
【0024】
そして、塗装ガン2は、エアモータ4に高電圧を印加して、該エアモータ4を介してベルカップ5に静電高電圧が印加されることによって、該ベルカップ5から拡散される塗料の粒子を帯電させることができる。
そして、帯電した塗料と接地された(即ち、電位が0Vである)被塗物との間で形成される静電界を利用して、静電塗装を行う構成としている。
【0025】
また、ガン本体3の第一筐体部3aには、CCVユニット7が内蔵されている。
CCVユニット7は、複数のCCV(図示せず)を備え、複数種類の塗料を切り換えつつベルカップ5に供給することができる色換え用の装置である。CCVユニット7には、複数種類の塗料を供給するための複数系統の塗料配管である一次側塗料供給配管9・9・・・が接続されている。また、一次側塗料供給配管9・9・・・は、各種類の塗料が貯留されている図示しない複数の塗料タンクにそれぞれ接続されている。
【0026】
また、CCVユニット7には、ベルカップ5に塗料を供給するための一系統の塗料配管である二次側塗料供給配管10が接続されており、該二次側塗料供給配管10が、塗料供給孔4bおよび塗料供給孔5aに接続されている。
これにより、CCVユニット7から供給された塗料が、二次側塗料供給配管10、塗料供給孔4b、塗料供給孔5aを通じて、ベルカップ5前面の展延部に供給される構成としている。
【0027】
また、塗装ガン2において、エアモータ4とCCVユニット7は、第一の抵抗器である第一抵抗器11を介して電気的に接続されており、CCVユニット7と連結部3cは、第二の抵抗器である第二抵抗器12を介して電気的に接続されている。
【0028】
図1に示す如く、ロボットアーム8は、その下部において基台部8aに回動可能に連結される上下アーム8bと、該上下アーム8bの上部にその後端部が回動可能に連結される水平アーム8cとから構成され、前記上下アーム8b、水平アーム8cを各回動支点で回動させることで、前記水平アーム8cの先端部に設けた塗装ガン2を、被塗物に対して変位させることができる構成としている。
【0029】
また、水平アーム8cは、その先端部にガン本体3の連結部3cが連結される第一アーム部8dと、その先端部に前記第一アーム部8dが連結される第二アーム部8eと、その先端部に前記第二アーム部8eが連結され、その後端部に前記上下アーム8bが回動可能に連結される第三アーム部8fと、を有する構成としている。
【0030】
また、第一アーム部8dには、二つの屈折部8g・8hが設けられ、各屈折部8g・8hにおいて第一アーム部8dが屈折動作される構成となっており、これにより、塗装ガン2が、図1および図2中における時計方向、又は、反時計方向に角度を変更することができる構成としている。
【0031】
また、ロボットアーム8に対して塗装ガン2が取り付けられる連結部3cは、第一アーム部8dに対して、軸方向に回転駆動される構成としており、塗装ガン2が、連結部3cの軸を中心として角度を変更することができる。これにより、塗装ガン2の被塗物に対する角度を自由に設定できる構成としている。
【0032】
ここで、連結部3cは、ロボットアーム8に取り付けられる状態において、該ロボットアーム8(より詳しくは、屈折部8g)と電気的に接続されている。そして、ロボットアーム8は、アースに接続されているため、連結部3cもアースに接続される状態となっている。
【0033】
本発明の第一の実施形態に係る塗装ガン2では、前述した通り、エアモータ4は高電圧発生装置6と接続されており、また、連結部3cは、アースに接続されている。
さらに、塗装ガン2において、エアモータ4とCCVユニット7は、第一抵抗器11を介して電気的に接続されており、CCVユニット7と連結部3cは、第二抵抗器12を介して電気的に接続されている。
【0034】
このため、高電圧発生装置6によりエアモータ4に印加された高電圧は、第一抵抗器11によって、第一抵抗器11と第二抵抗器12の各抵抗値の比に応じて電圧降下された後にCCVユニット7に印加される。さらに、CCVユニット7に印加された電圧は、第二抵抗器12によって、最終的に電位が「0」の状態まで電圧降下される。
即ち、塗装ガン2では、高電圧発生装置6によりエアモータ4に印加される高電圧に比して、低い電圧をCCVユニット7に印加する構成としている。
【0035】
次に、本発明の第一の実施形態に係る塗装ガン2の適用効果について、図3を用いて説明をする。
従来の塗装ガンでは、CCVユニット7とエアモータ4は、抵抗器を介さずに電気的に接続されているため、エアモータ4に対して高電圧発生装置6から高電圧を印加することにより、これと同じ電位の高電圧がCCVユニット7にも印加される構成となっている。
【0036】
図3(b)に示す如く、従来の塗装ガンにおいて、エアモータ4に対して高電圧発生装置6から電圧Dの高電圧を印加すると、CCVユニット7には、エアモータ4と同じ電圧Dの高電圧が印加され、高圧領域の部位であるCCVユニット7とアース領域である連結部3cとの電位差がDとなっている。
【0037】
この場合、エアモータ4と連結部3cは、電位差Dに応じた絶縁距離L1を確保しなければならず、また、CCVユニット7と連結部3cは、電位差Dに応じた絶縁距離L2を確保する必要があるが、絶縁破壊が生じる可能性という観点では、エアモータ4に比してCCVユニット7の方がより連結部3cに接近している部位となるため、絶縁距離L2によって、ガン本体3として最低限必要な大きさ等が決定される。
【0038】
このため、CCVユニット7を内蔵しない構成の塗装ガンでは、電位差Dに応じてエアモータ4の絶縁距離L1を確保すれば静電安全性が確保できたが、CCVユニット7を内蔵する構成においては、電位差Dに応じて、絶縁距離L2を確保しなければならず、塗装ガンをコンパクトな構成とすることがより困難になっている。
【0039】
また、CCVユニット7を包囲する第一筐体部3aの構造も、電位差Dに応じた構造としなければならず、第一筐体部3aにおけるCCVユニット7近傍に開口部等の継ぎ目を有する部位を設ける場合には、開口部の外周縁部を複雑な折り曲げ形状として沿面距離を確保する等の特別な考慮が必要であった。
【0040】
一方、本発明の第一の実施形態に係る塗装ガン2において、CCVユニット7とエアモータ4は、第一抵抗器11を介して電気的に接続され、さらに、CCVユニット7と連結部3cは第二抵抗器12を介して電気的に接続される構成としている。
【0041】
このような構成により、第一抵抗器11の抵抗値をA(Ω)、第二抵抗器12の抵抗値をB(Ω)とし、二次側塗料供給配管10を流通する塗料の抵抗値をα(Ω)、一次側塗料供給配管9・9・・・を流通する塗料の抵抗値をβ(Ω)とするとき、CCVユニット7に対する印加電圧Eは、E=D×(Bβ/(B+β))/((Aα/(A+α))+(Bβ/(B+β)))(KV)で求められる値となる。
即ち、CCVユニット7の高圧領域側の抵抗値(Aα/(A+α))と、アース領域側の抵抗値(Bβ/(B+β))の比に応じて、電圧Dから電圧降下させた電圧Eを、CCVユニット7に印加する構成としている。
【0042】
このため、図3(a)に示す如く、本発明の第一の実施形態に係る塗装ガン2において、CCVユニット7には、エアモータ4に印加される電圧Dに比して低い電圧Eの高電圧が印加されており、アース領域である連結部3cに対する電位差は、電位差Dに比して小さい電位差Eとなっている。
即ち、塗装ガン2では、CCVユニット7を高圧領域とアース領域の中間の電圧を印加することにより、CCVユニット7とアース領域の電位差を、従来に比して小さくすることができる。高圧領域とアース領域の電位差が小さくなると、従来に比して絶縁距離L2を短縮しても、絶縁破壊が起こりにくくなるため、CCVユニット7とアース領域をより接近させて配置することが可能になる。
【0043】
このため、CCVユニット7と連結部3cは、電位差Eに応じた絶縁距離L2を確保すればよくなり、また、CCVユニット7を包囲する第一筐体部3aの構造も、電位差Eに応じた構造とすればよいため、第一筐体部3aにおけるCCVユニット7近傍に継ぎ目を設けることが容易になり、かつ、CCVユニット7と連結部3cを従来に比してより接近させて配置することが可能になる。
【0044】
さらに、絶縁破壊が生じた場合に放出される静電エネルギーFは、F=1/2CV(Cは、CCVユニット7の静電容量)の式で求められる。
このため、仮にCCVユニット7と連結部3cとの間の電位差を従来に比して1/2程度に低減すれば、絶縁破壊が生じた場合に放出される静電エネルギーFを、1/4程度にまで低減することができる。即ち、塗装ガン2を用いれば、静電安全性の向上を図ることができる。
【0045】
即ち、本発明の第一の実施形態に係る塗装ガン2、高電圧を発生させるための高電圧発生装置6と、高電圧が印加されるモータ部であるエアモータ4と、エアモータ4の回転軸4a上に支持され、高電圧が印加されるベルカップ5と、ベルカップ5に複数種類の塗料を切り換えて供給する色換えユニットであるCCVユニット7と、高電圧発生装置6、エアモータ4、CCVユニット7、を内蔵するケーシングであるガン本体3と、該ガン本体3をロボットアーム8に連結するための部位であり、アースに接地された連結部3cと、を備えるものであって、エアモータ4とCCVユニット7を第一の抵抗器である第一抵抗器11を介して電気的に接続するとともに、連結部3cとCCVユニット7を第二の抵抗器である第二抵抗器12を介して電気的に接続するものである。
このような構成により、CCVユニット7の周囲に確保すべき絶縁距離を小さくすることができる。これにより、CCVユニット7を内蔵した塗装ガン2をよりコンパクトな構成とすることができる。
【0046】
尚、本実施形態では、第一筐体部3aに内蔵されるCCVユニット7に対して、第一抵抗器11および第二抵抗器12を接続する態様を例示しているが、絶縁距離を縮小する対象部品は、必ずしもCCVユニットである必要はなく、第一筐体部3aや第二筐体部3bに他の種類の部品を内蔵する場合であっても、当該他の部品について同様に各抵抗器11・12を接続して、当該他の部品の絶縁距離を縮小することが可能である。
【0047】
次に、本発明の第二の実施形態に係る塗装ガン22の適用効果について、図4および図5を用いて説明をする。尚、図4に示す如く、本発明の第二の実施形態に係る静電塗装用の塗装ガンである塗装ガン22は、使用する各抵抗器31・32が可変抵抗器である点で、塗装ガン2と相違しており、その他の部分の構成は、塗装ガン2と共通している。
【0048】
前述した通り、CCVユニット7に対する印加電圧Eは、E=D×(Bβ/(B+β))/((Aα/(A+α))+(Bβ/(B+β)))(KV)の式で求められる値となる。
しかしながら、各抵抗値α、βは、使用する塗料の種類や使用する一次側塗料供給配管9・9・・・の本数等に応じて、変化する性質を有しているため、CCVユニット7の高圧領域側の抵抗値(Aα/(A+α))と、アース領域側の抵抗値(Bβ/(B+β))の比は、塗装条件に応じて変化する。
【0049】
このため、本発明の第一の実施形態に係る塗装ガン2では、使用する塗料の種類や一次側塗料供給配管9・9・・・の本数等が、塗装条件に応じて大きく変更されるような場合には、CCVユニット7に印加される高電圧Eの値が大きく変化して、絶縁距離の確保が困難になるという問題がある。
またこのような場合、図5(a)に示す如く、CCVユニット7とエアモータ4との電位差(D−E)が過大となって、CCVユニット7とエアモータ4との間で絶縁破壊が生じるような可能性もある。
【0050】
そこで、このような問題を解消すべく、図4に示すような本発明の第二の実施形態に係る塗装ガン22では、第一の抵抗器である第一抵抗器31と、第二の抵抗器である第二抵抗器32として、それぞれ可変抵抗器を採用する構成としている。
第一抵抗器31および第二抵抗器32では、それぞれの抵抗値Ax・Bxを予め設定した所定の範囲において任意の値に変更することができる。
このため、塗装ガン22を用いた場合、CCVユニット7に対する印加電圧Eは、E=D×(Bxβ/(Bx+β))/((Axα/(Ax+α))+(Bxβ/(Bx+β)))(KV)の値となる。
【0051】
このような構成により、CCVユニット7の使用状況(即ち、一次側塗料供給配管9・9・・・および二次側塗料供給配管10内を流通する塗料の種類や、各配管9・10の使用本数等)により、各抵抗器31・32の抵抗値Ax・Bxを調整して、CCVユニット7の高圧領域側の抵抗値(Axα/(Ax+α))とアース領域側の抵抗値(Bxβ/(Bx+β))の比を調整することができるため、CCVユニット7に対する印加電圧を、ガン本体3において確保可能な絶縁距離の条件に見合った値に調整することができる。また、CCVユニット7とエアモータ4との電位差(D−E)も確実に絶縁破壊が生じない値に調整することができる。
【0052】
即ち、本発明の第二の実施形態に係る塗装ガン22は、エアモータ4とCCVユニット7の間に設けられる第一抵抗器31と、CCVユニット7と連結部3cの間に設けられる第二抵抗器32は、抵抗値を可変できる可変抵抗器により構成するものである。
このような構成により、使用する塗料の種類や種類数を変更する場合であっても、CCVユニット7に対する印加電圧を一定に調整することができる。これにより、CCVユニット7に対する印加電圧を、ガン本体3においてCCVユニット7の周囲に確保可能な絶縁距離に見合った印加電圧に確実に調整することができる。
【0053】
尚、本実施形態では、第一抵抗器31と第二抵抗器32の両方を可変抵抗器により構成し、より詳細にCCVユニット7に対する印加電圧を調整可能とする場合を例示しているが、例えば、第一抵抗器31か第二抵抗器32のいずれか一方を可変抵抗器とする構成として、より簡易な構成で、CCVユニット7に対する印加電圧を調整可能とする構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 静電塗装装置
2 塗装ガン(第一の実施形態)
3 ガン本体
3c 連結部
4 エアモータ
5 ベルカップ
6 高電圧発生装置
7 CCVユニット
11 第一抵抗器(第一の実施形態)
12 第二抵抗器(第一の実施形態)
22 塗装ガン(第二の実施形態)
31 第一抵抗器(第二の実施形態)
32 第二抵抗器(第二の実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧を発生させるための高電圧発生装置と、
高電圧が印加されるモータ部と、
前記モータ部の回転軸上に支持され、高電圧が印加されるベルカップと、
前記ベルカップに複数種類の塗料を切り換えて供給するCCVユニットと、
前記高電圧発生装置、前記モータ部、前記CCVユニット、を内蔵するケーシングと、
前記ケーシングをロボットアームに連結するための部位であり、アースに接地された連結部と、
を有する静電塗装用塗装ガンであって、
前記モータ部と前記CCVユニットを第一の抵抗器を介して電気的に接続するとともに、
前記連結部と前記CCVユニットを第二の抵抗器を介して電気的に接続する、
ことを特徴とする静電塗装用塗装ガン。
【請求項2】
前記第一の抵抗器と前記第二の抵抗器は、
抵抗値を可変とした可変抵抗器により構成する、
ことを特徴とする請求項1記載の静電塗装用塗装ガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−71225(P2012−71225A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216121(P2010−216121)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(309007818)友信工機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】