説明

静電容量センサ

【課題】従来よりも簡単な構造で、かつ、膜状媒体の厚みを迅速に測定できる静電容量センサを提供すること。
【解決手段】対向して配置された2枚の電極からなる対向電極の間の間隔に膜状媒体Bを挿入することにより生じる静電容量の変化を利用して、膜状媒体の厚みを検出する静電容量センサ10において、交流電源12に接続された第1対向電極14と、接地された第2対向電極16と、第1及び第2対向電極間を電気的に直列に接続する電極間配線18と、電極間配線の中点Pに設けられていて、静電容量の変化を出力する出力端20とを有する検出器22を備えていて、第1対向電極に膜状媒体が挿入されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙等の膜状媒体の厚みを検出する静電容量センサに関する。
【背景技術】
【0002】
膜状媒体の搬送路中に、所定の間隔を空けて互いに向き合った2枚の電極を備えてなる対向電極を設け、この電極間の静電容量の変化を出力することにより、紙等の膜状媒体の厚みを検出する静電容量センサが知られている。
【0003】
ところで、紙等の膜状媒体の誘電率は、一般に対向電極の電極間に存在する媒質(通常は大気)の誘電率とほぼ同等の大きさである。そのため、この種の静電容量センサでは、出力が変化した場合に、それが、膜状媒質の厚みの変化によるものなのか、それとも媒質の誘電率が温度や湿度等の影響で変化したものによるのかを分離することが難しかった。
【0004】
この問題点を解決するために、膜状媒体の誘電率を測定する第1対向電極の他に、媒質の誘電率の変化を測定する第2対向電極を設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。
【特許文献1】特開昭59−131104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された技術では、第1及び第2対向電極の出力から、媒質の誘電率の影響を除いて膜状媒体にのみ由来する誘電率の変化を求めるために、別に演算回路を設ける必要があった。
【0006】
そのため、特許文献1に開示された技術では、静電容量センサの回路構成が複雑化する虞があるとともに、演算回路での演算時間が必要であるため、膜状媒体の厚みを迅速に測定できない虞があった。
【0007】
この発明は、上述したような問題点に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、従来よりも簡単な構造で、かつ、膜状媒体の厚みを迅速に測定できる静電容量センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の発明者は、膜状媒体が挿入される第1対向電極と、媒質の誘電率の変化を評価する第2対向電極とを、電極間配線で電気的に直列に接続し、この電極間配線の中点から検出信号を取り出すことにより上述した課題を解決できることに想到した。
【0009】
従って、この発明の静電容量センサは、対向して配置された2枚の電極からなる対向電極の当該電極間の間隔に膜状媒体を挿入することにより生じる静電容量の変化を利用して、膜状媒体の厚みを検出する。
【0010】
そして、静電容量センサは、対向電極として、交流電源に接続された第1対向電極及び接地された第2対向電極とを有するとともに、第1及び第2対向電極間を電気的に直列に接続する電極間配線と、電極間配線の接続中点に設けられていて、静電容量の変化を表わす検出信号を出力する出力端とを有する検出器を備えていて、第1対向電極の2枚の電極間に膜状媒体が挿入される。
【0011】
この静電容量センサの好適な実施態様によれば、検出器が、膜状媒体の進行方向に沿って、複数個並列して配置されていたり、進行方向に直角に複数個配置されたりしていてもよい。
【0012】
この静電容量センサの好適な他の実施態様によれば、第1対向電極が、共通の交流電源に接続された複数の第1サブ対向電極を備えており、複数の第1サブ対向電極が、膜状媒体の進行方向に沿って並列に配置されており、電極間配線が、第1サブ対向電極のそれぞれと共通の第2対向電極とを電気的に直列に接続する複数のサブ電極間配線を備えており、及びサブ電極間配線のそれぞれには、サブ電極間配線を切り替えるためのスイッチが設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明の静電容量センサは上述のように構成されている。その結果、従来よりも簡単な構造で、かつ、膜状媒体の厚みを迅速に測定できる静電容量センサが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0015】
(実施の形態1)
図1〜図3を参照して、実施の形態1の静電容量センサについて説明する。
【0016】
(構造)
図1は、この実施の形態の静電容量センサの構成を概略的に示す模式図である。
【0017】
この実施の形態の静電容量センサ10は、静電容量の変化を表わす検出信号を出力する出力端20を有する検出器22を備えている。
【0018】
この検出器22は、交流電源12に接続された第1対向電極14と、接地された第2対向電極16と、第1及び第2対向電極14及び16間を電気的に直列に接続する電極間配線18とを有していて、出力端20を電極間配線18の接続中点Pに設けている。また、静電容量センサ10は、好ましくは例えば処理装置29を備えていてもよい。
【0019】
第1対向電極14は、従来公知の平行平板コンデンサであり、所定の間隔を空けて対向した電極14a及び14bを備えている。電極14aは、交流電源12に接続されている。そして、電極14bには、電極間配線18が接続されている。電極間配線18としては、従来公知のリード線や、プリント基板配線等を用いることができる。
【0020】
第2対向電極16は、従来公知の平行平板コンデンサであり、所定の間隔を空けて対向した電極16a及び16bを備えている。電極16aは、電極間配線18に接続されている。一方、電極16bは、接地されている。
【0021】
第1及び第2対向電極14及び16のそれぞれの電極間距離、すなわち、電極14aと14bとの間の距離d、及び電極16aと16bとの間の距離dは、互いに等しく設定することが好ましい。より詳細には、第1及び第2対向電極14及び16のそれぞれの電極間距離は、好ましくは、例えば約5〜6mmとする。
【0022】
また、第1及び第2対向電極14及び16のそれぞれの電極面積、すなわち、電極14a,14b,16a及び16bの各面積は、互いに等しくSとする。
【0023】
さらに、第1対向電極14の電極14a及び14b間と、第2対向電極16の電極16a及び16b間には、いずれも同じ誘電率を有する媒質が介在している。この実施の形態の場合、電極間に介在する媒質は、誘電率ε≒1の大気とする。以降、大気の誘電率を「ε0」で表わす。
【0024】
この実施の形態の静電容量センサ10においては、第1対向電極14の電極14a及び14b間に、例えば紙幣等の膜状媒体Bを挿入することで生じる静電容量の変化を、電圧の変化として検出し、第1及び第2対向電極14及び16のそれぞれから出力される信号を合成した電圧を後述する出力端20から出力する。以降、出力端20から出力される電圧の変化を「検出信号」と称する。
【0025】
処理装置29は、アンプ24、A/Dコンバータ26、及び処理部28を備えていて、従来と同様に検出信号から膜状媒体Bの厚みを求める処理を行う。
【0026】
アンプ24は、出力端20から出力される検出信号を電気的に増幅する機能を有する。アンプ24で増幅された検出信号は、A/Dコンバータ26に出力される。
【0027】
A/Dコンバータ26は、アンプ24に電気的に接続されており、アンプ24から入力された検出信号をA/D変換して、デジタル信号とした上で、処理部28に出力する。
【0028】
処理部28は、不図示の中央処理部と、内部記憶部と、入出力部とを備えたCPUとして構成されている。処理部28は、A/Dコンバータ26から入力されたデジタル化された検出信号から、膜状媒体Bの厚みを求める処理を行う。より詳細には、A/Dコンバータ26から入力されたデジタル化された検出信号は、不図示の内部記憶部に一時的に記憶される。記憶された検出信号は、中央処理部に読み出されているプログラムに従い、所定の計算が行われ、膜状媒体Bの厚みDが求められる。
【0029】
なお、処理部28を構成するCPUは、従来公知であるとともに、この発明の要旨とは直接関係しないのでこれ以上の説明を省略する。
【0030】
(動作)
次に、図1及び図2を参照して、この実施の形態の静電容量センサ10の動作について説明する。
【0031】
静電容量センサ10の動作の理解を容易にするために、図2に示す従来型の静電容量センサ100(以下、「従来型センサ100」と称する。)との比較で説明を行う。
【0032】
まず図2を参照して、従来型センサ100の構造について簡単に説明する。従来型センサ100は、1個の対向電極102を備えている。この対向電極102は、平行平板コンデンサとして構成されている。より詳細には、従来型センサ100では、電極102a及び102bが平行に対向して配置されている。なお、電極102a及び102bの間の距離はdとする。また、電極102a及び102bの面積はそれぞれSとする。
【0033】
この従来型センサ100の対向電極102に誘電率がεの膜状媒体Bが挿入された場合を考える。なお、膜状媒体Bの誘電率εは、大気の誘電率ε0よりも若干大きい値、例えば、ε≒10とする。
【0034】
また、膜状媒体Bの厚みDは、電極間距離dに比べて十分に薄いものとする。ここで、「十分に薄い」とは、膜状媒体Bの厚みが、電極間距離dの1/100以下であることを示す(D≦d/100)。
【0035】
このとき、対向電極102に介在している大気の温度や湿度が変化したために、大気の誘電率ε0がε0’へと僅かに変化したとする。ここで、ε0の変化量Δε0、すなわちΔε0=|ε0−ε0’|/ε0は、約50%とする。
【0036】
この場合、膜状媒体Bの誘電率εが大気の誘電率に比べて非常に大きい値(例えば、ε=1000等)である場合には、この大気の誘電率の変化は無視しても、十分な精度で、膜状媒体Bに由来する静電容量の変化を検出することができる。その結果、正確に膜状媒体Bの厚みDを評価することができる。
【0037】
しかし、この例のように、膜状媒体Bの誘電率εが、大気の誘電率ε0とほぼ同等である場合には、僅かな大気の誘電率の変化Δε0も、静電容量の測定に影響を与えてしまう。つまり、大気の誘電率の変化に由来する電圧変化が検出信号に対して無視できなくなる大きな値となる。結果として、得られた膜状媒体Bの厚みDの測定結果に大きな誤差が含まれてしまう。
【0038】
それに対して、この実施の形態の静電容量センサ10は、電気的に直列に接続された第1対向電極14及び第2対向電極16を備えている。そして、図1に示すように、第1対向電極14では、変化した大気の誘電率ε0’を含めた膜状媒体Bの静電容量を検出し、第2対向電極では、変化した大気の誘電率ε0’の静電容量のみを検出する。そして、第1及び第2対向電極14及び16の出力、すなわち、それぞれの静電容量を反映した電圧を合成して、電極間配線18の中点Pに設けられた出力端20からの検出信号として取り出す。
【0039】
静電容量センサ10をこのように構成した結果、出力端20から出力される検出信号では、第1及び第2対向電極14及び16の両者で測定された変化した大気の誘電率ε0’に対する静電容量分に依存する電圧成分を相殺しているので、膜状媒体Bの静電容量に由来する検出信号のみを検出することが可能となる。
【0040】
(大気の誘電率変化の相殺機構)
以下、図3(A)〜(C)を参照して、静電容量センサ10が、大気の誘電率変化Δε0を相殺できることについて、さらに詳細に説明する。
【0041】
まず、始めに、図3(A)及び(B)を参照して、膜状媒体Bが第1対向電極14に挿入されていない状態において、大気の誘電率が変化しても静電容量センサ10からの検出信号が不変であることについて説明する。図3(A)は、大気の誘電率がε0の場合に、静電容量センサ10を電気回路として表わした模式図である。図3(B)は、大気の誘電率がε0’の場合に、静電容量センサ10を電気回路として表わした模式図である。
【0042】
図3(A)に示した大気の誘電率がε0の場合には、第1及び第2対向電極14及び16の静電容量C1及びC2は、従来周知の関係から下記式(1)及び式(2)で与えられる。
【0043】
C1=ε0×S/d・・・(1)
C2=ε0×S/d・・・(2)
よって、出力端20からの検出信号V1は、下記式(3)で与えられる。
【0044】
V1=(C2/C1)×V=V・・・(3)
なお、式(3)において、Vは、第1対向電極14に印加される電圧を示す。
【0045】
一方、図3(B)に示したように、大気の誘電率がε0’に変化した場合、第1及び第2対向電極14及び16の静電容量C3及びC4は、従来周知の関係から下記式(4)及び式(5)で与えられる。
【0046】
C3=ε0’×S/d・・・(4)
C4=ε0’×S/d・・・(5)
よって、出力端20からの検出信号V2は、下記式(6)で与えられる。
【0047】
V2=(C4/C3)×V=V・・・(6)
ここで、式(3)と式(6)とを比較すると、V1=V2であることが分かる。これは、膜状媒体Bが第1対向電極14に挿入されていない場合に、第1及び第2対向電極14及び16に介在する大気の誘電率ε0が変化したとしても、静電容量センサ10からの出力電圧は等しくなることを示している。
【0048】
以上のことを前提にして、図1に示すように、第1対向電極14に膜状媒体Bが挿入された場合について考える。この場合、電気的にみると、図3(C)のように、電極14aと14bとの間に、3個の直列に接続された静電容量C1a,C1b及びC1cが形成されることになる。なお、図3(C)は、第1対向電極14に膜状媒体Bが挿入された場合に、静電容量センサ10を電気回路として表わした模式図である。
【0049】
図3(C)において、C1aは、電極14aと膜状媒体Bとの間に形成される静電容量であり、C1bは、膜状媒体Bの静電容量であり、及びC1cは、膜状媒体Bと電極14bとの間に形成される静電容量である。
【0050】
ところで、上述したように、膜状媒体Bの厚みDは、第1対向電極14の電極間距離dよりも十分に小さいので、静電容量C1a及びC1cの直列分は、C1に等しいと置くことができる。
【0051】
このことから、第1対向電極14に形成された3個の静電容量C1a,C1b及びClcは、静電容量C1と静電容量C1bとが直列に接続されたものと同等であると考えることができる。
【0052】
よって、静電容量センサ10全体で考えた場合、第1対向電極14に膜状媒体Bが挿入されることにより、静電容量C1,C2及びC1bが電気的に直列に接続された回路が形成されると考えることができる。
【0053】
ところで、上述したように、静電容量C1とC2とを直列に接続した部分については、大気の誘電率が変化しても検出信号が変化しない。よって、膜状媒体Bが挿入された静電容量センサ10からの検出信号の変化は、静電容量C1b、すなわち、膜状媒体Bの静電容量に由来するものとなる。
【0054】
つまり、静電容量センサ10では、大気の誘電率が変化したとしても、その誘電率の変化は相殺され、膜状媒体Bの静電容量C1bに由来する検出信号が出力される。
【0055】
(効果)
(1)この実施の形態の静電容量センサ10では、第1対向電極14及び第2対向電極16を電気的に直列に接続し、電極間配線18の中点Pに設けた出力端20から検出信号を取り出すという簡単な構成により、検出信号から、電極14aと14b、及び電極16aと16bの間に介在する媒質(大気)の誘電率の変化分を除くことができる。その結果、従来以上により正確に膜状媒質Bの厚みDや枚数を評価することができる。
【0056】
より詳細には、従来型センサ100では、厚みDが約100μm程度の膜状媒体Bの枚数を評価することしかできなかったが、この実施の形態の静電容量センサ10では、厚みDが50μmの膜状媒体Bの枚数を評価することができる。
【0057】
(2)また、静電容量センサ10は、特許文献1に開示された技術とは異なり、複雑な演算回路を必要としない。よって、演算に要する時間等を考慮する必要がなく、より迅速に膜状媒体Bの厚みDや枚数を評価することができる。また、演算回路を設けるスペースを節約できるので、静電容量センサ10をより小型に形成することができる。
【0058】
(変形例)
(1)この実施の形態においては、出力端20を電極間配線18の中点に設けた場合について説明した。しかし、出力端20は、電極間配線18に設けられていれば、中点Pの位置である必要はない。出力端20は、静電容量センサ10の設計に応じて、任意好適な位置に設けることができる。
【0059】
この場合、出力端20から出力される電圧を、中点Pから出力される電圧と比較して、補正しておけばよい。
【0060】
(2)また、この実施の形態では、電極14aと14bとの間、及び電極16a及び16bとの間に介在する媒質を大気とした場合について説明した。しかし、媒質は大気には限定されず、例えば窒素ガスや、ハロゲンガス等の種々の気体状の媒質を用いることができる。
【0061】
(3)また、この実施の形態では、膜状媒体Bとして紙、特に紙幣を用いた場合について説明した。しかし、膜状媒質Bは、大気の誘電率ε0よりも若干大きな誘電率ε、詳細には、ε0<ε<10であり、厚みDが、電極間距離dの1/100以下であれば、特に限定されない。例えば、樹脂フィルム、布等であっても構わない。
【0062】
(4)この実施の形態では、膜状媒体Bを第1対向電極14に挿入する場合について説明した。しかし、膜状媒体Bは、第2対向電極16に挿入してもよい。つまり、第1及び第2対向電極14及び16のいずれか一方にのみ膜状媒体Bが挿入されればよい。このように構成することによっても、静電容量センサ10は、上述したような効果を奏する。
【0063】
(実施の形態2)
図4を参照して、実施の形態2の静電容量センサについて説明する。図4は、この実施の形態の静電容量センサ30の構成を概略的に示す模式図である。なお、図4において、図1と同様の構成要素には同符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
(構造)
この実施の形態の静電容量センサ30は、上述した検出器22が、膜状媒体Bの進行方向に沿って、複数個並列して配置されていたり、進行方向に直角に複数個配置されたりしている。
【0065】
すなわち、静電容量センサ30は、実施の形態1で説明した検出器22と同様に構成されている第1〜第n検出器221〜22nを備えている。そして、これらの第1〜第n検出器221〜22nは、膜状媒体Bの搬送方向に沿って並列して配置されている。より詳細には、第1対向電極141〜14nにおいて、電極14a1〜14anと電極14b1〜14bnとがなすそれぞれの間隔の間を膜状媒体Bが搬送されるように、第1〜第n検出器221〜22nが配置されている。
【0066】
また、静電容量センサ30には、第1〜第n検出器221〜22nの動作を制御するための制御部27が設けられている。制御部27は、不図示の中央処理部と、内部記憶部と、入出力部とを備えたCPUとして構成されている。なお、制御部27を構成するCPUは、従来公知であるとともに、この発明の要旨とは直接関係しないのでこれ以上の説明を省略する。
【0067】
(動作)
静電容量センサ30を構成する個々の検出器221〜22nの動作は、実施の形態1の静電容量センサ10と同様である。
【0068】
ただし、静電容量センサ30は、n個の検出器221〜22nを備えているので、膜状媒体Bが搬送されていく過程で、これらを所定のタイミングで切り替える必要がある。この切り替えは、制御部27の内部記憶部から中央処理部へと読み出されたプログラムに従い実行される。ただし、この切り替えの具体的な処理内容は、本発明の要旨と直接関係しないので、これ以上の説明を省略する。
【0069】
(効果)
この実施の形態の静電容量センサ30は、実施の形態1の静電容量センサ10と同様の効果を奏する。さらに静電容量センサ30は、n個の検出器221〜22nを配置することにより、膜状媒体Bが大面積の場合や、膜状媒体Bの場所により誘電率が変化していたとしても、これらを独立して検出することができる。その結果、膜状媒体Bの厚みDの変化を2次元的に評価することができる。
【0070】
(変形例)
この実施の形態においては、第1〜第n検出器221〜22nを1列に配置する場合について説明したが、第1〜第n検出器221〜22nの配置は、1列には限定されず、複数列にわたって検出器を配置してもよい。このように構成することにより、さらに大面積の膜状媒体Bの測定を行うことができる。また、このように構成することにより、膜状媒体Bの厚みDの平面的な分布を評価することが可能となる。
【0071】
(実施の形態3)
図5を参照して、実施の形態3の静電容量センサについて説明する。図5は、この実施の形態の静電容量センサ40の構成を概略的に示す模式図である。なお、図5において、図1と同様の構成要素には同符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
(構造)
この実施の形態の静電容量センサ40は、第1対向電極14が、共通した交流電源12に接続された複数の第1サブ対向電極14S1〜14Snを備えており、複数の第1サブ対向電極14S1〜14Snが、膜状媒体Bの進行方向に沿って並列して配置されている。
【0073】
そして、電極間配線18が、第1サブ対向電極14S1〜14Snのそれぞれと、共通した第2対向電極16とを電気的に直列に接続する、複数のサブ電極間配線18S1〜18Snを備えており、サブ電極間配線18S1〜18Snのそれぞれには、サブ電極間配線18S1〜18Snを切り替えるためのスイッチ421〜42nとが設けられている。
【0074】
この実施の形態の静電容量センサ40は、第1対向電極14が第1サブ対向電極14S1〜14Snを備えている点、及び電極間配線18がサブ電極間配線18S1〜18Snを備えている点、及びスイッチ421〜42nが設けられている点を除けば、実施の形態1の静電容量センサ10とほぼ同様に構成されている。従って、以下の説明では、主にこの相違点について説明する。
【0075】
静電容量センサ40は、第1サブ対向電極14S1〜14Snの電極14Sa1〜14Sanのそれぞれに共通の交流電源12が接続されている。また、電極14Sb1〜14Sbnのそれぞれには、共通の第2対向電極16との間を接続するサブ電極間配線18S1〜18Snが接続されている。さらに、サブ電極間配線18S1〜18Snには、第1サブ対向電極14S1〜14Snを切り替えるためのスイッチ421〜42nが設けられている。
【0076】
また、出力端20は、処理装置29に接続されている。
【0077】
さらに、静電容量センサ40には、スイッチ421〜42nの切り替え等の全体の動作を制御するための制御部27が設けられている。
【0078】
(動作)
膜状媒体Bは、不図示の搬送機構により、電極14Sa1〜14Sanと電極14Sb1〜14Sbnとの間の間隔を搬送されていく。それに伴い、上述した制御部27は、スイッチ421〜42nのON/OFF状態を、読み込まれたプログラムに従って実行する。なお、制御部27によるスイッチ421〜42nのON/OFF制御においては、n個のスイッチ421〜42nのうち、同時に2個以上のスイッチがON状態とならないように制御が行われる。
【0079】
ON状態となったスイッチ42i(iは、1≦i≦nの整数)を備えたサブ電極間配線18Siの出力端を20iからは、検出信号が出力され、処理装置29により処理される。
【0080】
(効果)
この実施の形態の静電容量センサ40は、実施の形態1の静電容量センサ10及び実施の形態2の静電容量センサ30と同様の効果を奏するとともに、交流電源12及び第2対向電極16の個数を1個としているので、実施の形態2の静電容量センサ30よりも、より小型化が可能である。
【0081】
(変形例)
静電容量センサ40は、実施の形態2の静電容量センサ30の場合と同様に、第1サブ対向電極14S1〜14Snを複数列にわたって配置してもよい。このように構成することにより、さらに大面積の膜状媒体Bの測定を行うことができる。また、このように構成することにより、膜状媒体Bの厚みDの平面的な分布を評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施の形態1の静電容量センサの構成を概略的に示す模式図である。
【図2】従来型センサの概略的な構成を示す模式図である。
【図3】(A)は、大気の誘電率がε0の場合に、静電容量センサを電気回路として表わした模式図である。(B)は、大気の誘電率がε0’の場合に、静電容量センサを電気回路として表わした模式図である。(C)は、第1対向電極に膜状媒体が挿入された場合に、静電容量センサを電気回路として表わした模式図である。
【図4】実施の形態2の静電容量センサの構成を概略的に示す模式図である。
【図5】実施の形態3の静電容量センサの構成を概略的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0083】
10,30,40 静電容量センサ
12 交流電源
14 第1対向電極
14a,14b,16a,16b,14a1〜14an,14b1〜14bn,14Sa1〜14San,14Sb1〜14Sbn 電極
14S1〜14Sn 第1サブ対向電極
16 第2対向電極
18 電極間配線
18S1〜18Sn サブ電極間配線
20 出力端
22 検出器
221〜22n 第1〜第n検出器
24 アンプ
26 A/Dコンバータ
27 制御部
28 処理部
29 処理装置
421〜42n スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された2枚の電極からなる対向電極の当該電極間の間隔に膜状媒体を挿入することにより生じる静電容量の変化を利用して、前記膜状媒体の厚みを検出する静電容量センサにおいて、
前記対向電極としてそれぞれ設けられた、交流電源に接続された第1対向電極及び接地された第2対向電極と、前記第1及び第2対向電極間を電気的に直列に接続する電極間配線と、該電極間配線の接続中点に設けられていて、静電容量の変化表わす検出信号を出力する出力端とを有する検出器を備えていて、
前記第1対向電極の2枚の電極間に膜状媒体が挿入されることを特徴とする静電容量センサ。
【請求項2】
前記検出器が、前記膜状媒体の進行方向に沿ってまたは進行方向に直角に、複数個並列して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量センサ。
【請求項3】
前記第1対向電極が、共通の前記交流電源に接続された複数の第1サブ対向電極を備えており、
複数の該第1サブ対向電極が、前記膜状媒体の進行方向に沿って並列に配置されており、
前記電極間配線が、前記第1サブ対向電極のそれぞれと共通の前記第2対向電極とを電気的に直列に接続する複数のサブ電極間配線を備えており、
該サブ電極間配線のそれぞれには、当該サブ電極間配線を切り替えるためのスイッチが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−107359(P2010−107359A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279751(P2008−279751)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】