説明

静電容量圧力センサーのためのバッフル

【課題】静電容量圧力センサーのためのバッフルを提供する。
【解決手段】バッフル30が、小さな容量を有するように、静電容量圧力センサー10の近傍に配置される。このバッフルは高縦横比の径方向通路44を創り出し、ダイアフラム16に到達する前の分子の移動を創り出す。この通路は、汚染物がダイアフラムに到達する前に、バッフルまたはハウジング12に付着することを推進する。センサーは更に、導入部14とバッフルの間に粒子のトラップ28を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ダイアフラムと電極との間の静電容量の変化を感知する静電容量圧力センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量圧力センサーは、気候制御システムおよび半導体の加工を含む多数の応用において知られる。圧力センサーは、1つのハウジングと、圧力が感知される流体(気体または液体)を収容する1つの入力と、導電性の可撓性ダイアフラムと、前記ダイアフラムに隣接する1つの電極とを有する。このダイアフラムと電極は、これらの間にキャパシタンスを有する。このセンサーは、ダイアフラムが、流体からの圧力に応答して電極に対して移動する際のキャパシタンスの変化を感知する。
【0003】
圧力が感知される流体の導入口と可撓性ダイアフラムの間にバッフルを備えることは望ましい。このバッフルは、ダイアフラムの汚染物質による汚染の防止を助ける。あらゆる目的で参照することによってここに組み込まれるUS特許第5,811,685号は、バッフルとそれ以前のバッフルのデザインを記載する。この特許は、更に、バッフルの設置理由を論じるとともに、そのようなセンサーにおけるバッフルの利点を記述する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,811,685号
【発明の概要】
【0005】
この発明の静電容量センサーは、流体を受け入れるための1つのハウジングと、流体中の圧力変化に応答して撓むダイアフラムと、気体の分子を導入口とダイアフラムの間に流すための大きい縦横比の径方向通路を準備するために設計されたバッフルとを有する。この発明は、バッフルがトラップシステムとダイアフラムの間に来るように配置された(バッフルでもある)粒子トラップシステムをも備えることが好ましい。バッフルによって形成される通路の縦横比(間隙に対する径方向の割合)は、10よりも大きく、好ましくは50よりも大きい。
【0006】
別の様相において、静電容量圧力センサーは、流体を受け入れるための導入口を備える1つのハウジングと、流体中の圧力に応答して撓むダイアフラムと、導入口とダイアフラムの間のバッフルとを有し、バッフルは、分子によって導入口からダイアフラムに取り込まれる通路が、薄い流れに抗する分子の流れを創り出すように設計される。
【0007】
このバッフルは、ダイアフラムに近く好ましく配置されるので、両者の間には小さな容積が存在し、したがって、センサーは気体の圧力変化に迅速に応答する。
【0008】
バッフルによって形成される大きな縦横比の通路は、分子がダイアフラムの可撓性部分に到着する前に、バッフルまたはハウジングの表面に接着する傾向を増大し、それによって、ダイアフラムを堆積から保護する。バッフルとダイアフラムの間の小容積は、大きな容積がそうするであろう程には応答時間を減少させない。その他の特徴と利点は、以下の詳細な説明、添付図面および冒頭の請求項の記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明のセンサーの半体の断面図。
【図2】粒子トラップの平面図。
【図3】この発明のバッフルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、センサー10の対称半体の断面図を示す。センサー10は、感知しようとする流体を受け入れるための導入口14を備えるハウジング部材12を有する。ハウジング部材12と別のハウジング部材18の間には、ダイアフラム16が溶接される。1つの室20が、ダイアフラム16とハウジング部材18とによって囲まれ、所望する圧力、例えば零の圧力を有する。ダイアフラム16の隣には、電極22が柱24によって支持される。ここでは、単一の導電体として示されるけれども、この電極は絶縁体(セラミック製の)のディスク面に形成された1つまたは複数の導電性フィルムであって差し支えない。このダイアフラムと電極は、両者の間に静電容量を有する。ダイアフラム16は、流体導入口14内の圧力変化に応答して撓み、かくして、ダイアフラムと電極間のキャパシタンスを変化させる。
【0011】
導入口とダイアフラムの間の通路には、トラップシステム28が存在し、トラップシステム28とダイアフラム16の間にはバッフル30が存在する。トラップシステム28の設計は、組み込まれた特許にもっと詳しく説明されている。ここで図2も参照すると、トラップシステム28は、ダイアフラムへの導入口からの直接の通路を遮断するために導入口14の直径よりも大きい直径を備える中央部分34を有する。中央部分34の周囲には、多数の周辺開口部36が存在する。これらの開口部は、円周方向においてトラップシステムを中心にして等間隔の連続したセクターとして形成され、径方向に異なる直径ごとにも配列される。
【0012】
図1を参照すると、導入口14からの粒子は、ハウジング部材12とトラップシステム28の間の環状領域38を通過し、次いで、(粒子が、環状領域または開口部にフィットして通過するには小さすぎるのでなければ)開口部36を通過する。環状領域38と開口部36は、比較的大きい粒子(例えば、250ミクロンまたはこれより大きい)が、通過しないような大きさとする。
【0013】
図3を参照すれば、バッフル30は、必須要件として、周辺部に等間隔に離間した複数のタブ40を備える円形の金属製プレートである。これらのタブは、必須の要件として、バッフル30とハウジング部材12の間において径方向に1つの幅を備える多数の環状セクター42を規定する。前記の幅は、タブの長さに等しい。バッフルの設計とハウジングに対する位置は、こうして流体が通過することができる環状セクターとしての開口部を規定する。
【0014】
バッフル30は、ハウジング部材12の隣に配置されており、開口部36と環状セクター42の間を通り、ついでダイアフラム16に流れる汚染物質の成分を含む気体のための径方向通路44を規定する。この径方向通路の縦横比は、バッフル30とハウジング部材12の間の間隙部を示す間隔の大きさdに対する開口部36から環状セクター42までの通路の径方向長さlの割合として規定される。この発明の縦横比は、10より大きく、好ましくは50より大きい。前記の長さは好ましくは少なくとも1cm、好ましくは約1〜4cmの範囲にある。前記間隙部は、好ましくは約0.1cmより小さく、好ましくは、0.025〜0.1cmの範囲にある。
【0015】
そのような大きい縦横比の通路内を移動する汚染分子は、この通路を移動する間に、バッフル30の表面とハウジング部材12とに何百回も衝突する傾向がある。
【0016】
そのような分子がバッフル30またはハウジング部材12の表面に付着する確率は、これらの衝突回数と付着率との関数である。衝突回数が増大するにつれて、分子が付着する傾向は劇的に上昇する。もしも、衝突回数が100よりも大きいならば、低い付着率であっても、結果としてバッフルやハウジング面に付着する確率は大きくなり、それによって、付着物からダイアフラムを守る。この通路はこのように設計されるので、汚染物が付着する傾向が相当に大きい。
【0017】
この通路は、正常な真空加工状態、すなわち、100mT以下の状態において、分子の流れを創り出す。そのような分子の流れは、間隙を移動する分子について表面との多数回の衝突を発生する。前記の分子流は、周囲に流れの境界層があって中心部の流れを分離する層流に抗するものである。層流に抗する分子流は、分子の平均自由行程が通路(ここでは間隙)の寸法よりも極めて大きい流れであり、言い換えれば、分子は、それが他の分子に衝突するよりも頻繁に通路壁に衝突する。
【0018】
もしも、バッフルとダイアフラムの間に大きな容積が存在するならば、ダイアフラムのための応答時間は、V/Cとして規定される残りの空気の時間定数が原因となって減少する。ここに、VはコンダクタンスCを備える通路の背後の容積である。この発明に関しては、しかしながら、バッフルとダイアフラムの間の容積が小さいので、小さな間隙が、流れに作用する制限に起因する低コンダクタンスを強制するとしても、応答が迅速である。バッフル30とダイアフラム16の間の間隙は、好ましくは、約0.025〜0.1cmであり、バッフル30とダイアフラム16のインターバル容積50は、好ましくは、0.1立方インチ(1.6立方センチ)以下であって、0.05立方インチ(0.8立方センチ)よりも大きい。
【0019】
トラップシステム28は、好ましくは、ステンレススチールまたはInconelのような合金である耐腐蝕性の非汚染材料から製造される。
【0020】
この発明のバッフルは、このように、ダイアフラムに到達する前の分子の衝突と付着を可能とする有利に長い通路を提供するとともに、他方において同時に、バッフルとダイアフラムの間の小容積を有利に提供する。
【0021】
この発明の具体例を説明したが、付属の請求項によって規定されるこの発明の範囲を逸脱することなく、改変を行うことが可能であることは明らかである。例えば、バッフルシステムは異なる静電容量センサーと共用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を受け入れるための導入部を有するハウジングと、 流体からの圧力に応答して撓むためのダイアフラムと、 ダイアフラムによる移動に応答して変化するキャパシタンスを規定するキャパシターから離間した電極と、 導入部とダイアフラムとの間に配置され、分子がダイアフラムに到達する前に、分子が通過する1つまたは複数の開口部を規定するために形成されるバッフルとからなる静電容量性圧力センサーであって、 前記バッフルは、分子がダイアフラムに到達する前に、分子が導入部からハウジングとバッフルの間の通路に沿って開口部に移動しなければならないように配置され、形成されており、 通路の長さの、ハウジングとバッフルの間の間隙に対する比率が少なくとも10である静電容量圧力センサー。
【請求項2】
前記比率が少なくとも50である請求項1記載のセンサー。
【請求項3】
バッフルは、ダイアフラムから0.1cm以下に離間される請求項1記載のセンサー。
【請求項4】
バッフルとダイアフラムの間の容積は1.6立方センチ以下である請求項1記載のセンサー。
【請求項5】
導入部とバッフルの間に粒子トラップを更に備え、前記トラップは、周辺領域において導入部と開口部を横断する閉じた中心部分を有する請求項1記載のセンサー。
【請求項6】
バッフルは、等間隔に離間した複数のタブを備え、実質的に円形であり、周方向においてタブ同士の間、および、バッフルとハウジングの間において開口部として径方向に環状セクターを規定する請求項5記載のセンサー。
【請求項7】
通路の長さは径方向であり、トラップの開口部からバッフル内のセクターに向かって延出する請求項6記載のセンサー。
【請求項8】
バッフルは実質的に円形で、等間隔に離間された複数のタブを備え、タブ同士の間のセクターを規定する請求項1記載のセンサー。
【請求項9】
通路の長さが少なくとも1cmである請求項1記載のセンサー。
【請求項10】
通路の長さが1〜4cmの範囲にある請求項9記載のセンサー。
【請求項11】
間隙は、0.1cm以下である請求項9記載のセンサー。
【請求項12】
間隙は、0.1cm以下である請求項1記載のセンサー。
【請求項13】
平面内に第1の直径を有する導入部を備えるハウジングと、前記平面に平行な閉じた中心位置を備えるとともに、第1の直径よりも大きい第2の直径を有し、開口部よりも小さい粒子を通過させる周方向の開口部とを備える第1のバッフル部材と、 前記平面に平行してハウジングに接続された可撓性ダイアフラムと、 前記平面に平行な第2のバッフル部材とからなる静電容量圧力センサーであって、 前記第2のバッフルは、ダイアフラムと第1のバッフル部材の間に配置され、前記第2の直径よりも大きい第3の直径と、前記平面に垂直な方向に流体を通過させるハウジングから離間した周辺部とを有する静電容量圧力センサー。
【請求項14】
第1のバッフル部材の開口部同士の間の径方向通路と周辺部とが、10よりも大きい縦横比を有する請求項13記載の圧力センサー。
【請求項15】
縦横比が50よりも大きい請求項14記載の圧力センサー。
【請求項16】
ハウジングは、粒子が導入部から第1のバッフル部材の開口部に移動させる環状開口部を有する請求項13記載の圧力センサー。
【請求項17】
第2のバッフル部材とダイアフラムの間の容積が1.6立方センチ以下である請求項13記載の圧力センサー。
【請求項18】
第1のバッフル部材の開口部同士の間の径方向通路と周辺部は、10よりも大きい縦横比を有する請求項17記載の圧力センサー。
【請求項19】
縦横比が50よりも大きい請求項18記載の圧力センサー。
【請求項20】
流体を受け入れるための導入部を有するハウジングと、 流体からの圧力に応答して撓むためのダイアフラムと、 ダイアフラムによる移動に応答して変化するキャパシタンスを規定するキャパシターから離間した電極と、 導入部とダイアフラムとの間に配置され、分子がダイアフラムに到達する前に、分子が通過する1つまたは複数の開口部を規定するために形成されるバッフルとからなる静電容量性圧力センサーであって、 前記バッフルは、分子がダイアフラムに到達する前に、分子が導入部からハウジングとバッフルの間の通路に沿って開口部に移動しなければならないように配置され、形成されており、 通路の幾何学的構造が分子の流れを創り出す静電容量圧力センサー。
【請求項21】
バッフルとダイアフラムとの間の容積が1.6立方センチ以下である請求項20記載のセンサー。
【請求項22】
導入部とバッフルの間に粒子トラップをさらに有し、前記トラップは、導入部と周辺領域内の開口部とを横断する閉じた中心部分を有する請求項20記載のセンサー。
【請求項23】
バッフルは、等間隔に離間した複数のタブを備え、実質的に円形であり、周方向においてタブ同士の間、および、バッフルとハウジングの間において開口部として径方向に環状セクターを規定する請求項22記載のセンサー。
【請求項24】
通路の長さは径方向であり、トラップの開口部からバッフル内のセクターに向かって延出する請求項23記載のセンサー。
【請求項25】
バッフルは実質的に円形で、等間隔に離間された複数のタブを備え、タブ同士の間のセクターを規定する請求項20記載のセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−149946(P2011−149946A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−41671(P2011−41671)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2001−522057(P2001−522057)の分割
【原出願日】平成12年9月8日(2000.9.8)
【出願人】(592053963)エム ケー エス インストルメンツ インコーポレーテッド (114)
【氏名又は名称原語表記】MKS INSTRUMENTS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】