説明

静電荷を粒子に付与する方法

【課題】静電荷を粒子に付与する方法を提供する。
【解決手段】複数の帯電対象粒子145を複数のナノ構造120に提供する。複数のナノ構造120は互いに離間された複数の電極を含む第1の電極アレイ111を覆うように配置される。第1の電極アレイ111に機能的に接続された多相電源130により多相電圧を第1の電極アレイ111に印加して第1の電極アレイ111の各電極間に移動電界を生成する。複数のナノ構造120からは電子が放出され複数の荷電粒子146が形成される。移動電界により複数の荷電粒子146の各々は所定の表面へと運ばれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、より詳細には粒子を帯電するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真(xerographic)粉末マーキングは、電子写真潜像を現像するために帯電されるトナー粒子に依存している。しかし、 印刷システムが適切に作用するためにはこのトナー電荷を調節して指定範囲内に保たなくてはならない。よって、トナー電荷の制御が多くの研究の対象となっている。トナー粒子の帯電方法は多くあり、例えば二成分現像システムでは、トナー粒子はキャリヤの表面との接触によって帯電され、キャリヤ表面の化学的性質は電荷がキャリヤ表面からトナー粒子に移動するように最適化される。電荷の制御は、精密なセンサを必要とするトナーのキャリヤへの集中の制御と、添加剤とによってなされる。しかし、トナー又はキャリヤ表面が古くなったり空気中の水分含有量が変わったりした場合、 複雑な材料設計及び制御アルゴリズムを生じる新しい電荷の関係が、現像された画像の安定化に必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、トナーを帯電するための新しい方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
種々の実施の形態に従って、静電荷を粒子に付与する方法がある。この方法は、複数の帯電対象粒子を提供することと、互いに離間された複数の電極を含む第1の電極アレイを覆うように複数のナノ構造を提供することと、を含むことができる。また、この方法は、第1の電極アレイに機能的に接続(機能上結合)された多相電圧源を提供することと、多相電圧を第1の電極アレイに印加して第1の電極アレイの各電極間に移動電界を生じ、複数のナノ構造から電子放出を生じて複数の荷電粒子を形成することと、を含むことができる。この方法は、移動電界を用いて複数の荷電粒子の各々を表面に運ぶことを更に含むことができる。
【0005】
種々の実施の形態によると、静電荷を粒子に付与する別の方法がある。この方法は、複数の帯電対象粒子を提供することと、回転表面に近接して配置された第1の電極を覆うように配置された複数のナノ構造を提供することと、を含むことができる。この方法は、第1の電極と回転表面との間に電界を付与し、複数のナノ構造から電子放出を生じることと、複数の荷電粒子を形成することと、を更に含むことができる。
【0006】
更に別の実施の形態によると、静電荷を粒子に付与するシステムがある。このシステムは、第1の電極アレイを覆うように配置された複数のナノ構造を含むことができ、第1の電極アレイは、互いに離間された複数の電極と、第1の電極アレイに機能的に接続され、多相電圧を第1の電極アレイに供給して第1の電極アレイの各電極間に移動電界を生じる電源と、を含み、移動電界が複数のナノ構造から電子放出を生じ、複数の荷電粒子を形成する。また、このシステムは複数のナノ構造に近接した表面を含むことができ、移動電界を用いて複数の荷電粒子が表面に運ばれる。
【0007】
別の実施の形態によると、複数の帯電対象粒子を含む粒子に静電荷を付与するシステムがある。また、このシステムは、回転表面に近接して配置された第1の電極を覆うように配置された複数のナノ構造と、電圧を供給して第1の電極と回転表面との間に電界を生じる電源と、を含むことができ、電界は複数のナノ構造から電子放出を生じて複数の荷電粒子を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明内容の種々の実施の形態に従って静電荷を粒子に付与する例示的なシステムを示す図である。
【図2】本発明内容の種々の実施の形態に従って静電荷を粒子に付与する別の例示的なシステムを示す図である。
【図3】本発明内容の種々の実施の形態に従って静電荷を粒子に付与する更に別の例示的なシステムを示す図である。
【図4】本発明内容に従って静電荷を粒子に付与する別の例示的なシステムを示す図である。
【図5】本発明内容の種々の実施の形態に従って静電荷を粒子に付与する図4の例示的なシステムの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、静電荷を粒子145に付与する例示的なシステム100を示している。このシステム100は、第1の電極アレイ111を覆うように配置された複数のナノ構造120を含むことができ、第1の電極アレイ111は図1に示すように互いに離間された複数の電極を含むことができる。種々の実施の形態では、第1の電極アレイ111を含む第1の基板(基体)110の上に複数のナノ構造120を配置することができる。いくつかの実施の形態では、第1の電極アレイ111を電気絶縁基板110の上に配置し、保護及び電荷消散コーティング(図示せず)で被覆して静電荷の蓄積を取り除くことができる。基板110の例示的な材料としては、ポリイミド、ポリエステル、ポリスチレン又は優れた電気絶縁体を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。第1の電極アレイ111の例示的な材料としては、銅、金又は優れた導電体を挙げることができる。例示的なナノ構造120としては、単層カーボンナノチューブ(SWNT)、二層カーボンナノチューブ(DWNT)及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施の形態では、ナノ構造120をIV族、V族、VI族、VII族、VIII族、IB族、IIB族、IVA族及びVA族の1つ以上の元素で形成することができる。真空金属化及び真空蒸着を含むがこれらに限定されない好適な方法によってナノ構造120を製造することができる。種々の実施の形態において、ナノ構造120は直径を約10nmから約450nmとし、長さを約1μmから約200μmとすることができる。
【0010】
また、システム100は、第1の電極アレイ111に機能的に接続(機能上結合)され、多相電圧を第1の電極アレイ111に供給して第1の電極アレイ111の各電極間に移動電界を生じる電源130を含むことができ、移動電界は複数のナノ構造120から電子放出を生じて複数の荷電粒子146を形成することができる。種々の実施の形態では、複数の荷電粒子146の各々の静電荷量を移動電界の大きさ及び周波数によって制御することができる。更に、システム100は複数のナノ構造120に近接した表面150を含むことができ、移動電界を用いて複数の荷電粒子146を表面150上に運ぶことができる。種々の実施の形態では、表面150は、ドナーロール、ベルト、レセプタ(受容体、例えば、感光体)及び半導電性基体(半導体)のうちの少なくとも1つを含むことができる。いくつかの実施の形態では、表面150は回転基体を含むことができる。いくつかの実施の形態では、電源130は第1の電極アレイ111及び表面150に機能的に接続されることが可能である。
【0011】
図2は、静電荷を粒子245に付与する別の例示的なシステム200を示している。システム200は、互いに離間された複数の電極を含む第1の電極アレイ211を覆うように配置された第1の複数のナノ構造220と、互いに離間された複数の電極を含む第2の電極アレイ211’を覆うように配置された第2の複数のナノ構造220’と、を含むことができ、第2の電極アレイ211’を第1の電極アレイ211とほぼ平行に対向させて配置することができる。いくつかの実施の形態では、第1の電極アレイ211を含む第1の基板210の上に第1の複数のナノ構造220を配置することができ、第2の電極アレイ211’を含む第2の基板210’を覆うように第2の複数のナノ構造220’を配置することができる。いくつかの実施の形態では、第1の電極アレイ211を電気絶縁基板210の上に配置し、保護及び電荷消散コーティングで被覆することができる。他の実施の形態では、第2の電極アレイ211’を電気絶縁基板210’の上に配置し、保護及び電荷消散コーティングで被覆することができる。システム200は、第1の電極アレイ211及び第2の電極アレイ211’に機能的に接続され、多相電圧を第1の電極アレイ211及び第2の電極アレイ211’に印加して第1の電極アレイ211及び第2の電極アレイ211’の各電極間に移動電界を生じる電源230も含むことができる。また、システム200は、複数のナノ構造220、220’に近接した表面250を含むことができ、移動電界を用いて複数の荷電粒子246を表面250上に運ぶことができる。
【0012】
いくつかの実施の形態では、基板110、210及び210’は、銅などの金属電極を有する約20μmから約150μmの厚さのポリイミドフィルムを含む可撓性の回路基板とすることができる。種々の実施の形態では、第1の電極アレイ111、211及び第2の電極アレイ211’の複数の電極の各々は、約10μmから約100μmの幅及び約4μmから約10μmの厚さを有することができる。いくつかの実施の形態では、第1の電極アレイ111、211及び第2の電極アレイ211’は、複数の電極の各々の間に複数の電極の各々の幅と等しい間隔を有することができる。
【0013】
種々の実施の形態によると、静電荷を粒子145、245に付与する方法がある。この方法は、複数の帯電対象粒子(帯電すべき粒子)145、245を提供することと、互いに離間された複数の電極を含む第1の電極アレイ111、211を覆うように配置された複数のナノ構造120、220を提供することと、第1の電極アレイ111、211に機能的に接続された多相電源130、230を提供することと、を含むことができる。いくつかの実施の形態では、多相電源130、230を提供するステップは、図1に示すように第1の電極アレイ111及び表面150に機能的に接続された多相電源130を提供することを含むことができる。他の実施の形態では、第1の電極アレイ111、211の上に配置された複数のナノ構造120、220を提供するステップが、第1の電極アレイ111、211を含む基板110、210の上に配置された複数のナノ構造120、220を提供することを含むことができる。また、この方法は、多相電圧を第1の電極アレイ111、211に印加して第1の電極アレイ111、211の各電極間に移動電界を生じ、これによって複数のナノ構造120、220から電子放出を生じて複数の荷電粒子146、246を形成し、移動電界を用いて複数の荷電粒子146、246の各々を表面150、250に運ぶことを含むことができる。種々の実施の形態では、この方法は、移動電界の周波数及び大きさを用いて複数の荷電粒子146、246の各々の静電荷量を制御することを更に含むことができる。
【0014】
いくつかの実施の形態では、この方法は、互いに離間された複数の電極を含む第2の電極アレイ211’を覆うように配置された第2の複数のナノ構造220’を提供することを更に含むことができ、第2の電極アレイ211’を図2に示すように第1の電極アレイ211とほぼ平行に対向させて配置することができる。いくつかの実施の形態では、多相電圧を第1の電極アレイ211に印加して第1の電極アレイ211の各電極間に移動電界を生じるステップは、多相電圧を第1の電極アレイ211及び第2の電極アレイ211’に印加して第1及び第2の電極アレイの各電極間に移動電界を生じることを含むことができる。 特定の理論による制限を意図していないが、移動電界における電界は、基板210を離れてアクティブ領域に垂直の方向に移動するにつれて低下すると考えられる。よって、粒子の帯電は、電界が最も強く、更に輸送電界(移動電界)(transport field)が最も強い領域で生じることができ、このような領域では荷電粒子を基板210に沿って移動させる傾向にある。移動電界グリッドを平行に配置することにより、第1の電極アレイ111、211又は第2の電極アレイ211’の輸送電界から流れ出る粒子145、245を第1の電極アレイ111、211又は第2の電極アレイ211’のうちのもう一方によって捕らえることができる。種々の実施の形態では、移動電界を矩形波交流電界、正弦波交流電界、及び複数の正弦波電界の和のうちの少なくとも1つとすることができ、正弦波電界の和は下記式のような連続波を含む。
【0015】
【数1】



【0016】
当業者は、2つ以上の相及び1つ以上の異なる波形を用いて移動電界を発生できることを理解しているであろう。また、粒子145、245の移動の条件は粒子145、245の電荷の関数であるため、静電荷を粒子145、245に付与する方法は、粒子145、245の帯電と同時に電荷に対するフィルタリングを含むことができる。よって、粒子145、245が移動電界の周波数及び大きさによって決定される最適の電荷に達して荷電粒子146、246になると、粒子145、245は電極領域から出て表面に移動する。また、移動電界の周波数及び/又は大きさを制御して最適な電荷レベルの粒子146、246を生じることができる。
【0017】
種々の実施の形態によると、図3及び図4に示すように、静電荷を粒子345、445に付与する他の例示的なシステム300、400がある。システム300、400は、複数の帯電対象粒子345、445と、第1の電極315、415を覆うように配置された複数のナノ構造320、420をそれぞれ含むことができ、第1の電極315、415を回転表面350、450に近接して配置することができる。更に、システム300、400は、電圧を供給して第1の電極315、415と回転表面350、450との間に電界を生じる電源330、430を含むことができ、電界は複数のナノ構造320、420から電子放出を生じて複数の荷電粒子346、446を形成することができる。いくつかの実施の形態では、図3に示すように、複数の帯電対象粒子345を複数のナノ構造320の上に配置することができる。他の実施の形態では、図4及び図5に示すように、複数の帯電対象粒子445を回転表面450の上に配置することができる。いくつかの実施の形態では、図4及び図5に示すように、第1の電極415はブレードの形を有することができる。いくつかの実施の形態では、回転表面350、450は、ドナーロール、ベルト、レセプタ(受容体、例えば、感光体)及び半導電性基体のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0018】
種々の実施の形態によると、静電荷を粒子345、445に付与する方法がある。この方法は、複数の帯電対象粒子345、445を提供することと、第1の電極315、415を覆うように配置された複数のナノ構造320、420を提供することと、を含むことができ、図3、図4及び図5に示すように、第1の電極315、415を回転表面350、450に近接して配置することができる。ある実施の形態では、複数の帯電対象粒子345、445を提供するステップは、図3に示すように、複数のナノ構造320の上に配置された複数の帯電対象粒子345を提供することを含むことができる。他の実施の形態では、複数の帯電対象粒子345、445を提供するステップは、図4及び図5に示すように回転表面450の上に配置された複数の帯電対象粒子445の提供を含むことができる。種々の実施の形態では、第1の電極415を覆うように配置された複数のナノ構造420を提供するステップは、図4及び図5に示すようにブレードの形を有する第1の電極415を提供することを含むことができる。また、この方法は、第1の電極315、415と回転表面350、450との間に電界を付与し、これによって複数のナノ構造320、420から電子放出を生じ、複数の荷電粒子346、446を形成することを含むことができる。第1の電極315、415と回転表面350、450との間に電界を付与することで、ナノ構造320、420の先端において電荷の流れ又はコロナ発生を引き起こして粒子345、445を帯電することができ、粒子346、446の帯電レベルをバイアスレベルによって制御できることを、当業者は理解しているであろう。
【符号の説明】
【0019】
100、200、300、400 システム
110、210 第1の基板
111、211 第1の電極アレイ
120、220、320、420 ナノ構造
130、230、330、430 電源
145、245、345、445 粒子
146、246、346、446 荷電粒子
150、250、350、450 回転表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電荷を粒子に付与する方法であって、
複数の帯電対象粒子を提供することと、
互いに離間された複数の電極を含む第1の電極アレイを覆うように配置された複数のナノ構造を提供することと、
前記第1の電極アレイに機能的に接続された多相電圧源を提供することと、
多相電圧を前記第1の電極アレイに印加して前記第1の電極アレイの各電極間に移動電界を生じ、前記複数のナノ構造から電子放出を生じて複数の荷電粒子を形成することと、
前記移動電界を用いて前記複数の荷電粒子の各々を表面に運ぶことと、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記表面が、ドナーロール、ベルト、レセプタ及び半導電性基体のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面が回転基体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記移動電界の周波数及び大きさを用いて前記複数の荷電粒子の各々の静電荷量を制御することを更に含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−61122(P2010−61122A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−181585(P2009−181585)
【出願日】平成21年8月4日(2009.8.4)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】