説明

静電霧化装置および静電霧化方法

【課題】霧化電極と対向電極との間に生じる電界の緩和を防止することができる静電霧化装置および静電霧化方法を得る。
【解決手段】霧化電極1と、開口部をそれぞれ有し、霧化電極1に対向して、霧化電極1から離れる方向に並べられた複数の対向電極21〜23からなる対向電極群2と、を備え、霧化電極1と対向電極群2との間に電圧が印加されることにより、霧化電極1に供給された水を静電霧化して帯電微粒子30を生成し、開口部を通して帯電微粒子30を外部に放出する静電霧化装置であって、複数の対向電極21〜23のそれぞれは、霧化電極1から離れた対向電極21〜23ほど、霧化電極1との電位差が大きくなるように電圧が印加されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電霧化現象を利用して帯電微粒子を生成する静電霧化装置および静電霧化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水溜め部と、水溜め部内の水を搬送する多孔質体からなる搬送体と、搬送体と対向するように配置された対向電極と、搬送体からの水に電圧を印加する霧化電極と、霧化電極と対向電極との間に高電圧を印加する電圧印加部とを備え、水を破砕して空気中に放出する静電霧化装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
図9は、従来の静電霧化装置の要部を示す断面図である。
図9において、この静電霧化装置は、霧化電極51、霧化電極51に対向して設けられた対向電極52、霧化電極51と対向電極52との間に高電圧を印加する高圧電源53、霧化電極51および対向電極52を支持する筐体54並びに霧化電極51に水を供給する水供給手段(図示せず)を備えている。対向電極52は、開口部を有するとともに、接地されている。ここで、高圧電源53によって霧化電極51と対向電極52との間に高電圧を印加することにより、霧化電極51に供給された水が静電霧化されて、生成された帯電微粒子55が対向電極52の開口部から放出される。
【0004】
上記のような静電霧化装置によって生成された帯電微粒子(帯電ミストやイオンや電荷を持つ粒子)は、粒子径が1〜100nm程度と、人体の角質細胞の大きさよりも小さいので、角質に浸透して高い保湿効果を発揮するとともに、表面を親水化する作用を有している。また、高電圧によって帯電した帯電微粒子は、電位差のある物体や人に寄りやすい。さらに、ナノメートルサイズの帯電微粒子活性種が水分子に包み込まれるようにして存在するので、帯電微粒子は、脱臭作用や除菌作用を有するとともに、イオンとしては寿命が長く、空間を長時間にわたって浮遊することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−351276号公報
【特許文献2】特開2006−35171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
従来の静電霧化装置では、図9に示すように、生成された帯電微粒子が広角に放出され、開口部の下流側において、放出された帯電微粒子の一部が静電霧化装置の筐体に衝突・付着(衝突等)することにより、筐体が霧化電極と同極の電位に帯電される。また、従来の静電霧化装置では、生成された帯電微粒子の一部が、開口部から放出されずに霧化電極と対向電極との間に滞留する。また、開口部を縮小して、帯電微粒子の加速方向をなるべく狭めることにより、帯電微粒子の直進性を増すことが考えられるが、開口部を縮小すると、対向電極との衝突等によって消滅する帯電微粒子数が多くなる。
【0007】
筐体が霧化電極と同極の電位に帯電されると、または、帯電微粒子の一部が霧化電極と対向電極との間に滞留もしくは対向電極と衝突等すると、霧化電極と対向電極との電位差が小さくなる。ここで、霧化電極と対向電極との電位差が小さくなると、霧化電極と対向電極との間に生じる電界が緩和され、絶縁破壊電界以下になって静電霧化を行うことができなくなったり、放電を発生させるために、霧化電極により高い電圧を印加する必要が生じたりするという問題があった。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、霧化電極と対向電極との間に生じる電界の緩和を防止することができる静電霧化装置および静電霧化方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る静電霧化装置は、霧化電極と、開口部をそれぞれ有し、霧化電極に対向して、霧化電極から離れる方向に並べられた複数の対向電極からなる対向電極群と、を備え、霧化電極と対向電極群との間に電圧が印加されることにより、霧化電極に供給された水を静電霧化して帯電微粒子を生成し、開口部を通して帯電微粒子を外部に放出する静電霧化装置であって、複数の対向電極のそれぞれは、霧化電極から離れた対向電極ほど、霧化電極との電位差が大きくなるように電圧が印加されるものである。
【0010】
また、この発明に係る静電霧化方法は、霧化電極と、開口部をそれぞれ有し、霧化電極に対向して、霧化電極から離れる方向に並べられた複数の対向電極からなる対向電極群と、を備え、霧化電極と対向電極群との間に電圧が印加されることにより、霧化電極に供給された水を静電霧化して帯電微粒子を生成し、開口部を通して帯電微粒子を外部に放出する静電霧化装置における静電霧化方法であって、複数の対向電極のそれぞれに対して、霧化電極から離れた対向電極ほど、霧化電極との電位差が大きくなるように電圧が印加する電圧印加ステップを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る静電霧化装置または静電霧化方法によれば、対向電極群は、複数の対向電極から構成され、複数の対向電極のそれぞれは、霧化電極から離れた対向電極ほど、霧化電極との電位差が大きくなるように電圧が印加される。これにより、帯電微粒子が加速されて放出されるので、帯電微粒子が静電霧化装置の筐体に衝突等したり、開口部から放出されずに霧化電極と対向電極群との間に滞留したりすることが抑制される。
そのため、霧化電極と対向電極群との間に生じる電界の緩和を防止することができる静電霧化装置および静電霧化方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係る静電霧化装置を示す斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る静電霧化装置の要部を示す断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る静電霧化装置の要部を示す一部断面図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る静電霧化装置の要部を示す一部断面図である。
【図5】図4に示した複数の開口部を有する対向電極における霧化電極側の面を示す構成図である。
【図6】図4に示した複数の開口部を有する対向電極における霧化電極と反対側の面を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係る静電霧化装置の要部を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態5に係る静電霧化装置の要部を示す一部断面図である。
【図9】従来の静電霧化装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の静電霧化装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
なお、以下の各実施の形態では、対向電極群が2枚または3枚の対向電極から構成されている場合を例に挙げて説明しているが、これに限定されず、対向電極群は複数枚の対向電極から構成されていればよい。
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る静電霧化装置を示す斜視図である。また、図2は、この発明の実施の形態1に係る静電霧化装置の要部を示す断面図である。
図1、2において、この静電霧化装置は、霧化電極1、対向電極群2、高圧電源3、バイアス電源4、抵抗器5、貯水タンク6、導水管7および筐体8を備えている。霧化電極1および対向電極群2は、筐体8に支持されている。
【0015】
高圧電源3は、霧化電極1に対して、例えば−10〜−1kV、または+1〜+10kVの範囲内の直流高電圧を印加する。また、導水管7は、貯水タンク6に貯められた水を、導水管7の表面または内部を通じて霧化電極1の先端部に導入する。
霧化電極1は、高圧電源3から電圧が印加されることにより、貯水タンク6および導水管7から供給された水を静電霧化して、帯電微粒子(帯電ミストやイオンや電荷を持つ粒子)30を生成する。
【0016】
対向電極群2は、霧化電極1に対向して、霧化電極1から離れる方向に並べられた複数の対向電極21〜23から構成されている。また、対向電極21〜23のそれぞれは、生成された帯電微粒子30を通して外部に放出する開口部を有している。なお、対向電極21〜23は、電極どうしが互いに絶縁された状態で一体的に形成されてもよい。
バイアス電源4は、霧化電極1から最も近い対向電極21に対して、例えば−1000〜−1V、または1〜1000Vの範囲内で、かつ霧化電極1と同極の直流電圧を印加する。また、対向電極21〜23は、それぞれ1〜10Ωの範囲内の抵抗器(高精度抵抗器)5を介して互いに電気的に接続されている。
すなわち、対向電極21〜23のそれぞれは、霧化電極1から離れた対向電極ほど、霧化電極1との電位差が大きくなるように電圧が印加され、電位勾配が与えられている。
【0017】
以下、図1、2を参照しながら、この発明の実施の形態1に係る静電霧化装置の動作について説明する。
まず、高圧電源3およびバイアス電源4によって、霧化電極1と対向電極群2との間に所定の電位差が生じるように電圧が印加されることにより、霧化電極1の先端部に供給された水と対向電極群2との間にクーロン力が働いて、水の液面が局所的に盛り上がり、テーラーコーンと呼ばれる円錐形状に変形する。
【0018】
テーラーコーンが形成されると、テーラーコーンの先端に電荷が集中して電界強度が大きくなり、テーラーコーンに働くクーロン力が大きくなることによって、さらにテーラーコーンが成長する。このように、テーラーコーンが成長し、テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷密度が高密度になると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度になった電荷の反発力)を受け、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返し、1〜100nmの粒子径を有する帯電微粒子30が生成される。この帯電微粒子30は、電荷を持ち続けて、反対の極性を持つ物体に付着し、電荷が中和されることによって消滅する。
【0019】
ここで、上述したように、対向電極群2は、複数の対向電極21〜23から構成され、対向電極21〜23のそれぞれは、霧化電極1から離れた対向電極ほど、霧化電極1との電位差が大きくなるように電圧が印加される。
また、霧化電極1で生成される帯電微粒子30がn価の電荷を持ち、質量mであるとすると、帯電微粒子30に働く力Fは、次式(1)で表される。
【0020】
F=neE (1)
【0021】
式(1)において、eは電子の持つ電荷1.6×10−19C、Eは各電極間の電界強度を示している。また、この力Fによって生じる加速度の大きさをaとすると、次式(2)が成立する。
【0022】
ma=neE (2)
【0023】
式(2)において、各電極間の電界強度Eは、電極間電圧(電位差)Vと電極間距離dとの関数として、E=V/dで表されるので、加速度aは、次式(3)で表すことができる。
【0024】
a=neV/md (3)
【0025】
式(1)〜(3)より、霧化電極1から離れた対向電極ほど、帯電微粒子30に働く力が大きくなり、開口部を通る帯電微粒子30の加速度が大きくなることが分かる。すなわち、霧化電極1で生成されて対向電極21の開口部を通った帯電微粒子30は、より大きな力で対向電極22に吸引され、さらに加速されて放出される。また、対向電極22の開口部を通った帯電微粒子30は、より大きな力で対向電極23に吸引され、さらに加速されて高い直進性をもって外部に放出される。
【0026】
なお、帯電微粒子30は、移動距離に応じて分裂し、質量mが小さくなるが、このとき同時に保持している電荷量が減少するので、帯電微粒子30は、移動距離に応じて加速度が大きく変化することなく、ほぼ一定の加速度で加速しながら進むことになる。
【0027】
以上のように、実施の形態1によれば、対向電極群は、複数の対向電極から構成され、複数の対向電極のそれぞれは、霧化電極から離れた対向電極ほど、霧化電極との電位差が大きくなるように電圧が印加される。
これにより、霧化電極で生成された帯電微粒子が加速され、高い直進性をもって外部に放出されるので、放出された帯電微粒子が広がることなく、帯電微粒子が静電霧化装置の筐体に衝突等したり、開口部から放出されずに霧化電極と対向電極群との間に滞留したりすることが抑制される。
そのため、霧化電極と対向電極群との電位差が小さくなることを防止することができ、この結果、霧化電極と対向電極群との間に生じる電界の緩和を防止することができる。
また、霧化電極と対向電極群との間に生じる電界の緩和を防止することにより、連続して一定量の帯電微粒子を生成することができるとともに、印加電圧を低く抑えることができるので、オゾン等の活性粒子を発生させることなく、帯電微粒子のみを生成することができる。
【0028】
なお、上記実施の形態1では、霧化電極1から最も近い対向電極21に対して、霧化電極1と同極の直流電圧を印加すると説明した。しかしながら、これに限定されず、霧化電極1から最も近い対向電極21を接地し、対向電極22および霧化電極1から最も離れた対向電極23に対して、霧化電極1と逆極性の直流電圧を印加してもよい。
また、霧化電極1および対向電極21〜23のそれぞれに、霧化電極1が負極のときには昇順に、霧化電極1が正極のときには降順に直流電圧を印加し、抵抗器を介して対向電極を互いに接続してもよい。
さらに、抵抗器を介して対向電極を互いに接続する代わりに、対向電極21〜23のそれぞれに電源を接続して、霧化電極1から離れた対向電極ほど、霧化電極1との電位差が大きくなるように電圧を印加してもよい。
これらの場合も、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、これらの場合において、印加する電圧は、上流側の電圧または抵抗器の抵抗値を変化させることによって調整することができる。
【0029】
また、上記実施の形態1において、霧化電極1は、導通性を持つ多孔質のものであってもよいし、細い中空の針状のものであってもよい。
また、貯水タンク6から霧化電極1に供給される水は、重力落下、毛細管現象およびポンプや外部空気の取り込みによる圧力搬送のうち、何れの方法によって搬送されてもよい。
また、貯水タンク6を設けることなく、空気を冷却して得られた水や、圧縮により凝縮して得られた水を霧化電極1に供給してもよい。
さらに、霧化電極1に湿った空気や冷却した空気を当てることにより、電極表面または電極内部に直接水を凝縮してもよい。
これらの場合も、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
これらの置き換えは、以下の実施の形態においても同様に適用することができる。
【0030】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、複数の対向電極21〜23のそれぞれに対して、霧化電極から離れた対向電極ほど、霧化電極との電位差が大きくなるように電圧を印加することにより、霧化電極で生成された帯電微粒子が加速され、高い直進性をもって外部に放出されると説明した。
【0031】
しかしながら、帯電微粒子は、外部に存在する物体の電位が一様である場合には、対向電極群2から放出された方向に直進し、外部に帯電微粒子と同極の電位が存在する場合には、その電位を持つ物体を避けて進み、外部に帯電微粒子と異極の電位が存在する場合には、その電位を持つ物体に向けて進む。このように、帯電微粒子の放出方向は、外部の電位状態に応じて変化する。
【0032】
そのため、所望する帯電微粒子の放出方向がある場合には、その放出方向に向けて帯電微粒子を放出することが望ましい。
そこで、この実施の形態2では、帯電微粒子の放出方向を所望の方向に変化させる処理について説明する。
【0033】
図3は、この発明の実施の形態2に係る静電霧化装置の要部を示す一部断面図である。
図3において、この静電霧化装置は、図1、2に示した静電霧化装置に加えて、対向電極群2から放出される帯電微粒子30を鉛直方向に挟んで対向する第1偏向電極9、対向電極群2から放出される帯電微粒子30を水平方向に挟んで対向する第2偏向電極10、第1偏向電極9に電圧を印加する第1偏向バイアス電源(放出方向調整手段)11および第2偏向電極10に電圧を印加する第2偏向バイアス電源(放出方向調整手段)12を備えている。
なお、図3では、簡単のために、対向電極群2を2枚の対向電極21、22で構成している。また、その他の構成については、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0034】
以下、図3を参照しながら、この発明の実施の形態2に係る静電霧化装置の動作について説明する。なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
まず、対向電極群2から、加速されて直進性の高い帯電微粒子30が放出される。
続いて、第1偏向バイアス電源11が、帯電微粒子30の所望の放出方向に応じて、第1偏向電極9に印加される電圧を調整することにより、帯電微粒子30の鉛直方向の放出方向が調整される。
次に、第2偏向バイアス電源12が、帯電微粒子30の所望の放出方向に応じて第2偏向電極10に印加される電圧を調整することにより、帯電微粒子30の水平方向の放出方向が調整される。
【0035】
以上のように、実施の形態2によれば、放出方向調整手段は、放出される帯電微粒子を挟んで対向する偏向電極に電圧を印加することにより、対向電極群から放出される帯電微粒子の放出方向を調整する。
そのため、上記実施の形態1と同様の効果を得るとともに、帯電微粒子の放出方向を所望の方向に変化させることができる。
【0036】
実施の形態3.
上記実施の形態2では、帯電微粒子を挟んで対向する偏向電極に印加される電圧を調整することにより、帯電微粒子の放出方向を調整すると説明した。しかしながら、これに限定されず、対向電極に複数の開口部を設け、複数の開口部から帯電微粒子の所望の放出方向に応じた開口部を選択し、帯電微粒子を選択した開口部に通すことによって、帯電微粒子の放出方向を調整してもよい。
【0037】
図4は、この発明の実施の形態3に係る静電霧化装置の要部を示す一部断面図である。
図4において、この静電霧化装置は、図1、2に示した対向電極22、23に代えて、対向電極24と、切り替えスイッチ(放出方向調整手段)13とを備えている。
なお、対向電極24は、霧化電極1から最も離れた対向電極であるが、必ずしも1枚である必要はなく、同様の構成を有する対向電極が、霧化電極1から最も離れた対向電極から連続して複数枚設けられてもよい。
【0038】
図5は、図4に示した対向電極24における霧化電極1側の面(表面)を示す構成図である。また、図6は、図4に示した対向電極24における霧化電極1と反対側の面(裏面)を示す構成図である。
図5、6において、対向電極24は、1〜10mm程度の厚さの絶縁板31に、複数の開口部をくり貫いて形成されている。また、くり貫かれた開口部の周囲には、導電層が設けられ、それぞれ開口電極32が形成されている。対向電極24の裏面には、各開口電極32と1対1に接続された導電性の配線34が複数形成されている。また、各配線34の他端は、対向電極24の1辺に設けられて、切り替えスイッチ13との接続を実現するスイッチ接続部33内のスイッチ端子35と接続されている。
【0039】
なお、配線34は、ワイヤまたはペイント等、導電性を有する素材であればよい。また、図6に示したように、絶縁板31の表面に配線34が形成される必要はなく、各開口電極32とスイッチ端子35とが導通していれば、配線34は、絶縁板の間に挟まれる構成等であってもよい。
また、その他の構成については、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0040】
以下、図4〜6を参照しながら、この発明の実施の形態3に係る静電霧化装置の動作について説明する。なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
まず、対向電極21から、帯電微粒子30が放出される。
続いて、切り替えスイッチ13が、複数の開口電極32から、帯電微粒子30の所望の放出方向に応じた開口電極32を選択し、帯電微粒子30を選択した開口電極32に通すことにより、帯電微粒子30の放出方向が調整される。
このとき、対向電極21の開口部を通った帯電微粒子30は、より大きな力で対向電極24に吸引され、さらに加速されて放出される。
【0041】
以上のように、実施の形態3によれば、放出方向調整手段は、複数の開口部から、帯電微粒子の所望の放出方向に応じた開口部を選択し、帯電微粒子を選択した開口部に通すことにより、帯電微粒子の放出方向を調整する。
そのため、上記実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。
【0042】
実施の形態4.
上記実施の形態3では、対向電極に複数の開口部を設け、複数の開口部から帯電微粒子の所望の放出方向に応じた開口部を選択し、帯電微粒子を選択した開口部に通すことによって、帯電微粒子の放出方向を調整すると説明した。しかしながら、これに限定されず、霧化電極から最も離れた対向電極を、筐体に対して変位可能に設け、帯電微粒子の所望の放出方向に応じて対向電極を変位させることにより、帯電微粒子の放出方向を調整してもよい。
【0043】
図7は、この発明の実施の形態4に係る静電霧化装置の要部を示す断面図である。
図7において、この静電霧化装置は、図1、2に示した対向電極23に代えて、筐体8に対して変位可能に設けられた対向電極25と、対向電極25を変位させる図示しない変位調整手段(放出方向調整手段)とを備えている。
なお、対向電極25は、霧化電極1から最も離れた対向電極である。また、その他の構成については、実施の形態1と同様なので、説明を省略する。
【0044】
以下、図7を参照しながら、この発明の実施の形態4に係る静電霧化装置の動作について説明する。なお、実施の形態1と同様の動作については、説明を省略する。
まず、対向電極22から、加速されて直進性の高い帯電微粒子30が放出される。
続いて、変位調整手段が、帯電微粒子30の所望の放出方向に応じて、対向電極25を変位させることにより、帯電微粒子30の放出方向が調整される。
【0045】
以上のように、実施の形態4によれば、放出方向調整手段は、帯電微粒子の所望の放出方向に応じて、筐体に対して変位可能に設けられた対向電極を変位させることにより、帯電微粒子の放出方向を調整する。
そのため、上記実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。
【0046】
実施の形態5.
上記実施の形態2〜4では、帯電微粒子の放出方向を所望の方向に変化させる処理について説明したが、所望する帯電微粒子の放出方向を、静電霧化装置が搭載されるエアコンまたは空気清浄機からの風向情報や、静電霧化装置の周囲の状態を検出するセンサによる検出結果に応じて設定してもよい。
そこで、この実施の形態5では、風向情報や周囲の状態に基づいて、帯電微粒子の放出方向を変化させる処理について説明する。
【0047】
図8は、この発明の実施の形態5に係る静電霧化装置の要部を示す一部断面図である。
図8において、この静電霧化装置は、図4に示した静電霧化装置に加えて、切り替えスイッチ13の動作を制御する制御装置(制御手段)40と、状態検出手段である人感センサ41、温湿度センサ42、障害物センサ43、表面電位センサ44およびダストセンサ45とを備えている。
なお、その他の構成については、実施の形態3と同様なので、説明を省略する。
また、この実施の形態5に係る静電霧化装置は、実施の形態3に係る静電霧化装置に制御手段および状態検出手段を付加した構成としたが、実施の形態2、4に係る静電霧化装置に制御手段および状態検出手段を付加した構成としてもよい。
【0048】
以下、図8を参照しながら、この発明の実施の形態5に係る静電霧化装置の機能について説明する。
制御装置40には、静電霧化装置が搭載されるエアコン(空気調和機)または空気清浄機(空気調和機)からの風向情報が入力される。ここで、エアコンまたは空気清浄機は、ファンによって送風しているが、フラップ等の風向板の向きを変えることによって、送風方向を変えている。すなわち、エアコンまたは空気清浄機は、フラップの向きを風向情報として制御装置40に出力する。
【0049】
人感センサ41は、静電霧化装置の周囲に存在する人を検出し、検出結果を制御装置40に出力する。温湿度センサ42は、静電霧化装置の周囲の温度および湿度を検出し、検出結果を制御装置40に出力する。障害物センサ43は、静電霧化装置の周囲に存在する障害物を検出し、検出結果を制御装置40に出力する。表面電位センサ44は、静電霧化装置の周囲に存在する物体の表面電位を検出し、検出結果を制御装置40に出力する。ダストセンサ45は、静電霧化装置の周囲に存在する塵埃を検出し、検出結果を制御装置40に出力する。
【0050】
制御装置40は、エアコンまたは空気清浄機からの風向情報、および各種センサからの検出結果に基づいて、切り替えスイッチ13の動作を制御し、帯電微粒子30の放出方向を変化させる。
具体的には、制御装置40は、風向情報に基づいて、エアコンまたは空気清浄機の風向と帯電微粒子30の放出方向とが合うように、切り替えスイッチ13の動作を制御する。これにより、エアコンまたは空気清浄機からの送風に乗せて、帯電微粒子30を遠くまで搬送することができる。
【0051】
また、制御装置40は、人感センサ41からの検出結果に基づいて、人がいる方向、または人がいない方向に帯電微粒子30が放出されるように、切り替えスイッチ13の動作を制御する。これにより、風が当たるのを好む人や好まない人に応じて、帯電微粒子30を放出することができる。
【0052】
また、制御装置40は、温湿度センサ42からの検出結果に基づいて、湿度の低い方向に帯電微粒子30が放出されるように、切り替えスイッチ13の動作を制御する。これにより、快適な空間を保つことができる。なお、静電霧化装置の周囲の湿度が所定の湿度よりも低くなった場合に、帯電微粒子30を放出することとしてもよい。
【0053】
また、制御装置40は、障害物センサ43からの検出結果に基づいて、障害物の存在しない方向に帯電微粒子30が放出されるように、切り替えスイッチ13の動作を制御する。これにより、障害物と衝突して帯電微粒子30が消滅することを防止することができ、帯電微粒子30の長寿命化を実現することができる。
【0054】
また、制御装置40は、表面電位センサ44からの検出結果に基づいて、同極の帯電物を避ける方向、または逆極性の帯電物と衝突する方向に帯電微粒子30が放出されるように、切り替えスイッチ13の動作を制御する。これにより、同極の帯電物と衝突して帯電微粒子30が消滅することを防止することができ、帯電微粒子30の長寿命化を実現することができる。また、帯電微粒子30を逆極性の帯電物と衝突させることにより、帯電物を電気的に中和することができる。
【0055】
また、制御装置40は、ダストセンサ45からの検出結果に基づいて、塵埃と衝突する方向に帯電微粒子30が放出されるように、切り替えスイッチ13の動作を制御する。これにより、塵埃を凝縮し、空間から塵埃を取り除くことができる。なお、凝縮された塵埃は、滞留時に、エアコンまたは空気清浄機内に設けられたフィルタや集塵機によって捕らえられてもよい。
【0056】
以上のように、実施の形態5によれば、制御手段は、静電霧化装置が搭載される空気調和機から入力される風向情報に基づいて、放出方向調整手段による帯電微粒子の放出方向の調整動作を制御する。
そのため、空気調和機からの送風に乗せて、帯電微粒子を遠くまで搬送することができる。
【0057】
また、制御手段は、状態検出手段で検出された周囲の状態に基づいて、放出方向調整手段による帯電微粒子の放出方向の調整動作を制御する。
そのため、快適な空間を保つことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 霧化電極、2 対向電極群、8 筐体、9 第1偏向電極、10 第2偏向電極、11 第1偏向バイアス電源(放出方向調整手段)、12 第2偏向バイアス電源(放出方向調整手段)、13 切り替えスイッチ(放出方向調整手段)、21〜25 対向電極、30 帯電微粒子、32 開口電極、40 制御装置(制御手段)、41 人感センサ(状態検出手段)、42 温湿度センサ(状態検出手段)、43 障害物センサ(状態検出手段)、44 表面電位センサ(状態検出手段)、45 ダストセンサ(状態検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧化電極と、開口部をそれぞれ有し、前記霧化電極に対向して、前記霧化電極から離れる方向に並べられた複数の対向電極からなる対向電極群と、を備え、前記霧化電極と前記対向電極群との間に電圧が印加されることにより、前記霧化電極に供給された水を静電霧化して帯電微粒子を生成し、前記開口部を通して前記帯電微粒子を外部に放出する静電霧化装置であって、
前記複数の対向電極のそれぞれは、前記霧化電極から離れた対向電極ほど、前記霧化電極との電位差が大きくなるように電圧が印加される
ことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
前記対向電極群の前記霧化電極と反対側に設けられ、放出される前記帯電微粒子を挟んで対向する偏向電極と、
前記偏向電極に電圧を印加することにより、前記帯電微粒子の放出方向を調整する放出方向調整手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項3】
前記複数の対向電極のうち、少なくとも前記霧化電極から最も離れた対向電極は、複数の開口部を有し、
前記複数の開口部から、前記帯電微粒子の所望の放出方向に応じた開口部を選択し、前記帯電微粒子を選択した開口部に通すことにより、前記帯電微粒子の放出方向を調整する放出方向調整手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項4】
前記複数の対向電極のうち、前記霧化電極から最も離れた対向電極は、前記対向電極群が支持される筐体に対して変位可能に設けられ、
前記霧化電極から最も離れた対向電極を、前記帯電微粒子の所望の放出方向に応じて変位させることにより、前記帯電微粒子の放出方向を調整する放出方向調整手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の静電霧化装置。
【請求項5】
前記静電霧化装置が搭載される空気調和機から入力される風向情報に基づいて、前記放出方向調整手段による前記帯電微粒子の放出方向の調整動作を制御する制御手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項2から請求項4までの何れか1項に記載の静電霧化装置。
【請求項6】
周囲の状態を検出する状態検出手段と、
検出された前記周囲の状態に基づいて、前記放出方向調整手段による前記帯電微粒子の放出方向の調整動作を制御する制御手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項2から請求項5までの何れか1項に記載の静電霧化装置。
【請求項7】
霧化電極と、開口部をそれぞれ有し、前記霧化電極に対向して、前記霧化電極から離れる方向に並べられた複数の対向電極からなる対向電極群と、を備え、前記霧化電極と前記対向電極群との間に電圧が印加されることにより、前記霧化電極に供給された水を静電霧化して帯電微粒子を生成し、前記開口部を通して前記帯電微粒子を外部に放出する静電霧化装置における静電霧化方法であって、
前記複数の対向電極のそれぞれに対して、前記霧化電極から離れた対向電極ほど、前記霧化電極との電位差が大きくなるように電圧が印加する電圧印加ステップ
を備えたことを特徴とする静電霧化方法。
【請求項8】
前記静電霧化装置は、前記対向電極群の前記霧化電極と反対側に設けられ、放出される前記帯電微粒子を挟んで対向する偏向電極をさらに備え、
前記偏向電極に電圧を印加することにより、前記帯電微粒子の放出方向を調整する放出方向調整ステップ
をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の静電霧化方法。
【請求項9】
前記複数の対向電極のうち、少なくとも前記霧化電極から最も離れた対向電極は、複数の開口部を有し、
前記複数の開口部から、前記帯電微粒子の所望の放出方向に応じた開口部を選択し、前記帯電微粒子を選択した開口部に通すことにより、前記帯電微粒子の放出方向を調整する放出方向調整ステップ
をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の静電霧化方法。
【請求項10】
前記複数の対向電極のうち、前記霧化電極から最も離れた対向電極は、前記対向電極群が支持される筐体に対して変位可能に設けられ、
前記霧化電極から最も離れた対向電極を、前記帯電微粒子の所望の放出方向に応じて変位させることにより、前記帯電微粒子の放出方向を調整する放出方向調整ステップ
をさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の静電霧化方法。
【請求項11】
前記静電霧化装置が搭載される空気調和機から入力される風向情報に基づいて、前記放出方向調整ステップによる前記帯電微粒子の放出方向の調整処理を制御する制御ステップ
をさらに備えたことを特徴とする請求項8から請求項10までの何れか1項に記載の静電霧化方法。
【請求項12】
周囲の状態を検出する状態検出ステップと、
検出された前記周囲の状態に基づいて、前記放出方向調整ステップによる前記帯電微粒子の放出方向の調整処理を制御する制御ステップと、
をさらに備えたことを特徴とする請求項8から請求項11までの何れか1項に記載の静電霧化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−25192(P2011−25192A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175369(P2009−175369)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】