非オワンクラゲヒドロ虫種由来の蛍光たんぱく質および色素たんぱく質、並びにそれらの使用方法
本発明は、蛍光および色素たんぱく質並びにその変異体、変形体および誘導体をコード化する核酸分子、並びにこれらの核酸によってコード化されたたんぱく質およびペプチドを提供する。興味ある核酸分子およびたんぱく質は、非オワンクラゲヒドロ虫網種から分離する。興味あるたんぱく質としては、コザラクラゲ種由来の黄色蛍光たんぱく質、phiYFP;花水母亜目のヒドロ虫クラゲ由来の緑色蛍光たんぱく質、hydr1GFPおよび紫色色素たんぱく質、hm2CPがある。また、上述の特定のたんぱく質と実質的に同様なたんぱく質、またはその誘導体、相同物もしくは変異体も興味がある。また、上記核酸のフラグメントおよびそれによってコード化されるペプチド、並びに本発明のたんぱく質およびペプチドに対し特異性の抗体も提供する。さらに、上述の核酸分子を含む宿主細胞、安定な細胞系およびトランスジェニック生物体も提供する。本発明のたんぱく質および核酸組成物は、種々の異なる用途および方法における、とりわけ生体分子、細胞または細胞オルガネラの標識化においての使用を見出している。最後に、そのような方法および用途において使用するキットも提供する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、生物学および化学の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、蛍光たんぱく質に関する。
【0002】
発明の背景
興味あるたんぱく質、細胞または生物体の標識化は、多くの生化学、分子生物学および医療診断用途において卓越した役割を果たしている。放射性ラベル、色素ラベル、蛍光ラベル、化学発光ラベル等のような種々の異なるラベルが、種々の特性および最適の用途でもって、当該技術において開発され使用されている。しかしながら、新たなラベル類を開発する興味は、存続している。とりわけ興味があるのは、蛍光たんぱく質ラベルのような新たなたんぱく質ラベルの開発である。
緑色蛍光たんぱく質(GFP)、その変異体およびホモログ類は、Lippincott-SchwartzおよびPattersonによりScience (2003) 300(5616):87-91に詳述されている生物医学サイエンスにおける生体内蛍光マーカーとしての集中的な使用により、今日では広く知られている。ヒドロクラゲ目オワンクラゲ(hydromedusa Aequorea aequorea) (A. victoriaと同義)に由来するGFPは、J Cell Comp Physiol. (1962), 60:85-104においてJohnson等によって発見され、GFPが光たんぱく質エクオリンからの青色光を緑色光に転換する二次発光体の役割を奏するクラゲの生体発光系の1部として見出された。その後、同様なたんぱく質が、ヒドロ虫クラゲ コザラクラゲ グレガリウム(hydroid medusa Phialidium gregarium)、ウミシイタケ(sea pansy Renilla) (花虫網)等のような数種の生体発光腔腸動物から分離された(Ward et al. in Photochem. Photobiol. (1982), 35: 803-808;Levine et al. in Comp. Biochem. Physiol. (1982), 72B: 77-85;Chalfie in Photochem. Photobiol. (1995), 62:651-656を参照されたい)。これらのたんぱく質は、全て緑色蛍光を発し(497〜509nmで発光)、生体発光において二次発光体として機能していた。また、蛍光たんぱく質はカツオノエボシ(Physalia)種からも分離され、そのN-末端アミノ酸配列は確定されている(WO 03/017937号)。
オワンクラゲGFPをコード化するcDNAは、Prasher等によってクローン化された(Gene (1992), 111(2):229-33)。結局は、この遺伝子は、GFPがそれ自体でフルオロフォアを形成する特異な能力に基づき実際に異種構造的に発現した任意の生物体であり得ることが判明した(Chalfie et al., Gene (1992), 111(2):229-233)。この知見により、遺伝子的にコード化された蛍光ラベルとしての細胞生物学におけるGFPの使用についての広汎な展望が開かれている。
【0003】
GFPは、遺伝子発現およびたんぱく質局在化の研究(Chalfe et al., Science 263 (1994), 802-805;および Heim et al., in Proc. Nat. Acad. Sci. (1994), 91: 12501-12504)を含む広範囲の用途において、細胞内の非細胞オルガネラ類の可視化(Rizzuto et al., Curr. Biology (1995), 5: 635-642)のための、さらには、分泌経路に沿うたんぱく質輸送の可視化(Kaether and Gerdes, FEBS Letters (1995), 369: 267-271)のための手段として使用された。
相当量の研究が、GFPの性質を改善するためさらには種々の研究目的において有用で且つ最適化されたGFP試薬を製造するためになされている。“ヒト化”GFP DNAのような新たな種類のGFPも開発されており、そのたんぱく質生成物は、哺乳動物細胞における合成を増大させている(Haas、 et al., Current Biology (1996), 6: 315-324;Yang, et al., Nucleic Acids Research (1996), 24: 4592-4593)。1つのそのようなヒト化たんぱく質は“増強緑色蛍光たんぱく質”(EGFP)である。GFPに対する他の突然変異は、青緑色、シアン緑色および黄緑色発光種をもたらしている。しかしながら、GFPの多大な有用性にもかかわらず、GFPと同様なまたは異なる特性を有する他の蛍光たんぱく質も当該技術において有用であろう。とりわけ、新規な蛍光たんぱく質の利益としては、より大きな励起に対する新たなスペクトルおよびより良好な適合性に基づく蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の実現性がある。1999年において、GFPホモログ類が非生体発光性花虫類(Anthozoa)種からクローン化された(Matz et al., Nature Biotechnol. (1999), 17: 969-973)。この発見により、これらのたんぱく質は生体発光機構の必要成分ではないことが実証された。花虫類由来GFP様たんぱく質は、シアン色、緑色、黄色、赤色蛍光たんぱく質および紫青色非蛍光色素たんぱく質(CP)を含む高いスペクトル多様性を示していた(Matz et al., Bioessays (2002), 24(10): 953-959)。
【0004】
花虫類由来GFP様たんぱく質の主たる欠点は、これらのたんぱく質の多くの用途においての使用を妨げる強いオリゴマー化である(Lauf et al., FEBS Lett. (2001), 498: 11-15;Campbell et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2002), 99: 7877-7882;Mizuno et al., Biochemistry (2001), 40: 2502-2510)。従って、種々のカラーを有する新規な単量体蛍光たんぱく質、並びに既知のGFPの欠点を被らないこれら新規の単量体蛍光たんぱく質をコード化するDNA類を提供することを目的とする。
ヒドロ虫種は、そのようなたんぱく質の潜在的な源である。オワンクラゲGFPおよび他のオワンクラゲ種由来のGFPホモログ類、同様に極めて近いヒトモシクラゲ(Aequorea macrodactyla) (GenBank受託番号AF435427〜AF435433)およびオワンクラゲ(Aequorea coerulescens) (Gurskaya et al., Biochem J. (2003), 373(Pt2): 403-408)由来のGFPホモログ類を除いて、ヒドロ虫由来の蛍光たんぱく質をコード化する他の遺伝子は、それらたんぱく質の幾つかが極めて昔にたんぱく質レベルで特性決定されていたものの、現在までのところクローン化されてはいない。非オワンクラゲヒドロ虫蛍光たんぱく質のクローン化および変異誘発は、改良された特性を有する新規な蛍光ラベルを得るための見込みのある方法である。
【0005】
発明の要約
本発明は、新規な蛍光または色素たんぱく質並びにその変異体および誘導体をコード化する核酸分子を提供する。該核酸は、その非天然環境において分離され、合成され或いは存在し得る。
ある実施態様においては、本発明の核酸は、花水母(Anthomedusae)亜目のコザラクラゲ(Phialidium)種および2種の蛍光クラゲ即ちヒドロ虫クラゲ1および2(ヒドロクラゲ1および2)のような、非オワンクラゲヒドロ虫(non-Aequorea Hydrozoa)種またはこれらの変異体もしくは誘導体から分離する。
ある実施態様においては、本発明の核酸は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22からなる群から選ばれたアミノ酸配列を有するたんぱく質をコード化する。ある実施態様においては、上記核酸は、上記たんぱく質のホモログ類、変異体、誘導体、擬態物またはフラグメントをコード化する。
ある実施態様においては、本発明の核酸は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21からなる群から選ばれたヌクレオチド配列、或いはこれら配列と相同性の、実質的に同じであり、または同一であるヌクレオチド配列を有する。遺伝子コードの縮退のため本発明の上記核酸配列と異なるまたは本発明の上記核酸配列にハイブリッド化している核酸配列も、本発明の範囲に属する。
もう1つの実施態様においては、本発明は、本発明の核酸によってコード化されたたんぱく質、または該たんぱく質に実質的に同じ、もしくはそれらのホモログ類、誘導体もしくは変異体に関し、或いは本発明の上記たんぱく質を含む融合たんぱく質に関する。
また、本発明の核酸のフラグメントおよび本発明の核酸に高緊縮条件下でハイブリッド化している核酸も提供する。
【0006】
さらに他の実施態様においては、本発明の核酸を含むベクターを提供する。さらに、本発明は、本発明の核酸と細胞中で本発明の核酸を発現させるのに必要な調節要素とを含む発現カセットも提供する。
さらにもう1つの実施態様においては、適切な宿主細胞中でたんぱく質を発現させ、その宿主細胞から該たんぱく質を分離することを含む、色原性および/または蛍光たんぱく質の産生方法を提供する。該方法は、(a) 適切な発現調節配列とカップリングさせる蛍光または色素たんぱく質をコード化する本発明の核酸分子を調製し、(b) 該核酸分子から上記たんぱく質を発現させ、そして、(c)他のたんぱく質を実質的に含まない蛍光たんぱく質を分離することを含む。
さらに、本発明のたんぱく質またはそのフラグメントに対する特異的な抗体も提供する。
さらに、本発明の核酸、ベクターまたは発現カセットを含む宿主細胞、安定な細胞系、トランスジェニック動物およびトランスジェニック植物も提供する。
さらにもう1つの実施態様においては、本発明の核酸にハイブリッド化し得るヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはプローブも提供する。
また、本発明の色素または蛍光たんぱく質および該たんぱく質をコード化する核酸を使用する方法も提供する。
好ましい実施態様においては、生物学的分子の標識化方法を提供し、該方法は、当該生物学的分子を本発明のたんぱく質にカップリングさせることを含む。
もう1つの好ましい実施態様においては、細胞の標識化方法も提供し、該方法は、本発明のたんぱく質を細胞中に産生させることを含む。
もう1つの好ましい実施態様においては、細胞オルガネラの標識化方法も提供し、該方法は、適切な非細胞局在化シグナルに融合させた本発明のたんぱく質を細胞中に産生させることを含む。
さらにもう1つの好ましい実施態様においては、生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの分析方法を提供し、該方法は、本発明のたんぱく質からの蛍光シグナルを検出することを含む。
さらにもう1つの好ましい実施態様においては、生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの分析方法を提供し、該方法は、本発明の核酸分子を細胞中に発現させることを含む。
さらに、本発明の核酸、該核酸を有するベクターもしくは発現カセット、またはたんぱく質を含むキットも提供する。
【0007】
発明の詳細な説明
本明細書において使用するとき、“蛍光たんぱく質”または“フルオロたんぱく質”なる用語は、蛍光性であるたんぱく質を意味する;例えば、該たんぱく質は、適切な励起波長の光で照射したときに低い、中程度のまたは強い蛍光を示す。これらたんぱく質の蛍光特性は、当該たんぱく質の2個以上のアミノ酸残基の相互作用に起因し1個のアミノ酸残基には起因しない特性である。そのようなものとして、本発明の蛍光たんぱく質は、固有の蛍光体としてそれ自体で作用する残基、即ち、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニンのみから蛍光を発するたんぱく質を含まない。
本明細書において使用するとき、“色素たんぱく質”または“色原性たんぱく質”なる用語は、蛍光性、低または非蛍光性であり得る有色たんぱく質を意味する。本明細書において使用するとき、“色素たんぱく質”および“蛍光たんぱく質”なる用語は、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼのようなルシフェラーゼ類を含まない。
本明細書において使用するとき、用語“GFP”は、より高い蛍光性を与えるようにまたは種々の色で蛍光を発するように操作された従来技術形のGFPを含む、オワンクラゲ由来の緑色蛍光たんぱく質を称する。野生タイプのGFPの配列は、Prasher et al., Gene 111 (1992), 229-33に開示されている。
本明細書において使用するとき、用語“EGFP”は、2個のアミノ酸置換基、即ち、F64LおよびS65Tを有するGFPの突然変異体を称する(Heim et al., Nature 373 (1995), 663-664)。
【0008】
本明細書において使用するとき、用語“分離された”とは、当該分子または当該細胞が天然に産生する環境とは異なる環境にある分子または細胞を称する。
本明細書において使用するとき、用語“フラグメント”とは、例えば、二者択一的にスプライスされた、先端切り取りされた、さもなくば開裂された核酸分子またはたんぱく質を含むことを意味する。
本明細書において使用するとき、用語“誘導体”とは、変異による、またはRNA編集され、化学修飾されもしくは改変された核酸分子;或いは変異による、または化学修飾されもしくは改変されたたんぱく質を称する。
本明細書において使用するとき、用語“変異体”とは、1個以上のアミノ酸を本発明のたんぱく質のN-末端および/またはC-末端においておよび/または生来のアミノ酸配列内で付加および/または置換および/または欠落および/または挿入させているような本発明において開示したたんぱく質を称する。本明細書において使用するとき、用語“変異体”とは、変異体たんぱく質をコード化している核酸分子を称する。さらにまた、用語“変異体”とは、本発明のたんぱく質または核酸の任意の短めまたは長めの形を称する。
本明細書において使用するとき、“ホモログ類または相同性”とは、1つのヌクレオチドまたはペプチド配列と他のヌクレオチドまたはペプチド配列との関連性を説明する当該技術において使用する用語であり、比較したこれら配列間の同一性および/または類似性の度合によって判定する。
【0009】
上記で要約したように、本発明は、蛍光および色素たんぱく質およびその変異体、変形体および誘導体をコード化する核酸分子、並びにこれらの核酸によってコード化されたたんぱく質およびペプチドに関する。これらの興味ある核酸分子およびたんぱく質は、非オワンクラゲヒドロ虫種から分離する。興味あるたんぱく質としては、コザラクラゲ種由来の黄色蛍光たんぱく質、phiYFP;花水母亜目のヒドロ虫クラゲ1(ヒドロクラゲ1)由来の緑色蛍光たんぱく質、hydr1GFP;花水母亜目のヒドロ虫クラゲ2(ヒドロクラゲ2)由来の紫色色素たんぱく質、hm2CPがある。また、上述の特定のたんぱく質に実質的に同様なたんぱく質、またはこれら特定のたんぱく質の誘導体、ホモログ類または変異体も興味がある。また、上記核酸のフラグメントおよびそれによってコード化されたペプチド、並びに本発明のたんぱく質およびペプチドに対して特異性の抗体も提供する。さらに、上述の核酸分子を含む宿主細胞、安定な細胞系およびトランスジェニック生物体も提供する。本発明のたんぱく質および核酸組成物は、種々の異なる用途および方法、とりわけたんぱく質標識化用途における使用を見出している。最後に、そのような方法および用途において使用するキットも提供する。
【0010】
核酸分子
本発明は、オワンクラゲ属以外のヒドロ虫種由来の蛍光/色素たんぱく質、これらたんぱく質の誘導体、変異体およびホモログ類をコード化する核酸分子、並びにそのフラグメントを提供する。本発明において使用するときの核酸分子は、ゲノムDNA分子もしくはcDNA分子のようなDNA分子、またはmRNA分子のようなRAM分子である。とりわけ、上記核酸分子は、本発明のヒドロ虫属の色素/蛍光たんぱく質またはそのフラグメントをコード化し、適切な条件下において、本発明に従う蛍光/色素たんぱく質またはたんぱく質フラグメント(ペプチド)として発現し得る開放読み枠を有するcDNA分子である。また、本発明は、本発明のたんぱく質またはたんぱく質フラグメントをコード化する核酸と相同性であり、実質的に同様であり、同一であり、それら核酸から誘導されたまたはそれら核酸の擬態物である核酸にも及ぶ。本発明の核酸は、その天然環境以外の環境において存在する;例えば、これらの核酸は、分離され、濃縮量で存在し、或いは生体外またはその天然産環境以外の細胞もしくは生物体中に存在させまたは発現させる。
興味ある特定の核酸分子は、以下のヒドロ虫色素/フルオロたんぱく質(およびそのホモログ類/誘導体/変異体)をコード化する分子である:コザラクラゲ種由来の黄色蛍光たんぱく質、phiYFP;花水母亜目のヒドロ虫クラゲ1由来の緑色蛍光たんぱく質hydr1GFP;および花水母亜目のヒドロ虫クラゲ2由来の紫色色素たんぱく質hm2CP。これら特定のタイプの興味ある核酸分子の各々を以下で個々により詳細に説明する。
【0011】
phiYFP:
蛍光/色素たんぱく質をコード化する上記核酸分子は、ヒドロ虫網から、好ましくはヒドロムシ(Hydroida)目から、より好ましくは軟クラゲ(Leptomedusae)亜目から、より好ましくはウミサカズキガヤ(Campanulariidae)科から、さらにより好ましくはコザラクラゲ属からの生物体から分離される。とりわけ好ましい実施態様においては、コザラクラゲ種から分離された核酸分子は、phiYFTと命名した特定のたんぱく質をコード化する。下記の実験の部においてより詳細に説明するphiYFP-Y1、phiYFP-M1、phiYFP-M0、phiYFP-M1G1 (即ち、phiYFP-G1またはphiGFP1)およびphiYFP-M1C1 (即ち、phiYFP-C1またはphiCFP1)のようなこのたんぱく質のホモログ類/変異体/誘導体もとりわけ興味がある。PhiYFPにおける推定野生タイプcDNAコード配列は、SEQ ID NO:01に示されている。
hydr1GFP:
蛍光/色素たんぱく質をコード化する上記核酸分子は、ヒドロ虫網から、好ましくはヒドロムシ目から、より好ましくは花水虫亜目からの生物体から分離される。そのような核酸分子によってコード化された特定のたんぱく質は、hydr1GFP (即ち、anm1GFP1)と命名している。このたんぱく質のホモログ類/変異体/誘導体もとりわけ興味がある。hydr1GFPにおける推定野生タイプcDNAコード配列は、SEQ ID NO:11に示されている。
hm2CP:
蛍光/色素たんぱく質をコード化する上記核酸分子は、分類ヒドロ虫網から、好ましくはヒドロムシ目から、より好ましくは花水虫亜目からの生物体から分離される。そのような核酸分子によってコード化された特定のたんぱく質は、hm2CP (即ち、anm2CP)と命名している。下記の実験の部においてより詳細に説明するhm2CPのS3-2赤色蛍光変異体のようなこのたんぱく質のホモログ類/変異体もとりわけ興味がある。hm2CPにおける推定野生タイプcDNAコード配列は、SEQ ID NO:13に示されている。
【0012】
また、上述の核酸分子のホモログ類も興味がある。相同性核酸源は、任意の植物または動物種であり得、核酸擬態物を含むその配列は、全体的にまたは部分的に合成し得る。ある実施態様においては、本発明の核酸は、少なくとも約40%、好ましくは約50%、55%、60%、65%、70%またはそれ以上(75%、80%、85%、90%および95%またはそれ以上のような)のヌクレオチドまたはアミノ酸レベルにおいて、相応するホモログ類との配列類似性を有する。参照配列は、通常は少なくとも約60個のヌクレオチド長、より通常では少なくとも約80個のヌクレオチド長であり得、比較する完全配列まで及び得る。配列類似性は、参照配列に基づいて算出する。配列解析のためのアルゴリズムは、Altschul et al., J. Mol. Biol., 215, pp. 403-10 (1990)に記載されているBLASTのように、当該技術において既知である(例えば、デフォルト設定、即ち、パラメーター w=4およびT=17を使用して)。
ホモログ類は、多くの方法のいずれかの方法によって同定する。本発明のcDNAフラグメントは、ターゲット生物体からのcDNAライブラリーに対する低緊縮条件を使用してのハイブリッド化プローブとして使用し得る。上記プローブは、大きいフラグメントまたは1以上の短い縮退プライマーであり得る。配列類似性を有する核酸は、低緊縮条件下での、例えば、50℃および6×SSC (0.9M 塩化ナトリウム/0.09M クエン酸ナトリウム)でのハイブリッド化およびその後の1×SSC (01.15M 塩化ナトリウム/0.015M クエン酸ナトリウム)中での55℃での洗浄によって検出する。配列同一性は、高緊縮条件下での、例えば、50℃以上および0.1×SSC (15mM 塩化ナトリウム/1.5mM クエン酸ナトリウム)でのハイブリッド化により判定し得る。与えられた配列と実質的同一の領域を有する核酸、例えば、対立遺伝子変異体、当該核酸の遺伝子的改変種等は、与えられた配列に、高緊縮ハイブリッド化条件下において結合する。プローブ類、とりわけDNA配列の標識化プローブを使用することにより、相同性のまたは関連する遺伝子を分離することができる。
【0013】
また、上述の核酸に、緊縮条件下、好ましくは高緊縮条件下でハイブリッド化する核酸(即ち、前述の核酸の補体)も提供する。緊縮条件の例は、50℃以上および0.1×SSC (15mM 塩化ナトリウム/1.5mM クエン酸ナトリウム)でのハイブリッド化である。高緊縮ハイブリッド化条件のもう1つの例は、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt's溶液、10%硫酸デストラン(destran)および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAの溶液中42℃での1夜インキュベーション、およびその後の0.1×SSC中約65℃での洗浄である。他の高緊縮ハイブリッド化条件は、当該技術において公知であり、これらも本発明の核酸を同定するのに使用し得る。
また、本発明のたんぱく質の変形体、変異体または誘導体をコード化する核酸も提供する。変異体または誘導体は、上述の核酸から選ばれたテンプレート核酸上に、該テンプレート配列中で1個以上のヌクレオチドを修飾し、欠落させまたは付加させ或いはこれらを組合せて、該テンプレート核酸の変形体を生成させることによって、生成させ得る。修飾、付加または欠落は、変異性PCR、シュフリング(shuffling)、オリゴヌクレオチド特異性変異誘発、集合PCR、雌雄PCR変異誘発、生体内変異誘発、カセット変異誘発、反復アンサンブル変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)、指数アンサンブル変異誘発、部位特異性変異誘発、ランダム変異誘発、遺伝子再構築、遺伝子部位飽和変異誘発(GSSM)、合成ライゲーション再構築(SLR)またはこれらの組合せのような当該技術において公知の任意の方法よって導入し得る(例えば、Gustin et al., Biotechniques (1993) 14: 22;Barany, Gene (1985) 37: 111-123;および、Colicelli et al., Mol. Gen. Genet. (1985) 199:537-539;Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (1989), CSH Press, pp. 15.3-15.108)を参照されたい)。また、修飾、付加または欠落は、組換え、反復配列組換え、ホスホチオエート修飾DNA変異誘発、ウラシル含有テンプレート変異誘発、ギャップド二本鎖変異誘発、ポイントミスマッチ修復変異誘発、修復欠損宿主株変異誘発、化学変異誘発、放射能変異誘発、欠落変異誘発、制限-選択変異誘発、制限-精製変異誘発、人工遺伝子合成、アンサンブル変異誘発、キメラ核酸多重体形成およびこれらの組合せを含む方法によっても導入し得る。幾つかの実施態様においては、変異体または誘導核酸によってコード化された蛍光たんぱく質は、野生タイプの蛍光たんぱく質と同じ蛍光特性を有している。他の実施態様においては、変異体または誘導核酸は、下記で変異体phiYFP-Y1、phiYFP-M1、phiYFP-M1G1、phiYFP-M1C1、S3-2についてより詳細に説明しているように、改変されたスペクトル特性を有する蛍光たんぱく質をコード化している。
【0014】
さらに、本発明のたんぱく質をコード化する核酸の縮退変異体も提供する。核酸の縮退変異体は、核酸のコドンの同じアミノ酸をコード化している他のコドンによる置換を含む。とりわけ、核酸の縮退変異体は、宿主細胞中でのその発現を増大させるように生成させる。この実施態様においては、宿主細胞の遺伝子内の好ましくないまたはあまり好ましくない核酸のコドンを、宿主細胞の遺伝子内のコード配列中に過発現しているコドンにより置換し、この置換コドンが同じアミノ酸をコード化する。本発明の核酸のヒト化形は、といわけ興味を有する。本明細書において使用するとき、用語“ヒト化”とは、哺乳動物(ヒト)細胞中でのたんぱく質の発現に対してコドンを最適化するように核酸配列になされた変更を称する(Yang et al., Nucleic Acids Research (1996) 24: 4592-4593)。また、たんぱく質類のヒト化を記載している米国特許第5,795,737号も参照されたい、該米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。
本明細書において使用するときの用語“cDNA”とは、天然成熟mRNA種中に見出される配列要素の配列を占める核酸を含むものとし、配列要素はエクソン並びに5'および3'非コード領域である。通常、mRNA種は隣接エクソンを有し、介入イントロンは、存在する場合、核RNAスプライシングにより除去されて、上記たんぱく質をコード化する連続開放読み枠を生成する。
興味あるゲノム配列は、天然染色体中に通常存在するイントロンの全てを含む、例示した配列に定義されているような開始コドンと停止コドンとの間に存在する核酸を含み得る。興味あるゲノム配列は、成熟mRNA中に見出される5'および3'非翻訳領域、並びに転写領域の5'および3'末端のいずれかでの約1kb(それ以上であり得る)のフランキングゲノムDNAのようなプロモーター、エンハンサー等のような特定の転写および翻訳調節配列をさらに含み得る。
【0015】
本発明の核酸分子は、本発明のたんぱく質の全てまたは1部をコード化し得る。二本鎖または一本鎖フラグメントは、オリゴヌクレオチドを、通常の方法に従い、制限酵素消化、PCR増幅等により化学合成することによって、上記DNA配列から得ることができる。殆どの部分において、DNAフラグメントは、長さにおいて少なくとも約15個のヌクレオチド、通常は長さにおいて少なくとも約18個のヌクレオチドまたは長さにおいて約25個のヌクレオチドであろうし、長さにおいて少なくとも約50個のヌクレオチドであり得る。幾つかの実施態様においては、本発明のヌクレオチド酸分子は、長さにおいて約100個、約200個、約300個、約400個、約500個、約600個、約700個のヌクレオチドまたはそれ以上であり得る。本発明の核酸は、本発明のたんぱく質のフラグメントまたは全長たんぱく質をコード化し得る;例えば、本発明の核酸は、約25個のアミノ酸、約50個、約75個、約100個、約125個、約150個、約200個のアミノ酸のポリペプチドから全長たんぱく質までをコード化し得る。
本発明の核酸は、実質的に精製形で分離して得ることができる。実質的に精製形とは、当該核酸が少なくとも約50%純粋、通常は少なくとも約90%純粋であり、典型的に“組換え体”であること、即ち、その天然宿主生物体中の天然産生染色体上に通常結合していない1個以上のヌクレオチドによってフランキングされていることを意味する。
例えば、SEQ ID NO:01、03、05、07、09、11、13、15、17、19または21の配列を有する本発明の核酸、相応するcDNA、全長遺伝子および構築物は、当業者にとって公知の多くの種々のプロトコールにより合成的に生成させ得る。適切な核酸構築物は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., (1989) Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されているような標準の組換えDNA技術を使用し、例えば、United States Dept. of HHS, National Institute of Health (NIH) Guidelines for Recombinant DNA Researchに記載されている調節下に精製される。
【0016】
また、下記でより詳細に説明する本発明のたんぱく質またはそのフラグメントを含む融合たんぱく質をコード化する核酸も提供する。
また、本発明の核酸を含むベクターおよび他の核酸構築物も提供する。適切なベクターとしては、ウィルスおよび非ウィルスベクター、プラスミド、コスミド、ファージ等、好ましくはプラスミドがあり、適切な宿主中での本発明の核酸配列のクローニング、増幅、発現、伝達等において使用する。適切なベクターの選択については当業者が精通していることであり、多くのそのようなベクターは、商業的に入手可能である。構築物を製造するためには、部分長または全長核酸を、ベクター中に、典型的にはベクター内の開裂制限酵素部位へのDNAリガーゼ結合によって挿入する。また、所望のヌクレオチド配列を、生体内相同性組換えにより、典型的にはベクターに対し相同性の領域を所望ヌクレオチド配列の側面上に結合させることによっても挿入させ得る。相同性の領域は、オリゴヌクレオチドのライゲーションにより、或いは、例えば、相同性の領域と所望のヌクレオチド配列部分の双方を含むプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応により付加させる。
本発明の色原性もしくは蛍光たんぱく質またはその融合たんぱく質の製造において或いは本発明の核酸分子の複製においてとりわけ使用する発現カセットまたは発現系も提供する。発現カセットは、染色体外要素として存在し得、或いは細胞のゲノム中に、上記発現カセットの細胞中への導入の結果として、組込み得る。発現においては、本発明の核酸によってコード化された遺伝子産生物は、例えば、細菌、酵母、昆虫、両性類または哺乳動物系のような任意の好都合な発現系中で発現させる。発現ベクターにおいては、本発明の核酸を、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、オペレーター、レプレッサーおよびインジューサーを含み得る調節配列に機能可能であるように結合させる。所望産生物を発現し得る発現カセットまたは系の製造方法は、当業者にとって公知である。
本発明のたんぱく質を安定的に発現する細胞系は、当該技術において公知の方法によって選択し得る(例えば、dhfr、gpt、ネオマイシン、ヒグロマイシンのような選択性マーカーと一緒の同時移入は、ゲノム中に組み込んだ遺伝子を含有する移入細胞の同定および分離を可能にする)。
【0017】
上記の発現系は、原核生物または真核生物宿主において使用し得る。大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis)、サッカロミセス セレヴィシエ(S. cerevisiae)、バキュロウィルスベクターと組合せた昆虫細胞、または脊柱動物のような高級生物体の細胞、例えば、COS 7細胞、HEK 293、CHO、アフリカツメガエル卵母細胞等のような宿主細胞を上記たんぱく質の産生において使用し得る。
上述の宿主細胞のいずれかまたは他の適切な宿主細胞もしくは生物体を使用して本発明の核酸を複製および/または発現させた場合、得られる複製核酸、発現たんぱく質またはポリペプチドは、宿主細胞または生物体の産生物として、本発明の範囲に属する。産生物は、当該技術において公知の適切な手段によって回収し得る。
また、本発明のゲノム配列のプロモーター配列も興味があり、その5'フランキング領域の配列を、例えば本発明のたんぱく質遺伝子を発現させる細胞/組織中での発現の調節を行うエンハンサー結合部位のようなプロモーター要素において使用し得る。
また、PCR用のプライマー、ハイブリッド化スクリーニングプローブ等として有用である本発明の核酸の小DNAフラグメントも提供する。より大きめのDNAフラグメントは、前述したようなコード化ポリペプチドの産生において有用である。しかしながら、幾何学的PCRのような幾何学的増幅反応における使用においては、対の小DNAフラグメント、即ち、プライマーを使用するであろう。プライマー配列の正確な組成は本発明において重要ではないが、殆どの用途において、プライマーは、、当該技術において知られているように、緊縮条件下で本発明の配列にハイブリッド化するであろう。少なくとも約50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約100個のヌクレオチドの増幅産生物を生成させ、完全配列の核酸にまで及び得る対のプライマーを選択するのが好ましい。プライマー配列選択のためのアルゴリズムは、一般に既知であり、市販のソフトウェアパッケージにおいて入手し得る。増幅プライマーは、DNAの相補ストランドにハイブリッド化し、互いに対して開始するであろう。
【0018】
また、本発明の核酸分子は、生物学的試験標本における遺伝子の発現を同定するのにも使用し得る。ゲノムDNAまたはRNAのような特定のヌクレオチド配列の存在について細胞を精査する方法は、当該技術において良好に確立されている。要するに、DNAまたはmRNAを細胞サンプルから分離する。mRNAは、逆転写酵素を使用して相補DNAストランドを形成させるRT-PCRにより、さらにその後の本発明のDNA配列に対して特異性のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応増幅により、増幅させ得る。また、mRNAサンプルをゲル電気泳動により分離し、適切な支持体、例えば、ニトロセルロース、ナイロン等に移し、その後、プローブとしての本発明のDNAのフラグメントによって精査する。オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、現場ハイブリッド化、および固形チップ上に配列させたDNAプローブへのハイブリッド化のような他の方法も使用し得る。本発明の配列にハイブリッド化するmRNAの検出は、サンプル中での遺伝子発現を指標し得る。
フランキングプロモーター領域およびコード領域を含む本発明の核酸は、当該技術において公知の種々の方法で変異させて、プロモーター強度の目標とする変化を発生させ、或いはコード化されたたんぱく質の配列またはコード化されたたんぱく質の蛍光特性を含むコード化されたたんぱく質の性質を変えることができる。
多くの実施態様において、オワンクラゲ種において見出される核酸は、本発明の範囲に属さない。ある実施態様においては、そのGFPホモログおよび該ホモログをコード化する核酸は、本発明の範囲に属さないオワンクラゲ(Aequorea victoria)、ヒトモシクラゲ(Aequorea macrodactyla)およびオワンクラゲ(Aequorea coerulscens)に由来する。
【0019】
たんぱく質
また、本発明によれば、非オワンクラゲヒドロ虫色素および蛍光たんぱく質、全長たんぱく質を含むその変異体、並びにそれらの1部またはフラグメントも提供される。また、下記でより詳細に説明するような、天然産生たんぱく質の変形体(そのような変形体は、天然産たんぱく質と相同性であるかまたは実質的に類似している)、および天然産生たんぱく質の変異体も提供される。
多くの実施態様において、本発明のたんぱく質は、約300〜700nm、通常約350〜650nm、より通常は約400nm〜600nmの吸光度最高値を有する。本発明のたんぱく質が蛍光たんぱく質であり、そのことが、これらたんぱく質がある光波長で励起し得、その後、別の波長で発光することを意味する場合、本発明のたんぱく質の励起スペクトルは、典型的に約300〜700nmの範囲にある。本発明のたんぱく質は、約25,000〜150,000、通常は約45,000〜129,000の範囲にある最高吸光係数を一般に有する。本発明のたんぱく質は、典型的に約150〜300個のアミノ酸、通常約200〜300個のアミノ酸残基の長さ範囲であり、約15〜35kDa、通常約17.5〜32.5kDa範囲の分子量を一般に有する。
ある実施態様においては、本発明のたんぱく質は光輝性であり、光輝性とは、当該色素および蛍光たんぱく質を一般的な方法(例えば、目視スクリーニング、分光測定、分光蛍光分析、蛍光顕微鏡測定、FACS装置による等)によって検出し得ることを意味する。特定の蛍光たんぱく質の蛍光輝度は、最高吸光係数を乗じたその量子収率によって決定する。色素たんぱく質の輝度は、その最高吸光係数によって表し得る。
【0020】
ある実施態様においては、本発明のたんぱく質は、宿主細胞内での発現後に急速に産生停止する。急速に産生停止(rapidly folding)とは、当該たんぱく質がその発色または蛍光性をもたらすその三次構造を短時間で達成することを意味する。これらの実施態様においては、上記たんぱく質は、一般に約3日を越えない、通常は約2日を越えない、より通常は約1日を越えない時間内で産生停止する。
興味ある特定のたんぱく質は、非オワンクラゲヒドロ虫種由来の色素/フルオロたんぱく質(並びに、そのホモログ、変異体および誘導体類)である:コザラクラゲ種由来のPhiYFP;花水虫亜目のヒドロ虫クラゲ1(ヒドロクラゲ1)由来の緑色蛍光たんぱく質、hydrGFP;花水虫亜目のヒドロ虫クラゲ2(ヒドロクラゲ2)由来の紫色素蛍光たんぱく質、hm2CP。これら興味ある特定タイプのポリペプチド組成物の各々については、以下で個々により詳細に説明する。
【0021】
phiYFP (およびその誘導体/変異体)
この実施態様のたんぱく質は、約350〜550、通常は約450〜550、多くの場合約435〜540nm、例えば、515〜530nmまたは480〜490範囲の吸光度最高値を有し、また、その発光最高値は、典型的に約400nm〜650 nm、より通常は約450〜600nmの範囲にあるが、多くの実施態様においては、発光スペクトルは、約470〜550nm、例えば、505〜515、520〜530nmまたは530〜540nmの範囲にある。本発明のたんぱく質は、典型的には約200〜250個、通常は約210〜240個のアミノ酸残基の長さ範囲にあり、一般に約20〜30、通常は約22.50〜27.50kDa範囲の分子量を有する。多くの実施態様においてとりわけ興味があるのは、SEQ ID NO:02に示されているようなアミノ酸配列を有するphiYFPである。また、この配列の変異体および誘導体類、例えば、それぞれ、SEQ ID NO:04、06、08、18および20におけるような、phiYFP-Y1、phiYFP-M1、phiYFP-M0、phiYFP-M1G1およびphiYFP-M1C1も興味がある。
【0022】
hydrGFP (およびその誘導体/変異体)
多くの実施態様において、本発明のたんぱく質は、約400〜600、より通常は約450〜550、多くの場合約460〜500nm、例えば、470〜480nmの範囲の吸光度最高値を有し、また、本発明のたんぱく質の発光スペクトルは、典型的に約450nm〜650 nm、通常は約460〜600nm、より通常は約480〜550nm、例えば、480〜500nm、時には490〜500nmの範囲にある。本発明のたんぱく質は、典型的には約200〜300個のアミノ酸、通常は約220〜290個のアミノ酸残基の長さ範囲にあり、一般に約25〜35kDa、通常は約26.5〜32.5kDa範囲の分子量を有する。多くの実施態様においてとりわけ興味があるのは、SEQ ID NO:12に示されているようなアミノ酸配列を有する野生タイプhydr1GFP蛍光たんぱく質、その変異体および誘導体である。
hm2CP (およびその変異体)
多くの実施態様において、本発明のたんぱく質は、約350〜650、通常は約450〜600、より通常は約490〜595nm、例えば、560〜590nmの範囲の吸光度最高値を有し、また、本発明のたんぱく質の発光スペクトルは、典型的に約450nm〜650、通常は約500〜640nm、より通常は約580〜620nm、例えば、590〜620nmの範囲にある。本発明のたんぱく質は、典型的には約200〜250個、通常は約210〜240個のアミノ酸残基の長さ範囲にあり、一般に約20〜30kDa、通常は約22.50〜27.50kDa範囲の分子量を有する。多くの実施態様においてとりわけ興味があるのは、SEQ ID NO:14に示されているようなアミノ酸配列を有するhm2CP (anm2CP)である。また、この配列の変異体、例えば、例えばSEQ ID NO:16に提示されているような赤色蛍光たんぱく質S3-2等も興味がある。
【0023】
ホモログ類、即ち、本発明の前記で提示した特定のアミノ酸配列、即ち、SEQ ID NO:02、04、06、08、10、12、14、16、18、20または22から配列において変化するたんぱく質類も提供する。ホモログとは、D.G. Higgins and P.M. Sharp, “Fast and Sensitive multiple Sequence Alignments on a Microcomputer,” CABIOS, 5 pp. 151-3 (1989)に記載されているようなMegAlign, DNAstar clustalアルゴリズムを使用して測定したときに(パラメーター ktuple 1、ギャップペナルティー 3、ウィンドウ 5およびセーブ対角線 5を使用して)、SEQ ID NO:02、04、06、08、10、12、14、16、18、20または22のアミノ酸配列に対し少なくとも約55%、通常は少なくとも約60%、より通常は少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性を有する少なくとも1種のたんぱく質を含むたんぱく質を意味する。多くの実施態様において、興味あるホモログ類は、とりわけ上記たんぱく質の官能性領域を提供するアミノ酸配列に対してはるかに高い、例えば、70%、75%、80%、85%、90%(例えば、92%、93%、94%)またはそれ以上の、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有する。
また、野生タイプのたんぱく質と実質的に同一であるたんぱく質も提供し、実質的同一とは、当該たんぱく質が少なくとも約60%、通常少なくとも約65%、より通常は少なくとも約70%の野生タイプたんぱく質の配列に対するアミノ酸配列同一性を有することを意味し、ある場合には、その同一性は、はるかに高く、例えば、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上であり得る。
また、上述の天然産生性たんぱく質の誘導体または変異体であるたんぱく質も提供する。変異体および誘導体類は、野生タイプ(例えば、天然産生)たんぱく質の生物学的特性を保持し得、或いは野生タイプたんぱく質と異なる生物学的特性を有し得る。本発明のたんぱく質の“生物学的特性”なる用語は、限定するものではないが、吸光度最高値、発光最高値、最高吸光係数、輝度 (例えば、野生タイプたんぱく質、またはオワンクラゲ由来の緑色蛍光たんぱく質(GFP)のような他の参照たんぱく質と比較して)等のようなスペクトル特性;生体内および/または生体外安定性(例えば、半減期)のような生化学特性;成熟速度、凝集性向およびオリゴマー化性向;並びに他のそのような特性を称する。変異には、1個のアミノ酸交換、1個以上のアミノ酸の欠落または挿入、N-末端切り取りまたは延長、C-末端切り取りまたは延長等がある。
【0024】
変異体および誘導体は、上記の“核酸分子”の章で詳細に説明したような標準の分子生物学的方法を使用して生成させ得る。数種の変異体を本明細書において説明する。実施例に提示した手引きを考慮し、標準方法を使用するならば、当業者であれば、広範囲のさらなる変異体を生成させ、生物学的(例えば、生化学、スペクトル等の)特性が改変されたかどうかを試験することは容易になし得る。例えば、蛍光強度は、種々の励起波長において分光測定計を使用して測定し得る。
また、誘導体は、RNAエディテイング、化学修飾、翻訳後および転写後修飾等を含む標準方法を使用しても生成させ得る。例えば、誘導体は、修正リン酸化、グリコシル化、アセチル化、脂質化のような方法によりまたは種々のタイプの成熟開裂等により生成させ得る。
天然産生たんぱく質である本発明のたんぱく質は、非天然産生環境において存在し、例えば、それらたんぱく質の天然産生環境から分離する。例えば、精製たんぱく質が提供され、“精製”とは、当該たんぱく質が興味ある非色原性または蛍光たんぱく質を実質的に含まない混合物中に存在することを意味し、“実質的に含まない”とは、混合物含有分の90%未満、通常60%未満、より通常は50%未満が非色原性または蛍光たんぱく質またはその変異体であることを意味する。また、本発明のたんぱく質は、分離形でも存在し得、分離形とは、当該たんぱく質が他のたんぱく質およびそのオリゴ糖、核酸およびフラグメント等のような他の天然産生生物学的分子を実質的に含まないことを意味し、この場合の用語“実質的に含まない”とは、分離たんぱく質を含有する組成物の70%未満、通常60%未満、より通常は50%未満がある種の他の天然産生生物学的分子であることを意味する。ある実施態様においては、上記たんぱく質は実質的に精製形で存在し、“実質的に精製形”とは、少なくとも95%、通常少なくとも97%、より通常は少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0025】
また、天然産生たんぱく質並びに上述したたんぱく質の変異体および誘導体のフラグメントも提供する。生物学的に活性なフラグメントおよび/または官能性ドメインに相当するフラグメント等は、とりわけ興味のあるものである。興味あるフラグメントは、典型的には長さにおいて少なくとも約30個のアミノ酸、通常長さにおいて少なくとも約50個のアミノ酸、好ましくは長さにおいて少なくとも約75個または100個のアミノ酸であり、長さにおいて300個のアミノ酸ほどの長いまたはそれ以上であり得るが、通常は長さにおいて約250個のアミノ酸を越えないポリペプチドであり、該フラグメントは、長さにおいて、本発明のたんぱく質の少なくとも約25個のアミノ酸、通常は少なくとも約45個のアミノ酸、多くの実施態様においては少なくとも50個のアミノ酸と同一であるアミノ酸ストレッチを有するであろう。幾つかの実施態様においては、本発明のポリペプチドは、長さにおいて、約25個のアミノ酸、約50個、約75個、約100個、約125個、約150個、約200個または約250個のアミノ酸であり、上記たんぱく質の全長までである。幾つかの実施態様においては、たんぱく質フラグメントは、野生タイプのたんぱく質の特異的性質の全てまたは実質的に全てを保持している。
本発明のたんぱく質およびポリペプチドは、天然産生源から取得し得、或いは合成的に生成させ得る。例えば、野生タイプのたんぱく質は、上記たんぱく質を発現する生物学的源、例えば、前記した特定の種のようなヒドロ虫網種に由来し得る。また、本発明のたんぱく質は、合成手段により、例えば、興味あるたんぱく質をコード化する組換え核酸コード配列を、適切な宿主中で、前述するようにして発現させることによっても誘導し得る。任意の好都合なたんぱく質精製手法を使用し得、適切なたんぱく質精製方法論は、Guide to Protein Purification, (Deuthser ed., Academic Press, 1990)に記載されている。例えば、溶解物を起原源から調製し、HPLC、除外クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー等を使用して精製し得る。
【0026】
また、例えば、分解配列、非細胞局在化配列(例えば、核局在化シグナル、ペルオキシマル(peroximal)ターゲッティングシグナル、ゴルジ体ターゲッティング配列、ミトコンドリアターゲッティング配列等)、シグナルペプチド、または興味ある任意のたんぱく質もしくはポリペプチドに融合させた本発明のたんぱく質またはそのフラグメントを含む融合たんぱく質も提供する。融合たんぱく質は、例えば、本発明のポリペプチドと該フルオロ/色素ポリペプチドのN-末端および/またはC-末端で枠内融合させた第2のポリペプチド(“融合パートナー”)とのフルオロ/色素たんぱく質を含み得る。融合パートナーとしては、限定するものではないが、融合パートナーに対し特異的な抗体を結合し得るポリペプチド類(例えば、エピトープタグ類)、抗体またはその結合性フラグメント、触媒機能を与えるかまたは細胞応答を誘発させるポリペプチド類、リガンドもしくはレセプター類またはこれらの擬態物等がある。そのような融合たんぱく質においては、融合パートナーは、一般に、融合たんぱく質のフルオロ/色素たんぱく質部分と天然には結合してなく、典型的に、本発明のヒドロ虫網フルオロ/色素たんぱく質またはその誘導体/フラグメントではない;即ち、融合パートナーは、ヒドロ虫種中で見出せない。
また、本発明の蛍光または色素たんぱく質に特異的に結合する抗体も提供する。適切な抗体は、当該技術において公知の方法を使用して産生させ得る。例えば、ポリクローナル抗体は、(Harlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual, (1988) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記載されているようにして得ることができ、モノクローナル抗体は、 (Goding Monoclonal Antibodies: Principles and Practice: Production and Application of Monoclonal Antibodies in Cell Biology, Biochemistry and Immunology; 3rd edition, (1996) Academic Press) に記載されているようにして得ることができる。また、ヒト化抗体のようなキメラ抗体、並びに一本鎖抗体および抗体フラグメント、例えば、Fv、F(ab')2およびFabも興味がある。
【0027】
トランスジェニック体
本発明の核酸は、トランスジェニック生物体または細胞系内での部位特異性遺伝子修飾体を生成させるのに使用し得る。本発明のトランスジェニック細胞は、本発明に従う1種以上の核酸をトランス遺伝子として含む。本発明の目的においては、原核(例えば、大腸菌、ストレプトミセス sp.、枯草菌、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)等)または真核宿主細胞のような任意の適切な宿主細胞を使用し得る。本発明のトランスジェニック生物体は、細菌、シアノバクテリア、真菌、植物および動物のような原核または真核生物体であり得、生物体の1種以上の細胞が当該技術において周知の遺伝子導入法によるような人的介入によって導入された本発明の異質核酸を含有する。
本発明の分離された核酸は、当該技術において公知の方法、例えば、感染、移入、形質転換またはトランス接合によって宿主中に導入し得る。上記核酸分子(即ち、DNA)をそのような生物体に移送する方法は、広く知られており、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3nd Ed., (2001) Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY)のような文献に提示されている。
1つの実施態様においては、トランスジェニック生物体は、原核生物体であり得る。原核宿主の形質転換に関する方法は、当該技術において良好に報告されている(例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press;および Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995) John Wiley & Sons, Incを参照されたい)。
もう1つの実施態様においては、トランスジェニック生物体は、真菌、例えば、酵母であり得る。酵母は、異質遺伝子発現におけるビヒクルとして広汎に使用されている(例えば、Goodey et al Yeast biotechnology, D R Berry et al, eds, (1987) Allen and Unwin, London, pp 401-429;および King et al Molecular and Cell Biology of Yeasts, E F Walton and G T Yarronton, eds, Blackie, Glasgow (1989) pp 107-133を参照されたい)。維持のために宿主ゲノムによる再組換えを必要とする組込みベクターおよび自己複製プラスミドベクターのような数タイプの酵母ベクターが入手可能である。
【0028】
もう1つの宿主生物体は動物である。トランスジェニック動物は、当該技術において周知であり、Pinkert, Transgenic Animal Technology: a Laboratory Handbook, 2nd edition (2203) San Diego: Academic Press;Gersenstein and Vintersten, Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, 3rd ed, (2002) Nagy A. (Ed), Cold Spring Harbor Laboratory;Blau et al., Laboratory Animal Medicine, 2nd Ed., (2002) Fox J.G., Anderson L.C., Loew F.M., Quimby F.W. (Eds), American Medical Association, American Psychological Association;Gene Targeting: A Practical Approach by Alexandra L. Joyner (Ed.) Oxford University Press; 2nd edition (2000)のような文献に提示されている遺伝子導入方法によって得ることができる。例えば、トランスジェニック動物は、相同性組換えにより得ることができ、内生座が改変される。また、核酸構築物は、ゲノム中にランダムに組込む。安定な組込みのためのベクターとしては、プラスミド類、レトロウィルスおよび他の動物ウィルス類、YAC類等がある。
核酸は、マイクロインジェクションによる或いは組換えウィルスもしくは組換えウィルスベクター等で感染させることによるような意図的な遺伝子操作により、細胞プレカーサー中へ導入することによって直接または間接的に細胞中に導入し得る。遺伝子操作なる用語は、古典的な交雑育種または生体外受精を含まないが、むしろ組換え核酸分子の導入に関する。この核酸分子は染色体内に組込んでもよく、或いは染色体外複製性DNAであってもよい。
相同性組換え用のDNA構築物は、本発明の核酸の少なくとも一部を含み、その遺伝子は、所望の遺伝子修飾(1以上)を有し且つターゲット座に対する相同性の領域を含む。ランダム組込み用のDNA構築物は、組換えを介在するための相同性の領域を含む必要はない。好都合なことに、正および負選択のためのマーカーを含ませ得る。相同性組換えによるターゲット遺伝子修飾を有する細胞の産生方法は、当該技術において公知である。哺乳動物細胞の種々の移入方法については、Keown et al., Meth. Enzymol. (1990) 185:527-537を参照されたい。
【0029】
胚幹(ES)細胞においては、ES細胞系を使用し得、或いは胚細胞を、マウス、ラット、モルモット等のような宿主から新鮮に得ることができる。そのような細胞は、適切な線維芽細胞供給体層上で増殖させるかまたは白血病抑制因子(LIF)の存在下に増殖させる。形質転換ESまたは胚細胞は、当該技術において記載されている適切な方法を使用して、トランスジェニック動物の生成に使用し得る。
トランスジェニック動物は、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット)、鳥類または両性類等のような非ヒト動物であり得、機能性試験、薬物スクリーニング等において使用できる。トランスジェニック動物使用の代表的な例としては、下記に説明する例がある。
また、トランスジェニック植物も生成させ得る。トランスジェニック植物細胞および植物を調製する方法は、米国特許第5,767,367号;第5,750,870号;第5,739,409号;第5,689,049号;第5,689,045号;第5,674,731号;第5,656,466号;第5,633,155号;第5,629,470号;第5,595,896号;第5,576,198号;第5,538,879号;第5,484,956号に記載されており、これら米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。トランスジェニック植物を生成させる方法は、Plant Biochemistry and Molecular Biology (eds. Lea and Leegood, John Wiley & Sons) (1993) pp. 275-295において、さらに Plant Biotechnology and Transgenic Plants (eds. Oksman-Caldentey and Barz), (2002) 719 pにおいても見受けられる。
例えば、体細胞を含む胚形成性外植片は、トランスジェニック宿主の調製において使用し得る。細胞または組織の収穫後、興味ある外来DNAを該植物細胞中に導入する;そのような導入においては、種々の異なる方法が利用可能である。分離されたプロトプラストにより、このプロトプラストの裸DNAと一緒のインキュベーションのようなDNA介在遺伝子伝達プロトコールによる導入(そのようなプラスミドは、多価カチオン(例えば、PEGまたはPLO)の存在下での興味ある外来コード配列を含む);或いは、興味ある外来配列を含む裸DNAの存在下での上記プロトプラストのエレクトロポレーションの機会が生ずる。その後、外来DNAを成功裏に取込んだプロトプラストを選択し、カルス中に増殖させ、最終的には、適切な量と比率のオーキシン類およびサイトカイニン類のような刺激因子との接触により、トランスジェニック植物中に増殖させる。
当業者において利用し得る“遺伝子銃”法またはアグロバクテリウム介在形質転換のような他の適切な植物産生方法も使用し得る。
【0030】
使用方法
本発明の蛍光たんぱく質(並びに前述した本発明の他の成分)は、種々の異なる用途での使用を見出している。例えば、本発明の蛍光たんぱく質は、生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの標識化、分析または検出方法において使用し得る。これらのタイプのたんぱく質の各々についての代表的な使用を以下に説明するが、以下で説明する使用は、単なる例示であって、如何なる形でも、本発明のたんぱく質の使用を説明した使用に限定することを意味しない。
生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの標識化方法に関する好ましい実施態様においては、本発明のたんぱく質は、細胞および分子の生物学的アッセイにおける生体内ラベル(またはレポーター分子)としての使用を見出している。興味あるアッセイとしては、限定するものではないが、遺伝子発現、たんぱく質局在化および同時局在化、たんぱく質-たんぱく質相互作用、たんぱく質-核酸相互作用、核酸-核酸相互作用、細胞および細胞オルガネラの局在化および相互作用等についてのアッセイがある。本発明の蛍光たんぱく質は、生存および固定細胞中での生体分子ラベルまたは細胞オルガネララベルとして、細胞またはオルガネラ融合中のマーカーとして、細胞またはオルガネラの完全性マーカーとして、移入マーカーとして(例えば、少なくとも1種の本発明の蛍光たんぱく質をコード化する発現ベクターを含有する移入細胞選択のためのラベルとして)、近生理学的濃度で作動するリアルタイムプローブとして等の用途を見出している。
さらにまた、本発明のたんぱく質は、生物学的分子の分析方法においても使用し得る。例えば、本発明のたんぱく質は、生物学的物質中での興味あるたんぱく質またはポリペプチドの発現の同定および/または測定においての使用を見出している。この方法は、i) 細胞中に、本発明に従う蛍光たんぱく質をコード化するヌクレオチド配列を含む核酸分子(該核酸分子は、上記興味あるたんぱく質またはポリペプチドの発現を調節する発現制御配列と機能可能であるように結合されて、その制御下にある)を導入し;ii) 上記核酸を適切な条件下で発現させ;そして、iii) 上記蛍光たんぱく質の蛍光発光量を上記興味あるたんぱく質発現を測定する手段として検出することを含む。
とりわけ、本発明のたんぱく質は、生物学的物質中での興味あるたんぱく質またはポリペプチドの発現および/または局在化の同定および/または測定においての使用を見出している。この方法は、i) 細胞中に、本発明に従う蛍光たんぱく質をコード化するヌクレオチド配列を含む核酸分子(該核酸分子は、興味あるたんぱく質またはポリペプチドをコード化する配列と融合させており、上記興味あるたんぱく質またはポリペプチドの発現を調節する発現制御配列と機能可能であるように結合されて、その制御下にある)を導入し;ii) 上記細胞を、上記興味あるたんぱく質の発現に適する条件下で培養し;そして、iii) 上記蛍光たんぱく質の蛍光発光量を上記興味あるたんぱく質の発現/局在化を測定する手段として検出することを含む。
【0031】
興味ある用途としては、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法における本発明のたんぱく質の使用がある。これらの方法においては、本発明のたんぱく質は、第2の蛍光たんぱく質または染料、例えば、本発明のもう1つの蛍光たんぱく質;或いはMatz et al., Nature Biotechnology 17:969-973 (1999)に記載されているような蛍光たんぱく質;例えば、米国特許第6,066,476号、第6,020,192号、第5,985,577号、第5,976,796号、第5,968,750号、第5,968,738号、第5,958,713号、第5,919,445号、第5,874,304号に記載されているようなオワンクラゲ由来の緑色蛍光たんぱく質またはその蛍光変異体(これらの米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる);クマリンおよびその誘導体、7-アミノ-4-メチルクマリンおよびアミノクマリンのような他の蛍光染料;ボディピー(bodipy)染料;カスケードブルー;フルオレセインイソチオシアネートおよびオレゴングリーンのようなフルオレセインおよびその誘導体;テキサスレッド、テトラメチルローダミン、エオシン類およびエリトロシン類のようなローダミン染料;Cy3およびCy5のようなシアニン染料;クワンタム(quantum)染料のようなレンタニンド(lenthaninde)イオンの大環状キレート類;並びに米国特許第5,843,746号;第5,700,673号;第5,674,713号;第5,618,722号;第5,418,155号;第5,330,906号;第5,229,285号;第5,221,623号;第5,182,202号に記載されているもののような、ルシフェラーゼ類のような化学発光染料(これらの米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる)と一緒に、供与体および/または受容体として作動する。
本発明の蛍光たんぱく質を使用するFRETアッセイを使用し得る特定の例としては、限定するものではないが、哺乳動物2-ハイブリッド系、転写因子二量体化、膜たんぱく質多量体化、多たんぱく質複合体形成におけるようなたんぱく質-たんぱく質相互作用の検出;ペプチドまたはたんぱく質が本発明の蛍光たんぱく質を含むFRET蛍光混合物と共有結合し、該結合ペプチドまたはたんぱく質が、例えば、カスパーゼ介在開裂におけるプロテアーゼ特異性基質、PKA調節ドメイン(cAMPセンサー)のような、FRETを増大または低下させるシグナルを受けるときに立体配座変化を受けるペプチド、リン酸化部位(例えば、リン酸化部位は当該ペプチド中に存在し、当該ペプチドは他のたんぱく質のリン酸化/脱リン酸化ドメインに対して結合特異性を有する)であり、或いは上記ペプチドがCa2+結合ドメインを有する場合のような、多くの種々の事象のバイオセンサーとしてがある。さらに、本発明のたんぱく質が使用を見出している蛍光共鳴エネルギー移動即ちFRET用途としては、限定するものではないが、米国特許第6,008,373号;第5,998,146号;第5,981,200号;第5,945,526号;第5,945,283号;第5,911,952号;第5,869,255号;第5,866,336号;第5,863,727号;5,728,528号;第5,707,804号;第5,688,648号、第5,439,797号に記載されている用途がある;これらの米国特許は、参考として本明細書に合体させる。
【0032】
本発明の蛍光たんぱく質は、細胞中での1種以上の興味あるたんぱく質の発現および/または転座の調節に対する試験物質の効果の検出方法における使用を見出している。また、本発明の蛍光たんぱく質は、興味あるたんぱく質の発現および発現制御配列の試験物質に応答しての同時活性の検出方法における使用も見出している。上記蛍光たんぱく質は、細胞中での2種以上の発現制御配列の試験物質に応答しての活性を比較する方法における使用も見出している。そのような方法は、プロセスにおける効果を測定すべき試験物質の存在下または不存在下において実施し得る。
また、本発明の蛍光たんぱく質は、蛍光指示基を発現する細胞アレーの顕微鏡画像形成および電子分析の使用による自動化スクリーニングに関連する用途における使用も見出している。スクリーニングは薬物発見においてまた機能性ゲノムの分野において使用し得、本発明のたんぱく質は、例えば、内皮細胞による多細胞細管の形成(血管形成)、Fluoroblok Insertシステム(Becton Dickinson社)による細胞移動、創傷治癒または神経突起伸張における多細胞再組織化および移動の変化を検出する細胞全体のマーカーとして使用する。スクリーニングは、本発明のたんぱく質を、刺激時のキナーゼおよび転写因子転座のような、例えばシグナル形質導入における細胞活性についての指示薬として細胞内位置の変化を検出するペプチド(ターゲッティング配列のような)またはたんぱく質に融合させたマーカーとして使用する場合も、使用し得る。例としては、たんぱく質キナーゼC、たんぱく質キナーセA、転写因子NFkBおよびNFAT;サイクリンA,サイクリンB1およびサイクリンEのような細胞環状たんぱく質;開裂基質のその後の移動を伴うプロテアーゼ開裂;小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、核心、核小体、原形質膜、ヒストン類、エンドソーム、リソソームまたは微細管のような細胞内構造体用のマーカーを含むリン脂質がある。
【0033】
また、本発明のたんぱく質は、局在化マーカーによる他の蛍光融合たんぱく質の同時局在化を検出する高容量スクリーニングにおいて、細胞内蛍光たんぱく質/ペプチドの移動の指示薬としてまたは単独のマーカーとしても使用し得る。本発明の蛍光たんぱく質が使用を見出している細胞アレーの自動化スクリーニングに関連する用途の例には、米国特許第5,989,835号;並びにWO 0017624号;WO 00/26408号;WO 00/17643号;およびWO 00/03246号がある;これら特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。
本発明の蛍光たんぱく質は、高処理量スクリーニングアッセイにおける使用も見出している。本発明の蛍光たんぱく質は、24時間よりも長い半減期を有する安定なたんぱく質である。また、薬物発見における転写レポーターとして使用し得る、短縮した半減期を有する本発明のたんぱく質の不安定化形も提供される。例えば、本発明に従うたんぱく質は、マウスオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子、マウスサイクリンB1破壊ボックスまたはユビキチン等由来のPEST配列のような、短めの半減期を有するたんぱく質から誘導された推定たんぱく質分解性シグナル配列と融合させ得る。不安定化たんぱく質およびこれを生成させるのに使用し得るベクターの説明については、例えば、米国特許第6,130,313号を参照されたい;該米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。シグナル形質導入経路におけるプロモーターは、例えば、AP1、NFAT、NFkB、Smad、STAT、p53、E2F、Rb、myc、CRE、ER、GRおよびTRE等のような薬物スクリーニングにおいて、本発明の蛍光たんぱく質の不安定化形を使用して検出し得る。
本発明のたんぱく質は、本発明のたんぱく質をPKCガンマCa結合ドメイン、PKCガンマDAG結合ドメイン、SH2ドメインまたはSH3ドメイン等のような特定のドメインに融合させることによって、第2のメッセンジャー検出体として使用し得る。
種々の異なる用途において同様に使用し得る本発明たんぱく質の分泌形は、分泌性リーディング配列を本発明のたんぱく質に融合させることによって調製し得る。
また、本発明のたんぱく質は、蛍光活性化細胞分別(FACS)用途における使用も見出している。そのような用途においては、本発明の蛍光たんぱく質を細胞集団をマークするラベルとして使用し、その後、得られた標識化細胞集団を、蛍光活性化細胞分別装置により、当該技術において公知のようにして分別する。FACS法は、米国特許第5,968,738号および第5,804,387号に記載されており、これらの米国特許の開示は参考として本明細書に合体させる。
【0034】
また、本発明のたんぱく質は、トランスジェニック動物における生体内ラベルとしての使用も見出している。例えば、本発明のたんぱく質の発現は、組織特異性プロモーターによって誘導し得、そのような方法は、他の用途の中で、トランスジェニック発現の有効性を試験するような、遺伝子治療の研究における使用を見出している。そのような用途を例示するトランスジェニック動物における蛍光たんぱく質の代表的な用途は、WO 00/02997号において見出され、その開示は参考として本明細書に合体させる。
本発明のたんぱく質の更なる用途としては、細胞または動物中への注入後のマーカーとしておよび定量測定における較正において;細胞生存性モニタリング用の酸素バイオセンサー装置におけるマーカーまたはレポーターとして;動物類、ペット類、おもちゃ類、食品等のマーカーまたはラベルとしての使用がある。
また、本発明の蛍光たんぱく質は、プロテアーゼ開裂アッセイにおける使用も見出している。例えば、開裂不活化蛍光アッセイは本発明のたんぱく質を使用して展開し得、本発明のたんぱく質を、該たんぱく質の蛍光特性を破壊することなくプロテアーゼ特異性開裂配列を含むように操作する。活性化プロテアーゼによる蛍光たんぱく質の開裂時には、蛍光は、官能性発色団の破壊により鋭敏に減少するであろう。また、開裂活性化蛍光は、本発明のたんぱく質を使用して展開し得、該たんぱく質を、発色団に接してまたはその内部で更なるスペーサー配列を含有するように操作する。この変異体は、官能性発色団の一部がスペーサーによって分割されるので、その蛍光活性を有意に低下させる。スペーサーは、2つの同一プロテアーゼ特異性開裂部位によって枠組みされる。活性化プロテアーゼによる開裂時に、スペーサーを切断し、蛍光たんぱく質の2つの残留“サブユニット”を再構築して官能性蛍光たんぱく質を生成し得るであろう。上記の用途の双方は、カスパーゼ等のような種々のタイプの異なるプロテアーゼについてのアッセイにおいて展開し得るであろう。
【0035】
また、本発明のたんぱく質は、生物学的膜中のリン脂質組成を判定するアッセイにおいても使用し得る。例えば、特定のリン脂質に結合して生物学的膜中のリン脂質分布像の局在化/可視化を可能にし、また特定のリン脂質基盤(raft)中の膜たんぱく質の同時局在化も可能にする本発明たんぱく質の融合たんぱく質(または本発明のたんぱく質の任意の他の種の共有または非共有修飾体)は、本発明のたんぱく質によって達成され得る。例えば、GRP1のPHドメインは、ホスファチジル-イノシトールトリ-ホスフェート(PIP3)に対しては高親和性を有するが、PIP2に対しては有さない。そのようなものとして、GRP1のPHドメインと本発明のたんぱく質との融合たんぱく質を構築して、生物学的膜中のPIP3リッチ領域を特異的に標識化し得る。
また、本発明の蛍光たんぱく質は、Ca2+イオン指示薬;pH指示薬;リン酸化指示薬;またはマグネシウム、ナトリウム、カリウム、クロライドおよびハライドのような他のイオンの指示薬のような、原核および真核細胞におけるバイオセンサーとしての使用を見出している。また、蛍光たんぱく質のバイオセンサーとしての使用方法としては、米国特許第5,972,638号;第5,824,485号および第5,650,135号(並びに本明細書において引用した文献)記載されている方法がある;これら米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。
前述した本発明の抗体類も、本発明のたんぱく質の他の蛍光たんぱく質からの区別化のような多くの用途における使用を見出している。
【0036】
キット
また、本発明によれば、上述の用途の1つ以上を実施するのに使用するキットも提供される。好ましい実施態様においては、キットは、生物学的分子の標識化において使用し得る。キットは、典型的には本発明のそのままのたんぱく質、または本発明のたんぱく質をコード化する核酸を、好ましくは本発明のたんぱく質の発現のための要素、例えば、本発明のたんぱく質をコード化する核酸を含むベクターのような構築物と一緒に含む。また、本発明は、そのようなキット成分を製造する手段にも及ぶ。該手段としては、本発明の核酸を、例えば、PCRにより産生させるためのヒドロ虫網クラゲ由来のcDNAと1対のオリゴヌクレオチドプライマーとがあり得、或いは、該手段としては、連結させたときに本発明の蛍光たんぱく質をコード化する核酸を産生し得る多くの核酸フラグメント等があり得る。キット成分は、典型的には適切な容器内の、緩衝液ような適切な保存媒質中に典型的に存在する。キット中には、提供されるたんぱく質に対し特異性の抗体も存在し得る。ある実施態様においては、キットは、各々が本発明のたんぱく質をコード化する複数の異なるベクターを含み、各ベクターは、異なる環境においておよび/または異なる条件下での発現、例えば、ベクターが哺乳動物細胞での発現のための強力プロモーターを含むかまたはプロモーターの通例挿入のための複数のクローニング部位を有する無プロモーターベクターである場合の構成的発現および調整発現等用に設計されている。
上記の各成分以外に、本発明のキットは、本発明の方法を実施するための使用説明書をさらに含む。これらの使用説明書は、種々の形で本発明のキット中に存在し得、その形状の1つ以上がキット中に存在し得る。
以下の実施例は、例示のために提示し、限定のためではない。
【0037】
実施例
実施例1
phiYFPクローニング、シークエンシングおよび組換えたんぱく質産生
明黄色蛍光を、蛍光顕微鏡を使用して、ヒドロクラゲコザラクラゲ種(口刺胞動物門(Cnidaria)、ヒドロ虫網、ヒドロムシ目、軟クラゲ亜目、ウミサカズキガヤ科)において検出した。このクラゲにおける蛍光の起因となるたんぱく質を見出すために、大腸菌中の発現cDNAライブラリーのスクリーニングに基づく戦略を選択した。増幅cDNAサンプルは、SMART cDNA増幅キット(Clontech社)を使用して調製し、PCR-Scriptベクター(Stratagene社)中にクローニングした。約105の組換えクローンを、蛍光立体顕微鏡を使用して目視スクリーニングした。同じ黄色蛍光たんぱく質をコード化する2つの蛍光クローンを見出し、phiYFPと命名した。phiYFPの核酸およびアミノ酸配列は、SEQ ID NO:01、02および23に示されている。phiYFPとオワンクラゲGFPとの比較を図1に示している。phiYFPは、サンゴ由来蛍光たんぱく質に対してよりもGFPに対して類似しているようである(50%同一性)。
たんぱく質精製を容易にするために、phiYFP遺伝子のコード領域をpQE30発現ベクター(Qiagen社)中にクローニングして、組換えたんぱく質がN-末端で6個ヒスチジンのタグを含有するようにした。大腸菌中での発現後、phiYFPたんぱく質を金属アフィニティー樹脂TALON (Clontech社)によって精製した。phiYFPにおける励起-発光スペクトルは、それぞれ、525 nmおよび537 nmにおいてピークであった(図2)。野生タイプオワンクラゲGFPとは対照的に、この新規なたんぱく質は、1つのみの吸光-励起ピークを有しており、これは、おそらく脱プロトン化発色団状態に相応しているであろう。
【0038】
実施例2
phiYFP変異誘発
phiYFP核酸コード配列を実施例1において記載したようにして調製した。コード化された野生タイプたんぱく質を、ランダム変異誘発により修飾した。phiYFPのランダム変異誘発は、僅かに変化した励起-発光スペクトルを有するphiYFP-Y1と命名したより明色の変異体の産生をもたらした。この変異体は、3個のアミノ酸置換基、とりわけ、S2P、E174G、I201Mを含有していた(SEQ ID NO:03、04および24)。phiYFP-Y1は、これらの蛍光たんぱく質を発現する大腸菌コロニーの並行目視比較において、野生タイプphiYFPよりも1.5〜2倍高い輝度を示した。さらに、phiYFP-Y1は、542 nmにおいてピークに達した僅かに赤にシフトした発光スペクトルを示している(図2B参照)。
phiYFPおよびphiYFP-Y1の両たんぱく質は、二量体であることが判明した。このことは、非加熱たんぱく質サンプルのたんぱく質ゲル電気泳動により実証された(Baird等、2000年、前出参照)。これらの条件下で、これらのFP類は、約50 kDaで黄色蛍光バンドとして移動した。ゲル濾過試験により、phiYFPおよびphiYFP-Y1の二量体状態が明らかとなった。精製たんぱく質サンプル(約1 mg/ml)をSephadex-100カラム(0.7×60cm)上に負荷させ、50 mMリン酸緩衝液(pH7)と100 mM NaClとの溶液で溶出させた。EGFP、HcRed1およびDsRed2 (Clontech社)を、それぞれ、モノマー、ダイマーおよびテトラマー標準として使用した。
部位特異性変異誘発を使用してphiYFP-Y1の単量体変異体を調製した。6個のアミノ酸置換、とりわけ、V103N、M166R、Y198N、T202S、T206K、V221Kを導入した。全体として、この変異体phiYFP-M0は、9個の置換を有していた:S2P、V103N、M166R、E174G、Y198N、I201M、T202S、T206K、V221K(SEQ ID NO:05、06および25)。phiYFP-M0は、大腸菌中で発現させたとき、ゆっくりしたたんぱく質産生停止と低輝度を示していた。その励起-発光スペクトルは、親変異体と比較して青にシフトしていた(それぞれ、517および529nmでの最高値;図2C)。phiYFP-M0は、ゲル濾過試験により、単量体たんぱく質であった。
【0039】
phiYFP-M0を改良するために、ランダム変異誘発を応用した。Diversity PCR Random Mutagenesisキット(CLONTECH社)を、1000 bp当り5〜6の変異に対して最適の条件下において使用した。変異体たんぱく質を発現している大腸菌コロニーを、蛍光立体顕微鏡 SZX-12 (Olympus社)により、目視スクリーニングした。明らかに赤にシフトしたスペクトルを有する最明色クローン(親phiYFP-M0に比較して)をさらに特性決定した。phiYFP-M1と標示したこの変異体は、以下のアミノ酸置換を有していた:E88D、V103N、M166C、E174G、I201M、T202S、T206K、V221K (SEQ ID NO:07、08および26)。このたんぱく質における励起-発光スペクトルは、それぞれ、野生タイプphiYFPの励起-発光スペクトル(図2D)と同様の524および539 nmでのピークを有していた。精製phiYFP-M1は、モル吸光係数130,000 M-1cm-1と蛍光量子収率0.40とを有していた。モル吸光係数測定については、成熟発色団濃度の評価に基づいた。たんぱく質を、等容量の2M NaOHでアルカリ変性した。これらの条件において、GFP様発色団は446 nmで吸収し、そのモル吸光係数は44,000 M-1cm-1である(Ward, W. W. Properties of the coelentrate green-fluorescent protein. in Bioluminescence and Chemiluminescence. Academic Press (1981), 235-242)。未変性およびアルカリ変性phiYFP-M1の吸収スペクトルを測定した。未変性状態のたんぱく質におけるモル吸光係数は、変性たんぱく質の吸収に基づき評価した。量子収率測定においては、phiYFP-M1の蛍光を同等に吸収するEGFP (量子収率0.60 (Patterson et al., J. Cell. Sci. (2001), 114: 837-838))と比較した。phiYFP-M1は、ゲル濾過試験により、単量体たんぱく質であった。
哺乳動物細胞中での発現を増強させるために、哺乳動物最適化コドン(SEQ ID NO:09、10および27)を使用して、phiYFP-M1の“ヒト化”形を合成した。phiYFP-M1の“ヒト化”形を部位特異性およびランダム変異誘発に供して、該たんぱく質の緑色およびシアン色発光形を得た。緑色およびシアン色蛍光を有する各変異体蛍光たんぱく質を得た。phiYFP-M1G1と命名したヒト化phiYFP-M1の緑色変異体は、以下のアミノ酸置換を有していた(phiYFP-M1と比較したとき):T65S、L148Q、Y203T、K231T、T232A (SEQ ID NO:17、18および31)。phiYFP-M1C1と命名したヒト化phiYFP-M1のシアン色変異体は、以下のアミノ酸置換を有していた(phiYFP-M1と比較したとき):L6Q、T65S、Y66W、N124K、C147Y、L148Q、Y203T、V224L (SEQ ID NO:19、20および32)。このたんぱく質の励起-発光スペクトルは、図3A、Bに示している。
【0040】
実施例3
hydr1GFPクローニング、シークエンシングおよび組換えたんぱく質産生
明緑色蛍光を、蛍光顕微鏡を使用して、花水母亜目のヒドロクラゲ1(口刺胞動物門、ヒドロ虫網、花水母亜目) (約1mm長、図4)において検出した。このクラゲにおける蛍光の起因となる遺伝子について試験するために、大腸菌中の発現cDNAライブラリーのスクリーニングに基づく戦略を実施した。増幅cDNAサンプルは、SMART cDNA増幅キット(Clontech社)を使用して調製し、PCR-Scriptベクター(Stratagene社)中にクローニングした。約105の組換えクローンを、蛍光立体顕微鏡を使用して目視スクリーニングした。各々が同じ緑色蛍光たんぱく質をコード化する3つの蛍光クローンを同定し、これをhydr1GFPと命名した。このたんぱく質の核酸およびアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11、12および28に示されている。hydr1GFPとオワンクラゲGFPとの比較を図1に示している。hydr1GFPは、サンゴ由来蛍光たんぱく質に対してよりもGFP対して類似しているようである(37%同一性)。
たんぱく質精製を容易にするために、hydr1GFPのコード領域をpQE30発現ベクター(Qiagen社)中にクローニングして、組換えたんぱく質がN-末端で6個ヒスチジンのタグを含有するようにした。大腸菌中での発現後、hydr1GFPを金属アフィニティー樹脂、TALON (Clontech社)によって精製した。hydr1GFPにおける励起-発光スペクトルは、474 nmおよび494 nmにおいてピークを示した(図5)。野生タイプオワンクラゲGFPとは対照的に、この新規なhydr1GFPたんぱく質は、1つのみの吸光-励起ピークを有しており、これは、脱プロトン化発色団状態に相応し得る。
【0041】
実施例4
hm2CPクローニング、シークエンシングおよび組換えたんぱく質産生
明緑色蛍光を、蛍光顕微鏡を使用して、花水母亜目の小ヒドロクラゲ2(口刺胞動物門、ヒドロ虫網、花水母亜目、図4)において検出した。このクラゲ由来のFPについて試験するために、大腸菌中の発現cDNAライブラリーのスクリーニングに基づく戦略を選択した。増幅cDNAサンプルは、SMART cDNA増幅キット(Clontech社)を使用して調製し、PCR-Scriptベクター(Stratagene社)中にクローニングした。約105の組換えクローンを、蛍光立体顕微鏡または裸眼を使用して目視スクリーニングした。予期に反して、蛍光クローンは観察されなかった。代りに、紫色の非蛍光CP (hm2CP)を同定した。このたんぱく質の核酸およびアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13、14および29に示されている。hm2CPとGFPとの比較を図1に示している。hm2CPは、比較的遠いGFPホモログのようである(24%ほどの低い同一性)。
たんぱく質精製を容易にするために、hm2CPのコード領域をpQE30発現ベクター(Qiagen社)中にクローニングして、組換えたんぱく質がN-末端で6個ヒスチジンのタグを含有するようにした。大腸菌中での発現後、hm2CPを金属アフィニティー樹脂TALON (Clontech社)によって精製した。精製hm2CPにおける吸収スペクトルは、568 nmにおいて単一の最高値を有していた(図6)。hm2CPの極めて弱い赤色蛍光(それぞれ、569および597nmでの励起最高値)は、検出し得る(図7)。
【0042】
実施例5
hm2CP変異誘発
hm2CP核酸コード配列を実施例4に記載したようにして調製した。hm2CPの蛍光変異体を産生させるために、ランダム変異誘発を使用した。Diversity PCR Random Mutagenesisキット(CLONTECH社)を、1000 bp当り5〜6の変異に対して最適の条件下で、hm2CPのランダム変異誘発において使用した。変異体たんぱく質を発現している大腸菌コロニーを、蛍光立体顕微鏡 SZX-12 (Olympus社)により、目視スクリーニングした。最明色変異体を選択し、もう1回のランダム変異誘発に供した。合計4回の変異誘発により、S3-2と標示した明色で迅速成熟性の赤色蛍光変異体が生じた。親色素たんぱく質と比較して、S3-2は、13個のアミノ酸置換、とりわけ、D24G、I30V、K73R、T91S、I118V、K136R、T145N、S154P、C161A、Y162F、L181M、V199T、I201Tを有していた(SEQ ID NO:15、16および30)。この変異体における励起および発光スペクトルは、それぞれ、585おとび611nmで最高値を有していた(図8)。S3-2赤色蛍光たんぱく質は、ゲル濾過データによって示されるように、単量体性質を有する。哺乳動物細胞中での発現を増強させるために、哺乳動物最適化コドン(SEQ ID NO:21、22および33)を使用して“ヒト化”形のS3-2を合成した。
【0043】
実施例6
ポリクローナル抗体調製
実施例2および5に記載したようにして調製したS3-2赤色蛍光たんぱく質およびphiYFP-M1黄色蛍光たんぱく質の核酸コード領域を、それぞれ、pQE30発現ベクター(Qiagen社)中にクローニングして、各組換えたんぱく質がそのN-末端で6個ヒスチジンのタグを含有するようにした。大腸菌中での発現後、hm2CPを金属アフィニティー樹脂TALON (Clontech社)によって変性条件下で精製した。ウサギを、完全フロイントアジュバント中に乳化させた組換えDSNポリペプチドにより、免疫化し、月毎の間隔で4回ブースターした。各ブースターの10日または11日後に、動物を採血した。ポリクローナル抗血清を組換えたんぱく質上でELISAおよびウェスタンイムノブロッティングにより試験した。
【0044】
実施例7
phiYFPおよびS3-2たんぱく質を使用しての哺乳動物細胞標識化
真核細胞の蛍光標識化においては、実施例2および5に記載したようにして調製したphiYFP-M1およびS3-2たんぱく質のヒト化形を、それぞれ、pEGFP-C1ベクター(CLONTECH社)中にAgeIとBglII制限部位との間でクローニングした(EGFPコード領域の代りに)。以下の細胞系を使用した:293Tヒト腎臓上皮細胞、3T3マウス胚線維芽細胞、L929ネズミ皮下線維芽細胞、Veroアフリカミドリザル腎臓上皮細胞およびCOS1アフリカミドリザル腎臓線維芽細胞。各細胞を、LipofectAMINE試薬(Invitrogen社)を使用して移入し、移入後20時間で試験した。CCDカメラ(DP-50、Olympus社)を備えたOlympus CK40蛍光顕微鏡を使用して細胞画像を形成した。各種細胞系中でのphiYFP-M1またはS3-2の発現は、凝集なしの明黄色または赤色シグナルをもたらした。蛍光は、移入24時間後で明らかに検出可能であった。細胞毒性は、観察されなかった。
【0045】
実施例8
phiYFPおよびS3-2たんぱく質を使用してのたんぱく質標識化およびたんぱく質局在化分析
実施例2および5に記載したようにして調製したphiYFP-M1およびS3-2たんぱく質のヒト化形を、それぞれ、ヒト細胞質ベータ-アクチンに融合させた。phiYFP-M1またはS3-2タグ付け融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、EGFPによる融合体において観察されるパターンに密接に一致したパターンを示す明色蛍光をもたらした。
phiYFP-M1のヒト化形を、さらに、ヒトアルファチューブリンおよび核小体たんぱく質フィブリラリン(fibrillarin)に融合させた。phiYFP-M1タグ付け融合構築物を発現するプラスミドにより移入された293Tヒト腎臓上皮細胞は、相応する融合パートナーにおいて特徴的なパターンを有する明色蛍光をもたらした。
【0046】
実施例9
phiYFPを使用してのミトコンドリア標識化
実施例2に記載したようにして調製したヒト化phiYFP-M1形のコード配列を、ヒトシトクロムcオキシダーゼのサブユニットVIII由来のミトコンドリアターゲッティング配列(MTS)と融合させた。phiYFP-M1-MTS融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、たんぱく質の宿主細胞のミトコンドリアへの有効な転座をもたらした。蛍光は、移入後24時間で明らかに検出可能であった。
【0047】
実施例10
phiYFPを使用してのゴルジ体標識化
実施例2に記載したようにして調製したヒト化phiYFP-M1形のコード配列を、ヒトベータ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GT;Watzele & Berger (1990) Nucleic Acids. Res. 18:7174)のN末端81個のアミノ酸をコード化する配列と融合させた。ヒトベータ1,4-GTのこの領域は、ゴルジ体の中央横断領域に上記融合たんぱく質を向かわせる膜固定性シグナルペプチドを含有する(Llopis et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1998) 95: 6803-6808;Yamaguchi & Fukuda J. Biol. Chem. (1995)270: 12170-12176;Gleeson et al. Glycoconjugate J. (1994) 11: 381-394)。phiYFP-M1タグ付け融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、細胞内のゴルジ体の中央横断領域の蛍光標識化をもたらした。
【0048】
実施例11
phiYFPを使用してのペルオキシソーム標識化
実施例2に記載したようにして調製したヒト化phiYFP-M1形のコード配列を、ペルオキシマルターゲッティングシグナル1(PTS1)と融合させた。PTS1配列は、ペルオキシソーム類のマトリックスに上記融合たんぱく質を向かわせるトリペプチドSKLをコード化する(Gould et al. J. Biol. Chem. (1989) 108: 1657-1664;Gould et al. EMBO J. (1990) 9: 85-90;Monosov et al. J. Histo. Cytochem. (1996) 44: 581-589)。phiYFP-M1タグ付け融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、ペルオキシソーム類の蛍光標識化をもたらした。
【0049】
実施例12
phiYFPを使用しての核標識化
実施例2に記載したようにして調製したヒト化phiYFP-M1形のコード配列を、C-末端で融合させたシミアン・ウィルス40の大T抗原の核局在化シグナル(NLS)の3つのコピー(Kalderon et al. Cell (1984) 39: 499-509;Lanford et al. Cell (1986) 46: 575-582)と融合させた。phiYFP-M1タグ付け融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、核の蛍光標識化をもたらした。
【0050】
本明細書において引用した全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願について参考として合体させるよう特定的に且つ個々に指摘していたように、参考として本明細書に合体させる。いずれの刊行物の引用も本発明の背景と理解を提供するものであり、そのような刊行物のいずれもが従来技術であるという是認と解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】GFP、phiYFP、hydr1GFPおよびhm2CPのアミノ酸配列の配列構造を示す。導入ギャップはドットで示す。GFP中の相応するアミノ酸に相応する残基は、ダッシュで示している。
【図2A】野生タイプphiYFPにおける励起(点線)および発光(実線)スペクトルを示す。
【図2B】野生タイプphiYFPの変異体:phiYFP-Y1における励起(点線)および発光(実線)スペクトルを示す。
【図2C】野生タイプphiYFPの変異体:phiYFP-M0における励起(点線)および発光(実線)スペクトルを示す。
【図2D】野生タイプphiYFPの変異体:phiYFP-M1における励起(点線)および発光(実線)スペクトルを示す。
【図3A】phiYFP-M1G1たんぱく質の励起-発光スペクトルを示す。
【図3B】phiYFP-M1C1たんぱく質の励起-発光スペクトルを示す。
【図4A】花水母亜目のヒドロクラゲ1の略図を示す。
【図4B】花水母亜目のヒドロクラゲ2の略図を示す。
【図5】野生タイプhydr1GFPにおける励起-発光スペクトルを示す。
【図6】野生タイプhm2CPにおける吸収スペクトルを示す。
【図7】野生タイプhm2CPにおける励起-発光スペクトルを示す。
【図8】hm2CPの赤色蛍光変異体S3-2における励起-発光スペクトルを示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、生物学および化学の分野に関する。さらに詳細には、本発明は、蛍光たんぱく質に関する。
【0002】
発明の背景
興味あるたんぱく質、細胞または生物体の標識化は、多くの生化学、分子生物学および医療診断用途において卓越した役割を果たしている。放射性ラベル、色素ラベル、蛍光ラベル、化学発光ラベル等のような種々の異なるラベルが、種々の特性および最適の用途でもって、当該技術において開発され使用されている。しかしながら、新たなラベル類を開発する興味は、存続している。とりわけ興味があるのは、蛍光たんぱく質ラベルのような新たなたんぱく質ラベルの開発である。
緑色蛍光たんぱく質(GFP)、その変異体およびホモログ類は、Lippincott-SchwartzおよびPattersonによりScience (2003) 300(5616):87-91に詳述されている生物医学サイエンスにおける生体内蛍光マーカーとしての集中的な使用により、今日では広く知られている。ヒドロクラゲ目オワンクラゲ(hydromedusa Aequorea aequorea) (A. victoriaと同義)に由来するGFPは、J Cell Comp Physiol. (1962), 60:85-104においてJohnson等によって発見され、GFPが光たんぱく質エクオリンからの青色光を緑色光に転換する二次発光体の役割を奏するクラゲの生体発光系の1部として見出された。その後、同様なたんぱく質が、ヒドロ虫クラゲ コザラクラゲ グレガリウム(hydroid medusa Phialidium gregarium)、ウミシイタケ(sea pansy Renilla) (花虫網)等のような数種の生体発光腔腸動物から分離された(Ward et al. in Photochem. Photobiol. (1982), 35: 803-808;Levine et al. in Comp. Biochem. Physiol. (1982), 72B: 77-85;Chalfie in Photochem. Photobiol. (1995), 62:651-656を参照されたい)。これらのたんぱく質は、全て緑色蛍光を発し(497〜509nmで発光)、生体発光において二次発光体として機能していた。また、蛍光たんぱく質はカツオノエボシ(Physalia)種からも分離され、そのN-末端アミノ酸配列は確定されている(WO 03/017937号)。
オワンクラゲGFPをコード化するcDNAは、Prasher等によってクローン化された(Gene (1992), 111(2):229-33)。結局は、この遺伝子は、GFPがそれ自体でフルオロフォアを形成する特異な能力に基づき実際に異種構造的に発現した任意の生物体であり得ることが判明した(Chalfie et al., Gene (1992), 111(2):229-233)。この知見により、遺伝子的にコード化された蛍光ラベルとしての細胞生物学におけるGFPの使用についての広汎な展望が開かれている。
【0003】
GFPは、遺伝子発現およびたんぱく質局在化の研究(Chalfe et al., Science 263 (1994), 802-805;および Heim et al., in Proc. Nat. Acad. Sci. (1994), 91: 12501-12504)を含む広範囲の用途において、細胞内の非細胞オルガネラ類の可視化(Rizzuto et al., Curr. Biology (1995), 5: 635-642)のための、さらには、分泌経路に沿うたんぱく質輸送の可視化(Kaether and Gerdes, FEBS Letters (1995), 369: 267-271)のための手段として使用された。
相当量の研究が、GFPの性質を改善するためさらには種々の研究目的において有用で且つ最適化されたGFP試薬を製造するためになされている。“ヒト化”GFP DNAのような新たな種類のGFPも開発されており、そのたんぱく質生成物は、哺乳動物細胞における合成を増大させている(Haas、 et al., Current Biology (1996), 6: 315-324;Yang, et al., Nucleic Acids Research (1996), 24: 4592-4593)。1つのそのようなヒト化たんぱく質は“増強緑色蛍光たんぱく質”(EGFP)である。GFPに対する他の突然変異は、青緑色、シアン緑色および黄緑色発光種をもたらしている。しかしながら、GFPの多大な有用性にもかかわらず、GFPと同様なまたは異なる特性を有する他の蛍光たんぱく質も当該技術において有用であろう。とりわけ、新規な蛍光たんぱく質の利益としては、より大きな励起に対する新たなスペクトルおよびより良好な適合性に基づく蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の実現性がある。1999年において、GFPホモログ類が非生体発光性花虫類(Anthozoa)種からクローン化された(Matz et al., Nature Biotechnol. (1999), 17: 969-973)。この発見により、これらのたんぱく質は生体発光機構の必要成分ではないことが実証された。花虫類由来GFP様たんぱく質は、シアン色、緑色、黄色、赤色蛍光たんぱく質および紫青色非蛍光色素たんぱく質(CP)を含む高いスペクトル多様性を示していた(Matz et al., Bioessays (2002), 24(10): 953-959)。
【0004】
花虫類由来GFP様たんぱく質の主たる欠点は、これらのたんぱく質の多くの用途においての使用を妨げる強いオリゴマー化である(Lauf et al., FEBS Lett. (2001), 498: 11-15;Campbell et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2002), 99: 7877-7882;Mizuno et al., Biochemistry (2001), 40: 2502-2510)。従って、種々のカラーを有する新規な単量体蛍光たんぱく質、並びに既知のGFPの欠点を被らないこれら新規の単量体蛍光たんぱく質をコード化するDNA類を提供することを目的とする。
ヒドロ虫種は、そのようなたんぱく質の潜在的な源である。オワンクラゲGFPおよび他のオワンクラゲ種由来のGFPホモログ類、同様に極めて近いヒトモシクラゲ(Aequorea macrodactyla) (GenBank受託番号AF435427〜AF435433)およびオワンクラゲ(Aequorea coerulescens) (Gurskaya et al., Biochem J. (2003), 373(Pt2): 403-408)由来のGFPホモログ類を除いて、ヒドロ虫由来の蛍光たんぱく質をコード化する他の遺伝子は、それらたんぱく質の幾つかが極めて昔にたんぱく質レベルで特性決定されていたものの、現在までのところクローン化されてはいない。非オワンクラゲヒドロ虫蛍光たんぱく質のクローン化および変異誘発は、改良された特性を有する新規な蛍光ラベルを得るための見込みのある方法である。
【0005】
発明の要約
本発明は、新規な蛍光または色素たんぱく質並びにその変異体および誘導体をコード化する核酸分子を提供する。該核酸は、その非天然環境において分離され、合成され或いは存在し得る。
ある実施態様においては、本発明の核酸は、花水母(Anthomedusae)亜目のコザラクラゲ(Phialidium)種および2種の蛍光クラゲ即ちヒドロ虫クラゲ1および2(ヒドロクラゲ1および2)のような、非オワンクラゲヒドロ虫(non-Aequorea Hydrozoa)種またはこれらの変異体もしくは誘導体から分離する。
ある実施態様においては、本発明の核酸は、SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22からなる群から選ばれたアミノ酸配列を有するたんぱく質をコード化する。ある実施態様においては、上記核酸は、上記たんぱく質のホモログ類、変異体、誘導体、擬態物またはフラグメントをコード化する。
ある実施態様においては、本発明の核酸は、SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21からなる群から選ばれたヌクレオチド配列、或いはこれら配列と相同性の、実質的に同じであり、または同一であるヌクレオチド配列を有する。遺伝子コードの縮退のため本発明の上記核酸配列と異なるまたは本発明の上記核酸配列にハイブリッド化している核酸配列も、本発明の範囲に属する。
もう1つの実施態様においては、本発明は、本発明の核酸によってコード化されたたんぱく質、または該たんぱく質に実質的に同じ、もしくはそれらのホモログ類、誘導体もしくは変異体に関し、或いは本発明の上記たんぱく質を含む融合たんぱく質に関する。
また、本発明の核酸のフラグメントおよび本発明の核酸に高緊縮条件下でハイブリッド化している核酸も提供する。
【0006】
さらに他の実施態様においては、本発明の核酸を含むベクターを提供する。さらに、本発明は、本発明の核酸と細胞中で本発明の核酸を発現させるのに必要な調節要素とを含む発現カセットも提供する。
さらにもう1つの実施態様においては、適切な宿主細胞中でたんぱく質を発現させ、その宿主細胞から該たんぱく質を分離することを含む、色原性および/または蛍光たんぱく質の産生方法を提供する。該方法は、(a) 適切な発現調節配列とカップリングさせる蛍光または色素たんぱく質をコード化する本発明の核酸分子を調製し、(b) 該核酸分子から上記たんぱく質を発現させ、そして、(c)他のたんぱく質を実質的に含まない蛍光たんぱく質を分離することを含む。
さらに、本発明のたんぱく質またはそのフラグメントに対する特異的な抗体も提供する。
さらに、本発明の核酸、ベクターまたは発現カセットを含む宿主細胞、安定な細胞系、トランスジェニック動物およびトランスジェニック植物も提供する。
さらにもう1つの実施態様においては、本発明の核酸にハイブリッド化し得るヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはプローブも提供する。
また、本発明の色素または蛍光たんぱく質および該たんぱく質をコード化する核酸を使用する方法も提供する。
好ましい実施態様においては、生物学的分子の標識化方法を提供し、該方法は、当該生物学的分子を本発明のたんぱく質にカップリングさせることを含む。
もう1つの好ましい実施態様においては、細胞の標識化方法も提供し、該方法は、本発明のたんぱく質を細胞中に産生させることを含む。
もう1つの好ましい実施態様においては、細胞オルガネラの標識化方法も提供し、該方法は、適切な非細胞局在化シグナルに融合させた本発明のたんぱく質を細胞中に産生させることを含む。
さらにもう1つの好ましい実施態様においては、生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの分析方法を提供し、該方法は、本発明のたんぱく質からの蛍光シグナルを検出することを含む。
さらにもう1つの好ましい実施態様においては、生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの分析方法を提供し、該方法は、本発明の核酸分子を細胞中に発現させることを含む。
さらに、本発明の核酸、該核酸を有するベクターもしくは発現カセット、またはたんぱく質を含むキットも提供する。
【0007】
発明の詳細な説明
本明細書において使用するとき、“蛍光たんぱく質”または“フルオロたんぱく質”なる用語は、蛍光性であるたんぱく質を意味する;例えば、該たんぱく質は、適切な励起波長の光で照射したときに低い、中程度のまたは強い蛍光を示す。これらたんぱく質の蛍光特性は、当該たんぱく質の2個以上のアミノ酸残基の相互作用に起因し1個のアミノ酸残基には起因しない特性である。そのようなものとして、本発明の蛍光たんぱく質は、固有の蛍光体としてそれ自体で作用する残基、即ち、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニンのみから蛍光を発するたんぱく質を含まない。
本明細書において使用するとき、“色素たんぱく質”または“色原性たんぱく質”なる用語は、蛍光性、低または非蛍光性であり得る有色たんぱく質を意味する。本明細書において使用するとき、“色素たんぱく質”および“蛍光たんぱく質”なる用語は、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼのようなルシフェラーゼ類を含まない。
本明細書において使用するとき、用語“GFP”は、より高い蛍光性を与えるようにまたは種々の色で蛍光を発するように操作された従来技術形のGFPを含む、オワンクラゲ由来の緑色蛍光たんぱく質を称する。野生タイプのGFPの配列は、Prasher et al., Gene 111 (1992), 229-33に開示されている。
本明細書において使用するとき、用語“EGFP”は、2個のアミノ酸置換基、即ち、F64LおよびS65Tを有するGFPの突然変異体を称する(Heim et al., Nature 373 (1995), 663-664)。
【0008】
本明細書において使用するとき、用語“分離された”とは、当該分子または当該細胞が天然に産生する環境とは異なる環境にある分子または細胞を称する。
本明細書において使用するとき、用語“フラグメント”とは、例えば、二者択一的にスプライスされた、先端切り取りされた、さもなくば開裂された核酸分子またはたんぱく質を含むことを意味する。
本明細書において使用するとき、用語“誘導体”とは、変異による、またはRNA編集され、化学修飾されもしくは改変された核酸分子;或いは変異による、または化学修飾されもしくは改変されたたんぱく質を称する。
本明細書において使用するとき、用語“変異体”とは、1個以上のアミノ酸を本発明のたんぱく質のN-末端および/またはC-末端においておよび/または生来のアミノ酸配列内で付加および/または置換および/または欠落および/または挿入させているような本発明において開示したたんぱく質を称する。本明細書において使用するとき、用語“変異体”とは、変異体たんぱく質をコード化している核酸分子を称する。さらにまた、用語“変異体”とは、本発明のたんぱく質または核酸の任意の短めまたは長めの形を称する。
本明細書において使用するとき、“ホモログ類または相同性”とは、1つのヌクレオチドまたはペプチド配列と他のヌクレオチドまたはペプチド配列との関連性を説明する当該技術において使用する用語であり、比較したこれら配列間の同一性および/または類似性の度合によって判定する。
【0009】
上記で要約したように、本発明は、蛍光および色素たんぱく質およびその変異体、変形体および誘導体をコード化する核酸分子、並びにこれらの核酸によってコード化されたたんぱく質およびペプチドに関する。これらの興味ある核酸分子およびたんぱく質は、非オワンクラゲヒドロ虫種から分離する。興味あるたんぱく質としては、コザラクラゲ種由来の黄色蛍光たんぱく質、phiYFP;花水母亜目のヒドロ虫クラゲ1(ヒドロクラゲ1)由来の緑色蛍光たんぱく質、hydr1GFP;花水母亜目のヒドロ虫クラゲ2(ヒドロクラゲ2)由来の紫色色素たんぱく質、hm2CPがある。また、上述の特定のたんぱく質に実質的に同様なたんぱく質、またはこれら特定のたんぱく質の誘導体、ホモログ類または変異体も興味がある。また、上記核酸のフラグメントおよびそれによってコード化されたペプチド、並びに本発明のたんぱく質およびペプチドに対して特異性の抗体も提供する。さらに、上述の核酸分子を含む宿主細胞、安定な細胞系およびトランスジェニック生物体も提供する。本発明のたんぱく質および核酸組成物は、種々の異なる用途および方法、とりわけたんぱく質標識化用途における使用を見出している。最後に、そのような方法および用途において使用するキットも提供する。
【0010】
核酸分子
本発明は、オワンクラゲ属以外のヒドロ虫種由来の蛍光/色素たんぱく質、これらたんぱく質の誘導体、変異体およびホモログ類をコード化する核酸分子、並びにそのフラグメントを提供する。本発明において使用するときの核酸分子は、ゲノムDNA分子もしくはcDNA分子のようなDNA分子、またはmRNA分子のようなRAM分子である。とりわけ、上記核酸分子は、本発明のヒドロ虫属の色素/蛍光たんぱく質またはそのフラグメントをコード化し、適切な条件下において、本発明に従う蛍光/色素たんぱく質またはたんぱく質フラグメント(ペプチド)として発現し得る開放読み枠を有するcDNA分子である。また、本発明は、本発明のたんぱく質またはたんぱく質フラグメントをコード化する核酸と相同性であり、実質的に同様であり、同一であり、それら核酸から誘導されたまたはそれら核酸の擬態物である核酸にも及ぶ。本発明の核酸は、その天然環境以外の環境において存在する;例えば、これらの核酸は、分離され、濃縮量で存在し、或いは生体外またはその天然産環境以外の細胞もしくは生物体中に存在させまたは発現させる。
興味ある特定の核酸分子は、以下のヒドロ虫色素/フルオロたんぱく質(およびそのホモログ類/誘導体/変異体)をコード化する分子である:コザラクラゲ種由来の黄色蛍光たんぱく質、phiYFP;花水母亜目のヒドロ虫クラゲ1由来の緑色蛍光たんぱく質hydr1GFP;および花水母亜目のヒドロ虫クラゲ2由来の紫色色素たんぱく質hm2CP。これら特定のタイプの興味ある核酸分子の各々を以下で個々により詳細に説明する。
【0011】
phiYFP:
蛍光/色素たんぱく質をコード化する上記核酸分子は、ヒドロ虫網から、好ましくはヒドロムシ(Hydroida)目から、より好ましくは軟クラゲ(Leptomedusae)亜目から、より好ましくはウミサカズキガヤ(Campanulariidae)科から、さらにより好ましくはコザラクラゲ属からの生物体から分離される。とりわけ好ましい実施態様においては、コザラクラゲ種から分離された核酸分子は、phiYFTと命名した特定のたんぱく質をコード化する。下記の実験の部においてより詳細に説明するphiYFP-Y1、phiYFP-M1、phiYFP-M0、phiYFP-M1G1 (即ち、phiYFP-G1またはphiGFP1)およびphiYFP-M1C1 (即ち、phiYFP-C1またはphiCFP1)のようなこのたんぱく質のホモログ類/変異体/誘導体もとりわけ興味がある。PhiYFPにおける推定野生タイプcDNAコード配列は、SEQ ID NO:01に示されている。
hydr1GFP:
蛍光/色素たんぱく質をコード化する上記核酸分子は、ヒドロ虫網から、好ましくはヒドロムシ目から、より好ましくは花水虫亜目からの生物体から分離される。そのような核酸分子によってコード化された特定のたんぱく質は、hydr1GFP (即ち、anm1GFP1)と命名している。このたんぱく質のホモログ類/変異体/誘導体もとりわけ興味がある。hydr1GFPにおける推定野生タイプcDNAコード配列は、SEQ ID NO:11に示されている。
hm2CP:
蛍光/色素たんぱく質をコード化する上記核酸分子は、分類ヒドロ虫網から、好ましくはヒドロムシ目から、より好ましくは花水虫亜目からの生物体から分離される。そのような核酸分子によってコード化された特定のたんぱく質は、hm2CP (即ち、anm2CP)と命名している。下記の実験の部においてより詳細に説明するhm2CPのS3-2赤色蛍光変異体のようなこのたんぱく質のホモログ類/変異体もとりわけ興味がある。hm2CPにおける推定野生タイプcDNAコード配列は、SEQ ID NO:13に示されている。
【0012】
また、上述の核酸分子のホモログ類も興味がある。相同性核酸源は、任意の植物または動物種であり得、核酸擬態物を含むその配列は、全体的にまたは部分的に合成し得る。ある実施態様においては、本発明の核酸は、少なくとも約40%、好ましくは約50%、55%、60%、65%、70%またはそれ以上(75%、80%、85%、90%および95%またはそれ以上のような)のヌクレオチドまたはアミノ酸レベルにおいて、相応するホモログ類との配列類似性を有する。参照配列は、通常は少なくとも約60個のヌクレオチド長、より通常では少なくとも約80個のヌクレオチド長であり得、比較する完全配列まで及び得る。配列類似性は、参照配列に基づいて算出する。配列解析のためのアルゴリズムは、Altschul et al., J. Mol. Biol., 215, pp. 403-10 (1990)に記載されているBLASTのように、当該技術において既知である(例えば、デフォルト設定、即ち、パラメーター w=4およびT=17を使用して)。
ホモログ類は、多くの方法のいずれかの方法によって同定する。本発明のcDNAフラグメントは、ターゲット生物体からのcDNAライブラリーに対する低緊縮条件を使用してのハイブリッド化プローブとして使用し得る。上記プローブは、大きいフラグメントまたは1以上の短い縮退プライマーであり得る。配列類似性を有する核酸は、低緊縮条件下での、例えば、50℃および6×SSC (0.9M 塩化ナトリウム/0.09M クエン酸ナトリウム)でのハイブリッド化およびその後の1×SSC (01.15M 塩化ナトリウム/0.015M クエン酸ナトリウム)中での55℃での洗浄によって検出する。配列同一性は、高緊縮条件下での、例えば、50℃以上および0.1×SSC (15mM 塩化ナトリウム/1.5mM クエン酸ナトリウム)でのハイブリッド化により判定し得る。与えられた配列と実質的同一の領域を有する核酸、例えば、対立遺伝子変異体、当該核酸の遺伝子的改変種等は、与えられた配列に、高緊縮ハイブリッド化条件下において結合する。プローブ類、とりわけDNA配列の標識化プローブを使用することにより、相同性のまたは関連する遺伝子を分離することができる。
【0013】
また、上述の核酸に、緊縮条件下、好ましくは高緊縮条件下でハイブリッド化する核酸(即ち、前述の核酸の補体)も提供する。緊縮条件の例は、50℃以上および0.1×SSC (15mM 塩化ナトリウム/1.5mM クエン酸ナトリウム)でのハイブリッド化である。高緊縮ハイブリッド化条件のもう1つの例は、50%ホルムアミド、5×SSC(150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt's溶液、10%硫酸デストラン(destran)および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAの溶液中42℃での1夜インキュベーション、およびその後の0.1×SSC中約65℃での洗浄である。他の高緊縮ハイブリッド化条件は、当該技術において公知であり、これらも本発明の核酸を同定するのに使用し得る。
また、本発明のたんぱく質の変形体、変異体または誘導体をコード化する核酸も提供する。変異体または誘導体は、上述の核酸から選ばれたテンプレート核酸上に、該テンプレート配列中で1個以上のヌクレオチドを修飾し、欠落させまたは付加させ或いはこれらを組合せて、該テンプレート核酸の変形体を生成させることによって、生成させ得る。修飾、付加または欠落は、変異性PCR、シュフリング(shuffling)、オリゴヌクレオチド特異性変異誘発、集合PCR、雌雄PCR変異誘発、生体内変異誘発、カセット変異誘発、反復アンサンブル変異誘発(recursive ensemble mutagenesis)、指数アンサンブル変異誘発、部位特異性変異誘発、ランダム変異誘発、遺伝子再構築、遺伝子部位飽和変異誘発(GSSM)、合成ライゲーション再構築(SLR)またはこれらの組合せのような当該技術において公知の任意の方法よって導入し得る(例えば、Gustin et al., Biotechniques (1993) 14: 22;Barany, Gene (1985) 37: 111-123;および、Colicelli et al., Mol. Gen. Genet. (1985) 199:537-539;Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, (1989), CSH Press, pp. 15.3-15.108)を参照されたい)。また、修飾、付加または欠落は、組換え、反復配列組換え、ホスホチオエート修飾DNA変異誘発、ウラシル含有テンプレート変異誘発、ギャップド二本鎖変異誘発、ポイントミスマッチ修復変異誘発、修復欠損宿主株変異誘発、化学変異誘発、放射能変異誘発、欠落変異誘発、制限-選択変異誘発、制限-精製変異誘発、人工遺伝子合成、アンサンブル変異誘発、キメラ核酸多重体形成およびこれらの組合せを含む方法によっても導入し得る。幾つかの実施態様においては、変異体または誘導核酸によってコード化された蛍光たんぱく質は、野生タイプの蛍光たんぱく質と同じ蛍光特性を有している。他の実施態様においては、変異体または誘導核酸は、下記で変異体phiYFP-Y1、phiYFP-M1、phiYFP-M1G1、phiYFP-M1C1、S3-2についてより詳細に説明しているように、改変されたスペクトル特性を有する蛍光たんぱく質をコード化している。
【0014】
さらに、本発明のたんぱく質をコード化する核酸の縮退変異体も提供する。核酸の縮退変異体は、核酸のコドンの同じアミノ酸をコード化している他のコドンによる置換を含む。とりわけ、核酸の縮退変異体は、宿主細胞中でのその発現を増大させるように生成させる。この実施態様においては、宿主細胞の遺伝子内の好ましくないまたはあまり好ましくない核酸のコドンを、宿主細胞の遺伝子内のコード配列中に過発現しているコドンにより置換し、この置換コドンが同じアミノ酸をコード化する。本発明の核酸のヒト化形は、といわけ興味を有する。本明細書において使用するとき、用語“ヒト化”とは、哺乳動物(ヒト)細胞中でのたんぱく質の発現に対してコドンを最適化するように核酸配列になされた変更を称する(Yang et al., Nucleic Acids Research (1996) 24: 4592-4593)。また、たんぱく質類のヒト化を記載している米国特許第5,795,737号も参照されたい、該米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。
本明細書において使用するときの用語“cDNA”とは、天然成熟mRNA種中に見出される配列要素の配列を占める核酸を含むものとし、配列要素はエクソン並びに5'および3'非コード領域である。通常、mRNA種は隣接エクソンを有し、介入イントロンは、存在する場合、核RNAスプライシングにより除去されて、上記たんぱく質をコード化する連続開放読み枠を生成する。
興味あるゲノム配列は、天然染色体中に通常存在するイントロンの全てを含む、例示した配列に定義されているような開始コドンと停止コドンとの間に存在する核酸を含み得る。興味あるゲノム配列は、成熟mRNA中に見出される5'および3'非翻訳領域、並びに転写領域の5'および3'末端のいずれかでの約1kb(それ以上であり得る)のフランキングゲノムDNAのようなプロモーター、エンハンサー等のような特定の転写および翻訳調節配列をさらに含み得る。
【0015】
本発明の核酸分子は、本発明のたんぱく質の全てまたは1部をコード化し得る。二本鎖または一本鎖フラグメントは、オリゴヌクレオチドを、通常の方法に従い、制限酵素消化、PCR増幅等により化学合成することによって、上記DNA配列から得ることができる。殆どの部分において、DNAフラグメントは、長さにおいて少なくとも約15個のヌクレオチド、通常は長さにおいて少なくとも約18個のヌクレオチドまたは長さにおいて約25個のヌクレオチドであろうし、長さにおいて少なくとも約50個のヌクレオチドであり得る。幾つかの実施態様においては、本発明のヌクレオチド酸分子は、長さにおいて約100個、約200個、約300個、約400個、約500個、約600個、約700個のヌクレオチドまたはそれ以上であり得る。本発明の核酸は、本発明のたんぱく質のフラグメントまたは全長たんぱく質をコード化し得る;例えば、本発明の核酸は、約25個のアミノ酸、約50個、約75個、約100個、約125個、約150個、約200個のアミノ酸のポリペプチドから全長たんぱく質までをコード化し得る。
本発明の核酸は、実質的に精製形で分離して得ることができる。実質的に精製形とは、当該核酸が少なくとも約50%純粋、通常は少なくとも約90%純粋であり、典型的に“組換え体”であること、即ち、その天然宿主生物体中の天然産生染色体上に通常結合していない1個以上のヌクレオチドによってフランキングされていることを意味する。
例えば、SEQ ID NO:01、03、05、07、09、11、13、15、17、19または21の配列を有する本発明の核酸、相応するcDNA、全長遺伝子および構築物は、当業者にとって公知の多くの種々のプロトコールにより合成的に生成させ得る。適切な核酸構築物は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Ed., (1989) Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NYに記載されているような標準の組換えDNA技術を使用し、例えば、United States Dept. of HHS, National Institute of Health (NIH) Guidelines for Recombinant DNA Researchに記載されている調節下に精製される。
【0016】
また、下記でより詳細に説明する本発明のたんぱく質またはそのフラグメントを含む融合たんぱく質をコード化する核酸も提供する。
また、本発明の核酸を含むベクターおよび他の核酸構築物も提供する。適切なベクターとしては、ウィルスおよび非ウィルスベクター、プラスミド、コスミド、ファージ等、好ましくはプラスミドがあり、適切な宿主中での本発明の核酸配列のクローニング、増幅、発現、伝達等において使用する。適切なベクターの選択については当業者が精通していることであり、多くのそのようなベクターは、商業的に入手可能である。構築物を製造するためには、部分長または全長核酸を、ベクター中に、典型的にはベクター内の開裂制限酵素部位へのDNAリガーゼ結合によって挿入する。また、所望のヌクレオチド配列を、生体内相同性組換えにより、典型的にはベクターに対し相同性の領域を所望ヌクレオチド配列の側面上に結合させることによっても挿入させ得る。相同性の領域は、オリゴヌクレオチドのライゲーションにより、或いは、例えば、相同性の領域と所望のヌクレオチド配列部分の双方を含むプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応により付加させる。
本発明の色原性もしくは蛍光たんぱく質またはその融合たんぱく質の製造において或いは本発明の核酸分子の複製においてとりわけ使用する発現カセットまたは発現系も提供する。発現カセットは、染色体外要素として存在し得、或いは細胞のゲノム中に、上記発現カセットの細胞中への導入の結果として、組込み得る。発現においては、本発明の核酸によってコード化された遺伝子産生物は、例えば、細菌、酵母、昆虫、両性類または哺乳動物系のような任意の好都合な発現系中で発現させる。発現ベクターにおいては、本発明の核酸を、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、オペレーター、レプレッサーおよびインジューサーを含み得る調節配列に機能可能であるように結合させる。所望産生物を発現し得る発現カセットまたは系の製造方法は、当業者にとって公知である。
本発明のたんぱく質を安定的に発現する細胞系は、当該技術において公知の方法によって選択し得る(例えば、dhfr、gpt、ネオマイシン、ヒグロマイシンのような選択性マーカーと一緒の同時移入は、ゲノム中に組み込んだ遺伝子を含有する移入細胞の同定および分離を可能にする)。
【0017】
上記の発現系は、原核生物または真核生物宿主において使用し得る。大腸菌(E. coli)、枯草菌(B. subtilis)、サッカロミセス セレヴィシエ(S. cerevisiae)、バキュロウィルスベクターと組合せた昆虫細胞、または脊柱動物のような高級生物体の細胞、例えば、COS 7細胞、HEK 293、CHO、アフリカツメガエル卵母細胞等のような宿主細胞を上記たんぱく質の産生において使用し得る。
上述の宿主細胞のいずれかまたは他の適切な宿主細胞もしくは生物体を使用して本発明の核酸を複製および/または発現させた場合、得られる複製核酸、発現たんぱく質またはポリペプチドは、宿主細胞または生物体の産生物として、本発明の範囲に属する。産生物は、当該技術において公知の適切な手段によって回収し得る。
また、本発明のゲノム配列のプロモーター配列も興味があり、その5'フランキング領域の配列を、例えば本発明のたんぱく質遺伝子を発現させる細胞/組織中での発現の調節を行うエンハンサー結合部位のようなプロモーター要素において使用し得る。
また、PCR用のプライマー、ハイブリッド化スクリーニングプローブ等として有用である本発明の核酸の小DNAフラグメントも提供する。より大きめのDNAフラグメントは、前述したようなコード化ポリペプチドの産生において有用である。しかしながら、幾何学的PCRのような幾何学的増幅反応における使用においては、対の小DNAフラグメント、即ち、プライマーを使用するであろう。プライマー配列の正確な組成は本発明において重要ではないが、殆どの用途において、プライマーは、、当該技術において知られているように、緊縮条件下で本発明の配列にハイブリッド化するであろう。少なくとも約50個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも約100個のヌクレオチドの増幅産生物を生成させ、完全配列の核酸にまで及び得る対のプライマーを選択するのが好ましい。プライマー配列選択のためのアルゴリズムは、一般に既知であり、市販のソフトウェアパッケージにおいて入手し得る。増幅プライマーは、DNAの相補ストランドにハイブリッド化し、互いに対して開始するであろう。
【0018】
また、本発明の核酸分子は、生物学的試験標本における遺伝子の発現を同定するのにも使用し得る。ゲノムDNAまたはRNAのような特定のヌクレオチド配列の存在について細胞を精査する方法は、当該技術において良好に確立されている。要するに、DNAまたはmRNAを細胞サンプルから分離する。mRNAは、逆転写酵素を使用して相補DNAストランドを形成させるRT-PCRにより、さらにその後の本発明のDNA配列に対して特異性のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応増幅により、増幅させ得る。また、mRNAサンプルをゲル電気泳動により分離し、適切な支持体、例えば、ニトロセルロース、ナイロン等に移し、その後、プローブとしての本発明のDNAのフラグメントによって精査する。オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、現場ハイブリッド化、および固形チップ上に配列させたDNAプローブへのハイブリッド化のような他の方法も使用し得る。本発明の配列にハイブリッド化するmRNAの検出は、サンプル中での遺伝子発現を指標し得る。
フランキングプロモーター領域およびコード領域を含む本発明の核酸は、当該技術において公知の種々の方法で変異させて、プロモーター強度の目標とする変化を発生させ、或いはコード化されたたんぱく質の配列またはコード化されたたんぱく質の蛍光特性を含むコード化されたたんぱく質の性質を変えることができる。
多くの実施態様において、オワンクラゲ種において見出される核酸は、本発明の範囲に属さない。ある実施態様においては、そのGFPホモログおよび該ホモログをコード化する核酸は、本発明の範囲に属さないオワンクラゲ(Aequorea victoria)、ヒトモシクラゲ(Aequorea macrodactyla)およびオワンクラゲ(Aequorea coerulscens)に由来する。
【0019】
たんぱく質
また、本発明によれば、非オワンクラゲヒドロ虫色素および蛍光たんぱく質、全長たんぱく質を含むその変異体、並びにそれらの1部またはフラグメントも提供される。また、下記でより詳細に説明するような、天然産生たんぱく質の変形体(そのような変形体は、天然産たんぱく質と相同性であるかまたは実質的に類似している)、および天然産生たんぱく質の変異体も提供される。
多くの実施態様において、本発明のたんぱく質は、約300〜700nm、通常約350〜650nm、より通常は約400nm〜600nmの吸光度最高値を有する。本発明のたんぱく質が蛍光たんぱく質であり、そのことが、これらたんぱく質がある光波長で励起し得、その後、別の波長で発光することを意味する場合、本発明のたんぱく質の励起スペクトルは、典型的に約300〜700nmの範囲にある。本発明のたんぱく質は、約25,000〜150,000、通常は約45,000〜129,000の範囲にある最高吸光係数を一般に有する。本発明のたんぱく質は、典型的に約150〜300個のアミノ酸、通常約200〜300個のアミノ酸残基の長さ範囲であり、約15〜35kDa、通常約17.5〜32.5kDa範囲の分子量を一般に有する。
ある実施態様においては、本発明のたんぱく質は光輝性であり、光輝性とは、当該色素および蛍光たんぱく質を一般的な方法(例えば、目視スクリーニング、分光測定、分光蛍光分析、蛍光顕微鏡測定、FACS装置による等)によって検出し得ることを意味する。特定の蛍光たんぱく質の蛍光輝度は、最高吸光係数を乗じたその量子収率によって決定する。色素たんぱく質の輝度は、その最高吸光係数によって表し得る。
【0020】
ある実施態様においては、本発明のたんぱく質は、宿主細胞内での発現後に急速に産生停止する。急速に産生停止(rapidly folding)とは、当該たんぱく質がその発色または蛍光性をもたらすその三次構造を短時間で達成することを意味する。これらの実施態様においては、上記たんぱく質は、一般に約3日を越えない、通常は約2日を越えない、より通常は約1日を越えない時間内で産生停止する。
興味ある特定のたんぱく質は、非オワンクラゲヒドロ虫種由来の色素/フルオロたんぱく質(並びに、そのホモログ、変異体および誘導体類)である:コザラクラゲ種由来のPhiYFP;花水虫亜目のヒドロ虫クラゲ1(ヒドロクラゲ1)由来の緑色蛍光たんぱく質、hydrGFP;花水虫亜目のヒドロ虫クラゲ2(ヒドロクラゲ2)由来の紫色素蛍光たんぱく質、hm2CP。これら興味ある特定タイプのポリペプチド組成物の各々については、以下で個々により詳細に説明する。
【0021】
phiYFP (およびその誘導体/変異体)
この実施態様のたんぱく質は、約350〜550、通常は約450〜550、多くの場合約435〜540nm、例えば、515〜530nmまたは480〜490範囲の吸光度最高値を有し、また、その発光最高値は、典型的に約400nm〜650 nm、より通常は約450〜600nmの範囲にあるが、多くの実施態様においては、発光スペクトルは、約470〜550nm、例えば、505〜515、520〜530nmまたは530〜540nmの範囲にある。本発明のたんぱく質は、典型的には約200〜250個、通常は約210〜240個のアミノ酸残基の長さ範囲にあり、一般に約20〜30、通常は約22.50〜27.50kDa範囲の分子量を有する。多くの実施態様においてとりわけ興味があるのは、SEQ ID NO:02に示されているようなアミノ酸配列を有するphiYFPである。また、この配列の変異体および誘導体類、例えば、それぞれ、SEQ ID NO:04、06、08、18および20におけるような、phiYFP-Y1、phiYFP-M1、phiYFP-M0、phiYFP-M1G1およびphiYFP-M1C1も興味がある。
【0022】
hydrGFP (およびその誘導体/変異体)
多くの実施態様において、本発明のたんぱく質は、約400〜600、より通常は約450〜550、多くの場合約460〜500nm、例えば、470〜480nmの範囲の吸光度最高値を有し、また、本発明のたんぱく質の発光スペクトルは、典型的に約450nm〜650 nm、通常は約460〜600nm、より通常は約480〜550nm、例えば、480〜500nm、時には490〜500nmの範囲にある。本発明のたんぱく質は、典型的には約200〜300個のアミノ酸、通常は約220〜290個のアミノ酸残基の長さ範囲にあり、一般に約25〜35kDa、通常は約26.5〜32.5kDa範囲の分子量を有する。多くの実施態様においてとりわけ興味があるのは、SEQ ID NO:12に示されているようなアミノ酸配列を有する野生タイプhydr1GFP蛍光たんぱく質、その変異体および誘導体である。
hm2CP (およびその変異体)
多くの実施態様において、本発明のたんぱく質は、約350〜650、通常は約450〜600、より通常は約490〜595nm、例えば、560〜590nmの範囲の吸光度最高値を有し、また、本発明のたんぱく質の発光スペクトルは、典型的に約450nm〜650、通常は約500〜640nm、より通常は約580〜620nm、例えば、590〜620nmの範囲にある。本発明のたんぱく質は、典型的には約200〜250個、通常は約210〜240個のアミノ酸残基の長さ範囲にあり、一般に約20〜30kDa、通常は約22.50〜27.50kDa範囲の分子量を有する。多くの実施態様においてとりわけ興味があるのは、SEQ ID NO:14に示されているようなアミノ酸配列を有するhm2CP (anm2CP)である。また、この配列の変異体、例えば、例えばSEQ ID NO:16に提示されているような赤色蛍光たんぱく質S3-2等も興味がある。
【0023】
ホモログ類、即ち、本発明の前記で提示した特定のアミノ酸配列、即ち、SEQ ID NO:02、04、06、08、10、12、14、16、18、20または22から配列において変化するたんぱく質類も提供する。ホモログとは、D.G. Higgins and P.M. Sharp, “Fast and Sensitive multiple Sequence Alignments on a Microcomputer,” CABIOS, 5 pp. 151-3 (1989)に記載されているようなMegAlign, DNAstar clustalアルゴリズムを使用して測定したときに(パラメーター ktuple 1、ギャップペナルティー 3、ウィンドウ 5およびセーブ対角線 5を使用して)、SEQ ID NO:02、04、06、08、10、12、14、16、18、20または22のアミノ酸配列に対し少なくとも約55%、通常は少なくとも約60%、より通常は少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性を有する少なくとも1種のたんぱく質を含むたんぱく質を意味する。多くの実施態様において、興味あるホモログ類は、とりわけ上記たんぱく質の官能性領域を提供するアミノ酸配列に対してはるかに高い、例えば、70%、75%、80%、85%、90%(例えば、92%、93%、94%)またはそれ以上の、例えば、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有する。
また、野生タイプのたんぱく質と実質的に同一であるたんぱく質も提供し、実質的同一とは、当該たんぱく質が少なくとも約60%、通常少なくとも約65%、より通常は少なくとも約70%の野生タイプたんぱく質の配列に対するアミノ酸配列同一性を有することを意味し、ある場合には、その同一性は、はるかに高く、例えば、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上であり得る。
また、上述の天然産生性たんぱく質の誘導体または変異体であるたんぱく質も提供する。変異体および誘導体類は、野生タイプ(例えば、天然産生)たんぱく質の生物学的特性を保持し得、或いは野生タイプたんぱく質と異なる生物学的特性を有し得る。本発明のたんぱく質の“生物学的特性”なる用語は、限定するものではないが、吸光度最高値、発光最高値、最高吸光係数、輝度 (例えば、野生タイプたんぱく質、またはオワンクラゲ由来の緑色蛍光たんぱく質(GFP)のような他の参照たんぱく質と比較して)等のようなスペクトル特性;生体内および/または生体外安定性(例えば、半減期)のような生化学特性;成熟速度、凝集性向およびオリゴマー化性向;並びに他のそのような特性を称する。変異には、1個のアミノ酸交換、1個以上のアミノ酸の欠落または挿入、N-末端切り取りまたは延長、C-末端切り取りまたは延長等がある。
【0024】
変異体および誘導体は、上記の“核酸分子”の章で詳細に説明したような標準の分子生物学的方法を使用して生成させ得る。数種の変異体を本明細書において説明する。実施例に提示した手引きを考慮し、標準方法を使用するならば、当業者であれば、広範囲のさらなる変異体を生成させ、生物学的(例えば、生化学、スペクトル等の)特性が改変されたかどうかを試験することは容易になし得る。例えば、蛍光強度は、種々の励起波長において分光測定計を使用して測定し得る。
また、誘導体は、RNAエディテイング、化学修飾、翻訳後および転写後修飾等を含む標準方法を使用しても生成させ得る。例えば、誘導体は、修正リン酸化、グリコシル化、アセチル化、脂質化のような方法によりまたは種々のタイプの成熟開裂等により生成させ得る。
天然産生たんぱく質である本発明のたんぱく質は、非天然産生環境において存在し、例えば、それらたんぱく質の天然産生環境から分離する。例えば、精製たんぱく質が提供され、“精製”とは、当該たんぱく質が興味ある非色原性または蛍光たんぱく質を実質的に含まない混合物中に存在することを意味し、“実質的に含まない”とは、混合物含有分の90%未満、通常60%未満、より通常は50%未満が非色原性または蛍光たんぱく質またはその変異体であることを意味する。また、本発明のたんぱく質は、分離形でも存在し得、分離形とは、当該たんぱく質が他のたんぱく質およびそのオリゴ糖、核酸およびフラグメント等のような他の天然産生生物学的分子を実質的に含まないことを意味し、この場合の用語“実質的に含まない”とは、分離たんぱく質を含有する組成物の70%未満、通常60%未満、より通常は50%未満がある種の他の天然産生生物学的分子であることを意味する。ある実施態様においては、上記たんぱく質は実質的に精製形で存在し、“実質的に精製形”とは、少なくとも95%、通常少なくとも97%、より通常は少なくとも99%純粋であることを意味する。
【0025】
また、天然産生たんぱく質並びに上述したたんぱく質の変異体および誘導体のフラグメントも提供する。生物学的に活性なフラグメントおよび/または官能性ドメインに相当するフラグメント等は、とりわけ興味のあるものである。興味あるフラグメントは、典型的には長さにおいて少なくとも約30個のアミノ酸、通常長さにおいて少なくとも約50個のアミノ酸、好ましくは長さにおいて少なくとも約75個または100個のアミノ酸であり、長さにおいて300個のアミノ酸ほどの長いまたはそれ以上であり得るが、通常は長さにおいて約250個のアミノ酸を越えないポリペプチドであり、該フラグメントは、長さにおいて、本発明のたんぱく質の少なくとも約25個のアミノ酸、通常は少なくとも約45個のアミノ酸、多くの実施態様においては少なくとも50個のアミノ酸と同一であるアミノ酸ストレッチを有するであろう。幾つかの実施態様においては、本発明のポリペプチドは、長さにおいて、約25個のアミノ酸、約50個、約75個、約100個、約125個、約150個、約200個または約250個のアミノ酸であり、上記たんぱく質の全長までである。幾つかの実施態様においては、たんぱく質フラグメントは、野生タイプのたんぱく質の特異的性質の全てまたは実質的に全てを保持している。
本発明のたんぱく質およびポリペプチドは、天然産生源から取得し得、或いは合成的に生成させ得る。例えば、野生タイプのたんぱく質は、上記たんぱく質を発現する生物学的源、例えば、前記した特定の種のようなヒドロ虫網種に由来し得る。また、本発明のたんぱく質は、合成手段により、例えば、興味あるたんぱく質をコード化する組換え核酸コード配列を、適切な宿主中で、前述するようにして発現させることによっても誘導し得る。任意の好都合なたんぱく質精製手法を使用し得、適切なたんぱく質精製方法論は、Guide to Protein Purification, (Deuthser ed., Academic Press, 1990)に記載されている。例えば、溶解物を起原源から調製し、HPLC、除外クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー等を使用して精製し得る。
【0026】
また、例えば、分解配列、非細胞局在化配列(例えば、核局在化シグナル、ペルオキシマル(peroximal)ターゲッティングシグナル、ゴルジ体ターゲッティング配列、ミトコンドリアターゲッティング配列等)、シグナルペプチド、または興味ある任意のたんぱく質もしくはポリペプチドに融合させた本発明のたんぱく質またはそのフラグメントを含む融合たんぱく質も提供する。融合たんぱく質は、例えば、本発明のポリペプチドと該フルオロ/色素ポリペプチドのN-末端および/またはC-末端で枠内融合させた第2のポリペプチド(“融合パートナー”)とのフルオロ/色素たんぱく質を含み得る。融合パートナーとしては、限定するものではないが、融合パートナーに対し特異的な抗体を結合し得るポリペプチド類(例えば、エピトープタグ類)、抗体またはその結合性フラグメント、触媒機能を与えるかまたは細胞応答を誘発させるポリペプチド類、リガンドもしくはレセプター類またはこれらの擬態物等がある。そのような融合たんぱく質においては、融合パートナーは、一般に、融合たんぱく質のフルオロ/色素たんぱく質部分と天然には結合してなく、典型的に、本発明のヒドロ虫網フルオロ/色素たんぱく質またはその誘導体/フラグメントではない;即ち、融合パートナーは、ヒドロ虫種中で見出せない。
また、本発明の蛍光または色素たんぱく質に特異的に結合する抗体も提供する。適切な抗体は、当該技術において公知の方法を使用して産生させ得る。例えば、ポリクローナル抗体は、(Harlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual, (1988) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)に記載されているようにして得ることができ、モノクローナル抗体は、 (Goding Monoclonal Antibodies: Principles and Practice: Production and Application of Monoclonal Antibodies in Cell Biology, Biochemistry and Immunology; 3rd edition, (1996) Academic Press) に記載されているようにして得ることができる。また、ヒト化抗体のようなキメラ抗体、並びに一本鎖抗体および抗体フラグメント、例えば、Fv、F(ab')2およびFabも興味がある。
【0027】
トランスジェニック体
本発明の核酸は、トランスジェニック生物体または細胞系内での部位特異性遺伝子修飾体を生成させるのに使用し得る。本発明のトランスジェニック細胞は、本発明に従う1種以上の核酸をトランス遺伝子として含む。本発明の目的においては、原核(例えば、大腸菌、ストレプトミセス sp.、枯草菌、アシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)等)または真核宿主細胞のような任意の適切な宿主細胞を使用し得る。本発明のトランスジェニック生物体は、細菌、シアノバクテリア、真菌、植物および動物のような原核または真核生物体であり得、生物体の1種以上の細胞が当該技術において周知の遺伝子導入法によるような人的介入によって導入された本発明の異質核酸を含有する。
本発明の分離された核酸は、当該技術において公知の方法、例えば、感染、移入、形質転換またはトランス接合によって宿主中に導入し得る。上記核酸分子(即ち、DNA)をそのような生物体に移送する方法は、広く知られており、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3nd Ed., (2001) Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY)のような文献に提示されている。
1つの実施態様においては、トランスジェニック生物体は、原核生物体であり得る。原核宿主の形質転換に関する方法は、当該技術において良好に報告されている(例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press;および Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995) John Wiley & Sons, Incを参照されたい)。
もう1つの実施態様においては、トランスジェニック生物体は、真菌、例えば、酵母であり得る。酵母は、異質遺伝子発現におけるビヒクルとして広汎に使用されている(例えば、Goodey et al Yeast biotechnology, D R Berry et al, eds, (1987) Allen and Unwin, London, pp 401-429;および King et al Molecular and Cell Biology of Yeasts, E F Walton and G T Yarronton, eds, Blackie, Glasgow (1989) pp 107-133を参照されたい)。維持のために宿主ゲノムによる再組換えを必要とする組込みベクターおよび自己複製プラスミドベクターのような数タイプの酵母ベクターが入手可能である。
【0028】
もう1つの宿主生物体は動物である。トランスジェニック動物は、当該技術において周知であり、Pinkert, Transgenic Animal Technology: a Laboratory Handbook, 2nd edition (2203) San Diego: Academic Press;Gersenstein and Vintersten, Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, 3rd ed, (2002) Nagy A. (Ed), Cold Spring Harbor Laboratory;Blau et al., Laboratory Animal Medicine, 2nd Ed., (2002) Fox J.G., Anderson L.C., Loew F.M., Quimby F.W. (Eds), American Medical Association, American Psychological Association;Gene Targeting: A Practical Approach by Alexandra L. Joyner (Ed.) Oxford University Press; 2nd edition (2000)のような文献に提示されている遺伝子導入方法によって得ることができる。例えば、トランスジェニック動物は、相同性組換えにより得ることができ、内生座が改変される。また、核酸構築物は、ゲノム中にランダムに組込む。安定な組込みのためのベクターとしては、プラスミド類、レトロウィルスおよび他の動物ウィルス類、YAC類等がある。
核酸は、マイクロインジェクションによる或いは組換えウィルスもしくは組換えウィルスベクター等で感染させることによるような意図的な遺伝子操作により、細胞プレカーサー中へ導入することによって直接または間接的に細胞中に導入し得る。遺伝子操作なる用語は、古典的な交雑育種または生体外受精を含まないが、むしろ組換え核酸分子の導入に関する。この核酸分子は染色体内に組込んでもよく、或いは染色体外複製性DNAであってもよい。
相同性組換え用のDNA構築物は、本発明の核酸の少なくとも一部を含み、その遺伝子は、所望の遺伝子修飾(1以上)を有し且つターゲット座に対する相同性の領域を含む。ランダム組込み用のDNA構築物は、組換えを介在するための相同性の領域を含む必要はない。好都合なことに、正および負選択のためのマーカーを含ませ得る。相同性組換えによるターゲット遺伝子修飾を有する細胞の産生方法は、当該技術において公知である。哺乳動物細胞の種々の移入方法については、Keown et al., Meth. Enzymol. (1990) 185:527-537を参照されたい。
【0029】
胚幹(ES)細胞においては、ES細胞系を使用し得、或いは胚細胞を、マウス、ラット、モルモット等のような宿主から新鮮に得ることができる。そのような細胞は、適切な線維芽細胞供給体層上で増殖させるかまたは白血病抑制因子(LIF)の存在下に増殖させる。形質転換ESまたは胚細胞は、当該技術において記載されている適切な方法を使用して、トランスジェニック動物の生成に使用し得る。
トランスジェニック動物は、非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット)、鳥類または両性類等のような非ヒト動物であり得、機能性試験、薬物スクリーニング等において使用できる。トランスジェニック動物使用の代表的な例としては、下記に説明する例がある。
また、トランスジェニック植物も生成させ得る。トランスジェニック植物細胞および植物を調製する方法は、米国特許第5,767,367号;第5,750,870号;第5,739,409号;第5,689,049号;第5,689,045号;第5,674,731号;第5,656,466号;第5,633,155号;第5,629,470号;第5,595,896号;第5,576,198号;第5,538,879号;第5,484,956号に記載されており、これら米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。トランスジェニック植物を生成させる方法は、Plant Biochemistry and Molecular Biology (eds. Lea and Leegood, John Wiley & Sons) (1993) pp. 275-295において、さらに Plant Biotechnology and Transgenic Plants (eds. Oksman-Caldentey and Barz), (2002) 719 pにおいても見受けられる。
例えば、体細胞を含む胚形成性外植片は、トランスジェニック宿主の調製において使用し得る。細胞または組織の収穫後、興味ある外来DNAを該植物細胞中に導入する;そのような導入においては、種々の異なる方法が利用可能である。分離されたプロトプラストにより、このプロトプラストの裸DNAと一緒のインキュベーションのようなDNA介在遺伝子伝達プロトコールによる導入(そのようなプラスミドは、多価カチオン(例えば、PEGまたはPLO)の存在下での興味ある外来コード配列を含む);或いは、興味ある外来配列を含む裸DNAの存在下での上記プロトプラストのエレクトロポレーションの機会が生ずる。その後、外来DNAを成功裏に取込んだプロトプラストを選択し、カルス中に増殖させ、最終的には、適切な量と比率のオーキシン類およびサイトカイニン類のような刺激因子との接触により、トランスジェニック植物中に増殖させる。
当業者において利用し得る“遺伝子銃”法またはアグロバクテリウム介在形質転換のような他の適切な植物産生方法も使用し得る。
【0030】
使用方法
本発明の蛍光たんぱく質(並びに前述した本発明の他の成分)は、種々の異なる用途での使用を見出している。例えば、本発明の蛍光たんぱく質は、生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの標識化、分析または検出方法において使用し得る。これらのタイプのたんぱく質の各々についての代表的な使用を以下に説明するが、以下で説明する使用は、単なる例示であって、如何なる形でも、本発明のたんぱく質の使用を説明した使用に限定することを意味しない。
生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの標識化方法に関する好ましい実施態様においては、本発明のたんぱく質は、細胞および分子の生物学的アッセイにおける生体内ラベル(またはレポーター分子)としての使用を見出している。興味あるアッセイとしては、限定するものではないが、遺伝子発現、たんぱく質局在化および同時局在化、たんぱく質-たんぱく質相互作用、たんぱく質-核酸相互作用、核酸-核酸相互作用、細胞および細胞オルガネラの局在化および相互作用等についてのアッセイがある。本発明の蛍光たんぱく質は、生存および固定細胞中での生体分子ラベルまたは細胞オルガネララベルとして、細胞またはオルガネラ融合中のマーカーとして、細胞またはオルガネラの完全性マーカーとして、移入マーカーとして(例えば、少なくとも1種の本発明の蛍光たんぱく質をコード化する発現ベクターを含有する移入細胞選択のためのラベルとして)、近生理学的濃度で作動するリアルタイムプローブとして等の用途を見出している。
さらにまた、本発明のたんぱく質は、生物学的分子の分析方法においても使用し得る。例えば、本発明のたんぱく質は、生物学的物質中での興味あるたんぱく質またはポリペプチドの発現の同定および/または測定においての使用を見出している。この方法は、i) 細胞中に、本発明に従う蛍光たんぱく質をコード化するヌクレオチド配列を含む核酸分子(該核酸分子は、上記興味あるたんぱく質またはポリペプチドの発現を調節する発現制御配列と機能可能であるように結合されて、その制御下にある)を導入し;ii) 上記核酸を適切な条件下で発現させ;そして、iii) 上記蛍光たんぱく質の蛍光発光量を上記興味あるたんぱく質発現を測定する手段として検出することを含む。
とりわけ、本発明のたんぱく質は、生物学的物質中での興味あるたんぱく質またはポリペプチドの発現および/または局在化の同定および/または測定においての使用を見出している。この方法は、i) 細胞中に、本発明に従う蛍光たんぱく質をコード化するヌクレオチド配列を含む核酸分子(該核酸分子は、興味あるたんぱく質またはポリペプチドをコード化する配列と融合させており、上記興味あるたんぱく質またはポリペプチドの発現を調節する発現制御配列と機能可能であるように結合されて、その制御下にある)を導入し;ii) 上記細胞を、上記興味あるたんぱく質の発現に適する条件下で培養し;そして、iii) 上記蛍光たんぱく質の蛍光発光量を上記興味あるたんぱく質の発現/局在化を測定する手段として検出することを含む。
【0031】
興味ある用途としては、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法における本発明のたんぱく質の使用がある。これらの方法においては、本発明のたんぱく質は、第2の蛍光たんぱく質または染料、例えば、本発明のもう1つの蛍光たんぱく質;或いはMatz et al., Nature Biotechnology 17:969-973 (1999)に記載されているような蛍光たんぱく質;例えば、米国特許第6,066,476号、第6,020,192号、第5,985,577号、第5,976,796号、第5,968,750号、第5,968,738号、第5,958,713号、第5,919,445号、第5,874,304号に記載されているようなオワンクラゲ由来の緑色蛍光たんぱく質またはその蛍光変異体(これらの米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる);クマリンおよびその誘導体、7-アミノ-4-メチルクマリンおよびアミノクマリンのような他の蛍光染料;ボディピー(bodipy)染料;カスケードブルー;フルオレセインイソチオシアネートおよびオレゴングリーンのようなフルオレセインおよびその誘導体;テキサスレッド、テトラメチルローダミン、エオシン類およびエリトロシン類のようなローダミン染料;Cy3およびCy5のようなシアニン染料;クワンタム(quantum)染料のようなレンタニンド(lenthaninde)イオンの大環状キレート類;並びに米国特許第5,843,746号;第5,700,673号;第5,674,713号;第5,618,722号;第5,418,155号;第5,330,906号;第5,229,285号;第5,221,623号;第5,182,202号に記載されているもののような、ルシフェラーゼ類のような化学発光染料(これらの米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる)と一緒に、供与体および/または受容体として作動する。
本発明の蛍光たんぱく質を使用するFRETアッセイを使用し得る特定の例としては、限定するものではないが、哺乳動物2-ハイブリッド系、転写因子二量体化、膜たんぱく質多量体化、多たんぱく質複合体形成におけるようなたんぱく質-たんぱく質相互作用の検出;ペプチドまたはたんぱく質が本発明の蛍光たんぱく質を含むFRET蛍光混合物と共有結合し、該結合ペプチドまたはたんぱく質が、例えば、カスパーゼ介在開裂におけるプロテアーゼ特異性基質、PKA調節ドメイン(cAMPセンサー)のような、FRETを増大または低下させるシグナルを受けるときに立体配座変化を受けるペプチド、リン酸化部位(例えば、リン酸化部位は当該ペプチド中に存在し、当該ペプチドは他のたんぱく質のリン酸化/脱リン酸化ドメインに対して結合特異性を有する)であり、或いは上記ペプチドがCa2+結合ドメインを有する場合のような、多くの種々の事象のバイオセンサーとしてがある。さらに、本発明のたんぱく質が使用を見出している蛍光共鳴エネルギー移動即ちFRET用途としては、限定するものではないが、米国特許第6,008,373号;第5,998,146号;第5,981,200号;第5,945,526号;第5,945,283号;第5,911,952号;第5,869,255号;第5,866,336号;第5,863,727号;5,728,528号;第5,707,804号;第5,688,648号、第5,439,797号に記載されている用途がある;これらの米国特許は、参考として本明細書に合体させる。
【0032】
本発明の蛍光たんぱく質は、細胞中での1種以上の興味あるたんぱく質の発現および/または転座の調節に対する試験物質の効果の検出方法における使用を見出している。また、本発明の蛍光たんぱく質は、興味あるたんぱく質の発現および発現制御配列の試験物質に応答しての同時活性の検出方法における使用も見出している。上記蛍光たんぱく質は、細胞中での2種以上の発現制御配列の試験物質に応答しての活性を比較する方法における使用も見出している。そのような方法は、プロセスにおける効果を測定すべき試験物質の存在下または不存在下において実施し得る。
また、本発明の蛍光たんぱく質は、蛍光指示基を発現する細胞アレーの顕微鏡画像形成および電子分析の使用による自動化スクリーニングに関連する用途における使用も見出している。スクリーニングは薬物発見においてまた機能性ゲノムの分野において使用し得、本発明のたんぱく質は、例えば、内皮細胞による多細胞細管の形成(血管形成)、Fluoroblok Insertシステム(Becton Dickinson社)による細胞移動、創傷治癒または神経突起伸張における多細胞再組織化および移動の変化を検出する細胞全体のマーカーとして使用する。スクリーニングは、本発明のたんぱく質を、刺激時のキナーゼおよび転写因子転座のような、例えばシグナル形質導入における細胞活性についての指示薬として細胞内位置の変化を検出するペプチド(ターゲッティング配列のような)またはたんぱく質に融合させたマーカーとして使用する場合も、使用し得る。例としては、たんぱく質キナーゼC、たんぱく質キナーセA、転写因子NFkBおよびNFAT;サイクリンA,サイクリンB1およびサイクリンEのような細胞環状たんぱく質;開裂基質のその後の移動を伴うプロテアーゼ開裂;小胞体、ゴルジ体、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、核心、核小体、原形質膜、ヒストン類、エンドソーム、リソソームまたは微細管のような細胞内構造体用のマーカーを含むリン脂質がある。
【0033】
また、本発明のたんぱく質は、局在化マーカーによる他の蛍光融合たんぱく質の同時局在化を検出する高容量スクリーニングにおいて、細胞内蛍光たんぱく質/ペプチドの移動の指示薬としてまたは単独のマーカーとしても使用し得る。本発明の蛍光たんぱく質が使用を見出している細胞アレーの自動化スクリーニングに関連する用途の例には、米国特許第5,989,835号;並びにWO 0017624号;WO 00/26408号;WO 00/17643号;およびWO 00/03246号がある;これら特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。
本発明の蛍光たんぱく質は、高処理量スクリーニングアッセイにおける使用も見出している。本発明の蛍光たんぱく質は、24時間よりも長い半減期を有する安定なたんぱく質である。また、薬物発見における転写レポーターとして使用し得る、短縮した半減期を有する本発明のたんぱく質の不安定化形も提供される。例えば、本発明に従うたんぱく質は、マウスオルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子、マウスサイクリンB1破壊ボックスまたはユビキチン等由来のPEST配列のような、短めの半減期を有するたんぱく質から誘導された推定たんぱく質分解性シグナル配列と融合させ得る。不安定化たんぱく質およびこれを生成させるのに使用し得るベクターの説明については、例えば、米国特許第6,130,313号を参照されたい;該米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。シグナル形質導入経路におけるプロモーターは、例えば、AP1、NFAT、NFkB、Smad、STAT、p53、E2F、Rb、myc、CRE、ER、GRおよびTRE等のような薬物スクリーニングにおいて、本発明の蛍光たんぱく質の不安定化形を使用して検出し得る。
本発明のたんぱく質は、本発明のたんぱく質をPKCガンマCa結合ドメイン、PKCガンマDAG結合ドメイン、SH2ドメインまたはSH3ドメイン等のような特定のドメインに融合させることによって、第2のメッセンジャー検出体として使用し得る。
種々の異なる用途において同様に使用し得る本発明たんぱく質の分泌形は、分泌性リーディング配列を本発明のたんぱく質に融合させることによって調製し得る。
また、本発明のたんぱく質は、蛍光活性化細胞分別(FACS)用途における使用も見出している。そのような用途においては、本発明の蛍光たんぱく質を細胞集団をマークするラベルとして使用し、その後、得られた標識化細胞集団を、蛍光活性化細胞分別装置により、当該技術において公知のようにして分別する。FACS法は、米国特許第5,968,738号および第5,804,387号に記載されており、これらの米国特許の開示は参考として本明細書に合体させる。
【0034】
また、本発明のたんぱく質は、トランスジェニック動物における生体内ラベルとしての使用も見出している。例えば、本発明のたんぱく質の発現は、組織特異性プロモーターによって誘導し得、そのような方法は、他の用途の中で、トランスジェニック発現の有効性を試験するような、遺伝子治療の研究における使用を見出している。そのような用途を例示するトランスジェニック動物における蛍光たんぱく質の代表的な用途は、WO 00/02997号において見出され、その開示は参考として本明細書に合体させる。
本発明のたんぱく質の更なる用途としては、細胞または動物中への注入後のマーカーとしておよび定量測定における較正において;細胞生存性モニタリング用の酸素バイオセンサー装置におけるマーカーまたはレポーターとして;動物類、ペット類、おもちゃ類、食品等のマーカーまたはラベルとしての使用がある。
また、本発明の蛍光たんぱく質は、プロテアーゼ開裂アッセイにおける使用も見出している。例えば、開裂不活化蛍光アッセイは本発明のたんぱく質を使用して展開し得、本発明のたんぱく質を、該たんぱく質の蛍光特性を破壊することなくプロテアーゼ特異性開裂配列を含むように操作する。活性化プロテアーゼによる蛍光たんぱく質の開裂時には、蛍光は、官能性発色団の破壊により鋭敏に減少するであろう。また、開裂活性化蛍光は、本発明のたんぱく質を使用して展開し得、該たんぱく質を、発色団に接してまたはその内部で更なるスペーサー配列を含有するように操作する。この変異体は、官能性発色団の一部がスペーサーによって分割されるので、その蛍光活性を有意に低下させる。スペーサーは、2つの同一プロテアーゼ特異性開裂部位によって枠組みされる。活性化プロテアーゼによる開裂時に、スペーサーを切断し、蛍光たんぱく質の2つの残留“サブユニット”を再構築して官能性蛍光たんぱく質を生成し得るであろう。上記の用途の双方は、カスパーゼ等のような種々のタイプの異なるプロテアーゼについてのアッセイにおいて展開し得るであろう。
【0035】
また、本発明のたんぱく質は、生物学的膜中のリン脂質組成を判定するアッセイにおいても使用し得る。例えば、特定のリン脂質に結合して生物学的膜中のリン脂質分布像の局在化/可視化を可能にし、また特定のリン脂質基盤(raft)中の膜たんぱく質の同時局在化も可能にする本発明たんぱく質の融合たんぱく質(または本発明のたんぱく質の任意の他の種の共有または非共有修飾体)は、本発明のたんぱく質によって達成され得る。例えば、GRP1のPHドメインは、ホスファチジル-イノシトールトリ-ホスフェート(PIP3)に対しては高親和性を有するが、PIP2に対しては有さない。そのようなものとして、GRP1のPHドメインと本発明のたんぱく質との融合たんぱく質を構築して、生物学的膜中のPIP3リッチ領域を特異的に標識化し得る。
また、本発明の蛍光たんぱく質は、Ca2+イオン指示薬;pH指示薬;リン酸化指示薬;またはマグネシウム、ナトリウム、カリウム、クロライドおよびハライドのような他のイオンの指示薬のような、原核および真核細胞におけるバイオセンサーとしての使用を見出している。また、蛍光たんぱく質のバイオセンサーとしての使用方法としては、米国特許第5,972,638号;第5,824,485号および第5,650,135号(並びに本明細書において引用した文献)記載されている方法がある;これら米国特許の開示は、参考として本明細書に合体させる。
前述した本発明の抗体類も、本発明のたんぱく質の他の蛍光たんぱく質からの区別化のような多くの用途における使用を見出している。
【0036】
キット
また、本発明によれば、上述の用途の1つ以上を実施するのに使用するキットも提供される。好ましい実施態様においては、キットは、生物学的分子の標識化において使用し得る。キットは、典型的には本発明のそのままのたんぱく質、または本発明のたんぱく質をコード化する核酸を、好ましくは本発明のたんぱく質の発現のための要素、例えば、本発明のたんぱく質をコード化する核酸を含むベクターのような構築物と一緒に含む。また、本発明は、そのようなキット成分を製造する手段にも及ぶ。該手段としては、本発明の核酸を、例えば、PCRにより産生させるためのヒドロ虫網クラゲ由来のcDNAと1対のオリゴヌクレオチドプライマーとがあり得、或いは、該手段としては、連結させたときに本発明の蛍光たんぱく質をコード化する核酸を産生し得る多くの核酸フラグメント等があり得る。キット成分は、典型的には適切な容器内の、緩衝液ような適切な保存媒質中に典型的に存在する。キット中には、提供されるたんぱく質に対し特異性の抗体も存在し得る。ある実施態様においては、キットは、各々が本発明のたんぱく質をコード化する複数の異なるベクターを含み、各ベクターは、異なる環境においておよび/または異なる条件下での発現、例えば、ベクターが哺乳動物細胞での発現のための強力プロモーターを含むかまたはプロモーターの通例挿入のための複数のクローニング部位を有する無プロモーターベクターである場合の構成的発現および調整発現等用に設計されている。
上記の各成分以外に、本発明のキットは、本発明の方法を実施するための使用説明書をさらに含む。これらの使用説明書は、種々の形で本発明のキット中に存在し得、その形状の1つ以上がキット中に存在し得る。
以下の実施例は、例示のために提示し、限定のためではない。
【0037】
実施例
実施例1
phiYFPクローニング、シークエンシングおよび組換えたんぱく質産生
明黄色蛍光を、蛍光顕微鏡を使用して、ヒドロクラゲコザラクラゲ種(口刺胞動物門(Cnidaria)、ヒドロ虫網、ヒドロムシ目、軟クラゲ亜目、ウミサカズキガヤ科)において検出した。このクラゲにおける蛍光の起因となるたんぱく質を見出すために、大腸菌中の発現cDNAライブラリーのスクリーニングに基づく戦略を選択した。増幅cDNAサンプルは、SMART cDNA増幅キット(Clontech社)を使用して調製し、PCR-Scriptベクター(Stratagene社)中にクローニングした。約105の組換えクローンを、蛍光立体顕微鏡を使用して目視スクリーニングした。同じ黄色蛍光たんぱく質をコード化する2つの蛍光クローンを見出し、phiYFPと命名した。phiYFPの核酸およびアミノ酸配列は、SEQ ID NO:01、02および23に示されている。phiYFPとオワンクラゲGFPとの比較を図1に示している。phiYFPは、サンゴ由来蛍光たんぱく質に対してよりもGFPに対して類似しているようである(50%同一性)。
たんぱく質精製を容易にするために、phiYFP遺伝子のコード領域をpQE30発現ベクター(Qiagen社)中にクローニングして、組換えたんぱく質がN-末端で6個ヒスチジンのタグを含有するようにした。大腸菌中での発現後、phiYFPたんぱく質を金属アフィニティー樹脂TALON (Clontech社)によって精製した。phiYFPにおける励起-発光スペクトルは、それぞれ、525 nmおよび537 nmにおいてピークであった(図2)。野生タイプオワンクラゲGFPとは対照的に、この新規なたんぱく質は、1つのみの吸光-励起ピークを有しており、これは、おそらく脱プロトン化発色団状態に相応しているであろう。
【0038】
実施例2
phiYFP変異誘発
phiYFP核酸コード配列を実施例1において記載したようにして調製した。コード化された野生タイプたんぱく質を、ランダム変異誘発により修飾した。phiYFPのランダム変異誘発は、僅かに変化した励起-発光スペクトルを有するphiYFP-Y1と命名したより明色の変異体の産生をもたらした。この変異体は、3個のアミノ酸置換基、とりわけ、S2P、E174G、I201Mを含有していた(SEQ ID NO:03、04および24)。phiYFP-Y1は、これらの蛍光たんぱく質を発現する大腸菌コロニーの並行目視比較において、野生タイプphiYFPよりも1.5〜2倍高い輝度を示した。さらに、phiYFP-Y1は、542 nmにおいてピークに達した僅かに赤にシフトした発光スペクトルを示している(図2B参照)。
phiYFPおよびphiYFP-Y1の両たんぱく質は、二量体であることが判明した。このことは、非加熱たんぱく質サンプルのたんぱく質ゲル電気泳動により実証された(Baird等、2000年、前出参照)。これらの条件下で、これらのFP類は、約50 kDaで黄色蛍光バンドとして移動した。ゲル濾過試験により、phiYFPおよびphiYFP-Y1の二量体状態が明らかとなった。精製たんぱく質サンプル(約1 mg/ml)をSephadex-100カラム(0.7×60cm)上に負荷させ、50 mMリン酸緩衝液(pH7)と100 mM NaClとの溶液で溶出させた。EGFP、HcRed1およびDsRed2 (Clontech社)を、それぞれ、モノマー、ダイマーおよびテトラマー標準として使用した。
部位特異性変異誘発を使用してphiYFP-Y1の単量体変異体を調製した。6個のアミノ酸置換、とりわけ、V103N、M166R、Y198N、T202S、T206K、V221Kを導入した。全体として、この変異体phiYFP-M0は、9個の置換を有していた:S2P、V103N、M166R、E174G、Y198N、I201M、T202S、T206K、V221K(SEQ ID NO:05、06および25)。phiYFP-M0は、大腸菌中で発現させたとき、ゆっくりしたたんぱく質産生停止と低輝度を示していた。その励起-発光スペクトルは、親変異体と比較して青にシフトしていた(それぞれ、517および529nmでの最高値;図2C)。phiYFP-M0は、ゲル濾過試験により、単量体たんぱく質であった。
【0039】
phiYFP-M0を改良するために、ランダム変異誘発を応用した。Diversity PCR Random Mutagenesisキット(CLONTECH社)を、1000 bp当り5〜6の変異に対して最適の条件下において使用した。変異体たんぱく質を発現している大腸菌コロニーを、蛍光立体顕微鏡 SZX-12 (Olympus社)により、目視スクリーニングした。明らかに赤にシフトしたスペクトルを有する最明色クローン(親phiYFP-M0に比較して)をさらに特性決定した。phiYFP-M1と標示したこの変異体は、以下のアミノ酸置換を有していた:E88D、V103N、M166C、E174G、I201M、T202S、T206K、V221K (SEQ ID NO:07、08および26)。このたんぱく質における励起-発光スペクトルは、それぞれ、野生タイプphiYFPの励起-発光スペクトル(図2D)と同様の524および539 nmでのピークを有していた。精製phiYFP-M1は、モル吸光係数130,000 M-1cm-1と蛍光量子収率0.40とを有していた。モル吸光係数測定については、成熟発色団濃度の評価に基づいた。たんぱく質を、等容量の2M NaOHでアルカリ変性した。これらの条件において、GFP様発色団は446 nmで吸収し、そのモル吸光係数は44,000 M-1cm-1である(Ward, W. W. Properties of the coelentrate green-fluorescent protein. in Bioluminescence and Chemiluminescence. Academic Press (1981), 235-242)。未変性およびアルカリ変性phiYFP-M1の吸収スペクトルを測定した。未変性状態のたんぱく質におけるモル吸光係数は、変性たんぱく質の吸収に基づき評価した。量子収率測定においては、phiYFP-M1の蛍光を同等に吸収するEGFP (量子収率0.60 (Patterson et al., J. Cell. Sci. (2001), 114: 837-838))と比較した。phiYFP-M1は、ゲル濾過試験により、単量体たんぱく質であった。
哺乳動物細胞中での発現を増強させるために、哺乳動物最適化コドン(SEQ ID NO:09、10および27)を使用して、phiYFP-M1の“ヒト化”形を合成した。phiYFP-M1の“ヒト化”形を部位特異性およびランダム変異誘発に供して、該たんぱく質の緑色およびシアン色発光形を得た。緑色およびシアン色蛍光を有する各変異体蛍光たんぱく質を得た。phiYFP-M1G1と命名したヒト化phiYFP-M1の緑色変異体は、以下のアミノ酸置換を有していた(phiYFP-M1と比較したとき):T65S、L148Q、Y203T、K231T、T232A (SEQ ID NO:17、18および31)。phiYFP-M1C1と命名したヒト化phiYFP-M1のシアン色変異体は、以下のアミノ酸置換を有していた(phiYFP-M1と比較したとき):L6Q、T65S、Y66W、N124K、C147Y、L148Q、Y203T、V224L (SEQ ID NO:19、20および32)。このたんぱく質の励起-発光スペクトルは、図3A、Bに示している。
【0040】
実施例3
hydr1GFPクローニング、シークエンシングおよび組換えたんぱく質産生
明緑色蛍光を、蛍光顕微鏡を使用して、花水母亜目のヒドロクラゲ1(口刺胞動物門、ヒドロ虫網、花水母亜目) (約1mm長、図4)において検出した。このクラゲにおける蛍光の起因となる遺伝子について試験するために、大腸菌中の発現cDNAライブラリーのスクリーニングに基づく戦略を実施した。増幅cDNAサンプルは、SMART cDNA増幅キット(Clontech社)を使用して調製し、PCR-Scriptベクター(Stratagene社)中にクローニングした。約105の組換えクローンを、蛍光立体顕微鏡を使用して目視スクリーニングした。各々が同じ緑色蛍光たんぱく質をコード化する3つの蛍光クローンを同定し、これをhydr1GFPと命名した。このたんぱく質の核酸およびアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11、12および28に示されている。hydr1GFPとオワンクラゲGFPとの比較を図1に示している。hydr1GFPは、サンゴ由来蛍光たんぱく質に対してよりもGFP対して類似しているようである(37%同一性)。
たんぱく質精製を容易にするために、hydr1GFPのコード領域をpQE30発現ベクター(Qiagen社)中にクローニングして、組換えたんぱく質がN-末端で6個ヒスチジンのタグを含有するようにした。大腸菌中での発現後、hydr1GFPを金属アフィニティー樹脂、TALON (Clontech社)によって精製した。hydr1GFPにおける励起-発光スペクトルは、474 nmおよび494 nmにおいてピークを示した(図5)。野生タイプオワンクラゲGFPとは対照的に、この新規なhydr1GFPたんぱく質は、1つのみの吸光-励起ピークを有しており、これは、脱プロトン化発色団状態に相応し得る。
【0041】
実施例4
hm2CPクローニング、シークエンシングおよび組換えたんぱく質産生
明緑色蛍光を、蛍光顕微鏡を使用して、花水母亜目の小ヒドロクラゲ2(口刺胞動物門、ヒドロ虫網、花水母亜目、図4)において検出した。このクラゲ由来のFPについて試験するために、大腸菌中の発現cDNAライブラリーのスクリーニングに基づく戦略を選択した。増幅cDNAサンプルは、SMART cDNA増幅キット(Clontech社)を使用して調製し、PCR-Scriptベクター(Stratagene社)中にクローニングした。約105の組換えクローンを、蛍光立体顕微鏡または裸眼を使用して目視スクリーニングした。予期に反して、蛍光クローンは観察されなかった。代りに、紫色の非蛍光CP (hm2CP)を同定した。このたんぱく質の核酸およびアミノ酸配列は、SEQ ID NO:13、14および29に示されている。hm2CPとGFPとの比較を図1に示している。hm2CPは、比較的遠いGFPホモログのようである(24%ほどの低い同一性)。
たんぱく質精製を容易にするために、hm2CPのコード領域をpQE30発現ベクター(Qiagen社)中にクローニングして、組換えたんぱく質がN-末端で6個ヒスチジンのタグを含有するようにした。大腸菌中での発現後、hm2CPを金属アフィニティー樹脂TALON (Clontech社)によって精製した。精製hm2CPにおける吸収スペクトルは、568 nmにおいて単一の最高値を有していた(図6)。hm2CPの極めて弱い赤色蛍光(それぞれ、569および597nmでの励起最高値)は、検出し得る(図7)。
【0042】
実施例5
hm2CP変異誘発
hm2CP核酸コード配列を実施例4に記載したようにして調製した。hm2CPの蛍光変異体を産生させるために、ランダム変異誘発を使用した。Diversity PCR Random Mutagenesisキット(CLONTECH社)を、1000 bp当り5〜6の変異に対して最適の条件下で、hm2CPのランダム変異誘発において使用した。変異体たんぱく質を発現している大腸菌コロニーを、蛍光立体顕微鏡 SZX-12 (Olympus社)により、目視スクリーニングした。最明色変異体を選択し、もう1回のランダム変異誘発に供した。合計4回の変異誘発により、S3-2と標示した明色で迅速成熟性の赤色蛍光変異体が生じた。親色素たんぱく質と比較して、S3-2は、13個のアミノ酸置換、とりわけ、D24G、I30V、K73R、T91S、I118V、K136R、T145N、S154P、C161A、Y162F、L181M、V199T、I201Tを有していた(SEQ ID NO:15、16および30)。この変異体における励起および発光スペクトルは、それぞれ、585おとび611nmで最高値を有していた(図8)。S3-2赤色蛍光たんぱく質は、ゲル濾過データによって示されるように、単量体性質を有する。哺乳動物細胞中での発現を増強させるために、哺乳動物最適化コドン(SEQ ID NO:21、22および33)を使用して“ヒト化”形のS3-2を合成した。
【0043】
実施例6
ポリクローナル抗体調製
実施例2および5に記載したようにして調製したS3-2赤色蛍光たんぱく質およびphiYFP-M1黄色蛍光たんぱく質の核酸コード領域を、それぞれ、pQE30発現ベクター(Qiagen社)中にクローニングして、各組換えたんぱく質がそのN-末端で6個ヒスチジンのタグを含有するようにした。大腸菌中での発現後、hm2CPを金属アフィニティー樹脂TALON (Clontech社)によって変性条件下で精製した。ウサギを、完全フロイントアジュバント中に乳化させた組換えDSNポリペプチドにより、免疫化し、月毎の間隔で4回ブースターした。各ブースターの10日または11日後に、動物を採血した。ポリクローナル抗血清を組換えたんぱく質上でELISAおよびウェスタンイムノブロッティングにより試験した。
【0044】
実施例7
phiYFPおよびS3-2たんぱく質を使用しての哺乳動物細胞標識化
真核細胞の蛍光標識化においては、実施例2および5に記載したようにして調製したphiYFP-M1およびS3-2たんぱく質のヒト化形を、それぞれ、pEGFP-C1ベクター(CLONTECH社)中にAgeIとBglII制限部位との間でクローニングした(EGFPコード領域の代りに)。以下の細胞系を使用した:293Tヒト腎臓上皮細胞、3T3マウス胚線維芽細胞、L929ネズミ皮下線維芽細胞、Veroアフリカミドリザル腎臓上皮細胞およびCOS1アフリカミドリザル腎臓線維芽細胞。各細胞を、LipofectAMINE試薬(Invitrogen社)を使用して移入し、移入後20時間で試験した。CCDカメラ(DP-50、Olympus社)を備えたOlympus CK40蛍光顕微鏡を使用して細胞画像を形成した。各種細胞系中でのphiYFP-M1またはS3-2の発現は、凝集なしの明黄色または赤色シグナルをもたらした。蛍光は、移入24時間後で明らかに検出可能であった。細胞毒性は、観察されなかった。
【0045】
実施例8
phiYFPおよびS3-2たんぱく質を使用してのたんぱく質標識化およびたんぱく質局在化分析
実施例2および5に記載したようにして調製したphiYFP-M1およびS3-2たんぱく質のヒト化形を、それぞれ、ヒト細胞質ベータ-アクチンに融合させた。phiYFP-M1またはS3-2タグ付け融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、EGFPによる融合体において観察されるパターンに密接に一致したパターンを示す明色蛍光をもたらした。
phiYFP-M1のヒト化形を、さらに、ヒトアルファチューブリンおよび核小体たんぱく質フィブリラリン(fibrillarin)に融合させた。phiYFP-M1タグ付け融合構築物を発現するプラスミドにより移入された293Tヒト腎臓上皮細胞は、相応する融合パートナーにおいて特徴的なパターンを有する明色蛍光をもたらした。
【0046】
実施例9
phiYFPを使用してのミトコンドリア標識化
実施例2に記載したようにして調製したヒト化phiYFP-M1形のコード配列を、ヒトシトクロムcオキシダーゼのサブユニットVIII由来のミトコンドリアターゲッティング配列(MTS)と融合させた。phiYFP-M1-MTS融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、たんぱく質の宿主細胞のミトコンドリアへの有効な転座をもたらした。蛍光は、移入後24時間で明らかに検出可能であった。
【0047】
実施例10
phiYFPを使用してのゴルジ体標識化
実施例2に記載したようにして調製したヒト化phiYFP-M1形のコード配列を、ヒトベータ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GT;Watzele & Berger (1990) Nucleic Acids. Res. 18:7174)のN末端81個のアミノ酸をコード化する配列と融合させた。ヒトベータ1,4-GTのこの領域は、ゴルジ体の中央横断領域に上記融合たんぱく質を向かわせる膜固定性シグナルペプチドを含有する(Llopis et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1998) 95: 6803-6808;Yamaguchi & Fukuda J. Biol. Chem. (1995)270: 12170-12176;Gleeson et al. Glycoconjugate J. (1994) 11: 381-394)。phiYFP-M1タグ付け融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、細胞内のゴルジ体の中央横断領域の蛍光標識化をもたらした。
【0048】
実施例11
phiYFPを使用してのペルオキシソーム標識化
実施例2に記載したようにして調製したヒト化phiYFP-M1形のコード配列を、ペルオキシマルターゲッティングシグナル1(PTS1)と融合させた。PTS1配列は、ペルオキシソーム類のマトリックスに上記融合たんぱく質を向かわせるトリペプチドSKLをコード化する(Gould et al. J. Biol. Chem. (1989) 108: 1657-1664;Gould et al. EMBO J. (1990) 9: 85-90;Monosov et al. J. Histo. Cytochem. (1996) 44: 581-589)。phiYFP-M1タグ付け融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、ペルオキシソーム類の蛍光標識化をもたらした。
【0049】
実施例12
phiYFPを使用しての核標識化
実施例2に記載したようにして調製したヒト化phiYFP-M1形のコード配列を、C-末端で融合させたシミアン・ウィルス40の大T抗原の核局在化シグナル(NLS)の3つのコピー(Kalderon et al. Cell (1984) 39: 499-509;Lanford et al. Cell (1986) 46: 575-582)と融合させた。phiYFP-M1タグ付け融合構築物を発現するプラスミドによる293Tヒト腎臓上皮細胞の移入は、核の蛍光標識化をもたらした。
【0050】
本明細書において引用した全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願について参考として合体させるよう特定的に且つ個々に指摘していたように、参考として本明細書に合体させる。いずれの刊行物の引用も本発明の背景と理解を提供するものであり、そのような刊行物のいずれもが従来技術であるという是認と解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】GFP、phiYFP、hydr1GFPおよびhm2CPのアミノ酸配列の配列構造を示す。導入ギャップはドットで示す。GFP中の相応するアミノ酸に相応する残基は、ダッシュで示している。
【図2A】野生タイプphiYFPにおける励起(点線)および発光(実線)スペクトルを示す。
【図2B】野生タイプphiYFPの変異体:phiYFP-Y1における励起(点線)および発光(実線)スペクトルを示す。
【図2C】野生タイプphiYFPの変異体:phiYFP-M0における励起(点線)および発光(実線)スペクトルを示す。
【図2D】野生タイプphiYFPの変異体:phiYFP-M1における励起(点線)および発光(実線)スペクトルを示す。
【図3A】phiYFP-M1G1たんぱく質の励起-発光スペクトルを示す。
【図3B】phiYFP-M1C1たんぱく質の励起-発光スペクトルを示す。
【図4A】花水母亜目のヒドロクラゲ1の略図を示す。
【図4B】花水母亜目のヒドロクラゲ2の略図を示す。
【図5】野生タイプhydr1GFPにおける励起-発光スペクトルを示す。
【図6】野生タイプhm2CPにおける吸収スペクトルを示す。
【図7】野生タイプhm2CPにおける励起-発光スペクトルを示す。
【図8】hm2CPの赤色蛍光変異体S3-2における励起-発光スペクトルを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記からなる群から選ばれる、蛍光または色素たんぱく質をコード化する分離された核酸分子:
(a) SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22において示されるようなアミノ酸配列を含むたんぱく質をコード化する核酸;
(b) SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21において示されるようなヌクレオチド配列を含む核酸;
(c) 緊縮条件下に前記(a)または(b)の核酸とハイブリッド化している核酸;
(d) 前記(a)のアミノ酸配列に対し少なくとも約75%の配列同一性を有するたんぱく質をコード化する核酸;
(e) 前記(b)のヌクレオチド配列に対し少なくとも約70%の配列同一性を有する核酸;
(f) SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22において示されるようなアミノ酸配列中に少なくとも1個のアミノ酸置換、欠落または挿入を有するたんぱく質をコード化する核酸;
(g) 前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)の核酸の誘導体または擬態物;
(h) 前記(a)、(b)、(c)、(d)または(e)の核酸の変異体;
(i) 遺伝子コードの縮退により、前記(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)または(h)の核酸とは異なる核酸;および、
(j) 前記(a)または(b)の核酸のフラグメント。
【請求項2】
前記核酸が、ヒドロ虫網からの生物体から分離される、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
前記核酸が、花水母亜目からの生物体から分離される、請求項1記載の核酸分子。
【請求項4】
前記核酸が、コザラクラゲ属から分離される、請求項1記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項1記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項6】
(a) 請求項1記載の核酸分子;および(b) 所望宿主細胞内での前記核酸分子発現のための調節要素を含む発現カセット。
【請求項7】
請求項1記載の核酸分子、請求項5記載のベクター、または請求項6記載の発現カセットを含む細胞。
【請求項8】
請求項1記載の核酸分子、請求項5記載のベクター、または請求項6記載の発現カセットを含む安定な細胞系。
【請求項9】
請求項1記載の核酸分子、請求項5記載のベクター、または請求項6記載の発現カセットを含むトランスジェニック植物。
【請求項10】
請求項1記載の核酸分子、請求項5記載のベクター、または請求項6記載の発現カセットを含むトランスジェニック動物。
【請求項11】
(a) 適切な発現調節要素に機能可能であるように結合させた請求項1記載の核酸分子を調製し、(b) 該核酸分子から蛍光または色素たんぱく質を発現させ、そして、(c)他のたんぱく質を実質的に含まない前記たんぱく質を分離することを含む、蛍光または色素たんぱく質の調製方法。
【請求項12】
請求項1記載の核酸分子のフラグメントを含み、該フラグメントが長さにおいて少なくとも100個のアミノ酸のペプチドをコード化する、核酸分子。
【請求項13】
請求項1記載の核酸分子の長さにおいて少なくとも300個の残基のヌクレオチド配列と実質的に同じかまたは同一である配列を有する核酸分子。
【請求項14】
下記からなる群から選ばれた、分離された蛍光または色素たんぱく質:
(a) SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22において示されるようなアミノ酸配列を含むたんぱく質;
(b) SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21において示されるようなヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコード化されたたんぱく質;
(c) 前記(a)または(b)のアミノ酸配列に対し少なくとも約75%の配列同一性を有するたんぱく質;
(d) 前記(a)、(b)または(c)のたんぱく質の変異体;
(e) SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22において示されるようなアミノ酸配列中に少なくとも1個のアミノ酸置換、欠落または挿入を有するたんぱく質;
(f) 前記(a)、(b)、(c)、(d)または(e)のたんぱく質の誘導体;
(g) 前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)のたんぱく質のフラグメント;および、
(h) 前記(a)または(b)の長さにおいて少なくとも100個の残基のアミノ酸配列と実質的同じかまたは同一である配列を有するたんぱく質。
【請求項15】
請求項14記載のたんぱく質を含む融合たんぱく質。
【請求項16】
請求項14記載のたんぱく質に特異的に結合する抗体。
【請求項17】
請求項1記載の核酸、請求項5記載のベクター、請求項6記載の発現カセット、請求項14記載のたんぱく質、請求項15記載の融合たんぱく質、またはこれらを産生させる手段を含むキット。
【請求項18】
SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21からなる群から選ばれたヌクレオチド配列にハイブリッド化し得るヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー。
【請求項19】
生物学的分子を請求項14記載のたんぱく質にカップリングさせることを含む生物学的分子の標識化方法。
【請求項20】
細胞中に請求項14記載のたんぱく質を産生させることを含む細胞の標識化方法。
【請求項21】
細胞中に、適切な非細胞局在化シグナルに融合させた請求項14記載のたんぱく質を産生させることを含む細胞オルガネラの標識化方法。
【請求項22】
請求項14または15記載のたんぱく質から蛍光シグナルを検出することを含む生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの分析方法。
【請求項23】
細胞中に請求項1記載の核酸分子を発現させることを含む生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの分析方法。
【請求項24】
請求項14または15記載のたんぱく質から蛍光シグナルを検出することを含む生物学的分子の検出方法。
【請求項1】
下記からなる群から選ばれる、蛍光または色素たんぱく質をコード化する分離された核酸分子:
(a) SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22において示されるようなアミノ酸配列を含むたんぱく質をコード化する核酸;
(b) SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21において示されるようなヌクレオチド配列を含む核酸;
(c) 緊縮条件下に前記(a)または(b)の核酸とハイブリッド化している核酸;
(d) 前記(a)のアミノ酸配列に対し少なくとも約75%の配列同一性を有するたんぱく質をコード化する核酸;
(e) 前記(b)のヌクレオチド配列に対し少なくとも約70%の配列同一性を有する核酸;
(f) SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22において示されるようなアミノ酸配列中に少なくとも1個のアミノ酸置換、欠落または挿入を有するたんぱく質をコード化する核酸;
(g) 前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)の核酸の誘導体または擬態物;
(h) 前記(a)、(b)、(c)、(d)または(e)の核酸の変異体;
(i) 遺伝子コードの縮退により、前記(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)または(h)の核酸とは異なる核酸;および、
(j) 前記(a)または(b)の核酸のフラグメント。
【請求項2】
前記核酸が、ヒドロ虫網からの生物体から分離される、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
前記核酸が、花水母亜目からの生物体から分離される、請求項1記載の核酸分子。
【請求項4】
前記核酸が、コザラクラゲ属から分離される、請求項1記載の核酸分子。
【請求項5】
請求項1記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項6】
(a) 請求項1記載の核酸分子;および(b) 所望宿主細胞内での前記核酸分子発現のための調節要素を含む発現カセット。
【請求項7】
請求項1記載の核酸分子、請求項5記載のベクター、または請求項6記載の発現カセットを含む細胞。
【請求項8】
請求項1記載の核酸分子、請求項5記載のベクター、または請求項6記載の発現カセットを含む安定な細胞系。
【請求項9】
請求項1記載の核酸分子、請求項5記載のベクター、または請求項6記載の発現カセットを含むトランスジェニック植物。
【請求項10】
請求項1記載の核酸分子、請求項5記載のベクター、または請求項6記載の発現カセットを含むトランスジェニック動物。
【請求項11】
(a) 適切な発現調節要素に機能可能であるように結合させた請求項1記載の核酸分子を調製し、(b) 該核酸分子から蛍光または色素たんぱく質を発現させ、そして、(c)他のたんぱく質を実質的に含まない前記たんぱく質を分離することを含む、蛍光または色素たんぱく質の調製方法。
【請求項12】
請求項1記載の核酸分子のフラグメントを含み、該フラグメントが長さにおいて少なくとも100個のアミノ酸のペプチドをコード化する、核酸分子。
【請求項13】
請求項1記載の核酸分子の長さにおいて少なくとも300個の残基のヌクレオチド配列と実質的に同じかまたは同一である配列を有する核酸分子。
【請求項14】
下記からなる群から選ばれた、分離された蛍光または色素たんぱく質:
(a) SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22において示されるようなアミノ酸配列を含むたんぱく質;
(b) SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19または21において示されるようなヌクレオチド配列を含む核酸分子によってコード化されたたんぱく質;
(c) 前記(a)または(b)のアミノ酸配列に対し少なくとも約75%の配列同一性を有するたんぱく質;
(d) 前記(a)、(b)または(c)のたんぱく質の変異体;
(e) SEQ ID NO:2、4、6、8、10、12、14、16、18、20または22において示されるようなアミノ酸配列中に少なくとも1個のアミノ酸置換、欠落または挿入を有するたんぱく質;
(f) 前記(a)、(b)、(c)、(d)または(e)のたんぱく質の誘導体;
(g) 前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)または(f)のたんぱく質のフラグメント;および、
(h) 前記(a)または(b)の長さにおいて少なくとも100個の残基のアミノ酸配列と実質的同じかまたは同一である配列を有するたんぱく質。
【請求項15】
請求項14記載のたんぱく質を含む融合たんぱく質。
【請求項16】
請求項14記載のたんぱく質に特異的に結合する抗体。
【請求項17】
請求項1記載の核酸、請求項5記載のベクター、請求項6記載の発現カセット、請求項14記載のたんぱく質、請求項15記載の融合たんぱく質、またはこれらを産生させる手段を含むキット。
【請求項18】
SEQ ID NO:1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21からなる群から選ばれたヌクレオチド配列にハイブリッド化し得るヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー。
【請求項19】
生物学的分子を請求項14記載のたんぱく質にカップリングさせることを含む生物学的分子の標識化方法。
【請求項20】
細胞中に請求項14記載のたんぱく質を産生させることを含む細胞の標識化方法。
【請求項21】
細胞中に、適切な非細胞局在化シグナルに融合させた請求項14記載のたんぱく質を産生させることを含む細胞オルガネラの標識化方法。
【請求項22】
請求項14または15記載のたんぱく質から蛍光シグナルを検出することを含む生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの分析方法。
【請求項23】
細胞中に請求項1記載の核酸分子を発現させることを含む生物学的分子、細胞または細胞オルガネラの分析方法。
【請求項24】
請求項14または15記載のたんぱく質から蛍光シグナルを検出することを含む生物学的分子の検出方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2006−506100(P2006−506100A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506686(P2005−506686)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/RU2003/000474
【国際公開番号】WO2004/044203
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505174345)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/RU2003/000474
【国際公開番号】WO2004/044203
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505174345)
【Fターム(参考)】
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