説明

非ステロイド系抗炎症薬およびコルチコシド誘導体を含有する有効成分の新規な組み合わせ

非ステロイド系抗炎症薬およびコルチコシド誘導体の組み合わせを含有する医薬組成物であって、有効成分が、遊離状態または塩の形態で存在する、医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、非ステロイド系抗炎症薬およびコルチコシド誘導体の新規な組み合わせ;筋骨格障害および関節障害、例えば強直性脊椎炎、腰痛、変形性関節症、およびリウマチ性関節炎、ならびに関節周囲障害、例えば滑液包炎および腱炎;ならびに有痛性筋痙縮を寛解および/または処置するための、これらを含有する医薬組成物;ならびにこれらの製造方法である。
【背景技術】
【0002】
こうした障害のうち、腰痛(LBP)は、非常に一般的な有痛性の筋骨格障害であり、実質的にすべての人が生涯のうちにいつか罹患し、58%から84%に及ぶ生涯有病率を有する。腰痛問題は、医師の外来診療における理由の中でも上位を占め、治療、生産性の損失、および金銭以外のコスト、例えば日常活動を行いまたは楽しむ能力の減退の観点から犠牲が大きい。実際45歳未満の人々では、腰痛問題は、障害の最も一般的な原因である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本発明に使用できる先行技術から既知の非ステロイド系抗炎症薬のうち、ケトプロフェンがある。ケトプロフェンすなわち(RS)−2−(3−ベンゾイルフェニル)プロパン酸は、非ステロイド系抗炎症薬である。ケトプロフェンの抗炎症性、鎮痛性および解熱性特性は、標準的な動物においてインビトロの試験システムで実証されている。抗炎症性モデルにおいて、ケトプロフェンは、プロスタグランジンおよびロイコトリエン合成における阻害作用を有し、抗ブラジキニン活性を有し、ならびにリソソーム膜安定化作用を有することが示されている。ケトプロフェンは、当該技術分野、例えば特許US3641127または特許FR2163875において既知の方法によって合成できる。
【0004】
本発明に使用できる先行技術からの既知のコルチコシド誘導体には、チオコルチコシドがある。チオコルチコシドすなわちN−[1,2−ジメトキシ−10−メチルスルファニル−9−オキソ−3−[(2S,3R,4S,5S,6R)−3,4,5−トリヒドロキシ−6−(ヒドロキシメチル)オキサン−2−イル]オキシ−6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾ[d]ヘプタレン−7−イル]アセトアミドは、イヌサフランの種子から抽出されたグルコシドである。これは、副作用が最小限で、筋弛緩性、抗炎症性、鎮痛性および麻酔性作用を有する。チオコルチコシドは、当該技術分野、例えば特許FR1049755に既知の方法によって合成できる。
【0005】
組み合わせを構成する有効成分は、遊離状態において、またはこれらの塩の形態において存在する。
【0006】
これらの塩としては、例えば、鉱酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸;有機酸、例えばメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、桂皮酸、乳酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、およびサリチル酸との塩;または酸性アミノ酸、例えばアスパル酸、およびグルタミン酸との塩が挙げられる。薬理学的に許容される塩が好ましい。
【0007】
本発明の別の対象は、非ステロイド系抗炎症薬およびチオコルチコシドの組み合わせを含有する医薬組成物であり、両方の活性成分が、遊離状態または塩の形態で存在する。
【0008】
本発明の別の対象は、ケトプロフェンおよびチオコルチコシドの組み合わせを含有する医薬組成物であり、両方の活性成分は、遊離状態または塩の形態にて存在する。
【0009】
本発明の別の対象は、経口経路によって投与されることができる形態での医薬組成物である。
【0010】
本発明の別の対象は、固体剤形の形態での医薬組成物である。
【0011】
本発明の別の対象は、フィルムコーティングされた錠剤の形態での医薬組成物である。
【0012】
本発明は、基本的なチオコルチコシド錠剤と比べて、優れた鎮痛性、抗炎症性および筋弛緩性特性を与える安定な組み合わせ製品を提供するという利点を有する。これはさらに、不純物が低減および制御された組み合わせ製品を提供する。
【0013】
医薬組成物およびこの処方工程は、剤形において医薬的に許容される賦形剤を用いて、チオコルチコシドとケトプロフェンとの化学的相互作用を避けることを含む。不純物データプロファイルは、ケトプロフェンおよびチオコルチコシドが医薬的に許容される賦形剤を用いて互いに密接に接触されて混合される場合に、これらが剤形において分離している場合に比べて分解生成物のレベルが顕著に高いことを明らかにしている。本発明の対象は、組成物中で密接に混合されるのではなく、遊離状態または塩の形態にて存在するケトプロフェンおよびチオコルチコシドを含有する医薬組成物である。
【0014】
さらに、この組み合わせ製品は、ストレス試験に供される場合に、同じ用量のチオコルチコシド錠剤と比較して、不純物が改善され、制御されて、より少ないことを示す。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、組み合わせの有効成分は、ケトプロフェンおよびチオコルチコシドである。ケトプロフェンに関する通常の経口用量は、1日2回で50から100mgである。チオコルチコシドに関する通常の初期経口用量は、1日16mgである。
【0016】
本発明の医薬組成物において、有効成分は、一般に単位投与量あたり、50から100mgのケトプロフェンおよび4から8mgのチオコルチコシドを含有する投与量単位にて処方される。
【0017】
本発明の別の対象は、50mgのケトプロフェンおよび4mgのチオコルチコシドを含有する医薬組成物である。
【0018】
本発明の別の対象は、100mgのケトプロフェンおよび8mgのチオコルチコシドを含有する医薬組成物である。
【0019】
本発明の別の対象は、分割可能な固体剤形の形態である、100mgのケトプロフェンおよび8mgのチオコルチコシドを含有する医薬組成物である。
【0020】
本発明の薬剤の投与用量および投与頻度は特に制限されず、これらは、患者の体重または年齢、重症度などのような条件に依存して適切に選択できる。一般に、経口投与における毎日の用量は、1日1回または分割した量で1日数回、または数日で1回投与されてもよい。
【0021】
別の対象によれば、本発明は、筋骨格障害および関節障害、例えば強直性脊椎炎、腰痛、変形性関節症、およびリウマチ性関節炎、ならびに関節周囲障害、例えば滑液包炎および腱炎;ならびに有痛性筋痙縮を寛解および/または処置することを目的とした薬剤の調製のための、前述された組成物の使用に関する。
【0022】
本発明のさらなる対象は、上記で示される病状を処置/寛解させるための方法であり、本発明に記載の有効量の組成物を患者に投与することを含む。
【0023】
本発明に記載の医薬組成物はさらに、許容可能な医薬活性を有する他の有効成分を含むことができる。
【0024】
これらの組成物は、好ましくは経口または非経口経路によって、およびより好ましくは経口経路によって投与されるように、製造される。
【0025】
例えば、医薬組成物は、例えば顆粒、細顆粒、粉末、硬質カプセル、軟質カプセル、シロップ、エマルション、懸濁液、溶液などのような経口投与用の医薬組成物の形態、または舌下用形態の頬側投与形態、または静脈内、筋肉内、もしくは皮下投与、点滴注入、経皮調製物、経粘膜調製物、点鼻薬、吸入薬、坐薬などのような非経口投与のための医薬組成物形態で、処方されてもよい。注射または点滴注入は、凍結乾燥された調製物の形態のように粉末状調製物として調製されてもよく、生理学的食塩水のような適切な水性媒質において使用する直前に溶解させることによって使用されてもよい。ポリマーでコーティングされたもののような持続放出性調製物は、脳内に直接投与されてもよい。好ましくは、医薬組成物は、フィルムコーティングされた錠剤の形態である。
【0026】
錠剤は、スクロースまたは他の適切な材料でコーティングされることができ、別の方法として持続性または遅延性の活性を有するように、および持続性または遅延性の活性を有するように、および所定量の有効成分を連続して遊離するように処理され得る。
【0027】
ゼラチンカプセルの形態での調製物は、有効成分を希釈剤と混合し、得られた混合物を軟質または硬質ゼラチンカプセルに注ぐことによって得られる。経口投与のための液体組成物の調製に関して、従来の不活性希釈剤、例えば水または植物油が使用されてもよい。液体組成物は、不活性希釈剤に加えて、補助剤、例えば加湿剤、懸濁助剤、甘味剤、芳香剤、着色剤および防腐剤を含有していてもよい。液体組成物は、ゼラチンのような吸収可能な材料で作られたカプセル中に充填されてもよい。非経口投与、例えば注射、坐薬用の組成物の調製に使用される溶媒または懸濁液媒質の例としては、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ベンジルアルコール、エチルオレアート、レシチンなどが挙げられる。坐薬用に使用されるベース材料の例としては、例えばココアバター、乳化カカオバター、ラウリン酸脂質、ウィテプゾールが挙げられる。
【0028】
本発明のさらなる対象は、
a)ケトプロフェンおよび医薬的に許容される賦形剤をブレンドしてブレンドされた材料を形成する工程、
b)バインダー材料を医薬的に許容される賦形剤と共に調製する工程、
c)バインダー材料をケトプロフェンを含有する調製物に添加する工程、
d)c)から得られた材料を湿式造粒する工程、
e)湿式サイジング工程、
f)乾燥工程、
g)乾燥サイジング工程、
h)チオコルチコシドおよび医薬的に許容される賦形剤をブレンドして、ブレンドされた材料を形成し、すべての材料を1mmシーブにシーブする工程、
i)工程g)およびh)からの材料をブレンドする工程、
j)潤滑剤を添加する工程であって、すべての材料を1mmシーブにシーブすることを含む工程、
k)錠剤剤形を形成するための錠剤化工程
を含む、錠剤剤形を製造する方法である。
【0029】
本発明のさらなる対象は、先に記載されたような錠剤剤形を製造する工程、および加熱工程の後に、フィルムコーティングされた錠剤剤形を形成するためにコーティング工程を含む、フィルムコーティングされた錠剤剤形を製造する方法である。本発明のさらなる対象は、ケトプロフェンおよびチオコルチコシドを含有する錠剤剤形を製造する方法であり、ここでこれらは密接に混合されていない。
【0030】
本発明は、以下の実施例に例示され、この実施例は本発明を制限するように解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0031】
ケトプロフェンおよびチオコルチコシドを含有する錠剤の製造方法
工程1:医薬賦形剤と共にケトプロフェンを選別し、混合した。
工程2:バインダー溶液を調製し、工程1の材料を造粒し、均一な顆粒を得た。湿潤顆粒を乾燥させ、圧縮に必要な最適湿分を達成させた。
工程3:乾燥した顆粒を選別し、医薬賦形剤と共にチオコルチコシドを添加し、混合した。
工程4:ステアリン酸マグネシウムを選別し、混合した。
工程5:好適な工具を用いてブレンドを圧縮して錠剤にし、コーティング材料を用いてコーティングした。
【0032】
別の方法として、錠剤はまた、次のように乾燥顆粒方法によって調製することができる。
【0033】
工程1:医薬賦形剤と共にケトプロフェンを選別し、混合した。
工程2:内容物を圧縮/スラッグし、シーブした。
工程3:チオコルチコシドおよび他の医薬賦形剤を選別し、混合した。
工程4:ステアリン酸マグネシウムを選別し、混合した。
工程5:ブレンドを錠剤に圧縮して、コーティング材料を用いてコーティングした。
【実施例2】
【0034】
ケトプロフェン100mgおよびチオコルチコシド8mgを含有するフィルムコーティングされた錠剤
【0035】
【表1】

【実施例3】
【0036】
ケトプロフェン50mgおよびチオコルチコシド4mgを含有するフィルムコーティングされた錠剤
【0037】
【表2】

【実施例4】
【0038】
安定性比較データ(40℃/湿度割合75%)
【0039】
【表3】

A欄:組み合わせ造粒を経て調製されたケトプロフェンおよびチオコルチコシドを含有する初期時間におけるロット1
B欄:顆粒外造粒を経て調製されたケトプロフェンおよびチオコルチコシドを含有する初期時間におけるロット2
C欄:40℃/湿度割合75%RHにて2カ月後、組み合わせ造粒により調製されたケトプロフェンおよびチオコルチコシドを含有するロット1。不純物データは、2Mステーションでの40℃/湿度割合75%RHを示す表にする。
D欄:40℃/湿度割合75%RHにて6カ月後、顆粒外造粒により調製されたケトプロフェンおよびチオコルチコシドを含有するロット2。安定性データは、ロット1において(A欄対C欄)、パッケージされたサンプル中で40℃/湿度割合75%RHでは2カ月以内に不純物のレベルが大幅に増大することを示している。安定性データは、ロット2において(B欄対D欄)、パッケージされたサンプル中で40℃/湿度割合75%RHでは6カ月後でさえも不純物に顕著な変化は認められないことを示している。上記データから、ケトプロフェンおよびチオコルチコシドを剤形内で密接に混合していない場合、顕著な相互作用はなく、不純物は実質的に低いレベルであることが推測される。
【実施例5】
【0040】
ケトプロフェンおよびチオコルチコシドを含有する組成物の安全性および効力
本発明に記載の組成物は、安全であり、急性LBPに有効であると考えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ステロイド系抗炎症薬およびコルチコシド誘導体の組み合わせを含有する医薬組成物であって、有効成分が、遊離状態または塩の形態で存在する、医薬組成物。
【請求項2】
非ステロイド系抗炎症薬およびチオコルチコシドの組み合わせを含有し、有効成分が遊離状態または塩の形態で存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
ケトプロフェンおよびチオコルチコシドの組み合わせを含有し、有効成分が遊離状態または塩の形態で存在する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
経口経路によって投与できる形態の、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
固体剤形の形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
フィルムコーティングされた錠剤の形態である、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
100mgのケトプロフェンおよび8mgのチオコルチコシドを含有し、分割可能な固体剤形の形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
50から100mgのケトプロフェンおよび4から8mgのチオコルチコシドを含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
100mgのケトプロフェンおよび8mgのチオコルチコシドを含有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
50mgのケトプロフェンおよび4mgのチオコルチコシドを含有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
筋骨格障害および関節障害、例えば強直性脊椎炎、腰痛、変形性関節症、およびリウマチ性関節炎、ならびに関節周囲障害、例えば滑液包炎および腱炎;ならびに有痛性筋痙縮を処置および/または寛解するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
筋骨格障害および関節障害、例えば強直性脊椎炎、腰痛、変形性関節症、およびリウマチ性関節炎、ならびに関節周囲障害、例えば滑液包炎および腱炎;ならびに有痛性筋痙縮を寛解および/または処置することを目的とする薬剤の調製のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
a)ケトプロフェンおよび医薬的に許容される賦形剤をブレンドしてブレンドされた材料を形成する工程、
b)バインダー材料を医薬的に許容される賦形剤と共に調製する工程、
c)バインダー材料をケトプロフェンを含有する調製物に添加する工程、
d)c)から得られた材料を湿式造粒する工程、
e)湿式サイジング工程、
f)乾燥工程、
g)乾燥サイジング工程、
h)チオコルチコシドおよび医薬的に許容される賦形剤をブレンドして、ブレンドされた材料を形成し、すべての材料を1mmシーブにシーブする工程、
i)工程g)およびh)からの材料をブレンドする工程、
j)潤滑剤を添加する工程であって、すべての材料を1mmシーブにシーブすることを含む工程、
k)錠剤剤形を形成するための錠剤化工程
を含む、錠剤剤形を製造する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の錠剤剤形を製造する工程、および加熱工程の後、フィルムコーティングされた錠剤剤形を形成するためのコーティング工程を含む、フィルムコーティングされた錠剤剤形を製造する方法。

【公表番号】特表2012−515764(P2012−515764A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547060(P2011−547060)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際出願番号】PCT/IN2009/000071
【国際公開番号】WO2010/084500
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】