説明

非伝導性基材の改善されためっき方法

金属化合物が分散しているレーザ活性化熱可塑性基材を処理する方法について記載する。(i)チオール官能性有機化合物と、(ii)エトキシ化アルコール界面活性剤と、(iii)キサンタンガムとを含む水性組成物と前記基材とを接触させる。処理組成物を使用することにより、後に基材をレーザで活性化し、無電解めっきによりめっきしたとき、基材における不要なめっきが実質的に生じなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非伝導性基材におけるめっきを改善するための処理組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント基板の形成において一体成形物品が用いられている。多くの場合、2つの別々の成形工程を用いて前記物品の2つの部分が形成される。2ショット成形は、2つの射出成形されたポリマーの組み合わせから(プリント基板を含む)成形回路部品等の2つの部分を有する部品を製造する手段である。このプロセスは、2色成形プラスチック物品を製造するため、及び単一成形部品において硬質プラスチックと軟質プラスチックとを組み合わせるためにも用いられる。
【0003】
成形回路部品(MID)は、例えば、センサ、スイッチ、コネクタ、計器パネル、及びコントローラを含む様々な産業及び用途で用いられている。MIDは、典型的に、通常成形プラスチック構造上に伝導性金属をめっきすることにより作製される少なくとも1つの電気トレースを有する。
【0004】
MIDを製造する1つの方法は、第1のプラスチック材料を用いて第1の成形型において構造の一部を成形し、次いで、前記第1の成形型で作製した構造を第2の成形型に入れ、次いで、第2のプラスチック材料を用いて部品の第2の部分を成形することを含む。伝導性材料が、プラスチック材料のうちの一方にはめっき可能であるが、他方のプラスチック材料にはめっきすることができないように、前記2つのプラスチック材料が選択される。めっき性プラスチック上にめっき可能な伝導性材料は、伝導性トレース又は他の機構になる。伝導性トレースは、データ信号、制御信号、又は電力をアプリケーションのコンポーネントから及びコンポーネントへ運ぶ。マスクを塗布し、被覆されたマスクを紫外線(UV)に選択的に曝露して、前記マスクを非回路領域へと選択的に硬化させるフォトイメージングプロセスを用いてもよい。曝露されなかったマスクを化学的に除去し、回路パターンを形成する。次いで、前記パターンを銅又は他の金属でめっきして、望ましい回路性能を得る。
【0005】
プラスチックの射出成形において、1ショットでMIDを成形できる技術が最近開発された。例えば、有機金属錯体でドープされている熱可塑性物質等の単一の感光性非伝導性材料から構造を製造することができる。次いで、例えば、金属原子を銅めっきの核として作用させるために有機配位子から金属原子を切断するレーザを用いることにより、成形構造に相互接続パスを書き込む。レーザビームは、基材表面を局所的に活性化して、望ましい回路レイアウトを作製する。その後、典型的には銅である金属めっき浴に浸漬して、レーザビームによりエッチングされた領域に金属をめっきして、前記領域にトレース又は他の機構を形成する。このプロセスは、レーザ照射立体回路形成(LDS)プロセスとして知られており、成形プロセスが完了した後、器具を交換することなしに回路網を形成することができ、且つより分解能が高くフットプリントがより小さいコンポーネントを製造する能力を提供する、より単純な1ショット成形プロセスを設計者に提供する。
【0006】
LDSプロセスは、以下を含む直送式3工程プロセスを提供する:(1)金属化合物を含有するレーザ活性化可能な非伝導性基材物質を利用する標準的な射出成形プロセスを用いて基材を作製する工程と、(2)金属化合物が、後に無電解めっきのシード層として作用する関連金属に分解されるように、非伝導性材料をレーザで活性化する工程と、(3)非伝導性基材の活性化部分を無電解めっきする工程。
【0007】
レーザ活性化工程は、後に塗布される無電解金属に対する優れた接着性を付与するマイクロエッチングされた表面を形成する。無電解金属は、銅又は銅合金を含んでいてもよいが、他の無電解金属も使用可能である。
【0008】
LDSプロセスによって形成される基材に関連する問題点は、特に、基材の粗い領域又は基材の機械的に損傷を受けている領域において、不要なめっきが生じる場合がある点である。
【0009】
上記問題点に基づいて、本発明の目的は、望ましくない不要なめっきを避けるために成形回路部品を処理する方法を提供することにある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、金属含浸非伝導性基材を処理する方法を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、レーザ活性化可能な成形回路部品(MID)を処理する方法を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、レーザ活性化可能なMIDにおける不要なめっきを最小限に抑える方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これら目的のために、本発明は、一般的に、レーザ活性化可能な非伝導性基材を処理する方法であって、
a)前記非伝導性基材を、
i)チオール官能性有機化合物の水性混合物、
ii)好ましくは、界面活性剤、及び
iii)好ましくは、キサンタンガム
を含む水性組成物で処理する工程と、
b)前記非伝導性基材の表面をレーザで活性化する工程と
を含む方法に関する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、一般的に、金属化合物が分散しているレーザ活性化熱可塑性基材を処理する方法であって、
a)前記基材と、
i)チオール官能性有機物の水性混合物、
ii)好ましくは、界面活性剤、及び
iii)好ましくは、キサンタンガム
を含む水性組成物とを接触させる工程と、
b)レーザビームと接触した基材の部分が無電解めっき受容性になるように、前記基材と前記レーザビームとを選択的に接触させる工程と
を含み、
処理されたレーザ活性化基材が後に無電解めっきによりめっきされたとき、前記基材において不要なめっきが実質的に生じないようにすることができる方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上述の通り、成形回路部品(MID)及び他の類似する基材は、レーザにより活性化可能な金属化合物含有非伝導性材料を用いて製造することができる。レーザ処理は、後に無電解銅又は銅合金等の無電解金属でめっきされる非伝導性基材の選択領域を活性化する。この種の基材及びその加工に関連する問題点は、特に、コンポーネントの粗い領域又は機械的に損傷を受けているか若しくは粗化されているコンポーネントの領域において、不要なめっきが生じる場合がある点である。
【0016】
本発明者らは、金属含有非伝導性基材を本発明の処理組成物で処理することにより、不要なめっきを実質的になくす又は防ぐことができることを見出した。
【0017】
本発明の処理組成物は、典型的に、
a)チオール官能性有機化合物の水性混合物、
b)好ましくは、界面活性剤、及び
c)好ましくは、キサンタンガム
を含む。
【0018】
チオール官能性有機化合物は、典型的に、キサンタンガム及び界面活性剤を用いて水中で乳化される。
【0019】
前記組成物中のキサンタンガム濃度は、約1g/L〜約10g/Lが好ましい。
【0020】
界面活性剤は、エトキシ化アルコールが好ましく、C10アルコールエトキシレートがより好ましい。しかし、本発明では他の類似する界面活性剤も使用可能である。好適なエトキシ化アルコールは、例えば、BASF社から商品名Lutensol(登録商標)として入手可能である。組成物中のエトキシ化アルコール濃度は、約0.1g/L〜約10g/Lが好ましい。
【0021】
チオールは、−SH官能基を含有する有機化合物であり、メルカプタンとしても知られている。例えば、C12〜C18鎖長のメルカプタンを含む様々なメルカプタンが、本発明の組成物で使用可能である。好適なチオール官能性有機物としては、ドデカンチオール、ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタン、及びステアリルメルカプタン等のアルカンチオール類に加えて、アルキルチオグリコレート、ステアリルチオグリコレート、セチルチオグリコレート、メチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及びt−ノニルメルカプタンが挙げられるが、これらは一例であり限定するものではない。1つの実施形態では、チオール官能性有機物は、ステアリルメルカプタンである。
【0022】
チオール官能性有機化合物は、典型的に、本発明の組成物において約1g/L〜約20g/Lの濃度で使用可能である。
【0023】
本発明の水性エマルション組成物は、銅又は他の金属化合物が含浸しているか、或いは銅又は他の金属化合物を別の方法で含有しており、且つ前記銅又は他の金属化合物が分散している熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びセラミックス等の非伝導性材料を含むレーザ活性化可能なMID又は他の類似する基材の表面を処理するのに特に適している。処理組成物の使用は、これら非伝導性基材において不要なめっきが生じないようにするのに有利である。
【0024】
非伝導性基材は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はセラミック材料を含んでいてもよい。1つの実施形態では、非伝導性基材は、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(PC/ABS)ブレンド樹脂、架橋ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂、又は他の類似する材料を含むが、これらは一例であり限定するものではない。
【0025】
金属化合物は、典型的に、例えば、その主題を参照することにより全体を本願に援用する米国特許第7,060,421号明細書(Naundorf等)及び米国特許出願公開第2008/0171181号明細書(Zaderej)に記載されている非伝導性金属酸化物を含む。1つの実施形態では、前記金属化合物は、銅を含有する。
【0026】
用いられるレーザは、電磁放射線を提供して金属化合物から金属核を放出させる。1つの実施形態では、レーザは、市販されているNd:YAGレーザである。また、本発明の実施において他のレーザを使用してもよい。
【0027】
また、本発明は、金属含有化合物が分散している非伝導性基材を処理する方法であって、前記非伝導性基材が、めっきを受容するようにレーザによって選択的に活性化されることが可能であり、
a)前記非伝導性基材を、
i)チオール官能性有機化合物、
ii)好ましくは、界面活性剤、及び
iii)好ましくは、キサンタンガム
を含む水性組成物で処理する工程と、
b)前記非伝導性基材の表面の一部を選択的にレーザ活性化する工程と
を含み、
工程a)及びb)の後で、前記基材の活性化された部分を無電解めっきすることにより、処理及び活性化された前記基材をめっきする方法に関する。
【0028】
典型的に、浸漬、噴霧、及び水平流し掛けが挙げられるがこれらに限定されない様々な方法により、非伝導性基材と水性組成物とを接触させる。また、他の方法も当業者に公知である。
【0029】
約50℃の温度で、望ましい結果を得るのに十分な時間、前記組成物を非伝導性基材と接触させることが好ましい。しかし、20℃〜70℃の温度も使用可能であると考えられる。更に、接触時間は、典型的に、接触方法に応じて約10秒間〜約300秒間である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ活性化可能な非伝導性基材を処理する方法であって、
a)前記非伝導性基材を、
i)チオール官能性有機化合物、及び
ii)好ましくは、界面活性剤、
を含む水性組成物で処理する工程と、
b)前記非伝導性基材の表面の一部を選択的にレーザ活性化する工程と、
c)前記非伝導性基材の、レーザと接触した領域はめっきされるが、レーザと接触しなかった領域はめっきされないように、前記非伝導性基材と無電解めっき浴とを接触させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
チオール官能性有機化合物が、ドデカンチオール、ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、アルキルチオグリコレート、ステアリルチオグリコレート、セチルチオグリコレート、メチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及びt−ノニルメルカプタン、並びにこれら化合物のうちの1以上の組み合わせからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
チオール官能性有機化合物が、ステアリルメルカプタンを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
水性組成物中のチオール官能性有機化合物濃度が、約1g/L〜約20g/Lである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
界面活性剤が、エトキシ化アルコール界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水性組成物中のエトキシ化アルコール界面活性剤濃度が、約0.1g/L〜約10g/Lである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
水性組成物が、キサンタンガムを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
水性組成物が、界面活性剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
無電解めっき浴が、無電解銅めっき浴を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
非伝導性基材が、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
非伝導性基材が、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエンスチレンブレンド樹脂、架橋ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、及び液晶ポリマーからなる群より選択される熱可塑性樹脂である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
非伝導性基材が、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド樹脂である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
非伝導性基材に銅化合物が含浸されている請求項1に記載の方法。
【請求項14】
水性組成物が、界面活性剤を含む請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2013−518180(P2013−518180A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549985(P2012−549985)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/056121
【国際公開番号】WO2011/093934
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(502304286)マクダーミッド アキューメン インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】