説明

非円筒体の外周面検査方法及びその装置

【課題】
非円筒体の外周面をカメラで撮影するに際して、非円筒体の外周面の周速度、カメラの合焦位置、外周面に対向するカメラの指向方向を調節して、最適な撮影条件を設定する。
【解決手段】
非円筒体1を回転させると共に、非円筒体1の外周面3を指向するカメラ4により外周面3の撮影範囲Sを撮影し、カメラ4の撮影画像を画像処理部5により外周面3を検査する過程で、予め測定した制御用のデータに基づき、非円筒体1の回転速度Nを調節して、撮影範囲Sにおける外周面3の周速度Vを一定とすると共に、カメラ4を合焦方向に移動させて撮影範囲Sの外周面3とカメラ4との間を合焦距離Fに保ちながら、撮影範囲S内の外周面3の法線6上にカメラ4を移動させて、撮影範囲Sにカメラ4を指向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非円筒体の外周面を検査する方法及び装置に関する。なお、この明細書及び特許請求の範囲において、非円筒体とは、完全な円形の筒以外の筒体、例えば輪郭形状楕円の筒体や変形楕円の筒体などを言い、非円筒体は、中空の筒体のほか、円柱以外の柱体、例えば卵型の柱体などを含むものとする。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、完全な円筒体の外周面の検査は、円筒体を一定の速度で回転させ、その外周面をラインカメラにより撮影し、この撮影画像を画像処理することによって行っている。しかし、検査対象が非円筒体の外周面の検査のときに、円筒体の検査と同様に、非円筒体を一定の速度で回転させると、外周面の周速度や合焦位置の変化さらにラインカメラから見た被写体(撮影範囲)の対向角度の変動によって、正確な撮影ができなくなる。
【特許文献1】特開2008−185438公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の課題は、非円筒体の外周面の検査のために、非円筒体の外周面をカメラで撮影するに際して、非円筒体の外周面の周速度や、カメラの合焦位置、さらに外周面に対向するカメラの指向方向を調節して、最適な撮影条件を設定することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題の下に、本発明の請求項1の非円筒体の外周面の検査方法は、検査対象としての非円筒体(1)内の筒方向の中心線(2)を回転中心として非円筒体(1)を回転させると共に、非円筒体(1)の外周面(3)を指向するカメラ(4)により外周面(3)の撮影範囲(S)を撮影し、カメラ(4)の撮影画像を画像処理部(5)の画像処理により外周面(3)を検査する過程において、予め測定した制御用のデータにもとづいて、非円筒体(1)の回転速度(N)を調節して、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定とすると共に、カメラ(4)を合焦方向に移動させて、撮影範囲(S)の外周面(3)とカメラ(4)との間を合焦距離(F)に保ちながら、撮影範囲(S)内の外周面(3)の法線(6)上にカメラ(4)を移動させて、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させている。
【0005】
請求項2の非円筒体の外周面の検査方法は、検査前に、非円筒体(1)を一定の回転速度(n)で回転させ、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する外周面(3)の各点(p)での周速度(v)を測定しておき、一定の回転速度(n)と周速度(v)との関係式から検査時における非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する回転速度(N)を予め決定しておき、検査時に、非円筒体(1)の回転角度(θ)毎に回転速度(N)を設定することによって、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定としている。
【0006】
請求項3の非円筒体の外周面の検査方法は、検査前に、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する撮影範囲(S)の外周面(3)と中心線(2)との距離(r)を予め測定しておき、検査時に、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対応して変化する距離(r)に応じてカメラ(4)を合焦距離(F)の位置に移動させている。また、請求項4の非円筒体の外周面の検査方法は、検査前に、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する外周面(3)の撮影範囲(S)での法線(6)の指向角度(α)を予め求めておき、検査時に、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対応する指向角度(α)に応じて法線(6)上にカメラ(4)を移動させることによって、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させている。
【0007】
請求項5の非円筒体の外周面検査装置(10)は、検査対象としての非円筒体(1)内の筒方向の中心線(2)を回転中心として非円筒体(1)を回転させるとともに、非円筒体(1)の外周面(3)を指向するカメラ(4)により外周面(3)の撮影範囲(S)を撮影し、カメラ(4)の撮影画像を画像処理部(5)の画像処理により外周面(3)を検査する非円筒体の外周面検査装置(10)において、非円筒体(1)を支える回転テーブル(9)のテーブル軸(11)と、テーブル軸(11)を駆動する速度可変型の駆動モータ(12)と、中心線(2)と撮影範囲(S)の外周面(3)との距離(r)の変化に応じて第1テーブル(13)を合焦方向に移動させカメラ(4)を合焦距離(F)に保つ合焦調節手段(15)と、第1テーブル(13)上の第2テーブル(14)の上でカメラ(4)を支持し外周面(3)の撮影範囲(S)の点(p)を中心とする円弧状案内手段(17)にそってカメラ(4)を移動させ、撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる指向方向調節手段(18)及び指向方向調節モータ(19)と、これらを制御する制御部(20)と有する。
【0008】
上記の制御部(20)は、検査時に、予め測定した制御用のデータにもとづいて、駆動モータ(12)の回転速度(N)を制御して、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定とすると共に、合焦調節手段(15)によってカメラ(4)を合焦方向に移動させ、外周面(3)とカメラ(4)との間を合焦距離(F)に保ちながら、予め設定した指向角度(α)にもとづいて指向方向調節モータ(19)を駆動して、指向方向調節手段(18)によって外周面(3)の撮影範囲(S)内の外周面(3)の法線(6)上にカメラ(4)を移動させ、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる。
【0009】
請求項6の合焦調節手段(15)は、中心線(2)と撮影範囲(S)の外周面(3)との距離(r)の変化に応じて第1テーブル(13)を合焦方向に移動させる合焦調節モータ(16)を含む。また、請求項7の合焦調節手段(15)は、テーブル軸(11)に取り付けられ非円筒体(1)の断面と同じ輪郭のカム(33)と、第1テーブル(13)に取り付けられカム(33)の輪郭に接するカムフォロア34とからなるカム装置(32)により構成されている。
【0010】
請求項8の非円筒体の外周面検査装置(10)は、請求項1の非円筒体の外周面検査装置(10)に、外周面(3)に接し非円筒体(1)を一定の回転速度(n)で回転させたときの外周面(3)の周速度(v)を測定する周速度検出器(21)と、外周面(3)と対向し中心線(2)から撮影範囲(S)の外周面(3)までの距離(r)を測定する距離計(22)とを追加するとともに、合焦調節手段(15)に駆動源として合焦調節モータ(16)を組み込んだ構成例である。
【0011】
すなわち、請求項8の非円筒体の外周面検査装置(10)は、検査対象としての非円筒体(1)内の筒方向の中心線(2)を回転中心として非円筒体(1)を回転させると共に、非円筒体(1)の外周面(3)を指向するカメラ(4)により外周面(3)の撮影範囲(S)を撮影し、カメラ(4)の撮影画像を画像処理部(5)の画像処理により外周面(3)を検査する非円筒体の外周面検査装置(10)において、非円筒体(1)を支える回転テーブル(9)のテーブル軸(11)と、テーブル軸(11)を駆動する速度可変型の駆動モータ(12)と、外周面(3)に接し非円筒体(1)を一定の回転速度(n)で回転させたときの外周面(3)の周速度(v)を測定する周速度検出器(21)と、外周面(3)と対向し中心線(2)から撮影範囲(S)の外周面(3)までの距離(r)を測定する距離計(22)と、中心線(2)と撮影範囲(S)の外周面(3)との距離(r)の変化に応じて第1テーブル(13)を合焦調節モータ(16)により合焦方向に移動させカメラ(4)を合焦距離(F)に保つ合焦調節手段(15)と、第1テーブル(13)上の第2テーブル(14)上でカメラ(4)を支持し外周面(3)の撮影範囲(S)を中心とする円弧状案内手段(17)にそってカメラ(4)を移動させ撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる指向方向調節手段(18)及び指向方向調節モータ(19)と、これらを制御する制御部(20)とからなる。
【0012】
上記制御部(20)は、検査前に、非円筒体(1)を一定の回転速度(n)で回転させ、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する外周面(3)の各点(p)での周速度(v)を周速度検出器(21)により測定し、回転速度(n)と周速度(v)との関係式から検査時における非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する回転速度(N)を決定しておくとともに、中心線(2)と非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する撮影範囲(S)の外周面(3)との距離(r)を距離計(22)により予め測定しておき、検査時に、決定した回転速度(N)にもとづいて駆動モータ(12)の回転速度(N)を制御して、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定とすると共に、測定した距離(r)にもとづいて合焦調節モータ(16)を駆動して合焦調節手段(15)によってカメラ(4)を合焦方向に移動させ、外周面(3)とカメラ(4)との間を合焦距離(F)に保ちながら、予め設定した指向角度(α)にもとづいて指向方向調節モータ(19)を駆動して指向方向調節手段(18)によって撮影範囲(S)内の外周面(3)の法線(6)上にカメラ(4)を移動させ、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によると、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定とすると共に、カメラ(4)を合焦位置に移動させ、かつ、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させているから、検査の際にカメラ(4)に対して最適な撮影条件が設定できる。これによって、外周面(3)の画像処理による検査の精度が高められる。
【0014】
請求項2の発明によると、一定の回転速度(n)と周速度(v)との関係式から検査時の回転速度(N)を設定するから、回転速度(N)が実測値から容易に設定できる。
【0015】
請求項3の発明によると、検査前の距離(r)の測定によって、検査時のカメラ(4)の合焦距離(F)の位置が定められるから、カメラ(4)の合焦制御が回転角度(θ)に応じて容易に行える。
【0016】
請求項4の発明によると、検査前に、指向角度(α)を予め求めておくから、検査時のカメラ(4)の指向制御が回転角度(θ)に応じて簡単に行える。
【0017】
請求項5の発明によると、各部の動作によって非円筒体(1)の回転にともない、カメラ(4)に対して最適な撮影条件が設定できるから、撮影範囲(S)の撮影が能率よく実行でき、外周面(3)の画像処理による検査の精度が高められる。請求項6のように、合焦調節手段(15)が合焦調節モータ(16)を含む例では、モータ回転量の制御によって非円筒体(1)の複雑な外周面(3)にも追従が可能となり、また請求項7のように、合焦調節手段(15)がカム装置(32)により構成されている例では、特別な駆動源が不要となるため、構成が簡略化できる。
【0018】
請求項8の発明によると、上記の請求項5の発明による効果のほかに、周速度検出器(21)及び距離計(22)が付設されているから、検査時の非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する回転速度(N)やカメラ(4)の合焦位置が検査前に設定でき、制御用のデータの作成が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1および図2は、本発明に係る非円筒体の外周面検査方法の原理を示している。これらの図1および図2において、検査対象としての非円筒体1は、例えば自動車の楕円形筒状の部品であり、検査時に、非円筒体1内の筒方向の中心線2を回転中心として回転している。なお、中心線2は紙面に対して垂直である。この回転のときに、ライン型のカメラ4は、ライン状の視野を中心線2の方向として、非円筒体1の外周面3を指向し、外周面3の撮影範囲Sを所定の時間間隔で撮影することによって複数の撮影画像の画像信号を発生し、これらの画像信号を画像処理部5に送る。複数の撮影画像は、外周面3の全周面を画像上で連続する状態となっている。画像処理装置5は、内蔵の画像処理プログラムにしたがって画面上で輝度の急変部分を抽出することによって外周面3の異物や欠陥の有無を検出する。
【0020】
既述のように、非円筒体1が中心線2を回転中心として一定の回転速度(回転数)で回転していると仮定したとき、非円筒体1が真円でないために、非円筒体1の撮影位置の外周面3の周速度Vおよび撮影位置Sの外周面3とカメラ4との距離は常に変化する。しかもカメラ4は、図1のように、初期の設定時に、中心線2を通り中心線2に対して直交する平面上の基準線7上にあって、外周面3の撮影範囲Sに向けられていても、初期の設定位置のままであると、非円筒体1の回転によって、図2のように、撮影範囲Sに対して斜め方向となり、良好な画像を撮影できなくなる。
【0021】
そこで、検査の前に、オペレータは、非円筒体1の撮影範囲Sにおける外周面3の周速度Vを一定とし、かつカメラ4の撮影範囲Sにおける外周面3とカメラ4との間を合焦距離Fに保つことを目的として、非円筒体1を一定の回転速度nで回転させ、非円筒体1の基準回転位置、例えば図1で楕円の長軸上の回転角度0°から360°までの回転角度θについて、目標精度に応じて例えば1°毎に撮影範囲Sにおける外周面3の点pでの周速度vを測定し、回転速度nと周速度vとの関係式から検査時における非円筒体1の回転角度θ毎に回転速度Nを決定しておき、かつ回転角度θ毎に中心線2から撮影範囲Sの外周面3の点pまでの距離rを測定しておく。
【0022】
上記の点pは外周面3と基準線7との交点であり、非円筒体1の回転中も常に基準線7上にある。なお、カメラ4の位置は、初期に基準線7の線上に設定されるが、非円筒体1の回転にともなって、図2のように、点pを中心とする円弧にとって基準線7の左側、または基準線7の右側に変位させなければならない。
【0023】
非円筒体1の回転時の周速度Vおよびカメラ4の合焦位置は、以下の関係式によって求められる。非円筒体1が一定の回転速度n〔rpm〕で回転していると仮定したとき、回転中心としての中心線2から距離r〔m〕の外周面3の点pの周速度v〔m/s〕は、関係式v=r2πn/60で表される。この関係式を利用して、基準位置(回転角度0°)から一定の回転角度θの間隔例えば回転方向に1°毎に距離rを測定して、周速度vに目標の周速度Vの値を、距離rに測定した実測値を代入すれば、回転角度θに対応する回転速度Nが決定できる。また、距離rの測定によって、カメラ3の合焦位置は、外周面3の点pからカメラ4までの距離すなわち合焦距離Fによって与えられる。
【0024】
また、外周面3の点pの接線に対して点pを通る直交方向の直線は、点pを含む撮影範囲Sの中心位置についての法線6となる。カメラ4がこの法線6上もしくは法線6の近くで撮影範囲S内の点pを指向しておれば、その状態で、カメラ4は、外周面3の撮影範囲Sを被写界として正しく向き合い、良好な画像を撮影できるようになる。このときの法線6の方向は、一定の回転角度θ例えば1°の間隔毎に基準線7に対する指向角度αとして実測または図面上から決定できる他、楕円の座標計算によって求めることもできる。なお、図1の初期の位置で、法線6と基準線7とは重なっており、指向角度αは0°である。
【0025】
そして、上記の回転速度N、合焦位置および指向角度αは、回転角度θすなわち基準位置(回転角度0°)から回転角度360°にわたって一定の角度間隔例えば回転方向に1°ごとに制御用のデータとして設定される。この制御用のデータ設定は、同一の非円筒体1について一度行えば、同じ非円筒体1について繰り返し利用できる。
【0026】
本発明に係る非円筒体の外周面の検査方法は、前記の前準備後の検査過程において、予め測定した制御用のデータにもとづいて、非円筒体1の回転速度Nを調節して、非円筒体1の撮影範囲Sにおける外周面3の周速度Vを一定とすると共に、カメラ4を合焦方向に移動させて、撮影範囲Sの外周面3とカメラ4との間を合焦距離Fに保ちながら、撮影範囲S内の外周面3の法線6上にカメラ4を移動させて、撮影範囲Sにカメラ4を指向させ、撮影範囲Sの撮影を行う。このときのカメラ4の移動は、外周面3の点pを中心とし、合焦距離Fを半径とする円弧にそっている。
【0027】
撮影に当たり、カメラ4に固有の写体深度があるため、カメラ4が法線6上から少し外れていても、あるいはカメラ4の撮影位置が合焦距離Fに正確に一致していなくても、撮影範囲Sの画像に実用上大きな問題はない。検査時の外周面3の周速度V、カメラ4の位置および向きは、上記のように制御用のデータとして予め測定して設定するが、これらの設定は、既に記載したように、検査対象の非円筒体1の輪郭を平面図上に描き、作図によって求めることもできる。
【0028】
次に図3は、本発明に係る非円筒体の外周面検査装置10を示している。なお、図3で、撮影範囲S、合焦距離F、点p、距離r、指向角度α、回転角度θなどは、正確に図示できないため、それらの符号は、必要に応じて、既述の図1および図2を参照するものとする。非円筒体の外周面検査装置10は、前記の非円筒体の外周面検査方法を実施するときの具体的な例であり、回転速度Nの測定のための周速度検出器21、距離rの測定のための距離計22を備えている。しかし、前記のように、検査時の外周面3の周速度Vや距離rの測定は、作図や座標計算によっても設定できるから、周速度検出器21、距離計22は、必要に応じて設けられる。
【0029】
図3において、非円筒体の外周面検査装置10は、中心線2を回転中心として非円筒体1を回転させると共に、非円筒体1の外周面3を指向するカメラ4により外周面3の撮影範囲Sを撮影し、カメラ4の撮影画像を画像処理部5の画像処理により外周面3を検査をできるようにするために、箱型の機体8の内部において、回転テーブル9、そのテーブル軸11、速度可変型の駆動モータ12、周速度検出器21、距離計22、合焦調節モータ16を有する合焦調節手段15、指向方向調節手段18及び指向方向調節モータ19、これらを制御する制御部20を有している。
【0030】
テーブル軸11は、基準線7上にあって、機体8の軸受け37によって中心線2を回転中心として回転自在に支持され、非円筒体1を保持するための回転テーブル9の中心を支えている。速度可変型の駆動モータ12は、減速機付きであり、テーブル軸11を回転速度Nにもとづいて速度を加減しながら駆動する。なお、回転角度検出手段としてのエンコーダ31は、テーブル軸11に連結されており、その回転角度θを検出している。
【0031】
駆動モータ12が非円筒体1を一定の回転速度nで回転させているとき、例えば接触式の周速度検出器21は、そのローラ23の外周で非円筒体1の外周面3例えばその縁枠の外周面に接し、外周面3の周速度vを測定する。なお、周速度検出器21は、非円筒体1の距離rの変化を許容するために、滑り案内式の案内手段24により支持され、常に外周面3に接するように付勢されている。距離計22は、例えば非接触式の変位計であり、外周面3と対向し、距離rを測定する。なお、周速度vや距離rは、基準線7上の位置で測定すべきであるが、上記エンコーダ31により検出される回転角度θに対応させることによって、基準線7上の測定値となる。
【0032】
合焦調節手段15は、カメラ4を合焦距離Fに保つ手段であり、第1テーブル13を合焦方向つまり基準線7の方向に移動させるために、例えば滑り案内形式の第1の案内手段25と第1の送りねじユニット26とで構成されており、合焦調節モータ16は、第1の送りねじユニット26を駆動することによって、距離rの変化に応じて第1テーブル13を合焦方向に移動させる。
【0033】
指向方向調節手段18は、カメラ4を撮影範囲Sに指向させるために、第1テーブル13上に設けられ、外周面3の撮影範囲Sの点pを中心とし、合焦距離Fを半径とする円弧にそって第2テーブル14を移動させる円弧状案内手段17と、第2の送りねじユニット27とで構成されている。指向方向調節モータ19は、第1テーブル13上にあって、第2の送りねじユニット27を駆動することによって、第2テーブル14上のカメラ4を左右に振り、撮影範囲Sにカメラ4を指向させる。第2テーブル14と第2の送りねじユニット27とは、第2テーブル14の基準線7の方向の長孔28と第2の送りねじユニット27(送りナット)のピン29とによって連動する。なお、第2テーブル14の上面に、外周面3の撮影範囲Sに対する照明器30が設置されている。
【0034】
検査前に、オペレータは、機体8内の制御部20を操作し、非円筒体1を一定の回転速度nで回転させ、非円筒体1の回転角度θに対する外周面3の各点pでの周速度vを周速度検出器21により測定し、回転速度nと周速度vとの関係式から検査時における非円筒体1の回転角度θに対する回転速度Nを決定しておくと共に、非円筒体1の回転角度θに対する撮影範囲Sの点pと中心線2との距離rの変化を距離計22により予め測定し、制御用のデータとして制御部20の内蔵メモリに記憶しておく。
【0035】
また、実測または図解によって、非円筒体1の回転角度θに対する指向角度αも制御用のデータとして制御部20の内蔵メモリに記憶される。このようにして、回転角度θ例えば1°ごとに対する回転速度N、距離rの値および指向角度αが内蔵メモリに制御用のデータとして記憶される。
【0036】
検査時に、制御部20は、エンコーダ31により回転角度θを検出し、回転角度θに対応して決定した回転速度Nにもとづいて駆動モータ12の回転数を加減して、非円筒体1の撮影範囲Sにおける外周面3の周速度Vを一定に制御すると共に、回転角度θに対応する距離rにもとづいて合焦調節モータ16を駆動して、合焦調節手段15によってカメラ4を合焦方向に移動させ、外周面3とカメラ4との間を常に合焦距離Fに保つ。このときのカメラ4の移動範囲は、距離rの最大値と最小値との差に相当する。
【0037】
これらの制御と同時に、制御部20は、回転角度θに応じて予め設定した指向角度αにもとづいて指向方向調節モータ19を駆動し、指向方向調節手段18によって撮影範囲S内の外周面3の法線6上にカメラ4を移動させ、外周面3の撮影範囲Sにカメラ4を指向させる。
【0038】
このようにして、非円筒体の外周面検査装置10は、非円筒体1の撮影範囲Sにおける外周面3の周速度Vを一定に制御すると共に、カメラ4を常に合焦距離Fに保ち、さらに外周面3の撮影範囲Sにカメラ4を指向させる。この間に、カメラ4は、非円筒体1の外周面3を一定のシャター周期で撮影し、全外周面画像の信号を画像処理部5に送る。前記の通り、画像処理部5は、全外周面画像から欠陥や異物の有無を画像処理によって非円筒体1の外周面3を検査する。
【0039】
次に、図4は、合焦調節手段15をならい方式のカム装置32によって構成し、合焦調節モータ16を省略する例である。カム装置32は、非円筒体1と同じ断面の輪郭を有するカム33と、カム33の輪郭に接するカムフォロア34と、カムフォロア34を付勢する付勢ばね35からなる。カム33は、非円筒体1の縁枠部分とテーブル軸11との間に設けられ、テーブル軸11に取り付けられており、カムフォロア34は、第1テーブル13に取り付けられ、先端のカムローラ36によりカム33の輪郭に接するように配置されている。この例で周速度検出器21のローラ23は、カム33の外周面に接している。そして、付勢ばね35は一例として圧縮ばねであり、第1テーブル13と機体8との間に圧縮状態で取り付けられている。なお、図4で、画像処理部5や距離計22は、省略されている。
【0040】
テーブル軸11が回転すると、カムフォロア34は、距離rの変化に追従するため、第1テーブル13は、距離rの最大値と最小値との差をストロークとして移動する。これによって、カメラ4は、非円筒体1の外周面3に対して常に合焦距離Fを保って向き合う。なお、付勢ばね35は、カム33として確動カムを採用することによって省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、楕円形の非円筒体の外観検査の目的で開発されたが、その他の非円筒体(非円柱体)の外観検査にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る非円筒体の外周面検査方法の原理図である。
【図2】本発明に係る非円筒体の外周面検査方法の原理図である。
【図3】本発明に係る非円筒体の外周面検査装置の斜面図である。
【図4】本発明に係る他の非円筒体の外周面検査装置の斜面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 非円筒体
2 中心線
3 外周面
4 カメラ
5 画像処理部
6 法線
7 基準線
8 機体
9 回転テーブル
10 非円筒体の外周面検査装置
11 テーブル軸
12 駆動モータ
13 第1テーブル
14 第2テーブル
15 合焦調節手段
16 合焦調節モータ
17 円弧状案内手段
18 指向方向調節手段
19 指向方向調節モータ
20 制御部
21 周速度検出器
22 距離計
23 ローラ
24 案内手段
25 第1の案内手段
26 第1の送りねじユニット
27 第2の送りねじユニット
28 長孔
29 ピン
30 照明器
31 エンコーダ(回転角度検出手段)
32 カム装置
33 カム
34 カムフォロア
35 付勢ばね
36 カムローラ
37 軸受け
【0044】
S 撮影範囲
N 回転速度
F 合焦距離
V 周速度
n 一定の回転速度
v 周速度
p 点
r 距離
α 指向角度
θ 回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象としての非円筒体(1)内の筒方向の中心線(2)を回転中心として非円筒体(1)を回転させると共に、非円筒体(1)の外周面(3)を指向するカメラ(4)により外周面(3)の撮影範囲(S)を撮影し、カメラ(4)の撮影画像を画像処理部(5)の画像処理により外周面(3)を検査する過程において、予め測定した制御用のデータにもとづいて、非円筒体(1)の回転速度(N)を調節して、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定とすると共に、カメラ(4)を合焦方向に移動させて、撮影範囲(S)の外周面(3)とカメラ(4)との間を合焦距離(F)に保ちながら、撮影範囲(S)内の外周面(3)の法線(6)上にカメラ(4)を移動させて、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる、ことを特徴とする非円筒体の外周面の検査方法。
【請求項2】
検査前に、非円筒体(1)を一定の回転速度(n)で回転させ、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する外周面(3)の各点(p)での周速度(v)を測定しておき、一定の回転速度(n)と周速度(v)との関係式から検査時における非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する回転速度(N)を予め決定しておき、検査時に、非円筒体(1)の回転角度(θ)毎に回転速度(N)を設定することによって、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定とする、ことを特徴とする請求項1記載の非円筒体の外周面の検査方法。
【請求項3】
検査前に、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する撮影範囲(S)の外周面(3)と中心線(2)との距離(r)を予め測定しておき、検査時に、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対応して変化する距離(r)に応じてカメラ(4)を合焦距離(F)の位置に移動させる、ことを特徴とする請求項1記載の非円筒体の外周面の検査方法。
【請求項4】
検査前に、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する外周面(3)の撮影範囲(S)での法線(6)の指向角度(α)を予め求めておき、検査時に、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対応する指向角度(α)に応じて法線(6)上にカメラ(4)を移動させることによって、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる、ことを特徴とする請求項1記載の非円筒体の外周面の検査方法。
【請求項5】
検査対象としての非円筒体(1)内の筒方向の中心線(2)を回転中心として非円筒体(1)を回転させると共に、非円筒体(1)の外周面(3)を指向するカメラ(4)により外周面(3)の撮影範囲(S)を撮影し、カメラ(4)の撮影画像を画像処理部(5)の画像処理により外周面(3)を検査する非円筒体の外周面検査装置(10)において、
非円筒体(1)を支える回転テーブル(9)のテーブル軸(11)と、テーブル軸(11)を駆動する速度可変型の駆動モータ(12)と、中心線(2)と撮影範囲(S)の外周面(3)との距離(r)の変化に応じて第1テーブル(13)を合焦方向に移動させカメラ(4)を合焦距離(F)に保つ合焦調節手段(15)と、第1テーブル(13)上の第2テーブル(14)の上でカメラ(4)を支持し外周面(3)の撮影範囲(S)の点(p)を中心とする円弧状案内手段(17)にそってカメラ(4)を移動させ撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる指向方向調節手段(18)及び指向方向調節モータ(19)と、検査時に、予め測定した制御用のデータにもとづいて、駆動モータ(12)の回転速度(N)を制御して、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定とするとともに、合焦調節手段(15)によってカメラ(4)を合焦方向に移動させ、外周面(3)とカメラ(4)との間を合焦距離(F)に保ちながら、予め設定した指向角度(α)にもとづいて指向方向調節モータ(19)を駆動して指向方向調節手段(18)によって撮影範囲(S)内の外周面(3)の法線(6)上にカメラ(4)を移動させ、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる制御部(20)と、からなることを特徴とする非円筒体の外周面検査装置(10)。
【請求項6】
合焦調節手段(15)を、中心線(2)と撮影範囲(S)の外周面(3)との距離(r)の変化に応じて第1テーブル(13)を合焦方向に移動させる合焦調節モータ(16)により構成する、ことを特徴とする請求項5記載の非円筒体の外周面検査装置(10)。
【請求項7】
合焦調節手段(15)を、テーブル軸(11)に取り付けられ非円筒体(1)の断面と同じ輪郭のカム(33)と、第1テーブル(13)に取り付けられカム(33)の輪郭に接するカムフォロア(34)とからなるカム装置(32)により構成する、ことを特徴とする請求項5記載の非円筒体の外周面検査装置(10)。
【請求項8】
検査対象としての非円筒体(1)内の筒方向の中心線(2)を回転中心として非円筒体(1)を回転させると共に、非円筒体(1)の外周面(3)を指向するカメラ(4)により外周面(3)の撮影範囲(S)を撮影し、カメラ(4)の撮影画像を画像処理部(5)の画像処理により外周面(3)を検査する非円筒体の外周面検査装置(10)において、
非円筒体(1)を支える回転テーブル(9)のテーブル軸(11)と、テーブル軸(11)を駆動する速度可変型の駆動モータ(12)と、外周面(3)に接し非円筒体(1)を一定の回転速度(n)で回転させたときの外周面(3)の周速度(v)を測定する周速度検出器(21)と、外周面(3)と対向し中心線(2)から撮影範囲(S)の外周面(3)までの距離(r)を測定する距離計(22)と、中心線(2)と撮影範囲(S)の外周面(3)との距離(r)の変化に応じて第1テーブル(13)を合焦調節モータ(16)により合焦方向に移動させカメラ(4)を合焦距離(F)に保つ合焦調節手段(15)と、第1テーブル(13)上の第2テーブル(14)上でカメラ(4)を支持し外周面(3)の撮影範囲(S)を中心とする円弧状案内手段(17)にそってカメラ(4)を移動させ撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる指向方向調節手段(18)及び指向方向調節モータ(19)と、検査前に、非円筒体(1)を一定の回転速度(n)で回転させ、非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する外周面(3)の各点(p)での周速度(v)を周速度検出器(21)により測定し、回転速度(n)と周速度(v)との関係式から検査時における非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する回転速度(N)を決定しておくとともに、中心線(2)と非円筒体(1)の回転角度(θ)に対する撮影範囲(S)の外周面(3)との距離(r)を距離計(22)により予め測定しておき、検査時に、決定した回転速度(N)にもとづいて駆動モータ(12)の回転速度(N)を制御して、非円筒体(1)の撮影範囲(S)における外周面(3)の周速度(V)を一定とすると共に、測定した距離(r)にもとづいて合焦調節モータ(16)を駆動して合焦調節手段(15)によってカメラ(4)を合焦方向に移動させ、外周面(3)とカメラ(4)との間を合焦距離(F)に保ちながら、予め設定した指向角度(α)にもとづいて指向方向調節モータ(19)を駆動して指向方向調節手段(18)によって撮影範囲(S)内の外周面(3)の法線(6)上にカメラ(4)を移動させ、外周面(3)の撮影範囲(S)にカメラ(4)を指向させる制御部(20)と、からなることを特徴とする非円筒体の外周面検査装置(10)。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−107220(P2010−107220A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276759(P2008−276759)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(390010939)株式会社ロゼフテクノロジー (10)
【Fターム(参考)】