説明

非反応性粉末を利用した立体自由形状成形の方法とシステム

【課題】本発明は、三次元物体を精度良く、短い時間で形成できるシステムと方法を提供しようとするものである。
【解決手段】三次元の立体自由形状成形物体を作り出す方法は、基板上に非反応性粉末を分散し、その非反応性粉末の上に反応性粉末を選択的に分配して、反応性樹脂と非反応性粉末の混合物を作り、その選択的な反応性樹脂の分配で三次元物体が形成され、反応性樹脂が硬化して非反応性粉末をカプセル封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元の立体自由形状成形物体を作り出す方法とシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体自由形状成形(Solid freeform fabrication−SFF)は、それによって、三次元物体、例えば、試作部品類、模型類、工具類、生産部品類、成形物類、及びその他の物品類を製造するプロセスである。設計工程を自動化するためにコンピュータ支援設計(CAD)が通常利用される。適当なコンピュータを使用して、オペレータは、三次元の物品を設計し、次いで、所望の材料を選択的に放射する位置決め可能な放出ヘッドの使用によってその物体を作り出すことができる。上記の原理に従ってSFF物体を製造するために多くの方法が開発されてきたが、SFF物体製造には2つの方法、即ち、立体的物体を作り出す粉末/バインダの相互作用、及び立体的物体を作り出す噴射硬化性の光重合体の利用がこれまで好まれてきた。
【0003】
粉末/バインダ相互作用を使った成形方法は、粉末成分の上へバインダを選択的に堆積させるステップを包含する。堆積すると、粉末成分がバインダと反応して立体的物体を作り出す。多くの場合、粉末/バインダの相互作用は、粉末の重合体成分がバインダに存在している溶媒中で膨らむことに要約される。慣習的な粉末とバインダの相互作用方法を取り入れるためには、バインダと粉末は両方とも、結合時に化学反応するよう微細に調整されなければならない。このことが、使用し得る粉末とバインダの種類を制限することになる。加えて、この方法は、最終的に多孔質構造になりがちである。さらに、この方法では粉末/バインダの相互作用中の粉末成分の膨潤に起因して寸法精度が低下することがある。
【0004】
噴射光重合体の方法は、ディスペンサーから構築と支持材料の両方を基板上へ選択的に堆積させ、2つの材料が後で凝固させるステップを包含する。この方法では寸法精度は改善されるが、噴射光重合体の方法は、材料を一括処理で使う方法より時間がかかる。加えて、噴射光重合体のコストは、分配される材料の材料ディスペンサーと材料容器の両方が必要となるため高くなる。これらの噴射光重合体の技術では、構築材料と支持材料は両方とも材料ディスペンサーを通して噴射されねばならない。
【0005】
添付図は、本願のシステムと方法の様々な実施態様を示すものであって本明細書の一部分である。図示された実施態様は、単に本願のシステムと方法の実施例であって発明の範囲を限定するものではない。
【0006】
添付図面を通して、同一の参照番号は、必ずしも同一でないが、同様の要素を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、三次元物体を精度良く、短い時間で形成できるシステムと方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
三次元の立体自由形状成形物体を作り出す方法は、基板上に非反応性粉末を分散し、その非反応性粉末の上に反応性粉末を選択的に分配して、反応性樹脂と非反応性粉末の混合物を作り、その選択的な反応性樹脂の分配で三次元物体が形成され、反応性樹脂が硬化して非反応性粉末をカプセル封止する(encapsulate)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書で、粉末をベースとした立体自由形状成形用の反応性材料を吹き付ける方法と装置を記述する。より詳細には、一液型又は二液型バインダ又は樹脂が、様々な非反応性粉末の上に噴射され、硬化して三次元物体を作り出していく。
【0010】
本明細書並びに特許請求の範囲において用いられるとき、用語「バインダ」は、個別粒子を一緒に結合するか又は表面への付着を容易にするのに使用される任意の材料を意味するものとする。加えて、「基板」は、任意の構築プラットフォーム(build platform)、除去可能材料、又は先に堆積された反応性又は粉末材料を意味するものとする。「構築プラットフォーム」は、典型的には、SFF装置による堆積材料を支持するのに使用される硬質基板である。同様に、用語「硬化」は、材料を凝固して立体的な三次元物体を形成するプロセスを指すものとする。
【0011】
以下の記述においては、説明の目的で、個別の詳細を多数説明して、粉末をベースとした立体自由形式成形用の反応性材料を噴射する本願のシステムと方法を完全に理解できるようにする。しかし、これらの個別の詳細がなくても本方法を実施できることは当業者に明らかになろう。本明細書において、「一実施態様」又は「ある実施態様」についての引用は、その実施態様に関連して記述された特長、構造、又は特性が少なくとも1つの実施態様に包含されるということを意味する。本明細書の色々な場所で出てくる語句「一実施態様における」は、必ずしも同一の実施態様を全て参照するものではない。
【0012】
代表的な構造
図1は、粉末をベースとしたSFF用の反応性材料を噴射するという本方法を使った立体自由形状成形システム(100)を図示するものである。図1に示すように、立体自由形状成形システムは、成形ビン(110)、可動台(120)、多数の制御つまみとディスプレイを含む表示パネル(130)を具備している。
【0013】
図1に示した成形ビン(110)は、基板上に所望の三次元物体の構築ができ且つ構築を促進するように構成されている。所望の三次元物体の構築は、粉末を分散することと一又は二液型バインダを選択的に分配することを必要とするかもしれない。図1に示した立体自由形状成形システム(100)は、単一の自立−自蔵型の自由形状成形システムとして示されているが、本願の粉末ベースSFFシステム及び方法は、これらの自由形状成形システムの構造又は配置構成に関係なく、粉末をベースとした方法を利用する自由形状成形システムのどれにも取り入れることができる。
【0014】
図1に示した立体自由形状成形システム(100)の可動台(120)は、液体バインダ材料を分配できる任意数のインクジェット材料ディスペンサーを備えた可動式材料ディスペンサーである。可動台(120)は、演算デバイス(140)によって制御することができ、例えば、シャフト系、ベルト系、チェーン系、等によって移動を制御することができる。可動台(120)が動作すると、表示パネル(130)は、動作条件についてユーザに報告すると同時に、ユーザとやり取りをすることができる。所望の三次元物体が形成されると、演算デバイスが、可動台(120)の位置決めを制御し、成形ビン(110)内の予定位置で1つ以上のディスペンサーに指示を出して液体バインダ材料を制御して分配して、所望の三次元物体を形成することができる。立体自由形状成形システム(100)によって使用されるインクジェット材料ディスペンサーは、限定するものではないが、熱駆動インクジェットディスペンサー、機械駆動インクジェットディスペンサー、静電駆動インクジェットディスペンサー、磁気駆動ディスペンサー、圧電駆動ディスペンサー、連続インクジェットディスペンサー、等を含んだものでよく、この方法を実行できるよう構成された任意の方式のインクジェットディスペンサーでよい。加えて、粘性化学組成の分配を助けるため、インクジェットプリントヘッドディスペンサーを加熱してもよい。例えば、インクジェットプリントヘッドディスペンサーを、約200℃まで、好ましくは、70〜120℃の範囲で、加熱してもよい。図1のSFF装置の説明的な断面図を図2に示す。
【0015】
図2に示すように、演算デバイス(140)をサーボ機構(200)に連結して制御してもよい。演算デバイス(140)は、サーボ機構(200)に命令を伝達して可動台(120)を選択的に位置決めさせることができる。1つ以上のインクジェットディスペンサー(210)を、可動台(120)と多数の材料容器(図示されない)に連結することができる。サーボ機構(200)によって位置決めされると、インクジェットディスペンサー(210)は、材料容器から供給された反応性バインダ(220)を放出することができる。材料容器(図示されない)に貯蔵され、分配するためインクジェットディスペンサー(210)へ供給される反応性バインダ(220)は、約200℃以下の動作温度で「噴射可能な」粘性(<70cps)を有するものが選択される。他の好適な実施態様では、反応性バインダの粘性は、約100℃以下の動作温度で20cps以下のものが選択される。さらに、反応性バインダ(220)はまた、励起又は混合時にかなり速い反応速度(秒/分以内でゲル化)を有するものが選択される。これらの要件を満足する化学物質は、限定するものではないが、エポキシ類、ウレタン類、アクリレート類、シリコーン類、多価電解質類、及びそれらの誘導体を含んでいる。
【0016】
図2は、また、反応性バインダ(220)を受入れ、所望の三次元物体の形成を支援することができる本システムの構成も示す。図2に示すように、立体自由形状成形システム(100)の成形ビン(110)は、非反応性粉末(240)が置かれる基板(260)を備えることができる。非反応性粉末(240)は、粉末容器(非図示)からまとめた量を基板(260)の上に分配し、機械的ローラー(230)を使用して所望の厚さに平坦化することができる。機械的ローラー(230)は、サーボ機構(200)によって制御され、基板(260)上に非反応性粉末(240)を制御して堆積させ、平坦化することができる。基板上に分配された非反応性粉末(240)は、限定的ではないが、シリカ粒子、ガラス球、金属粉末、高分子粉末、セラミック粉末、磁性粉末などで、反応性バインダ(220)によって結合時に充填剤材料として作用することができる任意の非反応性粉末でよい。さらに、非反応性粉末(240)は、反応性バインダ(220)が非反応性粉末粒子(240)の表面を濡らし、非反応性粉末の膨潤又は分解を起こさせずに非反応性粉末粒子を反応性バインダに連結又は結合することができる任意の粉末又は粒子であってもよい。反応性粉末粒子の表面上で化学反応が生じると、反応性粉末を反応性バインダにさらに連結及び/又は結合させることができる。さらに、分配時に反応性バインダに十分連結及び/又は結合するよう、付着促進剤を使って非反応性粉末粒子を前処理してもよい。
【0017】
反応性バインダ(220)が非反応性粉末(240)の層に分配されると、基板(260)の上に反応性バインダ(220)と非反応性粉末(240)の混合物(250)が現れ、それが所望の三次元物体を形成する。次に、図2に図示した立体自由形状成形システム(100)を用いるシステムと方法を、図3〜図4Dを参照して以下に詳細に記述する。
【0018】
例示的な実施例と作動
図3は、1つの例示的実施態様に従って一液型反応性樹脂バインダを使った、図2に示した立体自由形状成形システム(図2の100)を作動させる、本願の方法を示したフローチャートである。本願のシステムと方法に使用される一液型バインダは、容器に貯蔵され、インクジェットディスペンサーによって放出される任意のバインダでよく、第二の材料を添加する以外の任意の手段で硬化すればよい。説明の簡略化のため、UV硬化樹脂を一液型バインダとして使った本願のシステムと方法を記述する。この樹脂を一定量の非反応性粉末(240)の中へ噴射し、その後にUV放射の印加によって硬化させてよい。図3に示したように、本願の方法は、所定量の非反応性粉末を成形ビンに分散且つ充填することから始まる(ステップ300)。必要な量の粉末が分散され且つ充填されると(ステップ300)、SFF装置は、新たに分散された非反応性粉末の層の中に樹脂を選択的に堆積させる(310)。樹脂の層が非反応性粉末中に噴射され終わると、SFF装置は、その樹脂/粉末混合物(図2の250)に超音波エネルギーを任意で印加して(ステップ320)、粉末の中で噴射樹脂が分散するのを促進することができる。オプションとして超音波エネルギーを印加すると、SFF装置は、堆積されている樹脂を紫外線(UV)放射の印加によって硬化させる(ステップ330)。あるいは、樹脂を各層の後で部分的に硬化させ、後続の層への付着を支援させてもよい。この代替実施態様に従い、幾つかのパス/層が完了し終わった後でだけ、硬化作業が完了されることになろう。UV放射の印加(330)後、所望の三次元物体を形成するための材料の分配作業が完了したと、オペレータ又は演算デバイスが判断した場合(YES、ステップ340)、樹脂滴がそれ以後発射されることはない。しかし、材料の分配作業が完了していない場合(NO、ステップ340)、オペレータ又は演算デバイスによる判断に応じて、SFF装置が、再度、所定量の非反応性粉末を分散且つ充填させることができ(ステップ300)、そのプロセスが再度実行される。次に、図4A〜図4Dを参照して上述の図3の各ステップを詳細に説明することにする。
【0019】
図3のフローチャートに示したように、本願の方法は、非反応性粉末の層を分散且つ充填することによって開始される(ステップ300)。図4Aから図4Dは、機械的ローラー(230)が基板(260)の上で非反応性粉末(400)の薄層をどのように分散し且つ充填するかを図示している。最初に、予め定められた量の非反応性粉末を、粉末容器(非図示)から基板上に堆積させる。堆積すると、機械的ローラー(230)が所定量の非反応性粉末を充填し且つ分散させる。機械的ローラー(230)が薄層を分散し且つ充填し終わった後で、基板上に残っている非反応性粉末(400)の量は、材料の堆積作業が実行されていない場合、機械的ローラー(230)と基板(260)の間の距離に対応する。同様に、多数の材料堆積作業が実行された場合は、ローラー作業後に基板上に残っている非反応性粉末(400)の量は、機械的ローラーがその分散及び充填作業を実行する時の機械的ローラー(230)と先に硬化された樹脂/粉末混合物(図2の250)との間の距離に対応する。機械的ローラーによって堆積される非反応性粉末の量は、サーボ機構(図2の200)によって調節され、インクジェットディスペンサー(210)の樹脂噴射割合に対応するよう最適化される。
【0020】
機械的ローラーによって非反応性粉末(400)の層が分散され且つ充填され終わると(図3のステップ300)、インクジェットディスペンサー(210)は、所定量の噴射樹脂を選択的に堆積することができる(ステップ310)。図4Bに示すように、可動台(120)及び従ってインクジェットディスペンサー(210)は、演算デバイス(図2の140)と非反応性粉末(400)に隣接したサーボ機構(200)とによって位置決めを制御することができる。CADのプログラムで指令されたような、所望の場所にあるときに、インクジェットディスペンサー(210)が始動し、一液型反応性樹脂(410)の予定量を分配する。
【0021】
図4Bに示すように、一液型反応性樹脂(410)がインクジェットディスペンサー(210)によって非反応性粉末(400)の層の上に分配されると、一液型反応性樹脂が非反応性粉末(400)の表面に分散してこれを濡らす。この反応性樹脂(410)と非反応性粉末(400)の混合物(420)が所望の三次元物体の断面積を形成することになる。一液型反応性樹脂(410)と非反応性粉末(400)の混合物(420)によって、粉末と樹脂が相互に完全に反応するシステムで生ずる多数の寸法精度上の問題が避けられる。本願のシステムと方法により、所望の三次元物体の寸法精度が維持される。何故なら、非反応性粉末(400)は、一液型反応性樹脂(410)が存在すると分解、膨潤又は変形しないからである。十分な量の一液型反応性樹脂(410)が非反応性粉末(400)の層の上に堆積されて、非反応性粉末の指定部分を濡らしたとき、可動台(120)は「運動」矢印で示したように、非反応性粉末の他の領域上へ一液型反応性樹脂(410)を選択的に堆積すべく移動する。
【0022】
本願のシステムと方法で製作される三次元物体の強度は、一液型反応性樹脂(410)と非反応性粉末(400)との間で生ずる「相互作用」(又は湿潤)の量によって影響されることがある。2つの材料の相互作用(並びに反応性樹脂による非反応性粉末の表面の濡れ)は、これに限るわけではないが、一液型反応性樹脂(410)の粘性を含む多数の因子に依存することもある。図3に示したように、一液型反応性樹脂(410)と非反応性粉末(400)の混合物(420)に超音波エネルギーを印加するというオプションのステップを実行してもよい(図3のステップ320)。超音波変換器(非図示)又はその他の類似素子がSFF装置(100)の一部を形成して、超音波エネルギーを与えるようにしてもよい。超音波エネルギーの印加によって、2つの材料の相互作用が促進されることになろう。
【0023】
同様に、一液型反応性樹脂の粘度は、インクジェットディスペンサー(210)の温度を上げることにより低下させることができる。インクジェットディスペンサー(210)の温度を制御できると、冷却時に三次元物体のより望ましい機械的諸特性を保証できる、より粘度の高い比較的高分子量の液体の混合を可能にする。しかし、インクジェットディスペンサー(210)の温度は、当該樹脂の蒸発温度、分解温度、又は熱活性化温度を越えてはならない。
【0024】
一液型反応性樹脂(410)と非反応性粉末(400)の混合物(420)が十分に「相互作用」し終わると、一液型反応性樹脂は、紫外線(UV)又はその他の放射エネルギーの印加によって硬化させることができる(図3のステップ330)。UV(又はその他の)放射エネルギー(440)が一液型反応性樹脂(410)に印加されると、その付加エネルギーが重合を開始させ、一液型反応性樹脂(410)の急速硬化をもたらす。一液型反応性樹脂(410)が硬化するにつれ、その反応は、一液型反応性樹脂(410)の液相においてのみ実行され、非反応性粉末(400)では実行されない。一液型反応性樹脂(410)が硬化するにつれ、硬化した樹脂が非反応性粉末(400)をカプセル封止(encapsulate)して樹脂/粉末の複合体マトリックス(450)を形成する。
【0025】
UV放射エネルギー(440)は、UV放射アプリケーター(430)によって混合物(420)の1つもしくは多数の層へ供給することができる。UV放射アプリケーターは、紫外線(UV)又はその他の放射エネルギーを印加して一液型反応性樹脂(410)に重合を十分開始させることができるよう構成された任意の装置でよい。図4Cに示すように、放射アプリケーター(430)は、一液型反応性樹脂(410)が堆積された後で、堆積された樹脂の全ての又は選択された部分を投光照射できるよう構成された個別の光照射器又は走査ユニットであってよい。あるいは、放射アプリケーター(430)を走査ユニットとして可動台(120)に連結してもよい。さらに、熱エネルギー又は、限定するものではないが、触媒を含む硬化処理を増進する任意の添加物の付加によって、一液型反応性樹脂の重合及びその急速硬化をさらに促進してもよい。
【0026】
一液型反応性樹脂(410)と非反応性粉末(400)の混合物(420)の層が十分に「相互作用」し終わると、演算デバイス(図2の140)は、立体自由形状成形システム(図2の100)が所望の三次元物体を形成する材料分配作業(図3のステップ340)を終了したかどうかを判定することになる。所望の三次元物体(図4Dの450)を構築するべく樹脂/粉末の複合体マトリックス(450)の必要な層が形成され終わると、演算デバイス(図2の140)は、材料分配作業が完了されたかどうかを判定し(YES、ステップ340)、立体自由形状成形システム(図2の100)がその材料分配作業を終了する。しかし、演算デバイスが、樹脂/粉末の複合体マトリックス(450)全体が形成されていない(NO、ステップ340)と判定する場合は、立体自由形状成形システム(図2の100)は、非反応性粉末(ステップ300)の別の層を分散・充填して当該プロセスを再開する。
【0027】
あるいは、多数の添加物を一液型反応性樹脂(410)又は非反応性粉末(400)のいずれかに含めてもよい。形成中の三次元物体(図4Dの450)に色を取り入れるために、一液型反応性樹脂(410)を所望の色に染めてもよい。十分な種類の色を生ずることができる立体自由形状成形システム(図2の100)を実現するには、3又は4個の個別容器をインクジェットディスペンサー(210)に連結してもよい。その3又は4個の個別容器が、シアン、イエロー、マゼンタ、そして、多分、透明又はブラックに染められた所定量の一液型反応性樹脂(410)を収容してもよい。あるいは、任意数の着色された反応性樹脂(410)を含んでいる任意数の個別容器を備えたインクジェットディスペンサー(210)を使って本願のシステム及び方法を実行してもよい。
【0028】
同様に、三次元物体(図4Dの450)の機械的強度を上げるために、一液型反応性樹脂(410)又は非反応性粉末(400)に結合剤を付加してもよい。三次元物体の機械的強度を上げるために用いることができる結合剤は、限定するものではないが、噴射された多価電解質バインダと相互作用できる粉末表面上の荷電基又はガラス、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、金属酸化物及び/又は多くの金属粉末を高分子バインダへ結合できるシラン結合剤を含んでおり、非反応性粉末(400)と一液型反応性樹脂(410)を相互に化学的に結合するのに使用できる任意の材料でよい。
【0029】
本願のシステムと方法を使うと、硬化処理中に一液型反応性樹脂(410)と非反応性粉末(400)が相互作用しないので、在来方法より優れた三次元精度が実現される。より詳細には、本願のシステムと方法における反応は、液体バインダで専ら起こるだけなので、所望の三次元物体を形成時に構成物質(constituent)の膨潤、分解、又は再堆積がない。この膨潤及び分解が起こらないということが、結局、機械的諸特性の改善、形成された物体中の多孔度性の低下、及び形成物体の寸法精度の向上になるのである。
【0030】
代替実施態様
図5は、二液型樹脂材料を取り入れている好例の代替実施態様に従って、本願のSFFの方法とシステムを実行するための方法を図解したものである。図5に示した実施態様は、説明の容易化のため、二液型樹脂材料を取り入れているSFFの方法とシステムで記述されているが、本願のシステムと方法は、二液型樹脂材料に限定されるものではなく、任意数の樹脂材料を使って実施することができる。
【0031】
図5に示したフローチャートに従い、好適な方法は、所定量の非反応性粉末の分散及び充填によって開始される(ステップ500)。非反応性粉末が分散され終わると(ステップ500)、インクジェットディスペンサーが、非反応性粉末の上に二液型噴射樹脂を選択的に堆積する(ステップ510)。噴射樹脂と非反応性粉末との相互作用を促進するために超音波エネルギーを印加するというオプションのステップ(ステップ520)を、堆積された樹脂の硬化前又は硬化中(ステップ530)に実行してもよい。図3において図示した方法と同様、堆積樹脂が硬化すると(ステップ530)、演算デバイスは、SFF装置が材料分配作業を終了したかどうかを判定することができる。もし終了であれは(YES、ステップ540)、SFFシステムは、二液型噴射樹脂を選択的に分配することを止める。しかし、SFFシステムがその材料分配作業を終了していないと演算デバイスが判断した場合(NO、ステップ540)、同装置は、所定量の非反応性粉末を、再度、分散し充填する。次に、図6A〜図6Dを参照して、図5に示したプロセスをさらに詳しく説明する。
【0032】
図5に示したように、所望の三次元物体を形成するための代替的な方法は、機械的ローラー(図6Aの230)を使って開始され、基板上に一定量の非反応性粉末を分散し且つ充填する(ステップ500)。図6Aに示すように、機械的ローラー(230)は、基板(260)上又は、既に説明した先に堆積された樹脂/粉末の混合物の上に様々な量の非反応性粉末(600)を分散し且つ充填することができる。
【0033】
所定量の非反応性粉末(600)が基板(260)上に分散・充填され終わると、可動台(120)がその非反応性粉末の上へ二液型噴射樹脂を選択的に堆積することができる(図5のステップ510)。図6Aに示すように、可動台(120)は、二液型噴射樹脂の各部に1個ずつの、複数のインクジェットディスペンサー(610、615)を具備してもよい。二液型噴射樹脂の各成分(605、625)は、単一のプリントヘッドの別々の通路を通して送り込んでもよいしか又は個別のプリントヘッドを通して送り込んでもよい。図6Bは、さらに詳しく、二液型噴射樹脂の分配を図示するものである。図示したように、複数のインクジェットディスペンサーが、それぞれ、二液型樹脂(630)の単一成分(605、625)を非反応性粉末(600)の上へ分配することができる。あるいは、単一のインクジェットディスペンサーが、二液型樹脂(630)の1つの成分(605、625)をそれぞれ分配できるよう構成された、複数の分配用オリフィスを具備していてもよい。
【0034】
図6Bは、三次元物体を作り上げるため、二液型樹脂の2つの成分(605、625)が非反応性粉末(600)に選択的に、各層へは同時に供給されているところを図示したものである。しかし、二液型樹脂(630)の2成分(605、625)を、限定するものではないが、非反応性粉末(600)の各層に互い違いに2成分を供給する方法を含んだ、多数の異なった方法で非反応性粉末(600)へ供給してもよい。二液型樹脂(630)は、二液型エポキシ樹脂、二液型多価電解質系、又は二液型UV硬化性アクリレートのような、接触すると反応する2つの成分を含んでもよい。二液型樹脂(630)の2成分(605、625)を分配する方法とは関係なく、2つの成分(605、625)間の混合レベル及び当該成分と非反応性粉末(600)の間の混合レベルを高めることで、三次元物体の強度が改善される。
【0035】
二液型噴射樹脂が堆積されると(図5の、ステップ510)、超音波エネルギー又はその他の適当な方法を採用して二液型噴射樹脂(ステップ520)の2成分(605、625)の混合を助長させることができる。混合を助長させる適当な方法は、限定するものではないが、2成分のそれぞれの粘度、混和性、及び混合時の反応速度を含んだ、2成分(605、625)の諸特性に依存するであろう。
【0036】
二液型噴射樹脂(630)の2成分(605、625)が混合されると、非反応性粉末の追加層が分散及び充填(ステップ300)される前に、少なくとも部分的に硬化していく。2成分(605、625)は、望まれる三次元物体の次の層が急速に製造されるようにかなり速い反応速度(数秒以内の硬化)を有するものから選択される。二液型噴射樹脂の硬化処理は、UV放射エネルギー、熱エネルギー、又は限定するものではないが、触媒を含んだ、硬化プロセスを強めることができる任意の添加剤の付加によって増進させることができる。図6Cに示すように、時間が経過するにつれ、矢印で示されるように二液型噴射樹脂(630)が硬化して、非反応性粉末(600)をカプセル封止した樹脂/粉末の複合体マトリックス(640)が形成される。
【0037】
堆積樹脂の硬化中(ステップ530)及び/又は硬化後に、演算デバイスは、立体自由形状成形システム(図2の100)が材料分配作業を終了したかどうかを判定してもよい(ステップ540)。必要とされる樹脂/粉末の複合体マトリックス(640)層が形成されて、図6Dに示したような所望の三次元物体(640)を構築し終えたら、演算デバイス(図2の140)は材料分配作業が完了したことを判断し(YES、ステップ540)、立体自由形状成形システム(図2の100)はその材料分配作業を終了して、未結合粉末が取り除かれることになる。しかし、演算デバイスが、樹脂/粉末の複合体マトリックス(640)が未だ形成され終わっていないと判断した場合(NO、ステップ540)、立体自由形状成形システム(図2の100)が別な所定量の非反応性粉末を分散・充填して(ステップ500)プロセスが再開される。
【0038】
図3に示した実施態様と同様、図5に示した代替実施態様は、形成中の三次元物体(図6Dの650)に色を取り入れられるよう構成してもよい。しかし、図5に示した好適な代替実施態様に従い、二液型噴射樹脂(630)の1つの又は両方の成分(605、625)を1つ以上の所望の色に染めてもよい。加えて、代替実施態様に用いられた二液型噴射樹脂(630)又は非反応性粉末(400)に結合剤を添加して、得られる三次元物体の機械的強度を高めてもよい。
【0039】
上述の二液型噴射樹脂(630)は、一般に、反応性構築材料と硬化剤又は放射開始剤に分けることができる。二液型噴射樹脂は、限定するわけではないが、二液型反応性樹脂又は二液型UV硬化性樹脂を含んだものでよい。選択できる二液型噴射樹脂の材料の代表的実施態様を以下に説明する。
【0040】
二液型反応性樹脂
1つの好適な実施態様に従うと、二液型噴射樹脂の反応性構築材料は、エポキシであってよく二液型噴射樹脂の硬化剤は、エポキシ基と反応してそのエポキシド環構造(群)を開く物質であってよい。この場合エポキシド環と反応できる官能基の例は、アミノ基、ヒドロキシル基、及びカルボキシル基である。一実施態様において、反応性構築材料はエポキシであってよく硬化剤は、そのエポキシと反応して凝結組成を生成する、4個の活性水素原子を有する分子を含んでよい。さらに、少なくとも6個の又は8個以上もの活性水素原子が存在できる。硬化剤のエポキシ分子間の共有架橋結合は、硬質で強靭な両機械的特性を有する立体三次元物体を形成することができる。ビスフェノール含有のエポキシ樹脂も硬化剤としてのアミンと共に反応性構築材料として用いることができる。使用し得る幾つかの典型的なアミン硬化剤には、テトラエチレンペンタミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンポリアミン類、ジエチレントリアミン、2,2,4トリメチル−1,6ヘキサンジアミン、及び脂肪族アミンがある。硬化剤の種類として、幾つかを挙げれば、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン、ポリアミン、オリゴアミン、ポリイミン、ポリアミド、アミドアミン、二シアンアミド、アルコールアミン、カルボン酸の無水物、ダイマー及びトリマーを含むカルボン酸、及び多官能性アルコールが含まれる。n−ブチルグリシジルエーテル、1,4ブタンジオールジグリシジルエーテル、及びアルキルグリシジルエーテルのような、ある種のエーテルもエポキシ樹脂と共に含有させることができる。さらに、多数の市販製品もエポキシ樹脂及びアミン硬化剤の二液型化学薬品として利用でき、それらには、Emerson and CummingsからのStycast W19/Catalyst 9、Epo−TekからのOG205及び301、VanticoからのRen Infiltrant xi580、及びDowからのDER324(エポキシ樹脂)、DER732(エポキシ樹脂)、DEH29(アミン硬化剤)及び/又はDEH58(アミン硬化剤)、等が含まれる。
【0041】
追加実施態様において、反応性構築材料はポリイソシアナートを含むことができ、硬化剤はポリシアナートと反応させてポリウレタンの凝結組成を形成するためのポリオールを含むことができる。例えば、ポリウレタンの凝結組成を形成するのに市販製品のSynair Por−a−mold 2030を用いて本願のシステムと方法の実施態様に従って非反応性粉末をカプセル封止してもよい。その他の実施態様においては、反応性構築材料は、イソシアナート又はポリイソシアナートの誘導体を含むことができ、硬化剤は、凝結組成を形成するのにアルコール類又はポリオール類を含むことができる。
【0042】
さらに別の好適な実施態様では、反応性構築材料は、エポキシ−官能基化シリコーンのような、官能基化シリコーンを含むことができる。その硬化剤は反応性部分と官能基化シリコーンの官能性を有する組成を含んでもよく、且つエポキシ反応性構築材料に関してここに記載した1つ以上の硬化剤を含んでよい。あるいは、エポキシを含んでいるNH及びOHと反応させるのにシリコーン基体の硬化剤を用いてもよい。さらに、*−Si−O−*型の骨格を有する組成を用いることができ、且つ*−C−*結合に基づく組成よりたわみ性を持つように組成を構成してもよい。
【0043】
さらに別の実施態様では、反応性構築材料は不飽和官能性を有するプレポリマーを含むことができ、硬化剤は、アルキル−又はアリール−ペルオキシド又はヒドロペルオキシドのようなフリーラジカル硬化の硬化剤を含むことができる。不飽和型のプレポリマーの例は、アクリレート、多官能性アクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、及びシリコーンアクリレートを含む。硬化剤の例は、メチルエチルケトンペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、等のようなペルオキシド開始剤を含むことができる。比較的低酸化状態の芳香族アミン及び遷移金属塩のようなプロモーターを用いてフリーラジカル硬化剤にラジカルを生成することができる。使用し得る芳香族アミンの例は、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、ジメチルアセトアミド、等を含む。使用し得る遷移金属塩の例は、ナフテン酸コバルト又はコバルトオクトエイト(cobalt octoate)を含む。コバルトプロモーターと共に、特に急速硬化が望まれるときは、メチルエチルケトンのようなペルオキシド開始剤と共に、アミンプロモーターを用いることもできる。この実施態様は、不飽和プレポリマーのフリーラジカル重合によって凝結組成を形成することができる。フリーラジカル開始剤を使用するときは考慮すべき考え方が幾つかある。ペルオキシドのようなフリーラジカル開始剤、及びアミン及び金属塩のようなプロモーターは、混合すると直ぐに反応するので、噴射前は同一の相であってはならない。それ故、一実施態様においては、プロモーターを構築材料相(不飽和プレポリマー)に割り当てることができ、ペルオキシドを硬化剤として噴射させることができる。
【0044】
二液型UV硬化性樹脂
二液型反応性樹脂の代替例の1つは、上に説明したシステムと方法に二液型UV硬化性樹脂を取り入れることである。上述のように、二液型UV硬化性材料の2成分は、限定するものではないが、UV開始剤と構築材料を含むことができる。
【0045】
1つの好適な実施態様として、UV開始剤は、1つ以上の溶媒、例えば、限定するものではないが、比較的低分子量の脂肪族及び芳香族炭化水素のような不活性な揮発性溶媒、揮発性アルコール、エーテル、及びエステル、及び高沸点可塑剤(ジブチルフタラート)、等、に溶解させることができる。その溶媒は、数層を堆積するのに必要な時間内に急速に蒸発するか、又は硬化された二液型放射材料内に無期限に長く十分留まれるほど非揮発性であることが極めて望ましい。前述した実施態様では、構築プラットホーム20の上へ分配される構築材料の容積に対する放射開始剤の容積は、構築材料100に対して放射開始剤が約1であるべきであるが、幾つかの実施態様では、構築材料10に対して放射開始剤1であってもよく、また、構築材料と放射開始剤が同量であってもよい。
【0046】
代替実施態様として、放射開始剤は、限定無するものではないが、低分子量の単官能アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレート(例えば、アリルメタクリレート、イソデシルアクリレート及びメタクリレート、イソオクチルアクリレート)、ヒドロキシアルキルアクリレート及びメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、グリシジルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、等のような、低反応性モノマー/低粘性モノマーのような溶媒中で溶解させることができる。特に、単官能性モノマーは、多くの場合において、二官能性及び三官能性モノマーより優れた安定性をもたらし且つ架橋結合しにくいという理由から、放射開始剤を溶解するのに単官能性モノマー溶媒が好まれている。加えて、低粘性モノマーは、その混合物を比較的低温で溶解できる故、放射開始剤に使われる溶媒として好まれている。これらの実施態様では、その溶媒は、重合反応に関与し多部分放射硬化性材料の部分となるものである。前述した実施態様では、構築サポート20の上へ分配される構築材料の容積に対する放射開始剤の容積は、構築材料100に対して放射開始剤が約10〜100であるべきであるが、一方、その他の場合においては、構築材料100に対して放射開始剤が約50であってもよい。一般に、放射開始剤と構築材料は、薬品が約200℃を下回る温度で70cps未満の粘度(即ち、噴射可能粘度)を有し、好ましくは、約100℃を下回る温度で20cps未満の粘度を示す特性を有する。加えて、放射開始剤と構築材料は、約100℃を下回る温度で約5秒乃至10分以内で反応して「不粘着」層を形成しなければならない。好ましくは、放射開始剤と構築材料は、約60℃を下回る温度で約5秒乃至1分以内で反応して「不粘着」層を形成しなければならない。「不粘着(tack free)」は、架橋/連鎖成長反応が進行して生ずる材料が触ってももはや粘着しないような点として定義される。それは、硬化/連鎖成長が完了したことを意味するものではない。
【0047】
一般に、放射開始剤及び/又は構築材料は、その他の化学成分、例えば、限定するものではないが、着色剤(例えば、染料、顔料、インク)、分散剤、及び多部分放射硬化性材料の反応時間を最適化して硬化速度と層対層の付着の適当なバランスを得るための触媒、等を含んでもよい。UV開始剤は、限定するものではないが、フリーラジカル開始剤、陽イオン開始剤、又はそれらの組合せのような化学物質を含んでもよい。フリーラジカル開始剤は、UV放射に曝されるとフリーラジカルを生ずるところの化合物を含む。当該フリーラジカルは、重合反応を開始させることができる。代表的なフリーラジカル開始剤は、限定するものではないが、ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、Michlerのケトン、及びキサントン類)、アクリルホスフィンオキシド型フリーラジカル開始剤(例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TMPO)、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(TEPO)、及びビスアクリルホスフィンオキシド類(BAPO))、アゾ化合物(例えば、AIBN)、ベンゾイン及びベンゾインアルキルエーテル類(例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル)を含む。フリーラジカル開始剤は、単独でもしくは共開始剤と組合せて用いることができる。共開始剤は、UV系において活性であるラジカルを生ずるのに第二分子を必要とする開始剤に関して用いられるものである。例えば、ベンゾフェノンは、反応性ラジカルを生ずるのに、アミンのような、第二分子を利用する。共開始剤の好ましい種類は、限定するものではないが、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンのような、アルカノールアミン類である。適当な陽イオン開始剤は、限定するものではないが、重合を開始させるのに十分なUV光線に曝されると非プロトン性の酸又はブレンスデッド酸を生成する化合物を含む。使用される陽イオン開始剤は、単一化合物、2つ以上の活性化合物の混合物、又は2つ以上の異なった化合物(例えば、共開始剤)の組合せであってよい。代表的な陽イオン開始剤は、限定するものではないが、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、及びトリアリールセレニウム塩を含む。
【0048】
UV構築材料は、限定するものではないが、アクリル系化合物、1つ以上のエポキシ置換基、1つ以上のビニルエーテル置換基を有する化合物、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、ウレタン、及びそれらの組合せのような化合物を含むことができる。特に、これらの化合物のモノマーは、構築材料として用いることができる。加えて、これらの化合物のオリゴマーは、それらの高粘度のために以前には考えられなかったかも知れないものであるが、当該構築材料として利用することができる。この点に関して、高い粘度範囲のため比較的高分子量の構築材料を使って開始することが可能となり、最終的な三次元物体におけるより優れた機械的諸性質(例えば、材料の硬さ/柔軟性及び強度、及び衝撃耐性)となることがある。当業者は、所望の特定用途の機械的諸性質を満足する構築材料を選択することができよう。構築材料に使われる適当なアクリル系化合物は、限定するものではないが、アクリル系モノマー、アクリル系オリゴマー、アクリル系架橋剤、又はそれらの組合せを含むことができる。アクリル系モノマーは、単官能性アクリル化分子であり、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルであってよい。アクリル系オリゴマー(オリゴマーは短いポリマー鎖である)は、アクリル化分子であり、限定するものではないが、アクリル酸及びメタクリル酸と多価アルコールのポリエステル(例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エチレングリコール、プロピレングリコールのポリアクリレート及びポリメタクリレート)を含むことができる。加えて、アクリル系オリゴマーは、ウレタン−アクリレートであってもよい。
【0049】
アクリル系架橋剤は、増大した架橋結合を形成する、多官能性分子である。アクリル系架橋剤の例には、限定するものではないが、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオール>ジメタクリレート、1,6−ヘキサメチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタ−エリトリトールトリメタクリレート、トリエチレングリコールトリアクリレート、トリエチレングリコールトリメタクリレート、ウレタンカクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及びウレタンメタクリレートが含まれる。
【0050】
構築材料は、限定するものではないが、少なくとも1つのビニルエーテル基を有するビニルエーテルモノマー及びオリゴマーのような1つ以上のビニルエーテル置換基を有する化学物質であってもよい。代表的なビニルエーテルは、限定するものではないが、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、及び1,4シクロヘキサンジメタノールジビニルを含む。
【0051】
構築材料は、限定するものではないが、少なくとも1つのオキシラン部分を有するエポキシモノマー及びオリゴマーのような1つ以上のエポキシ置換基を有する化学物質も含むことができる。エポキシ含有の構築材料の例には、限定するものではないが、ビス−(3,4シクロヘキシルメチル)、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ジグリシジルエーテルビニルシクロヘキサン、1、2エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、2,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクルヘキサンカルボキシレート、等が含まれる。好ましくは、構築材料は、限定するものではないが、アクリレート及びその誘導体、エポキシアクリレート及びその誘導体、ウレタンアクリレート及びその誘導体、及びそれらの組合せのような化学物質を含む。加えて、構築材料は、室温での高粘性のため、その他の方法では、インクジェット技術を利用する立体自由形状成形プロセスから除外されるかも知れない、材料も含むことができる。これらの構築材料は、限定するものではないが、エトキシル化アクリレート、メタクリレート(例えば、25℃で約100cpsの粘度を有する、エトキシル化ノニルフェノールアクリレート(Sartomer Inc.,SR504)、25℃で約80cpsの粘度を有するところの、エトキシル化ノニルフェノールエタクリレート(Sartomer Inc.,CD612)、25℃で約80cpsの粘度を有するところの、エトキシル化ビスフェノールジメタクリレート(Sartomer Inc.,SR480))、25℃で約80cpsの粘度を有する、カプロラクトンアクリレート(Sartomer Inc.,SR495)、等を含むことができる。加えて、当該構築材料は、限定するものではないが、モノマー及びオリゴマーのような高粘度材料、例えば、エトキシル化ビスフェノール−A ジメタクリレート化合物(例えば、Sartomer Inc.,SR348(25℃において1082cps)、Sartomer Inc.,SR9036(25℃において610cps)、Sartomer Inc.,CD541(25℃において440cps)、Sartomer Inc.,SR480(25℃において410cps)、及びSartomer Inc.,CD540(25℃において555cps))、エトキシル化ビスフェノール−A ジアクリレート化合物(例えば、Sartomer Inc.,SR601(25℃において1080cps)、Sartomer Inc.,SR602(25℃において610cps)、CD9038(25℃において680cps)、及びSartomer Inc.,SR349(25℃において1600cps))、ペンタエリトロールトリアクリレート化合物(例えば、Sartomer Inc.,SR344(25℃において520cps))、及びエトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート化合物(例えば、Sartomer Inc.,SR415(25℃において225−520cps)、等を含むことができる。
【0052】
可視光開始剤は、限定するものではないが、カンファーキノン、1,2−アセナフチレンジオン、1H−インドール−2,3−ジオン、5H−ジベンゾ〔a,d〕シクロヘプテン−10,11−ジオンのような)α−ジケトン類、フェノキサジン染料(Resazurin,Resorufin)、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホウスフィンオキシドのようなアシルホスフィンオキシド、等を含むことができる。
【0053】
最後に、本願の立体自由形状成形システムと方法は、高度の寸法精度を維持しながら三次元物体の迅速な製造を効率的に可能にするものである。より詳細には、本願のシステムと方法は、所望の三次元物体を形成するべく非反応性の粉末をまとめて分散して、一液又は二液型反応性樹脂の堆積を可能にするものである。反応性樹脂と非反応性粉末の組合せは、液体樹脂部分に対する反応を包含する。結果として、製造された三次元物体は、反応の抑制によって膨潤、分解、及び再析出が妨げられるため、在来の方法で製造されたものより優れた機械的諸特性を示すであろう。従って、形成された物体の寸法精度も改善される。さらに、本願の方法とシステムは、粉末をまとめて供給して、支持構造を形成する必要性を排除することによって三次元物体を高速製造することができる。非反応性粉末中に単一樹脂を専ら堆積させるだけで立体自由形状成形システム設計の複雑さが低減されるため、立体自由形状成形システムのコストも本願のシステムと方法によって低減することができるのである。
【0054】
前出の記述は、発明の実施態様を説明し且つ記述するために提示したに過ぎない。本発明を網羅的に開示しようとするものでもなく又は限定するものでもない。多くの修正及び変形は、上記教示から可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本願のシステムと方法の典型的な実施態様を実行するのに使用し得る立体自由形状成形システムの斜視図である。
【図2】本願のシステムと方法の典型的な実施態様を実行するのに使用し得る立体自由形状成形システムの断面図である。
【図3】1つの代表的な実施態様に従って一液型反応性材料を使用して本願の方法を達成するための方法を示すフローチャートである。
【図4A】1つの代表的実施態様による本願の方法によって使用し得る粉末を示す断面図である。
【図4B】1つの代表的実施態様による1部反応性材料の堆積を示す断面図である。
【図4C】1つの代表的実施態様による1部反応性の系に対する紫外(UV)線の印加を示す断面図である。
【図4D】本願の方法によって形成された物体を1つの代表的実施態様によって未結合粉末が除去された状態で示す断面図である。
【図5】1つの代表的な実施態様に従って二液型反応性材料を使用して本願の方法を達成するための方法を示すフローチャートである。
【図6A】1つの代表的実施態様による本願の方法によって使用し得る粉末を示す断面図である。
【図6B】1つの代表的実施態様による2部反応性材料の堆積を示す断面図である。
【図6C】1つの代表的実施態様によって2部反応材料を分配するための代替方法を示す断面図である。
【図6D】本願の方法によって形成された物体を1つの代表的実施態様によって未結合粉末が除去された状態で示す断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に非反応性粉末を分散するステップと、
前記非反応性粉末へ二液型UV硬化性樹脂の2つの成分を選択的に分配するステップと、
前記2つの成分と前記非反応性粉末を混合して、前記三次元物体を作り出す混合物を形成するステップと、
前記2つの成分にUVを印加して、前記非反応性粉末をカプセル封止するステップとを有することを特徴とする、非反応性粉末を使って三次元の立体自由形状成形物体を作り出す方法。
【請求項2】
前記2つの成分は、UV開始剤と構築材料を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記UV開始剤は、UV放射に曝されると重合反応を開始するフリーラジカル開始剤を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記UV開始剤は、不活性な揮発性溶媒に溶解させていることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記構築材料は、3次元物体の機械的性質を決めるアクリル系化合物を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記UV開始剤と前記構築材料は、前記非反応性粉末に選択的に、同時に供給することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記UV開始剤と前記構築材料は、前記非反応性粉末に選択的に、互い違いに2つの成分を供給することを特徴とする、請求項2に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate


【公開番号】特開2009−107352(P2009−107352A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8783(P2009−8783)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【分割の表示】特願2004−236399(P2004−236399)の分割
【原出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】