説明

非同期ネットワークを用いた電波送信システム及び電波同期送信方法

【課題】非同期ネットワークで接続した複数無線基地局から電波を同期させて送信する。
【解決手段】中央指令局と無線基地局とを非同期ネットワークで接続したシステムにおいて、音声信号を非同期ネットワークへ伝送できる形式に変換する第1の信号変換装置、音声データを無線機へ伝達できる形式に変換する第2の信号変換装置、基準時間設定装置に同期するサーバ装置、サーバ装置に同期するクライアント装置を設ける。中央制御装置を基準時間設定装置に同期させ、第1の信号変換装置をサーバ装置に同期させると共に、第2の信号変換装置をクライアント装置に同期させる。これにより、中央制御装置及び第1の信号変換装置に対し、各無線基地局ごとに設けられる複数の第2の信号変換装置が実質的に同期するので、各無線基地局の無線機における情報データを乗せた電波の送信タイミングを同期させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線基地局から情報データを乗せた電波を送信するためのシステム及び送信方法に関し、無線基地局をイーサネット等の非同期ネットワークを介して接続した場合に、中央制御装置から送出される情報データを、各無線基地局の無線機から電波送信する際のタイミングを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道において、中央指令局と列車乗務員との間で無線方式で通話する場合、鉄道沿線に適宜間隔で複数の無線基地局を設置し、中央指令局から送出される音声信号を、各無線基地局の無線機から電波に乗せて列車へ向けて送信する。これにより、各無線基地局
を最適に配置することにより、電波強度が路線全域にて充分に確保され、走行中の列車に搭載した無線機で、無線基地局から電波送信される音声信号を取得することが可能となっている。なお、列車乗務員から中央指令局の司令員に対する応答は、車上の無線機から送信した電波を、列車の至近にある無線基地局が受信し、これを中央指令局へ伝送することにより可能である。
【0003】
前述の電波送信システムにおいて、複数の無線基地局から電波を送信するタイミングはできるだけ同時であることが望ましい。何故なら、無線基地局によって電波の送信タイミングが異なった場合、列車無線機に位相の異なる電波が到達することになり、電波どうしの相互干渉が発生して音声品質の低下を招くからである。また、音声以外の情報データを電波送信する場合は、上記電波干渉によって、ビット誤りを引き起こすおそれがある。
【0004】
そこで、複数の無線基地局から電波を送信するタイミングを同期させるための手法として、従来、中央指令局と各無線基地局間とを結んでいる信号ケーブル及び信号増幅用アンプ装置において発生する遅延量をあらかじめ計測しておき、無線基地局ごとに補正値を設定することにより、システム全体で電波が同時に送信されるよう調整することが行なわれている。あるいは、中央指令局及び無線基地局間を、例えばISDN等の同期回線で接続し、中央指令局から各無線基地局へ音声信号が伝達するのを同時化する手法が採用されている。その他、無線通信をTDMA等の時分割多重化アクセス方式により行い、電波干渉を回避する手法も提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−12150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の無線基地局からの電波送信タイミングを同期させるための遅延量を補正する従来手段は、補正値の設定を手動で行なうものであり、機器の調整が困難であるため、現実的には単一の補正値を仮定して導入することが多い。従って、実際には、システムにおける電波の送信タイミングが同期しておらず、前記問題点は解決されていない。
ISDN等の同期回線を用いて中央指令局及び無線基地局間を接続する手法や、TDMA方式を採用する手法は、設備構成が複雑であり、回線コストが高くなるという問題が有る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回線コストが比較的低廉な非同期ネットワークを利用して、複数無線基地局における電波送信を同期させることを可能にする技術の提供を目的とする。かかる目的のために本発明が採用する電波送信システムの特徴とするところは、請求項1に記載する如く、非同期ネットワークを介して接続された複数の無線基地局の無線機から情報データを乗せた電波を送信するシステムであって、電波に乗せる情報データを送出する中央制御装置と、中央制御装置から送出された情報データを非同期ネットワークへ伝送できる形式に変換する第1の信号変換装置と、非同期ネットワークを通じて受け取った情報データを無線基地局の無線機へ伝達できる形式に変換する第2の信号変換装置と、基準時間信号を出力する基準時間設定装置と、基準時間設定装置から出力される基準時間信号を受け取り、これに同期させた時間同期信号を生成し非同期ネットワークへ送出する機能を有するサーバ装置と、時間同期信号を非同期ネットワークを通じて受け取り、サーバ装置に同期する時間同期信号を生成して送出する機能を有するクライアント装置とを備え、基準時間設定装置から中央制御装置へ基準時間信号を供給し、サーバ装置から第1の信号変換装置へ時間同期信号を供給し、クライアント装置から第2の信号変換装置へ時間同期信号を供給することにより、中央制御装置と第1の信号変換装置と第2の信号変換装置とを実質的に同期させ、各無線基地局の無線機における情報データを乗せた電波の送信タイミングを制御するものとしたことである。
【0008】
前記において、情報データは、音声データに限定されず、文字・文章等のテキストデータや、画像・動画等のデータを送信することも考えられる。基準時間設定装置は、GPSや、ルビジウム発振器・OCXO(恒温槽型水晶発振器)等の高精度発振器を備える上位の時間サーバ装置が用いられる。
【0009】
本発明に係る電波送信システムにおいて、請求項2に記載する如く、前記サーバ装置が第1の信号変換装置へ供給する時間同期信号、及び、前記クライアント装置が第2の信号変換装置へ供給する時間同期信号は、クロック信号とすることができる。
なお、サーバ装置及びクライアント装置が出力する時間同期信号が、基準時間設定装置から取得する時刻情報データを含むものであってもよい。
【0010】
本発明に係る電波送信システムは、鉄道無線システムに適用することができる。すなわち、請求項3に記載する如く、中央制御装置から出力される情報データを音声信号とし、該音声信号を無線基地局の無線機を経由して、鉄道列車に搭載される無線機へ送信するものとする。
【0011】
本発明は、前述の電波送信システムを用いた電波同期送信方法を提供する。本発明に係る電波同期送信方法の特徴とするところは、請求項4に記載する如く、中央制御装置から送出される情報データを、第1の信号変換装置で非同期ネットワークへ伝送できる形式に変換し、該情報データを非同期ネットワークを介して接続された複数の無線基地局へ配信し、第2の信号変換装置で無線機へ伝達できる形式に変換したのち、各無線基地局ごとに設けた無線機から電波送信する方法であって、基準時間設定装置から出力される基準時間信号を受け取り、これに同期する時間同期信号を第1の信号変換装置と非同期ネットワークとへ送出するサーバ装置と、時間同期信号を非同期ネットワークを通じて受け取り、サーバ装置に同期する時間同期信号を第2の信号変換装置へ送出するクライアント装置とを設け、中央制御装置を基準時間設定装置に同期させ、第1の信号変換装置をサーバ装置に同期させると共に、第2の信号変換装置をクライアント装置に同期させることにより、中央制御装置及び第1の信号変換装置に対し、各無線基地局ごとに設けられる複数の第2の信号変換装置を実質的に同期させ、各無線基地局の無線機における情報データを乗せた電波の送信タイミングを同期させることである。
【0012】
なお前記電波同期送信方法において、請求項5に記載する如く、前記非同期ネットワークをイーサネットとし、前記サーバ装置からクライアント装置へ時間同期信号を伝送するためのプロトコルにNTP(Network Time Protocol)を用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載した本発明に係る電波送信システムは、中央制御装置が送出する情報データを非同期ネットワークへ伝送できる形式に変換する第1の信号変換装置と、非同期ネットワークを通じて受け取った情報データを無線機へ伝達できる形式に変換する第2の信号変換装置とを設けたので、既存の中央制御装置及び無線機を、これらとは通信プロトコルが異なる非同期ネットワークに接続して用いることが可能である。第1及び第2の信号変換装置と、基準時間設定装置と、基準時間設定装置から出力される基準時間信号に同期するサーバ装置と、サーバ装置に同期するクライアント装置とを設け、基準時間設定装置から中央制御装置へ基準時間信号を供給し、サーバ装置から第1の信号変換装置へ時間同期信号を供給し、クライアント装置から第2の信号変換装置へ時間同期信号を供給するようにしたので、中央制御装置と第1の信号変換装置と第2の信号変換装置とが実質的に同期する。従って、各無線基地局の無線機における電波の送信タイミングを正確に制御することが可能となる。よって本発明に係る電波送信システムによれば、中央制御装置と複数の無線基地局とを接続するネットワークに非同期ネットワークを用いても、中央制御装置から送出した情報データを乗せた電波を各無線基地局から送信するタイミングを、確実に同期させることができる。
また、データ形式の変換処理を行なう信号変換装置とは別に、時間同期処理を行なうサーバ装置・クライアント装置を独立させて設けたので、信号変換装置の負荷を軽減することができる。サーバ装置・クライアント装置・信号変換装置は別途配備する構成としたので、既存の電波送信システムに適用して改良するのが容易である。
【0014】
請求項2に係る本発明電波送信システムは、時間同期信号としてクロック信号だけを用いるので、サーバ装置と第1の信号変換装置との間、及び、クライアント装置と第2の信号変換装置との間におけるインターフェース構造を単純化でき、また信号処理ステップを簡略化できるから、比較的安価なハードウェア構成で、高い同期精度を得るのが容易である。
【0015】
請求項3に記載する如く、本発明を列車無線に適用した場合は、非同期ネットワークを介して接続した複数の無線基地局から鉄道車両へ、品質を低下させずに音声信号の送信が可能であり、列車無線の音質改善に効果を発揮する。従って、音声品質に優れた列車無線システムを安価に提供できる。
【0016】
請求項4に記載した本発明に係る電波同期送信方法によれば、基準時間設定装置に中央制御装置とサーバ装置とを同期させ、クライアント装置をサーバ装置に同期させ、さらに第1の信号変換装置をサーバ装置に同期させると共に、第2の信号変換装置をクライアント装置に同期させるので、基準時間設定装置を基準として、中央制御装置、第1の信号変換装置、及び、各無線基地局ごとに設けられる複数の第2の信号変換装置のすべてを実質的に同期させることができる。よって、情報データを第2の信号変換装置で形式変換して電波送信するタイミングを、ネットワークに接続した全ての無線機において正確に同期させることが可能となる。
【0017】
請求項5に記載する如く、非同期ネットワークをイーサネットとし、サーバ装置からクライアント装置への時間同期信号の伝送をNTPで行なうように設定した場合は、広く普及しているネットワークとプロトコルを用いるから、本発明を低コストで実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る電波送信システムを、列車無線に適用する場合を例に採って説明する。図1に示す如く、本発明に係る電波送信システムは、情報データを送出する中央指令局と、鉄道沿線に適宜間隔で設置される複数の無線基地局J1,J2,…とを、イーサネット等の非同期ネットワークを介し接続して構築される。
【0019】
図2に示すように、中央指令局には、情報データとしての音声信号を送出する中央制御装置と、音声信号を非同期ネットワークへ伝送できるデータ形式に変換(例えばカプセル化)する機能を持った第1の信号変換装置と、外部の基準時間設定装置から基準時間信号を取得し、これに基づく時間同期信号を生成するサーバ装置とが設けられる。時間同期信号の伝送プロトコルにNTPを用いる場合、本例のサーバ装置は、NTPサーバ機能を実装するNTPサーバ装置である。基準時間設定装置には、GPSや、ルビジウム発振器・OCXO等の基準クロック装置のほか、インターネット上に公開されている上位NTPサーバを用いることも可能である。第1の信号変換装置にはサーバ装置から時間同期信号が供給される。第1の信号変換装置及びサーバ装置は、L2スイッチ(スイッチングハブ)等の適宜ネットワーク接続装置を介して、非同期ネットワークに接続される。
【0020】
各無線基地局には、非同期ネットワークを通じて音声データを取得し、これを無線機へ伝達できる信号形式に変換(例えば脱カプセル化)する機能を持った第2の信号変換装置と、非同期ネットワークから時間同期信号を取得し、サーバ装置と同期するクライアント装置とが設けられる。時間同期信号がNTPで伝送される場合、上記クライアント装置はNTPクライアント機能を実装するNTPクライアント装置となる。第2の信号変換装置には、クライアント装置から時間同期信号が供給される。第2の信号変換装置及びクライアント装置は、L2スイッチ等適宜のネットワーク接続装置を介して、非同期ネットワークに接続されている。
【0021】
図3(A)に示すように、サーバ装置は、基準時間設定装置(図面では基準クロック装置)から基準時間信号を受け取って、これに同期する時間同期信号を生成し、ネットワーク接続装置を介して非同期ネットワークへ送出する。これと同時に第1の信号変換装置へも時間同期信号を供給する。従って、第1の信号変換装置はサーバ装置に同期する。クライアント装置は、時間同期信号を、ネットワーク接続装置を介して非同期ネットワークから取得することにより、サーバ装置に同期させた時間同期信号を生成し、これを第2の信号変換装置へ出力する。なお中央制御装置は、基準時間設定装置から基準時間信号を受け取り、内部時間をこれに同期させる。
【0022】
他方、図3(B)に示す如く、中央制御装置が送出する音声信号は、第1の信号変換装置において、非同期ネットワークへ伝送できるデータ形式に変換(カプセル化)されたのち、ネットワーク接続装置を介して非同期ネットワークへ送出される。そして、この音声データは、ネットワーク接続装置を経由して、第2の信号変換装置が受け取り、無線機へ伝達可能な信号形式に変換(脱カプセル化)したのち、無線機へ送出される。
【0023】
上に述べたように、中央指令局において、中央制御装置とサーバ装置とは基準時間設定装置に同期し、第1の信号変換装置はサーバ装置に同期する。他方、各無線基地局において、クライアント装置はサーバ装置に同期し、第2の信号変換装置はクライアント装置に同期している。その結果、中央制御装置、サーバ装置及びクライアント装置、並びに、第1・第2の信号変換装置の全てが実質的に同期するから、中央制御装置から送出される情報データを、第2の信号変換装置が非同期ネットワークを通じて取得したのち、これを形式変換して無線機へ出力するタイミングを、全ての無線基地局において同時化させることが可能である。それ故、各無線基地局から列車へ、音声信号を乗せた電波を同時に送信できるから、電波の位相を揃えることができ、その結果、電波干渉が解消され、従来と比較して音質の著しい改善がもたらされる。
【実施例】
【0024】
図4に、本発明に係る電波送信システムのより具体的な構成例を示す。本システムは、中央指令局と各無線基地局とを接続する非同期ネットワークをイーサネットとし、サーバ装置からクライアント装置へ時間同期信号を配信するプロトコルにNTPを用いた。図示するシステム構成図において、イーサアダプタが第1・第2の信号変換装置に相当する。L2SWは、L2スイッチ等のネットワーク接続装置である。さらに、基準時間設定装置には、ルビジウム発振器やOCXO等の基準クロック装置を用い、基準時間信号はクロック信号だけを用いる構成とした。また、既存の中央制御装置及び無線機を用いるので、中央指令局における中央制御装置と第1のイーサアダプタとの間、及び、無線基地局における第2のイーサアダプタと無線機との間の回線は、I.431a等のイーサネットとは異なるプロトコルで通信される。NTPサーバ装置と第1のイーサアダプタとはなるべく接近させて接続する。同様に、NTPクライアント装置と第2のイーサアダプタとの距離もなるべく短くすることが望ましい。
【0025】
音声データを中央制御装置から配信するルートは、中央指令局から各無線基地局を順に通って再び中央指令局に回帰するループ状に形成し、且つ、伝送ルートを全く対称に二重化する構成とした。これにより、一方の回線に障害が発生したときに、もう一方の回線で補償でき、しかも、その際、データの伝送距離が実質的に変更されないという利点が得られる。なお、中央指令局及び各無線基地局には、等価な2つの伝送ルートが接続されているため、通常は2つの同じデータを受信することになる。そこで、いずれのデータを採用するかを選択するアルゴリズムを設定する。原則として、列車へデータ送信する場合は、先に到達したデータを採用するものとする。列車からの音声を受信する場合は、中央指令局では先着データを採用し、無線基地局では、電界強度の大きい方を採用して書き換える構成とする。
【0026】
中央指令局にはNTPサーバ装置を複数配置して、ネットワークの冗長性を確保している。すなわち、万一、何れかのNTPサーバ装置に不具合が発生した場合でも、システムの時間同期状態を維持することができる。また複数のNTPサーバ装置を相互に接続することにより、サーバ装置間で相互に時間同期の検証を図って同期精度を向上させることができる。
【0027】
NTPサーバ装置及びNTPクライアント装置は、図5に示すような内部構成を持つ。NTPサーバ装置は、基準クロック装置から供給されるクロック信号の入力部としてのクロックセレクタ、発振器(ルビジウム発振器、OCXO等)、UTCタイマ、IP処理部を備える。クロックセレクタは、1pps形式と64k+8k形式の2系統の入力部を備える。クロックセレクタを通じて入力されたクロック信号に基づき、UTCタイマと発振器とを同期させ、発振器からは1pps形式と64k+8k形式の2系統のクロック信号を出力する。NTPサーバ装置の1pps及び64k+8kのクロック信号出力部は、第1のイーサアダプタに接続される。UTCタイマが生成する時間同期信号は、IP処理部でカプセル化され、NTP規格に則ってネットワークへ送信される。
【0028】
NTPクライアント装置は、上記NTPサーバ装置から、クロック信号の入力部を除いた構成である。すなわち、NTPサーバ装置からイーサネットを通じて時間同期信号を取得するIP処理部と、IP処理部が受け取った時間同期信号に基づいて同期するUTCタイマ及び発振器とを備え、発振器から1pps及び64k+8k形式の2系統のクロック信号を出力するようになされている。NTPクライアント装置から出力される1pps及び64k+8kのクロック信号は、第2のイーサアダプタへ供給される。
【0029】
なお複数のNTPサーバ装置を設置した場合、各サーバ装置から時間同期信号が出力されるタイミングが一定であると、パケットどうし衝突により位相誤差が発生する問題が生じる。そこで、この位相誤差を解消するため、IP処理部にパケットの出力タイミングをランダム化する機能を持たせることが望ましい。また、到達するパケットのうち、最短で到達するもの、あるいは条件によって最適と判断されるパケットを時間同期信号とするための適当なアルゴリズムを採用することが望ましい。
【0030】
中央指令局に設置される第1のイーサアダプタ及び無線基地局に設置される第2のイーサアダプタは、同一構成のものが使用できる。その内部構成の概略は、図6に示す如くである。イーサアダプタは、イーサネットとの間でデータを送受信するIP処理部、中央制御装置又無線機との間で音声信号の送受信を行なう音声信号処理部、及び、NTPサーバ装置又はNTPクライアント装置から時間同期信号としてクロック信号を受け取って、内部発振器(PLL)を同期させるクロック処理部とを有している。IP処理部は、イーサネットとのインターフェースを、RJ45とPHYチップとで構成している。音声信号処理部における中央制御装置又は無線機とのインターフェースは、D−SUB15と1.5Mフレーマとで構成されている。クロック処理部におけるNTPサーバ装置又はNTPクライアント装置とのインターフェースは、1pps規格及び64k+8k規格に対応する形式である。
【0031】
かかる構成により、本例のイーサアダプタは、中央制御装置から送出される音声信号をイーサネットで伝送できるデータ形式に変換する機能と、逆に、イーサネットを通じて受け取った音声データを無線機へ伝達できる信号形式に変換する機能と、NTPサーバ装置又はNTPクライアント装置からクロック信号を受けて内部発振器(PLL)を同期させる機能とを有している。従って、中央制御装置から送出された音声信号を変換してイーサネットへ配信するタイミング、及び、イーサネットから受け取った音声データを変換して無線機へ伝達するタイミングを、NTPサーバ装置及びNTPクライアント装置から取得した時間同期信号に基づいて同期させることができる。それ故、ネットワークに接続した全ての無線基地局から列車への電波送信を同期させて行なうことが可能であり、電波干渉が生じないため、車上の乗務員が無線を通じて受け取る音声品質が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る電波送信システムを列車無線に適用した場合を概念的に示す図面である。
【図2】本発明に係る電波送信システムの一例の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る電波送信システムの一例に関するものであって、図(A)は時間同期信号の流れを示すブロック図、図(B)は情報データの流れを示すブロック図であるる。
【図4】本発明に係る電波送信システムのより具体的な実施例の概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る電波送信システムに用いるNTPサーバ装置及びNTPクライアント装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係るイーサアダプタの概略構成を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非同期ネットワークを介して接続された複数の無線基地局の無線機から情報データを乗せた電波を送信するためのシステムであって、
電波に乗せる情報データを送出する中央制御装置と、
中央制御装置から送出された情報データを非同期ネットワークへ伝送できる形式に変換する第1の信号変換装置と、
非同期ネットワークを通じて受け取った情報データを無線基地局の無線機へ伝達できる形式に変換する第2の信号変換装置と、
基準時間信号を出力する基準時間設定装置と、
基準時間設定装置から出力される基準時間信号を受け取り、これに同期させた時間同期信号を生成し非同期ネットワークへ送出する機能を有するサーバ装置と、
時間同期信号を非同期ネットワークを通じて受け取り、サーバ装置に同期する時間同期信号を生成して送出する機能を有するクライアント装置とを備え、
基準時間設定装置から中央制御装置へ基準時間信号を供給し、
サーバ装置から第1の信号変換装置へ時間同期信号を供給し、
クライアント装置から第2の信号変換装置へ時間同期信号を供給することにより、
中央制御装置と第1の信号変換装置と第2の信号変換装置とを実質的に同期させ、
各無線基地局の無線機における情報データを乗せた電波の送信タイミングを制御するものであることを特徴とする非同期ネットワークを用いた電波送信システム。
【請求項2】
前記サーバ装置が第1の信号変換装置へ供給する時間同期信号、及び、前記クライアント装置が第2の信号変換装置へ供給する時間同期信号は、クロック信号である請求項1に記載の非同期ネットワークを用いた電波送信システム。
【請求項3】
中央制御装置から出力される情報データが音声信号であり、該音声信号を無線基地局の無線機を経由して、鉄道列車に搭載される無線機へ送信するものである請求項1又は2に記載の非同期ネットワークを用いた電波送信システム。
【請求項4】
中央制御装置から送出される情報データを、第1の信号変換装置で非同期ネットワークへ伝送できる形式に変換し、該情報データを非同期ネットワークを介して接続された複数の無線基地局へ配信し、第2の信号変換装置で無線機へ伝達できる形式に変換したのち、各無線基地局ごとに設けた無線機から電波送信する方法であって、
基準時間設定装置から出力される基準時間信号を受け取り、これに同期する時間同期信号を第1の信号変換装置と非同期ネットワークとへ送出するサーバ装置と、
時間同期信号を非同期ネットワークを通じて受け取り、サーバ装置に同期する時間同期信号を第2の信号変換装置へ送出するクライアント装置とを設け、
中央制御装置を基準時間設定装置に同期させ、第1の信号変換装置をサーバ装置に同期させると共に、第2の信号変換装置をクライアント装置に同期させることにより、中央制御装置及び第1の信号変換装置に対し、各無線基地局ごとに設けられる複数の第2の信号変換装置を実質的に同期させ、
各無線基地局の無線機における情報データを乗せた電波の送信タイミングを同期させる
ことを特徴とする非同期ネットワークを用いた電波同期送信方法。
【請求項5】
前記非同期ネットワークがイーサネットであり、前記サーバ装置からクライアント装置へ時間同期信号を伝送するためのプロトコルにNTPを用いた請求項4に記載の電波同期送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−278333(P2009−278333A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127115(P2008−127115)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】