説明

非帯電性担持重合触媒

活性度の高い「シングルサイト」重合触媒の使用は、重合反応装置の汚損をしばしば生ずる。その問題は気相重合で特に深刻である。理論に縛られることを望むものではないが、その汚損は、反応装置中の静電気の増加に端を発するものと考えられる。帯電防止剤を使用するとこの問題は軽減されるが、一般的な帯電防止剤は極性化学種を含んでおり、それが重合触媒を失活させる可能性がある。我々は、今や、多孔性金属酸化物担体の使用が、高濃度の選択された帯電防止剤を、極めて活性に富む重合触媒における静電気/汚損問題を減少する態様で使用することを可能にすることを見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
担持触媒系を用いるオレフィン類の重合は良く知られている。かかる担持触媒は、重合反応装置内、特に気相重合又はスラリー重合反応装置内の静電気及びその後の反応装置の汚損の発達と関係があることも当業者によって認識されている。激しい反応装置汚損は、不十分な熱伝達;反応装置の壁に粘着するポリマーの凝集塊又はシートの形成;ポリマー排出系統の詰まり;及び重症例では、反応装置の停止を強要する可能性のある大きな「塊」の発達等の問題を引き起こし得る。
【背景技術】
【0002】
反応装置の汚損問題を軽減するための取り組みは、特許文献に広く報告されている。
【0003】
オレフィン重合触媒組成物に対する防汚剤としてのカルボン酸の塩、特にステアリン酸アルミニウムの使用は、米国特許第6271325号(McConvilleら、Univation社)、及び同第6281306号(Oskamら、Univation社)に開示されている。
【0004】
KEMANINE AS−990の商標の下で販売されている脂肪族アミン等のアミンの帯電防止剤を用いる担持触媒の調製は、米国特許第6140432号(Agapiouら、Exxon社)及び同第6117955号(Agapiouら、Exxon社)に開示されている。
【0005】
帯電防止剤は、燃料が高い流速でポンプにより送り込まれるときの静電気の増加を防ぐために、航空燃料に通常添加される。これらの帯電防止剤のオレフィン重合における使用も知られている。
【0006】
例えば、商標STADIS(商標)の下で販売されている航空燃料帯電防止剤組成物(これは、「ポリスルホン」共重合体、重合ポリアミン及び油溶性スルホン酸を含む)は、最初は、米国特許第4182810号(Wilcox、Phillips Petroleum社)においてオレフィン重合における帯電防止剤として使用するために開示された。米国特許第4182810号(Wilcox、Phillips Petroleum社)における例。そのWilcoxの第4182810号特許の例は、商業用のスラリー重合プロセスにおけるイソブタン希釈剤へのその「ポリスルホン」帯電防止剤の添加について説明している。これは、前に引用した特許の教示と、その他の特許のカルボン酸の塩又はアミンの静電防止剤がプロセスの流れに加えられる代わりに触媒に添加された点で少し異なる。
【0007】
オレフィン重合における「ポリスルホン」帯電防止組成物の使用もその後:
1)米国特許第6639028号(Heslopら、BP Chemicals Ltd.に譲渡)におけるクロム触媒による気相オレフィン重合、
2)米国特許第6646074号(Herzogら、BP Chemicals Ltd.に譲渡)におけるチーグラーナッタ触媒による気相オレフィン重合、及び
3)米国特許第6562924号(Benazouzzら、BP Chemicals Ltd.に譲渡)におけるメタロセン触媒によるオレフィン重合、
の中で開示されている。
【0008】
そのBenazouzzらの特許は、重合触媒への少量(重量で約150ppm)のSTADIS(商標)帯電防止剤の添加を教示している。
【0009】
しかしながら、上に掲げたHeslopらの第6639028号特許、Herzogらの第6646074号特許及びBenazouzzらの第6562924号特許のそれぞれにおいて、STADIS(商標)帯電防止剤は、重合域に直接加える(即ち、触媒との混合とは対照的)のが好ましいことがはっきりと教示されている。
【0010】
我々は、大量のポリスルホン含有帯電防止剤により調製された担持型オレフィン重合触媒が、驚くほど良好な重合活性及び優れた帯電防止性能を提供することを見出した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、多孔性金属酸化物、遷移金属触媒系及び帯電防止剤を含むオレフィン重合触媒であって、前記帯電防止剤は、ポリスルホン及び前記ポリスルホンの溶媒を含み、前記触媒は、前記帯電防止剤が前記多孔性金属酸化物に、前記多孔性金属酸化物の重量を基準として、5,000から50,000重量ppmの量で添加されることを更に特徴とする触媒を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
パートA:触媒系
本明細書で使用する語句の「触媒系」としては、少なくとも1つの「遷移金属触媒」(本明細書では「触媒化合物」とも呼ばれる)が挙げられ、共触媒又は活性化剤を含めることもできる。
【0013】
本明細書で使用する語句の「触媒化合物」としては、一旦適切に活性化されると、オレフィン類の重合又はオリゴマー化の触媒作用をすることができる任意の化合物が挙げられる。その触媒化合物は、少なくとも1つの3族〜15族の金属原子(好ましくは、4族〜12族の遷移金属、最も好ましくは、チタン、ジルコニウム又はハフニウム)或いはランタニド又はアクチニド原子を含む。
【0014】
従って、その触媒化合物としては、例えば、一般的にはクロム化学種をシリカ及びアルミナからなる群の金属酸化物担体上に堆積させることによって調製される周知の「クロム」重合触媒を挙げることができる。
【0015】
「チーグラーナッタ」重合触媒を使用することもできる。これらの触媒は、一般的には4族又は5族金属−特にチタン又はバナジウム−を、一般式:
Al(Ra1(ORb1(X)
(式中、Ra1は、1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり;ORb1は、アルコキシ又はアリールオキシ基であって、ここでORb1は、1〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビルフラグメントであって、酸素に結合しており;Xは、塩化物又は臭化物であり;a+b+c=3、但し、aは0より大である)
のヒドロカルビルアルミニウム活性化剤との組み合わせで含む。広範に使用されているヒドロカルビルアルミニウムの例としては、トリメチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム及びトリブチルアルミニウムが挙げられる。
【0016】
しかしながら、本発明の方法における触媒化合物としては十分に特性化された有機金属化合物を使用するのが好ましい。これらの触媒化合物は、一般的には、金属原子、少なくとも1つの「機能的な」配位子、及び少なくとも1つの離脱基を含む。さらなる詳細が後に続く。
【0017】
本明細書で使用する語句の「離脱基」とは、一般に、触媒化合物から取り除くことができ、かくしてオレフィンの重合又はオリゴマー化に対して活性な化学種を生成する触媒化合物の金属中心に結合している1つ又は複数の化学成分を指す。
【0018】
元素の周期表の「族」に関して本明細書で使用される場合、その周期表の族に対する「新しい」命番方式は、the CRC HANDBOOK OF CHEMISTRY AND PHYSICS(David R.Lide編、CRC Press第81版、2000年)におけるのと同様に使用されている。
【0019】
本明細書で使用される「ヒドロカルビル」としては、1個の水素が欠けている水素と炭素とを含む脂肪族、環式、オレフィン、アセチレン及び芳香族基(即ち炭化水素基)が挙げられる。「ヒドロカルビレン」は、2個の水素が欠けている。
【0020】
本明細書で使用される「アルキル」としては、1個の水素が欠けている線状、分枝状及び環状パラフィン基が挙げられる。従って、例えば、−CH基(「メチル」)及びCHCH−基(「エチル」)は、アルキルの例である。
【0021】
本明細書で使用される「アルケニル」としては、1個の水素が欠けている線状、分枝状及び環状オレフィン基が挙げられ、アルキニル基としては1個の水素基が欠けている線状、分枝状及び環状アセチレン基が挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される「アリール」基としては、その分子が、ベンゼン、ナフチレン、フェナントレン、アントラセン等の環構造の特徴を有する、フェニル、ナフチル、ピリジル及びその他の基が挙げられる。例えば、C−の芳香族構造は、「フェニル」であり、−C−の芳香族構造は、「フェニレン」である。「アリールアルキル」基は、そこから懸垂しているアリール基を有するアルキル基であり、その例としては、ベンジル、フェネチル、トリルメチル等が挙げられ、「アルキルアリール」は、そこから懸垂している1つ又は複数のアルキル基を有するアリール基であり、その例としては、トリル、キシリル、メシチル、クミル等が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される「アルキレン」としては、2個の水素が欠けている、線状、分枝状及び環状炭化水素基が挙げられる。従って、−CH−(「メチレン」)及び−CHCH−(「エチレン」)は、アルキレン基の例である。2個の水素が欠けているその他の基としては、「アリーレン」及び「アルケニレン」が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される語句の「ヘテロ原子」しては、炭素に結合させることができる炭素と水素以外の任意の原子が挙げられる。「ヘテロ原子含有基」は、ヘテロ原子を含有しており、1つ又は複数の同じか別のヘテロ原子を含むことができる炭化水素基である。一実施形態において、ヘテロ原子含有基は、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群より選択される1〜3個の原子を含有するヒドロカルビル基である。ヘテロ原子含有基の非限定の例としては、イミン類、アミン類、酸化物類、ホスフィン類、エーテル類、ケトン類、オキソアゾリン(oxoazolines)複素環類、オキサゾリン類、チオエーテル類等が挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される「複素環」とは、ヘテロ原子(非炭素原子)が記載されている場合以外は、ホウ素、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、窒素、リン、酸素及び硫黄からなる群より選択される1〜3個の原子を含む炭素骨格を有する環系を指す。
【0026】
本明細書で使用される「アルキルカルボキシレート」、「アリールカルボキシレート」、及び「アルキルアリールカルボキシレート」は、任意の位置にカルボキシル基を所有するそれぞれアルキル、アリール、及びアルキルアリールである。例として、CCHC(O)O−、CHC(O)O−等が挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される「非干渉性の」とは、言及されている配位子(又はカチオン)が、オレフィンの重合を妨害しないこと(即ち、その配位子又はカチオン無しで行った重合と比較してそれがオレフィン重合の活性を50%より多く減少しないこと)を意味する。
【0028】
本明細書で使用される用語「置換された」とは、その用語に続く基が、任意の位置の1つ又は複数の水素の代わりに少なくとも1つの成分を所有していることを意味し、その成分は、ハロゲン基(例えば、Cl、F、Br)、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、C〜C10アルキル基、C〜C10アルケニル基、及びそれらの組み合わせ等の基から選択される。置換されたアルキル類及びアリール類の例としては、アシル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル及びジアルキルカルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、及びそれらの組み合わせが挙げられるがこれらに限定はされない。
【0029】
本明細書で使用される構造式は、化学技術において普通に理解されているように使用され、金属原子(「M」、3族〜15族原子)と配位子又は配位原子(例えば、シクロペンタジエニル、窒素、酸素、ハロゲンイオン、アルキル等)の間の会合を表すために使用される線「−」、並びに、「と会合した」、「に結合した」、「結合する」等の語句は、特定のタイプの化学結合を表すことに限定されるものではなく、「化学結合」、つまり、これらの線及び語句が「化学結合」、構成単位又は「化合物」として機能する組み合わされた集合体を可能にする十分な強さのある原子間の引力として定義される「化学結合」を表すことを意味する。
【0030】
他に記述がない限り、本発明の実施形態は、本明細書において、以下の個々の記述及び後に続く例の中で明示される金属原子「M」の酸化状態に限定されない。金属原子「M」の連結は、別に示されていない限り、本明細書に記載の化合物が結果として中性となるものである。
【0031】
パートB: 遷移金属触媒(又は触媒化合物)
一般的に、アルミニウムアルキル又はメチルアルミノキサン(MAO)、或いは「イオン性活性化剤」(下のパートCにおいて述べる)によって活性化されるいずれの遷移金属触媒化合物も、本発明での使用に対しては潜在的に適している。かかる触媒の広範囲にわたる議論が、米国特許第6720396号(Bellら、Univation Technologies社に譲渡)及びそこに引用されている参考文献(その全てについての開示は参照により本明細書に組み込まれる)の中に提供されている。かかる触媒化合物の総括(非限定)が次に続く。上記触媒は、一般的には「嵩だかな」機能的配位子を含有する。好ましい触媒化合物は、1個のシクロペンタジエニル配位子(「ホモシクロペンタジエニル錯体」)又は2個のシクロペンタジエニル配位子(「ビスシクロペンタジエニル錯体」)を含む4族金属(特にチタン又はジルコニウム)の錯体である。
【0032】
その嵩だか配位子は、一般に、1つ又は複数の開放、非環式、若しくは縮合環(1つ以上)又は環系(1つ以上)或いはそれらの組み合わせによって表される。これらの嵩だか配位子の環(1つ以上)又は環系(1つ以上)は、一般的には、元素の周期表の13族〜16族原子から選択される原子から構成される。好ましくは、その原子は、炭素、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、リン、ゲルマニウム、ホウ素及びアルミニウム又はそれらの組み合わせからなる群より選択される。最も好ましくは、その環(1つ以上)又は環系(1つ以上)は、複数の炭素原子、例えば以下に限定はされないが、シクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエニル型配位子構造或いはペンタジエン、シクロオクタテトラエンジイル又はイミド配位子等のその他の類似の機能性配位子構造から成る。その金属原子は、好ましくは、元素の周期表の3族〜15族並びにランタニド系列及びアクチニド系列から選択される。好ましくは、該金属は、4族〜12族、より好ましくは4、5及び6族からの遷移金属であり、最も好ましくはその遷移金属は、4族に由来する。
【0033】
一実施形態において、触媒化合物は、式:
MQ (I)
によって表され、式中、Mは、元素の周期表からの金属原子であり、元素の周期表の3族〜12族であるか、ランタニド系列又はアクチニド系列からのものであり得、好ましくは、Mは、4、5又は6族の遷移金属であり、より好ましくは,Mは、ジルコニウム、ハフニウム又はチタンである。嵩だか配位子、L及びLは、開放、非環式、若しくは縮合環(1つ以上)又は環系(1つ以上)であり、非置換の又は置換されているシクロペンタジエニル配位子又はシクロペンタジエニル型配位子、ヘテロ原子置換及び/又はヘテロ原子含有シクロペンタジエニル型配位子を含む任意の補助配位子系である。嵩だか配位子の非限定の例としては、シクロペンタジエニル配位子、シクロペンタフェナントレニル配位子、インデニル配位子、ベンズインデニル配位子、フルオレニル配位子、オクタヒドロフルオレニル配位子、シクロオクタテトレアンジイル配位子、シクロペンタシクロドデセン配位子、アゼニル配位子、アズレン配位子、ペンタレン配位子、ホスホイル配位子、ホスフィンイミン配位子、ピロリル配位子、ピロゾリル配位子、カルバゾリル配位子、ボラベンゼン配位子等が挙げられ、それらの水素化した異形、例えば、テトラヒドロインデニル配位子を含む。一実施形態において、L及びLは、Mへのη結合、好ましくはMへのη結合、最も好ましくはη結合、が可能な任意のその他の配位子構造であり得る。別の実施形態において、L及びLは、1つ又は複数のヘテロ原子、例えば、窒素、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、硫黄及びリンを、複数の炭素原子と一緒に含んで開放、非環式、又は好ましくは縮合環又は環系、例えば、ヘテロ−シクロペンタジエニル補助配位子を形成することができる。その他のL及びLの嵩だか配位子としては、以下に限定はされないが、嵩だかなアミド類、リン化物類、アルコキシド類、アリールオキシド類、ホスフィンイミド類、イミド類、カルボリド類(carbolides)、ボロリド類(borollides)、ポルフィリン類(porphyrins)、フタロシアニン類、コリン類、及びその他のポリアゾマクロ環化合物類(polyazomacrocycles)が挙げられる。各L及びLは、独立して、Mに結合している嵩だか配位子の同じか異なるタイプであり得る。式(I)の一実施形態においては、L又はLのいずれか1つのみが存在する。
【0034】
各L及びLは、独立して、非置換であるか、置換基Rの組み合わせにより置換されていてもよい。置換基Rの非限定の例としては、水素、又は線状、分枝状アルキル基、又はアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基若しくはアリール基、アシル基、アロイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキル若しくはジアルキルカルバモイル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アロイルアミノ基、直鎖状、分枝状又は環状アルキレン基、或いはそれらの組み合わせから選択される基からの1つ又は複数が挙げられる。好ましい実施形態において、置換基Rは、最大50個までの非水素原子、好ましくは、ハロゲン若しくはヘテロ原子等により置換されていてもよい1〜30個の炭素を有する。アルキル置換基Rの非限定の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル又はフェニル基等が挙げられ、全てのそれらの異性体、例えば、t−ブチル、イソプロピル等、を含む。その他のヒドロカルビル基としては、フルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロエチル、ヨードプロピル、ブロモヘキシル、クロロベンジル及びトリメチルシリル、トリメチルゲルミル、メチルジエチルシリル等を含むヒドロカルビル置換有機メタロイド基;並びにトリス(トリフルオロメチル)シリル、メチルビス(ジフルオロメチル)シリル、ブルモメチルジメチルゲルミル等を含むハロカルビル置換有機メタロイド基;並びに例えばジメチルホウ素を含む二置換ホウ素基;並びにジメチルアミン、ジメチルホスフィン、ジフェニルアミン、メチルフェニルホスフィン、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、フェノキシ、メチルスルフィド及びエチルスルフィドを含むカルコゲン基を含む二置換へテロ原子基が挙げられる。非水素置換基Rとしては、非限定で、ビニル末端配位子、例えば、ブテ−3−エニル(but−3−enyl)、プロプ−2−エニル、ヘキサ−5−エニル等を含むオレフィン性不飽和置換基等のオレフィン類を含む原子類、炭素、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、窒素、リン、酸素、スズ、硫黄、ゲルマニウム等が挙げられる。又、少なくとも2つのR基、好ましくは2つの隣接するR基は、結合して、炭素、窒素、酸素、リン、ケイ素、ゲルマニウム、アルミニウム、ホウ素又はそれらの組み合わせから選択される3〜30個の原子を有する環構造を形成する。又、1−ブテニル等の置換基R基は、金属Mに対する炭素シグマ結合を形成することができる。
【0035】
他の配位子、例えば少なくとも1つの離脱基Q等を金属Mに結合させることができる。本明細書で使用される用語「離脱基」とは、嵩だか配位子触媒化合物から取り除いて、1つ又は複数のオレフィンを重合することができる嵩だか配位子触媒化学種を形成することができる任意の配位子である。一実施形態において、Qは、Mに対してシグマ結合を有するモノアニオン性の不安定な配位子である。金属の酸化状態に応じてnに対する値は、上の式(I)が、中性の嵩だか配位子触媒化合物を表すように、0、1又は2である。
【0036】
Q配位子の非限定の例としては、アミン類等の弱塩基類、ホスフィン類、エーテル類、カルボン酸塩類、ジエン類、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基類、水素化物又はハロゲン類等或いはそれらの組み合わせが挙げられる。別の実施形態においては、2個以上のQが、縮合環又は環系の一部を形成する。Q配位子のその他の例としては、上で記載したようなRに対する置換基が挙げられ、シクロブチル、シクロヘキシル、ヘプチル、トリル、トリフルオロメチル、テトラメチレン、ペンタメチレン、メチリデン、メチオキシ、エチオキシ、プロポキシ、フェノキシ、ビス(N−メチルアニリド)、ジメチルアミド、ジメチルホスフィド基等を含む。
【0037】
別の実施形態において、該触媒化合物は、次式:
ALMQ (II)
によって表される。
【0038】
式(II)によって表されるこれらの化合物は、架橋した配位子触媒化合物として知られる。L、L、M、Q及びnは、上で定義したものと同じである。架橋基Aの非限定の例としては、しばしば2価成分と称される少なくとも1つの13〜16族原子、例えば、以下に限定されないが、炭素、酸素、窒素、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム及びスズ原子又はそれらの組み合わせの少なくとも1つを含有する架橋基が挙げられる。架橋基Aは、好ましくは、炭素、ケイ素又はゲルマニウム原子を含有し、最も好ましくは、Aは、少なくとも1つのケイ素原子又は少なくとも1つの炭素原子を含有する。その架橋基Aは、又、ハロゲン類及び鉄を含む上で定義した置換基Rも含有することができる。架橋基Aの非限定の例は、R’C、R’Si、R’SiR’Si、R’Ge、R’Pによって表すことができ、ここでR’は、独立に、水素化物、ヒドロカルビル、置換ヒドロカルビル、ハロカルビル、置換ハロカルビル、ヒドロカルビル置換有機メタロイド、ハロカルビル置換有機メタロイド、二置換ホウ素、置換カルコゲン、又はハロゲンである基であるか、2つ以上のR’が結合して環若しくは環系を形成していてもよい。一実施形態において、式(II)の架橋した配位子触媒化合物は、2つ以上の架橋基Aを有する。
【0039】
一実施形態において、該触媒化合物は、式(I)及び(II)の嵩だか配位子L及びL上のR置換基が、それぞれの該嵩だか配位子上の同数か異なる数の置換基により置換されているものである。別の実施形態において、式(I)及び(II)の嵩だか配位子L及びLは、互いに異なる。
【0040】
最も好ましい一実施形態において、本発明において有用な触媒化合物としては、架橋へテロ原子モノ嵩だか配位子化合物が挙げられる。より具体的には、これらの非常に好ましい触媒は、上記の米国特許第5047475号に開示されているような架橋したシクロペンタジエニルアミン二座配位子を有することを特徴とする4族金属(特にチタン)の錯体である。好ましい架橋基は、ジアルキルシリル類、特に、ジメチルシリルである。該配位子のアミン部分は、好ましくは、窒素原子上にアルキル置換基(特にt−ブチル)を有しており、残った窒素が、遷移金属(好ましくはチタン)及び好ましいジメチルシリル架橋基のケイ素原子への結合をまとめる。そのシクロペンタジエニル配位子は、その遷移金属にπ結合し、架橋基に共有結合する。該シクロペンタジエニル基は、好ましくは置換されており、特に、テトラメチルシクロペンタジエニルである。
【0041】
好ましい触媒化合物としては、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドチタンジクロリド(及びアルキル類似物、即ち、2個の塩化物配位子が単純なアルキル、特にメチル、によって置換されている)及び本願例に明らかにされている触媒化合物が挙げられる。米国特許第5057475号及び同第5064802号(同様に本願例中に示されている)。
【0042】
別の実施形態において、該触媒化合物は、式:
AJMQ (III)
によって表され、式中、Mは、元素の周期表の3族〜16族金属原子又はアクチニド及びランタニドの族から選択される金属であり、好ましくは、Mは、4族〜12族の遷移金属であり、より好ましくは、Mは、4族、5族又は6族の遷移金属であり、最も好ましくは、Mは、任意の酸化状態の4族の遷移金属、特にチタンであり;Lは、Mに結合している置換又は非置換の嵩だか配位子であり;Jは、Mに結合しており;Aは、MとJに結合しており;Jは、ヘテロ原子の補助配位子であり;Aは、架橋基であり;Qは、一価のアニオン性配位子であり;nは、整数0、1又は2である。上の式(III)において、L、A及びJは、縮合環系を形成することができる。一実施形態において、式(III)のLは、式(I)におけるLについて定義したものと同じであり、式(III)のA、M及びQは、式(I)において上で定義したものと同じである。
【0043】
式(III)において、Jは、配位子を収容するヘテロ原子であり、Jは、元素の周期表の15族からの配位数3の元素、又は16族からの配位数2の元素である。好ましくは、Jは、窒素、リン、酸素又は硫黄原子を含有し、窒素が最も好ましい。
【0044】
別の実施形態において、触媒化合物は、米国特許第5527752号に記載されているもののような、金属、好ましくは遷移金属、嵩だか配位子、好ましくは置換又は非置換のπ結合配位子、及び1つ又は複数のヘテロアリル成分の錯体である。
【0045】
別の実施形態において、該触媒化合物は、式:
MQ(YZ)X (IV)
によって表され、式中、Mは、3族〜16族金属、好ましくは、4族〜12族の遷移金属、最も好ましくは4族、5族又は6族の遷移金属であり;Lは、Mに結合している嵩だか配位子であり;各Qは、独立にMに結合しており、Q(YZ)は、一荷電された(unicharged)多座配位子を形成しており;A又はQは、Mにも結合している一価のアニオン性配位子であり;Xは、nが2のときは一価のアニオン性基であるか、Xは、nが1のときは二価のアニオン性基であり;nは1又は2である。
【0046】
式(IV)において、LとMは、式(I)に対して上で定義したものと同じである。Qは、式(I)に対して上で定義したものと同じであり、好ましくは、Qは、−O−、−NR−、−CR−及び−S−からなる群より選択される。Yは、C又はSのいずれかである。Zは、−OR、−NR、−CR、−SR、−SiR、−PR、−H、及び置換又は非置換のアリール基からなる群より選択され、但し、Qが、−NR−であるとき、Zは、−OR、−NR、−SR、−SiR、−PR及び−Hからなる群の1つから選択され;Rは、炭素、ケイ素、窒素、酸素、及び/又はリンを含む群から選択され、好ましくはここでRは、1〜20個の炭素原子を含む炭化水素基、最も好ましくは、アルキル、シクロアルキル、又はアリール基であり;nは、1〜4、好ましくは1又は2の整数であり;Xは、nが2のときは一価のアニオン性基であるか、Xは、nが1のときは二価のアニオン性基であり;Xは、好ましくは、Q、Y及びZの組み合わせによって描かれるカルバメート、カルボキシレート、又はその他のヘテロアリル成分である。
【0047】
本発明の別の実施形態において、該触媒化合物は、その嵩だか配位子、環(1つ以上)又は環系(1つ以上)が1つ又は複数のヘテロ原子又はその組み合わせを含む複素環配位子錯体である。ヘテロ原子の非限定の例としては、13族〜16族元素、好ましくは、窒素、ホウ素、硫黄、酸素、アルミニウム、ケイ素、リン及びスズが挙げられる。これらの嵩だか配位子の触媒化合物の例は、米国特許第5637660号に記載されている。
【0048】
一実施形態において、該触媒化合物は、式:
((Z)XA(YJ))MQ (V)
によって表され、式中、Mは、元素の周期表の3族〜13族又はランタニド及びアクチニド系列から選択される金属であり;Qは、Mに結合していて、各Qは、一価、二価、又は三価のアニオンであり;XとYはMに結合しており;XとYの1つ又は2つはヘテロ原子であり、好ましくはXとYは両方共へテロ原子であり;Yは、複素環J中に収容されており、そのJは、2〜50個の非水素原子、好ましくは2〜30個の炭素原子を含み;Zは、Xに結合しており、そのZは、1〜50個の非水素原子、好ましくは1〜50個の炭素原子を含み、好ましくは、Zは、3〜50個の原子、好ましくは3〜30個の炭素原子を含有する環状基であり;tは0又は1であり;tが1のとき、Aは、X、Y又はJの少なくとも1つ、好ましくはXとJとに連結している架橋基であり;qは1又は2であり;nはMの酸化状態に応じて1〜4の整数である。一実施形態において、Xが酸素又は硫黄であるとき、Zは任意である。別の実施形態において、Xが窒素又はリンであるとき、Zは存在する。一実施形態において、Zは、好ましくはアリール基であり、より好ましくは置換されているアリール基である。
【0049】
該触媒化合物が、米国特許第5852145号に記載されているNi2+及びPd2+の錯体を含むことも、一実施形態においては、本発明の範囲である。これらの錯体は、活性化剤若しくは下記の共触媒によってカチオン状態に活性化することができる記載されているジハライド錯体のジアルキルエーテル付加物、又はアルキル化反応生成物のいずれかであり得る。
【0050】
触媒化合物としては、8族〜10族金属化合物のそのようなジイミン系配位子も含まれる。
【0051】
その他の適当な触媒化合物は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5851945号に記載されているそのような5族及び6族金属のイミド錯体である。なお、嵩だか配位子触媒化合物としては、架橋ビス(アリールアミド)4族化合物、架橋ビス(アミド)触媒化合物及びビス(ヒドロキシ芳香族窒素配位子)を有する触媒が挙げられる。
【0052】
一実施形態において、上記の本発明の触媒化合物としては、それらの構造又は光学又は鏡像異性体(メソ及びラセミ異性体)及びそれらの混合物が挙げられることも考えられる。
【0053】
本発明において有用なその他の触媒化合物は、上記の米国特許第6720396号(及びその中の参考文献)、本明細書に全て組み込まれている参考文献に開示されている。
【0054】
パートC: 活性化
上記の遷移金属触媒は、共触媒又は活性化剤の存在下でオレフィンの重合に利用される。
【0055】
アルミノキサン類、特にメチルアルミノキサンは、有機金属触媒化合物に対する周知の共触媒である。メチルアルミノキサン及びその近似の変形物(大体は少量のより高級のアルキル基を含む)は、市販されている製品である。これらのアルミノキサン類の正確な構造は依然として幾分不明確ではあるが、それらが一般式:
【化1】


であって式中Rが(大部分は)メチルである繰返し構成単位を含むオリゴマー化学種であることで大体同意されている。
【0056】
米国特許第5198401号に記載されているように、いわゆる「イオン性活性化剤」(本明細書では活性化剤化合物とも呼ぶ)を有機金属触媒化合物と共に使用することも周知である。一般に、これらの活性化剤は、カチオン及び実質的に配位していないアニオンを含む。
【0057】
より具体的には、好ましい活性化化合物は、100個まで、好ましくは50個までの非水素原子を有しており、活性水素成分を含む少なくとも1つの置換基を有する相溶性アニオンを含有する。活性水素成分を含む好ましい置換基は、式:
(T−H)
に相当し、式中、Gは、多価炭化水素基であり、Tは、O、S、NR、又はPRであって、ここでRは、ヒドロカルビル基、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルミル基、又は水素であり、Hは、水素であり、qは、0又は1であって好ましくは1であり、rは、1〜3の整数、好ましくは1である。多価炭化水素基Gは、r+1の価数を有しており、1の価数は相溶性アニオン中の元素の周期表の5〜15族の金属又はメタロイドと共にあり、Gのその他の1つ又は複数の価は、r価の基T−Hに付随している。Gの好ましい例としては、二価の炭化水素基、例えば、1〜20個の炭素原子、より好ましくは2〜12個の炭素原子を含有するアルキレン、アリーレン、アラルキレン、又はアルカリレン基等が挙げられる。Gの適当な例としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、フェニルメチレン(−C−CH−)が挙げられる。多価ヒドロカルビル部分Gは、活性水素成分の結合機能に干渉しない基により更に置換されていてもよい。そのような非干渉性置換基の好ましい例は、アルキル、アリール、アルキル又はアリール置換シリル及びゲルミル基、及びフルオロ置換基類である。
【0058】
前の式における基T−Hは、従って、−OH、−SH、−NRH、又は−PRH基であることができ、ここでRは、好ましくは、C1〜18の、好ましくはC1〜10のヒドロカルビル基又は水素であり、Hは、水素である。好ましいR基は、1〜18個の炭素原子、より好ましくは1〜12個の炭素原子のような、アルキル類、シクロアルキル類、アリール類、アリールアルキル類、又はアルキルアリール類である。−OH、−SH、−NRH、又は−PRH基は、例えば、CO−OH、C(S)−SH、C(O)−NRH、及びC(O)−PRHのようなより大きい官能基の一部であり得る。最も好ましくは、基T−Hは、ヒドロキシ基、−OH、又はアミノ基、−NRHである。
【0059】
活性水素成分を含む非常に好ましい置換基類G(T−H)としては、ヒドロキシ及びアミノ置換アリール、アラルキル、アルカリル又はアルキル基が挙げられ、最も好ましいのは、ヒドロキシフェニル類、特に3−及び4−ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシトリル、ヒドロキシベンジル(ヒドロキシメチルフェニル)、ヒドロキシビフェニル、ヒドロキシナフチル、ヒドロキシシクロヘキシル、ヒドロキシメチル、及びヒドロキシプロピル、並びに対応するアミノ置換基類、特に、−NRHにより置換されており、Rが、1〜10個の炭素原子を有するアルキル又はアリール基、例えばメチル、エチル、プロピル、i−プロピル、n−、i−、又はt−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ナフチル、及びビフェニル等であるものである。
【0060】
活性水素成分を含有する置換基を含んでいる相溶性アニオンは、単一の5〜15族元素又は複数の5〜15族元素を更に含むことができるが、好ましくは、電荷を有する金属コア又はメタロイドコアを含む単一の配位錯体であり、そのアニオンは嵩だかである。相溶性アニオンとは、具体的には、本発明の触媒系において電荷平衡アニオンとして機能するとき、そのアニオン性置換基又はフラグメントを遷移金属カチオンに移動させず、それによって中性の遷移金属化合物及び中性の金属副生成物を形成するアニオンを指す。「相溶性アニオン類」は、最初に形成された錯体が分解したとき中性に劣化されることはなく、望ましいその後の重合を妨げないアニオンである。好ましいアニオン類は、活性水素成分を含有している置換基を持つ電荷のある金属コア又はメタロイドコアを含む単一の配位錯体を含有し、そのアニオンが、比較的大きくて(嵩だか)で、活性化剤化合物と遷移金属化合物が組み合わされたときに形成される活性触媒の化学種(遷移金属カチオン)を安定化させることができ、前記アニオンが十分に易動性で、オレフィン、ジオレフィン及びアセチレンの不飽和化合物又はその他の中性ルイス塩基、例えば、エーテル類、亜硝酸塩等によって置き換えられるものである。活性化剤化合物のアニオン用の適当な金属としては、以下に限定はされないが、アルミニウム、金、白金等が挙げられる。適当なメタロイドとしては、以下に限定されないが、ホウ素、リン、ケイ素等が挙げられる。単一のホウ素原子及び活性水素成分を含む置換基を含有する配位錯体を含むアニオンを含有する活性化剤化合物が好ましい。
【0061】
好ましくは、活性水素成分を含む置換基を含有する相溶性アニオンは、次の一般式(I):
[M’+Q(G(T−H)d− (I)
によって表すことができ、式中、M’は、元素の周期表の5〜15族から選択される金属又はメタロイドであり;Qは、各発生において独立に、水素化物、ジヒドロカルビルアミド、好ましくはジアルキルアミド、ハロゲン化物、ヒドロカルビルオキシド、好ましくはアルコキシド及びアリールオキシド、ヒドロカルビル、及びヒドロカルビル部分が1〜20個の炭素を有するハロ置換ヒドロカルビル基、及びヒドロカルビル置換及びハロヒドロカルビル置換有機メタロイド基を含めた置換ヒドロカルビル基からなる群より選択され、但し、複数のQがハロゲン化物で発生することはなく;Gは、M’及びTに結合している多価のr+1の価数を有し、好ましくは二価の炭化水素基であり;Tは、O、S、NR、又はPRであって、ここでRは、炭化水素基、トリヒドロカルビルシリル基、トリヒドロカルビルゲルミル基、又は水素であり;mは、1〜7の整数、好ましくは3であり;nは、0〜7の整数、好ましくは3であり;qは、0又は1の整数、好ましくは1であり;rは、1〜3の整数、好ましくは1であり;zは、1〜8の整数、好ましくは1であり;dは、1〜7の整数、好ましくは1であり;n+z+m=dである。
【0062】
本発明において特に有用である好ましいホウ素含有アニオンは、次の一般式(II):
[BQ4−z’(G(T−H)z’−d− (II)
によって表すことができ、式中、Bは、原子価状態が3のホウ素であり;z’は、1〜4の整数、好ましくは1であり;dは1であり;Q、G、T、H、q、及びrは、式(I)に対して定義したものと同じである。好ましくは、z’は1であり、qは1であり、rは1である。
【0063】
代表的な、但し非限定の、本発明で使用される活性化剤化合物のアニオン類の例は、ホウ素含有アニオン類、例えば、トリフェニル(ヒドロキシフェニル)ボレート、ジフェニルジ(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリフェニル(2,4−ジヒドロキシフェニル)ボレート、トリ(p−トリル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス−(ペンタフルオロフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス−(2,4−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス−(3,5−ジメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス−(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)(ヒドロキシフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(2−ヒドロキシエチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシブチル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシシクロヘキシル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−(4’−ヒドロキシフェニル)フェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)ボレート等である。極めて好ましい活性化剤錯体は、トリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレートである。活性化剤化合物のその他の好ましいアニオン類は、ヒドロキシ官能基が、Rが好ましくはメチル、エチル、又はt−ブチルであるアミノNHR官能基によって置換されているそのような上記のホウ酸エステルである。
【0064】
相溶性アニオンb.2)と合わせて使用される活性化剤化合物のカチオン性部分b.1)は、遷移金属化合物と反応して触媒的に活性な遷移金属錯体、特にカチオン性遷移金属錯体、を形成することが可能である任意のカチオンであり得る。カチオン類b.1)及びアニオン類b.2)は、中性の活性化剤化合物を与えるような比率で使用する。好ましくは、そのカチオンは、ブレンステッド酸性カチオン類、カルボニウムカチオン類、シリリウムカチオン類、及びカチオン性酸化剤類からなる群より選択される。
【0065】
ブレンステッド酸性カチオン類は、次の一般式:
(L−H)
によって表すことができ、式中、Lは、中性のルイス塩基、好ましくは、窒素、リン、又は硫黄を含有するルイス塩基であり;(L−H)は、ブレンステッド酸である。そのブレンステッド酸性カチオン類は、前記カチオンのプロトンの移動によって遷移金属化合物と反応し、そのプロトンが、該遷移金属化合物上の配位子の1つと結び付いて中性の化合物を放出するものと考えられる。
【0066】
代表的な、但し非限定の、本発明で使用される活性化剤化合物のブレンステッド酸性カチオン類の例は、トリアルキル置換アンモニウムカチオン類、例えば、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、及びトリ(n−オクチル)アンモニウム等である。同様に適当なのは、N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン類、例えば、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルベンジルアニリニウム等;ジアルキルアンモニウムカチオン類、例えば、ジ−(イソプロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム等;並びにトリアリールホスホニウムカチオン類、例えば、トリフェニルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウム、ジメチルスルホニウム、ジエチルスルホニウム、及びジフェニルスルホニウム等である。
【0067】
特に適当なのはより長いアルキル鎖を有するようなカチオン類、例えば、ジヘキサデシルメチルアンモニウム、ジオクタデシルメチルアンモニウム、ジテトラデシルメチルアンモニウム、ビス(水素化獣脂アルキル)メチルアンモニウム及び類似物である。
【0068】
このタイプの特に好ましい活性化剤は、アルキルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)4−(ヒドロキシフェニル)ボレートである。特に好ましい活性化剤は、ビス(水素化獣脂アルキル)メチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ボレートである。
【0069】
適当なカチオン類の第2のタイプは、式:Cに相当し、ここでCは、最大30個の非水素原子を含有する安定なカルボニウム又はシリリウムイオンであり、該カチオンは、遷移金属化合物の置換基と反応してそれを触媒的に活性な遷移金属錯体、特にカチオン性遷移金属錯体に転化することができる。カチオン類の適当な例としては、トロピリウム、トリフェニルメチリウム、ベンゼン(ジアゾニウム)が挙げられる。シリリウム塩類は、これまでにJ.Chem.Soc.Chem.Comm.、1993年、383〜384頁、並びにLambert,J.B.ら、Organometallics、1994年、13巻、2430〜2443頁に包括的に開示されている。好ましいシリリウムカチオン類は、トリエチルシリリウム、及びトリメチルシリリウム並びにそれらのエーテル置換付加物である。
【0070】
別の適当なタイプのカチオンは、式:
Oxe+
によって表されるカチオン性酸化剤を含み、ここでOxe+は、e+の電荷を有するカチオン性酸化剤であり、eは、1〜3の整数である。
【0071】
カチオン性酸化剤の例としては、フェロセニウム、ヒドロカルビル置換フェロセニウム、Ag及びPb2+が挙げられる。
【0072】
担持触媒成分及び担持触媒中の活性化剤化合物の量は、重要ではないが、一般的には、処理された担体材料1グラム当たり0.1〜、好ましくは1〜2,000ミクロモルの範囲の活性化剤化合物である。好ましくは、担持触媒又は成分は、1グラム処理された担体材料1グラム当たり、10〜1,000ミクロモルの活性化剤化合物を含有する。
【0073】
それ自体又は希釈剤中のスラリーとしての本発明の担持触媒構成材は、不活性条件下で保存又は輸送することができ、或いは使用して本発明の担持触媒を発生させることができる。
【0074】
このタイプの活性化剤に関して特に好ましい化合物は、アルキルアンモニウムトリス(ペンタフルオロフェニル)−4−(ヒドロキシフェニル)ボレートと有機金属化合物、例えば、トリメチルアンモニウムとの反応生成物である。
【0075】
パートD: 粒子状金属酸化物担体
本発明の触媒は、粒子状金属酸化物の担体と共に調製しなければならない。
【0076】
オレフィン重合触媒の調製における金属酸化物担体の使用は、当業者には既知である。適当な金属酸化物の例示的なリストには、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、亜鉛及びチタンの酸化物が含まれる。アルミナ、シリカ及びシリカ−アルミナは、オレフィン重合触媒に使用するための周知の金属酸化物であり、コストと利便性の理由で好ましい。シリカは特に好ましい。
【0077】
該金属酸化物は、約1〜約200ミクロンの粒径を有するのが好ましい。該触媒が、気相又はスラリー重合法で使用される場合はその粒径は約30ミクロンと100ミクロンの間であり、該触媒が溶液重合で使用される場合はより小さい粒径(10ミクロン未満)を使用するのが特に好ましい。
【0078】
比較的高度の表面積(1m/gを超え、特に100m/gを超え、更には特に200m/gを超える)を有する標準的な多孔性金属酸化物は多孔性ではない金属酸化物より好ましい。
【0079】
非常に好ましいシリカは、0.1〜5mL/g(特に0.5〜3mL/g)の細孔容積を有することを更に特徴とする。50〜500オングストローム(Å)(特に75〜400Å)の平均細孔サイズも好ましい。
【0080】
理論に縛られることを望むものではないが、好ましい担体の高度の表面積は、その担体への高濃度の帯電防止剤の混合(本発明にとって必須)を促進するものと考えられる。
【0081】
該担体材料は、その担体材料の含水量又はヒドロキシル含量を減少させるために熱処理及び/又は化学処理にさらすことができる。
【0082】
一般的に、化学脱水剤は、反応性金属水素化物、アルミニウムアルキル化及びハロゲン化物である。該担体材料は、その使用前に、減圧下の不活性雰囲気中で100℃〜1000℃、好ましくは200℃〜850℃での処理にさらすことができる。
【0083】
該担体材料は、希薄な溶媒中で、有機アルミニウム化合物、最も好ましくは、トリアルキルアルミニウム化合物と更に組み合わせることができる。
【0084】
該担体材料は、好ましくは、20℃〜150℃、好ましくは20℃〜100℃の温度でトリアルキルアンモニウムにより前処理をする。
【0085】
本発明の方法における触媒化合物中の遷移金属(その遷移金属は、好ましくはチタン又はジルコニウムである)対イオン性活性化剤のモル比は、1:10000〜100:1の範囲であり得る。好ましい範囲は、1:5000〜10:1、最も好ましくは1:10〜10:1である。
【0086】
パートE: 帯電防止性「ポリスルホン」添加剤
帯電防止性ポリスルホン添加剤は、
(1)ポリスルホン共重合体、
(2)ポリマー状ポリアミン、及び
(3)油溶性スルホン酸と、更に該ポリスルホン共重合体の溶媒
から選択される成分の少なくとも1つを含む。
【0087】
好ましくは、該帯電防止添加剤は、上の成分(1)、(2)及び(3)から選択される少なくとも2つの成分を含む。より好ましくは、該帯電防止添加剤は、(1)、(2)及び(3)の混合物を含む。
【0088】
本発明によれば、該帯電防止添加剤のポリスルホン共重合体成分(しばしば、オレフィン−二酸化硫黄共重合体、オレフィンポリスルホン、又はポリ(オレフィンスルホン)と呼ばれる)は、ポリマー、好ましくは線状ポリマーであり、その構造は、先端から末端までの配列においてオレフィンとコモノマーの1対1のモル比を有するようなオレフィンと二酸化硫黄との交互共重合体であるものと考えられる。好ましくは、該ポリスルホン共重合体は、基本的に、二酸化硫黄の構成単位約50モルパーセントと、それぞれが約6〜24個の炭素原子を有する1つ又は複数の1−アルケンに由来する構成単位約40〜50モルパーセントと、式ACH=CHBを有しており、式中、Aが式−(C2x)−COOH(式中xは、0〜約17である)を有する基であり、Bが水素又はカルボキシルであり、但し、Bがカルボキシルであり、xが0であるときは、A及びBは、共にジカルボン酸無水物基であり得るオレフィン化合物に由来する構成単位約0〜10モルパーセントと、からなる。
【0089】
好ましくは、本発明で使用されるポリスルホン共重合体は、10,000〜1,500,000の範囲、好ましくは、50,000〜900,000の範囲の重量平均分子量を有する。多くの1−アルケン類の1つに由来する構成単位は、好ましくは6〜18個の炭素原子を有する直鎖アルケン類、例えば、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン及び1−オクタデセンに由来する。式ACH=HBを有する1つ又は複数の化合物に由来する構成単位の例は、マレイン酸、アクリル酸、5−ヘキセン酸に由来する構成単位である。
【0090】
好ましいポリスルホン共重合体は、約0.04dl/g〜1.6dl/gの範囲の固有粘度(トルエン中0.5重量パーセント溶液として30℃で測定)を有する1−デセンポリスルホンである。
【0091】
本発明のプロセスにおいて適切に使用することができるポリマーポリアミン類は、米国特許第3917466号、特に、縦列6の42行目〜縦列9の29行に記載されている。
【0092】
該ポリマー状ポリアミンは、例えば、脂肪族第一級モノアミン又はN−脂肪族ヒドロカルビルアルキレンジアミンをエピクロルヒドリンと共に1:1〜1:1.5のモル比で、溶媒、例えば、キシレンとイソプロパノールの混合物の存在下で、強塩基、例えば、水酸化ナトリウムを添加して、50℃〜100℃の温度で加熱し、その50〜100℃の加熱を約2時間続けることによって調製することができる。そのポリマー状ポリアミンを含有する生成物は、次に溶媒のデカンテーションを行い、次いでフラッシングすることによって分離することができる。
【0093】
そのポリマー状ポリアミンは、好ましくは、少なくとも8個の炭素原子、好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含有するN−脂肪族ヒドロカルビルアルキレンジアミン又は脂肪族第一級アミンのエピクロルヒドリンとの反応生成物である。かかる脂肪族第一級アミンの例は、トール油、獣脂、大豆油、ココナッツ油及び綿実油から誘導されるものである。獣脂アミンのエピクロルヒドリンとの反応から誘導されるポリマー状ポリアミンが好ましい。かかるポリアミンを調製する方法は、米国特許第3917466号の縦列12、調製B.1.0に開示されている。
【0094】
ポリマー生成物を形成する上記のエピクロルヒドリンのアミン類との反応は、周知であり、エポキシ樹脂技術において幅広く使用されている。
【0095】
好ましいポリマー状ポリアミンは、N−獣脂−1,3−ジアミノプロパンのエピクロルヒドリンとの1:1.5モル比の反応生成物である。かかる反応生成物の1つは、Universal Oil Companyによって販売されている「Polyflo(商標)130」である。
【0096】
本発明によれば、プロセス補助添加剤の油溶性スルホン酸成分は、好ましくは、任意の油溶性スルホン酸、例えば、アルカンスルホン酸又はアルキルアリールスルホン酸等である。有用なスルホン酸は、石油をスルホン酸で処理することによってもたらされる石油スルホン酸である。
【0097】
好ましい油溶性スルホン酸は、ドデシルベンゼンスルホン酸及びジノニルナフチルスルホン酸である。
【0098】
該帯電防止剤は、好ましくは、1〜25重量%のポリスルホン共重合体、1〜25重量%のポリマー状ポリアミン、1〜25重量%の油溶性スルホン酸及び25〜95重量%の溶媒を含む。溶媒を無視すると、該帯電防止剤は、好ましくは、約5〜70重量%のポリスルホン共重合体、5〜70重量%のポリマー状ポリアミン、及び5〜70重量%の油溶性スルホン酸を含み、これら3つの成分の合計は好ましくは100%である。
【0099】
適当な溶媒としては、芳香族、パラフィン及びシクロパラフィン化合物が挙げられる。該溶媒は、好ましくは、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、燃料油、イソブタン、ケロシン及びそれらの混合物の中からから選択される。
【0100】
本発明の好ましい実施形態によれば、成分(1)、(2)、(3)及び溶媒の合計重量は、該帯電防止剤の重量の100%を基本的に表す。
【0101】
1つの有用な組成物は、例えば、13.3重量%の上記のように測定して0.05の固有粘度を有する1−デセンと二酸化硫黄が1:1の共重合体、13.3重量%の「Polyflo(商標)130」(N−獣脂−1,3−ジアミノプロパンのエピクロルヒドリンとの1:1.5モル比の反応生成物)、7.4重量%のドデシルベンゼンスルホン酸又はジノニルナフチルスルホン酸、及び66重量%の好ましくはトルエンである芳香族溶媒又はケロシンからなる。
【0102】
別の有用な組成物は、例えば、2〜7重量%の上記のように測定して0.05の固有粘度を有する1−デセンと二酸化硫黄が1:1の共重合体、2〜7重量%の「Polyflo(商標)130」(N−獣脂−1,3−ジアミノプロパンのエピクロルヒドリンとの1:1.5モル比の反応生成物)、2〜8重量%のドデシルベンゼンスルホン酸又はジノニルナフチルスルホン酸、及び78〜94重量%の好ましくは10〜20重量%のトルエンと62〜77重量%のケロシンの混合物である芳香族溶媒からなる。
【0103】
本発明の好ましい実施形態によれば、該プロセス補助添加剤は、Octel社により商標名STADIS(商標)、好ましくはSTADIS(商標)450、より好ましくはSTADIS(商標)425の下で販売されている材料である。
【0104】
ポリスルホン添加剤組成物は、本発明のプロセスにおいて大量に使用される。少なくとも5,000ppmの添加剤組成物を使用することが必須である(注意:この重量は、ポリスルホン共重合体、任意のポリアミン、任意の油溶性スルホン酸及び溶媒を含む全体成分の合計である)。
【0105】
10,000〜30,000ppmの商標名STADIS(商標)の下で販売されている混合ポリマー帯電防止剤組成物を使用するのが好ましい。
【0106】
パートF: 重合プロセス
これのために適する重合プロセスとしては、気相プロセス、スラリー相プロセス、高圧プロセス又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0107】
一実施形態において、本発明のプロセスは、2〜30個の炭素原子、好ましくは2〜12個の炭素原子、より好ましくは2〜8個の炭素原子を有する1つ又は複数のオレフィンモノマーの高圧、スラリー又は気相重合プロセスを対象とする。本発明は、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1及びデセン−1の2つ以上のオレフィンモノマーの重合に特に適切である。
【0108】
本発明の重合プロセスで有用なその他のモノマー類としては、エチレン性不飽和モノマー類、4〜18個の炭素原子を有するジオレフィン類、共役若しくは非共役ジエン類、ポリエン類、ビニルモノマー類及び環状オレフィン類が挙げられる。本発明において有用な非限定のモノマー類としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン類、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンを挙げることができる。
【0109】
本発明のプロセスの最も好ましい実施形態においては、エチレンと共に、4〜15個の炭素原子、好ましくは4〜12個の炭素原子、最も好ましくは4〜8個の炭素原子を有する少なくとも1つのα−オレフィンを有するコモノマーを溶液重合プロセスで重合するエチレンの共重合体が製造される。
【0110】
本発明のプロセスの別の実施形態においては、エチレン又はプロピレンを、場合によって1つがジエンであってもよい少なくとも2つの異なるコモノマーと重合してターポリマーを形成する。
【0111】
一実施形態において、本発明は、プロピレン単独で、又はエチレン、及び/又は4〜12個の炭素原子を有するその他のオレフィン類と共に重合するための重合プロセスを対象とする。ポリプロピレンポリマー類も製造することができる。
【0112】
一般的に気相重合プロセスにおいては、連続サイクルが採用され、そこでは反応装置系のサイクルの一部において、循環しているガス流、さもなければ再循環流又は流動化媒体として知られるものが、反応装置の中で重合の熱によって加熱される。この熱は、サイクルの別の部分において反応装置の外部の冷却装置によって再循環組成物から取り除かれる。一般に、ポリマーを製造するためのガス流動層プロセスにおいては1つ又は複数のモノマーを含有する気体流を、反応条件下の触媒が存在する流動層を通して連続的に循環させる。その気体流は、流動層から回収し、反応装置に再循環させる。同時にポリマー生成物を反応装置から回収し、新たなモノマーを加えて重合したモノマーと置き換える。(例えば、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4543399号参照。)
【0113】
気相プロセスにおける反応装置の圧力は、約100psig(690kPa)〜約500psig(3,448kPa)、好ましくは約200psig(1,379kPa)〜約400psig(2,759kPa)の範囲、より好ましくは約250psig(1,724kPa)〜約350psig(2,414kPa)の範囲で変動し得る。
【0114】
気相プロセスにおける反応装置の温度は、約30℃〜約120℃、好ましくは約60℃〜約115℃、より好ましくは約70℃〜110℃の範囲、最も好ましくは約70℃〜約95℃の範囲で変動し得る。
【0115】
本発明のプロセスで考えられるその他の気相プロセスとしては、連続式又は多段式重合プロセスが挙げられる。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明で利用される反応装置は高能力であり、本発明のプロセスは、1時間当たり500lbs(227Kg/hr)超のポリマー〜約200,000lbs/hr(90,900Kg/hr)以上のポリマーを製造し、好ましくは1,000lbs/hr(455Kg/hr)超、より好ましくは10,000lbs/hr(4,540kg/hr)超、更により好ましくは25,000lbs/hr(11,300kg/hr)超、なおもより好ましくは35,000lbs/hr(15,900kg/hr)超、なおもより好ましくは50,000lbs/hr(22,700kg/hr)超、最も好ましくは65,000lbs/hr(29,000kg/hr)超〜100,000lbs/hr(45,500kg/hr)超を製造しようとするものである。
【0117】
スラリー重合プロセスは、一般に、約1〜約50気圧の範囲及びそれ以上の圧力並びに0℃〜約120℃の範囲の温度を使用する。スラリー重合においては、固体の粒子状ポリマーの懸濁液が、エチレン及びコモノマー類並びにしばしば触媒と一緒の水素が加えられる液体重合希釈媒体中に形成される。希釈剤を含む懸濁液は、断続的又は継続的に反応装置から除去され、その場合、揮発性成分はポリマーから分離され、場合によっては蒸留後、反応装置に再循環される。その重合媒体中に使用される液体の希釈剤は、一般的には、3〜7個の炭素原子を有するアルカン、好ましくは分枝アルカンである。その採用される媒体は重合の条件下で液体であり相対的に不活性でなければならない。プロパン媒体が使用されるときは、該プロセスは反応希釈剤の臨界温度及び圧力より上で運転しなければならない。好ましくは、ヘキサン又はイソブタン媒体が採用される。
【0118】
好ましい本発明の重合技術は、温度をポリマーが溶液の状態になる温度より下に保つ粒子形成重合又はスラリープロセスと称される。かかる技術は、技術的に周知であり、例えば、参照により本明細書に全体として組み込まれている米国特許第3248179号に記載されている。その他のスラリープロセスとしては、ループ型反応装置を使用するもの及び連続しているか、並行しているか、又はそれらが組み合わさった複数の撹拌反応装置を利用するものが挙げられる。スラリープロセスの非限定の例としては、連続式ループ型又は撹拌槽プロセスが挙げられる。又、スラリープロセスのその他の例は、参照により本明細書に全体として組み込まれている米国特許第4613484号に記載されている。
【0119】
一実施形態において、本発明のスラリープロセスで使用される反応装置は、高能力であり、本発明のプロセスは、1時間当たり2,000lbs(907Kg/hr)を超え、より好ましくは5,000lbs/hr(2,268Kg/hr)を超え、最も好ましくは10,000lbs/hr(4540Kg/hr)を超えてポリマーを製造している。別の実施形態において、本発明のプロセスで使用されるスラリー反応装置は、ポリマーを1時間当たり15,000lbs(6,804Kg/hr)を超え、好ましくは25,000lbs/hr(11,340Kg/hr)を超え約100,000lbs/hr(45,500Kg/hr)まで製造している。
【0120】
さらなる詳細を、以下の非限定の例で説明する。
【実施例】
【0121】
パートA−触媒合成
触媒
Grace−Davison Sylopol 948シリカを、以下の章に記載されている「パッシファイド(passified)」シリカ(即ち、トリエチルアルミニウム「TEAL」で処理したシリカ)の調製で使用する前に、窒素雰囲気下で5時間、250℃で焼成脱水した。
【0122】
(A.1)TEAL処理シリカ(SiO/TEAL)
乾燥しているガス抜きしたヘプタンの650mLを1Lのフラスコに入れ、続いて、商標STADIS(商標)425の下で販売されているヘプタン中のポリスルホン/溶媒の帯電防止剤(Octel Starrion L.L.C.から購入した)の0.29重量%溶液の11.25mL、及び焼成したSylopol 948シリカの150gを加えた。そのフラスコをロータリーエバポレーターの回転アームに取り付け、15分間ゆっくり回転させた。25重量%のTEALのヘキサン中の溶液の100mLをそのフラスコに加え、次いで、手で回転させた(注意:幾分発熱がある)。ヘキサン中25重量%のTEAL75mLを次に加えた。そのフラスコを次にロータリーエバポレーターの回転アームに取り付け、1時間ゆっくり回転させた。そのスラリーを濾過した。そのフィルターケーキをフラスコに戻し、350mLのヘプタン中に再度スラリー化し、更に30分間回転させた。そのスラリーを濾過した。そのフィルターケーキをフラスコに戻し、350mLのヘプタン中に再度スラリー化し、更に30分間回転させた。そのスラリーは、3回目の濾過をした。そのフィルターケーキをフラスコに戻し、350mLのヘプタン並びに11.25mLのSTADIS(商標)425のヘプタン中の0.29重量%溶液中に再度スラリー化した。そのフラスコをロータリーエバポレーターの回転アームに取り付け、15分間ゆっくり回転させた。溶媒を真空下で60℃まで加熱しながら除去し、300ミリトルの最終真空度に到達させた。
【0123】
(A.2)担持触媒の調製(方法A−「連続」STADIS(商標)添加)
不活性雰囲気条件下のグローブボックス中で作業し、活性化剤(好ましい実施形態のパートCに記載)、即ち[(C1837CHNH]{(CB(COH)})の9.58重量%トルエン溶液の1.43mL及びトルエン中0.25モルのTEALの0.42mLを、100mLの丸底フラスコ中で混合し、5分間そのままにした。1.61gのSiO/TEAL(A.1から)を次に加え、その混合物をLab−Line Mistral Multi−Mixer上で高速で1時間震盪した。遷移金属触媒(又は好ましい実施形態のパートBに記載の触媒化合物)、即ちヘプタン中の(N−(t−ブチル)−1,1−ジ−p−トリル−1−((1,2,3,3a,7a−η)−3−(1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)1H−インデン−1−イル)シランアミナート−(2−)−N−)ジメチルチタニウム触媒分子の8重量%の1.08mLを、ヘキセンの0.3mLとプレミックスした。その触媒分子/ヘキセン溶液を、次に担体/活性化剤材料を含有する丸底フラスコに加えた。そのフラスコを次に1時間震盪した。最終生成物中の目標の合計帯電防止剤濃度(表1及び2に示されているもの)を達成するためのヘプタン中のSTADIS(商標)425の0.29重量%溶液の(計算した)量を、次にその混合物に加え、続けて更に15分間混合した。そのフラスコを次に真空下に置き、300ミリトルの残圧まで乾燥した。
【0124】
(A.3)担持触媒の調製(方法B−「同時」STADIS(商標)添加)
不活性雰囲気条件下のグローブボックス中で作業し、[(C1837CHNH]{(CB(COH)})の9.58重量%トルエン溶液の1.43mL及びトルエン中0.25モルのTEALの0.42mLを、100mLの丸底フラスコ中で混合し、5分間そのままにした。1.61gのSiO/TEALを次に加え、その混合物をLab−Line Mistral Multi−Mixer上で高速で1時間震盪した。ヘプタン中の(N−(t−ブチル)−1,1−ジ−p−トリル−1−((1,2,3,3a,7a−η)−3−(1,3−ジヒドロ−2H−イソインドール−2−イル)1H−インデン−1−イル)シランアミナート−(2−)−N−)ジメチルチタニウム触媒分子の8重量%の1.08mLを、ヘキセンの0.3mLとプレミックスした。最終生成物中の目標の合計薬剤濃度を達成するためのSTADIS(商標)425の(計算した)量を、次にその混合物に加えた(表1及び2参照)。その触媒分子/ヘキセン/STADIS(商標)の溶液を、次に担体/活性化剤材料を含有する丸底フラスコに加えた。そのフラスコを次に1時間震盪した。そのフラスコを次に真空下に置き、300ミリトルの残圧まで乾燥した。
【0125】
パートB−バッチ式重合
ベンチ規模の反応装置でのエチレン重合実験を気相作業における2Lの撹拌式オートクレーブ反応装置によって実施した。エチレンの重合は、単独重合条件下で総体作業圧力300ポンド/平方インチゲージ(psig)、80℃で60分間続けた。エチレンの分圧は、120psigであり、窒素が該気相混合物の残りを構成した(約60モル%)。反応装置の調整と設定の間、トリ−イソブチルアルミニウム(TiBAL)の25重量パーセントの溶液0.4mLを、反応装置内部及びシードベッド(seedbed)(150gの高密度ポリエチレン)の浄化を助けるための不純物スカベンジャーとして使用した。触媒(表1参照)をグローブボックス中の嫌気性条件下で導入管に充填し、次いで反応装置に接続した。反応装置のガス組成を構成するために使用する窒素の一部を使用して重合のスタート時点でその触媒を反応装置に押し込んだ。
【表1】


【表2】


注:1=ポリエチレンのグラム数/チタンのミリモル−エチレン雰囲気−時間
2=ポリエチレンのグラム数/担持触媒のグラム
【0126】
統計的分析により本発明の触媒の優れた活性が確認される。その統計的分析の限られた概要を表3で提供する。
【表3】

【0127】
パートC−TSR重合
連続式のエチレン−ヘキセン気相共重合実験を、より大きい70Lの技術的規模の反応装置(Technical Scale Reactor(TSR))中の連続式気相運転で実施した。エチレンの重合は、300ポンド/平方インチゲージ(psig)の全体の操作圧で、80℃で行った。エチレンとヘキセンに対する気相組成は、クローズドループのプロセス制御によりそれぞれ50.0及び0.22モルパーセントの値に制御した。重合中に水素をエチレンの仕込みに対して0.00215の仕込みモル比で反応装置に計量仕込みした。窒素が該気相混合物の残りを構成した(ほぼ49モル%)。これらの条件に対する典型的な生産速度は、1時間当たり2〜2.5のポリエチレンである。
【0128】
触媒を反応装置に施すために使用される触媒計量装置には、反応装置に触媒を導くモニター管を通過する固体材料によって運ばれる静電荷を測定するプローブが装備されている。
【0129】
2つの触媒(表1の触媒1及び触媒2に相当する)を技術的規模の反応装置の触媒計測システムによって試験した。
【0130】
該プローブは、静電荷を検出しなかった(触媒を管に通していないときの「対照」の試験の間)。触媒1がその管を通過していたときは大きな静電気がそのプローブによって観察された。触媒3が管を通過しているときそのプローブが検出した静電荷はかなり低いものであった。
【0131】
2つの触媒(表1の触媒3及び6に相当する)を、連続共重合条件下での技術的規模の反応装置内で5日間にわたって試験した。触媒3は、ヘキセン/エチレン共重合体を製造するために33時間にわたって問題なく使用された。そのとき、共重合を妨害することなく、触媒6に遷移が起こり、重合が更に60時間にわたって行われた。実験の間、実質的な反応装置の汚損又は凝集塊は、何ら観察されなかった。それに対して、触媒1による比較実験は、いつもどおり、数時間後には重合反応の停止を強要するのに十分な汚損を生成し、場合によっては静電気/汚損状態のために触媒1による安定な重合を達成することが不可能でさえあった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
エチレンの重合のための非常に活性な担持「シングルサイト」触媒が、多孔性金属酸化物担体及び非常に大量の帯電防止剤により調製される。大量の帯電防止剤の使用によって、シングルサイト触媒の重合反応装置を汚す傾向が減少する。これらの触媒により製造されたポリエチレンは、軟質のプラスチックフィルム乃至硬質のプラスチック容器に及ぶ多種多様の押出し及び成形物品を製造するために使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性金属酸化物、遷移金属触媒系及び帯電防止剤を含むオレフィン重合触媒であって、前記帯電防止剤は、ポリスルホン及び前記ポリスルホンの溶媒を含み、前記触媒は、前記帯電防止剤が前記多孔性金属酸化物に、前記多孔性金属酸化物の重量を基準として5,000〜50,000重量ppmの量で添加されることを更に特徴とする触媒。
【請求項2】
前記多孔性金属酸化物が、0.1〜5mL/gの細孔容積を有することを特徴とするシリカである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記遷移金属触媒系が、有機金属触媒化合物及び活性化剤を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記有機金属触媒化合物が、モノシクロペンタジエニル錯体及びビス(シクロペンタジエニル)錯体からなる群より選択される4族金属錯体である、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記有機金属触媒化合物が、架橋したシクロペンタジエニル−アミン二座配位子を有することを特徴とする4族金属錯体を含む、請求項3に記載の触媒。
【請求項6】
前記活性化剤が、単一のホウ素原子及び活性水素部分を含む置換基を含むイオン性活性化剤である、請求項3に記載の触媒。
【請求項7】
〜C10αオレフィン類からなる群より選択される少なくとも1つのオレフィンを、重合反応装置中で、ポリスルホン及び前記ポリスルホンのための溶媒を含むオレフィン重合触媒により重合するための方法であって、前記触媒は、前記帯電防止剤が前記多孔性金属酸化物に、前記多孔性金属酸化物の重量を基準として5,000〜50,000重量ppmの量で添加されることを更に特徴とする方法。
【請求項8】
前記多孔性金属酸化物が、0.1〜5mL/gの細孔容積を有することを特徴とするシリカである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属触媒系が、有機金属触媒化合物及び活性化剤を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記反応装置が気相反応装置である、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2009−538936(P2009−538936A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512378(P2009−512378)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000737
【国際公開番号】WO2007/137396
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(505382548)ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム (8)
【出願人】(508352193)イネオス ヨーロッパ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】