非常用エレベータ
【課題】乗りかごの昇降時の風切音を低減させることができる非常用エレベータの昇降路を提供する。
【解決手段】実施形態の非常用エレベータ2は内側に昇降路1と連通口19と開閉部材24と駆動部16とを備える。昇降路1は建造物に設けられかつ内側に乗りかごが昇降する。昇降路1は複数の壁17,17aを備えている。複数の壁17,17aは互いに取付けられる。連通口19は複数の壁17,17aのうちの少なくとも一つの壁17aに設けられている。連通口19は壁17aが面する乗用エレベータの昇降路空間と連通する。開閉部材24は連通口19を開閉自在に壁17aに取り付けられている。開閉部材24は耐火材で構成されている。駆動部16は非常用エレベータの火災運転時には開閉部材24に連通口19を閉じさせる。
【解決手段】実施形態の非常用エレベータ2は内側に昇降路1と連通口19と開閉部材24と駆動部16とを備える。昇降路1は建造物に設けられかつ内側に乗りかごが昇降する。昇降路1は複数の壁17,17aを備えている。複数の壁17,17aは互いに取付けられる。連通口19は複数の壁17,17aのうちの少なくとも一つの壁17aに設けられている。連通口19は壁17aが面する乗用エレベータの昇降路空間と連通する。開閉部材24は連通口19を開閉自在に壁17aに取り付けられている。開閉部材24は耐火材で構成されている。駆動部16は非常用エレベータの火災運転時には開閉部材24に連通口19を閉じさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非常用エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非常用エレベータの昇降路は、耐火材で構成された耐火壁などにより囲まれて構成されることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−197106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から用いられている非常用エレベータの昇降路は、耐火壁などにより囲まれて構成されて、乗用エレベータの昇降路内の空間と仕切られているので、非常用エレベータの乗りかごが昇降する際に、風切音を生じさせる。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、乗りかごの昇降時の風切音を低減させることができる非常用エレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の非常用エレベータは、昇降路と連通口と開閉部材と駆動部とを備える。昇降路は建造物に設けられかつ内側に乗りかごが昇降する。昇降路は複数の耐火壁を有している。複数の耐火壁は互いに取付けられる。連通口は複数の耐火壁のうちの少なくとも一つの耐火壁に設けられている。連通口は前記少なくとも一つの耐火壁が面する開放空間と連通する。開閉部材は連通口を開閉自在に前記少なくとも一つの耐火壁に取り付けられている。開閉部材は耐火材で構成されている。駆動部は非常用エレベータの非常運転時には開閉部材に連通口を閉じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態1に係る非常用エレベータの断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る非常用エレベータの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る開閉部の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る開閉部の鉛直方向に沿った断面図(図3に示すA−A断面図)である。
【図6】図6は、実施形態1に係る開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った断面図(図4に示すB−B断面図)である。
【図7】図7は、実施形態1に係る開閉部のエレベータ制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態1に係る変形例1の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態の鉛直方向に沿った断面図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る変形例1の開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った断面図である。
【図10】図10は、実施形態1に係る変形例2の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態の鉛直方向に沿った一部の断面図である。
【図11】図11は、実施形態1に係る変形例2の開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った一部の断面図である。
【図12】図12は、実施形態2に係る非常用エレベータの開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態を示す斜視図である。
【図13】図13は、実施形態2に係る非常用エレベータの構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、実施形態3に係る非常用エレベータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る非常用エレベータの断面図、図2は、実施形態1に係る非常用エレベータの構成を示すブロック図、図3は、実施形態1に係る開閉部の構成を示す斜視図、図4は、実施形態1に係る開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態を示す斜視図、図5は、実施形態1に係る開閉部の鉛直方向に沿った断面図(図3に示すA−A断面図)、図6は、実施形態1に係る開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った断面図(図4に示すB−B断面図)、図7は、実施形態1に係る開閉部のエレベータ制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0009】
図1に示す本実施形態の非常用エレベータ2は、地震発生時や火災時(以下、非常時という)などにも動作することが求められているものであり、建築基準法などにより所定の建造物(建築物ともいう)3に設置が義務づけられている。即ち、非常用エレベータ2は、建造物3に設けられている。非常用エレベータ2は、通常運転時には、乗りかご4内の操作装置の各種のボタン及び各階の乗場5に設けられた呼び装置の呼びボタンの操作による呼び登録に基づいて乗客などを建造物3の所望の階に運搬する。
【0010】
非常用エレベータ2は、非常運転時に、後述するキースイッチ31a,31bが操作されると各階の呼び装置の呼びボタンからの呼び登録を無効にして、乗りかご4内の操作装置の各種のボタンの操作による呼び登録を受付けて、乗りかご4の扉6を開いた状態でも消火・救出活動を行なう消防隊などを建造物3の所望の階に運搬するものである。なお、通常運転とは、非常時などの各種の災害が発生していない状況下において、乗りかご4内の操作装置の各種のボタン及び各階の呼び装置の呼びボタンからの呼び登録を受け付けて、乗客や荷物などを運搬する運転をいい、非常運転とは、建造物3の非常時に、消火活動や救護活動を行うために、乗りかご4内の操作装置の各種のボタンからの呼び登録のみを受け付けて、乗りかご4の扉6を開いたままの状態などで消防隊員などを運搬する運転をいう。
【0011】
非常用エレベータ2は、図1に示すように、昇降路1と、乗りかご4と、一対のかご用ガイドレール7と、カウンタウェイト8と、一対のウェイト用ガイドレール9と、主ロープと、駆動機構と、安全機構とを備えている。昇降路1は、建造物3の複数の階に亘って設けられ、かつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。なお、この昇降路1の詳細な構成は、後ほど説明する。乗りかご4は、内側に乗客や消防隊員を収容可能な箱状に形成されている。乗りかご4は、昇降路1内に鉛直方向に移動自在に収容されている。乗りかご4には、この乗りかご4への乗客や消防隊員の出入りを自在とする扉6が開閉自在に設けられている。乗りかご4内には、非常用エレベータ2の各種の操作を行うための操作装置の各種のボタンと、後述するキースイッチ31a(図2に示す)が設けられている。
【0012】
かご用ガイドレール7は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。かご用ガイドレール7は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路1内に設けられている。かご用ガイドレール7は、互いの間に乗りかご4を位置づけているとともに、この乗りかご4を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0013】
カウンタウェイト8は、昇降路1内に鉛直方向に移動自在に収容されている。カウンタウェイト8の重さは、所定の数の乗客又は消防隊員が乗り込んだ乗りかご4の重さとほぼ等しくなっている。
【0014】
ウェイト用ガイドレール9は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。ウェイト用ガイドレール9は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路1内に設けられている。ウェイト用ガイドレール9は、互いの間にカウンタウェイト8を位置づけているとともに、このカウンタウェイト8を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0015】
主ロープは、一端部に乗りかご4が固定され、かつ他端部にカウンタウェイト8が固定されている。主ロープは、昇降路1内に設けられた図示しないシープに掛渡されて、乗りかご4とカウンタウェイト8とが互いに上下反対方向に昇降するように設けられている。即ち、非常用エレベータ2は、所謂、つるべ式のエレベータとなっている。
【0016】
駆動機構は、周知の巻き上げ機などを備えており、主ロープを昇降路1内で移動させて、乗りかご4とカウンタウェイト8を昇降させる。安全機構は、周知のガバナや非常止め装置を備えており、万一、主ロープが切断された場合に乗りかご4の緊急停止などを行う。
【0017】
前述した構成の非常用エレベータ2は、巻き上げ機が主ロープをその長手方向に移動させることで、乗りかご4とカウンタウェイト8とを互いに上下反対方向に昇降させる。また、本実施形態では、非常用エレベータ2は、図1に示すように、乗用エレベータ10と隣接して設けられている。乗用エレベータ10は、非常用エレベータ2と同様に、昇降路11と、開閉自在な扉6aが設けられた乗りかご4aと、一対のかご用ガイドレール7aと、カウンタウェイト8aと、一対のウェイト用ガイドレール9aと、主ロープと、駆動機構と、安全機構などとを備えている。なお、乗用エレベータ10は、非常時などにも動作することが求められていないものである。
【0018】
乗用エレベータの昇降路11も、前述した昇降路1と同様に、建造物3の複数の階に亘って設けられかつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。乗用エレベータの昇降路11は、建造物3の床材や壁材として一般的に用いられる材料で構成された壁12a、床12b及び天井と、昇降路1を構成する後述する一つの壁17aと、により囲まれて構成されている。即ち、乗用エレベータの昇降路11を形成する壁12a、床12b及び天井を構成する材料は、耐火材でなくても良い。また、乗用エレベータ10の各階の乗場13は、耐火材(不燃材ともいう)で構成された後述する壁22aなどにより囲まれていない。また、昇降路11を形成しかつ建造物3の各階の乗場13に面する壁12aには、図1に示すように、乗り降り口20aと、乗場戸21aとが設けられている。
【0019】
図1には、乗用エレベータ10は、一つのみ示されているが、本発明では、乗用エレベータ10は、乗用エレベータの昇降路11が互いに平行に隣接して複数設けられていても良い。乗用エレベータ10が複数設けられている場合には、これら複数の乗用エレベータの昇降路11は、互いを仕切る壁が設けられることなく、あたかも一つの大きな昇降路1となっていても良く、互いを仕切る壁が設けられていても良い。また、乗用エレベータの昇降路11の前述した壁12a及び床12bなどで囲まれて形成され、かつ、乗りかご4aが昇降する昇降路空間(昇降路11内の空間)K1は、特許請求の範囲に記載された開放空間をなしている。本発明でいう開放空間とは、通常運転時に、非常用エレベータ2の乗りかご4を乗用エレベータ10の乗りかご4aと同等の速度で昇降させても、乗りかご4の昇降により昇降路1内から押し出された空気が後述する連通口19を通して流れ込んで、非常用エレベータ2の乗りかご4の生じる風切音が乗用エレベータ10の乗りかご4aの生じる風切音と略等しい強さとなるように、乗りかご4の体積よりも十分に大きな容積の空間をいう。
【0020】
また、非常用エレベータ2は、図1に示すように、昇降路1と、開閉部15と、駆動部16(図2に示す)とを備えている。昇降路1は、建造物3の複数の階に亘って設けられている。昇降路1は、建造物3に設けられかつ周知の耐火材で構成されて互いに組みつけられて乗りかご4を囲んだ複数の壁17、床18や天井で構成されている。これらの壁17、床18や天井は、特許請求の範囲に記載された耐火壁をなしている。壁17、床18や天井を構成する材料として、従来から建造物3の床や壁の材料として用いられている耐火材を用いることができる。複数の壁17、床18や天井は、互いに組みつけられて、内側に乗りかご4、カウンタウェイト8及びガイドレール7,9を収容する昇降路空間(昇降路1内の空間)Kを形成している。なお、昇降路1は、非常用エレベータ2の乗りかご4を昇降路空間Kに一つのみ収容している。昇降路1は、複数の壁17、床18や天井により、昇降路空間Kが昇降路空間K1や建造物3の外部空間48から区切られている。また、昇降路空間Kの水平方向の断面積は、乗りかご4の水平方向の断面積よりも若干大きく形成されている。
【0021】
また、昇降路1を構成する複数の壁17のうちの乗用エレベータ10の昇降路空間K1に面する一つの壁17(以下、符号17aで示す)には、図1に示すように、連通口19が設けられている。なお、一つの壁17aは、昇降路空間K1に面していることで、壁12aや床12bなどとともに、昇降路11を形成する壁となっている。連通口19は、勿論、壁17aを貫通して、昇降路空間K,K1同士を連通している。連通口19は、壁17aの上下両端部に設けられている。また、連通口19の平面形状は、矩形状に形成されている。
【0022】
さらに、昇降路1を構成する複数の壁17のうちの建造物3の各階の乗場5に面する壁17には、図1に示すように、乗り降り口20が設けられている。乗り降り口20は、勿論、壁17を貫通している。また、壁17には、乗り降り口20を開閉する乗場戸21が設けられている。乗場戸21は、乗りかご4が建造物3の各階の乗場5に停止すると、乗りかご4に設けられた扉6に重なる。また、非常用エレベータ2の乗場5は、耐火構造の壁22a、床22bや天井により、乗用エレベータ10の乗場13と仕切られている。また、非常用エレベータ2の乗場5を仕切る耐火構造の壁22aには、乗場5を密閉可能な防火戸23が取り付けられている。防火戸23は、通常運転時には、乗場5を開放し、非常運転時には、乗場5を密閉する。また、防火戸23には、密閉時にも乗客を避難させることができる図示しないくぐり戸が取り付けられている。前述した構成により、昇降路1及び乗場5は、壁17や耐火構造の壁22aなどにより囲まれて、図1中の一点鎖線で囲まれた防火区画に構成されている。
【0023】
開閉部15は、連通口19に設けられている、開閉部15は、図3及び図4に示すように、複数の開閉部材24を備えている。開閉部材24は、それぞれ、帯板状に形成されているとともに、連通口19内に鉛直方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。開閉部材24は、長手方向が水平方向と平行に設けられているとともに、その幅方向の中央に設けられた回転軸25を中心として回転自在に壁17aに支持されている。また、開閉部材24の回転軸25は、水平方向と壁17aの表面との双方と平行である。
【0024】
開閉部材24は、その両表面が水平方向と平行な状態では、図3及び図5に示すように、互いに間隔をあけて連通口19を開放する。また、開閉部材24は、その両表面が鉛直方向と平行な状態では、図4及び図6に示すように、互いの外縁が重なって連通口19を閉鎖する。このため、開閉部材24は、回転軸25を中心として回転することで、連通口19を開放する開放位置と、連通口19を閉鎖する閉鎖位置とに亘って変位する。また、開閉部材24の一端部には、回転軸25と同軸のスプロケット26と、ポテンショメータ27(図2に示す)が取付けられている。スプロケット26とポテンショメータ27は、壁17a内に形成された空間内に設けられている。開閉部材24は、壁17aに対してスプロケット26と一体に回転される。ポテンショメータ27は、開閉部材24の回転角度を検出して、検出した結果を後述するエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0025】
開閉部材24は、前述した壁17,17aを構成する耐火材で構成された部材本体28と、この部材本体28の幅方向の縁部に設けられたシール部材29とを備えている。シール部材29は、耐火性(不燃性)と弾性との双方を有する材料としてのゴムで構成されている。シール部材29は、連通口19の内面及び他の開閉部材24の部材本体28に重なると、これらとの間を機密に保つ。図示例では、一つの連通口19内に設けられる複数の開閉部材24のうちの最も下方に位置する開閉部材24では、部材本体28の幅方向の両縁部にシール部材29が設けられている。他の開閉部材24では、前記閉鎖位置に位置づけられた時に上側に位置する部材本体28の幅方向の一方の縁部のみにシール部材29が設けられている。シール部材29は、開閉部材24が閉鎖位置に位置付けられると、連通口19の内面及び他の開閉部材24の部材本体28に重なって、これらとの間を気密に保つ。
【0026】
駆動部16は、図2に示すように、モータ30と、キースイッチ31a,31bと、フィラメントスイッチ32と、火災警報器33と、指令受信部34と、エレベータ制御部35とを備えている。モータ30は、前述した一つの壁17aに支持部材36を介して取付けられている。図示例では、モータ30は、前述した一つの壁17aの上端部に設けられている。
【0027】
モータ30の出力軸は、開閉部材24の長手方向と平行に設けられている。モータ30の出力軸には、スプロケット37が取付けられている。モータ30のスプロケット37と、全ての開閉部材24に取付けられたスプロケット26とには、無端状のチェーン38が掛け渡されている。チェーン38は、壁17a内に形成された空間内に通されている。モータ30は、出力軸を回転駆動することで、チェーン38を前述した空間内で循環走行させるとともに、各開閉部材24をその回転軸25を中心として回転させる。モータ30は、開閉部材24を回転させることで、これらの開閉部材24を開閉位置と閉鎖位置とに亘って変位させる。なお、モータ30には、非常用エレベータ2のG回路や非常用電源などからの電力が供給される。
【0028】
キースイッチ31aは、乗りかご4の点検ボックス内に設けられている。キースイッチ31bは、乗場5のうちの建造物3の外部と連通する地下1階や1階などの乗場5に設けられている。キースイッチ31a,31bは、通常運転モードと非常運転モードとを切り替えるために用いられる。キースイッチ31,31bは、消防隊員などにより操作されると、この操作されたことを示す情報をエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0029】
フィラメントスイッチ32は、フィラメント39と、溶断判定部40とを備えている。フィラメント39は、複数設けられている。フィラメント39は、前述した建造物3の各階の所定位置に設けられている。フィラメント39は、建造物3に非常事態が生じると、非常時の火災の熱により溶断する。溶断判定部40は、全てのフィラメント39に接続して、各フィラメント39に電流を流している。溶断判定部40は、各フィラメント39に電流が流れるか否かにより、各フィラメント39が溶断したか否かを判定する。溶断判定部40は、勿論、電流が流れなくなったフィラメント39が溶断したと判定し、電流が流れているフィラメント39が溶断していないと判定する。フィラメントスイッチ32は、溶断判定部40が少なくとも一つのフィラメント39が溶断したと判定すると、この少なくとも一つのフィラメント39が溶断したことを示す情報をエレベータ制御部35に向かって出力する。こうして、フィラメントスイッチ32は、少なくとも一つのフィラメント39が溶断したか否かを判定して判定結果をエレベータ制御部35に向かって出力することで、建造物3に火災が生じたか否かを検出して検出した結果をエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0030】
火災警報器33は、複数設けられている。火災警報器33は、前述した建造物3の各階の所定位置に設けられている。火災警報器33は、建造物3に火災が生じると、この火災を検出する。火災警報器33は、火災を検出すると、この火災が検出したことを示す情報をエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0031】
指令受信部34は、各地方自治体などの消防指令センターからの通信を受信する。指令受信部34は、受信した情報をエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0032】
エレベータ制御部35は、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。エレベータ制御部35の入力ポートには、キースイッチ31a,31b、フィラメントスイッチ32、火災警報器33、指令受信部34及び各ポテンショメータ27が接続している。エレベータ制御部35の出力ポートには、図示しないドライバを介してモータ30が接続している。また、エレベータ制御部35は、乗りかご4の操作装置の各種のボタンや、各階の乗場5の呼び装置の呼びボタン、駆動機構などとも接続して、非常用エレベータ2全体の制御をつかさどる。
【0033】
エレベータ制御部35は、通常運転モードと、非常運転モードとが切り替わる。通常運転モードでは、エレベータ制御部35は、非常用エレベータ2を前述した通常運転させる。非常運転モードでは、エレベータ制御部35は、非常用エレベータ2を前述した非常運転させる。エレベータ制御部35は、消防隊員などから操作されたことを示す情報がキースイッチ31a,31bから入力すると、通常運転モードから非常運転モードに切り替わる。エレベータ制御部35は、フィラメントスイッチ32と火災警報器33のいずれかから火災を示す情報が入力すると、建造物3に火災が生じたと判定して、通常運転モードから非常運転モードに切り替わる。
【0034】
エレベータ制御部35は、指令受信部34から消防指令センターから建造物3が火災であることを示す情報が入力すると、通常運転モードから非常運転モードに切り替わる。このように、エレベータ制御部35は、キースイッチ31a,31bの操作と、フィラメントスイッチ32や火災警報器33の火災の検出と、消防指令センターからの建造物3が火災であることを示す情報の入力と、のうちの少なくとも一つにより、通常運転モードから非常運転モードに切り替わる。
【0035】
また、エレベータ制御部35は、通常運転モードでは、モータ30を駆動して、開閉部15の開閉部材24を前述した開放位置に位置付ける。エレベータ制御部35は、非常運転モードでは、モータ30を駆動して、開閉部15の開閉部材24を前述した閉鎖位置に位置付ける。具体的には、エレベータ制御部35は、例えば、開放位置と閉鎖位置に位置付けられた時に各ポテンショメータ27が出力する情報を予め記憶しておき、ポテンショメータ27が出力する情報が予め記憶した情報となるように、モータ30を駆動することにより、開閉部15の各開閉部材24を開放位置と閉鎖位置とに亘って変位させる。こうして、非常運転モード即ち非常用エレベータ2の非常運転時には、駆動部16が閉鎖部材24に連通口19を閉じさせる。
【0036】
前述した構成の非常用エレベータ2のエレベータ制御部35は、通常運転時には、図7に一例が示されるフローチャートを繰り返し実行している。図7に示されたフローチャートのステップS1では、まず、エレベータ制御部35が、通常運転モードとされて、ステップS2に進む。ステップS2では、エレベータ制御部35が、キースイッチ31a,31bが操作されたか否かを判定し、キースイッチ31a,31bが操作されたと判定するとステップS5に進み、キースイッチ31a,31bが操作されていないと判定するとステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、エレベータ制御部35が、複数のフィラメントスイッチ32と複数の火災警報器33とのうちの少なくとも一つが火災を検出したか否かを判定し、少なくとも一つが火災を検出したと判定するとステップS5に進み、複数のフィラメントスイッチ32と複数の火災警報器33との全てが火災を検出していないとステップS4に進む。ステップS4では、エレベータ制御部35が、指令受信部34が建造物3に火災が生じたことを示す情報を受信したか否かを判定し、指令受信部34が建造物3に火災が生じたことを示す情報を受信したと判定するとステップS5に進み、指令受信部34が建造物3に火災が生じたことを示す情報を受信していないと判定するとステップS1に戻る。エレベータ制御部35は、ステップS5では、非常運転モードに切り替わる。そして、エレベータ制御部35は、通常運転モードから非常運転モードに切り替わるまで、ステップS1からステップS4までを繰り返し実行する。このように、ステップS3において、複数のフィラメントスイッチ32と複数の火災警報器33とのうちの少なくとも一つが火災を検出したと判定するとステップS5に進むことで、駆動部16が、建造物3に設けられたフィラメント39が火災の熱により溶断すると開閉部材24に連通口19を閉じさせるとともに、建造物3に設けられた火災警報器33が火災であることを検出すると開閉部材24に連通口19を閉じさせる。
【0038】
前述した構成の非常用エレベータ2は、キースイッチ31a,31bが操作されずに、フィラメントスイッチ32又は火災警報器33が火災を検出せずに、消防指令センターからの建造物3が火災であることを示す情報を受信しないと、エレベータ制御部35が通常運転モードとされて、乗客を所望の階まで運ぶ通常運転を行う。そして、非常時又は訓練時において、非常用エレベータ2は、キースイッチ31a,31bの操作と、フィラメントスイッチ32又は火災警報器33の火災の検出と、消防指令センターからの建造物3が火災であることを示す情報の受信とのうち一つが起こると、エレベータ制御部35が非常運転モードとされて、乗場5の呼び装置の呼びボタンからの呼び登録を無効にして、救護活動のために消防隊員を所望の階まで運ぶ非常運転を行う。
【0039】
上記のように構成された非常用エレベータの昇降路1は、駆動部16が、非常用エレベータ2の非常運転時に少なくとも一つの壁17aに設けられた連通口19を開閉部材24に閉じさせるので、非常運転時ではない時即ち通常運転時には、開閉部材24に連通口19を開放させておく。このために、通常運転時には、非常用エレベータ2の昇降路1空間が開放空間としての乗用エレベータ10の昇降路空間K1に連通して、昇降時に乗りかご4により押される空気が、連通口19を通って、速やかに昇降路空間K1に押し出されることとなる。したがって、通常運転時に、壁17,17aの内面と乗りかご4との間の狭い隙間を通って、昇降中に乗りかご4の前方側から後方側に流れる空気の量を抑制することができる。このために、通常運転時には、乗用エレベータ10の乗りかご4aと同等の昇降速度で、非常用エレベータ2の乗りかご4を昇降させても、乗りかご4の前方側から後方側に流れる空気の流速を乗用エレベータ10の流速と同等に抑制することができる。よって、非常用エレベータ2の乗りかご4の昇降時の風切音を乗用エレベータ10の風切音と同等に低減することができる。
【0040】
また、駆動部16が、火災時には耐火材で構成された開閉部材24に連通口19を閉じさせるので、火災時には昇降路空間Kを壁17,17aにより外部から確実に区切ることができる。このために、火災時に非常用エレベータ2を消火活動に確実に用いることができる。
【0041】
さらに、乗用エレベータ10の乗りかご4aと同等の昇降速度で、非常用エレベータ2の乗りかご4を昇降させても、風切音を乗用エレベータ10の風切音と同等に低減することができるので、通常運転時には、非常用エレベータ2の乗りかご4を乗用エレベータ10の乗りかご4aと同等の速度で昇降させることができる。よって、非常用エレベータ2を乗用エレベータ10と同等に運用することができ、通常運転時に限らず非常運転時にも、乗客を所望の階までスムーズに運ぶことができ、乗客に対するサービスの低下を抑制することができる。
【0042】
また、駆動部16が、建造物3に設けられたフィラメント39が火災の熱により溶断すると開閉部材24に連通口19を閉じさせる。このために、通常運転から非常運転に切り替えるキースイッチ31a,31bなどを操作しない場合であっても、火災の進行によりフィラメント39が火災の熱により溶断することにより、開閉部材24に連通口19をより確実に閉じさせることができる。
【0043】
また、駆動部16が、建造物3に設けられた火災警報器33が火災であることを検出すると開閉部材24に連通口19を閉じさせる。このために、通常運転から非常運転に切り替えるキースイッチ31a,31bなどを操作しない場合であっても、火災の進行により火災警報器33が火災であることを検出することにより、開閉部材24に連通口19をより確実に閉じさせることができる。
【0044】
連通口19が設けられた壁17aを乗用エレベータ10に隣接させているので、開放空間として乗用エレベータ10の昇降路空間K1を用いている。このために、開放空間の広さを昇降路1の広さ以上とすることができる。したがって、通常運転時に、非常用エレベータ2を乗用エレベータ10と同様に用いても、乗用エレベータ10と同等に風切音を抑制することができる。また、開放空間として、専用の空間を建造物3内に設ける必要がないので、建造物3内のスペースを有効活用することができる。
【0045】
〔変形例1〕
以下、実施形態1に係る昇降路1の変形例1について説明する。なお、前述した実施形態1と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図8は、実施形態1に係る変形例1の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態の鉛直方向に沿った断面図、図9は、実施形態1に係る変形例の開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った断面図である。
【0046】
実施形態1の変形例1では、図8及び図9に示すように、開閉部材24の外縁に厚みが中央部よりも薄くなる切欠き部41を形成している。これら図8及び図9に示す変形例では、開閉部材24が閉鎖位置に位置つけられると、切欠き部41に他の開閉部材24の外縁に形成された切欠き部41が重なるのが望ましい。また、変形例1では、切欠き部41は、部材本体28とシール部材29との双方に設けられている。この変形例1によれば、閉塞位置における複数の開閉部材24の外縁同士が重なっているので、閉塞位置における開閉部材24同士の密着度を向上させて、これら開閉部材24間から火災時の煙などが昇降路空間K内に侵入することを確実に防止できる。
【0047】
〔変形例2〕
以下、実施形態1に係る昇降路1の変形例2について説明する。なお、前述した実施形態1及び変形例1と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図10は、実施形態1に係る変形例2の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態の鉛直方向に沿った一部の断面図、図11は、実施形態1に係る変形例2の開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った一部の断面図である。
【0048】
実施形態1の変形例2では、図10及び図11に示すように、閉塞位置において、互いに重なる切欠き部41のうち一方から他方に向かって凸の突起42を設け、他方に穴43を設けて、閉塞位置では、突起42が穴43に侵入して、これらが互いに係合するようにしている。なお、図示例では、部材本体28に突起42を設け、シール部材29に穴43を設けている。なお、本発明では、部材本体28に穴43を設け、シール部材29に突起42を設けても良い。この変形例によれば、閉塞位置における複数の開閉部材24の外縁に形成された切欠き部41同士が重なり、かつ突起42が穴43内に侵入して、突起42と穴43とが係合する。このために、閉塞位置における開閉部材24同士の密着度をより向上させることができるとともに、閉塞位置において開閉部材24同士が分離することを防止することができる。よって、開閉部材24間から火災時の煙などが昇降路空間K内に侵入することをより確実に防止できる。
【0049】
なお、実施形態1においては、回転軸25を開閉部材24の幅方向の中央に設けたが、本発明では、回転軸25を開閉部材24の幅方向の中央に設けることなく、幅方向の一方の縁部に設けても良いことは勿論である。
【0050】
〔実施形態2〕
以下、実施形態2に係る昇降路1について説明する。なお、前述した実施形態1、変形例1及び2と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図12は、実施形態2に係る昇降路の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態を示す斜視図、図13は、実施形態2に係る昇降路の構成を示すブロック図である。
【0051】
実施形態2では、図12に示すように、開閉部材24の回転軸25は、幅方向の中央に設けられていなく、図12中の手前側の縁部に設けられている。勿論、本実施形態においても、開閉部材24の回転軸25は、水平方向と開閉部材24の長手方向との双方と平行である。
【0052】
また、実施形態2では、駆動部16が、図12に示すように、各開閉部材24に対応した電磁ロック部44を備えている。電磁ロック部44は、開閉部材24と1対1で対応して、開閉部材24と同数設けられている。電磁ロック部44は、開閉部材24の一端部に設けられた磁性片45(図12に示す)と、開放用電磁石46(図13に示す)と、閉鎖用電磁石47(図13に示す)とを備えている。磁性片45は、磁性を有する材料で構成されている。磁性片45は、開閉部材24の幅方向において、前記回転軸25から離れた側(図12中の奥側)の縁部に設けられている。
【0053】
開放用電磁石46及び閉鎖用電磁石47は、連通口19が設けられた壁17aに設けられている。開放用電磁石46は、開閉部材24が開放位置に位置付けられると、磁性片45と開閉部材24の長手方向に並ぶ位置に設けられている。閉鎖用電磁石47は、開閉部材24が閉鎖位置に位置付けられると、磁性片45と開閉部材24の長手方向に並ぶ位置に設けられている。開放用電磁石46及び閉鎖用電磁石47は、周知の磁性材料で構成された芯のまわりに、コイルが巻き付けられて構成されている。開放用電磁石46と閉鎖用電磁石47には、図示しない電源が接続している。開放用電磁石46と閉鎖用電磁石47は、コイルに電流が流されることで、磁化し(即ち磁力を発生し)、コイルに流される電流を止めると、反磁化する(即ち磁力を発生しない)。なお、閉鎖用電磁石47には、電源としての非常用エレベータ2のG回路や非常用電源などからの電力が供給される。開放用電磁石46には、電源としての一般的な商用電源などからの電力が供給される。
【0054】
開放用電磁石46と閉鎖用電磁石47は、エレベータ制御部35からの命令とおりに、いずれか一方のコイルに電流が流されて磁化して磁性片45との間に吸引力を生じる。開放用電磁石46のコイルに電流が流されると、この開放用電磁石46が磁性片45を吸引して、開閉部材24を開放位置に位置決めする(ロックする)。閉鎖用電磁石47のコイルに電流が流されると、この閉鎖用電磁石47が磁性片45を吸引して、開閉部材24を閉鎖位置に位置決めする(ロックする)。エレベータ制御部35は、通常運転モードでは、開放用電磁石46のコイルに電流を流し、非常運転モードでは、閉鎖用電磁石47のコイルに電流を流す。本実施形態の非常用エレベータ2の昇降路1は、エレベータ制御部35が通常運転モードから非常運転モードに切り替わると、開放用電磁石46のコイルに電流を流すのを止めて、閉鎖用電磁石47のコイルに電流を流す。すると、磁性片45と開放用電磁石46との吸引力が消滅して、開閉部材24の回転軸25が前述した縁部に設けられているので、磁性片45が設けられた縁部が下方に向かうように、開閉部材24が回転軸25を中心として回転する。すると、閉鎖用電磁石47の吸引力に磁性片45が引き寄せられて、開閉部材24が閉鎖位置に位置決めされる(ロックされる)。
【0055】
実施形態2の非常用エレベータ2の昇降路1によれば、開閉部材24の回転軸25が、幅方向の中央よりも図12中手前側の縁部に設けられているので、開放用電磁石46のコイルへの電流を停止すると、開閉部材24の自重によって、この開閉部材24が閉鎖位置に向かって回転する。このため、火災などによって、開放用電磁石46と閉鎖用電磁石47のコイルに電流を流す電源が破損しても、開閉部材24を閉鎖位置に向かって移動させることができる。また、開閉部材24が閉鎖位置に位置決めされた後に、前述した電源破損しても、開閉部材24を閉鎖位置に保つことができる。よって、非常運転時に、開閉部材24を確実に閉鎖位置に位置付けておくことができ、非常時に非常用エレベータ2を消火活動や救護活動に用いることができる。
【0056】
なお、実施形態2においても、実施形態1と同様に、切欠き部41、突起42や穴43を設けても良いことは勿論である。また、本発明では、電磁石46,47以外の他の手段により開閉部材24を開放位置又は閉鎖位置とのいずれかに位置決めしても(ロックしても)良いことは勿論である。
【0057】
〔実施形態3〕
以下、実施形態3に係る昇降路1について説明する。なお、前述した実施形態1、2、変形例1及び2と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図14は、実施形態3に係る非常用エレベータの昇降路の断面図である。
【0058】
実施形態3では、図14に示すように、連通口19が設けられて、開閉部15が取り付けられた壁17aが、建造物3の外壁であり、建造物3の外部空間48が、前述した開放空間となっている。即ち、連通口19が設けられて、開閉部15が取り付けられた壁17aは、建造物3の外壁をなし、連通口19は、外部空間48に連通している。
【0059】
実施形態3の非常用エレベータ2の昇降路1によれば、連通口19が設けられた壁17aを建造物3の外壁としているので、開放空間として建造物3の外部空間48を用いている。このために、開放空間の広さを昇降路1の広さよりも確実に広くすることができる。したがって、通常運転時に、非常用エレベータ2を乗用エレベータ10と同様に用いても、乗用エレベータ10と同等に風切音を抑制することができる。また、開放空間として、専用の空間を建造物3内に設ける必要がないので、建造物3内のスペースを有効活用することができる。
【0060】
なお、図示例では、非常用エレベータ2を乗用エレベータ10と隣接して設けたが、本発明では、開放空間として建造物3の外部空間を用いる場合には、乗用エレベータ10を設けなくても良い。
【0061】
さらに、前述した実施形態では、エレベータ制御部35が、図7に一例が示されたフローチャートを繰り返し実行しているが、本発明の目的を達成できる範囲内で、エレベータ制御部35が繰り返し実行するフローチャートを適宜変更しても良いことは勿論である。
【0062】
なお、以上で説明した昇降路1、非常用エレベータ2は、上述した実施形態及び変形例を複数組み合わせることで構成してもよい。また、本発明では、非常用エレベータ2を、通常運転時には、必ずしも乗用エレベータ10と同様に運転しなくても良い。さらに、本発明では、昇降路1の上下両端部に限らず連通口19及び開閉部15の位置を適宜変更しても良いことは勿論であり、連通口19及び開閉部15を複数の壁17,17aに設けても良いことは勿論である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 非常用エレベータの昇降路
2 非常用エレベータ
3 建造物
4 乗りかご
10 乗用エレベータ
16 駆動部
17 壁(耐火壁)
17a 壁(耐火壁,外壁)
18 床(耐火壁)
19 連通口
24 開閉部材
33 火災警報器
39 フィラメント
48 外部空間(開放空間)
K1 乗用エレベータの昇降路空間(昇降路内の空間、開放空間)
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非常用エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非常用エレベータの昇降路は、耐火材で構成された耐火壁などにより囲まれて構成されることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−197106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来から用いられている非常用エレベータの昇降路は、耐火壁などにより囲まれて構成されて、乗用エレベータの昇降路内の空間と仕切られているので、非常用エレベータの乗りかごが昇降する際に、風切音を生じさせる。
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、乗りかごの昇降時の風切音を低減させることができる非常用エレベータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の非常用エレベータは、昇降路と連通口と開閉部材と駆動部とを備える。昇降路は建造物に設けられかつ内側に乗りかごが昇降する。昇降路は複数の耐火壁を有している。複数の耐火壁は互いに取付けられる。連通口は複数の耐火壁のうちの少なくとも一つの耐火壁に設けられている。連通口は前記少なくとも一つの耐火壁が面する開放空間と連通する。開閉部材は連通口を開閉自在に前記少なくとも一つの耐火壁に取り付けられている。開閉部材は耐火材で構成されている。駆動部は非常用エレベータの非常運転時には開閉部材に連通口を閉じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、実施形態1に係る非常用エレベータの断面図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る非常用エレベータの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る開閉部の構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る開閉部の鉛直方向に沿った断面図(図3に示すA−A断面図)である。
【図6】図6は、実施形態1に係る開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った断面図(図4に示すB−B断面図)である。
【図7】図7は、実施形態1に係る開閉部のエレベータ制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態1に係る変形例1の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態の鉛直方向に沿った断面図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る変形例1の開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った断面図である。
【図10】図10は、実施形態1に係る変形例2の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態の鉛直方向に沿った一部の断面図である。
【図11】図11は、実施形態1に係る変形例2の開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った一部の断面図である。
【図12】図12は、実施形態2に係る非常用エレベータの開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態を示す斜視図である。
【図13】図13は、実施形態2に係る非常用エレベータの構成を示すブロック図である。
【図14】図14は、実施形態3に係る非常用エレベータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る非常用エレベータの断面図、図2は、実施形態1に係る非常用エレベータの構成を示すブロック図、図3は、実施形態1に係る開閉部の構成を示す斜視図、図4は、実施形態1に係る開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態を示す斜視図、図5は、実施形態1に係る開閉部の鉛直方向に沿った断面図(図3に示すA−A断面図)、図6は、実施形態1に係る開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った断面図(図4に示すB−B断面図)、図7は、実施形態1に係る開閉部のエレベータ制御部の処理の一例を示すフローチャートである。
【0009】
図1に示す本実施形態の非常用エレベータ2は、地震発生時や火災時(以下、非常時という)などにも動作することが求められているものであり、建築基準法などにより所定の建造物(建築物ともいう)3に設置が義務づけられている。即ち、非常用エレベータ2は、建造物3に設けられている。非常用エレベータ2は、通常運転時には、乗りかご4内の操作装置の各種のボタン及び各階の乗場5に設けられた呼び装置の呼びボタンの操作による呼び登録に基づいて乗客などを建造物3の所望の階に運搬する。
【0010】
非常用エレベータ2は、非常運転時に、後述するキースイッチ31a,31bが操作されると各階の呼び装置の呼びボタンからの呼び登録を無効にして、乗りかご4内の操作装置の各種のボタンの操作による呼び登録を受付けて、乗りかご4の扉6を開いた状態でも消火・救出活動を行なう消防隊などを建造物3の所望の階に運搬するものである。なお、通常運転とは、非常時などの各種の災害が発生していない状況下において、乗りかご4内の操作装置の各種のボタン及び各階の呼び装置の呼びボタンからの呼び登録を受け付けて、乗客や荷物などを運搬する運転をいい、非常運転とは、建造物3の非常時に、消火活動や救護活動を行うために、乗りかご4内の操作装置の各種のボタンからの呼び登録のみを受け付けて、乗りかご4の扉6を開いたままの状態などで消防隊員などを運搬する運転をいう。
【0011】
非常用エレベータ2は、図1に示すように、昇降路1と、乗りかご4と、一対のかご用ガイドレール7と、カウンタウェイト8と、一対のウェイト用ガイドレール9と、主ロープと、駆動機構と、安全機構とを備えている。昇降路1は、建造物3の複数の階に亘って設けられ、かつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。なお、この昇降路1の詳細な構成は、後ほど説明する。乗りかご4は、内側に乗客や消防隊員を収容可能な箱状に形成されている。乗りかご4は、昇降路1内に鉛直方向に移動自在に収容されている。乗りかご4には、この乗りかご4への乗客や消防隊員の出入りを自在とする扉6が開閉自在に設けられている。乗りかご4内には、非常用エレベータ2の各種の操作を行うための操作装置の各種のボタンと、後述するキースイッチ31a(図2に示す)が設けられている。
【0012】
かご用ガイドレール7は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。かご用ガイドレール7は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路1内に設けられている。かご用ガイドレール7は、互いの間に乗りかご4を位置づけているとともに、この乗りかご4を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0013】
カウンタウェイト8は、昇降路1内に鉛直方向に移動自在に収容されている。カウンタウェイト8の重さは、所定の数の乗客又は消防隊員が乗り込んだ乗りかご4の重さとほぼ等しくなっている。
【0014】
ウェイト用ガイドレール9は、直線状に延びかつ鉛直方向と平行に設けられている。ウェイト用ガイドレール9は、互いに間隔をあけて平行な状態で昇降路1内に設けられている。ウェイト用ガイドレール9は、互いの間にカウンタウェイト8を位置づけているとともに、このカウンタウェイト8を鉛直方向に昇降自在に支持している。
【0015】
主ロープは、一端部に乗りかご4が固定され、かつ他端部にカウンタウェイト8が固定されている。主ロープは、昇降路1内に設けられた図示しないシープに掛渡されて、乗りかご4とカウンタウェイト8とが互いに上下反対方向に昇降するように設けられている。即ち、非常用エレベータ2は、所謂、つるべ式のエレベータとなっている。
【0016】
駆動機構は、周知の巻き上げ機などを備えており、主ロープを昇降路1内で移動させて、乗りかご4とカウンタウェイト8を昇降させる。安全機構は、周知のガバナや非常止め装置を備えており、万一、主ロープが切断された場合に乗りかご4の緊急停止などを行う。
【0017】
前述した構成の非常用エレベータ2は、巻き上げ機が主ロープをその長手方向に移動させることで、乗りかご4とカウンタウェイト8とを互いに上下反対方向に昇降させる。また、本実施形態では、非常用エレベータ2は、図1に示すように、乗用エレベータ10と隣接して設けられている。乗用エレベータ10は、非常用エレベータ2と同様に、昇降路11と、開閉自在な扉6aが設けられた乗りかご4aと、一対のかご用ガイドレール7aと、カウンタウェイト8aと、一対のウェイト用ガイドレール9aと、主ロープと、駆動機構と、安全機構などとを備えている。なお、乗用エレベータ10は、非常時などにも動作することが求められていないものである。
【0018】
乗用エレベータの昇降路11も、前述した昇降路1と同様に、建造物3の複数の階に亘って設けられかつ鉛直方向に沿って直線状に延びている。乗用エレベータの昇降路11は、建造物3の床材や壁材として一般的に用いられる材料で構成された壁12a、床12b及び天井と、昇降路1を構成する後述する一つの壁17aと、により囲まれて構成されている。即ち、乗用エレベータの昇降路11を形成する壁12a、床12b及び天井を構成する材料は、耐火材でなくても良い。また、乗用エレベータ10の各階の乗場13は、耐火材(不燃材ともいう)で構成された後述する壁22aなどにより囲まれていない。また、昇降路11を形成しかつ建造物3の各階の乗場13に面する壁12aには、図1に示すように、乗り降り口20aと、乗場戸21aとが設けられている。
【0019】
図1には、乗用エレベータ10は、一つのみ示されているが、本発明では、乗用エレベータ10は、乗用エレベータの昇降路11が互いに平行に隣接して複数設けられていても良い。乗用エレベータ10が複数設けられている場合には、これら複数の乗用エレベータの昇降路11は、互いを仕切る壁が設けられることなく、あたかも一つの大きな昇降路1となっていても良く、互いを仕切る壁が設けられていても良い。また、乗用エレベータの昇降路11の前述した壁12a及び床12bなどで囲まれて形成され、かつ、乗りかご4aが昇降する昇降路空間(昇降路11内の空間)K1は、特許請求の範囲に記載された開放空間をなしている。本発明でいう開放空間とは、通常運転時に、非常用エレベータ2の乗りかご4を乗用エレベータ10の乗りかご4aと同等の速度で昇降させても、乗りかご4の昇降により昇降路1内から押し出された空気が後述する連通口19を通して流れ込んで、非常用エレベータ2の乗りかご4の生じる風切音が乗用エレベータ10の乗りかご4aの生じる風切音と略等しい強さとなるように、乗りかご4の体積よりも十分に大きな容積の空間をいう。
【0020】
また、非常用エレベータ2は、図1に示すように、昇降路1と、開閉部15と、駆動部16(図2に示す)とを備えている。昇降路1は、建造物3の複数の階に亘って設けられている。昇降路1は、建造物3に設けられかつ周知の耐火材で構成されて互いに組みつけられて乗りかご4を囲んだ複数の壁17、床18や天井で構成されている。これらの壁17、床18や天井は、特許請求の範囲に記載された耐火壁をなしている。壁17、床18や天井を構成する材料として、従来から建造物3の床や壁の材料として用いられている耐火材を用いることができる。複数の壁17、床18や天井は、互いに組みつけられて、内側に乗りかご4、カウンタウェイト8及びガイドレール7,9を収容する昇降路空間(昇降路1内の空間)Kを形成している。なお、昇降路1は、非常用エレベータ2の乗りかご4を昇降路空間Kに一つのみ収容している。昇降路1は、複数の壁17、床18や天井により、昇降路空間Kが昇降路空間K1や建造物3の外部空間48から区切られている。また、昇降路空間Kの水平方向の断面積は、乗りかご4の水平方向の断面積よりも若干大きく形成されている。
【0021】
また、昇降路1を構成する複数の壁17のうちの乗用エレベータ10の昇降路空間K1に面する一つの壁17(以下、符号17aで示す)には、図1に示すように、連通口19が設けられている。なお、一つの壁17aは、昇降路空間K1に面していることで、壁12aや床12bなどとともに、昇降路11を形成する壁となっている。連通口19は、勿論、壁17aを貫通して、昇降路空間K,K1同士を連通している。連通口19は、壁17aの上下両端部に設けられている。また、連通口19の平面形状は、矩形状に形成されている。
【0022】
さらに、昇降路1を構成する複数の壁17のうちの建造物3の各階の乗場5に面する壁17には、図1に示すように、乗り降り口20が設けられている。乗り降り口20は、勿論、壁17を貫通している。また、壁17には、乗り降り口20を開閉する乗場戸21が設けられている。乗場戸21は、乗りかご4が建造物3の各階の乗場5に停止すると、乗りかご4に設けられた扉6に重なる。また、非常用エレベータ2の乗場5は、耐火構造の壁22a、床22bや天井により、乗用エレベータ10の乗場13と仕切られている。また、非常用エレベータ2の乗場5を仕切る耐火構造の壁22aには、乗場5を密閉可能な防火戸23が取り付けられている。防火戸23は、通常運転時には、乗場5を開放し、非常運転時には、乗場5を密閉する。また、防火戸23には、密閉時にも乗客を避難させることができる図示しないくぐり戸が取り付けられている。前述した構成により、昇降路1及び乗場5は、壁17や耐火構造の壁22aなどにより囲まれて、図1中の一点鎖線で囲まれた防火区画に構成されている。
【0023】
開閉部15は、連通口19に設けられている、開閉部15は、図3及び図4に示すように、複数の開閉部材24を備えている。開閉部材24は、それぞれ、帯板状に形成されているとともに、連通口19内に鉛直方向に沿って互いに間隔をあけて配置されている。開閉部材24は、長手方向が水平方向と平行に設けられているとともに、その幅方向の中央に設けられた回転軸25を中心として回転自在に壁17aに支持されている。また、開閉部材24の回転軸25は、水平方向と壁17aの表面との双方と平行である。
【0024】
開閉部材24は、その両表面が水平方向と平行な状態では、図3及び図5に示すように、互いに間隔をあけて連通口19を開放する。また、開閉部材24は、その両表面が鉛直方向と平行な状態では、図4及び図6に示すように、互いの外縁が重なって連通口19を閉鎖する。このため、開閉部材24は、回転軸25を中心として回転することで、連通口19を開放する開放位置と、連通口19を閉鎖する閉鎖位置とに亘って変位する。また、開閉部材24の一端部には、回転軸25と同軸のスプロケット26と、ポテンショメータ27(図2に示す)が取付けられている。スプロケット26とポテンショメータ27は、壁17a内に形成された空間内に設けられている。開閉部材24は、壁17aに対してスプロケット26と一体に回転される。ポテンショメータ27は、開閉部材24の回転角度を検出して、検出した結果を後述するエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0025】
開閉部材24は、前述した壁17,17aを構成する耐火材で構成された部材本体28と、この部材本体28の幅方向の縁部に設けられたシール部材29とを備えている。シール部材29は、耐火性(不燃性)と弾性との双方を有する材料としてのゴムで構成されている。シール部材29は、連通口19の内面及び他の開閉部材24の部材本体28に重なると、これらとの間を機密に保つ。図示例では、一つの連通口19内に設けられる複数の開閉部材24のうちの最も下方に位置する開閉部材24では、部材本体28の幅方向の両縁部にシール部材29が設けられている。他の開閉部材24では、前記閉鎖位置に位置づけられた時に上側に位置する部材本体28の幅方向の一方の縁部のみにシール部材29が設けられている。シール部材29は、開閉部材24が閉鎖位置に位置付けられると、連通口19の内面及び他の開閉部材24の部材本体28に重なって、これらとの間を気密に保つ。
【0026】
駆動部16は、図2に示すように、モータ30と、キースイッチ31a,31bと、フィラメントスイッチ32と、火災警報器33と、指令受信部34と、エレベータ制御部35とを備えている。モータ30は、前述した一つの壁17aに支持部材36を介して取付けられている。図示例では、モータ30は、前述した一つの壁17aの上端部に設けられている。
【0027】
モータ30の出力軸は、開閉部材24の長手方向と平行に設けられている。モータ30の出力軸には、スプロケット37が取付けられている。モータ30のスプロケット37と、全ての開閉部材24に取付けられたスプロケット26とには、無端状のチェーン38が掛け渡されている。チェーン38は、壁17a内に形成された空間内に通されている。モータ30は、出力軸を回転駆動することで、チェーン38を前述した空間内で循環走行させるとともに、各開閉部材24をその回転軸25を中心として回転させる。モータ30は、開閉部材24を回転させることで、これらの開閉部材24を開閉位置と閉鎖位置とに亘って変位させる。なお、モータ30には、非常用エレベータ2のG回路や非常用電源などからの電力が供給される。
【0028】
キースイッチ31aは、乗りかご4の点検ボックス内に設けられている。キースイッチ31bは、乗場5のうちの建造物3の外部と連通する地下1階や1階などの乗場5に設けられている。キースイッチ31a,31bは、通常運転モードと非常運転モードとを切り替えるために用いられる。キースイッチ31,31bは、消防隊員などにより操作されると、この操作されたことを示す情報をエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0029】
フィラメントスイッチ32は、フィラメント39と、溶断判定部40とを備えている。フィラメント39は、複数設けられている。フィラメント39は、前述した建造物3の各階の所定位置に設けられている。フィラメント39は、建造物3に非常事態が生じると、非常時の火災の熱により溶断する。溶断判定部40は、全てのフィラメント39に接続して、各フィラメント39に電流を流している。溶断判定部40は、各フィラメント39に電流が流れるか否かにより、各フィラメント39が溶断したか否かを判定する。溶断判定部40は、勿論、電流が流れなくなったフィラメント39が溶断したと判定し、電流が流れているフィラメント39が溶断していないと判定する。フィラメントスイッチ32は、溶断判定部40が少なくとも一つのフィラメント39が溶断したと判定すると、この少なくとも一つのフィラメント39が溶断したことを示す情報をエレベータ制御部35に向かって出力する。こうして、フィラメントスイッチ32は、少なくとも一つのフィラメント39が溶断したか否かを判定して判定結果をエレベータ制御部35に向かって出力することで、建造物3に火災が生じたか否かを検出して検出した結果をエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0030】
火災警報器33は、複数設けられている。火災警報器33は、前述した建造物3の各階の所定位置に設けられている。火災警報器33は、建造物3に火災が生じると、この火災を検出する。火災警報器33は、火災を検出すると、この火災が検出したことを示す情報をエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0031】
指令受信部34は、各地方自治体などの消防指令センターからの通信を受信する。指令受信部34は、受信した情報をエレベータ制御部35に向かって出力する。
【0032】
エレベータ制御部35は、図示しないRAM、ROM、CPU、入出力ポート及び記憶装置を備えた演算装置である。エレベータ制御部35の入力ポートには、キースイッチ31a,31b、フィラメントスイッチ32、火災警報器33、指令受信部34及び各ポテンショメータ27が接続している。エレベータ制御部35の出力ポートには、図示しないドライバを介してモータ30が接続している。また、エレベータ制御部35は、乗りかご4の操作装置の各種のボタンや、各階の乗場5の呼び装置の呼びボタン、駆動機構などとも接続して、非常用エレベータ2全体の制御をつかさどる。
【0033】
エレベータ制御部35は、通常運転モードと、非常運転モードとが切り替わる。通常運転モードでは、エレベータ制御部35は、非常用エレベータ2を前述した通常運転させる。非常運転モードでは、エレベータ制御部35は、非常用エレベータ2を前述した非常運転させる。エレベータ制御部35は、消防隊員などから操作されたことを示す情報がキースイッチ31a,31bから入力すると、通常運転モードから非常運転モードに切り替わる。エレベータ制御部35は、フィラメントスイッチ32と火災警報器33のいずれかから火災を示す情報が入力すると、建造物3に火災が生じたと判定して、通常運転モードから非常運転モードに切り替わる。
【0034】
エレベータ制御部35は、指令受信部34から消防指令センターから建造物3が火災であることを示す情報が入力すると、通常運転モードから非常運転モードに切り替わる。このように、エレベータ制御部35は、キースイッチ31a,31bの操作と、フィラメントスイッチ32や火災警報器33の火災の検出と、消防指令センターからの建造物3が火災であることを示す情報の入力と、のうちの少なくとも一つにより、通常運転モードから非常運転モードに切り替わる。
【0035】
また、エレベータ制御部35は、通常運転モードでは、モータ30を駆動して、開閉部15の開閉部材24を前述した開放位置に位置付ける。エレベータ制御部35は、非常運転モードでは、モータ30を駆動して、開閉部15の開閉部材24を前述した閉鎖位置に位置付ける。具体的には、エレベータ制御部35は、例えば、開放位置と閉鎖位置に位置付けられた時に各ポテンショメータ27が出力する情報を予め記憶しておき、ポテンショメータ27が出力する情報が予め記憶した情報となるように、モータ30を駆動することにより、開閉部15の各開閉部材24を開放位置と閉鎖位置とに亘って変位させる。こうして、非常運転モード即ち非常用エレベータ2の非常運転時には、駆動部16が閉鎖部材24に連通口19を閉じさせる。
【0036】
前述した構成の非常用エレベータ2のエレベータ制御部35は、通常運転時には、図7に一例が示されるフローチャートを繰り返し実行している。図7に示されたフローチャートのステップS1では、まず、エレベータ制御部35が、通常運転モードとされて、ステップS2に進む。ステップS2では、エレベータ制御部35が、キースイッチ31a,31bが操作されたか否かを判定し、キースイッチ31a,31bが操作されたと判定するとステップS5に進み、キースイッチ31a,31bが操作されていないと判定するとステップS3に進む。
【0037】
ステップS3では、エレベータ制御部35が、複数のフィラメントスイッチ32と複数の火災警報器33とのうちの少なくとも一つが火災を検出したか否かを判定し、少なくとも一つが火災を検出したと判定するとステップS5に進み、複数のフィラメントスイッチ32と複数の火災警報器33との全てが火災を検出していないとステップS4に進む。ステップS4では、エレベータ制御部35が、指令受信部34が建造物3に火災が生じたことを示す情報を受信したか否かを判定し、指令受信部34が建造物3に火災が生じたことを示す情報を受信したと判定するとステップS5に進み、指令受信部34が建造物3に火災が生じたことを示す情報を受信していないと判定するとステップS1に戻る。エレベータ制御部35は、ステップS5では、非常運転モードに切り替わる。そして、エレベータ制御部35は、通常運転モードから非常運転モードに切り替わるまで、ステップS1からステップS4までを繰り返し実行する。このように、ステップS3において、複数のフィラメントスイッチ32と複数の火災警報器33とのうちの少なくとも一つが火災を検出したと判定するとステップS5に進むことで、駆動部16が、建造物3に設けられたフィラメント39が火災の熱により溶断すると開閉部材24に連通口19を閉じさせるとともに、建造物3に設けられた火災警報器33が火災であることを検出すると開閉部材24に連通口19を閉じさせる。
【0038】
前述した構成の非常用エレベータ2は、キースイッチ31a,31bが操作されずに、フィラメントスイッチ32又は火災警報器33が火災を検出せずに、消防指令センターからの建造物3が火災であることを示す情報を受信しないと、エレベータ制御部35が通常運転モードとされて、乗客を所望の階まで運ぶ通常運転を行う。そして、非常時又は訓練時において、非常用エレベータ2は、キースイッチ31a,31bの操作と、フィラメントスイッチ32又は火災警報器33の火災の検出と、消防指令センターからの建造物3が火災であることを示す情報の受信とのうち一つが起こると、エレベータ制御部35が非常運転モードとされて、乗場5の呼び装置の呼びボタンからの呼び登録を無効にして、救護活動のために消防隊員を所望の階まで運ぶ非常運転を行う。
【0039】
上記のように構成された非常用エレベータの昇降路1は、駆動部16が、非常用エレベータ2の非常運転時に少なくとも一つの壁17aに設けられた連通口19を開閉部材24に閉じさせるので、非常運転時ではない時即ち通常運転時には、開閉部材24に連通口19を開放させておく。このために、通常運転時には、非常用エレベータ2の昇降路1空間が開放空間としての乗用エレベータ10の昇降路空間K1に連通して、昇降時に乗りかご4により押される空気が、連通口19を通って、速やかに昇降路空間K1に押し出されることとなる。したがって、通常運転時に、壁17,17aの内面と乗りかご4との間の狭い隙間を通って、昇降中に乗りかご4の前方側から後方側に流れる空気の量を抑制することができる。このために、通常運転時には、乗用エレベータ10の乗りかご4aと同等の昇降速度で、非常用エレベータ2の乗りかご4を昇降させても、乗りかご4の前方側から後方側に流れる空気の流速を乗用エレベータ10の流速と同等に抑制することができる。よって、非常用エレベータ2の乗りかご4の昇降時の風切音を乗用エレベータ10の風切音と同等に低減することができる。
【0040】
また、駆動部16が、火災時には耐火材で構成された開閉部材24に連通口19を閉じさせるので、火災時には昇降路空間Kを壁17,17aにより外部から確実に区切ることができる。このために、火災時に非常用エレベータ2を消火活動に確実に用いることができる。
【0041】
さらに、乗用エレベータ10の乗りかご4aと同等の昇降速度で、非常用エレベータ2の乗りかご4を昇降させても、風切音を乗用エレベータ10の風切音と同等に低減することができるので、通常運転時には、非常用エレベータ2の乗りかご4を乗用エレベータ10の乗りかご4aと同等の速度で昇降させることができる。よって、非常用エレベータ2を乗用エレベータ10と同等に運用することができ、通常運転時に限らず非常運転時にも、乗客を所望の階までスムーズに運ぶことができ、乗客に対するサービスの低下を抑制することができる。
【0042】
また、駆動部16が、建造物3に設けられたフィラメント39が火災の熱により溶断すると開閉部材24に連通口19を閉じさせる。このために、通常運転から非常運転に切り替えるキースイッチ31a,31bなどを操作しない場合であっても、火災の進行によりフィラメント39が火災の熱により溶断することにより、開閉部材24に連通口19をより確実に閉じさせることができる。
【0043】
また、駆動部16が、建造物3に設けられた火災警報器33が火災であることを検出すると開閉部材24に連通口19を閉じさせる。このために、通常運転から非常運転に切り替えるキースイッチ31a,31bなどを操作しない場合であっても、火災の進行により火災警報器33が火災であることを検出することにより、開閉部材24に連通口19をより確実に閉じさせることができる。
【0044】
連通口19が設けられた壁17aを乗用エレベータ10に隣接させているので、開放空間として乗用エレベータ10の昇降路空間K1を用いている。このために、開放空間の広さを昇降路1の広さ以上とすることができる。したがって、通常運転時に、非常用エレベータ2を乗用エレベータ10と同様に用いても、乗用エレベータ10と同等に風切音を抑制することができる。また、開放空間として、専用の空間を建造物3内に設ける必要がないので、建造物3内のスペースを有効活用することができる。
【0045】
〔変形例1〕
以下、実施形態1に係る昇降路1の変形例1について説明する。なお、前述した実施形態1と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図8は、実施形態1に係る変形例1の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態の鉛直方向に沿った断面図、図9は、実施形態1に係る変形例の開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った断面図である。
【0046】
実施形態1の変形例1では、図8及び図9に示すように、開閉部材24の外縁に厚みが中央部よりも薄くなる切欠き部41を形成している。これら図8及び図9に示す変形例では、開閉部材24が閉鎖位置に位置つけられると、切欠き部41に他の開閉部材24の外縁に形成された切欠き部41が重なるのが望ましい。また、変形例1では、切欠き部41は、部材本体28とシール部材29との双方に設けられている。この変形例1によれば、閉塞位置における複数の開閉部材24の外縁同士が重なっているので、閉塞位置における開閉部材24同士の密着度を向上させて、これら開閉部材24間から火災時の煙などが昇降路空間K内に侵入することを確実に防止できる。
【0047】
〔変形例2〕
以下、実施形態1に係る昇降路1の変形例2について説明する。なお、前述した実施形態1及び変形例1と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図10は、実施形態1に係る変形例2の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態の鉛直方向に沿った一部の断面図、図11は、実施形態1に係る変形例2の開閉部の開閉部材が連通口を閉鎖した状態の鉛直方向に沿った一部の断面図である。
【0048】
実施形態1の変形例2では、図10及び図11に示すように、閉塞位置において、互いに重なる切欠き部41のうち一方から他方に向かって凸の突起42を設け、他方に穴43を設けて、閉塞位置では、突起42が穴43に侵入して、これらが互いに係合するようにしている。なお、図示例では、部材本体28に突起42を設け、シール部材29に穴43を設けている。なお、本発明では、部材本体28に穴43を設け、シール部材29に突起42を設けても良い。この変形例によれば、閉塞位置における複数の開閉部材24の外縁に形成された切欠き部41同士が重なり、かつ突起42が穴43内に侵入して、突起42と穴43とが係合する。このために、閉塞位置における開閉部材24同士の密着度をより向上させることができるとともに、閉塞位置において開閉部材24同士が分離することを防止することができる。よって、開閉部材24間から火災時の煙などが昇降路空間K内に侵入することをより確実に防止できる。
【0049】
なお、実施形態1においては、回転軸25を開閉部材24の幅方向の中央に設けたが、本発明では、回転軸25を開閉部材24の幅方向の中央に設けることなく、幅方向の一方の縁部に設けても良いことは勿論である。
【0050】
〔実施形態2〕
以下、実施形態2に係る昇降路1について説明する。なお、前述した実施形態1、変形例1及び2と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図12は、実施形態2に係る昇降路の開閉部の開閉部材が連通口を開放した状態を示す斜視図、図13は、実施形態2に係る昇降路の構成を示すブロック図である。
【0051】
実施形態2では、図12に示すように、開閉部材24の回転軸25は、幅方向の中央に設けられていなく、図12中の手前側の縁部に設けられている。勿論、本実施形態においても、開閉部材24の回転軸25は、水平方向と開閉部材24の長手方向との双方と平行である。
【0052】
また、実施形態2では、駆動部16が、図12に示すように、各開閉部材24に対応した電磁ロック部44を備えている。電磁ロック部44は、開閉部材24と1対1で対応して、開閉部材24と同数設けられている。電磁ロック部44は、開閉部材24の一端部に設けられた磁性片45(図12に示す)と、開放用電磁石46(図13に示す)と、閉鎖用電磁石47(図13に示す)とを備えている。磁性片45は、磁性を有する材料で構成されている。磁性片45は、開閉部材24の幅方向において、前記回転軸25から離れた側(図12中の奥側)の縁部に設けられている。
【0053】
開放用電磁石46及び閉鎖用電磁石47は、連通口19が設けられた壁17aに設けられている。開放用電磁石46は、開閉部材24が開放位置に位置付けられると、磁性片45と開閉部材24の長手方向に並ぶ位置に設けられている。閉鎖用電磁石47は、開閉部材24が閉鎖位置に位置付けられると、磁性片45と開閉部材24の長手方向に並ぶ位置に設けられている。開放用電磁石46及び閉鎖用電磁石47は、周知の磁性材料で構成された芯のまわりに、コイルが巻き付けられて構成されている。開放用電磁石46と閉鎖用電磁石47には、図示しない電源が接続している。開放用電磁石46と閉鎖用電磁石47は、コイルに電流が流されることで、磁化し(即ち磁力を発生し)、コイルに流される電流を止めると、反磁化する(即ち磁力を発生しない)。なお、閉鎖用電磁石47には、電源としての非常用エレベータ2のG回路や非常用電源などからの電力が供給される。開放用電磁石46には、電源としての一般的な商用電源などからの電力が供給される。
【0054】
開放用電磁石46と閉鎖用電磁石47は、エレベータ制御部35からの命令とおりに、いずれか一方のコイルに電流が流されて磁化して磁性片45との間に吸引力を生じる。開放用電磁石46のコイルに電流が流されると、この開放用電磁石46が磁性片45を吸引して、開閉部材24を開放位置に位置決めする(ロックする)。閉鎖用電磁石47のコイルに電流が流されると、この閉鎖用電磁石47が磁性片45を吸引して、開閉部材24を閉鎖位置に位置決めする(ロックする)。エレベータ制御部35は、通常運転モードでは、開放用電磁石46のコイルに電流を流し、非常運転モードでは、閉鎖用電磁石47のコイルに電流を流す。本実施形態の非常用エレベータ2の昇降路1は、エレベータ制御部35が通常運転モードから非常運転モードに切り替わると、開放用電磁石46のコイルに電流を流すのを止めて、閉鎖用電磁石47のコイルに電流を流す。すると、磁性片45と開放用電磁石46との吸引力が消滅して、開閉部材24の回転軸25が前述した縁部に設けられているので、磁性片45が設けられた縁部が下方に向かうように、開閉部材24が回転軸25を中心として回転する。すると、閉鎖用電磁石47の吸引力に磁性片45が引き寄せられて、開閉部材24が閉鎖位置に位置決めされる(ロックされる)。
【0055】
実施形態2の非常用エレベータ2の昇降路1によれば、開閉部材24の回転軸25が、幅方向の中央よりも図12中手前側の縁部に設けられているので、開放用電磁石46のコイルへの電流を停止すると、開閉部材24の自重によって、この開閉部材24が閉鎖位置に向かって回転する。このため、火災などによって、開放用電磁石46と閉鎖用電磁石47のコイルに電流を流す電源が破損しても、開閉部材24を閉鎖位置に向かって移動させることができる。また、開閉部材24が閉鎖位置に位置決めされた後に、前述した電源破損しても、開閉部材24を閉鎖位置に保つことができる。よって、非常運転時に、開閉部材24を確実に閉鎖位置に位置付けておくことができ、非常時に非常用エレベータ2を消火活動や救護活動に用いることができる。
【0056】
なお、実施形態2においても、実施形態1と同様に、切欠き部41、突起42や穴43を設けても良いことは勿論である。また、本発明では、電磁石46,47以外の他の手段により開閉部材24を開放位置又は閉鎖位置とのいずれかに位置決めしても(ロックしても)良いことは勿論である。
【0057】
〔実施形態3〕
以下、実施形態3に係る昇降路1について説明する。なお、前述した実施形態1、2、変形例1及び2と同一部分には、同一符合を付して説明を省略する。図14は、実施形態3に係る非常用エレベータの昇降路の断面図である。
【0058】
実施形態3では、図14に示すように、連通口19が設けられて、開閉部15が取り付けられた壁17aが、建造物3の外壁であり、建造物3の外部空間48が、前述した開放空間となっている。即ち、連通口19が設けられて、開閉部15が取り付けられた壁17aは、建造物3の外壁をなし、連通口19は、外部空間48に連通している。
【0059】
実施形態3の非常用エレベータ2の昇降路1によれば、連通口19が設けられた壁17aを建造物3の外壁としているので、開放空間として建造物3の外部空間48を用いている。このために、開放空間の広さを昇降路1の広さよりも確実に広くすることができる。したがって、通常運転時に、非常用エレベータ2を乗用エレベータ10と同様に用いても、乗用エレベータ10と同等に風切音を抑制することができる。また、開放空間として、専用の空間を建造物3内に設ける必要がないので、建造物3内のスペースを有効活用することができる。
【0060】
なお、図示例では、非常用エレベータ2を乗用エレベータ10と隣接して設けたが、本発明では、開放空間として建造物3の外部空間を用いる場合には、乗用エレベータ10を設けなくても良い。
【0061】
さらに、前述した実施形態では、エレベータ制御部35が、図7に一例が示されたフローチャートを繰り返し実行しているが、本発明の目的を達成できる範囲内で、エレベータ制御部35が繰り返し実行するフローチャートを適宜変更しても良いことは勿論である。
【0062】
なお、以上で説明した昇降路1、非常用エレベータ2は、上述した実施形態及び変形例を複数組み合わせることで構成してもよい。また、本発明では、非常用エレベータ2を、通常運転時には、必ずしも乗用エレベータ10と同様に運転しなくても良い。さらに、本発明では、昇降路1の上下両端部に限らず連通口19及び開閉部15の位置を適宜変更しても良いことは勿論であり、連通口19及び開閉部15を複数の壁17,17aに設けても良いことは勿論である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 非常用エレベータの昇降路
2 非常用エレベータ
3 建造物
4 乗りかご
10 乗用エレベータ
16 駆動部
17 壁(耐火壁)
17a 壁(耐火壁,外壁)
18 床(耐火壁)
19 連通口
24 開閉部材
33 火災警報器
39 フィラメント
48 外部空間(開放空間)
K1 乗用エレベータの昇降路空間(昇降路内の空間、開放空間)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に設けられ、かつ内側に乗りかごが昇降する昇降路と、
前記昇降路を構成する複数の耐火壁のうちの少なくとも一つの耐火壁に設けられ、かつ前記少なくとも一つの耐火壁が面する開放空間と連通する連通口と、
前記連通口を開閉自在に前記少なくとも一つの耐火壁に取り付けられているとともに、耐火材で構成された開閉部材と、
非常運転時には前記開閉部材に前記連通口を閉じさせる駆動部と、を備えることを特徴とする、
非常用エレベータ。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記建造物に設けられたフィラメントが火災の熱により溶断すると、前記開閉部材に前記連通口を閉じさせる、
請求項1に記載の非常用エレベータ。
【請求項3】
前記駆動部は、
前記建造物に設けられた火災警報器が火災であることを検出すると、前記開閉部材に前記連通口を閉じさせる、
請求項1に記載の非常用エレベータ。
【請求項4】
前記連通口が設けられた前記少なくとも一つの耐火壁が、前記建造物に設けられた乗用エレベータの昇降路を形成する壁であり、前記開放空間が、前記乗用エレベータの昇降路内の空間となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の非常用エレベータ。
【請求項5】
前記連通口が設けられた前記少なくとも一つの耐火壁が、前記建造物の外壁であり、前記開放空間が、前記建造物の外部空間となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の非常用エレベータ。
【請求項1】
建造物に設けられ、かつ内側に乗りかごが昇降する昇降路と、
前記昇降路を構成する複数の耐火壁のうちの少なくとも一つの耐火壁に設けられ、かつ前記少なくとも一つの耐火壁が面する開放空間と連通する連通口と、
前記連通口を開閉自在に前記少なくとも一つの耐火壁に取り付けられているとともに、耐火材で構成された開閉部材と、
非常運転時には前記開閉部材に前記連通口を閉じさせる駆動部と、を備えることを特徴とする、
非常用エレベータ。
【請求項2】
前記駆動部は、
前記建造物に設けられたフィラメントが火災の熱により溶断すると、前記開閉部材に前記連通口を閉じさせる、
請求項1に記載の非常用エレベータ。
【請求項3】
前記駆動部は、
前記建造物に設けられた火災警報器が火災であることを検出すると、前記開閉部材に前記連通口を閉じさせる、
請求項1に記載の非常用エレベータ。
【請求項4】
前記連通口が設けられた前記少なくとも一つの耐火壁が、前記建造物に設けられた乗用エレベータの昇降路を形成する壁であり、前記開放空間が、前記乗用エレベータの昇降路内の空間となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の非常用エレベータ。
【請求項5】
前記連通口が設けられた前記少なくとも一つの耐火壁が、前記建造物の外壁であり、前記開放空間が、前記建造物の外部空間となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の非常用エレベータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−49565(P2013−49565A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189483(P2011−189483)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】
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