説明

非接触スイッチ

【課題】操作の誤検知を抑制することのできる非接触スイッチを提供する。
【解決手段】非接触スイッチ15は、所定の視野角を有する操作スイッチの3次元ホログラムを表示する表示シート20と、操作スイッチのホログラムに対する検知対象物の距離及び速度を検知可能な近接物センサ40と、検知対象物の距離及び速度の推移に基づいて、所定の視野角内の操作者によって操作スイッチが操作されたことを判定する制御装置50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作スイッチの虚像を表示する非接触スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各機器の操作スイッチの虚像(仮想スイッチ)を空間に表示して、操作者の指先が仮想スイッチに接触したことを検知することにより、操作スイッチに対応する動作を実行する非接触スイッチがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の非接触スイッチは、操作スイッチの虚像(仮想スイッチ)を表示する3Dホログラム装置と、この仮想スイッチの位置に操作者の指先が存在することを検知するセンサとを備えている。そして、仮想スイッチの位置で操作者の指先が所定時間(0.3秒間)停止した場合に仮想スイッチに接触したと判定している。上記センサとしては、操作者の指先に装着された超音波発振器からの超音波を3つの超音波受信器により検知する超音波センサ、焦点位置に照射された赤外線の反射光を受光する赤外線センサ、及び操作者の手の甲に取り付けられた磁気センサと各指に取り付けられた歪みゲージとを組み合わせたものを開示している。
【特許文献1】特開平9−190278号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載の非接触スイッチは、いずれも仮想スイッチの位置に操作者の指先が存在することを検知するものであるため、仮想スイッチの位置を偶然指先が横切ったような場合に、仮想スイッチに接触したものと検知されるおそれがある。また、ホログラム映像には視野角があり、この視野角から外れた乗員は仮想スイッチを認識できないにもかかわらず、そうした乗員の動作によって仮想スイッチに接触したものと検知されるおそれがある。
【0004】
本発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操作の誤検知を抑制することのできる非接触スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、所定の視野角を有する操作スイッチの虚像を表示する表示手段と、前記虚像に対する検知対象物の距離及び速度を検知可能なセンサと、前記検知対象物の距離及び速度の推移に基づいて、前記所定の視野角内の操作者によって前記操作スイッチが操作されたことを判定する判定手段とを備えることを要旨とする。
【0006】
同構成によれば、操作スイッチの虚像に対する検知対象物の距離及び速度を検知可能なセンサを備えているため、これら距離及び速度の推移に基づいて所定の視野角内の操作者によって操作スイッチが操作されたか否かを判定することができる。例えば、視野角内の操作者が操作スイッチを操作しようとしてスイッチの虚像に手を近づける場合と、同虚像の位置を操作者の手が偶然横切る場合や視野角外の操作者の動作により同虚像の位置に検知対象物が近づく場合とでは、同虚像に対する検知対象物の距離及び速度の推移は異なったものとなる。したがって、視野角内の操作者によって操作スイッチが操作されたことを判定することにより、操作スイッチの操作が誤検知されることを抑制することができる。なお、ここでいう速度とは、速度の絶対量としての速さのみであってもよいし、方向と速さとを合わせたベクトルとしての速度であってもよい。また、操作スイッチの虚像は、操作部のみを表示するものであってもよいし、操作部の説明や装飾を含むものであってもよい。
【0007】
請求項2に記載の発明は、所定の視野角を有する操作スイッチの虚像を表示する表示手段と、前記虚像に対する検知対象物の距離及び方向を検知可能なセンサと、前記検知対象物の距離及び方向の推移に基づいて、前記所定の視野角内の操作者によって前記操作スイッチが操作されたことを判定する判定手段とを備えることを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、操作スイッチの虚像に対する検知対象物の距離及び方向を検知可能なセンサを備えているため、これら距離及び方向の推移に基づいて所定の視野角内の操作者によって操作スイッチが操作されたか否かを判定することができる。すなわち、視野角内の操作者が操作スイッチを操作しようとしてスイッチの虚像に手を近づける場合は、同虚像に対する検知対象物の距離及び方向の推移は同視野角に対応したものとなる。したがって、視野角内の操作者によって操作スイッチが操作されたことを判定することにより、操作スイッチの操作が誤検知されることを抑制することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記表示手段は、異なる方向の視野角を有する複数の操作スイッチの虚像を同一の位置に表示可能であり、前記判定手段は、それぞれの視野角内の操作者によって前記操作スイッチが操作されたことを判定することを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、表示手段は、異なる方向の視野角を有する複数の操作スイッチの虚像を同一の位置に表示可能であるため、限られた空間に複数の操作スイッチの虚像を効率的に表示することができる。そして、判定手段は、それぞれの視野角内の操作者によって操作スイッチが操作されたことを判定するため、複数の操作スイッチに対する操作の誤検知を抑制することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記複数の操作スイッチはそれぞれ異なる動作を実行するものであることを要旨とする。
同構成によれば、複数の操作スイッチはそれぞれ異なる動作を実行するものであるため、同一の位置に表示された操作スイッチの虚像に対する操作により異なる動作を実行することができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4に記載の発明のいずれかにおいて、前記表示手段は、マイクロレンズ層を有するシートにより前記操作スイッチのホログラムを形成するものであり、前記センサは、送信電波と前記検知対象物から反射された受信電波とに基づいて検知を行うものであることを要旨とする。
【0013】
同構成によれば、表示手段は、マイクロレンズ層を有するシートにより操作スイッチのホログラムを形成するものであるため、その特徴として、視野角を小さくして表示の指向性を強くすることができるとともに、意匠パネル等の表面に目立たないように設けることができる。また、センサは、送信電波と検知対象物から反射された受信電波とに基づいて検知を行うものであるため、電波送信部及び電波受信部を覆うカバー等があったとしても、そうしたカバー等を介して検知を行うことができる。したがって、例えば意匠パネルの表面にマイクロレンズ層を有するシートを設けるとともに、意匠パネルの内部にセンサを設置するといった構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の非接触スイッチによれば、視野角内の操作者によって操作スイッチが操作されたことを判定することにより、操作スイッチの操作が誤検知されることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の非接触スイッチを具体化した第1の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。
【0016】
図1に、車両のインストルメンタルパネル10を示す。同インストルメンタルパネル10は、図示しない車両の車幅方向に延長配置されている。このインストルメンタルパネル10の中央に位置するセンタークラスターパネル11は、表面が木目調の意匠パネルにより構成されている。このセンタークラスターパネル11には、本実施形態に係る非接触スイッチの表示手段としての表示シート20が埋め込まれている。この表示シート20は、ごく薄いシート状に形成されており、センタークラスターパネル11の表面に設けられた状態では、肉眼では認識するのが困難な程度に目立たないという特徴を有している。すなわち、センタークラスターパネル11は、実質的には上記木目調のパネルとして視認される。
【0017】
上記表示シート20は、図1に示すように、センタークラスターパネル11の前側(車両後方側)の空間に、操作スイッチの虚像として同スイッチの3次元ホログラム(以下、単に操作スイッチという)30を表示するように構成されている。この操作スイッチ30は、例えば車両に搭載された空調装置の運転状態を操作するためのものであり、操作パネル31と該操作パネル31上に配列されて空調装置の各種機能に対応した操作ボタン32とを備えている。また、この操作スイッチ30は、運転席の乗員からは視認可能であるものの、助手席の乗員からは視認されないといった態様の所定の視野角を有している。
【0018】
図2に、この非接触スイッチ15の全体構成を示す。この図2に示すように、非接触スイッチ15は、表示シート20の後方に配置される近接物センサ40とこのセンサ40の検出信号が入力される判定手段としての制御装置50とを備えている。この近接物センサ40は、図1に示した操作スイッチ30に対して近づく検知対象物の距離及び速度を検知可能に構成されている。そして、この制御装置50は、この近接物センサ40によって検知された検知対象物の距離及び速度が入力されることにより、この距離及び速度の推移に基づいて、操作スイッチ30の視野角に対応した運転席の乗員がこの操作スイッチ30を操作しようとする意図があって同スイッチ30を操作したか否かを判定する。さらに、本実施形態では、この制御装置50が、運転席の乗員がこの操作スイッチ30を操作したと判定した場合には、この乗員による操作スイッチ30の操作に基づいて制御対象である空調装置の制御を行う。
【0019】
以下、この表示シート20の構成及び近接物センサ40の構成について、図3及び図4を参照してより詳細に説明する。
図3は、表示シート20の断面構造を示している。この表示シート20は、図3に示すように、表面側から裏面側にかけてオーバーコート層23、単層または複数層のマイクロレンズ24aからなるマイクロレンズ層24、隠蔽層25、反射層26、基体27が順に配置されてなる。そして、この表示シート20は、該表示シート20の裏面側に配置される図示しないバックライトが点灯すると、この光が表示シート20を透過して操作スイッチ30を表示する透過型の表示シートである(3M社製のマイクロレンズシートであり、関連特許文献として、特表2003−524205号公報、特表2004−534270号公報がある)。この隠蔽層25及び反射層26には、透過孔25a,26aが形成されている。つまり、このような構成により、バックライトからの光は、図3の破線に示すように、基体27、反射層の透過孔26a、隠蔽層25の透過孔25aを順に透過し、各マイクロレンズ24aを透過する際に屈折する。そして、屈折した光は収束され、図3の所定位置Xにおいて操作スイッチ30として結像される。
【0020】
なお、この表示シート20は以下のようにして製造される。まず、表示シート20の各層を、隠蔽層25及び反射層26に透過孔25a,26aが形成されていない状態で順に配列してシート材料を形成する。そして、この各層からなるシート材料に対して、所定の位置からレーザーを適宜発散しながら照射すると、シート材料の隠蔽層25及び反射層26にはレーザーが通過した部分に上記透過孔25a,26aが形成される。つまり、図3において破線で示すバックライトからの光は、この表示シート20をシート材料から製造する際にレーザーが通過した位置と一致し、光が収束する所定位置Xは、この表示シート20をシート材料から製造する際に、レーザーが発散照射される位置である。したがって、製造時にこのレーザーの照射がシート材料に向けられたのと同じ角度から観察者が表示シート20を見る場合にのみ、この操作スイッチ30は視認可能となる。換言すれば、このような構成により空間に表示される操作スイッチ30は極めて限定された観察角度でのみ見ることができる。以上のようにして、この表示シート20は、所定の視野角である運転席の乗員のみによってのみ視認可能に構成されている。なお、こうした視野角の広さは、製造時におけるレーザーの波長や強度等によって調節することができる。
【0021】
そして、近接物センサ40は、図2に示すように、表示シート20の奥側に配置されている。このセンサ40は、例えばオムロン株式会社製のプリタッチセンサなどを用いることができる。なお、このプリタッチセンサは、検知対象物とセンサとの間に存在する障害物に対する透過性が高いために、センタークラスターパネル11の奥側(車両の前側)に配置しても、車両後方からこの操作スイッチ30に近づいてくる検知対象物の距離と速度とを検知可能に構成されている。
【0022】
このプリタッチセンサは、図4(a)に示すように、計時機能を有するクロック部44と高周波の電波を生成するインパルス生成部43と、生成された高周波を送信波として周囲に送信する送信アンテナ41とを備えている。また、このプリタッチセンサは、この送信波が検知対象物によりはね返された反射波を受信波として受信する受信アンテナ42と、この受信アンテナ42で受信した受信波と送信アンテナ41から送信された送信波を比較する波形伸張部45とを備えている。さらに、このプリタッチセンサは、波形伸張部45で比較される送信波と受信波とから、検知対象物までの距離を導出する距離検知部46と、この検知対象物までの距離の変化に基づいて検知対象物の移動速度を検知する速度検知部47とを備えている。具体的には、図4(b)に示すように、波形伸張部45において送信波形と受信波形とが比較され、検知対象物が遠いほど受信波形が送信波形から大きく遅れるようになるため、距離検知部46は、この遅れΔt基づいて検知対象物の距離を検知する。また、速度検知部47は、距離検知部46により検知される検知対象物の距離の変化およびクロック部44により計測される時間に基づいて検知対象物の移動速度を検知する。なお、プリタッチセンサは、検出範囲が360°であり、センサの全周囲において近づいてくる物体の検知が可能であるため、センサに対してどの方向から検知対象物が近づいてきているかといったことを検出することができる。したがって、速度検知部47は、検知対象物の速さと方向とを合わせたベクトルとしての速度を検知して、後述する制御装置50に検知結果を出力する。
【0023】
制御装置50は、近接物センサ40によって検知された検知対象物の距離及び速度の推移に基づいて、この操作スイッチ30が該スイッチ30の視野角内の運転席の乗員によって操作されたか否かを判定する。つまり、この操作スイッチ30の視野角内にある運転席の乗員が操作スイッチ30を操作しようとしてスイッチ30に手を近づける場合と、視野角外である助手席の乗員の動作により同操作スイッチ30に乗員の手などが近づく場合とでは、この操作スイッチ30に対する乗員の手の距離及び速度の推移は異なっている。さらに、運転席の乗員の手が操作スイッチ30に近づく場合であっても、単にこの操作スイッチ30を偶然横切る場合もある。したがって、制御装置50には、運転席の乗員が操作スイッチ30を操作しようという意図をもって同スイッチ30に手を近づける際の乗員の手の距離及び速度の推移の基準範囲が予め入力設定されている。そして、制御装置50は、近接物センサ40の出力した検知対象物の距離及び速度の推移がこの基準範囲内にあれば、操作スイッチ30の視野角内の運転席の乗員によって操作スイッチ30が操作されたと判定し、この乗員による操作スイッチ30の操作に基づいて制御対象である空調装置を制御する。
【0024】
上記のように構成された本実施形態の非接触スイッチ15の作用について説明する。
例えば、車両のイグニションスイッチが「ON」状態となると、表示シート20の裏面側のバックライトが点灯し、これにより、図1に示すように、操作スイッチ30が空間に浮かびあがる。そして、例えば運転席又は助手席の乗員の手がこの操作スイッチ30に近づくと、上記近接物センサ40がこの乗員の手の距離及び速度を検知して、この検知結果が制御装置50に入力される。制御装置50は、この近接物センサ40により検知された乗員の手の距離及び速度の推移が上記基準範囲内であれば、この操作スイッチ30を視認可能な運転席の乗員がこの操作スイッチ30を操作したものと判定して、この操作スイッチ30の操作に基づいて空調装置を制御する。つまり、本実施形態では、運転席の乗員が押した操作ボタン32の機能に基づいて空調装置を制御する。
【0025】
一方、制御装置50は、この近接物センサ40により検知された乗員の手の距離及び速度の推移が上記基準範囲外であれば、操作スイッチ30の視野角外の乗員がこの操作スイッチ30を操作した又は運転席の乗員が偶然この操作スイッチ30の位置を横切ったものとして、運転席の乗員がこの操作スイッチ30を操作したものとは判定しない。したがって、このような場合には、制御装置50は、乗員の手が操作スイッチ30に手を近づけた場合であっても、空調装置の運転状態をそれ以前に設定された状態に維持する。
【0026】
以上詳述したように、本実施形態では、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態の非接触スイッチ15は、運転席の乗員に視認可能な操作スイッチ30を表示する表示シート20と、この操作スイッチ30に近づく物体の距離及び速度を検知可能な近接物センサ40と、この物体の距離及び速度の推移に基づいて、運転席の乗員によってこの操作スイッチ30が操作されたことを判定する制御装置50とを備えている。これにより、視野角内にいる運転席の乗員が操作スイッチ30を操作しようとしてこの操作スイッチ30に手を近づける場合にのみ、運転席の乗員により操作スイッチ30が操作されたと判定することができる。そして、この制御装置50は、乗員の手が偶然にこの操作スイッチ30を横切る場合や視野角外の助手席の乗員の手が操作スイッチ30に手が近づく場合には、この操作スイッチ30の操作がなされたとは判定しない。このようにして、視野角内の運転席の乗員のみによって操作スイッチ30が操作されたことを判定することができるため、この判定に基づいて、操作対象である空調装置を適切に制御することができる。なお、近接物センサ40は、速度を速さと方向とを合わせたベクトルとして検知し、制御装置50においても、このベクトルとしての速度に基づいて判定を行うことから、より確実に操作スイッチ30の操作が誤検知されることを抑制することができる。
【0027】
(2)本実施形態の非接触スイッチ15は、表示シート20がマイクロレンズ層24有して操作スイッチ30のホログラムを形成するものであり、近接物センサ40は、送信電波と前記検知対象物から反射された受信電波とに基づいて検知を行うようにしている。これにより、この操作スイッチ30の視野角を小さくして表示の指向性を強くすることができるとともに、センタークラスターパネル11の表面に目立たないように設けることができる。また、近接物センサ40は、送信電波と検知対象物から反射された受信電波とに基づいて検知を行うものであるため、送信アンテナ41及び受信アンテナ42が、センタークラスターパネル11や表示シート20に覆われていたとしても、これらのものを介して乗員の手の距離及び速度を検知することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
本実施形態は、上記第1の実施形態の操作スイッチ30が運転席の乗員のみによって視認可能であったことに代わり、図5に示すように、異なる方向の視野角を有する複数の操作スイッチのホログラム(以下、単に操作スイッチという)81,82を同一の位置に表示するようにしたものである。
【0029】
具体的に、本実施形態の非接触スイッチ16は、表示シート60が運転席の乗員P1及び助手席の乗員P2のそれぞれに視認可能な第1及び第2の2つの操作スイッチ81,82を同一の位置に表示可能に構成されている。つまり、図5において実線で示す第1の操作スイッチ81は、運転席の乗員P1にのみ視認可能であり、図5において破線で示す第2の操作スイッチ82は、助手席の乗員P2にのみ視認可能に構成されている。なお、この表示シート60は、上記第1の実施形態と同様の製造方法で製造される。すなわち、本実施形態では、表示シート60により運転席及び助手席の2方向からそれぞれ視認可能な操作スイッチ81,82が表示されるため、表示シート60は、例えばシート材料に対してレーザーを運転席及び助手席の角度に対応した2方向の角度からそれぞれ照射することにより製造される。
【0030】
また、本実施形態では、制御装置70が、近接物センサ40によって検知された検知対象物の距離及び速度の推移に基づいて、それぞれの操作スイッチ81,82の視野角内の操作者によって各操作スイッチ81,82が操作されたか否かを判定するように構成されている。具体的に、制御装置70には、第1の操作スイッチ81の視野角内にある運転席の乗員P1が同操作スイッチ81を操作しようとして同スイッチ81の虚像に手を近づける場合の距離及び速度の推移の基準範囲が予め入力設定されている。さらに、制御装置70には、第2の操作スイッチ82の視野角内にある助手席の乗員P2が同操作スイッチ82を操作しようとして同スイッチ82に手を近づける場合とにおける距離及び速度の推移の基準範囲が予め入力設定されている。ここで、運転席の乗員P1と操作スイッチ81との位置関係と、助手席の乗員P2と操作スイッチ82との位置関係とは、非対称になっている。このため、運転席の乗員P1の手に対する距離及び速度の推移の基準範囲と、助手席の乗員P2の手に対する距離及び速度の推移の基準範囲とは異なったものとなる。したがって、この制御装置70は、運転席の乗員P1又は助手席の乗員P2の手が各操作スイッチ81,82に近づくときの距離及び速度の推移が上記それぞれの基準範囲内である場合には、各乗員P1,P2により各操作スイッチ81,82が操作されたものと判定する。また、この制御装置70は、運転席の乗員P1又は助手席の乗員P2の手が各操作スイッチ81,82に近づくときの距離及び速度の推移が上記それぞれの基準範囲外である場合には、単に各乗員P1,P2の手が各操作スイッチ81,82を偶然横切ったものとして、各操作スイッチ81,82が各乗員P1,P2によって操作されたものとは判定しない。
【0031】
そして、制御装置70は、運転席の乗員P1により第1の操作スイッチ81が操作された場合と、助手席の乗員P2により第2の操作スイッチ82が操作された場合とにおいて、制御対象である空調装置が異なる動作を実行するように制御する。具体的には、車両の空調装置は、運転席側と助手席側との両側において調和空気を吹き出す吹出口をそれぞれ備えている。したがって、制御装置70は、例えば、運転席の乗員P1が第1の操作スイッチ81を操作したと判定した場合には、この乗員P1が押した操作ボタンの機能に対応して運転席側の吹出口から流出する調和空気の量や風向などを制御する。また、制御装置70は、助手席の乗員P2が第2の操作スイッチ82を操作したと判定した場合には、この乗員P2が押した操作ボタンの機能に対応して助手席側の吹出口から流出する調和空気の量や風向などを制御する。なお、特に言及しないその他の構成、作用は上記第1の実施形態と同じである。
【0032】
以上詳述した本実施形態によれば、上記第1の実施形態に記載した(1)及び(2)の効果に加えて、以下の(3)及び(4)の効果を奏することができる。
(3)本実施形態の非接触スイッチ16は、表示シート60が、運転席及び助手席の各乗員P1,P2のそれぞれに視認可能な複数の視野角を有する操作スイッチ81,82を同一の位置に表示可能で、かつ制御装置70は、それぞれの乗員P1,P2によって各操作スイッチ81,82が操作されたことを判定するようにしている。これにより、表示シート60は、限られた空間に2つの操作スイッチ81,82の虚像を効率的に表示することができる。そして、制御装置70は、各乗員P1,P2によって各操作スイッチ81,82が操作されたことを判定するため、各操作スイッチ81,82に対する操作の誤検知を抑制することができる。
【0033】
(4)本実施形態の非接触スイッチ16は、表示シート60によって表示される各操作スイッチ81,82はそれぞれ運転席側又は助手席側の吹出口からの吹き出される調和空気を制御するといった態様で異なる動作を実行するように構成されている。したがって、同一の位置に表示された操作スイッチ81,82の虚像に対する操作により異なる動作を実行することができる。
【0034】
(その他の実施形態)
なお、本発明は次に示す変形例に具体化することができる。
・上記各実施形態では、制御装置が近接物センサ40によって検知される距離及び速度の推移が基準範囲内にあるときに、各操作スイッチの視野角内の乗員が操作スイッチを操作したものと判定したが、制御装置は、近接物センサ40が出力する距離及び速度の変化パターン(推移)に基づいてこれを判定してもよい。すなわち、乗員が操作スイッチを操作する場合には、特有の距離及び速度の変化パターンが表れるため、単に乗員の手が操作スイッチを横切る場合や視野角外の乗員が操作スイッチを操作する場合と区別することができる。
【0035】
・上記各実施形態では、近接物センサ40が操作スイッチに近づく乗員の手の距離とベクトルとしての速度とを検知することにより、制御装置が視野角内の乗員によって操作スイッチが操作されたことを判定するようにしている。しかしながら、近接物センサ40は速度の絶対量として速さと距離とを検知し、制御装置は、速度の絶対量としての速さと距離との推移により判定を行うようにしてもよく、このような場合でも、操作スイッチの操作の誤検知を抑制することができる。また、近接物センサが、乗員の手の距離と速度に代わり、乗員の手の距離と方向とを検知可能に構成され、制御装置は、この乗員の手の距離と方向との推移により操作スイッチの視野角内の乗員により同操作スイッチが操作されたことを判定するようにしてもよい。この場合、制御装置には、乗員が操作スイッチを操作しようとして操作スイッチに同乗員の手が近づくときの距離及び方向の推移の基準範囲が予め入力設定されており、近接物センサ40が出力する距離及び方向の推移がこの範囲内にあるときには、制御装置が視野角内の乗員により操作スイッチが操作されたものと判定する。なお、上述したオムロン株式会社製のプリタッチセンサは、検出範囲が360°であり、センサの全周囲において近づいてくる物体を検知することが可能であるため、センサに対してどの方向から乗員の手が近づいてきているかといったことを検出することも可能である。また、乗員の手の距離及び速度、又は距離及び方向を検知可能であれば、近接物センサとして、オムロン株式会社製のプリタッチセンサ以外のセンサを用いるようにしてもよい。なお、センサの検知原理も送信電波と前記検知対象物から反射された受信電波とに基づいて検知を行う構成に限定されない。
【0036】
・上記各実施形態では、非接触スイッチにより操作される対象は空調装置であったが、このスイッチにより操作される対象は車両に搭載されるオーディオ機器やカーナビゲーションシステムなどその他の機器であってもよい。また、運転席及び助手席の乗員に各乗員に視認可能な操作スイッチを同一の位置に表示する場合、各操作スイッチは同一の動作を実行するものであってもよい。また、表示シートは、運転席及び助手席の乗員に各乗員に視認可能な操作スイッチを、異なる位置に表示するようにしてもよい。さらに、車両には、1つの表示シートだけではなく、例えば、運転席の乗員、助手席の乗員及び後部座席の乗員のそれぞれが視野角となる操作スイッチの虚像を表示する複数の表示シートが搭載されていてもよい。この場合、車両の走行中には運転席の乗員が運転に集中できるように、例えば速度が所定速度以上になるときには、運転席の乗員に対応した操作スイッチは表示されないように同操作スイッチを表示する表示シートのバックライトの点灯を「OFF」状態とし、助手席の乗員や後部座席の乗員に対応する操作スイッチは常時表示されるようにしてもよい。
【0037】
・上記各実施形態では、表示シートがマイクロレンズ層を有する透過型の表示シートであり、このような構成によって操作スイッチのホログラムを形成するようにしたが、表示シートは表面側から外光などを受けてその反射光により操作スイッチを映し出す反射型の表示シートであってもよい。また、表示シートは、操作スイッチの2次元のホログラムを結像させて表示するものであってもよい。さらに、表示シートは、マイクロレンズ層を有する型式のものとは異なる型式のものであってもよい。また、表示シートにより表示される操作スイッチは、操作パネルを有さず単に操作ボタンのみであってもよいし、操作パネルを有する場合には、操作ボタンの機能などが適宜表示されるように構成されていてもよい。
【0038】
・上記各実施形態では、この非接触スイッチを車両のインストルメンタルパネル10に設けるようにしたが、車両のコンソールボックス、車両のドアなど車両のその他の部位に設けるようにしてもよいし、車両以外のその他の空間に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る非接触スイッチの表示シートが埋め込まれた車両のインストルメンタルパネルを示す斜視図。
【図2】同非接触スイッチを示す模式図。
【図3】同非接触スイッチの表示シートの断面構造を示す模式図。
【図4】同非接触スイッチの近接物センサの検知原理を示し、(a)が回路ユニットを示すブロック図、(b)が送信波形と受信波形とのずれを示す波形図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る非接触スイッチの構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0040】
10…インストルメンタルパネル、11…センタークラスターパネル、15,16…非接触スイッチ、20,60…表示シート、23…オーバーコート層、24…マイクロレンズ層、24a…マイクロレンズ、25…隠蔽層、25a,26a…透過孔、26…反射層、27…基体、30…操作スイッチ(操作スイッチのホログラム)、31…操作パネル、32…操作ボタン、40…近接物センサ、41…送信アンテナ、42…受信アンテナ、43…インパルス生成部、44…クロック部、45…波形伸張部、46…距離検知部、47…速度検知部、50,70…制御装置、81…第1の操作スイッチ(第1の操作スイッチのホログラム)、82…第2の操作スイッチ(第2の操作スイッチのホログラム)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の視野角を有する操作スイッチの虚像を表示する表示手段と、
前記虚像に対する検知対象物の距離及び速度を検知可能なセンサと、
前記検知対象物の距離及び速度の推移に基づいて、前記所定の視野角内の操作者によって前記操作スイッチが操作されたことを判定する判定手段と
を備える非接触スイッチ。
【請求項2】
所定の視野角を有する操作スイッチの虚像を表示する表示手段と、
前記虚像に対する検知対象物の距離及び方向を検知可能なセンサと、
前記検知対象物の距離及び方向の推移に基づいて、前記所定の視野角内の操作者によって前記操作スイッチが操作されたことを判定する判定手段と
を備える非接触スイッチ。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記表示手段は、異なる方向の視野角を有する複数の操作スイッチの虚像を同一の位置に表示可能であり、
前記判定手段は、それぞれの視野角内の操作者によって前記操作スイッチが操作されたことを判定する
ことを特徴とする非接触スイッチ。
【請求項4】
請求項3において、
前記複数の操作スイッチはそれぞれ異なる動作を実行するものである
ことを特徴とする非接触スイッチ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記表示手段は、マイクロレンズ層を有するシートにより前記操作スイッチのホログラムを形成するものであり、
前記センサは、送信電波と前記検知対象物から反射された受信電波とに基づいて検知を行うものである
ことを特徴とする非接触スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−243693(P2008−243693A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84789(P2007−84789)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】