非接触伝送デバイス、並びにそれを備えるバッテリユニット及びバッテリリッドユニット
【課題】非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルの一体化を可能とした非接触伝送デバイス、並びにそれを備えるバッテリユニット及びバッテリリッドユニットを提供する。
【解決手段】同一の磁性体10上に非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30を設ける。磁性体10の、比透磁率の実部をμ'、比透磁率の虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'、磁性体10の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温(例えば25度)かつ14MHz以下の周波数において、20≦μ'≦500、μ''≦200、tanδ≦1.0、かつBm>330mT(磁界の強さが1.6kA/mのとき)とする。
【解決手段】同一の磁性体10上に非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30を設ける。磁性体10の、比透磁率の実部をμ'、比透磁率の虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'、磁性体10の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温(例えば25度)かつ14MHz以下の周波数において、20≦μ'≦500、μ''≦200、tanδ≦1.0、かつBm>330mT(磁界の強さが1.6kA/mのとき)とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で信号及び電力を伝送する非接触伝送デバイス、並びにそれを備えるバッテリユニット及びバッテリリッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で「信号」を伝送するNFC(Near Field Communication)は、例えば乗車カードや電子マネー等の非接触ICカードが実用化され、近年では携帯電話やスマートフォン等の小型モバイル機器にも広く組み込まれている。NFCでは、ICモジュールとコイルを備える非接触ICカードや携帯電話をリーダ・ライタに近接させることで、非接触で信号を伝送できる。
【0003】
他方、非接触で「電力」を伝送する非接触給電(Wireless Charging)は、近年では伝送効率が向上し、小型モバイル機器にも採用される流れとなっている。非接触給電では、一方のコイルを備える機器を前記一方のコイルと磁気的に結合する他方のコイルを備える充電器に近接させることで、非接触で電力を伝送できる。非接触給電は、電極が不要であるために、接触不良による充電エラーを避けることができ、また防水構造とするにも適している。
【0004】
小型モバイル機器に非接触給電を採用する場合、既に組み込まれていることの多いNFCと併設することになる。NFCと非接触給電は、コイルの電磁誘導を利用する点では共通するものの、各々のコイルは使用周波数や特性が異なる。例えば、NFCで使用する周波数が13.56MHzであるのに対し、非接触給電で使用する周波数は主に50〜400kHzの帯域であることが多い。また、NFC用のコイルのインダクタンスが例えば1〜4μH(13.56MHz時)であるのに対し、非接触給電用のコイルのインダクタンスは例えば8〜24μH(100〜300KHz時)である。そのため、NFCと非接触給電を併設することを考えると、例えば図15(A),(B)に示すようにそれぞれのコイルを別々に分けて配置するのが通常である。
【0005】
下記特許文献1は、非接触ICカードにおいて2つのコイルを一体配置するものの、当該2つのコイルは信号送信系と信号受信系であり、必要とされる特性に大きな差は無い。下記特許文献2は、非接触給電に関し、被充電側のコイルと2次電池(通常アルミ等の金属でケーシングされている)との間に電磁遮蔽板を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−69533号公報
【特許文献2】特開平8−79976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
省スペース化の進んだ小型モバイル機器には、図16のようにバッテリ、カメラ、NFCデバイスに加えて非接触給電デバイスを別途配置するスペースは存在しない。例えばNFCデバイス(信号系)と非接触給電デバイス(電力系)を一体化するにしても、前述の通り各々のコイルは使用周波数や特性が異なるため両者を一体化することは困難である。
【0008】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルの一体化を可能とした非接触伝送デバイス、並びにそれを備えるバッテリユニット及びバッテリリッドユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、非接触伝送デバイスである。この非接触伝送デバイスは、
平板状の磁性体と、前記磁性体の一方の面に設けられた非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルとを備え、
前記磁性体の、比透磁率μrの実部をμ'、比透磁率μrの虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'としたとき、室温かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、かつ
tanδ≦1.0
であり、さらに、
前記磁性体の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温かつ磁界の強さ1.6kA/mにおいて、Bm>330mTであることを特徴とする。
【0010】
前記非接触給電用コイルが前記非接触通信用コイルの内側に位置してもよい。
【0011】
前記磁性体は、前記非接触給電用コイルの内側において前記非接触給電用コイルの配置面から立ち上がる凸部を有してもよい。
【0012】
前記非接触通信用コイル及び前記非接触給電用コイルが実質的に角形形状であってもよい。
【0013】
前記非接触給電用コイルは、前記非接触通信用コイルと実質的に同心配置であってもよい。
【0014】
前記磁性体は、前記非接触通信用コイルと前記非接触給電用コイルとの間のリング状の領域において前記一方の面から立ち上がる凸部を有してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様は、バッテリユニットである。このバッテリユニットは、前記非接触伝送デバイスとバッテリとが一体となっていることを特徴とする。
【0016】
前記バッテリが金属ケーシングで覆われ、前記非接触伝送デバイスの前記磁性体の他方の面が前記バッテリ側にあって前記磁性体が磁気シールドを成してもよい。
【0017】
前記バッテリが前記非接触伝送デバイスと接着或いは粘着により一体化されていてもよい。
【0018】
前記非接触伝送デバイス及び前記バッテリを収容するパッケージを備え、前記非接触伝送デバイスの配線が前記パッケージの内部にあり、かつ前記配線と導通して外部との電気的接続を可能とする接点が前記パッケージに設けられていてもよい。
【0019】
前記バッテリユニットにおいて、過充電防止回路が内蔵されていてもよい。
【0020】
前記バッテリユニットにおいて、信号混合分離回路を備え、電気的接続のための接点を通信用及び給電用に共用してもよい。
【0021】
本発明の第3の態様は、バッテリリッドユニットである。このバッテリリッドユニットは、前記非接触伝送デバイスと、バッテリで動作する機器本体に取り付けて前記バッテリを覆うリッドとを備え、前記非接触伝送デバイスが前記リッドと一体になっていることを特徴とする。
【0022】
前記バッテリで動作する機器本体と電気的接続を可能とする接点を有してもよい。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、磁性体の透磁率に条件を設けることで非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルの一体化を可能とした非接触伝送デバイス、並びにそれを備えるバッテリユニット及びバッテリリッドユニットを実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図2】図1のII-II断面図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図4】本発明の実施の形態3に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図5】本発明の実施の形態4に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図6】本発明の実施の形態5に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図7】図6のVII-VII断面図。
【図8】本発明の実施の形態6に係るバッテリユニットを小型モバイル機器本体に取り付ける場合の模式的分解図。
【図9】非接触伝送デバイスが小型モバイル機器本体に直接電気的に接続される場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図10】バッテリが非接触伝送デバイスの増設に対応している場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図11】バッテリユニットが樹脂等のパッケージに覆われて一体化されている場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図12】バッテリユニットに過充電防止回路を内蔵した場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図13】信号混合分離回路を用いる場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図14】本発明の実施の形態7に係るバッテリリッドユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図15】NFCと非接触給電の各コイルを別々に分けて配置した場合の模式図。
【図16】NFCと非接触給電の各コイルを別々にして携帯電話に搭載する場合の模式的説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態1に係る非接触伝送デバイス1の平面図である。図2は、図1のII-II断面図である。非接触伝送デバイス1は、平板状の磁性体10と、非接触通信用コイル20(NFCコイル)と、非接触給電用コイル30とを備える。
【0028】
磁性体10は、例えば一体のフェライト焼成物であって磁気シールドとして作用し、コアとして機能する凸部11を中央部に有する。すなわち、凸部11は、非接触給電用コイル30の内側において非接触給電用コイル30の配置面から立ち上がる。なお、凸部11は、磁性体10の一部であってもよいし磁性体10とは別体であってもよい。
【0029】
非接触通信用コイル20は、非接触で「信号」を伝送するためのコイルである。非接触給電用コイル30は、非接触で「電力」を伝送するためのコイルである。非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30は、磁性体10の一方の面上に設けられ、それぞれ1本分の線径の厚みとなるように薄く平面的に複数回(多数回)周回する。非接触給電用コイル30が非接触通信用コイル20の内側となる位置関係であり、両者は実質的に同心配置かつ上方から見て実質的に角形形状である。
【0030】
非接触通信用コイル20は、ここではFPC21(フレキシブルプリント基板)上の導体パターンとして形成される。FPC21は、外形は磁性体10と略同形状で且つ中央部が開口した枠状部(環状部)を有し、非接触給電用コイル30を囲むように磁性体10の一方の面上に接着等により固定される。また、FPC21は、前記枠状部から外側に延びる端子部21a,22bを有する。端子部21a,22bには電気的な接点となる電極201〜204が形成される。非接触通信用コイル20の両端の引出線20a,20bは、端子部21a上に引き出されて電極201,202に電気的に接続される。なお、引出線20bのうち非接触通信用コイル20の環状部を内側から外側に跨ぐ部分には、例えばジャンパー線を用いる。非接触給電用コイル30の両端の引出線30a,30bは、非接触通信用コイル20の上を跨いで端子部21b上に引き出され、電極203,204に電気的に接続される。非接触給電用コイル30は、例えばエナメル線等の絶縁被覆線を周回させたものである。
【0031】
本実施の形態では、同一の磁性体10上に非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30を設けている。非接触通信用コイル20の使用周波数は例えば13.56MHzであるのに対し、非接触給電用コイル30の使用周波数は例えば50〜400kHzの帯域であることが多い。また、非接触通信用コイル20のインダクタンスは1μH(13.56MHz時)とするのに対し、非接触給電用コイル30のインダクタンスは8〜20μH(100〜300KHz時)とする必要がある(いずれも磁性体10上に配置時のインダクタンス値)。このように、両コイルは使用周波数や特性が異なるため、磁性体10は下記の性質を満たすように作製する。すなわち、磁性体10の、比透磁率の実部をμ'、比透磁率の虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'、磁性体10の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温(例えば25度)かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、
tanδ≦1.0、かつ
Bm>330mT(磁界の強さが1.6kA/mのとき)
とする。但し、Bmの条件のみ直流時の値を示している。
【0032】
上記条件のうち、20≦μ'は、充電器側あるいはリーダ・ライタ側と電磁誘導により電力あるいは信号をやりとりするために必要な透磁率の条件である。μ'≦500は、μ'が500を超えてくると磁気損失項であるμ''が大きくなるため、主にNFCのために設定した条件である。μ''≦200は、μ''が200を超えてくるとNFCの通信距離が短くなるため、必要な通信距離を確保するために設定した条件である。μ''が小さいほど、リーダ・ライタから離しても通信が可能となる。tanδ≦1.0は、電磁誘導による通信効率と磁気損失とのバランスを考慮して主にNFCのために設定した条件である。Bm>330mTは、非接触給電用コイル30に流れる比較的大きな電流によっても磁気飽和しないようにするために、主に非接触給電のために設定した条件である。これらの条件を満たすことにより、磁性体10は、電力系と信号系の双方に対応できる磁気シールドとなる。
【0033】
本実施の形態によれば、下記のとおりの効果を奏することができる。
【0034】
(1) 磁性体10が上記の条件を満たすものであるため、同一の磁性体10で非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30に対して効果的に磁気シールドを行うことが可能となる。
【0035】
(2) そして、そのような磁性体10上に非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30を一体的に設けて一体化コイルユニットとしたことで、省スペース化を図ることができ、例えば小型モバイル機器への搭載に有利である。すなわち、既に組み込まれていることの多いNFCに加え、小型モバイル機器に非接触給電機能を搭載することが小型化により容易となる。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態2に係る非接触伝送デバイス2の平面図である。本実施の形態の非接触伝送デバイス2は、図1に示す非接触伝送デバイス1と比較して、非接触通信用コイル20の両端の引出線20a,20b及び非接触給電用コイル30の両端の引出線30a,30bをFPC21の同じ端子部21c上に引き出してそれぞれ端子部21c上の電極201〜204に電気的に接続している点で相違し、その他の点は同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態3に係る非接触伝送デバイス3の平面図である。本実施の形態の非接触伝送デバイス3は、図1に示す非接触伝送デバイス1と異なり、非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30の位置関係が逆になっていて(非接触給電用コイル30が非接触通信用コイル20の外側に位置し)、非接触通信用コイル20用の電極201,202が非接触給電用コイル30の内側にあり、磁性体10は図1の凸部11に相当するものを有さない。この場合、FPC21の中央部に開口は不要で、端子部21aは無く、端子部21bは非接触給電用コイル30の環状部と磁性体10との間を通って外側に延びる。本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0038】
図5は、本発明の実施の形態4に係る非接触伝送デバイス4の平面図である。本実施の形態の非接触伝送デバイス4は、図4に示す非接触伝送デバイス3と比較して、FPC20の端子部21bが無くなって非接触給電用コイル30の両端の引出線30a,30bが直接磁性体10の外側に引き出されている点で相違し、その他の点は同様である。本実施の形態も、実施の形態3と同様の効果を奏する。
【0039】
図6は、本発明の実施の形態5に係る非接触伝送デバイス15の平面図である。図7は、図6のVII-VII断面図である。本実施の形態の非接触伝送デバイス15は、図1に示す非接触伝送デバイス1と比較して、磁性体10が非接触通信用コイル20と非接触給電用コイル30との間のリング状の領域に突起部12を有する点で相違し、その他の点は同様である。突起部12は、凸部11と略同一高さである。なお、突起部12は、図示のように前記リング状の領域を1周する連続したリング状突起であってもよいし、複数の突起がリング状に配列されたものであってもよい(不図示)。なお、突起部12をリング状突起とする場合、リング状突起を内側から外側に渡す溝部(不図示)を設け、当該溝部を経由して非接触給電用コイル30の引出線30a,30bを引き出してもよい。これによれば、引出線30a,30bが突起部12から出っ張ることを防止できる。
【0040】
突起部12を設けた理由は次のとおりである。すなわち、非接触伝送デバイス15で非接触通信を行う場合、非接触給電用コイル30は非接触通信と無関係な導体部であり、非接触給電用コイル30による電磁波の干渉により非接触通信の通信距離が短くなるという問題がある。そこで、突起部12を設けると、非接触通信時の非接触給電用コイル30による干渉を低減でき、突起部12を設けない場合と比較して非接触通信の通信距離を長くすることができる。なお、実施の形態2〜4の場合にも同様の突起部12を設けることができ、そうすることでコイル間の干渉を低減できる。
【0041】
以下、非接触伝送デバイス及びバッテリを一体化したバッテリユニットの実施の形態について説明する。
【0042】
図8は、本発明の実施の形態6に係るバッテリユニット5を小型モバイル機器本体8に取り付ける場合の模式的分解図である。なお、小型モバイル機器は、図示の例では携帯電話であるが、スマートフォンやデジタルカメラ、携帯ゲーム機、携帯音楽プレイヤ等の小型モバイル機器であってもよい。
【0043】
バッテリユニット5は、小型モバイル機器のバッテリ7の表面(小型モバイル機器本体8とは反対側の面)に、非接触伝送デバイス6を接着ないし粘着により一体化したものである。非接触伝送デバイス6とバッテリ7は当初から一体に形成されてもよい。非接触伝送デバイス6は、実施の形態1〜5のいずれかで説明したものを用いる。非接触伝送デバイス6の磁性体10(図1等)は、コイル搭載面と反対側の面がバッテリ7側になる配置である。2次電池であるバッテリ7は、アルミ等の金属ケーシングで表面が覆われている。バッテリユニット5は、小型モバイル機器本体8に取り付けられた状態でリッド9(バッテリケース)によって覆われる。リッド9は、小型モバイル機器本体8に対して着脱自在に取り付けられる。
【0044】
非接触伝送デバイス6と小型モバイル機器本体8との電気的接続の方法の例を以下に説明する。
【0045】
図9は、非接触伝送デバイス6が小型モバイル機器本体8に直接電気的に接続される場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6と小型モバイル機器本体8との電気的接合は、給電及び通信のどちらも小型モバイル機器本体8側に専用端子801〜804を既存の電源端子8aとは別に設けて非接触伝送デバイス6の電極201〜204と直接接合する。給電系は小型モバイル機器本体8内の過充電防止回路81等を経由してバッテリ7に給電し、信号系は小型モバイル機器本体8内へ信号を伝送してRFID信号処理回路82にて信号処理を行う。なお、バッテリ7と小型モバイル機器本体8との接続は、既存の電源端子7a,8aの相互接続によって成される。
【0046】
図10は、バッテリ7が非接触伝送デバイスの増設に対応している場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。バッテリ7は、非接触伝送デバイス6との接点となる端子701〜704を有するとともに、小型モバイル機器本体8との接点となる端子711〜714を既存の電源端子7aとは別に有する。非接触伝送デバイス6とバッテリ7とを一体化する際に、端子201〜204と端子701〜704とを電気的に接続させる。この場合、バッテリユニット5を小型モバイル機器本体8の所定位置に取り付けることで、端子711〜714が小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続され、給電及び通信のどちらの電気的接続も完了できる。図10におけるその他の点は図9と同様である。
【0047】
図11は、バッテリユニット5が樹脂等のパッケージ5aに覆われて一体化されている場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6の配線はパッケージ5aの内部にあり、当該配線と導通する接点である端子501〜504がパッケージ5aの表面に露出して設けられる。この場合も、バッテリユニット5を小型モバイル機器本体8の所定位置に取り付けることで、端子501〜504が小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続され、給電及び通信のどちらの電気的接続も完了できる。図11におけるその他の点は図9と同様である。
【0048】
図12は、バッテリユニット5に過充電防止回路52を内蔵した場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。これによれば、小型モバイル機器本体8を経由せずに非接触伝送デバイス6からバッテリ7に給電可能である。このため、図11に示す給電用の端子503,504,803,804は不要である。図12におけるその他の点は図11と同様である。
【0049】
図13は、信号混合分離回路を用いる場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。信号混合分離回路53,83は、バッテリユニット5及び小型モバイル機器本体8にそれぞれ設けられる。信号混合分離回路53,83を用いることにより電源系の接続と信号系の接続を共用すれば、既存の電源端子に加えての端子の増設は必要ない。すなわち、図12における通信用の端子501,502,801,802は不要である。図13におけるその他の点は図12と同様である。
【0050】
以下、非接触伝送デバイスをバッテリケース用のリッド9の背面(内側の面)に一体化したバッテリリッドユニットの実施の形態について説明する。
【0051】
図14は、本発明の実施の形態7に係るバッテリリッドユニットと小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6は、実施の形態1〜5のいずれかで説明したものを用いる。通常のリッドには接点が無いので、専用の端子901〜904を新たに設け、小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続する。図14におけるその他の点は、図9と同様である。
【0052】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0053】
非接触伝送デバイスにおいて、非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30は同心配置に限定されない。実施の形態1及び2において、磁性体10の凸部11(コイルコアとして作用)は無くてもよい。非接触通信用コイル20はFPC21上の導電パターンとして形成することに替えて、エナメル銅線等の絶縁被覆線を周回させたコイルとしてもよい。非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30は角形形状であるとスペース効率がよいが、円形や長円形を始め、その他の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1〜4 非接触伝送デバイス
5 バッテリユニット
7 バッテリ
8 小型モバイル機器本体
9 リッド
10 磁性体
11 凸部
20 非接触通信用コイル
21 FPC
21a,22b 端子部
30 非接触給電用コイル
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で信号及び電力を伝送する非接触伝送デバイス、並びにそれを備えるバッテリユニット及びバッテリリッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で「信号」を伝送するNFC(Near Field Communication)は、例えば乗車カードや電子マネー等の非接触ICカードが実用化され、近年では携帯電話やスマートフォン等の小型モバイル機器にも広く組み込まれている。NFCでは、ICモジュールとコイルを備える非接触ICカードや携帯電話をリーダ・ライタに近接させることで、非接触で信号を伝送できる。
【0003】
他方、非接触で「電力」を伝送する非接触給電(Wireless Charging)は、近年では伝送効率が向上し、小型モバイル機器にも採用される流れとなっている。非接触給電では、一方のコイルを備える機器を前記一方のコイルと磁気的に結合する他方のコイルを備える充電器に近接させることで、非接触で電力を伝送できる。非接触給電は、電極が不要であるために、接触不良による充電エラーを避けることができ、また防水構造とするにも適している。
【0004】
小型モバイル機器に非接触給電を採用する場合、既に組み込まれていることの多いNFCと併設することになる。NFCと非接触給電は、コイルの電磁誘導を利用する点では共通するものの、各々のコイルは使用周波数や特性が異なる。例えば、NFCで使用する周波数が13.56MHzであるのに対し、非接触給電で使用する周波数は主に50〜400kHzの帯域であることが多い。また、NFC用のコイルのインダクタンスが例えば1〜4μH(13.56MHz時)であるのに対し、非接触給電用のコイルのインダクタンスは例えば8〜24μH(100〜300KHz時)である。そのため、NFCと非接触給電を併設することを考えると、例えば図15(A),(B)に示すようにそれぞれのコイルを別々に分けて配置するのが通常である。
【0005】
下記特許文献1は、非接触ICカードにおいて2つのコイルを一体配置するものの、当該2つのコイルは信号送信系と信号受信系であり、必要とされる特性に大きな差は無い。下記特許文献2は、非接触給電に関し、被充電側のコイルと2次電池(通常アルミ等の金属でケーシングされている)との間に電磁遮蔽板を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−69533号公報
【特許文献2】特開平8−79976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
省スペース化の進んだ小型モバイル機器には、図16のようにバッテリ、カメラ、NFCデバイスに加えて非接触給電デバイスを別途配置するスペースは存在しない。例えばNFCデバイス(信号系)と非接触給電デバイス(電力系)を一体化するにしても、前述の通り各々のコイルは使用周波数や特性が異なるため両者を一体化することは困難である。
【0008】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルの一体化を可能とした非接触伝送デバイス、並びにそれを備えるバッテリユニット及びバッテリリッドユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、非接触伝送デバイスである。この非接触伝送デバイスは、
平板状の磁性体と、前記磁性体の一方の面に設けられた非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルとを備え、
前記磁性体の、比透磁率μrの実部をμ'、比透磁率μrの虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'としたとき、室温かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、かつ
tanδ≦1.0
であり、さらに、
前記磁性体の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温かつ磁界の強さ1.6kA/mにおいて、Bm>330mTであることを特徴とする。
【0010】
前記非接触給電用コイルが前記非接触通信用コイルの内側に位置してもよい。
【0011】
前記磁性体は、前記非接触給電用コイルの内側において前記非接触給電用コイルの配置面から立ち上がる凸部を有してもよい。
【0012】
前記非接触通信用コイル及び前記非接触給電用コイルが実質的に角形形状であってもよい。
【0013】
前記非接触給電用コイルは、前記非接触通信用コイルと実質的に同心配置であってもよい。
【0014】
前記磁性体は、前記非接触通信用コイルと前記非接触給電用コイルとの間のリング状の領域において前記一方の面から立ち上がる凸部を有してもよい。
【0015】
本発明の第2の態様は、バッテリユニットである。このバッテリユニットは、前記非接触伝送デバイスとバッテリとが一体となっていることを特徴とする。
【0016】
前記バッテリが金属ケーシングで覆われ、前記非接触伝送デバイスの前記磁性体の他方の面が前記バッテリ側にあって前記磁性体が磁気シールドを成してもよい。
【0017】
前記バッテリが前記非接触伝送デバイスと接着或いは粘着により一体化されていてもよい。
【0018】
前記非接触伝送デバイス及び前記バッテリを収容するパッケージを備え、前記非接触伝送デバイスの配線が前記パッケージの内部にあり、かつ前記配線と導通して外部との電気的接続を可能とする接点が前記パッケージに設けられていてもよい。
【0019】
前記バッテリユニットにおいて、過充電防止回路が内蔵されていてもよい。
【0020】
前記バッテリユニットにおいて、信号混合分離回路を備え、電気的接続のための接点を通信用及び給電用に共用してもよい。
【0021】
本発明の第3の態様は、バッテリリッドユニットである。このバッテリリッドユニットは、前記非接触伝送デバイスと、バッテリで動作する機器本体に取り付けて前記バッテリを覆うリッドとを備え、前記非接触伝送デバイスが前記リッドと一体になっていることを特徴とする。
【0022】
前記バッテリで動作する機器本体と電気的接続を可能とする接点を有してもよい。
【0023】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、磁性体の透磁率に条件を設けることで非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルの一体化を可能とした非接触伝送デバイス、並びにそれを備えるバッテリユニット及びバッテリリッドユニットを実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態1に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図2】図1のII-II断面図。
【図3】本発明の実施の形態2に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図4】本発明の実施の形態3に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図5】本発明の実施の形態4に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図6】本発明の実施の形態5に係る非接触伝送デバイスの平面図。
【図7】図6のVII-VII断面図。
【図8】本発明の実施の形態6に係るバッテリユニットを小型モバイル機器本体に取り付ける場合の模式的分解図。
【図9】非接触伝送デバイスが小型モバイル機器本体に直接電気的に接続される場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図10】バッテリが非接触伝送デバイスの増設に対応している場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図11】バッテリユニットが樹脂等のパッケージに覆われて一体化されている場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図12】バッテリユニットに過充電防止回路を内蔵した場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図13】信号混合分離回路を用いる場合のバッテリユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図14】本発明の実施の形態7に係るバッテリリッドユニットと小型モバイル機器本体の概略ブロック図。
【図15】NFCと非接触給電の各コイルを別々に分けて配置した場合の模式図。
【図16】NFCと非接触給電の各コイルを別々にして携帯電話に搭載する場合の模式的説明図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態1に係る非接触伝送デバイス1の平面図である。図2は、図1のII-II断面図である。非接触伝送デバイス1は、平板状の磁性体10と、非接触通信用コイル20(NFCコイル)と、非接触給電用コイル30とを備える。
【0028】
磁性体10は、例えば一体のフェライト焼成物であって磁気シールドとして作用し、コアとして機能する凸部11を中央部に有する。すなわち、凸部11は、非接触給電用コイル30の内側において非接触給電用コイル30の配置面から立ち上がる。なお、凸部11は、磁性体10の一部であってもよいし磁性体10とは別体であってもよい。
【0029】
非接触通信用コイル20は、非接触で「信号」を伝送するためのコイルである。非接触給電用コイル30は、非接触で「電力」を伝送するためのコイルである。非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30は、磁性体10の一方の面上に設けられ、それぞれ1本分の線径の厚みとなるように薄く平面的に複数回(多数回)周回する。非接触給電用コイル30が非接触通信用コイル20の内側となる位置関係であり、両者は実質的に同心配置かつ上方から見て実質的に角形形状である。
【0030】
非接触通信用コイル20は、ここではFPC21(フレキシブルプリント基板)上の導体パターンとして形成される。FPC21は、外形は磁性体10と略同形状で且つ中央部が開口した枠状部(環状部)を有し、非接触給電用コイル30を囲むように磁性体10の一方の面上に接着等により固定される。また、FPC21は、前記枠状部から外側に延びる端子部21a,22bを有する。端子部21a,22bには電気的な接点となる電極201〜204が形成される。非接触通信用コイル20の両端の引出線20a,20bは、端子部21a上に引き出されて電極201,202に電気的に接続される。なお、引出線20bのうち非接触通信用コイル20の環状部を内側から外側に跨ぐ部分には、例えばジャンパー線を用いる。非接触給電用コイル30の両端の引出線30a,30bは、非接触通信用コイル20の上を跨いで端子部21b上に引き出され、電極203,204に電気的に接続される。非接触給電用コイル30は、例えばエナメル線等の絶縁被覆線を周回させたものである。
【0031】
本実施の形態では、同一の磁性体10上に非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30を設けている。非接触通信用コイル20の使用周波数は例えば13.56MHzであるのに対し、非接触給電用コイル30の使用周波数は例えば50〜400kHzの帯域であることが多い。また、非接触通信用コイル20のインダクタンスは1μH(13.56MHz時)とするのに対し、非接触給電用コイル30のインダクタンスは8〜20μH(100〜300KHz時)とする必要がある(いずれも磁性体10上に配置時のインダクタンス値)。このように、両コイルは使用周波数や特性が異なるため、磁性体10は下記の性質を満たすように作製する。すなわち、磁性体10の、比透磁率の実部をμ'、比透磁率の虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'、磁性体10の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温(例えば25度)かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、
tanδ≦1.0、かつ
Bm>330mT(磁界の強さが1.6kA/mのとき)
とする。但し、Bmの条件のみ直流時の値を示している。
【0032】
上記条件のうち、20≦μ'は、充電器側あるいはリーダ・ライタ側と電磁誘導により電力あるいは信号をやりとりするために必要な透磁率の条件である。μ'≦500は、μ'が500を超えてくると磁気損失項であるμ''が大きくなるため、主にNFCのために設定した条件である。μ''≦200は、μ''が200を超えてくるとNFCの通信距離が短くなるため、必要な通信距離を確保するために設定した条件である。μ''が小さいほど、リーダ・ライタから離しても通信が可能となる。tanδ≦1.0は、電磁誘導による通信効率と磁気損失とのバランスを考慮して主にNFCのために設定した条件である。Bm>330mTは、非接触給電用コイル30に流れる比較的大きな電流によっても磁気飽和しないようにするために、主に非接触給電のために設定した条件である。これらの条件を満たすことにより、磁性体10は、電力系と信号系の双方に対応できる磁気シールドとなる。
【0033】
本実施の形態によれば、下記のとおりの効果を奏することができる。
【0034】
(1) 磁性体10が上記の条件を満たすものであるため、同一の磁性体10で非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30に対して効果的に磁気シールドを行うことが可能となる。
【0035】
(2) そして、そのような磁性体10上に非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30を一体的に設けて一体化コイルユニットとしたことで、省スペース化を図ることができ、例えば小型モバイル機器への搭載に有利である。すなわち、既に組み込まれていることの多いNFCに加え、小型モバイル機器に非接触給電機能を搭載することが小型化により容易となる。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態2に係る非接触伝送デバイス2の平面図である。本実施の形態の非接触伝送デバイス2は、図1に示す非接触伝送デバイス1と比較して、非接触通信用コイル20の両端の引出線20a,20b及び非接触給電用コイル30の両端の引出線30a,30bをFPC21の同じ端子部21c上に引き出してそれぞれ端子部21c上の電極201〜204に電気的に接続している点で相違し、その他の点は同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0037】
図4は、本発明の実施の形態3に係る非接触伝送デバイス3の平面図である。本実施の形態の非接触伝送デバイス3は、図1に示す非接触伝送デバイス1と異なり、非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30の位置関係が逆になっていて(非接触給電用コイル30が非接触通信用コイル20の外側に位置し)、非接触通信用コイル20用の電極201,202が非接触給電用コイル30の内側にあり、磁性体10は図1の凸部11に相当するものを有さない。この場合、FPC21の中央部に開口は不要で、端子部21aは無く、端子部21bは非接触給電用コイル30の環状部と磁性体10との間を通って外側に延びる。本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態も、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0038】
図5は、本発明の実施の形態4に係る非接触伝送デバイス4の平面図である。本実施の形態の非接触伝送デバイス4は、図4に示す非接触伝送デバイス3と比較して、FPC20の端子部21bが無くなって非接触給電用コイル30の両端の引出線30a,30bが直接磁性体10の外側に引き出されている点で相違し、その他の点は同様である。本実施の形態も、実施の形態3と同様の効果を奏する。
【0039】
図6は、本発明の実施の形態5に係る非接触伝送デバイス15の平面図である。図7は、図6のVII-VII断面図である。本実施の形態の非接触伝送デバイス15は、図1に示す非接触伝送デバイス1と比較して、磁性体10が非接触通信用コイル20と非接触給電用コイル30との間のリング状の領域に突起部12を有する点で相違し、その他の点は同様である。突起部12は、凸部11と略同一高さである。なお、突起部12は、図示のように前記リング状の領域を1周する連続したリング状突起であってもよいし、複数の突起がリング状に配列されたものであってもよい(不図示)。なお、突起部12をリング状突起とする場合、リング状突起を内側から外側に渡す溝部(不図示)を設け、当該溝部を経由して非接触給電用コイル30の引出線30a,30bを引き出してもよい。これによれば、引出線30a,30bが突起部12から出っ張ることを防止できる。
【0040】
突起部12を設けた理由は次のとおりである。すなわち、非接触伝送デバイス15で非接触通信を行う場合、非接触給電用コイル30は非接触通信と無関係な導体部であり、非接触給電用コイル30による電磁波の干渉により非接触通信の通信距離が短くなるという問題がある。そこで、突起部12を設けると、非接触通信時の非接触給電用コイル30による干渉を低減でき、突起部12を設けない場合と比較して非接触通信の通信距離を長くすることができる。なお、実施の形態2〜4の場合にも同様の突起部12を設けることができ、そうすることでコイル間の干渉を低減できる。
【0041】
以下、非接触伝送デバイス及びバッテリを一体化したバッテリユニットの実施の形態について説明する。
【0042】
図8は、本発明の実施の形態6に係るバッテリユニット5を小型モバイル機器本体8に取り付ける場合の模式的分解図である。なお、小型モバイル機器は、図示の例では携帯電話であるが、スマートフォンやデジタルカメラ、携帯ゲーム機、携帯音楽プレイヤ等の小型モバイル機器であってもよい。
【0043】
バッテリユニット5は、小型モバイル機器のバッテリ7の表面(小型モバイル機器本体8とは反対側の面)に、非接触伝送デバイス6を接着ないし粘着により一体化したものである。非接触伝送デバイス6とバッテリ7は当初から一体に形成されてもよい。非接触伝送デバイス6は、実施の形態1〜5のいずれかで説明したものを用いる。非接触伝送デバイス6の磁性体10(図1等)は、コイル搭載面と反対側の面がバッテリ7側になる配置である。2次電池であるバッテリ7は、アルミ等の金属ケーシングで表面が覆われている。バッテリユニット5は、小型モバイル機器本体8に取り付けられた状態でリッド9(バッテリケース)によって覆われる。リッド9は、小型モバイル機器本体8に対して着脱自在に取り付けられる。
【0044】
非接触伝送デバイス6と小型モバイル機器本体8との電気的接続の方法の例を以下に説明する。
【0045】
図9は、非接触伝送デバイス6が小型モバイル機器本体8に直接電気的に接続される場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6と小型モバイル機器本体8との電気的接合は、給電及び通信のどちらも小型モバイル機器本体8側に専用端子801〜804を既存の電源端子8aとは別に設けて非接触伝送デバイス6の電極201〜204と直接接合する。給電系は小型モバイル機器本体8内の過充電防止回路81等を経由してバッテリ7に給電し、信号系は小型モバイル機器本体8内へ信号を伝送してRFID信号処理回路82にて信号処理を行う。なお、バッテリ7と小型モバイル機器本体8との接続は、既存の電源端子7a,8aの相互接続によって成される。
【0046】
図10は、バッテリ7が非接触伝送デバイスの増設に対応している場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。バッテリ7は、非接触伝送デバイス6との接点となる端子701〜704を有するとともに、小型モバイル機器本体8との接点となる端子711〜714を既存の電源端子7aとは別に有する。非接触伝送デバイス6とバッテリ7とを一体化する際に、端子201〜204と端子701〜704とを電気的に接続させる。この場合、バッテリユニット5を小型モバイル機器本体8の所定位置に取り付けることで、端子711〜714が小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続され、給電及び通信のどちらの電気的接続も完了できる。図10におけるその他の点は図9と同様である。
【0047】
図11は、バッテリユニット5が樹脂等のパッケージ5aに覆われて一体化されている場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6の配線はパッケージ5aの内部にあり、当該配線と導通する接点である端子501〜504がパッケージ5aの表面に露出して設けられる。この場合も、バッテリユニット5を小型モバイル機器本体8の所定位置に取り付けることで、端子501〜504が小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続され、給電及び通信のどちらの電気的接続も完了できる。図11におけるその他の点は図9と同様である。
【0048】
図12は、バッテリユニット5に過充電防止回路52を内蔵した場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。これによれば、小型モバイル機器本体8を経由せずに非接触伝送デバイス6からバッテリ7に給電可能である。このため、図11に示す給電用の端子503,504,803,804は不要である。図12におけるその他の点は図11と同様である。
【0049】
図13は、信号混合分離回路を用いる場合のバッテリユニット5と小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。信号混合分離回路53,83は、バッテリユニット5及び小型モバイル機器本体8にそれぞれ設けられる。信号混合分離回路53,83を用いることにより電源系の接続と信号系の接続を共用すれば、既存の電源端子に加えての端子の増設は必要ない。すなわち、図12における通信用の端子501,502,801,802は不要である。図13におけるその他の点は図12と同様である。
【0050】
以下、非接触伝送デバイスをバッテリケース用のリッド9の背面(内側の面)に一体化したバッテリリッドユニットの実施の形態について説明する。
【0051】
図14は、本発明の実施の形態7に係るバッテリリッドユニットと小型モバイル機器本体8の概略ブロック図である。非接触伝送デバイス6は、実施の形態1〜5のいずれかで説明したものを用いる。通常のリッドには接点が無いので、専用の端子901〜904を新たに設け、小型モバイル機器本体8側の専用端子801〜804に接続する。図14におけるその他の点は、図9と同様である。
【0052】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0053】
非接触伝送デバイスにおいて、非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30は同心配置に限定されない。実施の形態1及び2において、磁性体10の凸部11(コイルコアとして作用)は無くてもよい。非接触通信用コイル20はFPC21上の導電パターンとして形成することに替えて、エナメル銅線等の絶縁被覆線を周回させたコイルとしてもよい。非接触通信用コイル20及び非接触給電用コイル30は角形形状であるとスペース効率がよいが、円形や長円形を始め、その他の形状としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1〜4 非接触伝送デバイス
5 バッテリユニット
7 バッテリ
8 小型モバイル機器本体
9 リッド
10 磁性体
11 凸部
20 非接触通信用コイル
21 FPC
21a,22b 端子部
30 非接触給電用コイル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の磁性体と、前記磁性体の一方の面に設けられた非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルとを備え、
前記磁性体の、比透磁率μrの実部をμ'、比透磁率μrの虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'としたとき、室温かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、かつ
tanδ≦1.0
であり、さらに、
前記磁性体の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温かつ磁界の強さ1.6kA/mにおいて、Bm>330mTであることを特徴とする、非接触伝送デバイス。
【請求項2】
前記非接触給電用コイルが前記非接触通信用コイルの内側に位置する請求項1に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項3】
前記磁性体は、前記非接触給電用コイルの内側において前記非接触給電用コイルの配置面から立ち上がる凸部を有する、請求項2に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項4】
前記非接触通信用コイル及び前記非接触給電用コイルが実質的に角形形状である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項5】
前記非接触給電用コイルは前記非接触通信用コイルと実質的に同心配置である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項6】
前記磁性体は、前記非接触通信用コイルと前記非接触給電用コイルとの間のリング状の領域において前記一方の面から立ち上がる凸部を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイスとバッテリとが一体となっていることを特徴とする、バッテリユニット。
【請求項8】
前記バッテリが金属ケーシングで覆われ、前記非接触伝送デバイスの前記磁性体の他方の面が前記バッテリ側にあって前記磁性体が磁気シールドを成す、請求項7に記載のバッテリユニット。
【請求項9】
前記バッテリが前記非接触伝送デバイスと接着或いは粘着により一体化されている請求項7又は8に記載のバッテリユニット。
【請求項10】
前記非接触伝送デバイス及び前記バッテリを収容するパッケージを備え、前記非接触伝送デバイスの配線が前記パッケージの内部にあり、かつ前記配線と導通して外部との電気的接続を可能とする接点が前記パッケージに設けられている請求項7乃至9のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項11】
過充電防止回路が内蔵されている請求項7乃至10のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項12】
信号混合分離回路を備え、電気的接続のための接点を通信用及び給電用に共用する、請求項7乃至11のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイスと、バッテリで動作する機器本体に取り付けて前記バッテリを覆うリッドとを備え、前記非接触伝送デバイスが前記リッドと一体になっていることを特徴とする、バッテリリッドユニット。
【請求項14】
前記バッテリで動作する機器本体と電気的接続を可能とする接点を有する請求項13に記載のバッテリリッドユニット。
【請求項1】
平板状の磁性体と、前記磁性体の一方の面に設けられた非接触通信用コイル及び非接触給電用コイルとを備え、
前記磁性体の、比透磁率μrの実部をμ'、比透磁率μrの虚部をμ''、tanδ=μ''/μ'としたとき、室温かつ14MHz以下の周波数において、
20≦μ'≦500、
μ''≦200、かつ
tanδ≦1.0
であり、さらに、
前記磁性体の飽和磁束密度をBmとしたとき、室温かつ磁界の強さ1.6kA/mにおいて、Bm>330mTであることを特徴とする、非接触伝送デバイス。
【請求項2】
前記非接触給電用コイルが前記非接触通信用コイルの内側に位置する請求項1に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項3】
前記磁性体は、前記非接触給電用コイルの内側において前記非接触給電用コイルの配置面から立ち上がる凸部を有する、請求項2に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項4】
前記非接触通信用コイル及び前記非接触給電用コイルが実質的に角形形状である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項5】
前記非接触給電用コイルは前記非接触通信用コイルと実質的に同心配置である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項6】
前記磁性体は、前記非接触通信用コイルと前記非接触給電用コイルとの間のリング状の領域において前記一方の面から立ち上がる凸部を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイスとバッテリとが一体となっていることを特徴とする、バッテリユニット。
【請求項8】
前記バッテリが金属ケーシングで覆われ、前記非接触伝送デバイスの前記磁性体の他方の面が前記バッテリ側にあって前記磁性体が磁気シールドを成す、請求項7に記載のバッテリユニット。
【請求項9】
前記バッテリが前記非接触伝送デバイスと接着或いは粘着により一体化されている請求項7又は8に記載のバッテリユニット。
【請求項10】
前記非接触伝送デバイス及び前記バッテリを収容するパッケージを備え、前記非接触伝送デバイスの配線が前記パッケージの内部にあり、かつ前記配線と導通して外部との電気的接続を可能とする接点が前記パッケージに設けられている請求項7乃至9のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項11】
過充電防止回路が内蔵されている請求項7乃至10のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項12】
信号混合分離回路を備え、電気的接続のための接点を通信用及び給電用に共用する、請求項7乃至11のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の非接触伝送デバイスと、バッテリで動作する機器本体に取り付けて前記バッテリを覆うリッドとを備え、前記非接触伝送デバイスが前記リッドと一体になっていることを特徴とする、バッテリリッドユニット。
【請求項14】
前記バッテリで動作する機器本体と電気的接続を可能とする接点を有する請求項13に記載のバッテリリッドユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図16】
【公開番号】特開2013−21902(P2013−21902A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247932(P2011−247932)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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