説明

非接触型データ受送信体

【課題】感熱記録層およびそこに形成された印字層を備えた非接触型データ受送信体において、印字層の形成によってアンテナやICチップが熱劣化しない非接触型データ受送信体を提供する。
【解決手段】本発明の非接触型データ受送信体10は、第一基材21と、第一基材21の一方の面21aに設けられ、互いに電気的に接続されたアンテナ22およびICチップ23と、アンテナ22およびICチップ23を被覆する接着層41と、接着層41を介して、第一基材21に積層され、接着層41と接する面とは反対側の面31aに感熱記録層32を有する第二基材31と、を備え、感熱記録層32にインクジェット印字層33が形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電波を媒体とし、非接触状態にて、外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体に関し、特に、基材の表面(外面)に、光学読取コードなどからなる印字層が設けられた非接触型データ受送信体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICカードは、基材と、その一方の面に設けられ互いに電気的に接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えており、情報書込/読出装置からの電波または電磁波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICカード内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICカードのアンテナから発信される。
ICカードから発信された信号は、情報書込/読出装置のアンテナで受信され、コントローラーを介してデータ処理装置へ送られ、識別などのデータ処理が行われる。
【0003】
非接触型データ受送信体には、個体識別のためや、ICチップが故障した時に、ICチップに記録されている情報の一部をバックアップするために、基材の表面にバーコードや2次元コードなどの光学読取コードなどの印字層が設けられることがある。
このように非接触型データ受送信体の基材の表面に、上記のような印字層を有するものとしては、基材の表面(外面)に感熱記録層が設けられ、その感熱記録層にサーマルプリンタで印字層が形成されたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−221499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているような非接触型データ受送信体は、その厚みが薄いため、サーマルプリンタによって印字層を形成すると、印字による熱が表面から内部まで伝わり、その熱によってアンテナやICチップが劣化することがあった。特に、アンテナがポリマー型導電インクを用いて形成されている場合、その熱によって、ポリマー型導電インクを構成する樹脂組成物が熔融してアンテナが崩壊し、アンテナが機能しなくなることがあった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、感熱記録層およびそこに形成された印字層を備えた非接触型データ受送信体において、印字層の形成によってアンテナやICチップが熱劣化しない非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非接触型データ受送信体は、第一基材と、該第一基材の一方の面に設けられ、互いに電気的に接続されたアンテナおよびICチップと、該アンテナおよびICチップを被覆する接着層と、該接着層を介して、前記第一基材に積層され、前記接着層と接する面とは反対側の面に感熱記録層を有する第二基材と、を備えた非接触型データ受送信体であって、前記感熱記録層にインクジェット印字層が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の非接触型データ受送信体によれば、感熱記録層の第二基材と接する面とは反対側の面側に、インクジェット印字層が形成されているので、インクジェット印字層の形成によって、アンテナおよびICチップが熱劣化していないので、アンテナおよびICチップが正常に機能する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の非接触型データ受送信体の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0011】
図1は、本発明の非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、第一基材21と、第一基材21の一方の面21aに設けられ、互いに電気的に接続されたアンテナ22およびICチップ23と、アンテナ22およびICチップ23を被覆する接着層41と、接着層41を介して、第一基材21に積層され、接着層41と接する面とは反対側の面(以下、「一方の面(外面)」と言う。)31aに感熱記録層32を有する第二基材31とから概略構成されている。
また、感熱記録層32の一方の面(外面)32a側には、インクジェット印字層33が形成されている。
この非接触型データ受送信体10は、平面視略長方形状をなしている。
【0012】
また、第一基材21、アンテナ22およびICチップ23は、インレット20を形成している。
アンテナ22は、各種導電体からなり、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ23と接続している部分)を有する一対の面状の放射素子22A,22Bからなるダイポールアンテナである。
アンテナ22の長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子22A,22Bの長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0013】
また、第一基材21の一方の面21aにおいて、アンテナ22およびICチップ23が接着層41によって完全に被覆されている。これにより、アンテナ22およびICチップ23が、第二基材31と直接接することがない。
【0014】
第一基材21、第二基材31としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材などが用いられる。
【0015】
アンテナ22は、第一基材21の一方の面21aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターン状にスクリーン印刷により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0016】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0017】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度でアンテナ22をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ22をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することにより形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0018】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0019】
また、アンテナ22をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、アンテナ22をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0020】
ICチップ23としては、特に限定されず、アンテナ22を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは、非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0021】
感熱記録層32を形成する材料としては、ロイコ染料からなる発色剤と、フェノール系化合物などの酸性物質からなる顕色剤と、発色剤と顕色剤の化学反応を促進させる増感剤と、これらの成分を均一に分散して第一基材21および第二基材31に固着させる保持剤と、樹脂バインダとから構成されるペースト状の樹脂組成物が用いられる。
【0022】
インクジェット印字層33は、感熱記録層32の一方の面(外面)32a側に、非接触のインパクトタイプのインクジェット印刷機により形成されたものである。このインクジェット印字層33は、特に限定されるものではなく、非接触型データ受送信体10を識別するためのバーコードや2次元コードなどの光学読取コードからなる印刷情報、あるいは、任意の文字や記号などからなる印刷情報である。
【0023】
接着層41を形成する接着剤としては、使用前は液状であり、加熱、紫外線照射、電子線照射などの外的条件を加えなくても、主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液硬化型ウレタン系接着剤からなるものである。
2液硬化型ウレタン系接着剤としては、ポリエステル樹脂とポリイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの混合物、ウレタンとポリイソシアネートとの混合物などが挙げられる。
このような2液硬化型ウレタン系接着剤の具体例としては、例えば、主剤(商品名:MLT2900、イーテック社製)と硬化剤(商品名:G3021−B174、イーテック社製)からなる接着剤が挙げられる。
【0024】
また、接着層41を形成する接着剤には、必要に応じて、公知の無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤が含まれていてもよい。この着色剤により、接着層41は任意の色に着色される。
【0025】
次に、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法を説明する。
まず、インレット20を構成する第一基材21の一方の面21aに、アンテナ22およびICチップ23を覆うように、接着層41を形成する接着剤を塗布する(工程A)。
次いで、上述のペースト状の樹脂組成物からなる感熱記録層32が設けられた第二基材31を、第一基材21の一方の面21aに塗布した接着剤を介して、第一基材21の一方の面21a上に重ね合わせるとともに、第一基材21と第二基材31をローラー(図示略)で挟み込むことにより、第一基材21と第二基材31の間のほぼ全域にわたって、第一基材21の一方の面21aに塗布した接着剤を展開させる(工程B)。なお、ここでは、第二基材31の感熱記録層32が設けられていない面(他方の面)31bを、第一基材21の一方の面21aに対向させる。
【0026】
工程Aでは、接着層41を形成する接着剤として、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液混合型ウレタン樹脂からなる接着剤を用いる。したがって、この接着剤は、工程Bにおいて、第一基材21と第二基材31の間に展開させるまでの間、流動性を有しているが、反応の進行に伴って、次第に流動性がなくなり、最終的には硬化する。これにより、第一基材21の一方の面21a、並びに、その一方の面21aに設けられたアンテナ22およびICチップ23が接着剤によって被覆されるとともに、第一基材21の一方の面21a上に、第二基材31が接着、固定される。また、この接着剤は、硬化させるために加熱する必要がないので、この接着剤の硬化反応によって、アンテナ22およびICチップ23が劣化することがない。
【0027】
次いで、非接触のインパクトタイプのインクジェット印刷機により、感熱記録層32の一方の面32a側に、非接触型データ受送信体10を識別するためのバーコードや2次元コードなどの光学読取コードからなる印刷情報、あるいは、任意の文字や記号などからなる印刷情報であるインクジェット印字層33を形成し(工程C)、非接触型データ受送信体10を得る。
工程Cでは、非接触のインパクトタイプのインクジェット印刷機を用いるので、インクジェット印字層33の形成時に熱が発生しないから、インクジェット印字層33の形成によって、アンテナ22およびICチップ23は熱劣化することがない。
【0028】
非接触型データ受送信体10によれば、感熱記録層32の一方の面32a側に、非接触のインパクトタイプのインクジェット印刷機により、インクジェット印字層33が形成されているので、インクジェット印字層33の形成によって、アンテナ22およびICチップ23が熱劣化していないので、アンテナ22およびICチップ23が正常に機能する。特に、アンテナ22が上記のポリマー型導電インクを用いて形成されていても、インクジェット印字層33の形成によって、ポリマー型導電インクを構成する樹脂組成物が熔融して、アンテナが崩壊することもなく、アンテナが正常に機能する。
【0029】
この実施形態では、非接触型データ受送信体10が平面視略長方形状をなしている場合を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、非接触型データ受送信体は、平面視した場合、任意のカード形状、タグ形状をなしていてもよい。
また、この実施形態では、一対の面状の放射素子22A,22Bから構成されるダイポールアンテナからなるアンテナ22を備えた非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、アンテナは一対の枠状の放射素子から構成されるダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナ、モノポールアンテナであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
10・・・非接触型データ受送信体、20・・・インレット、21・・・第一基材、22・・・アンテナ、23・・・ICチップ、31・・・第二基材、32・・・感熱記録層、33・・・インクジェット印字層、41・・・接着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基材と、該第一基材の一方の面に設けられ、互いに電気的に接続されたアンテナおよびICチップと、該アンテナおよびICチップを被覆する接着層と、該接着層を介して、前記第一基材に積層され、前記接着層と接する面とは反対側の面に感熱記録層を有する第二基材と、を備えた非接触型データ受送信体であって、
前記感熱記録層にインクジェット印字層が形成されたことを特徴とする非接触型データ受送信体。


【図1】
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【公開番号】特開2011−186946(P2011−186946A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53702(P2010−53702)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】