説明

非接触型情報媒体と非接触型情報媒体付属冊子

【課題】非接触型情報媒体の加工工程を簡便化するとともに、表紙や用紙との接着性にすぐれ、かつ耐久性、耐偽変造性、耐水性、耐イオン性などに優れた非接触型情報媒体と、その非接触型情報媒体を使用した非接触型情報媒体付属冊子を提供することにある。
【解決手段】アンテナコイルとアンテナコイルに接続されたICとが、複数の多孔質熱可塑性基材に挟まれて積層されてなる非接触情報記録体において、アンテナに接する多孔質熱可塑性基材の内側の面に水分および各種イオンの透過を抑制する熱可塑性接着剤層を設けることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICおよびアンテナコイルを有する非接触型情報媒体と、その非接触型情報媒体が接着された非接触型情報媒体付属冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触IC カードや非接触IC タグを用いたシステムが普及する中、例えばパスポートや預貯金通帳等冊子に非接触ICモジュールとそれに接続されたアンテナからなるICインレットを外装基材で挟み込んで非接触型情報媒体とし、この非接触型情報媒体を表紙等に貼り合わせ等で装填した、電子データの記入や印字が可能な非接触型情報媒体付属冊子が開発されている。
【0003】
その非接触型情報媒体付属冊子の一事例として、第1の基材の上面側に、所定の広さの開口部を有する第2の基材が接着されて凹部が形成され、この凹部内にIC チップとこれに接続されたコイルアンテナが備えられ、前記第1の基材シートの内面側に接着剤層が設けられている非接触型情報媒体と、この非接触型情報媒体が裏表紙の内面に貼付されてなる非接触型情報媒体付属冊子がある( 例えば、特許文献1参照) 。
【0004】
上記の従来技術によって得られた非接触型情報媒体は、凹部にIC チップとこれに接続されたコイルアンテナを備えるための開口部を第2の基材に設け、第1の基材シートとを接着するといった加工工程の増加があり、開口部の貼合わせ精度や貼合わせ後の空隙の発生、さらに開口部とICモジュールの厚みのバラツキによる凹凸で平面性に劣る等の問題があった。
【0005】
上記のような凹凸や空隙の問題を解決する方法としてはたとえば以下のようなものが考えられる。すなわち、一般に流通しているクレジットカードやICカードのように、熱可塑性の基材、例えばPVCやPET−Gなどのシートの間にICおよびアンテナ等を挟みこみ、強い熱圧をかけることで基材を流動させて平滑にするものである。このようにして得られた非接触型情報媒体を上記冊子の表又は裏の表紙と内貼り用紙の間に接着することで非接触型情報媒体付属冊子を作成することが出来る。
【0006】
また、熱圧によって流動するような基材ではなく、熱可塑性で基材中に空隙を有する多孔質熱可塑性の基材を利用することが出来る。このような基材は樹脂を発泡させることで得られるため一般に材料が柔らかく剛度が低い。また、基材に空隙があるために各種接着剤とのなじみが良く、たとえば紙の冊子と接着することも容易である。さらに適度な圧力をかけることで凹凸も吸収する事が可能である。
【0007】
しかしながらこのような多孔質熱可塑性基材を積層して接着する際、高温高圧を加えて融着させようとするとその空隙自体もつぶれてしまうため、より低温低圧でも接着できるように基材に熱可塑性接着剤を塗布するなどの処理が行われたりもする。
【0008】
しかしながら、前記熱可塑性接着剤の接着温度が低ければ加工に要する熱圧も低くて済む反面、基材同士のブロッキングが発生しやすく、高温環境下において剥がれやすくなる。また、前記熱可塑性接着剤の接着温度が高ければ加工時にかかる熱で多孔質の基材が破壊してしまうという問題がある。さらに、このような多孔質の基材は通気性が高く、水分や酸素などを容易に透過させてしまう可能性がある。
【0009】
上記非接触型情報媒体のアンテナにはアルミや銅が用いられるが、これらの金属は水分
に媒介された酸素イオンや塩化物イオンなどによって腐食されやすいため、非接触型情報媒体が故障するという問題が生ずることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−42068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、ICとこれに接続されたアンテナコイルからなるICインレットを多孔質熱可塑性基材の間に挟み込んで非接触型情報媒体および、この非接触型情報媒体を表表紙または裏表紙に接着された非接触型情報媒体付属冊子において、前記非接触型情報媒体の加工工程を簡便化するとともに、表紙や用紙との接着性にすぐれ、かつ耐久性、耐水性、耐イオン性などに優れた非接触型情報媒体と、その非接触型情報媒体を使用した非接触型情報媒体付属冊子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するための手段として、請求項1の発明は、アンテナコイルと前記アンテナコイルに接続されたICとが、複数の多孔質熱可塑性基材に挟まれて積層されてなる非接触情報記録体において、アンテナに接する多孔質熱可塑性基材の内側の面に水分および各種イオンの透過を抑制する熱可塑性接着剤層を設けたことを特徴とする非接触型情報媒体である。
【0013】
請求項2の発明は、前記熱可塑性接着剤層がエチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびこれらの変性物のうち、少なくとも1種類以上の樹脂を主成分としたことを特徴とする請求項1記載の非接触型情報媒体である。
【0014】
請求項3の発明は、前記熱可塑性接着剤層が水系のエマルジョンまたはディスパージョンからなる熱可塑性接着剤を多孔質熱可塑性基材に塗布して形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の非接触型情報媒体である。
【0015】
請求項4の発明は、前記熱可塑性接着剤層の厚みが1μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の非接触型情報媒である。
【0016】
請求項5の発明は、前記熱可塑性接着剤層の接着温度が70度以上160度以下であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の非接触型情報媒体である。
【0017】
請求項6の発明は、前記熱可塑性接着剤層が染料または顔料で着色された層であり、多孔質熱可塑性基材に該接着層が設けられた面の反射濃度と基材単体の面での反射濃度の差が0.04以上であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の非接触型情報媒体である。
【0018】
請求項7の発明は、前記熱可塑性接着剤層を着色する材料としてカーボンブラックを用いたことを特徴とする請求項6記載の非接触型情報媒体である。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1から7いずれか1項に記載の非接触型情報媒体の多孔質熱可塑性基材の一方が冊子の内貼り用紙と接着され、もう一方の多孔質熱可塑基材が表また
は裏のいずれかの表紙用部材に接着されたことを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1および2に係る発明によれば、ICおよびアンテナコイルを備えたアンテナシートを熱可塑性接着剤の塗布された多孔質熱可塑性基材に挟みこんで接着することにより、簡便で安定的な方法によって非接触型情報媒体を作成することが出来る。
【0021】
また、多孔質熱可塑性基材は空隙が大きく水分や酸素イオン、塩化物イオン、などの各種イオンや、その他の物質を容易に透過させてしまう欠点が有り、これらの物質により内部のICチップやアンテナが劣化する問題があるが、エチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびこれらの変性物のうち、少なくとも1種類以上の樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤層を用いることで問題となる水分、水分に媒介された酸素イオンおよび、塩化物イオンなどの各種イオンの浸透を抑制し、内側のICチップやアンテナの腐食や腐食起因の故障を防止することが出来る。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、多孔質熱可塑性基材に熱可塑性接着剤を塗布して接着剤層を形成する際に、水系のエマルジョンまたはディスパージョンを用いることで環境負荷が少なくかつ塗工性にも優れており作業性を向上させることが出来る。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、多孔質熱可塑性基材上の熱可塑性接着剤層の厚みを1μm以上15μm以下になるように層を設けることにより、問題となる水分、水分に媒介された酸素イオンおよび、塩化物イオンなどの各種イオンの浸透を抑制できる。また15μm以下にすることにより、インレイのラミネート時に熱可塑性接着剤がはみ出しを防止できる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、熱可塑性接着剤の接着温度を70度以上160度以下にすることにより、低温度でのブロッキングと高温度下での剥がれおよび熱ラミネート時の多孔質熱可塑性基材の破壊を防止できる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、白色の基材が原因となる接着剤の塗工抜けの見逃しを、熱可塑性接着剤に染料または顔料を添加着色し、多孔質熱可塑性基材に該接着層が設けられた面の反射濃度と基材単体の面での反射濃度の差が0.04以上にすることにより、熱可塑性接着剤の塗工抜けの判断をし易くし、作業効率や品質を向上させることが出来る。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、カーボンブラックの粉体や分散体を用いることで、染料系の材料を用いた場合に起こる多孔質基材への浸透拡散による外観上の不具合や、顔料を用いた場合に起こるICモジュールやアンテナの腐食等の悪影響を引き起こすことなく、着色することができる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、非接触型情報媒体の多孔質熱可塑性基材の一方が冊子の内貼り用紙と接着され、もう一方の多孔質熱可塑基材が表または裏のいずれかの表紙用部材に接着され
た構成とする事により、問題となる水分、水分に媒介された酸素イオンおよび、塩化物イオンなどの各種イオンの浸透を抑制し、非接触型情報媒体付属冊子のICチップやアンテナの腐食や腐食起因の故障を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の非接触型情報媒体付属冊子の一実施の形態を説明する斜視図である。
【図2】本発明に用いる非接触ICインレットの実施の形態を説明する平面図である。
【図3】本発明の非接触型情報媒体、クロスおよび冊子表紙を貼り合せた実施の形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の非接触型情報媒体(10)を使用した非接触型情報媒体付属冊子は(14)、図1に示すような形状であり、表紙用部材(11) とその内面に貼着する内貼り用紙(12) との間に非接触型情報媒体(10)を挟み込んで接着され、これに複数の本文用紙(13)が加わったものである。
【0030】
この非接触型情報媒体(10)の一部であるICインレット(23)は図2に示すようにアンテナシート基材(20)とICチップ(21)とアンテナコイル(22)とから構成される。このICインレット(23)は例えば図3に示すように、2枚の外装基材である多孔質熱可塑性基材(30)の間に挟み込まれることで非接触型情報媒体(10)を構成している。
【0031】
また、ICチップ(21)とアンテナコイル(22)とアンテナシート基材(20)からなるICインレット(23)は、IC自身の厚みや、アンテナの厚み、アンテナの接合部や、アンテナシート基材(20)自体の厚みなどにより、凹凸のあるシートとなっている。このICインレットを外装基材の間に挟んで非接触型情報媒体に加工する際、外観上はこれらの凹凸を無くすことが望ましい。
【0032】
ここで使用される多孔質熱可塑性基材(30)としては、例えば 、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステルなど各種の樹脂を単体もしくは組み合わせて使用し、シリカなどの多孔質粒子を混合したり、混練時に空気を加えて発泡させたり、延伸後に穿孔加工したりすることで得ることが出来る。このような材料は一般にインクジェットやオフセットなどに対する印刷適性を付与した樹脂シート又は合成紙として市販されている。
【0033】
上記の材料を用いた図3における2枚の多孔質熱可塑性基材(30)のそれぞれ内側にあたる部分に、あらかじめ熱可塑性接着剤(32)を塗布してから積層し、熱圧をかけることで接着させ、非接触型情報媒体(10)を得る。ここで使用可能な熱可塑性接着剤(32)は、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系、エチレン‐メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、アクリル系、ナイロン系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、各種熱可塑性の樹脂を使用することができる。
【0034】
これらの中でも、特に水分に強く、酸素や塩化物イオンの透過を抑制するような塗膜を形成する樹脂、また熱や湿度により劣化し接着部分に剥がれを生じないものを使用する。また、後工程や作業性の面から、塗工が容易で、乾燥後のブロッキングが生じにくく、耐久性の高いものが使用に適する。例えばエチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびこれらの変性物のうち、少なくとも1種類以上の樹脂を主成分としたものは、グラビアコーターで塗工するなどで好適な性能を得ることが出来る。
【0035】
一方、一般的にポリエステル系の接着剤は湿度による加水分解が生じる可能性があり、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系接着剤は経時劣化し易いので注意が必要である。また、上記の樹脂を使用してエマルジョンやディスパージョンにした水系のヒートシール剤を用いる場合には、それらのヒートシール剤自体がアンテナ等に悪影響を与える可能性があり注意が必要である。
【0036】
上記の樹脂を主成分としたヒートシール剤として機能する熱可塑性接着剤(32は請求項4に示すように1μmから15μmの間にあることが望ましい。また、接着性能と耐水性、耐イオン性を両立させるため、2種類以上の樹脂を混合したり、2層に塗工したりすることもできる。
【0037】
また、上記請求項8に係る発明はこの非接触型情報媒体(10)を表紙用部材(11)と内貼り用紙(12)との間に挟み込んで接着し、冊子形状に加工されたものである。非接触型情報媒体(10)は内貼り用紙(12)と接着剤(33)によって接着されるが、この接着剤(33)は作業性、や環境の側面からも水系のエマルジョン接着剤を使用する場合が多く、また、実際にはこれまで冊子を製造してきた設備を使用することも多いので、布と紙の貼り合わせ用としての接着剤が選ばれてきた。
【0038】
非接触型情報媒体付属冊子(14)に使用する非接触型情報媒体(10)を、一般のICカードに使われるような外装基材、例えばPVCやPET−Gを使用して作成した場合、既存の設備および接着剤で内貼り用紙を接着することはできない上、剛度が高いことによる問題が生じる。このような問題を解決するため、本発明では多孔質の熱可塑性シートを外装用として多孔質熱可塑性基材(30)を使用することで、様々なタイプの接着剤と良好な密着性を示し、かつ、凹凸が無く、柔軟なIC非接触型情報媒体付冊子(14)を作成することが出来る。
【0039】
非接触型情報媒体(10)と表紙用部材(11)を接着する際には体積変化の無い反応硬化型の接着剤(31)を好適に用いることが出来る。仮に体積変化のある乾燥硬化型の接着剤を使用した場合、非接触型情報媒体の一部が凹んでいたとすると接着剤の使用量が多くなるため乾燥時の体積減少が大きくなり、表紙用部材の外側に凹みが生じてしまうため外観上の問題となる。
【0040】
このような問題を解決するために体積変化の無い接着剤を使用することが望ましく、例えば、2液混合型エポキシ系接着剤、湿気硬化型シリコン系接着剤、1液硬化型ウレタン系接着剤、などが使用できる。また、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系、エチレン‐メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、各種のホットメルト接着剤なども使用可能である。以上の接着剤のうち、作業性や耐久性の観点から、反応型のホットメルト接着剤などが好適である。
【実施例】
【0041】
以下に本発明に係る、非接触型情報媒体と非接触型情報媒体付属冊子について説明するが、本発明はこの形に限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートをアンテナシート基材(20)とし、両面にアルミ蒸着とアンテナ状のマスク層の印刷を行い、パターンエッチングによって表面にアンテナコイル(32)と裏面にジャンパ線を形成した。さらに、かしめ接合により、アンテナコイルとジャンパ線を接合し、アンテナコイルの接続端子部にICチップ (21)を溶接した。
【0043】
アンテナコイルの外周は80mm×48mmで、内周は67mm×37mmである。さらに、アンテナコイルの内側を65mm×35mmの大きさで打ち抜いて除去した。さらに、アンテナコイルの外周およびICから2mm離れた輪郭を取ってその外側のアンテナシート基材を打ち抜いて除去しICインレットを得た。
【0044】
多孔質熱可塑性基材として、380μmの「TESLINシート」(PPG Industry社)を準備し、このシートの片面に表1に示した接着剤1(エチレン・メタクリル酸共重合体)、接着剤2(エチレン・酢ビニル共重合体)、接着剤3(ポリエステル)、接着剤4(アクリル)、接着剤5(ナイロン)、接着剤6(ポリアミド)、接着剤7(ポリウレタン)、接着剤8(ポリオレフィン)の熱可塑性接着剤10μm塗布し、乾燥させてサンプルを作製した後、150mm×200mmのシート2枚に断裁した。
【0045】
【表1】

【0046】
準備した片方の多孔質熱可塑性基材(30)上記ICインレット(23)を配置し、スポット加熱により固定した。さらにもう1枚の外装基材である多孔質熱可塑性基材(30)を積層し、スポット加熱により固定した。
この積層されたシートを2枚のSUS板に挟み込み加熱加圧することで接着して非接触型情報媒体(20)を得た。加熱加圧条件は、加熱部温度100度以上160度以下圧力450kPa以上2250kPa以下、処理時間15秒以上120秒以下の間で調整し、最適なものを選択した。
【0047】
冊子表紙用クロス「Enviromate」(ICG/Holliston社))を非接触型情報媒体サイズに断裁し、表紙用部材(11)を得た。湿気硬化型ホットメルト接着剤(31)「エスダイン」(積水フーラー社)をヒートロールコータで溶融させ、20g/m2の厚みで上記表紙用部材(11)に塗工した。接着剤(31)が塗工された表紙用部材(11)に非接触型情報媒体(10)のICインレットが配置されている外装基材側を接着させ、ローラで加圧し、その後エージングした。
【0048】
複数枚の本文用紙と一枚の内貼り用紙(12)を丁合いし、中央をミシンで縫うことで内貼り用紙(12)が最外部に取り付けられた本文用紙(13)を作成した。上記で得られた、表紙用部材(11)が接着された非接触型情報媒体(10)のICインレット(23)が配置されていない多孔性熱可塑性基材(30)側に水系エマルジョンからなる内貼り用紙用接着剤(33)「SP−2850」(コニシ社)を20g/m2の厚みで塗工し、上記の内貼り用紙を接着した。得られた冊子を広げた状態で125mm×180mmに断裁し、非接触型情報媒体付属冊子を得た。
【0049】
評価結果を表1に示す。非接触型情報媒体に用いた熱可塑性接着剤の主成分により性能の差が生じた。エチレン‐酢酸ビニル共重合体樹脂の熱可塑性接着剤は耐塩水性に弱いため熱可塑性接着剤層により水分および各種イオンをブロックしきれず非接触型情報媒体内のアンテナを腐食させることやポリエステル樹脂のものを使用すると高温高湿環境下で加水分解が促進され剥がれを生じることが確認されたが、今回使用したエチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤はアンテナ腐食や高温高湿環境での劣化に強く、かつ耐久性があり、非接触型情報媒体付属冊子の材料として適することが確認された。
【実施例2】
【0050】
実施例1における熱可塑性接着剤(32)の膜厚の適正を評価するために、他の条件は同様にして接着剤8(ポリオレフィン)の膜厚を1μm、8μm、15μmとした多孔性熱可塑性基材(30)を作製した。
【0051】
同様に接触型情報媒体付属冊子を作製し、不具合の確認、及び高温高湿環境下で加水分解が促進を行い耐塩水性(5%食塩水噴霧試験、72時間)のアンテナ腐食の確認をおこなった。表2にその結果を示す。 その膜厚みが1μm以下の場合には耐塩水性に乏しく、15μm以上の場合には2枚の外装基材を熱ラミネートした時に接着剤のはみ出しが発生することが確認された。
【0052】
【表2】

【実施例3】
【0053】
熱可塑性接着剤の塗工抜けの判断をし易くするために、実施例1の熱可塑性接着剤(32)にカーボンブラックを0.05%添加し、他の条件を同じにし、欠点検査機による検知確認テストをおこなった。接着剤8(ポリオレフィン)に対してカーボンブラックを0.05%添加した熱可塑性接着剤を塗布した外装基材とカーボンブラックを添加していない外装基材を作製し、欠点検査機による欠点検知性能をそれぞれ評価し、結果を表3で示す。カーボンブラックを添加した熱可塑性接着剤を塗工することで、塗工抜けを検知できた。
【0054】
【表3】

【0055】
(効果の確認)
水分や各種イオンに対するバリア性に優れた非接触型情報媒体と非接触型情報媒体付属冊子を作製することが出来、アンテナ腐食や高温高湿環境での劣化に強く、かつ耐久性を持ち、しかもカーボンブラックを熱可塑性接着剤に添加することにより、塗工時の塗工抜けの検査が支障なく簡単に出来、塗工抜けの見落としが無くなった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の非接触型情報媒体と非接触型情報媒体付属冊子は、既存の基材よりも水分や各種イオンに対するバリア性に優れており、耐久性を必要とする通帳やパスポートなどに使用できる。
【符号の説明】
【0057】
10 ‥非接触型情報媒体
11 ‥表紙用部材
12 ‥内貼り用紙
13 ‥本文用紙
14 ‥非接触型情報媒体付属冊子
20 ‥アンテナシート基材
21 ‥ICチップ
22 ‥アンテナコイル
23 ‥インレット
30 ‥多質孔質熱可塑性基材(外装基材)
31 ‥接着剤(表紙用)
32 ‥熱可塑性接着剤(外装基材塗布用)
33 ‥接着剤(内貼り用紙用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルと前記アンテナコイルに接続されたICとが、複数の多孔質熱可塑性基材に挟まれて積層されてなる非接触情報記録体において、アンテナに接する多孔質熱可塑性基材の内側の面に水分および各種イオンの透過を抑制する熱可塑性接着剤層を設けたことを特徴とする非接触型情報媒体。
【請求項2】
前記熱可塑性接着剤層がエチレン‐メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびこれらの変性物のうち、少なくとも1種類以上の樹脂を主成分としたことを特徴とする請求項1記載の非接触型情報媒体。
【請求項3】
前記熱可塑性接着剤層が水系のエマルジョンまたはディスパージョンからなる熱可塑性接着剤を多孔質熱可塑性基材に塗布して形成されたことを特徴とする請求項1または2記載の非接触型情報媒体。
【請求項4】
前記熱可塑性接着剤層の厚みが1μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の非接触型情報媒体。
【請求項5】
前記熱可塑性接着剤層の接着温度が70度以上160度以下であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の非接触型情報媒体。
【請求項6】
前記熱可塑性接着剤層が染料または顔料で着色された層であり、多孔質熱可塑性基材に該接着層が設けられた面の反射濃度と基材単体の面での反射濃度の差が0.04以上であることを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の非接触型情報媒体。
【請求項7】
前記熱可塑性接着剤層を着色する材料としてカーボンブラックを用いたことを特徴とする請求項6記載の非接触型情報媒体。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の非接触型情報媒体の多孔質熱可塑性基材の一方が冊子の内貼り用紙と接着され、もう一方の多孔質熱可塑基材が表または裏のいずれかの表紙用部材に接着されたことを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−113446(P2011−113446A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271287(P2009−271287)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】