説明

非接触型情報記録媒体、非接触IC冊子及び非接触ICカード

【課題】耐塩水性能の強化を図ることができる非接触型情報記録媒体、非接触IC冊子及び非接触ICカードを提供する。
【解決手段】非接触型情報記録媒体2は、ICインレット4と、外装基材6とを含んで構成されている。ICインレット4は、アンテナシート8と、ICモジュール9と、リードフレーム12とを備えている。ICモジュール9は、アンテナシート8に取着され、不図示のICチップと、該ICチップを覆うモールド樹脂13とで構成されている。リードフレーム12は、ICモジュール9に設けられ、ICモジュール9に埋め込まれる部分と、ICモジュール9から露出しアンテナシート8の他方の面に位置する部分とを有している。外装基材6は、ICインレット4の両面を被覆するものである。ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分が合成樹脂からなる封止層32で覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型情報記録媒体、非接触IC冊子及び非接触ICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触IC冊子及びカードは固有の識別情報を格納したICチップと、この識別情報を送受信するアンテナからなる非接触型のICインレットを内蔵し、これを外装基材で挟み込んで非接触型の情報記録媒体(非接触型情報記録媒体)として、冊子やカード化したものである(特許文献1参照)。
【0003】
これらの非接触IC冊子及びカードはパスポートや銀行のカードなどで使用されることから、長期間使用される製品では10年程度の使用が見込まれる。その為、高い信頼性かつ長い耐用年数が定められている。
【0004】
これらの長期信頼性評価のためにICAO(international civil aviation organization)で以下の公知の技術文献に記されているとおり塩水噴霧試験の規格が定められており、非接触IC冊子及びカードにおける耐塩水性は非常に重要な要素となっている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−92120号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Durability of Machine Readable Passports Version: 3.2, TF4 Doc: N0232
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非接触IC冊子及び非接触ICカードにおける新規材料や工程条件の最適化に伴う信頼性評価としては一般的に上記文献に則った塩水試験が実施される。この評価において塩水浸入後にモジュールやアンテナ等との異種金属と電解質である塩水との接触による腐食、断線の発生や、モジュールやアンテナ及び多孔質膜樹脂やカバー材等の隙間に塩水が入り込み通気差の影響による腐食、断線の発生が確認されている。
【0008】
これらの腐食は非接触IC冊子及び非接触ICカードに深刻な影響を及ぼすことから、耐塩水性能の強化が、非接触IC冊子及び非接触ICカードの長寿命化を図る上で重要となる。
【0009】
本発明は上述の背景に基づきなされてものであり、その目的は耐塩水性能の強化を図ることができる非接触型情報記録媒体、非接触IC冊子及び非接触ICカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明において上記問題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、アンテナが形成されたアンテナシートと、前記アンテナシートに取着されたICモジュールと、前記ICモジュールに設けられ前記アンテナに接続されるリードフレームとを備えるICインレットと、前記ICインレットの両面を被覆する外装基材とを含む非接触型情報記録媒体であって、前記ICモジュールは、前記アンテナシートの厚さ方向の一方の面から突出し他方の面に露出して配置され、前記リードフレームは前記ICモジュールに埋め込まれる部分と、前記ICモジュールから露出し前記アンテナシートの他方の面に位置する部分とを有し、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分が合成樹脂からなる封止層で覆われていることを特徴とする非接触型情報記録媒体である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記封止層の厚さが1μm以上、1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の非接触型情報記録媒体である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記合成樹脂がシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂、PET樹脂、フッ素系樹脂の何れかであることを特徴とする請求項1または2記載の非接触型情報記録媒体である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記封止層は、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分と前記外装基材との間に形成される隙間空間、および、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分のダイパットとブリッジとの間に形成される隙間空間の少なくとも一方を埋めるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の非接触型情報記録媒体。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記ICモジュールの前記アンテナシートへの取着は、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分が前記アンテナシートに溶接されることで、あるいは、前記リードフレームが前記アンテナシートにかしめられることによってなされ、前記封止層は、前記溶接あるいは前記かしめによって前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分と前記アンテナシートとの間に発生した隙間空間を埋めるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の非接触型情報記録媒体である。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記封止層は、フィルムで形成されていることを特徴とする請求項1記載の非接触型情報記録媒体である。
【0016】
また、請求項7に記載の発明は、前記フィルムは、フッ素系テープ、シリコーン系テープ、アクリル系テープ、ABS系テープ、PET系テープの何れかで構成されていることを特徴とする請求項7記載の非接触型情報記録媒体である。
【0017】
また、請求項8に記載の発明は、前記ICインレットを平面視した状態で、前記封止層は、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分よりも一回り大きな輪郭を有する領域を覆うように延在しており、前前記領域の輪郭と前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分との間隔が0.5mm以上5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の非接触型情報記録媒体である。
【0018】
また、請求項9に記載の発明は、前記請求項1乃至8に何れか1項記載の非接触情報記録媒体を備えることを特徴とする非接触IC冊子である。
【0019】
また、請求項10に記載の発明は、前記請求項1乃至8に何れか1項記載の非接触情報記録媒体を備えることを特徴とする非接触ICカードである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ICモジュールから露出するリードフレームの部分が合成樹脂からなる封止層で覆われているので、塩水などの電解質がリードフレームに接触することを防止できるため、耐塩水性能の強化を図る上で有利となり、非接触型情報記録媒体、非接触IC冊子及び非接触ICカードの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る非接触IC冊子の模式断面図である。
【図2】コーキング材、保護フィルム材、無し(比較品)の塩水噴霧サイクル試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態に記された条件はあくまでも一実施例であり、本発明は局所的にモジュール部近傍の隙間を防ぐことで耐塩水性能を大幅に伸ばすことが出来ることを特徴としたものであり、以下に記された条件等により本発明が制約を受けるものではない。
【0023】
図1は、本発明に係る非接触IC冊子の一例を示す模式断面図である。
非接触IC冊子は、非接触型情報記録媒体2を備えている。なお、本実施の形態では、非接触型情報記録媒体2を備える非接触IC冊子について説明するが、本発明は非接触型情報記録媒体2を備える非接触ICカードにも無論適用可能である。
【0024】
非接触型情報記録媒体2は、ICインレット4と、外装基材6とを含んで構成されている。
ICインレット4は、アンテナシート8と、ICモジュール9と、リードフレーム12とを備えている。
アンテナシート8は、PET等の絶縁樹脂シート基材10と、絶縁樹脂シート基材10に導電性金属で形成されたアンテナ11とで構成されている。
ICモジュール9は、アンテナシート8に取着され、不図示のICチップと、該ICチップを覆うモールド樹脂13とで構成されている。
ICモジュール9は、アンテナシート8の厚さ方向の一方の面(上面)から突出し他方の面(下面)に露出して配置されている。
リードフレーム12は、ICモジュール9に設けられ、ICモジュール9(モールド樹脂13)に埋め込まれる部分と、ICモジュール9(モールド樹脂13)から露出しアンテナシート8の他方の面に位置する部分とを有している。
リードフレーム12は、ICモジュール9から露出する部分が前記のアンテナ11に電気的に接続される。
ICモジュール9のアンテナシート8への取着は、ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分がアンテナシート8に溶接されることで、あるいは、リードフレーム12がアンテナシート8にかしめられることによってなされる。
【0025】
外装基材6は、ICインレット4の両面を被覆するものである。
本実施の形態では、外装基材6は、保護PET14と、2つの多孔質膜樹脂15(15A,15B)と、カバー材16とで構成されている。
保護PET14は、アンテナシート8から突出するICモジュール9の部分と、該部分の周囲のアンテナシート8の部分を覆うように貼りつけられている。
2つの多孔質膜樹脂15のうち、一方の多孔質膜樹脂15Aは、アンテナシート8から突出するICモジュール9の部分を除くアンテナシート8の部分に接着剤21により貼り付けられている。
他方の多孔質膜樹脂15Bは、ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分を除くアンテナシート8の部分に接着剤21により貼り付けられている。
言い換えると、耐塩水層を構成する接着剤21がICインレット4と多孔質膜樹脂15(15A,15B)間に塗布される。つまりICインレット4は外装基材6である多孔質膜樹脂15に挟み込まれるようにして形成されている。
カバー材16は、他方の多孔質膜樹脂15のアンテナシート8と反対側の面(ICインレット4のリードフレーム12側)に接着剤22により貼り付けられている。カバー材16としては合成紙(例えばテズリン(ピーピージーインダストリー社の商品名))などの従来公知のさまざまな材料が使用可能である。
本実施の形態では、カバー材16が非接触IC冊子の冊子紙面を構成している。
【0026】
このように構成された非接触型情報記録媒体2においてICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分が接する箇所に隙間空間30が生じると、この隙間空間30に塩水等の電解質が最も溜まりやすく、最も劣化原因になりやすいことが発明者らの鋭意研究によりわかった。
そして、このような隙間空間30に耐塩水性部材を充填することで塩水等の電解質の浸入を防ぐことが出来れば、非接触IC冊子及びカードの耐塩水性能を大幅に伸ばすことが可能なことが発明者らの鋭意研究によりわかった。
そこで、本発明では、ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分が合成樹脂からなる封止層32で覆われている。
隙間空間30として以下のものが例示される。
ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分と外装基材6との間に形成される隙間空間。より詳細には、リードフレーム12の部分と他方の多孔質膜樹脂15との間に形成される隙間空間。
ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分のダイパットとブリッジとの間に形成される隙間空間。
溶接あるいはかしめによってICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分とアンテナシート8との間に発生した隙間空間。
したがって、封止層32は、これら隙間空間を埋めるように構成すればよい。
【0027】
また、隙間空間30を封止層32で埋める場合、封止層32の厚さが1μm以上、1mm以下であることが耐塩水性を確保する上で有利となる。
封止層32の厚さが上記範囲を下回ると、封止層32のムラが発生する点で不利となる。
また、封止層32の厚さが上記範囲を上回ると、製品全体の厚さが増大し、また、材料コストがかかる点で不利となる。
【0028】
また、隙間空間30を封止層32で埋める場合、封止層32を構成する合成樹脂としては、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂、PET樹脂、フッ素系樹脂など従来公知の様々な合成樹脂が使用可能である。
【0029】
また、隙間空間30を封止層32で埋める代わりに、ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分が、封止層32を構成するフィルムで覆われていてもよい。
この場合、上記フィルムとして、フッ素系テープ、シリコーン系テープ、アクリル系テープ、ABS系テープ、PET系テープなどなど従来公知の様々なテープが使用可能である。
【0030】
また、ICインレット4を平面視した状態で、封止層32は、ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分よりも一回り大きな輪郭を有する領域を覆うように延在しており、前記の領域の輪郭とICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分との間隔が0.5mm以上5mm以下であることが耐塩水性を確保する上で好ましい。
上記の間隔が上記範囲を下回ると、封止層32のムラが発生する点で不利となる。
また、上記の間隔が上記範囲を上回ると、製品全体の厚さが増大し、また、材料コストがかかる点で不利となる。
【0031】
以上説明したように本実施の形態によれば、ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分を合成樹脂からなる封止層32で覆ったので、塩水などの電解質がリードフレーム12に接触することを防止できるため、耐塩水性能の強化を図る上で有利となり、非接触型情報記録媒体、非接触IC冊子及び非接触ICカードの長寿命化を図ることができる。
また、ICモジュール9近傍の隙間空間30を封止層32で埋めることにより、ICモジュール9及びリードフレーム12と塩水等の電解質の接触を防ぐ為の電解質遮断層を設けることができる。そのため、最も塩水が入り込む余地のある部位を保護することで製品全体の耐塩水性能を向上させることができ、ひいては信頼性が高く長寿命の非接触IC冊子及び非接触カードを製造することが可能となる。
また、耐塩水性能を上げる為にICモジュール9近傍裏側のリードフレーム12とカバー材16の隙間空間30を重点的に封止層32で塞ぐ。さらに封止層32が、カバー材16とリードフレーム12やアンテナとを含む冊子全面ではなく、冊子の一部のみを塞ぐことで大幅な耐塩水性能向上の効果を得られることから使用材料も少なく低コストで耐塩水性能を向上することが可能となる。
【0032】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
【0033】
(実施例1)
評価サンプルとして非接触IC冊子を4枚準備し、サンプルAとした。サンプルAは隙間空間30に封止層32としてシリコーン製からなるコーキング材を塗布した。塗布範囲はICモジュール9の裏側(カバー材16側)のリードフレーム12全体を覆うことが可能な10mm×10mmとし、塗布膜厚は乾燥後で100μmとした。
【0034】
評価は塩水噴霧サイクル試験機(スガ試験機株式会社製CYP90A)を用い、塩水濃度を5%とした。16時間の塩水噴霧及び8時間の35℃湿度35%乾燥を繰り返し行い、乾燥工程が終了後に非接触ICカードリーダライタ(株式会社デンソーウエーブ製 PR−450UDM)による通信試験を実施した。
【0035】
このサイクル試験を37サイクル実施した結果、サイクル試験中の腐食による膨れは一切確認されず、通信不良についても4枚中4枚発生しなかった。
【0036】
さらにICモジュール9近傍における断面観察を実施したところコーキング材はリードフレーム12とカバー材16との間における隙間空間(ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分と外装基材6との間に形成される隙間空間)、リードフレーム12のICモジュール13裏側のダイパットとブリッジ間における隙間空間(ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分のダイパットとブリッジとの間に形成される隙間空間)、リードフレーム12とアンテナ11及びフィルムのレーザー溶接又はかしめ時に空いた隙間空間(ICモジュール9から露出するリードフレーム12の部分とアンテナシート8との間に発生した隙間空間)について全てにおいて隙間無く埋まっていた。また、ICモジュール9近傍のリードフレーム12とアンテナ11の接合部近傍及び金属アンテナ11の状態を観察したところ腐食はまったく確認されなかった。
【0037】
(比較例1)
評価サンプルとして非接触IC冊子を4枚準備し、サンプルBとした。サンプルBは隙間空間30にPET樹脂を乗せた。範囲はモジュール部裏側(カバー側)にリードフレーム12全体を覆うことが可能な10mm×10mmとし、膜厚は100umとした。
【0038】
評価は塩水噴霧サイクル試験機(スガ試験機株式会社製CYP90A)を用い、塩水濃度を5%とした。16時間の塩水噴霧及び8時間の35℃湿度35%乾燥を繰り返し行い、乾燥工程が終了後に非接触ICカードリーダライタによる通信試験(株式会社デンソーウエーブ製 PR−450UDM)を実施した。
【0039】
このサイクル試験を37サイクル実施した結果、サイクル試験中の腐食による膨れは7、7、7、8サイクル目で発生し、通信不良はそれぞれ12、12、13、13サイクルで発生した。その結果、13サイクル目が終了した時点で4枚中4枚がNGとなった。
【0040】
さらにICモジュール9近傍における断面観察を実施したところ粘着性の無いPET樹脂とリードフレーム12裏面には大きな隙間が存在した。また、ICモジュール9近傍のリードフレーム12とアンテナ11の接合部近傍及び金属アンテナ11の状態を観察したところ腐食が確認された。
【0041】
(比較例2)
評価サンプルとして非接触IC冊子を4枚準備し、サンプルCとした。サンプルCは図30の隙間の部分に特別な処理は施さなかった。
【0042】
評価は塩水噴霧サイクル試験機(スガ試験機株式会社製CYP90A)を用い、塩水濃度を5%とした。16時間の塩水噴霧及び8時間の35℃湿度35%乾燥を繰り返し行い、乾燥工程が終了後に非接触ICカードリーダライタによる通信試験(株式会社デンソーウエーブ製 PR−450UDM)を実施した。
【0043】
このサイクル試験を37サイクル実施した結果、サイクル試験中の腐食による膨れは7、7、7、8サイクル目で発生し、通信不良はそれぞれ12、12、30、33サイクルで発生した。その結果、33サイクル目が終了した時点で4枚中4枚がNGとなった。
【0044】
さらにICモジュール9近傍における断面観察を実施したところ隙間が存在した。また、ICモジュール9近傍のリードフレーム12とアンテナ11の接合部近傍及び金属アンテナ11の状態を観察したところ腐食が確認された。
【0045】
実施例1と比較例1、2を比較した結果を図2に示す。実施例1で行ったコーキング材をモジュール裏側のリードフレーム12に塗布したサンプルについて通信NGは全く発生しない上コーキング材を塗布していない部位であるアンテナ11部の腐食も発生しなかった。
【0046】
耐塩水性能を上げる為に全面に耐塩水性部材を塗布してもよいが、低コスト化の為、製品の一部にコーキング材を塗布することで全体の耐塩水性能を向上させることを見出した。ここで見出した材料はシリコン系コーキング材であるが、更なる低コスト化の為にはカバー材16と多孔質膜樹脂15間に従来使用される接着剤を特徴的にICモジュール9裏リードフレーム12の部分に塗布してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
耐塩水性能を上げる為、ICモジュール9裏側のリードフレーム12の部分に封止層32としてコーキング材を塗布することで耐塩水性能が向上することを見出し、さらに全面に塗布するのではなく、一部分のみ塗布することで低コスト化にもなった。この為、より耐塩水性能が高いIC冊子をより低コストで製造することが可能となり、ひいてはより信頼性の高い非接触IC冊子及びカードを製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0048】
10…シート基材
11…アンテナ
12…リードフレーム
13…ICモジュール
14…保護PET樹脂
15…多孔質膜樹脂
16…カバー材
21…耐塩水層を有する接着剤
22…接着剤
30…隙間空間
32…封止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナが形成されたアンテナシートと、前記アンテナシートに取着されたICモジュールと、前記ICモジュールに設けられ前記アンテナに接続されるリードフレームとを備えるICインレットと、
前記ICインレットの両面を被覆する外装基材とを含む非接触型情報記録媒体であって、
前記ICモジュールは、前記アンテナシートの厚さ方向の一方の面から突出し他方の面に露出して配置され、
前記リードフレームは前記ICモジュールに埋め込まれる部分と、前記ICモジュールから露出し前記アンテナシートの他方の面に位置する部分とを有し、
前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分が合成樹脂からなる封止層で覆われている、
ことを特徴とする非接触型情報記録媒体。
【請求項2】
前記封止層の厚さが1μm以上、1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の非接触型情報記録媒体。
【請求項3】
前記合成樹脂がシリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂、PET樹脂、フッ素系樹脂の何れかであることを特徴とする請求項1または2記載の非接触型情報記録媒体。
【請求項4】
前記封止層は、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分と前記外装基材との間に形成される隙間空間、および、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分のダイパットとブリッジとの間に形成される隙間空間の少なくとも一方を埋めるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の非接触型情報記録媒体。
【請求項5】
前記ICモジュールの前記アンテナシートへの取着は、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分が前記アンテナシートに溶接されることで、あるいは、前記リードフレームが前記アンテナシートにかしめられることによってなされ、
前記封止層は、前記溶接あるいは前記かしめによって前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分と前記アンテナシートとの間に発生した隙間空間を埋めるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4に何れか1項記載の非接触型情報記録媒体。
【請求項6】
前記封止層は、フィルムで形成されていることを特徴とする請求項1記載の非接触型情報記録媒体。
【請求項7】
前記フィルムは、フッ素系テープ、シリコーン系テープ、アクリル系テープ、ABS系テープ、PET系テープの何れかで構成されていることを特徴とする請求項7記載の非接触型情報記録媒体。
【請求項8】
前記ICインレットを平面視した状態で、前記封止層は、前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分よりも一回り大きな輪郭を有する領域を覆うように延在しており、
前記領域の輪郭と前記ICモジュールから露出する前記リードフレームの部分との間隔が0.5mm以上5mm以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至7に何れか1項記載の非接触型情報記録媒体。
【請求項9】
前記請求項1乃至8に何れか1項記載の非接触情報記録媒体を備えることを特徴とする非接触IC冊子。
【請求項10】
前記請求項1乃至8に何れか1項記載の非接触情報記録媒体を備えることを特徴とする非接触ICカード。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−198825(P2012−198825A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63437(P2011−63437)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】