説明

非接触型ID識別装置

【課題】特に小型であることが要求される場合に適する超小型の非接触型ID識別装置を提供すること。
【解決手段】アンテナコイル1を、絶縁被覆銅線を巻回して複数層に積層した円筒状コイルに構成し、このアンテナコイル1をICチップ2の接続端子21、21を配した活性面22上に配置し、その両端のリード部11、11をそれぞれその接続端子21、21に接続して構成する。アンテナコイル1は、その軸心を活性面に直交する状態で、その活性面上に配置する。またアンテナコイル1は、平面から見た場合のその投影像の全ての部位が活性面22内に位置するようにそのサイズを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多くのサービス産業、物品販売業、製造業、物流業又は金融業等の種々の分野で、物品や、種々の検体、或いは人物に関する個体又は個人の自動認識の手段として用いられ、ICタグ又はICカード等と称される小型の非接触型ID識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の非接触型ID識別装置は、ICチップとアンテナコイルとを主要構成要素とするもので、前記種々の分野で、各種商品、物品類、動物、種々の検体又は人物等の識別に用いられている。いずれにしてもできるだけ小型であることが好ましいが、特に小型の物品や種々の検体に付設して使用する場合や、動物の体内に埋め込んで使用する場合には、特に小型であることが重要である。
【0003】
特許文献1は、非接触ID識別装置用の巻線型コイルとICチップとの接続構造及びこれを構成する接続方法に関するもので、ICチップの最外層が金で構成された接続端子と銅製の巻線型コイルのリード部とを両者の界面付近に形成したAu/Cu全率固溶体を介して直接に接続したものである。このような特許文献1の技術は、ICチップの接続端子と巻線型コイルのリード部の接続を、以上のような電気的・機械的に良好な直接接続によって確保することとし、中間橋部材(インターポーザ)を不要とするものであるため、非接触型ID識別装置の小型化に極めて有効である。
【0004】
特許文献2は、ICタグ及びその製造方法に関するもので、線材を隣接させて渦巻き平面状に巻回して構成した平面コイルの中心の空隙部分に、該平面コイルの厚さとほぼ同じ厚さの半導体素子を配置し、該半導体素子と該平面コイルとを電気的に接続して構成したICタグである。
【0005】
この特許文献2によれば、平面コイルは、線材を隣接させて渦巻き平面状に構成したものであり、ICチップをその中央の空隙部に配したものであるから、全体としての厚さを最小限度とすることができるが、その外径は、その中央部の空隙部にICチップを配する都合上、それより大径にならざるを得ず、更に、該平面コイルは、用途に応じた共振周波数を得る関係上、その周波数に応じた巻数を必要とし、かなり大径なものにならざるを得ない。
【0006】
特許文献3は、RFIDタグに関するもので、矩形の絶縁基板の少なくとも一方の面に四隅を残して渦巻状のアンテナパターンを形成し、前記アンテナパターンの渦巻内及び前記絶縁基板の四隅の一つに、それぞれ前記アンテナパターンの内側端又は外側端に接続された接続端子を形成してなる単位アンテナ基板を、絶縁層を介して複数層積層し、前記各接続端子を層間接続導体を介して接続して、前記各アンテナパターンを直列接続することで最上層の単位アンテナ基板表面に両端子を有するアンテナコイルを構成するとともに、前記積層された単位アンテナ基板の最上層のアンテナパターンの渦巻き内にICチップを搭載して、前記アンテナコイルの両端を電気的に前記ICチップに接続してなるRFIDタグである。
【0007】
この特許文献3のRFIDタグは、アンテナパターンを形成した複数の絶縁基板を積層して必要なインダクタンスを確保したアンテナコイルを作製するものであり、一つには、絶縁基板を用い、これを積層するものであるため、本来のアンテナコイルの機能である通信機能の観点からは無用の部材が大きな部分を占めるようになり、小型化には限界がある。またアンテナコイルをエッチングで作製するものであるため微細で高密度なコイルの作製には無理があり、銅線で作製するコイルに比して、自ずと大きなサイズの物とならざるを得ない。更にアンテナコイルパターンの中央部にICチップを配するものであるため、特許文献2と同様に、径方向のサイズもかなり大きなものとならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4097281号公報
【特許文献2】特開2001−256456号公報
【特許文献3】特開2007−102348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、例えば、動物の身体の一部に埋め込んでその動物の識別のために使用する場合や、小さな試験管等に入っている種々の検体の識別に使用する場合等のような特に小型であることが要求される場合に適する超小型の非接触型ID識別装置を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1は、ICチップ及びアンテナコイルを備え、該ICチップと外部のリーダ・ライタ装置との間の電力の授受及び情報の交換を該アンテナコイルを介して行う非接触型ID識別装置において、
前記アンテナコイルを、前記ICチップのアンテナコイルとの接続端子を備えた面である活性面上に配置し、かつ該アンテナコイルの両端のリード部をそれぞれ対応する端子部に接続した非接触型ID識別装置である。
【0011】
本発明の2は、本発明の1の非接触型ID識別装置において、前記アンテナコイルを、前記ICチップの活性面と直交する方向から見たその投影像の全ての部位が、該ICチップの活性面内に位置することとなるように、構成し、かつ配置したものである。
【0012】
本発明の3は、本発明の1又は2の非接触型ID識別装置において、前記アンテナコイルを複数層に巻回・積層した筒状コイルに構成し、筒状コイルである該アンテナコイルを、その軸心を、前記ICチップの活性面に直交する向きで、該ICチップの活性面に配したものである。
【0013】
本発明の4は、本発明の1又は2の非接触型ID識別装置において、前記アンテナコイルを複数層に巻回・積層した筒状コイルに構成し、筒状コイルである該アンテナコイルを、その軸心を、前記ICチップの活性面に平行な向きで、該ICチップの活性面に配したものである。
【0014】
本発明の5は、本発明の1、2、3又は4の非接触型ID識別装置において、前記アンテナコイルを、線径が0.02mm〜0.03mmの絶縁被覆銅線を用いて作製したものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の1の非接触型ID識別装置によれば、アンテナコイルを、前記ICチップの前記活性面上に配置したものであるため、装置を、その平面側から見て、該ICチップの活性面を殆ど越えない非常に小型なものとすることができる。またそのように極小サイズでありながら、巻線型のアンテナコイル1を用いているため、十分な通信距離も確保できる。従って、例えば、動物の識別のためにその体内に埋め込んで使用する場合には、当該の動物にその埋め込み時その他の場合に与える苦痛や負担を軽減することができると共に、不都合のない距離での通信を行うことができる。或いは、小型の容器に収納保管された血液その他の検体の識別に使用する場合には、それらの小型の容器中の小さな凹部等に埋め込むことが可能になり、それらの取り扱いの際に障害となることもなく、また不都合のない距離での通信を行い、確実な識別を行うことができる。
【0016】
それ以外の場合でも、小型化し得たことにより、識別対象部材の所望の部位にその取り扱いに障害を生じさせないように付設することが容易になる。
【0017】
本発明の2の非接触型ID識別装置によれば、アンテナコイルを、前記ICチップの活性面と直交する方向から見た投影像の全ての部位が該ICチップの活性面内に位置するように構成し、かつ配置したため、装置を、その平面側から見て、確実に、該ICチップの活性面を越えない非常に小型なものとすることができる。
【0018】
本発明の3又は4の非接触型ID識別装置によれば、アンテナコイルを複数層に巻回・積層した筒状コイルに構成し、該アンテナコイルをその軸心を前記ICチップの活性面に直交させた状態で又は平行にした状態で配するものとしたため、該アンテナコイルを確実にその活性面内に配置することが可能となり、装置を確実に小型化することができる。またアンテナコイルを、前記のように、複数層に巻回・積層した筒状に構成したため、以上のように、該ICチップの活性面上に配置できるサイズであって、必要な共振周波数を得るためのインダクタンスを確保できるものともなる。
【0019】
本発明の5の非接触型ID識別装置によれば、アンテナコイルを前記のような線径の絶縁被覆銅線で構成することとしたため、現在多用されている周波数帯である13.56MHz帯に対応するインダクタンスを確保すべく、複数層に巻回・積層した筒状コイルに構成した場合に、該アンテナコイルを、四辺の各々の長さが1mmを若干下回るようなサイズのICチップの活性面上に、平面から見て軸心が該活性面と直交する又は平行な向きで配した場合に、その面内に確実に納まるサイズに構成することが可能となる。
【0020】
なお、これより高い周波数のUHF帯やマイクロ波帯では、必要なインダクタンスを得るためのコイルの巻数は少なくなるので、この場合より、線径の大きな銅線を使用することも可能になる。
【0021】
本発明の1〜5の非接触型ID識別装置によれば、アンテナコイルをICチップの活性面に配置し、その両端のリード部を該活性面上の接続端子に接続するものとしたため、該アンテナコイルのリード部を含むいずれかの部位が、該ICチップのエッジ部に残存する可能性のある切り出し時に発生したバリに接触する可能性はない。それ故、該バリによってアンテナコイルを構成する絶縁被覆銅線の絶縁被覆に損傷を生じ、ICチップとの間に短絡が生じるような虞を回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の非接触型ID識別装置の正面図。
【図2】実施例1の非接触型ID識別装置の平面図。
【図3】図2のA−A線切断部概略断面図。
【図4】実施例1の非接触型ID識別装置のアンテナコイルのリード部と接続端子との接合時の配置を示す側面図。
【図5】実施例2の非接触型ID識別装置の側面図。
【図6】実施例2の非接触型ID識別装置の正面図。
【図7】実施例2の非接触型ID識別装置のアンテナコイルのリード部と接続端子との接合時の配置を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の非接触型ID識別装置は、基本的に、絶縁被覆銅線を巻回して構成したアンテナコイル1をICチップ2の活性面22上に配置し、その両端のリード部11、11をそれぞれ該接続端子21、21に接続して構成したものである。
【0024】
前記アンテナコイル1は、前記のように、絶縁被覆銅線を用いて作製する。絶縁被覆は特定のそれに限定されない。もっとも、ICチップ2の接続端子21との接続手段との関係、例えば、熱圧着等の手段を採用する場合は、接続のための加熱手段を接触させることで、接続対象部位の被覆を溶融蒸発又は昇華させることが可能な性質の樹脂被覆が適当である。このような樹脂被覆を採用すれば、接続端子との接合時に加熱することで対象部位の被覆を除去できるので、予め被覆を除去しておく必要がないからである。このような絶縁被覆銅線として、例えば、ポリウレタン被覆のそれを採用することができる。
【0025】
また用いる絶縁被覆銅線の線径も特定のそれに限定されないが、作製する非接触型ID識別装置の採用する周波数帯に対応するインダクタンスのアンテナコイル1を十分小型に作製できる径である必要がある。即ち、その線径は、上記のインダクタンスを確保できる巻数で巻回してアンテナコイル1を作製し、前記のように、ICチップ2の活性面22上に配置した場合に、該ICチップ2の活性面22と直交する方向から見た投影像のいずれの部位も該活性面22から不都合なほど出てしまうことがない程度に作製できるものとすべきである。該線径は、いずれの部位も全く該活性面22からはみ出すことがないように設定するのがより好ましい。
【0026】
絶縁被覆銅線の線径は、以下のような場合には、0.02mm〜0.03mmとするのが適当である。これは、アンテナコイル1を、例えば、図1〜図7に示すように、絶縁被覆銅線を複数層に巻回・積層して筒状コイルのそれに構成し、その軸心を前記ICチップ2の活性面22に直交する状態で、又は平行の状態で、該活性面22上に配置することとし、その場合の前記アンテナコイル1の巻数を13.56MHzの周波数帯に対応するインダクタンスを確保すべく設定し、かつ該ICチップ2の四辺の各々の長さを1mmを若干下回るようなサイズにした場合である。
【0027】
以上の線径範囲の上限を上回る線径の絶縁被覆銅線を用いると、該アンテナコイル1のコイル外径が大きくなり過ぎ、前記のように、該アンテナコイル1を、前記サイズのICチップ2の活性面22上に配した場合に、その投影像の周辺部分が該活性面22の辺の外側にはみ出してしまう可能性がある。必要な小型化を果たし得ない可能性が出てくるわけである。また上記線径範囲の下限を下回る線径の絶縁被覆銅線を用いると、抵抗が大きくなり過ぎ、必要な通信距離が確保できない可能性がある。また必要な機械的強度を確保できなくなる虞もある。
【0028】
勿論、採用する周波数帯が高くなれば、必要なアンテナコイル1の巻数が少なくなるので、上記の線径範囲の上限より線径の大きな絶縁被覆銅線を採用することが可能となる。
【0029】
また前記アンテナコイル1は、特定の巻き方に限定されるものではないが、極小の空間内に配置できるサイズのそれで、所要のインダクタンスを確保できるようにするという観点からは、該アンテナコイル1は、前記し、図1〜図7に示すように、前記絶縁被覆銅線を用いて、複数層に巻回・積層した筒状コイルに構成するのが適当である。そしてこのように筒状コイルに作製したアンテナコイル1は、その軸心を、前記ICチップ2の活性面22に直交させた状態で又は平行にした状態で、該ICチップの活性面22に配するのが適当である。
【0030】
前記アンテナコイル1は、以上のように複数層に積層した円筒状コイルに構成するのが適当であるが、その作製方法の概略を以下に述べる。
例えば、該アンテナコイル1の内径に相当する径の円柱状治具を用意し、対応する線径の絶縁被覆銅線を該円柱状治具に密着状態で所定長さだけ巻き回し最下層のコイルを作製する。その後、その巻き回した最下層のコイルの上に、引き続いて、その巻き終わり端から巻初め端まで該絶縁被覆銅線を積層状態に巻き回して第2層のコイルを作製する。その後も引き続いて必要な巻数が得られるまで、直前に巻回した層のコイルの上に同様に該絶縁被覆導線を積層状態に巻回する。こうして、特に図3に示すように、複数層に積層した円筒状コイルを構成し、必要なインダクタンスを確保する。
【0031】
なお、作製したアンテナコイル1の形状を保持しておく必要があるが、その形状の保持は、例えば、前記絶縁被覆銅線として、加熱することで融着する性質を有する被覆を備えた自己融着性のそれを採用し、アンテナコイル1の作製時に、その巻回操作を、例えば、熱風等により加熱しながら行い、絶縁被覆銅線の相互に密着することとなる部位相互を接合させることにより、行うことができる。勿論、これ以外の手段も自由に採用できる。
【0032】
前記ICチップ2は、前記アンテナコイル1を介して外部のリーダ・ライタ装置との間で電力の授受及び情報の交換を行うための基本的要素であり、これ自体はよく知られた公知の要素である。通常、平面から見て正方形又は長方形である。その各辺の長さは、1mm以下であることが多い。その活性面22には、前記アンテナコイル1の両端のリード部11、11のそれぞれを接続するための接続端子21、21が構成してある。該接続端子21、21は、図2に示すように、活性面22の一辺の両端付近に配してある場合と、一辺の一端付近と該活性面22の中心を対称の中心とする点対称となる位置とに配してある場合がある。
【0033】
該ICチップ2は、通常、各辺のエッジにチップに切り出される際に生じる微小なバリや半導体チップ特有の鋭利な切断端部が存在している。
【0034】
前記し、図1及び図2に示すように、又は図5及び図6に示すように、以上のICチップ2の活性面22上に、前記アンテナコイル1を配置し、その両端のリード部11、11を該活性面22上の接続端子21、21に接続する。この接続は、特定の手段に限定されない。例えば、該アンテナコイル1の両端のリード部11、11を、それぞれ接続端子21、21上に載せた上で、はんだ付け、導電性接着剤を用いた接合、超音波を用いた接合、レーザー溶接、ワイヤーボンディングを用いた接合を行うことが可能である。特に装置の小型化の観点からは直接接続を採用するのが適当である。例えば、傍熱型抵抗溶接または熱圧着等が適当である。
【0035】
なお、アンテナコイル1の両端のリード部11、11の接続端子21、21への接合を、傍熱型抵抗溶接等のような接合ツール3を用いて行う場合は、該接合ツール3は、これを該接合端子21、21上のリード部11、11に接触させて加熱加圧するためのスペースを必要とする。そのため、該接合ツール3による加熱加圧作業中は、そのスペースを作るために、アンテナコイル1を、ICチップ2の活性面22上の所定の状態から側方に90度倒した状態又は側方に90度起立させた状態にして、図4又は図7に示すように、所定の位置から待避させ、接合作業が完了した後に、90度起こし、又は90度倒して、図1及び図2又は図5及び図6に示すように、該活性面22上の本来の位置に戻すこととするのが適当である。なお、接合ツール3による加熱加圧作業のためのスペースを非接触型ID識別装置の構成中に確保できる余裕がある場合は、以上のような手順を必要としないのは云うまでもない。
【0036】
本発明の非接触型ID識別装置は、以上のようにして構成するものであり、平面から見て、殆どICチップ2のサイズを越えない極小サイズのそれを構成し得る。高さも平面方向のサイズとほぼ同様である。従って、従来の非接触型ID識別装置を遙かに下回る極小サイズのそれとなし得るものである。またそのように極小サイズでありながら、巻線型のアンテナコイル1を用いているため、十分な通信距離も確保できる。
【0037】
そのため、この非接触型ID識別装置によれば、特に小型であることが要求される前記した種々の場合に有効に使用することができる。
【0038】
前記のように、アンテナコイル1を、前記ICチップ2の活性面22と直交する方向から見た投影像の全ての部位が該ICチップ2の活性面22内に配置されるように構成した場合には、装置を、その平面側から見て、確実に、該ICチップ2の活性面22を越えない非常に小型なものとすることができる。また、該アンテナコイル1のリード部11、11を含むいずれかの部位も、該ICチップ2のエッジ部に残存する可能性のあるバリに接触する可能性がない。それ故、該バリによってアンテナコイル1を構成する導体の絶縁被膜に損傷を生じ、ICチップ2との間で短絡が生じるような虞を回避することもできる。
【0039】
また、前記のように、アンテナコイル1を、前記のように、複数層に巻回・積層した筒状コイルに構成し、その軸心を前記ICチップ2の活性面22に直交させた状態又は平行状態に配した場合は、該アンテナコイル1を確実にその活性面2内に配置でき、装置を確実に小型化することができる。また、そのようなアンテナコイル1の該ICチップの活性面22上に配置できるサイズで、必要な共振周波数を得るためのインダクタンスを確保できる。
【実施例1】
【0040】
この実施例1の非接触型ID識別装置は、図1〜図3に示すように、アンテナコイル1を絶縁被覆銅線を巻回して複数層に積層した円筒状コイルに構成し、このアンテナコイル1をICチップ2の接続端子21、21を配した活性面22上にその軸心を該活性面22に直交する向きで配置し、その両端のリード部11、11をそれぞれ該接続端子21、21に接続して構成したものである。
【0041】
前記アンテナコイル1は、その内径に相当する径の円柱状治具に、絶縁被覆銅線を密着状態で所定長さ巻き回して最下層のコイルを作製し、引き続いて、その最下層のコイルの上に、該絶縁被覆銅線を、その巻き終わり端から巻初め端まで積層状態に巻き付けて第2層のコイルを作製し、更に引き続いてこの巻回積層を必要な巻数が得られるまで繰り返して円筒状積層コイルに構成した。なお、このアンテナコイル1の作製は、巻回する絶縁被覆銅線に熱風を吹き付けながら行い、密着する絶縁被覆銅線の相互を自己融着させ、作製した円筒状積層コイルの形状を保持させるようにした。
【0042】
アンテナコイル1のリード部11、11は、それぞれICチップ2の接続端子21、21上に載せ、その上から傍熱型抵抗溶接機を用いて加熱加圧し、両者を塑性流動させかつ相互間に金・銅全率固溶体を形成させて直接接合固定した。なお、このアンテナコイル1のリード部11、11と接続端子21、21の接合は、図4に示すように、該アンテナコイル1をICチップ2の活性面22上に配置する状態からほぼ90度側方に倒した状態で行い、該アンテナコイル1の接合ツール3に対する干渉を回避し、接合完了後に該アンテナコイル1を、図1〜図3に示すように、活性面22上に起立させた。
【0043】
なお、アンテナコイル1に用いた絶縁被覆銅線、アンテナコイル1及びICチップ2の構成は以下の通りである。
アンテナコイル1用の絶縁被覆銅線 : ポリウレタン絶縁被覆(自己融着型)
線径 : 0.025mm
アンテナコイル1 巻数 : 137ターン
外径 : 0.95mm
厚さ : 0.5mm
ICチップ2の寸法 縦 : 1.00mm
横 : 0.95mm
厚さ(高さ) : 0.15mm
ICチップ2の接続端子21の最外層 : 金層(厚さ:18μm)
【0044】
作製した実施例1の非接触型ID識別装置のサイズは以下の通りである。
縦 : 1.00mm
横 : 0.95mm
厚さ(高さ) : 0.65mm
【0045】
作製した実施例1の非接触型ID識別装置のアンテナコイル1のインダクタンス及び抵抗並びに同調回路の共振周波数を測定すると、以下の通りであった。
インダクタンス : 2.2μH
抵抗 : 10.6Ω
共振周波数 : 14.26MHz
【0046】
作製した実施例1の非接触型ID識別装置は、前記のように、十分小型なものとなったため、これを目的に適合する何らかの態様で封止した上で又は封止しないで対象物に付設してその識別のために使用することができる。非常に小型であるため、それぞれの対象物の取り扱い上において、これに支障を生じさせるような虞はない。
【0047】
作製した実施例1の非接触型ID識別装置の通信距離を測定した。この測定は対応するタカヤ株式会社(岡山県井原市井原町661−1)製アンプTR3−D002A(100mW)アンテナA401のリーダ・ライタ装置を使用して通信実験を行い、その通信可能な距離を測定することで行った。この測定は50個の実施例1の非接触型ID識別装置について行ったが、その通信距離は3〜5mmであった。
【0048】
以上のように、この実施例1の非接触型ID識別装置は、そのサイズを縦:1.00mm、横:0.95mm、厚さ(高さ):0.65mmと、十分に小型化を図り得たものでありながら、同時に3〜5mmの通信距離を確保できたものである。また実用的に必要な共振周波数も確保できている。従って、現在、要求される動物の体内への埋め込みや小型容器等への付設埋め込み等にも対応できる。その他の小型の非接触型ID識別装置を必要とする種々の場合に適用できる。
【実施例2】
【0049】
この実施例2の非接触型ID識別装置は、図5及び図6に示すように、アンテナコイル1を絶縁被覆銅線を巻回して複数層に積層した円筒状コイルに構成し、このアンテナコイル1をICチップ2の接続端子21、21を配した活性面22上に、その軸心を該ICチップの活性面22と平行に向けて配置し、その両端のリード部11、11をそれぞれ該接続端子21、21に接続して構成したものである。
【0050】
前記アンテナコイル1は、実施例1と全く同様にして円筒状積層コイルに構成した。熱風を吹き付けて絶縁被覆銅線の相互の密着する部位を自己融着させ、作製した円筒状積層コイルの形状を保持させるようにしたのも同様である。
【0051】
アンテナコイル1のリード部11、11は、実施例1と同様に、それぞれICチップ2の接続端子21、21上に載せ、その上から傍熱型抵抗溶接機を用いて加熱加圧し、両者を塑性流動させかつ相互間に金・銅全率固溶体を形成させて直接接合固定した。なお、このアンテナコイル1のリード部11、11と接続端子21、21の接合は、図7に示すように、該アンテナコイル1をICチップ2の活性面22上に配置するコイル軸心の平行状態からほぼ90度側方に起立させた状態で行い、該アンテナコイル1の接合ツール3に対する干渉を回避し、接合の完了した後に該アンテナコイル1を、図5及び図6に示すように、活性面22上に、該活性面22と軸心が平行になるように倒した。
【0052】
なおまた、接続端子21、21上に載せたアンテナコイル1のリード部11、11と該接続端子21、21との接合を、レーザービーム等の光ビーム溶接法を用いて行うものとすれば、接合ツール3による接合のためのスペースを必要としないので、アンテナコイル1をICチップ2の活性面22上に初めからその軸心を該活性面22に平行な状態で配置することも可能である。
【0053】
以上のアンテナコイル1に用いた絶縁被覆銅線、アンテナコイル1及びICチップ2の構成は以下の通りである。
アンテナコイル1用の絶縁被覆銅線 : ポリウレタン絶縁被覆(自己融着型)
線径 : 0.025mm
アンテナコイル1 巻数 : 140ターン
外径 : 0.95mm
厚さ : 0.6mm
ICチップ2の寸法 縦 : 1.00mm
横 : 0.95mm
厚さ(高さ) : 0.15mm
ICチップ2の接続端子21の最外層 : 金層(厚さ:18μm)
【0054】
作製した実施例2の非接触型ID識別装置のサイズは以下の通りである。
縦 : 1.00mm
横 : 0.95mm
厚さ(高さ) : 1.10mm
【0055】
作製した実施例2の非接触型ID識別装置のアンテナコイル1のインダクタンス及び抵抗並びに同調回路の共振周波数を測定すると、以下の通りであった。
インダクタンス : 2.2μH
抵抗 : 10.6Ω
共振周波数 : 14.10MHz
【0056】
作製した実施例2の非接触型ID識別装置は、前記のように、十分小型なものとなったため、実施例1のそれと同様に、これを目的に適合する何らかの態様で封止した上で又は封止しないで対象物に付設してその識別のために使用することができる。非常に小型であるため、それぞれの対象物の取り扱い上において、これに支障を生じさせるような虞はない。
【0057】
作製した実施例2の非接触型ID識別装置の通信距離を測定した。この測定は対応するタカヤ株式会社(岡山県井原市井原町661−1)製アンプTR3−LD003C−S(1W)アンテナA401のリーダ・ライタ装置を使用して通信実験を行い、その通信可能な距離を測定することで行った。この測定は30個の実施例2の非接触型ID識別装置について行ったが、その通信距離は7〜10mmであった。
【0058】
以上のように、この実施例2の非接触型ID識別装置は、そのサイズを縦:1.00mm、横:0.95mm、厚さ(高さ):1.10mmと、十分に小型化を図り得たものでありながら、同時に7〜10mmの通信距離を確保できたものである。また実用的に必要な共振周波数も確保できている。従って、実施例1と同様に、現在、要求される動物の体内への埋め込みや小型容器等への付設埋め込み等にも対応できる。その他の小型の非接触型ID識別装置を必要とする種々の場合に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、多くのサービス産業、物品販売業、製造業、物流業又は金融業等の種々の分野で、物品や人物に関する個体の自動認識の手段として用いられる非接触型ICタグ又は非接触型ICカード等の非接触型ID識別装置の製造の分野などで有効に使用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 アンテナコイル
11 リード部
2 ICチップ
21 接続端子
22 活性面
3 接合ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップ及びアンテナコイルを備え、該ICチップと外部のリーダ・ライタ装置との間の電力の授受及び情報の交換を該アンテナコイルを介して行う非接触型ID識別装置において、
前記アンテナコイルを、前記ICチップのアンテナコイルとの接続端子を備えた面である活性面上に配置し、かつ該アンテナコイルの両端のリード部をそれぞれ対応する端子部に接続した非接触型ID識別装置。
【請求項2】
前記アンテナコイルを、前記ICチップの活性面と直交する方向から見たその投影像の全ての部位が、該ICチップの活性面内に位置することとなるように、構成し、かつ配置した請求項1の非接触型ID識別装置。
【請求項3】
前記アンテナコイルを複数層に巻回・積層した筒状コイルに構成し、筒状コイルである該アンテナコイルを、その軸心を、前記ICチップの活性面に直交する向きで、該ICチップの活性面に配した請求項1又は2の非接触型ID識別装置。
【請求項4】
前記アンテナコイルを複数層に巻回・積層した筒状コイルに構成し、筒状コイルである該アンテナコイルを、その軸心を、前記ICチップの活性面に平行な向きで、該ICチップの活性面に配した請求項1又は2の非接触型ID識別装置。
【請求項5】
前記アンテナコイルを、線径が0.02mm〜0.03mmの絶縁被覆銅線を用いて作製した請求項1、2、3又は4の非接触型ID識別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−221771(P2011−221771A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89877(P2010−89877)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(594133858)スターエンジニアリング株式会社 (20)
【Fターム(参考)】