説明

非接触式膜厚計

【課題】塗膜の膜厚やその乾燥/湿潤状態に関わらず、塗膜の厚さを簡便にかつ高精度に計測する。
【解決手段】非接触式膜厚計10において、本体11の底面13に渦流変位計のための中空管状のプローブ12を取り付ける。プローブ12の先端にコイル14を設ける。底面13において、中空管状のプローブ12の内側にレーザ変位計のレーザ照射部15とレーザ受光部16とを設ける。コイル14により交流磁界を生成し、金属板Sに渦電流を誘導する。誘導された渦電流によるコイル14のインダクタンス変化を検出し、プローブ12と金属板Sまでの距離L2を算出する。一方、レーザ照射部15からレーザ光線を照射し、塗膜Fの表面で反射されたレーザ光線をレーザ受光部16において検出する。三角測距の原理に基づいて、レーザ変位計と塗膜表面との間の距離L1を算出する。距離L1、L2に基づいて塗膜Fの厚さδを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体表面に形成された塗膜の膜厚を計測するための膜厚計に関し、特に被計測物に接触することなくその膜厚を計測できる非接触式膜厚計に関する。
【背景技術】
【0002】
膜厚計には、塗膜に接触させて膜厚を計測する接触式のもと、接触させずに計測可能な非接触式のものがある。接触式の膜厚計としては、超音波式(特許文献1)、渦流式、磁気式、ベータ線式、静電容量式等が知られており、非接触式の膜厚計としては、蛍光X線式(特許文献2)、光干渉法、分光法などが知られている。
【0003】
蛍光X線式、光干渉法、分光法など従来の非接触式膜厚計は、薄膜にしか使用することができず、厚膜の場合には接触式の膜厚計を使用する必要がある。接触式の膜厚計を用いる場合であっても、塗膜が乾燥状態であれば、計測精度が高い磁気式や渦流式を用いて膜厚を計測できるが、湿潤状態の塗膜の計測にこれらの膜厚計を使用することはできない。湿潤塗膜の計測には、一般に塗膜中に目盛付ゲージを差し込む方法が採用されているが、ゲージを差し込む方法は、目視で目盛を読む必要があり煩雑である上、その計測精度も低い。
【特許文献1】特開平09−152326号公報
【特許文献2】特開2002−107134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、塗膜の膜厚やその乾燥/湿潤状態に関わらず、塗膜の厚さを簡便にかつ高精度で計測できる非接触式の膜厚計を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の非接触式膜厚計は、導電体表面に形成される塗膜の膜厚を計測する非接触式の膜厚計であって、管状プローブを備え導電体までの距離を計測する渦流変位計と、塗膜表面に測距光を照射しその反射光を検知することにより塗膜表面までの距離を計測する光学変位計とを備え、光学変位計が管状プローブの内側を通して測距光の照射と反射光の受光を行なうことを特徴としている。
【0006】
光学変位計は測距光を照射する測距光照射部と反射光を受光検知する測距光受光部とを備え、測距光照射部と測距光受光部とが管状のプローブの内側に配置されることが好ましい。また、測距光はレーザ光線であり、光学変位計はレーザ変位計であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、塗膜の膜厚やその乾燥/湿潤状態に関わらず、塗膜の厚さを簡便にかつ高精度で計測できる非接触式の膜厚計を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明が適用された非接触型膜厚計の一実施形態を示す模式的な側面図である。また、図2は、図1の膜厚計の底面図である。
【0009】
膜厚計10は、渦流変位計およびレーザ変位計を備える。渦流変位計は金属等の導電性の被験体表面に、コイルを用いて交流磁界を加えることにより被験体に渦電流を誘起させ、渦電流によるコイルのインダクタンス変化を検知することにより導電性を有する被験体までの距離を計測するものである。すなわち、膜厚計本体11の底面には、渦流変位計のプローブ12が設けられる。
【0010】
プローブ12は、例えば中空の円筒形状をなし、その一端は膜厚計本体11の底面13に取り付けられる。また、開放された他端(先端部)には、コイル14が設けられる。なお、図1において、プローブ12の部分は断面図として描かれている。
【0011】
従来の渦流変位計では、プローブのコイル中心にコアが設けられているが、本実施形態の渦流変位計のコイルはコアを備えず中空の円筒形とされる。本実施形態の渦流変位計は、被験体から略20〜30mm離れた位置で使用され、円筒形のプローブ12の外径φ1は略24〜26mmであり、内径φ2は16〜18mmである。なお、コイル14は、例えば1次コイル、2次コイル等を含んでいてもよい。
【0012】
レーザ変位計は、例えば従来周知の三角測距を用いた距離計測装置であり、レーザ照射部15からレーザ光線を照射し、被験体表面に形成された塗膜の表面で反射されたレーザ光線をレーザ受光部16において受光し、従来周知の方法で塗膜表面までの距離を計測する。また、レーザ照射部15およびレーザ受光部16は、膜厚計本体11の底面において、プローブ12の内側に設けられる。
【0013】
なお、渦流変位計およびレーザ変位計に必要な各回路は、膜厚計本体11内に設けられる。
【0014】
図3に、本実施形態の膜厚計10の使用状態を模式的に示す。レーザ照射部15から照射されたレーザ光線は、円筒形のプローブ12の内側を通って、略プローブ12の中心軸が交叉する位置の塗膜Fの表面に達する。その後、レーザ光線は塗膜Fの表面で反射され、レーザ受光部16において受光検知される。すなわち、膜厚計本体11の底面からプローブ12の略中心に対応する位置の塗膜表面までの距離L1が計測される。
【0015】
一方、渦流変位計のコイル14には電流が流され、従来周知のように交流磁界が生成される。これにより、被験体である金属板(導電体)Sには渦電流が誘起され、誘起された渦電流によるコイル14のインダクタンス変化が渦流変位計によって検知される。これにより渦流変位計では、従来周知の方法を用いてプローブ12の先端から金属板Sまでの距離L2が計測される。
【0016】
レーザ変位計の位置(本実施形態では膜厚計底面)から渦流変位計のプローブ12先端までの距離Dは周知なので、塗膜Fのプローブ12先端での膜厚δは、δ=(L2+D)−L1によって求められる。
【0017】
以上のように、本実施形態では、渦流変位計のプローブが中空とされているため、プローブ内をレーザ変位計の測距用レーザ光線を通すことができ、渦流変位計が計測する被験体基板(導電板)の位置と、レーザ変位計が計測する塗膜表面の位置を略一致させることができる。これにより、被験体に接触することなく、各位置での膜厚を塗膜の乾燥/湿潤に関わらず正確に計測することが可能となる。
【0018】
なお、本実施形態では、プローブとして円筒形状を用いたが、中空の柱体形状(管状)であれば如何なる形状であってもよい。また、本実施形態のプローブはコアを備えていないが、例えば中空のコア材をプローブ内側に設けることも可能である。
【0019】
本実施形態では、三角測距を用いたレーザ変位計を例に説明を行なったが、計測方法は三角測距に限定されるものではなく、また照射される測距光もレーザ光線に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態である膜厚計の模式的側面図である。
【図2】図1の膜厚計の底面図である。
【図3】図1の膜厚計の使用状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0021】
10 膜厚計
12 プローブ
14 コイル
15 レーザ照射部
16 レーザ受光部
F 塗膜
S 被験体(導電体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体表面に形成される塗膜の膜厚を計測する非接触式の膜厚計であって、
管状プローブを備え、前記導電体までの距離を計測する渦流変位計と、
前記塗膜表面に測距光を照射し、その反射光を検知することにより前記塗膜表面までの距離を計測する光学変位計とを備え、
前記光学変位計が前記管状プローブの内側を通して前記測距光の照射と反射光の受光を行なうことを特徴とする非接触式膜厚計。
【請求項2】
前記光学変位計が前記測距光を照射する測距光照射部と前記反射光を受光検知する測距光受光部とを備え、前記測距光照射部と前記測距光受光部とが前記管状のプローブの内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の非接触式膜厚計。
【請求項3】
前記測距光がレーザ光線であり、前記光学変位計がレーザ変位計であることを特徴とする請求項1に記載の非接触式膜厚計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−113980(P2007−113980A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303874(P2005−303874)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(595098240)株式会社ジャパンテクノメイト (6)
【Fターム(参考)】