説明

非接触給電設備、非接触受電装置および非接触給電システム

【課題】制御システムを簡素化可能な非接触給電設備、非接触受電装置および非接触給電システムを提供する。
【解決手段】給電設備1の一次自己共振コイル30と受電装置2の二次自己共振コイル60とが電磁場を介して共鳴することにより給電設備1から受電装置2へ非接触で給電が行なわれる。制御装置40は、高周波電源装置10を制御することによって一次自己共振コイル30から二次自己共振コイル60への給電を制御する。ここで、制御装置40は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60と間の距離に応じて変化するS11パラメータに基づいて一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60と間の距離を推定し、その推定された距離に基づいて給電制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触給電設備、非接触受電装置および非接触給電システムに関し、特に、給電設備と給電設備から受電する受電装置との各々に設けられる共鳴器を電磁場を介して共鳴させることにより受電装置へ非接触で給電を行なう非接触給電設備、非接触受電装置および非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境に配慮した車両として、電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車両が大きく注目されている。これらの車両は、走行駆動力を発生する電動機と、その電動機に供給される電力を蓄える再充電可能な蓄電装置とを搭載する。なお、ハイブリッド自動車は、電動機とともに内燃機関をさらに動力源として搭載した自動車や、車両駆動用の直流電源として蓄電装置とともに燃料電池をさらに搭載した自動車である。
【0003】
ハイブリッド自動車においても、電気自動車と同様に、車両外部の電源から車載の蓄電装置を充電可能な車両が知られている。たとえば、家屋に設けられた電源コンセントと車両に設けられた充電口とを充電ケーブルで接続することにより、一般家庭の電源から蓄電装置を充電可能ないわゆる「プラグイン・ハイブリッド自動車」が知られている。
【0004】
一方、送電方法として、電源コードや送電ケーブルを用いないワイヤレス送電が近年注目されている。このワイヤレス送電技術としては、有力なものとして、電磁誘導を用いた送電、マイクロ波を用いた送電、および共鳴法による送電の3つの技術が知られている。
【0005】
このうち、共鳴法は、一対の共鳴器(たとえば一対の自己共振コイル)を電磁場(近接場)において共鳴させ、電磁場を介して送電する非接触の送電技術であり、数kWの大電力を比較的長距離(たとえば数m)送電することも可能である(たとえば、特許文献1や非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2007/008646号パンフレット
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アンドレ・クルス(Andre Kurs)、他5名、“ワイヤレス パワー トランスファー バイア ストロングリィ カップルド マグネティック レゾナンス(Wireless Power Transfer via Strongly Coupled Magnetic Resonances)”、[online]、2007年7月6日、サイエンス(SCIENCE)、第317巻、p.83−86、[平成2007年8月17日検索]、インターネット<URL:http://www.sciencemag.org/cgi/reprint/317/5834/83.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
共鳴法を用いた非接触給電を電動車両などの実システムに適用する場合には、制御システムの簡素化が課題である。たとえば、給電設備と受電装置(たとえば給電設備から給電を受ける車両)との間で通信を行なうことなく給電設備において受電装置の存在または受電装置との距離を判断できれば、給電設備と受電装置との間の通信制御を不要にできる。しかしながら、上記文献では、そのような課題については特に検討されていない。
【0009】
それゆえに、この発明の目的は、制御システムを簡素化可能な非接触給電設備、非接触受電装置および非接触給電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明によれば、非接触給電設備は、送電用共鳴器と、電源装置と、制御装置とを備える。送電用共鳴器は、受電装置の受電用共鳴器と電磁場を介して共鳴することにより受電装置へ非接触で送電する。電源装置は、送電用共鳴器に接続され、所定の高周波電圧を発生する。制御装置は、電源装置を制御することによって送電用共鳴器から受電用共鳴器への給電を制御する。ここで、制御装置は、送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離に応じて変化する、送電用共鳴器の入力部から受電用共鳴器を見たインピーダンスの周波数特性に基づいて、給電制御を実行する。なお、インピーダンスは、次式によってS11パラメータに変換できるので、以下では、インピーダンスの代わりにS11パラメータによって給電制御を実行するとして記述する。
【0011】
S11=(Z1−Z0)/(Z1+Z0) …(1)
ここで、Z1は、送電用共鳴器の入力部から受電用共鳴器側を見たインピーダンスを示し、Z0は、入力部から電源装置側を見たインピーダンスを示す。また、Z1は、送電用共鳴器に入力される電圧V1と送電用共鳴器に入力される電流I1を用いて、次式によって表される。
【0012】
Z1=V1/I1 …(2)
好ましくは、制御装置は、S11パラメータに基づいて送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離を推定し、その推定された距離に基づいて給電制御を実行する。
【0013】
好ましくは、制御装置は、S11パラメータに基づいて推定された距離が所定値以下のとき、受電装置への給電を実行する。
【0014】
好ましくは、制御装置は、送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離に応じて変化するS11パラメータの振幅特性に基づいて、送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離を推定する。
【0015】
また、好ましくは、制御装置は、送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離に応じて変化するS11パラメータの位相特性に基づいて、送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離を推定する。
【0016】
好ましくは、制御装置は、S11パラメータに基づいて受電装置の受電要否および受電装置への給電可否を判定し、受電装置へ給電可能と判定されたとき、S11パラメータの特異点に基づいて決定される共振周波数を有する電圧を発生するように電源装置を制御する。
【0017】
好ましくは、非接触給電設備は、電流測定手段と、電圧測定手段とをさらに備える。電流測定手段は、送電用共鳴器に入力される電流を検出する。電圧測定手段は、送電用共鳴器に入力される電圧を検出する。そして、制御装置は、所定の周波数帯における複数の周波数で所定の小電力が受電装置へ出力されるように電源装置を制御し、電圧測定手段によって検出される電圧および電流測定手段によって検出される電流に基づいてS11パラメータを算出する。
【0018】
好ましくは、送電用共鳴器は、一次コイルと、一次自己共振コイルとを含む。一次コイルは、電源装置に接続される。一次自己共振コイルは、一次コイルから電磁誘導により給電され、電磁場を発生する。
【0019】
また、この発明によれば、非接触受電装置は、受電用共鳴器と、インピーダンス変更装置とを備える。受電用共鳴器は、給電設備の送電用共鳴器と電磁場を介して共鳴することにより給電設備から非接触で受電する。インピーダンス変更装置は、給電設備からの受電要否を給電設備においてインピーダンスの周波数特性に基づいて判定可能なように、給電設備からの受電要否に応じてインピーダンスを変更する。
【0020】
好ましくは、インピーダンス変更装置は、給電設備からの受電を終了するとき、給電設備においてS11パラメータに基づいて受電終了を検知可能なように入力インピーダンスを変更する。
【0021】
また、この発明によれば、非接触給電システムは、所定の高周波電力を出力可能な給電設備と、給電設備から非接触で受電可能な受電装置とを備える。給電設備は、電源装置と、送電用共鳴器と、制御装置とを含む。電源装置は、所定の高周波電圧を発生する。送電用共鳴器は、電源装置に接続され、電源装置から電力を受けて電磁場を発生する。制御装置は、電源装置を制御することによって送電用共鳴器から受電用共鳴器への給電を制御する。受電装置は、受電用共鳴器を含む。受電用共鳴器は、電磁場を介して送電用共鳴器と共鳴することにより送電用共鳴器から非接触で受電する。制御装置は、送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離に応じて変化するS11パラメータに基づいて給電制御を実行する。
【0022】
好ましくは、制御装置は、S11パラメータに基づいて送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離を推定し、その推定された距離に基づいて給電制御を実行する。
【0023】
好ましくは、制御装置は、S11パラメータに基づいて推定された距離が所定値以下のとき、受電装置への給電を実行する。
【0024】
好ましくは、受電装置は、インピーダンス変更装置をさらに含む。インピーダンス変更装置は、給電設備からの受電を終了するとき、当該受電装置のインピーダンスを変更可能に構成される。制御装置は、受電装置においてインピーダンス変更装置によりインピーダンスが変更されたときの予め求められたS11パラメータ特性を用いて、受電終了に伴なう受電装置のインピーダンスの変更をS11パラメータに基づいて検知し、その検知結果に基づいて受電装置への給電を停止する。
【0025】
好ましくは、送電用共鳴器は、一次コイルと、一次自己共振コイルとを含む。一次コイルは、電源装置に接続される。一次自己共振コイルは、一次コイルから電磁誘導により給電され、電磁場を発生する。受電用共鳴器は、二次自己共振コイルと、二次コイルとを含む。二次自己共振コイルは、電磁場を介して一次自己共振コイルと共鳴することにより一次自己共振コイルから受電する。二次コイルは、二次自己共振コイルによって受電された電力を電磁誘導により取出す。
【発明の効果】
【0026】
この発明においては、送電用共鳴器と受電用共鳴器との間の距離に応じて変化するS11パラメータに基づいて給電制御が実行されるので、給電設備と受電装置との間で通信を行なうことなく給電設備において受電装置の存在または受電装置との距離を判断することができる。したがって、この発明によれば、給電設備と受電装置との間の通信制御を不要にできる。その結果、制御システムを簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の実施の形態による非接触給電システムの全体構成図である。
【図2】共鳴法による送電に関する部分の等価回路図である。
【図3】図2に示す回路網のS11パラメータの振幅特性を示した図である。
【図4】一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの間の距離を変化させた場合の極小点の周波数差と、一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの間の距離との対応関係を示した図である。
【図5】極小点が1つになる距離よりも一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの間の距離が長いときのS11パラメータの振幅の大きさと、一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの間の距離との対応関係を示した図である。
【図6】図2に示す回路網のS11パラメータの位相特性を示した図である。
【図7】S11パラメータ算出時に走査した周波数範囲における位相特性の最小値から最大値までの変化幅と、一次自己共振コイルと二次自己共振コイルとの間の距離との対応関係を示した図である。
【図8】図1に示すインピーダンス変更部において二次コイルと負荷との間の線路が開放されたときのS11パラメータの位相特性を示した図である。
【図9】図1に示す制御装置により実行される給電制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】制御装置により実行されるS11パラメータ演算処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図1に示す受電装置を搭載した電動車両の一例として示されるハイブリッド自動車の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0029】
図1は、この発明の実施の形態による非接触給電システムの全体構成図である。図1を参照して、非接触給電システムは、給電設備1と、受電装置2とを備える。給電設備1は、高周波電源装置10と、一次コイル20と、一次自己共振コイル30と、制御装置40と、電流測定手段50と、電圧測定手段55とを含む。
【0030】
高周波電源装置10は、一次コイル20に接続され、制御装置40から受ける駆動信号に基づいて所定の高周波電圧(たとえば数MHz〜10数MHz程度)を発生することができる。高周波電源装置10は、たとえば正弦波インバータ回路から成り、制御装置40によって制御される。
【0031】
一次コイル20は、一次自己共振コイル30と概ね同軸上に配設され、電磁誘導により一次自己共振コイル30と磁気的に結合可能に構成される。そして、一次コイル20は、高周波電源装置10から供給される高周波電力を電磁誘導により一次自己共振コイル30へ給電する。
【0032】
一次自己共振コイル30は、両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、受電装置2の二次自己共振コイル60(後述)と電磁場を介して共鳴することにより受電装置2へ非接触で電力を送電する。なお、C1は、一次自己共振コイル30の浮遊容量を示すが、コンデンサを実際に設けてもよい。
【0033】
電流測定手段50は、一次コイル20に入力される電流Iを検出し、その検出値を制御装置40へ出力する。電圧測定手段55は、一次コイル20に入力される電圧Vを検出し、その検出値を制御装置40へ出力する。電流測定手段50は、たとえば電流センサから成り、電圧測定手段55は、たとえば電圧センサから成る。
【0034】
制御装置40は、高周波電源装置10を制御するための駆動信号を生成し、その生成した駆動信号を高周波電源装置10へ出力する。そして、制御装置40は、高周波電源装置10を制御することによって一次自己共振コイル30から受電装置2の二次自己共振コイル60への給電を制御する。
【0035】
ここで、制御装置40は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離に応じて変化する、界面100から一次コイル20側を見たS11パラメータ(以下「前記S11パラメータ」と称する。)に基づいて一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定し、その推定された距離に基づいて給電制御を実行する。より詳しくは、制御装置40は、前記S11パラメータに基づいて推定された距離が所定値以下のとき、給電設備1から受電装置2への給電制御を実行し、前記S11パラメータに基づいて推定された距離が上記所定値よりも大きいときは給電制御を実行しない。
【0036】
なお、前記S11パラメータは、一次コイル20、一次自己共振コイル30、ならびに受電装置2の二次自己共振コイル60および二次コイル70から成る回路網の入力ポート(一次コイル20の入力)における反射係数であり、給電設備1から受電装置2への給電開始前や、給電中においても所定の頻度で定期的に算出される。なお、上記回路網におけるS11パラメータの特性については、後ほど詳しく説明する。
【0037】
また、後述のように、受電装置2において受電終了に伴ない受電装置2のインピーダンスが変更されるところ、制御装置40は、受電装置2におけるインピーダンスの変更をS11パラメータに基づいて検知し、その検知結果に基づいて給電設備1から受電装置2への給電を停止する。なお、制御装置40の機能構成についても、後ほど詳しく説明する。
【0038】
一方、受電装置2は、二次自己共振コイル60と、二次コイル70と、インピーダンス変更部80とを含む。
【0039】
二次自己共振コイル60も、上述した一次自己共振コイル30と同様に両端がオープン(非接続)のLC共振コイルであり、給電設備1の一次自己共振コイル30と電磁場を介して共鳴することにより給電設備1から非接触で電力を受電する。なお、C2は、二次自己共振コイル60の浮遊容量を示すが、コンデンサを実際に設けてもよい。
【0040】
二次コイル70は、二次自己共振コイル60と概ね同軸上に配設され、電磁誘導により二次自己共振コイル60と磁気的に結合可能に構成される。そして、二次コイル70は、二次自己共振コイル60により受電された電力を電磁誘導により取出し、その取出された電力をインピーダンス変更部80を介して負荷3へ出力する。
【0041】
インピーダンス変更部80は、二次コイル70と負荷3との間に設けられ、負荷3のインピーダンスが変化する場合にインピーダンス変更部80の入力インピーダンスを一定に調整する。一例として、インピーダンス変更部80は、入力インピーダンスを調整可能なコンバータから成る。
【0042】
また、インピーダンス変更部80は、給電設備1からの受電終了を指示する信号STPに基づいて入力インピーダンスを所定値に変更する。すなわち、給電設備1からの受電終了が指示されると、インピーダンス変更部80によって受電装置2のインピーダンスが所定値に変更される。そして、この受電終了に伴なう受電装置2のインピーダンスの変更は、給電設備1の制御装置40によりS11パラメータに基づいて検知される。
【0043】
なお、負荷3のインピーダンスが変化しない場合には、電路を遮断可能なスイッチや、可変インピーダンス装置などによってインピーダンス変更部80を構成してもよい。
【0044】
図2は、共鳴法による送電に関する部分の等価回路図である。図2を参照して、この共鳴法では、2つの音叉が共鳴するのと同様に、同じ固有振動数を有する2つのLC共振コイルが電磁場(近接場)において共鳴することによって、一方のコイルから他方のコイルへ電磁場を介して電力が伝送される。
【0045】
具体的には、一次コイル20に高周波電源装置10を接続し、電磁誘導により一次コイル20と磁気的に結合される一次自己共振コイル30へたとえば数MHz〜10数MHz程度の高周波電力を給電する。一次自己共振コイル30は、コイル自身のインダクタンスと浮遊容量C1とによるLC共振器であり、一次自己共振コイル30と同じ共振周波数を有する二次自己共振コイル60と電磁場(近接場)を介して共鳴する。そうすると、一次自己共振コイル30から二次自己共振コイル60へ電磁場を介してエネルギー(電力)が移動する。二次自己共振コイル60へ移動したエネルギー(電力)は、電磁誘導により二次自己共振コイル60と磁気的に結合される二次コイル70によって取出され、負荷3へ供給される。
【0046】
なお、上記のS11パラメータは、ポートP1,P2間に形成される、一次コイル20、一次自己共振コイル30、二次自己共振コイル60および二次コイル70から成る回路網について、ポートP1への入力電力(高周波電源装置10から出力される電力)に対する反射電力の比率、すなわちポートP1の反射係数に対応する。
【0047】
図3は、図2に示した回路網のS11パラメータの振幅特性を示した図である。図3を参照して、縦軸はS11パラメータの振幅を示し、横軸は高周波電源装置10から回路網に供給される高周波電力の周波数を示す。曲線k11は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD1のときのS11パラメータの振幅特性を示し、曲線k12は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD2(>D1)のときのS11パラメータの振幅特性を示す。また、曲線k13は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD3(>D2)のときのS11パラメータの振幅特性を示し、曲線k14は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD4(>D3)のときのS11パラメータの振幅特性を示す。
【0048】
なお、曲線k11,k12,k13は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離(D1,D2,D3)が近いために給電設備1から受電装置2へ十分な給電が可能な場合を示し、曲線k14は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離(D4)が離れすぎているために給電設備1から受電装置2へ十分な給電が行なえない場合を示す。
【0049】
図3に示されるように、共鳴法による送電を実現する図2に示した回路網のS11パラメータの振幅特性は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が近づくと2つの極小点(特異点)が発生し、距離が近づくにつれて極小点の周波数(f11,f12)が離れる。また、距離が遠ざかるにつれて極小点の周波数(f11,f12)が近づき、ある一定の距離Dbで2つの極小点が1つになる。さらに、極小点が1つになる距離Dbから遠ざかるにつれて、S11パラメータの振幅は大きくなるという特徴を有する。そこで、この実施の形態においては、給電設備1から受電装置2への給電開始にあたり、図4に示される、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を変化させた場合の極小点の周波数差と、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離との対応関係を予め求めておく。そして、図4に示した対応関係に基づいて、極小点が1つになる距離Dbよりも一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が短い場合においては、図2に示した回路網のS11パラメータを算出し、その算出されたS11パラメータの振幅に表われる極小点の周波数差から一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定することが可能である。あるいは、図5に示される、極小点が1つになる距離Dbよりも一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が長いときのS11パラメータの振幅の大きさと、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離との対応関係を予め求めておく。そして、図5に示した対応関係に基づいて、極小点が1つになる距離Dbよりも一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が長い場合においては、図2に示した回路網のS11パラメータを算出し、その算出されたS11パラメータの振幅の大きさから一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定することが可能である。そして、推定された距離が所定値以下のとき、給電設備1から受電装置2への給電を開始することとしたものである。
【0050】
なお、S11パラメータの振幅特性に代えて、S11パラメータの位相特性に基づいて一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定してもよい。
【0051】
図6は、図2に示した回路網のS11パラメータの位相特性を示した図である。図6を参照して、縦軸はS11パラメータの位相を示し、横軸は高周波電源装置10から回路網に供給される高周波電力の周波数を示す。曲線k21は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD1のときのS11パラメータの位相特性を示し、曲線k22は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD2(>D1)のときのS11パラメータの位相特性を示す。また、曲線k23は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD3(>D2)のときのS11パラメータの位相特性を示し、曲線k24は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD4(>D3)のときのS11パラメータの位相特性を示す。
【0052】
なお、曲線k21,k22,k23は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離(D1,D2,D3)が近いために給電設備1から受電装置2へ十分な給電が可能な場合を示し、曲線k24は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離(D4)が離れすぎているために給電設備1から受電装置2へ十分な給電が行なえない場合を示す。
【0053】
図6に示されるように、共鳴法による送電を実現する図2に示した回路網のS11パラメータの位相特性は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が近づくと2つの極小点および極大点が発生し、距離が近づくにつれて、所定の周波数範囲にある極小点と極大点との間で位相特性の変化の傾きが最大になる点(特異点)の周波数(f21,f22)が離れる。また、距離が遠ざかるにつれて、所定の周波数範囲にある極小点と極大点との間で位相特性の変化の傾きが最大になる点(特異点)の周波数(f21,f22)が近づき、ある一定の距離Dbで2つの極小点および極大点が1つになる。さらに、極小点および極大点が1つになる距離Dbから遠ざかると、ある一定の距離Dcで極小点および極大点はなくなり、位相特性は単調関数になるという特徴を有する。一方、S11パラメータ算出時に走査した周波数範囲における位相特性の最小値から最大値までの変化幅Δθは、距離が遠ざかるにつれて大きくなるという特徴を有する。
【0054】
そこで、給電設備1から受電装置2への給電開始にあたり、図4に示した、所定の周波数範囲にある極小点と極大点との間で位相特性の変化の傾きが最大になる点の周波数差と、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離との対応関係を予め求めておく。そして、図4に示した対応関係に基づいて、極小点および極大点が1つになる距離Dbよりも一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が短い場合においては、図2に示した回路網のS11パラメータを算出し、その算出されたS11パラメータの位相に表われる、所定の周波数範囲にある極小点と極大点との間で位相特性の変化の傾きが最大になる点の周波数差から、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定することが可能である。あるいは、図7に示される、S11パラメータ算出時に走査した周波数範囲における位相特性の最小値から最大値までの変化幅Δθと、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離との対応関係を予め求めておく。そして、図7に示した対応関係に基づいて、極小点および極大点が1つになる距離Dbよりも一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が短い場合においては、図2に示した回路網のS11パラメータを算出し、その算出されたS11パラメータの位相に表われる、S11パラメータ算出時に走査した周波数範囲における位相特性の最小値から最大値までの変化幅Δθから、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定することが可能である。
【0055】
図8は、図1に示したインピーダンス変更部80において二次コイル70と負荷3との間の線路が開放されたときのS11パラメータの位相特性を示した図である。図8を参照して、縦軸はS11パラメータの位相を示し、横軸は高周波電源装置10から回路網に供給される高周波電力の周波数を示す。曲線31は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD1のときのS11パラメータの位相特性を示し、曲線32は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD2(>D1)のときのS11パラメータの位相特性を示す。また、曲線33は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離がD3(>D2)のときのS11パラメータの位相特性を示す。図8に示されるように、共鳴法による送電を実現する図2に示した回路網のS11パラメータの位相特性は、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離によらず、単調関数で表されるという特徴を有する。
【0056】
受電装置2(図1)において受電終了に伴ない受電装置2のインピーダンスが所定値に変更されると、S11パラメータの位相特性は、図8のように変化する。そこで、この実施の形態においては、受電装置2の受電終了にあたり、図2に示した回路網のS11パラメータを算出し、その算出されたS11パラメータの位相特性が単調関数であれば、受電装置2におけるインピーダンスの変化すなわち受電終了を給電設備1側で検知することができる。
【0057】
図9は、図1に示した制御装置40により実行される給電制御の処理手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理は、一定時間毎または所定の条件が成立する毎にメインルーチンから呼び出されて実行される。
【0058】
図9を参照して、制御装置40は、後述のS11パラメータ演算処理によって得られる、走査周波数f1〜fm(mは2以上の自然数)のS11パラメータに基づいて、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を計算する(ステップS10)。たとえば、図3や図6で説明したように、S11パラメータの振幅特性または位相特性に基づいて、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が推定される。
【0059】
次いで、制御装置40は、走査周波数f1〜fmのS11パラメータに基づいて、受電装置2(図1)における受電要否を判断する(ステップS20)。たとえば、図8で説明したように、算出されたS11パラメータの位相特性と図8に示す位相特性との比較結果に基づいて、受電装置2における受電要否が判断される。
【0060】
そして、制御装置40は、給電設備1から受電装置2へ大電力(給電電力)を出力可能か否かを判定する(ステップS30)。詳しくは、ステップS10において推定された一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が所定値以下であり、かつ、ステップS20において受電装置2において受電が要求されていると判断されたとき、制御装置40は、給電設備1から受電装置2へ大電力を出力可能と判定する。なお、上記所定値は、給電設備1から受電装置2への給電を実施可能な値に設定される。
【0061】
ステップS30において給電設備1から受電装置2へ大電力を出力可能と判定されると(ステップS30においてYES)、制御装置40は、算出されたS11パラメータに基づいて共振周波数f0を決定する(ステップS40)。この共振周波数f0は、S11パラメータの振幅特性に表われる極小点あるいは位相特性に表われる、所定の周波数範囲にある極小点と極大点との間で位相特性の変化の傾きが最大になる点における周波数である。
【0062】
そして、制御装置40は、その決定された共振周波数f0を有する大電力(給電電力)が給電設備1から受電装置2へ出力されるように、高周波電源装置10を制御するための駆動信号を生成して高周波電源装置10へ出力する(ステップS50)。
【0063】
なお、ステップS30において給電設備1から受電装置2へ大電力を出力可能でないと判定されると(ステップS30においてNO)、大電力の出力が停止される(ステップS60)。なお、給電設備1から受電装置2へ大電力が出力されていない場合には、大電力の出力が禁止される。
【0064】
図10は、制御装置40により実行されるS11パラメータ演算処理の手順を示すフローチャートである。S11パラメータは、所定の周波数帯を所定間隔で走査することによって得られる。具体的には、たとえば図6や図8に示される周波数範囲が所定の周波数帯として設定され、その周波数帯において所定間隔で順次変化するm個の走査周波数ごとにS11パラメータが算出される。なお、図10に示されるフローチャートの処理は、図9に示した給電制御の処理に一定周期で割り込み、図9に示したフローチャートの処理と比較して十分に短い周期で実行される。
【0065】
図10を参照して、制御装置40は、まずカウント値nに1を設定する(ステップS110)。次いで、制御装置40は、走査周波数fnを有する小電力(本格的な給電時よりも小さい電力)が給電設備1から受電装置2へ出力されるように、高周波電源装置10を制御するための駆動信号を生成して高周波電源装置10へ出力する(ステップS120)。
【0066】
次いで、制御装置40は、一次コイル20に入力される電流Iの検出値を電流測定手段50から取得し、一次コイル20に入力される電圧Vの検出値を電圧測定手段55から取得し、併せて位相差を取得する(ステップS130)。そして、制御装置40は、それらの取得した情報に基づいて、走査周波数fnのS11パラメータを次式によって算出する(ステップS140)。
【0067】
S11=((V/I)−Z0)/((V/I)+Z0) …(3)
ここで、Z0は、一次コイル20の電力入力部から高周波電源装置10側を見たインピーダンスを示す。そして、走査周波数fnのS11パラメータが算出されると、制御装置40は、カウント値nがmよりも小さいか否かを判定する(ステップS150)。カウント値nがmよりも小さいと判定されると(ステップS150においてYES)、制御装置40は、カウント値nに(n+1)を設定し(ステップS160)、ステップS120へ処理を移行する。一方、ステップS150においてカウント値nがm以上であると判定されると(ステップS150においてNO)、制御装置40は、ステップS170へ処理を移行し、一連の処理が終了する。
【0068】
なお、上記の制御を行なうにあたって、S11パラメータを算出するために、ネットワークアナライザのように方向性結合器を用いた手法でも同様に実現できる。また、Sパラメータの代わりに、ZパラメータやYパラメータなどを用いても同様に実現できる。
【0069】
図11は、図1に示した受電装置2を搭載した電動車両の一例として示されるハイブリッド自動車の構成図である。図11を参照して、ハイブリッド自動車200は、蓄電装置210と、システムメインリレーSMR1と、昇圧コンバータ220と、インバータ230,232と、モータジェネレータ240,242と、エンジン250と、動力分割装置260と、駆動輪270とを含む。また、ハイブリッド自動車200は、二次自己共振コイル60と、二次コイル70と、インピーダンス変更部80と、整流器280と、システムメインリレーSMR2と、車両ECU290とをさらに含む。
【0070】
ハイブリッド自動車200は、エンジン250およびモータジェネレータ242を動力源として搭載する。エンジン250およびモータジェネレータ240,242は、動力分割装置260に連結される。そして、ハイブリッド自動車200は、エンジン250およびモータジェネレータ242の少なくとも一方が発生する駆動力によって走行する。エンジン250が発生する動力は、動力分割装置260によって2経路に分割される。すなわち、一方は駆動輪270へ伝達される経路であり、もう一方はモータジェネレータ240へ伝達される経路である。
【0071】
モータジェネレータ240は、交流回転電機であり、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機から成る。モータジェネレータ240は、動力分割装置260を介してエンジン250の運動エネルギーを用いて発電する。たとえば、蓄電装置210の充電状態(「SOC(State Of Charge)」とも称される。)が予め定められた値よりも低くなると、エンジン250が始動してモータジェネレータ240により発電が行なわれ、蓄電装置210が充電される。
【0072】
モータジェネレータ242も、交流回転電機であり、モータジェネレータ240と同様に、たとえばロータに永久磁石が埋設された三相交流同期電動機から成る。モータジェネレータ242は、蓄電装置210に蓄えられた電力およびモータジェネレータ240により発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。そして、モータジェネレータ242の駆動力は、駆動輪270に伝達される。
【0073】
また、車両の制動時や下り斜面での加速度低減時には、運動エネルギーや位置エネルギーとして車両に蓄えられた力学的エネルギーが駆動輪270を介してモータジェネレータ242の回転駆動に用いられ、モータジェネレータ242が発電機として作動する。これにより、モータジェネレータ242は、走行エネルギーを電力に変換して制動力を発生する回生ブレーキとして作動する。そして、モータジェネレータ242により発電された電力は、蓄電装置210に蓄えられる。
【0074】
動力分割装置260は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から成る。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン250のクランクシャフトに連結される。サンギヤは、モータジェネレータ240の回転軸に連結される。リングギヤはモータジェネレータ242の回転軸および駆動輪270に連結される。
【0075】
システムメインリレーSMR1は、蓄電装置210と昇圧コンバータ220との間に配設され、車両ECU290からの信号に応じて蓄電装置210を昇圧コンバータ220に電気的に接続する。昇圧コンバータ220は、正極線PL2の電圧を蓄電装置210の出力電圧以上の電圧に昇圧する。なお、昇圧コンバータ220は、たとえば直流チョッパ回路から成る。インバータ230,232は、それぞれモータジェネレータ240,242を駆動する。なお、インバータ230,232は、たとえば三相ブリッジ回路から成る。
【0076】
二次自己共振コイル60、二次コイル70およびインピーダンス変更部80は、図1で説明したとおりである。整流器280は、二次コイル70によって取出された交流電力を整流する。システムメインリレーSMR2は、整流器280と蓄電装置210との間に配設され、車両ECU290からの信号に応じて整流器280を蓄電装置210に電気的に接続する。
【0077】
車両ECU290は、走行モード時、システムメインリレーSMR1,SMR2をそれぞれオン,オフにする。そして、車両ECU290は、車両の走行時、アクセル開度や車両速度、その他種々のセンサからの信号に基づいて、昇圧コンバータ220およびモータジェネレータ240,242を駆動するための信号を生成し、その生成した信号を昇圧コンバータ220およびインバータ230,232へ出力する。
【0078】
また、給電設備1(図1)からハイブリッド自動車200への給電が行なわれるとき、車両ECU290は、システムメインリレーSMR2をオンにする。これにより、二次自己共振コイル60によって受電された電力が蓄電装置210へ供給される。そして、蓄電装置210のSOCが上限値を超えると、車両ECU290は、インピーダンス変更部80へインピーダンスの変更指令を出力する。なお、上述のように、インピーダンス変更部80によるインピーダンスの変更は、給電設備1においてS11パラメータに基づいて検知され、給電設備1からハイブリッド自動車200への給電が停止する。
【0079】
なお、システムメインリレーSMR1,SMR2をともにオンさせることによって、車両の走行中に給電設備1から受電することも可能である。
【0080】
なお、インピーダンス変更部80がリレースイッチの場合、システムメインリレーSMR2は無くてもよい。また、整流器280と蓄電装置210との間に、整流器280により整流された直流電力を蓄電装置210の電圧レベルに電圧変換するDC/DCコンバータを設けてもよい。
【0081】
以上のように、この実施の形態においては、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離に応じて変化するS11パラメータに基づいて、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離が推定される。そして、その推定された距離に基づいて給電制御が実行されるので、給電設備1と受電装置2との間で通信を行なうことなく給電設備1において受電装置2の存在または受電装置2との距離を判断することができる。また、この実施の形態においては、受電装置2において受電終了に伴ない受電装置2のインピーダンスが変更される。そして、そのインピーダンスの変更を給電設備1においてS11パラメータに基づいて検知するようにしたので、給電設備1と受電装置2との間で通信を行なうことなく給電設備1において受電装置2の受電終了を検知できる。したがって、この実施の形態によれば、給電設備1と受電装置2との間の通信制御を不要にできる。その結果、制御システムを簡素化することができる。
【0082】
なお、上記の実施の形態においては、S11パラメータに基づいて一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定し、その推定された距離に基づいて給電制御を実行するものとしたが、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定することなく、S11パラメータに基づいて直接給電制御を実行してもよい。たとえば、給電を実施するか否かのS11パラメータのしきい値を、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離に基づいて予め決定しておくことによって、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を推定することなくS11パラメータに基づいて給電制御を実行可能である。
【0083】
また、上記の実施の形態においては、インピーダンス変更部80は、負荷3のインピーダンスが変化する場合にインピーダンス変更部80の入力インピーダンスを一定に調整するものとしたが、この機能は、必ずしも必要なものではない。負荷3のインピーダンスが変化すると、共振周波数が変化してしまい、S11パラメータによって推定した一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離に誤差が生じる。しかしながら、この誤差を許容できる場合には、負荷3のインピーダンス変化に応じて入力インピーダンスを一定に調整する機能は不要であり、インピーダンス変更部80は、給電設備1からの受電終了を指示する信号STPに基づいて入力インピーダンスを所定値に変更する機能のみを備えていればよい。また、負荷3のインピーダンスがそもそも変化しない場合には、受電中に負荷3のインピーダンス変化に応じて入力インピーダンスを一定に調整する機能をインピーダンス変更部80が備えていなくても、一次自己共振コイル30と二次自己共振コイル60との間の距離を精度よく推定することが可能である。
【0084】
また、上記の実施の形態においては、一次コイル20を用いて電磁誘導により一次自己共振コイル30への給電を行ない、二次コイル70を用いて電磁誘導により二次自己共振コイル60から電力を取出すものとしたが、一次コイル20を設けることなく高周波電源装置10から一次自己共振コイル30へ直接給電し、二次コイル70を設けることなく二次自己共振コイル60から電力を直接取出してもよい。
【0085】
また、上記においては、一対の自己共振コイルを共鳴させることによって送電するものとしたが、共鳴体として一対の自己共振コイルに代えて一対の高誘電体ディスクを用いてもよい。高誘電体ディスクは、高誘電率材から成り、たとえばTiO2やBaTi49、LiTaO3等が用いられる。
【0086】
また、上記においては、受電装置2を搭載した電動車両の一例として、動力分割装置260によりエンジン250の動力を分割して駆動輪270とモータジェネレータ240とに伝達可能なシリーズ/パラレル型のハイブリッド自動車について説明したが、この発明は、その他の形式のハイブリッド自動車にも適用可能である。すなわち、たとえば、モータジェネレータ240を駆動するためにのみエンジン250を用い、モータジェネレータ242でのみ車両の駆動力を発生する、いわゆるシリーズ型のハイブリッド自動車や、エンジン250が生成した運動エネルギーのうち回生エネルギーのみが電気エネルギーとして回収されるハイブリッド自動車、エンジンを主動力として必要に応じてモータがアシストするモータアシスト型のハイブリッド自動車などにもこの発明は適用可能である。また、この発明は、エンジン250を備えずに電力のみで走行する電気自動車や、直流電源として蓄電装置210に加えて燃料電池をさらに備える燃料電池車にも適用可能である。
【0087】
なお、上記において、一次自己共振コイル30および一次コイル20は、この発明における「送電用共鳴器」の一実施例を形成し、二次自己共振コイル60および二次コイル70は、この発明における「受電用共鳴器」の一実施例を形成する。また、インピーダンス変更部80は、この発明における「インピーダンス変更装置」の一実施例を形成する。
【0088】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
1 給電設備、2 受電装置、3 負荷、10 高周波電源装置、20 一次コイル、30 一次自己共振コイル、40 制御装置、50 電流測定手段、55 電圧測定手段、60 二次自己共振コイル、70 二次コイル、80 インピーダンス変更部、200 ハイブリッド自動車、210 蓄電装置、220 昇圧コンバータ、230,232 インバータ、240,242 モータジェネレータ、250 エンジン、260 動力分割装置、270 駆動輪、280 整流器、290 車両ECU、C1,C2 浮遊容量、SMR1,SMR2 システムメインリレー、PL1,PL2 正極線、NL 負極線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電装置の受電用共鳴器と電磁場を介して共鳴することにより前記受電装置へ非接触で送電する送電用共鳴器と、
前記送電用共鳴器に接続され、所定の高周波電圧を発生する電源装置と、
前記電源装置を制御することによって前記送電用共鳴器から前記受電用共鳴器への給電を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記送電用共鳴器と前記受電用共鳴器との間の距離に応じて変化するインピーダンスの周波数特性に基づいて給電制御を実行する、非接触給電設備。
【請求項2】
前記制御装置は、前記インピーダンスの周波数特性に基づいて前記送電用共鳴器と前記受電用共鳴器との間の距離を推定し、その推定された距離に基づいて給電制御を実行する、請求項1に記載の非接触給電設備。
【請求項3】
前記制御装置は、前記インピーダンスの周波数特性に基づいて推定された距離が所定値以下のとき、前記受電装置への給電を実行する、請求項2に記載の非接触給電設備。
【請求項4】
前記制御装置は、前記送電用共鳴器と前記受電用共鳴器との間の距離に応じて変化する前記インピーダンスの周波数特性の振幅特性に基づいて、前記送電用共鳴器と前記受電用共鳴器との間の距離を推定する、請求項2または請求項3に記載の非接触給電設備。
【請求項5】
前記制御装置は、前記送電用共鳴器と前記受電用共鳴器との間の距離に応じて変化する前記インピーダンスの周波数特性の位相特性に基づいて、前記送電用共鳴器と前記受電用共鳴器との間の距離を推定する、請求項2または請求項3に記載の非接触給電設備。
【請求項6】
前記制御装置は、前記インピーダンスの周波数特性に基づいて前記受電装置の受電要否および前記受電装置への給電可否を判定し、前記受電装置へ給電可能と判定されたとき、前記インピーダンスの周波数特性の特異点に基づいて決定される共振周波数を有する電圧を発生するように前記電源装置を制御する、請求項1から請求項5のいずれかに記載の非接触給電設備。
【請求項7】
前記送電用共鳴器に入力される電流を検出する電流測定手段と、
前記送電用共鳴器に入力される電圧を検出する電圧測定手段とをさらに備え、
前記制御装置は、所定の周波数帯における複数の周波数で所定の小電力が前記受電装置へ出力されるように前記電源装置を制御し、前記電圧測定手段によって検出される電圧および前記電流測定手段によって検出される電流に基づいて前記インピーダンスの周波数特性を算出する、請求項1から請求項6のいずれかに記載の非接触給電設備。
【請求項8】
前記送電用共鳴器は、
前記電源装置に接続される一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導により給電され、前記電磁場を発生する一次自己共振コイルとを含む、請求項1から請求項7のいずれかに記載の非接触給電設備。
【請求項9】
給電設備の送電用共鳴器と電磁場を介して共鳴することにより前記給電設備から非接触で受電する受電用共鳴器と、
前記給電設備からの受電要否を前記給電設備においてインピーダンスの周波数特性に基づいて判定可能なように、前記給電設備からの受電要否に応じてインピーダンスを変更するインピーダンス変更装置とを備える非接触受電装置。
【請求項10】
前記インピーダンス変更装置は、前記給電設備からの受電を終了するとき、前記給電設備において前記インピーダンスの周波数特性に基づいて受電終了を検知可能なように入力インピーダンスを変更する、請求項9に記載の非接触受電装置。
【請求項11】
所定の高周波電力を出力可能な給電設備と、
前記給電設備から非接触で受電可能な受電装置とを備え、
前記給電設備は、
所定の高周波電圧を発生する電源装置と、
前記電源装置に接続され、前記電源装置から電力を受けて電磁場を発生する送電用共鳴器と、
前記電源装置を制御することによって前記送電用共鳴器から前記受電用共鳴器への給電を制御する制御装置とを含み、
前記受電装置は、前記電磁場を介して前記送電用共鳴器と共鳴することにより前記送電用共鳴器から非接触で受電する受電用共鳴器を含み、
前記制御装置は、前記送電用共鳴器と前記受電用共鳴器との間の距離に応じて変化するインピーダンスの周波数特性に基づいて給電制御を実行する、非接触給電システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記インピーダンスの周波数特性に基づいて前記送電用共鳴器と前記受電用共鳴器との間の距離を推定し、その推定された距離に基づいて給電制御を実行する、請求項11に記載の非接触給電システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記インピーダンスの周波数特性に基づいて推定された距離が所定値以下のとき、前記受電装置への給電を実行する、請求項12に記載の非接触給電システム。
【請求項14】
前記受電装置は、前記給電設備からの受電を終了するとき、当該受電装置のインピーダンスを変更可能に構成されたインピーダンス変更装置をさらに含み、
前記制御装置は、前記受電装置において前記インピーダンス変更装置によりインピーダンスが変更されたときの予め求められたインピーダンスの周波数特性を用いて、受電終了に伴なう前記受電装置のインピーダンスの変更を前記インピーダンスの周波数特性に基づいて検知し、その検知結果に基づいて前記受電装置への給電を停止する、請求項11または請求項13のいずれかに記載の非接触給電システム。
【請求項15】
前記送電用共鳴器は、
前記電源装置に接続される一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導により給電され、前記電磁場を発生する一次自己共振コイルとを含み、
前記受電用共鳴器は、
前記電磁場を介して前記一次自己共振コイルと共鳴することにより前記一次自己共振コイルから受電する二次自己共振コイルと、
前記二次自己共振コイルによって受電された電力を電磁誘導により取出す二次コイルとを含む、請求項11から請求項14のいずれかに記載の非接触給電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−252446(P2010−252446A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96993(P2009−96993)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】