説明

非接触ICカードの製造方法

【課題】使用済みの非接触ICカードを用い、元の非接触ICカードとしての不正利用を防ぐことができ、安価に再利用することができる非接触ICカードを提供することである。
【解決手段】アンテナ及びアンテナに接続されたICチップを有する非接触ICカード材料本体と該非接触ICカード本体の一方の面上に印刷層と可逆性記録層を有する非接触カード材料の印刷層と可逆性記録層を研磨除去し非接触ICカード本体を得る工程得られた非接触ICカード本体に保護フィルムを張り合わせる工程を有し、該印刷層を研磨除去する工程が、印刷層を部分的に除去することを特徴とする非接触ICカードの製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用済みの非接触ICカードを用い、新たな非接触ICカードを製造する非接触ICカードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触ICカードは、交通機関での乗車券や電子マネー分野などで使用されている。これらの非接触ICカードは、途中で仕様が変更されたり、利用者が不用になったりして返却されるものがある。そして、近年これらの不用となったカードはかなりの数になると推定されている。
これらの不用となったカードは、カード事業会社で保管されることが多く、その数は増える一方である。そして、これらのカードは、管理しているサーバー内のデータは削除されているが、ICの通信や演算等の処理機能は正常のままである。
【0003】
一方、従来の電子マネーとは異なるオリジナルのポイントカードを導入してポイントラリーを行ったり、オリジナル電子マネーを発行したりしてサービスの差別化を図りたいという要望が増加してきている。
【0004】
しかし、現状非接触ICカードは高価である。例えば、セキュリティの高いものでは、新規デザインのものを10万枚以上の数量で生産する場合で約500円/枚、1000枚程度の少量生産では1000円/枚となり、価格面で導入を敬遠されることが多い。
【0005】
また、ICカードのリサイクルに関しては、下記特許文献にあるように、カードの情報を書き換えてリサイクルする方法や、カードの表面に貼り替え可能なシールを用いてシールを貼りかえることでカードを使いまわすことは知られている。
しかし、使用済みカードを再利用する場合など、容易に元のカードとして復元できると元のカードとして不正利用される可能性などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−58852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用済みの非接触ICカードを用い、元の非接触ICカードとしての不正使用を防ぐとともに、安価に再利用することができる非接触ICカードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アンテナ及びアンテナに接続されたICチップを有する非接触ICカード材料本体と該非接触ICカード本体の一方の面上に印刷層と可逆性記録層を有する非接触カード材料の印刷層と可逆性記録層を研磨除去し非接触ICカード本体を得る工程、得られた非接触ICカード本体に保護フィルムを張り合わせる工程を有し、該印刷層を研磨除去する工程が、印刷層を部分的に除去することを特徴とする非接触ICカードの製造方法である。
【0009】
また、前記非接触ICカード材料本体の他方の面に印刷層を有し、該印刷層を研磨除去する工程を有し、該印刷層を研磨除去する工程が、印刷層を部分的に除去することを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカードの製造方法である。
【0010】
また、前記印刷層を研磨除去する工程が、非接触ICカード本体が90%以下の範囲内で露出するように印刷層を研磨除去することを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICカードの製造方法である。
【0011】
また、前記保護フィルム上に印刷する工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非接触ICカードの製造方法である。
【0012】
また、前記保護フィルムの一方の面に印刷層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非接触ICカードの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用済みの非接触ICカード材料を用いて、元の非接触ICカードとしての不正使用を防ぐとともに、安価に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の非接触ICカードの製造方法の一例を示す工程説明図である。
【図2】本発明の非接触ICカードの研磨除去工程の前後の状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、非接触ICカード材料本体上に印刷層、可逆性記録層を有する使用済みの非接触ICカード材料の可逆性記録層と印刷層を研磨除去し、その後保護フィルムを貼り合わせることを特徴としている。なお、印刷層の研磨除去は、本体が90%程度以下の範囲内で露出される程度に行う。
非接触ICカード材料本体に設けてある可逆性記録層、印刷層を研磨等で除去すると元の非接触ICカードの痕跡はなくなるため、元の非接触ICカードとしての不正使用は防ぐことができる。しかし、ICカードはカード内にアンテナコイルやICチップを有しており、これらに起因する表面の凹凸により、印刷層を完全に除去するには、相当な時間がかかる。また、ICチップ、アンテナコイルに起因する凹凸だけでなく、元の印刷層の状態によっては研磨除去しにくい部分があり、完全に除去するには研磨回数を増やさなくてはならない。
そこで、印刷層を元の印刷層が認識できなくなる程度に部分的に除去することで、不正利用ができなくすることができ、表面に保護フィルムを貼り合せることで安価に新しい非接触ICカードとして再利用するものである。
【0016】
図1は本発明の非接触ICカードの製造方法の一例を示す工程説明図である。
まず、使用済みの非接触ICカード材料本体1の両面に印刷層2を有し、さらに一方の面上に可逆性記録層3を有する非接触ICカード材料10を用意する(図1(a))。
なお、ここでは裏面にも印刷層を有する構成の例で説明したが裏面の印刷層はなくてもよい。
次に研磨除去工程で、非接触ICカード材料10の可逆性記録層と印刷層、裏面の印刷層を取り除く(図1(b))。
次に、研磨除去し残った印刷層に保護フィルムを貼り合せ、その上に印刷層を形成する。また、研磨除去し残った裏面の印刷層には、新たに印刷層6を設け、新たな非接触ICカードとする(図1(c))。
このようにすることで使用済みの非接触ICカードを新たな非接触ICカードとして再生することができる。
【0017】
ここで非接触ICカードとしては、既存の使用済みの非接触ICカードを用いることができる。
具体的には、一般的な非接触ICカード本体に印刷層を設け、可逆性記録層を設けたものを用いることができる。
一般的な非接触ICカード本体の構成としては、アンテナ基材上にICモジュール、アンテナコイルを有するインレットと、インレットの両側にそれぞれコアシート、オーバーシートからなるものがあげられるがこれに限るものではない。
非接触ICカードのサイズはISO規格で縦寸法が53.92〜54.03mmの範囲内、横寸法が85.47〜85.72mmの範囲内、厚みが0.68〜0.84mmの範囲内とされているがこれらに限るものではない。
【0018】
可逆性記録層としては、ロイコ化合物を用いた感熱記録材料等を含む可逆性記録材料層や必要に応じて保護層を積層したものを用いることができる。
ロイコ化合物を用いる方法としては、高温加熱下では酸の性質を示し、低温加熱下では塩基の性質を示す両性化合物である顕減色剤と、ロイコ化合物をポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂に分散させたものを用いることができる。両性化合物である顕減色剤は、熱の作用によって酸の性質を示したり塩基の性質を示すため、高温加熱下では酸として作用し放出された水素イオンがロイコ化合物のラクトン環を開環させてロイコ化合物を顕色させる一方、低温加熱下では塩基として作用し上記ラクトン環を閉環させてロイコ化合物を減色させることができる。
【0019】
また、可逆性記録材料層としては、加熱・冷却により白濁化・透明化する材料を含む感熱記録材料を用いる方式や磁気材料を用いる方式などが挙げられる。
可逆性記録材料層の厚みは5〜20μm程度である。
【0020】
本発明で非接触ICカード材料本体に設けてなる印刷層は特に制限するものではなく、公知の方法で設けることができる。なお、印刷層の厚みは一般的に5〜10μmの範囲内である。
【0021】
本発明に用いる保護フィルムとしては、特に限定するものではないが、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムを用いることができる。中でも安価で強度の高いポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に用いることができる。
また、無延伸タイプ・一軸延伸タイプ・二軸延伸タイプのいずれかでもかまわない。また、他層との密着性を向上させるため、コロナ放電処理やグロー放電処理等の表面処理や易接着層を設けても良い。
保護フィルムの厚みは特に限定するものではないが、5〜50μm程度のものを用いることができる。
【0022】
また、前記保護フィルムは、熱圧により貼り合せが可能で再過熱より剥離が可能となるものを用いてもよい。このようなものを用いればさらに別の用途で利用する際、保護フィルムを剥離し、新たな保護フィルムを貼り合せることができる。
【0023】
また、前記保護フィルムには、ホログラム加工、セキュリティ印刷、微細加工などのセキュリティ加工を施してもよい。
セキュリティ印刷としては、蛍光インキや赤外光で検出可能なインクによる印刷などがあげられる。
微細加工としてはマイクロ文字加工やレーザー加工などが挙げられる。
【0024】
また、保護フィルムには抗菌剤などの機能材料を練りこんでもよい。また、抗菌剤などを含む機能性コート層を設けてもよい。
抗菌剤としては、無機系、有機系のいずれを用いてもかまわない。無機系としては銀系のものがあげられる。
【0025】
本発明の研磨除去工程は、研磨機を用いて行うことができる。研磨機としてはグラインダー研磨機を用いることができ、溶液で洗浄しながら研磨することができる。
研磨除去する工程では、印刷層が部分的に除去され、元の印刷層が認識できなくなる程度に印刷層を取り除く。
1回の研磨では条件により異なるが0.1〜5μm程度であるが、下層の大部分が露出する程度に研磨除去した際、先に述べたようにICチップやアンテナコイル、印刷状態などに起因する研磨除去しにくい部分がある。
この残った部分を完全に研磨除去するためには、大部分が露出するまでの研磨除去回数に対し倍の回数を要する場合もある。また、大部分が露出した後は、番手をこまめに変えて研磨するなど、回数だけでなく手間もかかる。さらに、カードの厚みが薄くなっているため、ICチップにダメージを与える危険性もある。
そのため、本発明では、不正利用できなくなる程度に印刷層を研磨除去し、保護フィルムを貼り合せることにより、簡便に効率よくカードを再生することができる。
また、印刷層の研磨除去は可逆性記録層と同時に行ってもよいし、別工程で行ってもよい。
【0026】
印刷層の研磨除去は、上述したように元の印刷層が認識できなくなる程度に除去すればよいが、好ましくは非接触ICカード本体が90%以下の範囲内で露出するように印刷層が取り除かれていることがよい。前述したように100%露出するように印刷層を完全に除去するためには研磨回数を多くしなければならないため、90%程度以下であることが好ましい。また、20%程度露出いていれば元の状態とは異なることがはっきりと認識できるため、20%以上露出していることが好ましい。
なお、印刷層は非接触ICカード本体が露出しなくても元の絵柄として認識できなくなるように破壊・除去されていてもよい。
【0027】
裏面に印刷層がある場合、裏面も研磨除去することにより印刷層を取り除いてもよい。
裏面の印刷層は全て研磨除去してもよいが、効率と不正使用防止の点から印刷層が部分的に破壊され、元の印刷層が認識できなくなる程度に取り除いてもよい。好ましくは非接触ICカード本体が90%以下の範囲内で露出するように印刷層が取り除かれていることがよい。
なお、印刷層は非接触ICカード本体が露出しなくても元の絵柄として認識できなくなるように破壊・除去されていてもよい。
【0028】
保護フィルムは一方の面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。
保護フィルムを張り合わせる工程では、接着剤または粘着剤を用いて貼り合わせることができる。
また、保護フィルムがヒートシール性のものであれば加熱圧着することにより貼り合わせることができ、再加熱により剥離することができるものを用いることができる。
また、カードプリンター等を用いて、保護フィルムを転写形成することもできる。
また、カード形状より大きい保護フィルムを貼り合わせたのち、余分な部分を打ち抜きなどにより除去してもよいし、カード形状と同等のサイズの保護フィルムを用い、貼り合わせてもよい。
また、カードより少し小さい保護フィルムを用いてもよい。このようなものとしては保護フィルムを断裁したものを用いることができる。少し小さいサイズであれば、貼り合わせる際に、位置合わせが容易となる。
【0029】
接着剤としては、公知の感圧接着材として使用される、アクリル樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、ゴム系接着剤などが例として挙げられるが、この限りでない。
また接着剤は再剥離しにくいものであることが好ましい。
【0030】
本発明では、研磨除去し残った印刷層上や保護フィルム上に新たな印刷層を設けてもよい。
印刷層はグラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法などの印刷方法により形成することができる。印刷層の厚みは一般的に1〜10μmの範囲内である。
また、可逆性記録材料層側に印刷層を設ける場合、保護フィルムの表面または裏面(非接触ICカード側)のどちらかに設けることで形成してもよい。保護フィルムの裏面に形成すれば、最表面に印刷層が出ないため、印刷層の保護という点では好ましい。
【0031】
また、保護フィルム表面上に抗菌コート層などの機能層を形成してもよい。
【実施例】
【0032】
<実施例1>
使用済みの非接触ICカード材料として、縦寸法が54.00mm、横寸法が85.55mm、総厚みが0.781mmであり、非接触ICカード材料本体の表裏に厚み7μmの印刷層を有し、表側の印刷層上に厚み30μmの可逆性記録層(厚み15μmのロイコ化合物を含む可逆性記録材料層とアクリル樹脂からなる厚み15μmの保護層からなる)を有するカードを用いた。
この非接触ICカード材料の表裏をグラインダー研磨機を用いて研磨し、印刷層と可逆性記録層、裏側の印刷層を取り除いた。
研磨除去の回数は表側7回、裏側2回で、表面は20%程印刷層が残り、裏面も15%程印刷層が残った。
表側にはさらに保護フィルムとして、縦寸法が52mm、横寸法が84mm、厚み25μmの保護フィルム(ピナクル株式会社製CV−64P)を用い、非接触ICカード本体の表側表面にカードプリンター(日本データカード社製)を用いて貼り合せた。
さらにこの保護フィルム上に新たに厚み7μmの印刷層をオフセット印刷法で設けた。
裏面には残った印刷層を隠蔽するために新たにスクリーン印刷法で厚み7μmの印刷層を設けた。
得られた非接触ICカードの概観を目視で検査したところ、元の非接触ICカードとは異なる新しい非接触ICカードとして認識することができた。また、保護フィルムを剥がすと大部分の絵柄層が除去されており、元の非接触ICカードとしての使用は不可能であった。
【0033】
<比較例1>
使用済みの非接触ICカード材料として、縦寸法が54.00mm、横寸法が85.55mm、総厚みが0.781mmであり、非接触ICカード材料本体の表裏に厚み7μmの印刷層を有し、表側の印刷層上に厚み30μmの可逆性記録層(厚み15μmのロイコ化合物を含む可逆性記録材料層とアクリル樹脂からなる厚み15μmの保護層からなる)を有するカードを用いた。
この非接触ICカード材料の表裏をグラインダー研磨機を用いて研磨し、印刷層と可逆性記録層、裏側の印刷層を完全に取り除いた。
研磨除去の回数は表側16回、裏側5回であった。なお、表側では9回目以降番手を細かいものに変え、15回目以降さらに細かいものに変えて行った。裏側でも4回目以番手を細かいものに変えて行った。
【0034】
比較例1では、印刷層を完全に除去できたものの、実施例1に比べ、2倍以上の研磨回数が必要であった。
【符号の説明】
【0035】
1・・・非接触ICカード材料本体
2・・・印刷層
2’・・・研磨除去工程後に残った印刷層
3・・・可逆性記録層
4・・・接着剤層
5・・・非接触ICカード本体
6・・・保護フィルム
6・・・印刷層
10・・非接触ICカード材料
20・・非接触ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ及びアンテナに接続されたICチップを有する非接触ICカード材料本体と該非接触ICカード本体の一方の面上に印刷層と可逆性記録層を有する非接触カード材料の印刷層と可逆性記録層を研磨除去し非接触ICカード本体を得る工程、
得られた非接触ICカード本体に保護フィルムを張り合わせる工程を有し、
該印刷層を研磨除去する工程が、印刷層を部分的に除去することを特徴とする非接触ICカードの製造方法。
【請求項2】
前記非接触ICカード材料本体の他方の面に印刷層を有し、
該印刷層を研磨除去する工程を有し、
該印刷層を研磨除去する工程が、印刷層を部分的に除去することを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカードの製造方法。
【請求項3】
前記印刷層を研磨除去する工程が、非接触ICカード本体が90%以下の範囲内で露出するように印刷層を研磨除去することを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICカードの製造方法。
【請求項4】
前記保護フィルム上に印刷する工程を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非接触ICカードの製造方法。
【請求項5】
前記保護フィルムの一方の面に印刷層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非接触ICカードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−20426(P2011−20426A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169851(P2009−169851)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】