説明

非晶質アトルバスタチンカルシウムのための方法

式IIの化合物から出発して、非晶質アトルバスタチンカルシウムを調製する新規な方法:
【化1】

【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質アトルバスタチンカルシウムの新規な製造方法に関する。特に、本発明は、(6-{2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4-フェニルカルバモイル-ピロリジン-1-イル]-エチル}-2-フェニル-[1,3,2]ジオキサボリナン-4-イル)-酢酸 tert-ブチルエステルから、非晶質アトルバスタチンカルシウムを製造するための新規な方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
アトルバスタチンカルシウムは、例えば[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(l-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル-lH-ピロール-1-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩;(βR,δR)-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(l-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-lH-ピロール-1-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩;[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(1-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-lH-ピロール-1-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩;または(βR,δR)-2-(p-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-イソプロピル-3-フェニル-4-(フェニルカルバモイル)ピロール-l-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩として知られている。
【0003】
[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(l-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-lH-ピロール-1-ヘプタン酸のヘミカルシウム塩、即ち、合成のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤は、何れも動脈硬化および冠心疾患のリスク因子である高脂血症および高コレステロール血症の治療に使用される。[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(l-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル]-lH-ピロール-1-ヘプタン酸の開環したジヒドロキシカルボン酸、ラクトン、および種々の塩の形態が合成されてきた。
【0004】
米国特許第5,273,995号は、[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(l-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル-lH-ピロール-1-ヘプタン酸が、コレステロールの整合性に対する驚くべき阻害を有することを記載している。[R-(R*,R*)]-2-(4-フルオロフェニル)-β,δ-ジヒドロキシ-5-(l-メチルエチル)-3-フェニル-4-[(フェニルアミノ)カルボニル-lH-ピロール-1-ヘプタン酸のカルシウム塩(2:1)は製剤に適しており、従って薬物として推奨されている。
【0005】
米国特許第5,003,080号;同第5,097,045号;同第5,103,024号;同第5,124,482号;同第5,149,837号;同第5,155,251号;同第5,216,174号;同第5,245,047号;同第5,248,793号;同第5,273,995号;同第5,280,126号;同第5,298,627号;同第5,342,952号;同第5,385,929号;同第5,397,792号;ヨーロッパ特許第409,281号;およびWO 89/07598は、アトルバスタチンを製造するための種々の方法および重要な中間体を記載している。
【0006】
WO 97/03958およびWO 97/03959は、式I,式II、式IIIおよび式IVとして指定されたアトルバスタチンの新規な結晶形態、およびより有利な濾過および乾燥特性を与えるその製造方法を開示している。
【0007】
WO 97/03960および米国特許第6,087,511号は、アトルバスタチンカルシウムの結晶形態を非晶質形態に変換するための方法を記載している。ここに開示された方法は、式Iのアトルバスタチンカルシウムを、テトラヒドロフラン、またはテトラヒドロフランおよびトルエンの混合物のような非ヒドロキシ溶媒中に溶解させることを含んでいる。
【0008】
WO 00/71116は、結晶形態Iを、テトラヒドロフランのような非ヒドロキシ溶媒の中に溶解し、n-ヘキサン、シクロヘキサンまたはn-ヘプタンのような非極性炭化水素溶媒を添加することにより非晶質アトルバスタチンカルシウムを沈殿させることによって、結晶形態Iを変換するための方法を記載している。上記特許に記載された方法は、アトルバスタチンの結晶(形態I)を、テトラヒドロフランまたはテトラヒドロフランおよびトルエンの混合物のような非ヒドロキシ溶媒中に溶解させ、続いて該溶媒を高温(約90℃)および高真空(約5mm)下で除去することを含んでいる。この方法は、乾燥のために使用する条件が生成物の分解を導く可能性があるので、大規模製造には適さない。
【0009】
上記特許に開示された方法の多くは、アトルバスタチンカルシウムを一貫してその非晶質形態で産生することはない。結晶形態および非晶質形態の混合物が得られることが多く、これは濾過および乾燥には適しておらず、従って、大規模製造のための望ましい方法ではない。
【0010】
本発明の目的は、その簡便さ、コスト効果および規模拡大性に関して独特な、非晶質アトルバスタチンカルシウムを製造するための新規な方法を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、非晶質アトルバスタチンカルシウムを調製する新規な方法に関する。
【0012】
本発明の新規な方法は、次式IIの化合物を、
【化3】

【0013】
次式のアトルバスタチンカルシウム(式I)
【化4】

【0014】
に変換することを含んでなるものである。
【発明の詳細な説明】
【0015】
次式Iの化合物の非晶質形態を、次式IIの化合物から調整するための本発明の方法は、方法は、
【化5】

【化6】

【0016】
(a)NaOH水溶液を式IIに添加してナトリウム塩を得ることと;
(b)該湿ったナトリウム塩を酢酸エチル中に溶解することと;
(c)酢酸カルシウムを添加し、続いて撹拌することと;
(d)有機層を回収し、濃縮して残渣を得ることと;
(e)該残渣を乾燥して、式Iの非晶質化合物を得ること
を含んでなるものである。
【0017】
当該方法において、工程(c)における酢酸カルシウムは、任意に塩化カルシウムで置き換えられる。
【0018】
当該方法において、式Iの非晶質化合物は真空乾燥される。
【0019】
本発明の新規方法は、以下の利点を有する:
1.ホウ酸エステルの脱保護、tert-ブチルエステルの開裂、およびカルシウム塩の形成が、一つの容器の中で容易に行われる;
2.安価な酢酸カルシウムを含む簡単な方法;
3.安価な方法;
4.該方法は工業的に規模を拡大することが可能;
5.非晶質アトルバスタチンカルシウムが、粗製物質を単離することなく直接得られる。
【0020】
次に、以下の実施例により本発明を例示するが、これらは特許請求の範囲の有効範囲を限定することを意図するものではない。結局、上記で述べた本発明の如何なる変形例も、特許請求の範囲に記載した本発明の精神および範囲から逸脱するものと看做されることはない。本発明は、その特定の実施形態に関して説明しされたが、種々の修飾および均等物が当業者に明らかであろうし、本発明の範囲内に含められるものである。
【実施例】
【0021】
実施例I
(6-{2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4-フェニルカルバモイル-ピロリジン-1-イル]-エチル}-2-フェニル- [1,3,2] ジオキサボリナン-4-イル)-酢酸tert-ブチルエステル(式IIの化合物、500 g、0.7 mol)を、THF(4 L)の中に溶解し、窒素ガスを用いて30分間脱ガスした。水(3.57 L)中の水酸化ナトリウム(142 g)の溶液を、上記の溶液に添加し、2時間還流させた。この反応混合物を真空下で濃縮して溶媒を除去し、水(7.5 L)を添加した後、続いてMTBE(2.5L)を加えた。層を分離した後、水溶液を真空下に1時間維持し、該溶液を12時間室温で放置した。形成された沈殿(アトルバスタチンのナトリウム塩)を濾過し、酢酸エチル(3.5 L)の中に溶解させた。この透明な有機層に、水(2 L)中の酢酸カルシウム(99.4 g)の溶液を添加し、40〜45℃で撹拌した。層を分離し、有機層を水(5×5L)で洗浄した。有機層を蒸発させ、残渣を真空下で乾燥して、非晶質のアトルバスタチンカルシウムを得た。
【0022】
収量: 380 g
実施例II
(6-{2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4-フェニルカルバモイル-ピロリジン-1-イル]-エチル}-2-フェニル-[1,3,2]ジオキサボリナン-4-イル)-酢酸 tert-ブチルエステル(式IIの化合物、10 kg、14.82 mol)、即ち、式IIの化合物を、TH(80 L)の中に溶解し、窒素ガスを用いて30分間脱ガスした。水(72 L)中の水酸化ナトリウム(2.84 kg)を上記の溶液に加え、4時間還流させた。この反応混合物を真空下で濃縮して溶媒を除去し、水(150 L)を添加した後、続いてMTBE(50 L)を加えた。層を分離した後、水溶液を真空下に3時間維持し、該溶液を25〜28℃で12時間放置した。形成された沈殿(アトルバスタチンのナトリウム塩)を濾過し、酢酸エチル(70 L)の中に溶解させた。この透明な有機層に、水(40 L)中の酢酸カルシウム(2 kg)の溶液を添加し、40〜45℃で撹拌した。層を分離し、有機層を水(5×100 L)で洗浄した。有機層を蒸発させ、残渣を真空下で乾燥して、非晶質のアトルバスタチンカルシウムを得た。
【0023】
収量: 7.2 kg
実施例III
(6-{2-[2-(4-フルオロ-フェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4-フェニルカルバモイル-ピロリジン-1-イル]-エチル}-2-フェニル-[1,3,2]ジオキサボリナン-4-イル)-酢酸 tert-ブチルエステル(式IIの化合物、500 g、0.7 mol)を、THF(4 L)の中に溶解させ、窒素ガスを用いて30分間脱ガスした。水(3.57 L)中の水酸化ナトリウム(142 g)の溶液を上記の溶液に添加し、2時間還流させた。この反応混合物を真空下で濃縮して溶媒を除去し、水(7.5 L)を添加した後、続いてMTBE(2.5L)を加えた。層を分離した後、水溶液を真空下に1時間維持し、該溶液を12時間室温で放置した。形成された沈殿(アトルバスタチンのナトリウム塩)を濾過し、酢酸エチル(3.5 L)の中に溶解させた。この透明な有機層に、水(2 L)中の酢酸カルシウム(60 g)の溶液を添加し、40〜45℃で撹拌した。層を分離し、有機層を水(5×5L)で洗浄した。有機層を蒸発させ、残渣を真空下で乾燥して、非晶質のアトルバスタチンカルシウムを得た。
【0024】
収量: 350 g.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質形態の次式Iの化合物を、式IIの化合物から調製するための新規な方法であって:
【化1】

【化2】

(a)NaOH水溶液を式IIに添加してナトリウム塩を得ることと;
(b)該湿ったナトリウム塩を酢酸エチル中に溶解することと;
(c)酢酸カルシウムを添加し、続いて撹拌することと;
(d)有機層を回収し、濃縮して残渣を得ることと;
(e)該残渣を乾燥して、式Iの非晶質化合物を得ること
を具備してなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、工程(c)における酢酸カルシウムが、任意に塩化カルシウムで置き換えられる方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記式Iの非晶質化合物が真空乾燥される方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、工程(b)におけるナトリウム塩が任意に乾燥され、更に処理される方法。

【公表番号】特表2008−510798(P2008−510798A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529140(P2007−529140)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/IN2004/000265
【国際公開番号】WO2006/021969
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(502315536)バイオコン・リミテッド (9)
【氏名又は名称原語表記】Biocon Limited
【Fターム(参考)】