説明

非水系二次電池用正極及びそれを用いた非水系二次電池

【課題】
室温における電池特性を損なうことなく、低温においても低抵抗且つ高容量を有する正極を提供する
【解決手段】
遷移金属酸化物及び導電材、バインダーから構成される非水系二次電池用正極に対し、電解重合法を用いて導電性高分子膜を簡便且つ正極活物質に対して1重量部以下の微量で正極活物質及び導電材の表面に膜状で複合化させることで、室温における電池性能を落とすこと無く、低温においても低抵抗且つ高容量を有する非水系二次電池の提供が可能な非水系二次電池用正極を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池に関し、特に非水系二次電池用電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルビデオカメラ、デジタルカメラに代表される携帯機器用小型二次電池の分野では、小型化及び高容量化のニーズに応えるべく、90年代初頭より、ニッケルカドミウム電池に続き、新型電池としてニッケル水素電池、リチウム二次電池の開発が進展し、200Wh/l以上の体積エネルギー密度を有する電池が市販されている。特にリチウムイオン電池は、350Wh/l、形状によっては500Wh/lを超える体積エネルギー密度を有するタイプも上市し、その市場を飛躍的に延ばしてきた。
【0003】
一方、中大型蓄電デバイスの分野では、省資源を目指したエネルギーの有効利用及び地球環境問題の観点から、深夜電力貯蔵及び太陽光発電の電力貯蔵を目的とした家庭用分散型蓄電システム、電気自動車、ハイブリッド車向けの蓄電システム等が注目を集めている。上記の蓄電システムでは、多数の二次電池や電気二重層キャパシタを直列及び、あるいは並列に接続し、組電池として用いるのが常であり、要求される寿命は、小型携帯機器用の5年程度に比べ10年以上と長い場合が多い。
【0004】
その中でも、最近では、原油価格上昇に伴いガソリン価格が高騰する中、低燃費であり、環境に優しい車としてハイブリッド車の開発が加速され、ハイブリッド車用として、安全且つ高出力、高エネルギー密度、長寿命を有する中大型蓄電デバイスが希求されている。
【0005】
前記ハイブリッド車に代表されるエネルギー回生を含む蓄電用途においては、蓄電デバイスが充放電時に短時間で大きな電力を出し入れすることが可能な特性を所持する必要がある。
【0006】
リチウム二次電池用正極活物質には、主として4V程度の電池電圧を示し且つ高容量を有するリチウム遷移金属酸化物が用いられる。これまで出力・容量を特性改善したリチウム二次電池を提供することを目的とし、リチウム遷移金属酸化物と導電性高分子から成る複合化正極の検討が行われてきた。
【0007】
遷移金属酸化物に導電性高分子を複合化する手法として、化学重合法から得られる有機溶媒に不溶な導電性高分子粉末の混合、化学重合法より得られる有機溶媒に可溶な導電性高分子の混合、電解重合法により電解酸化膜を形成させるという手法が検討されてきた。
【0008】
例えば、化学重合法から作製された導電性高分子粉末の混合系は、特開平6−68866号のバナジン酸リチウムに対して導電性高分子(ポリアニリン、ポリピロール等)を5〜50重量部混合することによる活物質利用率の向上が挙げられる。この混合または重合された導電性高分子が電極中で導電材且つ活物質として機能するため、電池容量の増加が得られる。詳しくは、ポリピロール未添加系のバナジン酸リチウム正極活物質の利用率が87%であるのと比べ、バナジン酸リチウムに対し10重量部のポリピロールを混合することで、混合電極系でのバナジン酸リチウム正極活物質利用率が126%に増加する。
【0009】
また、特開2001−351634号では、化学重合法により作製したポリアニリン、ポリピロールを混合または活物質表面に修飾する手法が検討されており、リチウムマンガン系酸化物にポリアニリン0.4重量部以上且つポリピロールを0.01〜3.0重量部混合、または0.01〜3.0重量部のポリピロールをリチウムマンガン系酸化物表面に修飾し且つポリアニリンを0.4重量部以上混合した正極電極を用いることで、未添加系電極と比べ放電容量が増加する。この効果は、ポリピロールが3V以下の電位領域においても電子伝導性を確保できるため、主に3V域での放電容量を増加させる。
詳しくは、リチウムマンガン系酸化物に対しポリアニリンを0.55重量部、ポリピロールを0.55重量部混合した電池では、4V域:103%、3V域:127%の放電容量を示し、ポリアニリン0.55重量部、ポリピロール2.23重量部混合すると4V域:104%、3V域:108%の放電容量を示す。リチウムマンガン酸化物正極に対し、ポリピロール5.56重量部混合すると放電容量が4V域:102%、3V域:92%を示す。
リチウムマンガン系酸化物にポリピロールを修飾した場合、リチウムマンガン系酸化物に対しポリピロールを1.21重量部修飾したセルでは、放電容量が4V域:104%、3V域:112%となり、ポリピロール2.30重量部を修飾したセルでは、放電容量が4V域:105%、3V域:104%となる。
【0010】
特開2003−168436号では、化学重合法により得られる可溶性ポリアニリンを用いた検討がされており、リチウム電池用正極の活物質表面の少なくとも一部をポリアニリンで被覆し、そのキャパシタ材料としての機能を利用することで、低温での短時間出力特性に優れた電池を得ている。
詳しくは、リチウム遷移金属酸化物に対し、還元状態のポリアニリンを5.5重量部混合すると、ポリアニリン未添加系と比べ、−30℃、SOC40%条件下での出力密度が高くなる(ポリアニリン未添加系25℃の出力密度を1.0とした場合、出力密度比:1.6以上)。但し、電極中でのポリアニリンの酸化度指数が0.7以上となると−30℃での出力密度比は高くなるが、25℃での出力密度比が低下する。酸化度指数が0.7以下であれば、25℃での出力密度比を低下させることなく−30℃での出力密度比を向上させることが可能となっている。
【0011】
特開2003−168437号では、活物質と活物質表面を被覆していないNMPに不溶な導電性高分子を混在させた電極を用いたリチウム電池が開示されている。詳しくは、正極電極の導電材として、NMPに不溶なポリアニリンを複合化させたカーボンを用いることで、室温での出力特性と低温での短時間出力特性に優れた電池となっている。この時、電極中のポリアニリン比率は、活物質に対して5.5重量部であり、出力特性は、ポリアニリン未添加系25℃の出力密度を1.0とした場合、−30℃、SOC40%条件下での出力密度比が2.23、25℃、SOC60%条件下での出力密度比が1.05となり、室温での出力密度比を低下させることなく、−30℃での出力密度比を向上させることが可能となっている。
【0012】
特開平8−138649号では、少なくとも正極の一部を、1〜20重量部の導電性高分子(ポリアニリン、ポリピロール)電解酸化膜で覆うことで、初期容量のロスが解消され且つサイクル寿命特性等が安定した正極性能が得られる。この導電性高分子電解酸化膜が、正極に対して1重量部以下であると容量増加の効果が小さく、20重量部以上であると正極電極が脆くなりひび割れてしまう。詳しくは、ポリピロールを添加しない電池では、初期効率が58.2%に対し、ポリピロールを添加した電池の初期効率が82.0%と23.8%効率が上昇し、高い容量が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−68866
【特許文献2】特開平8−138649
【特許文献3】特開2001−351634
【特許文献4】特開2003−168436
【特許文献5】特開2003−168437
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これまで、化学重合法、電解重合法により作製された導電性高分子を混合、被覆という種々の手法でリチウム二次電池用正極に複合化する検討がされており、室温における活物質の利用率向上及び電池の低抵抗化、低温条件下における短時間(10秒間)の出力特性向上等の効果が確認されている。
【0015】
上記効果を得るための手法の一つとして、化学重合法で作製した導電性高分子を電極中に混合あるいは導電性材料や活物質自身の表面に被覆させたものが知られている。
【0016】
しかし、上記方法で室温における容量改善効果(活物質利用率向上)を得るためには、導電性高分子を活物質として利用し、且つ電極の電子伝導性を改善させるといった観点から、導電性高分子複合量をある程度増加させる必要がある。この場合、電極中に真比重の低い導電性高分子が活物質粒子や導電材同士の接触界面に存在することとなるため、電極密度の低下に伴い電池のエネルギー密度が低下する。
【0017】
また、導電性高分子複合化の効果の例として、低温(−30℃)環境下における、短時間(10秒間)での出力特性向上効果が確認されているが、この効果を得るためには、電極中の導電性高分子複合量が少なくとも5重量部程度は必要である。しかしながらこの場合、短時間(10秒)の低抵抗化には有効であるが、全体としての放電容量(10秒以降の放電特性)が低下してしまうという課題があった。
【0018】
この様な上記効果を得るための化学重合法から得られる導電性高分子は、有機溶媒に対し不溶性と可溶性のものをそれぞれ用いた検討がされている。中でも可溶性のものを用いた場合、被覆された導電性高分子自身の分子量が低いため、電解液等の有機溶媒への溶解により、電池性能の信頼性が低下するという問題があった。
【0019】
また、電解重合法にて導電性高分子膜を電極中に直接形成させることで、室温の初期充放電効率の改善効果が確認されているが、この系では低温での高容量化及び低抵抗化の効果について何ら記載がない。この様な電解重合法により得られる導電性高分子膜の場合、正極に対し1重量部以上複合化することで、室温での容量改善効果は得られるが、低温条件下では抵抗が高くなり、放電特性が低下してしまうという問題がある。
【0020】
この様に、前記従来技術においては、室温での容量改善または低温での短時間出力特性の向上のどちらの効果を得る場合でも、正極中への導電性高分子複合量は少なくとも1重量部以上必要とされており、より高い効果を得るためには電極中の導電性高分子複合量を増加させる必要があるとされてきた。また、その一方でこれら従来技術では、いずれの手法を用いた場合でも、低温での放電容量維持率を低下させてしまうという大きな課題を残してきた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者は、上記の様な従来技術の問題点に留意しつつ研究を進めた結果、非水系二次電池用正極である遷移金属酸化物及び導電材、バインダーから構成される正極電極に対し、電解重合法を用いて膜状の導電性高分子を簡便且つ1重量部以下の微量で正極活物質及び導電材表面に被覆させた形態とすることで、室温における電池性能を損なうことなく、低温においても低抵抗且つ高容量を有する正極を用いた非水系二次電池を構築することが可能となり、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0022】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、非水系二次電池用正極において、電解重合法を用いて導電性高分子を正極活物質に対し1重量部以下の微量で、活物質及び導電材表面に膜状で被覆させることにより、室温における電池特性を損なうことなく、低温においても低抵抗且つ高容量を有する正極を提供することが可能となっている。
【0023】
すなわち本発明は、以下の構成からなることを特徴とし、上記課題を解決するものである。
【0024】
〔1〕リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な正極活物質を含む正極において、正極活物質に対し、電解重合法により0.01〜0.7重量部の導電性高分子が複合化されていることを特徴とする非水系二次電池用正極。
【0025】
〔2〕導電性高分子膜を複合化させる正極は、正極活物質と導電性材料を含むことを特徴とする前記〔1〕に記載の非水系二次電池用正極。
【0026】
〔3〕前記導電性高分子複合化前の前記正極は、電極電気伝導度が少なくとも1×10-3S/cm以上であることを特徴とする前記〔1〕または〔2〕に記載の非水系二次電池用正極。
【0027】
〔4〕複合化させる導電性高分子膜がポリアニリンであることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の非水系二次電池用正極。
【0028】
〔5〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載されている非水系二次電池用正極を正極とする非水系二次電池。
【発明の効果】
【0029】
本発明により高い電極電気伝導度を有する導電性高分子複合正極が得られ、且つその非水系二次電池用正極を用いることで、低温において低抵抗且つ高容量な非水系二次電池を構築可能な効果を奏する。
特に、導電性高分子複合化前の正極の電極電気伝導度を少なくとも1×10-3S/cm以上にすることにより、蓄電デバイスが充放電時に短時間で大きな電力を出し入れすることが可能な特性を所持し、電池容量C(Ah)の10倍(C(A)×10)もの電流で充放電させることが可能となり、ハイブリッド車に代表されるエネルギー回生を含む蓄電用途となる非水系二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明実施例の低温での放電特性結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施形態について、説明すれば以下のとおりである。本発明における非水系二次電池用正極は、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な正極活物質と導電性材料、バインダーから構成された正極に対し、電解重合法を用いて0.01〜0.7重量部の導電性高分子膜を複合化させた正極である。
【0032】
前記構成の正極とすることで低温条件下において低抵抗且つ高容量な非水系二次電池を得ることが可能となる。導電性高分子はセル内に各種モノマーを添加し、電解重合法により直接正極へ複合化させることとなる。このとき、導電性高分子モノマーの重合反応は、電極内の正極活物質、導電性材料の粒子表面で起こり、結果として活物質、導電材表面を導電性高分子膜で被覆した形態となる。
【0033】
正極中の導電性高分子複合量は0.7重量部以下で所望の効果が得られるが、更に0.5重量部以下ではより高い効果が得られる。これは、電解重合法で得られる導電性高分子が、正極内の活物質粒子及び導電材粒子とで構成されるマトリックスに、その活物質と導電材の接合状態を切断することなく、薄膜状に被覆することが可能となるからである。この様にして得られる導電性高分子膜は、少なくとも35nm以下の薄膜状で被覆されていることが望ましく、25nm以下ならより高い効果が得られる。しかし、導電性高分子の複合量が0.01重量部以下になると所望の効果が得にくくなる。これは、導電性高分子膜の厚さが0.5nm以下と非常に薄くなるため、正極活物質と導電材、バインダー等の電極構成材料の全体を被覆した形で形成させることが困難となり、結果として活物質と導電材、導電性高分子との連続的な伝導経路が形成されにくく、所望の効果を得ることが困難となる。また、化学重合法の場合では、あらかじめ活物質粒子の表面に形成させた後に導電材、バインダーと混合または、電極作製時に粉末状で得られた導電性高分子を混合することとなる。そのため、活物質と導電材に対する導電性高分子の接触状態が電解重合法で得られる膜状の場合と異なり、活物質、導電材と導電性高分子との連続的な伝導経路を確保することが困難となるため、所望の効果が得にくくなる。
【0034】
従来技術においては、導電性高分子複合量が微量である場合、室温での高容量化や低温での短時間における出力特性向上の効果が得にくいとされており、電極内の導電性高分子複合量は少なくとも1重量部以上、もしくはそれ以上必要とされてきた。
【0035】
本発明の様に、電解重合法により得られる導電性高分子膜を正極活物質や導電材の表面に微量且つ薄く被覆した形態を取ることで、室温での充放電特性を損なうことなく低温での低抵抗化及び高容量化の両方の効果を同時に得ることが可能となる。また、この手法では、ごく微量の導電性高分子を電極中に均一な薄膜状に形成させることが可能であるため、電極中で導電性高分子が偏在する心配がないと共に電極密度の大幅な低下による電池のエネルギー密度低下の問題も解消できる。
【0036】
本発明における正極活物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム複合コバルト酸化物、リチウム複合ニッケル酸化物、リチウム複合マンガン酸化物、リチウム複合バナジウム酸化物、或いはこれらの混合物、更にはこれら複合酸化物に異種金属元素を一種以上添加した系、鉄リン酸リチウム等の種々の遷移金属とポリアニオンとで形成される材料、更には、五酸化バナジウム、二酸化マンガン、二硫化モリブデン等のリチウムを吸蔵、放出可能であるがリチウムを含まない金属酸化物または硫化物を用いることも可能である。又、これらリチウム吸蔵、放出可能な金属酸化物または硫化物の粒子形態及び粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば単分散粒子、凝集粒子、或いはこれらの混合物、更にはこれらリチウムを吸蔵、放出可能な金属酸化物または硫化物の異なる粒子径および比表面積を有する粒子の混合物を用いることが可能である。
【0037】
上記正極活物質を用いて作製する電極構成については、特に限定されるものではなく、導電材を添加せずに正極活物質とバインダーから成る電極に導電性高分子を複合化した場合でも所望の効果は得られるが、導電材を添加し、電子伝導経路をあらかじめ形成させた正極とすることで、導電性高分子複合化の効果がより高く得られる形態となっている。
【0038】
すなわち上記記載の正極は、導電性材料を含まない場合でも導電性高分子の複合化が可能であり、上記特性改善の効果が得られるが、カーボンブラック、アセチレンブラック等の導電性材料を電極内に混合し、あらかじめ電極内に電子伝導経路を形成させた構成にすることで導電性高分子複合化の効果がより高く得られる。
【0039】
本発明の非水系二次電池に用いる正極を成形する場合、必要に応じ、導電材、バインダーを用いる。バインダーの種類は、特に限定されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂類、フッ素ゴム、SBR、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類などが例示される。バインダー量は、特に限定されないが、通常、正極活物質に対して1〜10重量部程度添加するのが好ましい。また、導電材の種類は、特に限定されるものではないが、カーボンブラック、アセチレンブラックが例示される。導電材量は、特に限定されるものではないが、通常、正極活物質に対して1〜15重量部程度添加され、電極密度を高くするためには、できるだけ電極内の導電材比率を減少させることが好ましい。
また、本発明の非水系二次電池に用いる正極は、塗布成形、プレス成形、ロール成形等一般的な電極成形法を用いて製造する事が可能である。
【0040】
導電性高分子膜を複合化させる前の正極を成形する方法は、所望の非水系二次電池の特性等に応じて公知の手法から適宜選択することができるが、例えば、正極活物質とバインダー、必要に応じて導電性材料を加え、その混合物にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶媒を混合してスラリーとし、これを集電体に塗布し、乾燥後、圧縮等して成形される。電極成形時の電極密度については、任意に選択することが可能であり、活物質と導電材、バインダーの混合比率により異なるが、2.0g/cm以上に成形が可能である。
【0041】
前記にて作製される導電性材料を含む正極の電気伝導度は、特に限定されるものではないが、ハイブリッド車に代表されるエネルギー回生を含む蓄電用途においては、蓄電デバイスが充放電時に短時間で大きな電力を出し入れすることが可能な特性を所持する必要があり、電池容量C(Ah)の10倍(C(A)×10)もの電流で充放電させる場合が多く、少なくとも10−3S/cm以上であることが好ましい。また、正極の電気伝導度は、正極活物質の種類、粒子径などにも依存するが、高ければ高いほど良く、電極内に正極活物質とそれに対する必要量の導電材(通常1〜15重量部)を加えることで10−3S/cm以上の電気伝導度を得ることが可能であり、その際、導電性高分子複合化の効果を、より高く発揮することが可能となる。
【0042】
上記の様な形態の正極(10−3S/cm以上の電気伝導度を有する)に対し、導電性高分子膜を電解重合法により形成させることで、電極内部の導電性をさらに高めることが可能となり、所望の電池特性が向上する。また、この複合化により、電解重合前の電極内における導電材比率を減少させ、電極密度を高くできる可能性が高まり、電池のエネルギー密度向上にも繋がる。
【0043】
正極を集電体上に成形する場合には、集電体の材質などは材質の耐電圧性を考慮した上で選択すれば特に限定されず、ステンレス鋼箔、チタン箔、アルミニウム箔等が例示される。
【0044】
上記正極を用いて作製したセルを用いて、電解重合法により導電性高分子を複合化させる。この電解重合法にて得られる導電性高分子膜を形成させる箇所については、特に限定されるものではなく、電極内の正極活物質、導電材いずれの表面に複合化されていてもよい。また、電解重合法にてあらかじめ正極活物質粉末に導電性高分子を複合化させ、その複合化させた活物質を用いて電極を作製することも可能であるが、上記の様に電極を成形した後に電解重合を行う方が、正極活物質、導電材及びバインダーの混合物中において、正極活物質と導電材が連続的に接続されたマトリックスに対して被覆した膜を形成させることができる。この様に、導電性高分子膜を複合化させた電極を、電池に組込むことも可能であり、作業工程を簡略化することが可能となり、より簡便となる。
【0045】
上記作製した正極活物質、導電材、バインダーより構成される電極を用いて、セルを作製し、電解重合を行うことで正極に導電性高分子を複合化させる。
【0046】
導電性高分子を電解重合するセル構成を以下に示す。セル構成としては、特に限定されるものではなく、上記作製の遷移金属酸化物を正極活物質とする正極と黒鉛材料から成る負極及び非水系電解液(場合によっては、セパレータを含む)より構成された非水系二次電池内に導電性高分子モノマーを必要量添加し、電解重合を行い、導電性高分子複合正極を得ることも可能であるが、上記にて作製した正極電極と参照極、負極及び非水系電解液(場合によっては、セパレータを含む)から構成される三電極式セルを作製し、電解重合を行った後セルを解体し、導電性高分子が複合化された電極を回収し、新たに電池として組み直しても良い。また、電解重合を行うセルは、正極、負極及び非水系電解液(場合によっては、セパレータを含む)から構成される二電極式セルでも可能である。尚、三電極式及び二電極式セルの対極及び参照極に用いる金属は、特に限定されるものではなく、リチウム、銀、白金など作用極の電位変化が計測可能な金属であれば問題はない。
【0047】
上記導電性高分子の電解重合を行うセルに用いるリチウム塩を含む非水系電解液としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチル等の1種または2種以上からなる有機溶媒に溶解したものを用いることができる。また、電解液の電解質塩濃度は、特に限定されるものではないが、一般的に0.5〜2mol/l程度が実用的である。電解液は、当然のことながら、水分が100ppm以下のものを用いることが好ましい。
【0048】
上記電解液に対する導電性高分子モノマーの濃度は、特に限定されるものではなく、正極活物質に対する導電性高分子複合量により任意に決めることが可能であるが、一般的には0.001〜4mol/l程度が実用的である。しかし、0.001mol/l未満ではモノマー濃度が低すぎるため重合反応の進行が遅くなり、4mol/lを超えると電解質溶液に溶解し難くなる。
【0049】
上記セルにおいて、正極、負極の間に絶縁、電解液保持の目的で多くの場合セパレータが配置されるが、このセパレータは、特に限定されるものではなく、ポリエチレン微多孔膜、ポリプロピレン微多孔膜、あるいはポリエチレンとポリプロピレンの積層膜、セルロース、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリアクリルニトリル繊維等からなる織布、あるいは不織布等があり、その目的と状況に応じ、適宜決定することが可能である。一方、固体電解質系等の電解質とセパレータ両方の機能を兼ね備えた系では、セパレータを用いない場合もある。
【0050】
本発明の非水系二次電池用正極に複合化させる導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリパラフェニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアズレン、ポリアセン、ポリアセチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシドおよびこれらの誘導体を挙げることができる。中でも、リチウム遷移金属酸化物材料を正極として用いる場合、このリチウム遷移金属酸化物の酸化還元電位と近く且つ同電位範囲内での電気伝導度が10S/cmを示すポリアニリンおよびその誘導体が望ましい。
【0051】
上記セルに対して、定電流または定電圧にて充電(酸化反応)し、導電性高分子を電解重合することで、正極活物質及び導電材表面に膜状で被覆させた正極を作製する。この時、電解重合法にて得られる導電性高分子複合量の制御方法については特に限定されないが、セル内の電解液に添加するモノマー濃度もしくは充電時の電気量により制御が可能である。又、電解重合を行う際の充電方法についても特に限定されず、定電流、定電圧の単独または定電流と定電圧の併用いずれの方法でも複合化が可能である。
【0052】
導電性高分子の電解重合は、導電性高分子モノマーが酸化重合される電圧範囲内であれば、いずれの電圧で行うことも可能であるが、導電性高分子モノマーが重合される電圧範囲の上限に近づくにつれ、導電性高分子の生成速度を速めることとなり、電極内における導電性高分子の形成される箇所に偏りが生じてしまう可能性がある。そのため、電極内に均一且つ薄膜状で導電性高分子を形成させたい場合は、導電性高分子モノマーが重合される電圧範囲の上限電圧を少し下げた電圧範囲で電解重合を行うことが望ましい。
【0053】
導電性高分子を高い電圧範囲で電解重合すると生成速度が速いため、重合度の低い導電性高分子が重合され、機械的強度が低い場合がある。重合度の低い導電性高分子である場合、充放電サイクルと共に電解液中に複合化された導電性高分子が溶解してしまい、電池の信頼性が損なわれる危険性がある。そのため、比較的低い電圧範囲且つ低電流密度で重合することにより、電極内に均一で且つ重合度の高い導電性高分子を複合化することが必要である。
【0054】
上記の様な条件で、電解重合した導電性高分子膜を、正極活物質に対し0.8重量部以上複合化した場合、低温条件下での抵抗が高くなり放電特性が低下する。正極活物質に対する導電性高分子複合量が、0.7重量部以下で所望の効果が得られ、更に0.5重量部以下ならより高い効果が得られる。上記電解重合法より得られる導電性高分子膜の被覆箇所は何ら限定されるものでなく、電極中の正極活物質、導電材いずれの表面を被覆していても良い。この時の導電性高分子膜の複合量は、元素分析より測定される構成元素の量から算出され、正極活物質に対する比が0.7重量部以下となれば、所望の効果を得ることが可能な形態となる。
一方、導電性高分子膜の複合量が正極活物質に対し0.01重量部以下となると、導電性高分子膜が薄くなりすぎるため、活物質と導電材、導電性高分子との連続的な伝導経路を形成させることが困難となり、所望の効果が得にくくなる。この様にして得られる導電性高分子膜の厚さは、0.7重量部でおよそ35nm、0.5重量部でおよそ25nmの薄膜状であると予想される。しかし、複合量が0.01重量部以下では、およそ0.5nm以下と非常に薄くなりすぎるため、活物質と導電材、導電性高分子との連続的な伝導経路が形成されにくく、所望の効果が得にくくなる。一方、正極活物質に対して0.8重量部以上複合化した場合、形成される膜がおよそ40nm以上となり、複合化した導電性高分子膜が逆に正極活物質からのLiの拡散を阻害し、低温での放電特性が低下してしまう。
【0055】
電解重合法にて導電性高分子を複合化した電極は、非水系溶媒中で重合処理を行うため、複合化された正極は有機溶媒で洗浄後乾燥させて使用、あるいは未乾燥のまま使用しても非水系二次電池用正極として用いることが可能である。
【0056】
本発明の非水系二次電池は、前記の導電性高分子膜が複合化された正極、負極、セパレータからなる2層以上の電極が積層された電極積層体を電池容器内に収容した構成となる。
【0057】
本発明に用いる負極活物質としては、リチウム系の負極材料であれば特に限定されるものではないが、リチウムドープ及び脱ドープ可能な材料であることが、安全性、サイクル寿命等の信頼性が向上するため、好ましい。リチウムドープ及び脱ドープ可能な材料としては、公知のリチウムイオン電池材料として使用されている黒鉛系物質、炭素系物質、錫酸化物系、ケイ素系酸化物等の金属酸化物等が挙げられる。
【0058】
本発明の非水系二次電池は、リチウム塩が非水溶媒に溶解されてなる非水系電解液を用いる。本発明において用いる非水系電解液としては、リチウム塩を含む非水系電解液を用いることが可能であり、正極材料の種類、負極材料の性状、充電電圧などの使用条件などに対応して、適宜決定される。リチウム塩を含む非水系電解液としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO等のリチウム塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチル等の1種または2種以上からなる有機溶媒に溶解したものを用いることができる。また、電解液の電解質塩濃度は、特に限定されるものではないが、一般的に0.5〜2mol/l程度が実用的である。電解液は、当然のことながら、水分が100ppm以下のものを用いることが好ましい。
【0059】
本発明の非水系二次電池において、正極、負極の間に絶縁、電解液保持の目的で多くの場合セパレータが配置されるが、このセパレータは、特に限定されるものではなく、ポリエチレン微多孔膜、ポリプロピレン微多孔膜、あるいはポリエチレンとポリプロピレンの積層膜、セルロース、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリアクリルニトリル繊維等からなる織布、あるいは不織布などがあり、その目的と状況に応じ、適宜決定することが可能である。一方、固体電解質系等の電解質とセパレータ両方の機能を兼ね備えた系では、セパレータを用いない場合もある。
【0060】
本発明の非水系二次電池の形状は特に限定されるものではなく、コイン型、円筒型、角型、フィルム型等、その目的に応じ、適宜決定することが可能である。
【0061】
以下に、実施例を示し、本発明の特徴とするところをさらに明確にするが、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明する。
【0063】
まず、正極活物質としてLiCoO、導電材であるアセチレンブラックとを乾式混合した。バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を溶解させたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に、得られた混合物を均一に分散させて、スラリーを調製した。この時、スラリー中の固形分重量比は、活物質が91重量部、導電材が4重量部、バインダーが5重量部となるよう調整した。
次いで、スラリーを集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔に7.5mg/cm±3%(1.0mAh/cm)となるよう塗布し、120℃で10分乾燥した。その後、前記Al箔上の電極層をその密度が2.8〜3.0g/cmとなるようロールプレスで成形後、直径17mmの円形に打ち抜き、その後150℃で真空乾燥させ、正極を得た。
【0064】
正極へのポリアニリン複合化は、上記工程にて得られたLiCoO正極を用いてセルを作製し、電解重合法にて行った。
【0065】
セル構成は、作用極に上記作製正極を用い、参照極、対極には厚さ200μmの金属リチウム箔、電解液には、1mol/l−LiPF、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(体積比30:70)に、アニリンモノマーを2mol/lの濃度になるよう加えたものを用いた。セパレータには、ガラス不織布:厚さ400μmとポリエチレン製微多孔膜:厚さ20μmとを重ね合わせて用いた。
【0066】
上記作製したセルを3.3V(vs.Li/Li)まで電流密度0.10mA/cmで定電流充電を行い、その後定電圧充電することによりポリアニリンの電解重合を行った。また、セルの電気量が0.5mAh、1.0mAh、2.0mAhに達したところで電解重合を終了し、ポリアニリン複合量の異なる正極を作製した。電解重合が終了した後、電極をセルから取り出し、有機溶媒(ジエチルカーボネート)で洗浄し、100℃で真空乾燥させ、ポリアニリン複合正極を得た。
【0067】
例2〜4の正極中のポリアニリン複合量を確認するため、化学分析を行い、C、H、N含有率を確認した。化学分析には、PERKIN ELMER社製、SERIESII CHNS/O Analyzer2400を用いた。その結果を下記表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
前記表より、例2〜4のポリアニリンを複合化した電極では、重合電気量の増加に伴いC、H、N含有量が増加することが確認できた。
【0070】
上記化学分析の結果より正極電極中のポリアニリン比率を算出した。例1〜4のサンプルの正極組成及び活物質に対するポリアニリン比率(重量百分率表示)を下記表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
上記作製電極を正極とし、負極には厚さ200μmの金属リチウム箔、電解液には、1mol/l−LiPF、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(体積比30:70)、セパレータにはガラス不織布:厚さ400μmとポリエチレン製微多孔膜:厚さ20μmとを重ね合わせたものを用いて二電極式セルを作製した。
【0073】
以上の工程で作製したセルを以下に示す試験条件にて初期特性を評価した。
【0074】
25℃におけるセルの初期充放電容量を測定した。初期充放電容量は、0.20mA/cmの定電流で4.2Vまで充電し、続いて0.20mA/cmの定電流で3.0Vまで放電して求めた。初期充放電特性結果を下記表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
前表の充放電結果より、LiCoO正極電極にポリアニリンを0.34重量部複合化した電極を用いたセル(例2)の25℃での放電容量は、ポリアニリン複合化無し(例1)の104%であり、0.69重量部複合化した電極を用いたセル(例3)は104%、0.86重量部複合化したセル(例4)は100%であった。また、同表記載のWh放電エネルギーで見た場合も、例1と比較して例2:104%、例3:104%、例4:100%の放電エネルギーであり、いずれのセルにおいても同等の特性が得られた。
【0077】
−30℃での放電容量の測定は、室温で0.2mA/cmの定電流で充電を行い、セルをSOC(State of charge)60%に調整した。SOC60%に調整したセルを、−30℃に保たれた恒温槽に3時間保持し、セルの作動下限電圧を3.0Vとし、0.2mA/cmの定電流で放電を行った。この測定より、−30℃でのAh放電容量、Wh放電エネルギーおよび直流抵抗(10秒抵抗)を算出した。この直流抵抗は、放電開始から10秒後のΔEと電流値よりオームの法則を用いて算出した。
【0078】
例1〜4の−30℃、SOC60%での直流抵抗値を下記表4に示す。
【0079】
【表4】

【0080】
表4より、ポリアニリン複合化無しのセル(例1)の抵抗を基準とすると、ポリアニリンが複合化された例2(複合量0.34重量部)のセルの抵抗が76%、例3(複合量0.69重量部)が82%であり、−30℃、SOC60%の10秒抵抗が改善された。一方、例4(複合量0.86重量部)のセルの抵抗は、複合化無しのセル(例1)の122%と抵抗が増加した。
【0081】
例1〜4のSOC60%、−30℃での放電容量及び放電エネルギーを下記表5に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
LiCoOに対しポリアニリンを0.34重量部複合化した電極のセル(例2)では、Ah放電容量が116%、Wh放電エネルギーが118%であった。ポリアニリンを0.69重量部複合化した電極のセル(例3)では、Ah放電容量が106%、Wh放電エネルギーが107%であった。一方、ポリアニリンを0.86重量部複合化した電極のセル(例4)は、Ah放電容量が36%、Wh放電エネルギーが35%であった。
LiCoO2電極にポリアニリンを0.34、0.69重量部複合化させた電極を用いたセルでは、−30℃、SOC60%状態でのAh放電容量及びWh放電エネルギーが複合化無しのセルと比べ改善される。一方、複合量が0.86重量部となると複合化無しのセルと比べてもAh放電容量及びWh放電エネルギーが低くなる。
【0084】
例1〜4のSOC60%、−30℃での放電曲線を図1に示す。
【0085】
LiCoO電極にポリアニリンを複合化した電極を用いた例2(0.34重量部)、例3(0.69重量部)のセルは複合化無しのセル(例1)と比べ放電作動電圧が高い。また、例1のセルは、放電開始直後の電圧降下が大きく、放電作動電圧が、およそ3.35V付近であるのに対し、ポリアニリン複合化電極を用いたセルでは、例2が3.47V、例3が3.43Vと、電圧降下が緩やかであると共に、その後も高い電圧を維持して放電していることがわかる。一方、例4(0.86重量部)のセルは、およそ3.2V付近と放電開始後の電圧降下が大きく、例1及び例2、3と比べ低い電圧範囲で放電していることがわかる。
【0086】
以上の結果より、電解重合法を用いて正極電極にポリアニリンを複合化することで、低温(−30℃)における放電特性改善効果を確認した。
【0087】
例2〜4いずれの電極においても、LiCoO2に対してポリアニリン複合量が1%以下であった。中でも−30℃環境下におけるAh放電容量及びWh放電エネルギーが最も改善された例2は、ポリアニリン複合量が0.34重量部であった。複合量が増加するに伴い−30℃でのAh放電容量及びWh放電エネルギー改善効果が小さくなることが確認できた。一方、ポリアニリン複合量が0.86重量部では、複合化無し(例1)と比べAh放電容量及びWh放電エネルギーが低下することが確認できた。−30℃における放電特性改善の効果を得るためには、少なくともポリアニリン複合量が0.7重量部以下であることが必要であり、改善効果を更に向上させるには、より微量に複合化させることが望ましい。
【0088】
本発明により、正極活物質に対するポリアニリン複合量が0.7重量部以下の微量であると、低温での放電エネルギーが高い二次電池の提供が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
ハイブリッド電気自動車、瞬時停電バックアップ等の大電流負荷用途に向けた、最先端蓄電デバイスである非水系二次電池用正極に関し、低温条件下において低抵抗且つ高容量な非水系二次電池を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な正極活物質を含む正極において、正極活物質に対し、電解重合法により0.01〜0.7重量部の導電性高分子が複合化されていることを特徴とする非水系二次電池用正極。
【請求項2】
導電性高分子膜を複合化させる正極は、正極活物質と導電性材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用正極。
【請求項3】
前記導電性高分子複合化前の前記正極は、電極電気伝導度が少なくとも1×10-3S/cm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系二次電池用正極。
【請求項4】
複合化させる導電性高分子膜がポリアニリンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水系二次電池用正極。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載されている非水系二次電池用正極を正極とする非水系二次電池。



【図1】
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【公開番号】特開2011−159568(P2011−159568A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22047(P2010−22047)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】