説明

非水系二次電池

【課題】非水系二次電池における正極板と負極板の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けた構成とし、非水系二次電池を充放電する際の電極板の膨張収縮による応力を緩和し充放電時の電極板の破断または挫屈を抑制することで安全性の高い非水系二次電池を提供するものである。
【解決手段】正極合剤塗料を正極集電体1の上に塗布し正極合剤層2a,2bを形成した正極板4と負極合剤塗料を負極集電体5の上に塗布し負極集電体5の上に負極合剤層6a,6bを形成した負極板8との間にセパレータ9を介在させ渦巻状に捲回して構成した電極群10において、正極板4と負極板8の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池に関し、特に安全性に優れた非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウムイオン二次電池は、負極にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極にLiCoO等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いている。
【0003】
これによって高電位で高放電容量のリチウムイオン二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って、更なるリチウムイオン二次電池の高容量化が望まれている。
【0004】
ここで、高容量のリチウムイオン二次電池を実現するための発電要素である電極板としては、正極板および負極板ともに各々の構成材料を塗料化した電極合剤塗料を集電体の上に塗布して乾燥させた後にプレス等により規定の厚みまで圧縮する方法が用いられており、より多くの活物質を充填してプレスすることで活物質密度が高くなり、一層の高容量化が可能となる。
【0005】
さらに、上述の正極板と負極板とをセパレータを介して順に積層される又はセパレータを介して渦巻状に捲回した電極群をステンレス製、ニッケルメッキを施した鉄製、又はアルミニウム製などの金属からなる電池ケースに収納し、次に非水系電解液を電池ケース内に注液した後に電池ケースの開口部に封口板を密封固着してリチウムイオン二次電池が構成される。
【0006】
ところで、リチウムイオン電池に代表される非水系二次電池の高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板とが内部短絡などにより非水系二次電池の急激な温度上昇が起こり熱暴走に至る恐れもあるため、非水系二次電池の安全性の向上が強く要求されている。特に、大型・高出力な非水系二次電池では、熱暴走の発生する確率が高くなるため、その発生する確率を低くするなどの安全性を向上させる工夫が必要である。
【0007】
上述のように非水系二次電池が内部短絡する要因としては、非水系二次電池の内部に異物が混入する以外にも図22(a)に示したように、正極集電体21の上に正極合剤層22a,22bを形成した正極板23と負極集電体24の上に負極合剤層25a,25bを形成した負極板26とをセパレータ27を介して捲回することにより、電極群28を構成する際、さらには非水系二次電池を充放電する際に電極板に加わる応力によって電極板が破断あるいは挫屈することが考えられる。
【0008】
より詳しくは、渦巻状に捲回して電極群28を構成する際には構成要素である正極板23、負極板26、セパレータ27には引張応力が加わり、この際の各構成要素における伸び率の差によって最も伸び率が小さなものから破断することになる。
【0009】
加えて、非水系二次電池を充放電すると電極板の膨張収縮による応力が電極板に加わり、充放電を繰り返すことによる繰り返し応力により正極板23、負極板26もしくはセパレータ27の伸び率の最も低いものが優先的に破断してしまう。
【0010】
例えば、図22(b)に示したように充電時の負極板26の伸びに正極板23が追従できない場合には正極板23の破断(図中のF)が起こり、また、正極板23の破断が起きなくても図22(c)に示したように負極板26の挫屈によりセパレータ27が引き伸ばされることで、セパレータ27の厚みが薄くなる箇所(図中のG)が発生する。
【0011】
さらに、正極板23もしくは負極板26がセパレータ27よりも先に破断した場合には、いずれかの電極板の破断部がセパレータ27を突き破り正極板23と負極板26が短絡することになる。この短絡により大電流が流れ、その結果、非水系二次電池の温度が急激に上昇し、上述のように非水系二次電池が熱暴走する可能性がある。
【0012】
そこで、正極板の破断を抑制するために、図23に示したように両面に正極合剤層を塗布形成した正極板33と両面に負極合剤層を塗布形成した負極板34とをセパレータ35を介して扁平状に捲回した発電要素32と非水系電解液を電池ケース36に収納した非水系二次電池31において、正極板33の両面のうち、内周側の第1面の正極合剤層を裏面の第2面の正極合剤層よりも柔軟性を高く(引張破断伸びを大きく)する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
また、電極板の伸び率を向上させるために、図24に示したように正極リード44を接続した正極板41と負極リード45を接続した負極板42との間にセパレータ43を介在させて渦巻状に捲回して電池ケース47に収容し正極リード44を正極外部端子46に、負極リード45を電池ケース47に接続し、非水系電解液を注入した非水系二次電池において、正極板41および負極板42とこれら両電極間に介装されるべきセパレータ43とを積層する前又は巻き取る前に、結着材の再結晶化温度より高い温度であって、その分解温度より低い温度で正極板41又は負極板42のいずれか一方もしくはその両方の電極板を加熱処理する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−103263号公報
【特許文献2】特許第3066161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、正極板の内周側の正極合剤層を外周側より柔軟にするまたは正極板を熱処理するなどの上述した従来技術においては、電極群を構成する際に正極板に加わる曲げ応力による正極板の破断を抑制する効果は発揮するものの、非水系二次電池を充放電する際の電極板の膨張収縮による応力を緩和し充放電時の電極板の破断または挫屈を抑制することが困難であるという課題を有していた。
【0015】
加えて、上述した特許文献1の従来技術では、正極板の表面と裏面に塗布する二種類の正極合剤塗料を作製し、この二種類の正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布して形成する必要があり、正極板を作製するプロセスが複雑になってしまう。
【0016】
また、特許文献2の従来技術では、正極板を規定の厚みまでプレスした後に熱処理を施し捲回して電極群を構成するが、この熱処理によって規定の厚みまで圧縮された正極板がバックリングを起こし捲回前の正極板の厚みバラツキが大きくなってしまう。さらに、捲回した電極群の直径のバラツキが大きくなってしまうなどの不具合を引き起こすことがある。
【0017】
本発明は上記従来の課題を鑑みてなされたもので、非水系二次電池における正極板と負極板の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けた構成とし、非水系二次電池を充放電する際の電極板の膨張収縮による応力を緩和し充放電時の電極板の破断または挫屈を抑制することで安全性の高い非水系二次電池を提供することを目的とし
ている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明の非水系二次電池は、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に付着させて正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成した負極板との間に多孔質絶縁体を介在させて捲回または積層して構成した電極群を非水系電解液とともに電池ケースに封入した非水系二次電池であって、正極板と負極板の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けた構成としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の非水系二次電池によると、正極板と負極板の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けた構成としたことにより、充放電時における正極板と負極板の膨張収縮による伸縮度の差に起因した正極板あるいは負極板に加わる応力を緩和することができ、電極板の破断または挫屈を抑制することが可能であり、これらに起因した内部短絡を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の第1の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し負極合剤層を形成した負極板との間にセパレータを介在させ捲回または積層して構成した電極群を非水系電解液とともに電池ケースに封入した非水系二次電池であって、正極板と負極板の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けた構成としたことにより、充放電時における正極板と負極板の膨張収縮による伸縮度の差に起因した正極板あるいは負極板に加わる応力を緩和し電極板の破断および電極板の挫屈に起因した内部短絡を抑制することが可能となり、安全性の高い非水系二次電池を提供することができる。
【0021】
本発明の第2の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に設けたことにより、伸縮度の異なる正極板と負極板における一方の集電体の伸縮度を大きくし、この集電体に追従効果を持たせることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0022】
本発明の第3の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体を伸縮度の大きい合金を用いて構成したことにより、正極集電体または負極集電体の伸縮性を向上させて正極板または負極板を伸び易くすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0023】
本発明の第4の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体を調質処理により軟化させて構成したことにより、正極集電体または負極集電体の硬度を低下させて正極板または負極板を伸び難くすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0024】
本発明の第5の発明においては、伸縮抑制機能を正極集電体または負極集電体の厚みを薄くして構成したことにより、厚みの減少によって正極集電体または負極集電体を伸び易くして正極板または負極板の伸縮度を大きくすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0025】
本発明の第6の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体の幅を狭くして構成したことにより、幅の減少によって正極集電体または負極集電体を伸び易くして正極板または負極板の伸縮度を大きくすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0026】
本発明の第7の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に長手方向に対して直交する肉薄部を設けて構成したことにより、肉薄部によって正極集電体または負極集電体を伸び易くして正極板または負極板の伸縮度を大きくすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0027】
本発明の第8の発明においては、伸縮抑制機機能を正極集電体または負極集電体を伸縮度の大きい合金で構成する、または調質処理により軟化する、または厚みを薄くする、または幅を狭くする、または長手方向に対して直交する肉薄部を設けるかのいずれか二つ以上を組み合わせて構成したことにより、正極集電体または負極集電体に伸縮度を大きくする効果を付与することで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0028】
本発明の第9の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に長手方向に対して直交する折り曲げ部を設けて構成したことにより、この集電体の折り曲げ部によって電極板の充放電時の伸縮に追従させることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0029】
本発明の第10の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に長手方向に対して直交する切込み部を設けて構成したことにより、この集電体の切込み部によって電極板の充放電時の伸縮に追従させることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0030】
本発明の第11の発明においては、切込み部を正極集電体または負極集電体の幅方向の両端部に設けたことにより、この幅方向の両端部の切込みによって集電体を伸び易くすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0031】
本発明の第12の発明においては、切込み部を正極集電体または負極集電体の幅方向に断続的に設けたことにより、この幅方向に断続的に設けられた切込みによって集電体を伸び易くすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0032】
本発明の第13の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に千鳥状の切込みを設けて構成したことにより、この千鳥状の切込みによって集電体を伸び易くすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0033】
本発明の第14の発明においては、伸縮促進機能を折り曲げ部と切込み部を組み合わせて構成したことにより、折り曲げ部による集電体を伸び易くする効果に加えて、切込み部による集電体を伸び易くする相乗効果によって、正極板と負極板の伸縮度をより効果的に近づけることが可能となる。
【0034】
本発明の第15の発明においては、伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層に伸縮促進部を設けて構成したことにより、伸縮度の異なる正極板と負極板における一方の電極合剤層の伸縮度を大きくし、この電極合剤層に追従効果を持たせることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0035】
本発明の第16の発明においては、伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層の表面
または裏面の少なくともいずれか一方の面に長手方向に対して直交する肉薄部を少なくとも一箇所以上に形成して構成したことにより、この正極合剤層または負極合剤層の肉薄部に正極板または負極板の膨張収縮に伴う応力を緩和させる効果を付与し正極板あるいは負極板に加わる応力を緩和することで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0036】
本発明の第17の発明においては、伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層の表面と裏面に長手方向に対して直交する肉薄部を同位相となるように形成して構成したことにより、正極板または負極板の膨張収縮に伴う応力を緩和させる効果を電極板の厚み方向により効果的に分散させることができ、より効果的に電極板の破断または挫屈を抑制することが可能となる。
【0037】
本発明の第18の発明においては、伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層の表面と裏面に長手方向に対して直交する肉薄部を異位相となるように形成して構成したことにより、正極板または負極板の膨張収縮に伴う応力を緩和させる効果を電極板の長手方向により効果的に分散させることができ、より効果的に電極板の破断または挫屈を抑制することが可能となる。
【0038】
本発明の第19の発明においては、伸縮促進機能としての肉薄部を正極合剤層または負極合剤層に幅を変えて形成したことにより、肉薄部の幅を最適化することにより電極板に付与する応力緩和効果を調整することができ、より効果的に電極板の破断または挫屈を抑制することが可能となる。
【0039】
本発明の第20の発明においては、肉薄部を合剤層または負極合剤層の外周側と内周側で幅を変えて形成したことにより、一例として渦巻状の電極群における正極板の内周側にある正極合剤層の肉薄部の幅を外周側にある正極合剤層の肉薄部の幅よりも広くすることで正極板の外周側と内周側の曲率の差に起因した応力差を緩和することができ、電極群中の正極板の破断および正極板の挫屈を効果的に抑制することが可能となる。
【0040】
本発明の第21の発明においては、肉薄部を正極合剤層または負極合剤層の巻き始め側と巻き終わり側で幅を変えて形成したことにより、一例として正極合剤層の肉薄部の幅を捲回方向に対して段階的に狭くすることで電極群を構成した際に正極板の捲き始めと捲き終わりの曲率の差に起因した応力差を緩和することができるため、電極群中の正極板の破断および正極板の挫屈を効果的に抑制することが可能となる。
【0041】
本発明の第22の発明においては、肉薄部を外周側と内周側の幅と巻き始め側と巻き終わり側の幅を変えて形成したことにより、外周側と内周側における肉薄部の幅を変えたことによる効果に加えて、巻き始め側と巻き終わり側における肉薄部の幅を変えた相乗効果によって、電極群中の電極板の破断および電極板の挫屈を効果的に抑制することが可能となる。
【0042】
本発明の第23の発明においては、肉薄部を正極合剤層または負極合剤層に間隔を変えて形成したことにより、肉薄部の間隔を最適化することにより電極板に付与する応力緩和効果を調整することができ、より効果的に電極板の破断または挫屈を抑制することが可能となる。
【0043】
本発明の第24の発明においては、肉薄部を正極合剤層または負極合剤層の外周側と内周側で間隔を変えて形成したことにより、一例として渦巻状の電極群における正極板の内周側にある正極合剤層の肉薄部の間隔を外周側にある正極合剤層の肉薄部の間隔よりも狭くすることで正極板の外周側と内周側の曲率の差に起因した応力差を緩和することができ
、電極群中の正極板の破断および正極板の挫屈を効果的に抑制することが可能となる。
【0044】
本発明の第25の発明においては、肉薄部を正極合剤層または負極合剤層の巻き始め側と巻き終わり側で間隔を変えて形成したことにより、一例として正極合剤層の肉薄部の間隔を捲回方向に対して段階的に広くすることで電極群を構成した際に正極板の捲き始めと捲き終わりの曲率の差に起因した応力差を緩和することができるため、電極群中の正極板の破断および電極板の挫屈を効果的に抑制することが可能となる。
【0045】
本発明の第26の発明においては、肉薄部を外周側と内周側の間隔と巻き始め側と巻き終わり側の間隔を変えて形成したことにより、外周側と内周側における肉薄部の間隔を変えたことによる効果に加えて、巻き始め側と巻き終わり側における肉薄部の間隔を変えた相乗効果によって、電極群中の電極板の破断および電極板の挫屈を効果的に抑制することが可能となる。
【0046】
本発明の第27の発明においては、肉薄部を正極合剤層または負極合剤層に幅を変えるとともに、正極合剤層または負極合剤層に間隔を変えて形成したことにより、肉薄部の形成形態に応じた応力緩和効果を発揮させて正極板または負極板の伸縮度を調整することで、より効果的に正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0047】
本発明の第28の発明においては、伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層を形成する結着材の硬度を低くして構成したことにより、正極合剤層または負極合剤層に柔軟性を付与し正極板または負極板を伸び易くすることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0048】
本発明の第29の発明においては、伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に設けるとともに、正極合剤層または負極合剤層に設けて構成したことにより、集電体の伸縮度を大きくするとともに、電極合剤層の伸縮度を大きくし電極板により効果的に応力緩和効果を持たせることで、正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0049】
本発明の第30の発明においては、伸縮促進機能を設けるとともに、正極板と負極板の充放電時の伸縮度が大きい方に伸縮を抑制する伸縮抑制機能を設けたことにより、伸縮度の異なる正極板と負極板における一方の電極板の伸縮度を大きくするとともに、他方の電極板の伸縮度を小さくすることで、より効果的に正極板と負極板の伸縮度を近づけることが可能となる。
【0050】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における捲回後の電極群10の要部を示す斜視図である。同図において本発明の非水系二次電池用の電極群10は、正極合剤塗料を正極集電体1の上に塗布して正極合剤層2a,2bを形成した正極板4と負極合剤塗料を負極集電体5の上に塗布して負極合剤層6a,6bを形成した負極板8の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けるとともに、この正極板4と負極板8との間に多孔質絶縁体としてのセパレータ9を介在させ渦巻状に捲回して構成されている。
【0051】
ここで、上述した本発明のリチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池においては、図1に示すように充電時に負極板8にリチウムがインターカレーションされることで負極合剤層6a,6bが膨張することによる負極板8の伸長度Aとこの際の正極板4の伸長度C、および放電時に負極板8からリチウムがデインターカレーションされることで負極合剤層6a,6bが収縮することによる負極板8の収縮度Bとこの際の正極板4の収縮度Dを互いに近づけるために正極板4と負極板8の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けた構成としている。
【0052】
上述のように正極集電体1の表面または裏面に正極合剤層2a,2bを形成するには、正極活物質、導電材、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサーなどの分散機により混合分散し、アルミニウム箔などの正極集電体1への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って正極合剤塗料を作製する。
【0053】
ここで、正極活物質としては、例えばコバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物を挙げることができる。
【0054】
このときの導電材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いても良い。
【0055】
このときの結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材などを用いることができ、この際に反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。
【0056】
上述のようにして作製した正極合剤塗料を例えばアルミニウム箔からなる正極集電体1の上にダイコーターを用いて塗布した後に乾燥して所定の厚みまで圧縮するようにプレスした後、規定の幅および長さにスリッタ加工して長尺帯状の正極板4が得られる。
【0057】
一方、負極集電体5の表面または裏面に負極合剤層6a,6bを形成するには、負極活物質、結着材を適切な分散媒中に入れ、プラネタリーミキサー等の分散機により混合分散し、銅箔などの負極集電体5への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って負極合剤塗料を作製する。
【0058】
ここで、負極用活物質としては、例えば各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、並びに各種の合金組成材料を用いることができる。このときの結着材としては、ポリフッ化ビニリデンおよびその変性体を用いることができる。
【0059】
しかしながら、リチウムイオンの受入れ性を向上させるという観点からは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)またはその変性体とカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂などを併用したものや、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子またはその変性体に上記セルロース系樹脂を少量添加したものを使用するのが好ましい。
【0060】
上述のようにして作製した負極合剤塗料を例えば銅箔からなる負極集電体5の上にダイコーターを用いて塗布した後に乾燥して所定の厚みまで圧縮するようにプレスした後、規定の幅および長さにスリッタ加工して長尺帯状の負極板8が得られる。
【0061】
以下、上述した正極板4および負極板8を使用した本発明の非水系二次電池について説明する。図21に、非水系二次電池の一例としての円筒形のリチウムイオン二次電池17を縦に切断した斜視図により示す。
【0062】
図21の円筒形のリチウムイオン二次電池17においては、複合リチウム酸化物を活物質とする正極板4とリチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板8とをセパレータ9を介し渦巻状に捲回して電極群10が作製される。
【0063】
電極群10は、有底円筒形の電池ケース11の内部に、絶縁板12により電池ケース11とは絶縁されて収容される一方で、電極群10の下部より導出した負極リード13が電池ケース11の底部に接続されるとともに、電極群10の上部より導出した正極リード14が封口板15に接続される。
【0064】
また、電池ケース11は、所定量の非水溶媒からなる非水系電解液(図示せず)が注液された後、開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口される。
【0065】
ここで、セパレータ9は、リチウムイオン二次電池の使用範囲に耐えうる組成であればよいが、特にポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを、単一あるいは複合して用いるのが好ましい。このセパレータ9の厚みは、10〜25μmとするのが良い。
【0066】
このときの非水系電解液は、電解質塩としてLiPFおよびLiBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)を単独および組み合わせて用いることができる。
【0067】
また、正極板または負極板の上に良好な被膜を形成させるため、および過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)、並びにその変性体を用いるのが好ましい。
【0068】
本発明の特徴である伸縮促進機能の第1の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図2に示すように正極集電体1または負極集電体5のいずれか一方を伸縮度の大きい合金を用いて構成することで実現できる。
【0069】
具体的な構成の一例としては、図2に示す正極集電体1をアルミニウムの合金で構成することで正極板4を伸び易くし、図1に示す正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0070】
また、伸縮促進機能の第2の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図2に示すように正極集電体1または負極集電体5のいずれか一方を調質処理により軟化させて構成することで実現できる。
【0071】
具体的な構成の一例としては、図2に示す正極集電体1を熱処理により軟化させることで正極板4を伸び易くし、図1に示す正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0072】
また、伸縮促進機能の第3の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図3に示すように正極集電体1または負極集電体5のいずれか一方の厚みを薄くして構成することで実現できる。
【0073】
具体的な構成の一例としては、図3に示す正極集電体1の破断強度を高めた上で厚みT1を薄くすることで正極板4を伸び易くし、図1に示す正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0074】
また、伸縮促進機能の第4の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図4に示すように正極集電体1または負極集電体5のいずれか一方の幅を狭くして構成すること
で実現できる。
【0075】
具体的な構成の一例としては、図4に示す正極集電体1の幅W1を狭くすることで正極板4を伸び易くし、図1に示す正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0076】
また、伸縮促進機能の第5の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図5に示すように正極集電体1または負極集電体5に長手方向に対して直交する肉薄部を設けて構成することで実現できる。
【0077】
具体的な構成の一例としては、正極集電体1の破断強度を高めた上で長手方向に対して直交する肉薄部1aを設けることで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0078】
さらに、伸縮促進機能の第6の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図2に示すように正極集電体1または負極集電体5に伸縮度の大きい合金を用いるか、または図2に示すように正極集電体1または負極集電体5を調質処理により軟化させるか、または図3に示すように正極集電体1または負極集電体5のいずれか一方の厚みを薄くするか、または図4に示すように正極集電体1または負極集電体5のいずれか一方の幅を狭くするか、または図5に示すように正極集電体1または負極集電体5に長手方向に対して直交する肉薄部を設けるかのいずれか二つ以上を組み合わせて構成することで、正極板4の伸縮度と負極板8の伸縮度とを近づけることも同様に可能である。
【0079】
また、伸縮促進機能の第7の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図6に示すように正極集電体1または負極集電体5に長手方向に直交する折り曲げ部を設けて構成することで実現できる。
【0080】
具体的な構成の一例としては、図6に示す正極集電体1に長手方向に直交する折り曲げ部1bを設けることで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0081】
また、伸縮促進機能の第8の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図7に示すように正極集電体1または負極集電体5の幅方向の両端部に長手方向に直交する切込み部を設けて構成することで実現できる。
【0082】
具体的な構成の一例としては、図7に示す正極集電体1の幅方向の両端部に長手方向に直交する切込み部1cを設けることで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0083】
また、伸縮促進機能の第9の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図8に示すように正極集電体1または負極集電体5の幅方向に長手方向に直交する切込み部を断続的に設けて構成することで実現できる。
【0084】
具体的な構成の一例としては、図8に示す正極集電体1の幅方向に長手方向に直交する切込み部1cを断続的に設けることで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0085】
また、伸縮促進機能の第10の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図9に示すように正極集電体1または負極集電体5に千鳥状の切込み部を設けて構成することで実現できる。
【0086】
具体的な構成の一例としては、図9に示す正極集電体1に千鳥状に配列したくの字の切込み部1cを設けることで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0087】
さらに、伸縮促進機能の第11の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図6に示すように正極集電体1または負極集電体5に長手方向に直交する折り曲げ部を設けるか、または図7に示すように正極集電体1または負極集電体5の幅方向の両端部に長手方向に直交する切込み部を設けるか、または図8に示すように正極集電体1または負極集電体5の幅方向に長手方向に直交する切込み部を断続的に設けるか、または図9に示すように正極集電体1または負極集電体5に千鳥状の切込み部を設けるかのいずれか二つ以上を組み合わせて構成することで、正極板4の伸縮度と負極板8の伸縮度とを近づけることも同様に可能である。
【0088】
具体的な構成の一例としては、図10に示す正極集電体1に長手方向に直交する折り曲げ部1bを設けるとともに、幅方向の両端部に長手方向に直交する切込み部1cを設けることで、さらに正極板4を伸び易くし正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0089】
また、伸縮促進機能の第12の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図11に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの表面と裏面に長手方向に対して直交する肉薄部を同位相となるように形成して構成することで実現できる。
【0090】
具体的な構成の一例としては、図11に示す正極集電体1の表面に等間隔で正極合剤層2aの肉薄部3cを、裏面に表面と同位相かつ等間隔に正極合剤層2bの肉薄部3dを形成している。
【0091】
まず、正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dを形成するためには、図11に示す正極集電体1の長手方向に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dを長手方向に対して等間隔に、かつ肉薄部3cと肉薄部3dが同位相となるように塗布して形成する第1の工程を経て作製される。
【0092】
次いで、この正極合剤塗料が乾燥された後に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dにおける最薄部の厚みよりも厚い所定の厚みにプレスされる第2の工程を経て、正極板4に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dが長手方向に対して等間隔に形成される。
【0093】
この表面と裏面が同位相、かつ長手方向に対して等間隔に形成した正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dに正極板4または負極板8の膨張収縮を緩和させる効果を付与することで正極板4あるいは負極板8に加わる応力を緩和することができ、正極板4の伸縮度C,Dと負極板8の伸縮度A,Bを近づけることができる。
【0094】
また、伸縮促進機能の第13の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図12に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの表面と裏面に長手方向に対して直交する肉薄部を異位相となるように形成して構成することで実現できる。
【0095】
具体的な構成の一例としては、図12に示す正極集電体1の表面に等間隔で正極合剤層2aの肉薄部3cを、裏面に表面と位相を1/2ずらせて正極合剤層2bの肉薄部3dを形成している。
【0096】
まず、正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dを形成するためには、図12に示す正
極集電体1の長手方向に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dを長手方向に対して等間隔に、かつ肉薄部3cと肉薄部3dの位相が1/2ずれるように塗布して形成する第1の工程を経て作製される。
【0097】
次いで、この正極合剤塗料が乾燥された後に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dにおける最薄部の厚みよりも厚い所定の厚みにプレスされる第2の工程を経て、正極板4に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dが長手方向に対して等間隔に形成される。
【0098】
この表面と裏面が異位相、かつ長手方向に対して等間隔に形成した正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dに正極板4または負極板8の膨張収縮を緩和させる効果を付与することで正極板4あるいは負極板8に加わる応力を緩和することができ、正極板4の伸縮度C,Dと負極板8の伸縮度A,Bを近づけることができる。
【0099】
また、伸縮促進機能の第14の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図13に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの外周部と内周部で薄肉部の幅を変えて形成して構成することで実現できる。
【0100】
具体的な構成の一例としては、図13に示すように正極集電体1の表面に幅W4の正極合剤層2aの肉薄部3cを、裏面にW5>W4である幅W5の正極合剤層2bの肉薄部3dを長手方向に対して一様に形成している。
【0101】
この構成とすることで、E方向に渦巻状に捲回して電極群を構成した際に曲率の違いにより負極板8における外周側の負極合剤層6aには引張応力が加わり、内周側の負極合剤層6bには圧縮応力が加わることになるが、この外周側にある負極合剤層6bと対極する正極板4の内周側にある正極合剤層2bの肉薄部3dの幅W5を外周側にある正極合剤層2aの肉薄部3cの幅W4よりも広く形成することで負極板8の膨張収縮がより効果的に抑制され正極板4に加わる応力が緩和されることになる。
【0102】
この正極板4において正極合剤層2a,2bの一部に上述した肉薄部3c,3dを形成するために、図5に示すように正極集電体1の表面に幅W4の正極合剤層2aの肉薄部3c、裏面にW5>W4である幅W5の正極合剤層2bの肉薄部3dを長手方向に対して一様に塗布して形成する第1の工程を経て作製される。
【0103】
次いで、この正極合剤塗料が乾燥されたのち、正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dにおける最薄部の厚みよりも厚い所定の厚みにプレスされる第二の工程を経て、正極板4の長手方向に内周側にある正極合剤層2bの肉薄部3dの幅W5が外周側にある正極合剤層2aの肉薄部3cの幅W4よりも広くなるように肉薄部3c,3dが長手方向に対して一様に形成される。
【0104】
また、伸縮促進機能の第15の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図14に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの捲き始めと捲き終わりで薄肉部の幅を変えて形成して構成することで実現できる。
【0105】
具体的な構成の一例としては、図14に示すように正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に捲き始めから順に幅W1>W2>W3である肉薄部3cを、裏面に表面と同位相で捲き始めから順に幅W1>W2>W3である肉薄部3dを捲回方向に対して段階的に形成している。
【0106】
この構成とすることで、E方向に渦巻状に捲回して図20に示す電極群10を構成した際に曲率の違いにより捲き始めの負極板8は捲き終わりの負極板8より曲げ応力が加わる
ことになるが、この捲き始めの負極板8と対極する捲き始めの正極板4に捲き終わりの正極板4よりも幅が広い肉薄部3c,3dを形成したことで電極群10における負極板8の膨張収縮がより効果的に抑制されることになり、正極板4に加わる応力がより効果的に緩和されることになる。
【0107】
この正極板4において正極合剤層2a,2bに肉薄部3c,3dを形成するためには、図14に示すように正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表裏面に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dを捲き始めから順に幅W1>W2>W3で捲回方向に対して段階的に塗布して形成する第1の工程を経て作製される。
【0108】
次いで、この正極合剤塗料が乾燥されたのち、正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dにおける最薄部の厚みよりも厚い所定の厚みにプレスされる第2の工程を経て、正極板4の長手方向に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dが捲回方向に対して段階的に形成される。
【0109】
さらに、伸縮促進機能の第16の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図13に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの外周部と内周部で薄肉部の幅を変えて形成するとともに、図14に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの捲き始めと捲き終わりで薄肉部の幅を変えて形成して構成することで、正極板4の伸縮度と負極板8の伸縮度とを近づけることも同様に可能である。
【0110】
また、伸縮促進機能の第17の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図15に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの外周部と内周部で薄肉部の間隔を変えて形成して構成することで実現できる。
【0111】
具体的な構成の一例としては、図15に示すように正極集電体1の表面に正極合剤層2aの肉薄部3cをP4の間隔で、裏面にP5<P4である間隔P5で正極合剤層2bの肉薄部3dを形成している。
【0112】
この構成とすることで、渦巻状に捲回して電極群を構成した際に曲率の違いにより負極板8における外周側の負極合剤層6aには引張応力が加わり、内周側の負極合剤層6bには圧縮応力が加わることになるが、この外周側にある負極合剤層6bと対極する正極板4の内周側にある正極合剤層2bの肉薄部3dの間隔P5を外周側にある正極合剤層2aの肉薄部3cの間隔P4よりも狭く形成することで負極板8の膨張収縮がより効果的に抑制され正極板4に加わる応力が緩和されることになる。
【0113】
この正極板4において正極合剤層2a,2b肉薄部3c,3dを形成するために、図15に示すように正極集電体1の表面に正極合剤層2aの肉薄部3cをP4の間隔で、裏面にP5<P4である間隔P5で正極合剤層2bの肉薄部3dを塗布して形成する第1の工程を経て作製される。
【0114】
次いで、この正極合剤塗料が乾燥されたのち、正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dにおける最薄部の厚みよりも厚い所定の厚みにプレスされる第2の工程を経て、正極板4の長手方向に内周側にある正極合剤層2bの肉薄部3dの間隔P5が外周側にある正極合剤層2aの肉薄部3cの間隔P4よりも狭くなるように肉薄部3c,3dが形成される。
【0115】
また、伸縮促進機能の第18の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図16に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの捲き始めと捲き終わりで薄肉部の間隔を変えて形成して構成することで実現できる。
【0116】
具体的な構成の一例としては、図16に示すように正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面は正極合剤層2aに肉薄部3cを捲き始めから順に間隔P1<P2<P3の間隔で、裏面は正極合剤層2bの一部に表面と同位相の肉薄部3dを捲き始めから順に間隔P1<P2<P3の間隔で捲回方向に対して段階的に形成している。
【0117】
この構成とすることで、E方向に渦巻状に捲回して図20に示す電極群10を構成した際に曲率の違いにより捲き始めの負極板8は捲き終わりの負極板8より曲げ応力が加わることになるが、この捲き始めの負極板8と対極する捲き始めの正極板4に捲き終わりの正極板4よりも肉薄部3c,3dを狭い間隔で形成したことで電極群10における負極板8の膨張収縮がより効果的に抑制されることになり、正極板4に加わる応力がより効果的に緩和されることになる。
【0118】
この正極板4において正極合剤層2a,2bに肉薄部3c,3dを形成するためには、図16に示すように正極集電体1の長手方向に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dを捲き始めから順に間隔P1<P2<P3の間隔で捲回方向に対して段階的に塗布して形成する第1の工程を経て作製される。
【0119】
次いで、この正極合剤塗料が乾燥されたのち、正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dにおける最薄部の厚みよりも厚い所定の厚みにプレスされる第二の工程を経て、正極板4の長手方向に正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dが捲回方向に対して段階的に形成される。
【0120】
さらに、伸縮促進機能の第19の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図15に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの外周部と内周部で薄肉部の間隔を変えて形成するとともに、図16に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの捲き始めと捲き終わりで薄肉部の間隔を変えて形成して構成することで、正極板4の伸縮度と負極板8の伸縮度とを近づけることも同様に可能である。
【0121】
さらに、伸縮促進機能の第20の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図13に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの外周部と内周部で薄肉部の幅を変えて形成するとともに、図14に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの捲き始めと捲き終わりで薄肉部の幅を変えて形成するか、または図15に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの外周部と内周部で薄肉部の間隔を変えて形成するとともに、図16に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bの捲き始めと捲き終わりで薄肉部の間隔を変えて形成するかのいずれか二つ以上を組み合わせて構成することで、正極板4の伸縮度と負極板8の伸縮度とを近づけることも同様に可能である。
【0122】
具体的な構成の一例としては、図17に示すように正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に捲き始めから順に幅がW1>W2>W3で、かつ間隔がP1<P2<P3である肉薄部3cを、裏面に表面と同位相で捲き始めから順に幅がW1>W2>W3で、かつ間隔がP1<P2<P3である肉薄部3dを捲回方向に対して段階的に形成している。
【0123】
また、伸縮促進機能の第21の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図2に示すように正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bを形成する結着材の硬度を低くして構成することで実現できる。
【0124】
具体的な構成の一例としては、図2に示すように正極板4の結着材に柔軟性を付与し正
極合剤層2a,2bが負極合剤層6a,6bよりも柔軟性を有する構成とすることで、正極板4を伸び易くし正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0125】
また、伸縮促進機能の第22の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図18に示すように正極集電体1または負極集電体5に伸縮促進機能を設けるとともに、正極合剤層2a,2bまたは負極合剤層6a,6bに伸縮促進機能を設けて構成することで実現できる。
【0126】
具体的な構成の一例としては、図18に示すように正極集電体1の破断強度を高めた上で長手方向に対して直交する肉薄部1aを設けることで正極板4を伸び易くするとともに、正極集電体1の表面に等間隔で正極合剤層2aの肉薄部3cを、裏面に表面と同位相かつ等間隔に正極合剤層2bの肉薄部3dを形成することで、正極板4を伸び易くし正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができる。
【0127】
また、伸縮促進機能の第23の構成として、本発明の非水系二次電池用電極板は、図19に示すように伸縮促進機能を設けるとともに、正極板4と負極板5の充放電時の伸縮度が大きい方に伸縮を抑制する伸縮抑制機能を設けて伸縮促進機能を設けて構成することで実現できる。
【0128】
具体的な構成の一例としては、図19に示すように伸縮促進機能として正極集電体1の破断強度を高めた上で長手方向に対して直交する肉薄部1aを設けることで正極板4を伸び易くするとともに、伸縮抑制機能として負極集電体5の長手方向に対して直交する肉厚部5aを設けることで負極板8を伸び難くすることで正極板4の伸縮度C,Dと負極板8の伸縮度A,Bを近づけることができる。
【実施例1】
【0129】
以下、本発明の具体的な一実施例として、正極集電体を伸び易い合金で構成した実施例について図面を参照しながらさらに詳しく説明する。
【0130】
まず、活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを活物質100重量部に対して2重量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0131】
次いで、この正極合剤塗料を図2に示すように厚みが15μmのAl−Fe合金箔(Feの含有率:1.2〜1.7%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0132】
一方、負極の活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100重量部に対して1重量部、および適量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0133】
次いで、この負極合剤塗料を図2に示すようにを厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0134】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0135】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0136】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例1とした。
【0137】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0138】
これは、正極集電体1をAl−Fe合金で構成したことで、正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例2】
【0139】
本発明の一実施例として、正極集電体を熱処理により軟化させて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0140】
まず、図2に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料をあらかじめ熱処理により軟化させた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0141】
一方、図2に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0142】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0143】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解さ
せた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0144】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例2とした。
【0145】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0146】
これは、正極集電体1を熱処理により軟化させたことで、正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例3】
【0147】
本発明の一実施例として、正極集電体の厚みを薄くして構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0148】
まず、図3に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を基準厚みの15μmよりも薄くした厚みT1が10μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0149】
一方、図3に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0150】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0151】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0152】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例3とした。
【0153】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落など
の不具合は認められなかった。
【0154】
これは、正極集電体1の厚みを薄くしたことで、正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例4】
【0155】
本発明の一実施例として、正極集電体の幅を狭くして構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0156】
まず、図4に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、基準幅の56mmよりも狭くした幅W1が54mmとなるようにスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0157】
一方、図4に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、58mm幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0158】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0159】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0160】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例4とした。
【0161】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0162】
これは、正極集電体1の幅を狭くしたことで、正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例5】
【0163】
本発明の一実施例として、正極集電体に長手方向に対して直交する肉薄部を設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0164】
まず、図5に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を長手方向に対して垂直方向に
等間隔で深さが2μmの肉薄部1aを設けた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0165】
一方、図5に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0166】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0167】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0168】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例5とした。
【0169】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0170】
これは、正極集電体1に肉薄部1aを設けたことで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができたことで、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例6】
【0171】
本発明における実施例1〜5の組み合わせの一実施例として、正極集電体を伸び易い合金で構成するとともに、正極集電体に長手方向に対して直交する肉薄部を設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0172】
まず、図5に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を長手方向に対して垂直方向に等間隔で深さが2μmの肉薄部1aを設けた厚みが15μmのAl−Fe合金箔(Feの含有率:1.2〜1.7%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0173】
一方、図5に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0174】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0175】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0176】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例6とした。
【0177】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0178】
これは、正極集電体1を伸び易い合金で構成した効果に加えて、正極集電体1に設けた肉薄部3c,3dの相乗効果により、正極板4をさらに伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例7】
【0179】
本発明の一実施例として、正極集電体に長手方向に対して直交する折り曲げ部を設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0180】
まず、図2に示すように正極集電体1として図6に示すように長手方向に対して直交する折り曲げ部1bを設けた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に実施例1と同様の正極合剤塗料を塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0181】
一方、図2に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0182】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0183】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に
所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0184】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例7とした。
【0185】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0186】
これは、正極集電体1に折り曲げ部1bを設けたことで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができたことで、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例8】
【0187】
本発明の一実施例として、正極集電体の幅方向の両端部に長手方向に対して直交する切込み部を設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0188】
まず、図2に示すように正極集電体1として図7に示すように幅方向の両端部に長手方向に対して直交する切込み部1cを設けた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に実施例1と同様の正極合剤塗料を塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0189】
一方、図2に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0190】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0191】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0192】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例8とした。
【0193】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10
を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0194】
これは、正極集電体1の幅方向の両端部に長手方向に対して直交する切込み部1cを設けたことで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができたことで、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例9】
【0195】
本発明の一実施例として、正極集電体の長手方向に対して直交する切込み部を幅方向に断続的に設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0196】
まず、図2に示すように正極集電体1として図8に示すように長手方向に対して直交する切込み部1cを幅方向に断続的に設けた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に実施例1と同様の正極合剤塗料を塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0197】
一方、図2に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0198】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0199】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0200】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例9とした。
【0201】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0202】
これは、正極集電体1の長手方向に対して直交する切込み部1cを幅方向に断続的に設けたことで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができたことで、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例10】
【0203】
本発明の一実施例として、正極集電体の長手方向に対して直交する千鳥状の切込みを設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0204】
まず、図2に示すように正極集電体1として図9に示すように長手方向に対して直交する千鳥状に配列されたくの字の切込み1dを設けた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に実施例1と同様の正極合剤塗料を塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0205】
一方、図2に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0206】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0207】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0208】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例10とした。
【0209】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0210】
これは、正極集電体1の長手方向に対して直交する千鳥状の切込み1dを設けたことで正極板4を伸び易くし、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度に近づけることができたことで、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【0211】
なお、実施例10においては千鳥状の切込み1dとして千鳥状に配列されたくの字の切込み1dを形成したが、この形状に限定されるものではなく、千鳥状に配列された別形状の切込みを形成することも同様に可能である。
【実施例11】
【0212】
本発明の一実施例として、正極集電体に長手方向に対して直交する折り曲げ部を設けるとともに、幅方向の両端部に長手方向に対して直交する切込み部を設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0213】
まず、図2に示すように正極集電体1として図10に示すように長手方向に対して直交する折り曲げ部1aを設けるとともに、幅方向の両端部に長手方向に対して直交する切込み部1cを設けた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に実施例1と同様の正極合剤塗料を塗布し乾燥させた後にプレスして片面
側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0214】
一方、図2に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0215】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0216】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0217】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例11とした。
【0218】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0219】
これは、正極集電体1に折り曲げ部1aを設けたことで正極板4を伸び易くした効果に加えて、正極集電体1の幅方向の両端部に長手方向に対して直交する切込み部1cを設けたことで正極板4を伸び易くした相乗効果によって、正極板4の伸縮度を負極板8の伸縮度により効果的に近づけることができたことで、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例12】
【0220】
本発明の一実施例として、正極集電体の表面と裏面に長手方向に対して直交する正極合剤層の肉薄部を同位相で設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0221】
まず、図11に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に幅が5mmの肉薄部3cを等間隔で、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に表面と同位相で幅が5mmの肉薄部3dを等間隔で長手方向に対して一様に設けて塗布し、乾燥させた後に片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの厚みが65μmとなる正極板4を作製した。
【0222】
次いで、この正極板4を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが75μmで、かつ表面に幅が5mmで厚みが65μmの正極合剤層2aの肉薄部3cを、また裏面に表面と同位相に幅が5mmで厚みが65μmの
正極合剤層2bの肉薄部3dを長手方向に対して一様に形成した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0223】
一方、図11に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0224】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介してE方向に渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0225】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0226】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例12とした。
【0227】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0228】
これは、正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に正極合剤層2aの厚みが薄い箇所3c、裏面に表面と同幅かつ同位相の正極合剤層2bの厚みが薄い箇所3dを長手方向に対して形成したことで、リチウムをインターカレーションした際における負極板8の膨張およびリチウムをデインターカレーションした際における負極板8の収縮による体積変化を緩和することができたために、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例13】
【0229】
本発明の一実施例として、正極集電体の表面と裏面に長手方向に対して直交する正極合剤層の肉薄部を異位相で設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0230】
まず、図12に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に幅が5mmの肉薄部3cを等間隔で、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に表面と位相が1/2ずれた幅が5mmの肉薄部3dを等間隔で長手方向に対して一様に設けて塗布し、乾燥させた後に片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの厚みが65μmとなる正極板4を作製した。
【0231】
次いで、この正極板4を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが75μmで、かつ表面に幅が5mmで厚みが65μmの正極合剤層2aの肉薄部3cを、また裏面に表面と位相が1/2ずれた幅が5mmで厚みが
65μmの正極合剤層2bの肉薄部3dを長手方向に対して一様に形成した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0232】
一方、図12に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0233】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介してE方向に渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0234】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0235】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例13とした。
【0236】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0237】
これは、正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に正極合剤層2aの肉薄部3c、裏面に表面と同幅かつ異位相の正極合剤層2bの肉薄部3dを長手方向に対して形成したことで、リチウムをインターカレーションした際における負極板8の膨張およびリチウムをデインターカレーションした際における負極板8の収縮による体積変化を緩和することができたために、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例14】
【0238】
本発明の一実施例として、捲回した電極群における正極板の内周側にある正極合剤層の肉薄部の幅を外周側にある正極合剤層の肉薄部の幅よりも広くした実施例について図面を参照しながら説明する。
【0239】
まず、図13に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に幅W4が5mmの正極合剤層2aの肉薄部3cを等間隔で、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に表面と同位相で幅W5が6mmの正極合剤層2bの肉薄部3dを等間隔で設けて塗布し、乾燥させた後に片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの厚みが75μmとなる正極板4を作製した。
【0240】
次いで、この正極板4を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが75μmで、かつ表面に幅が5mmの正極合剤層2aの肉
薄部3cを、また裏面に表面と同位相で幅が6mmの正極合剤層2bの肉薄部3dを形成した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0241】
一方、図13に示したように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0242】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介してE方向に渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0243】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0244】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例14とした。
【0245】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0246】
これは、正極集電体1の表面に幅W4の正極合剤層2aの厚みが薄い箇所3cを、裏面にW5>W4である幅W5の正極合剤層2bの厚みが薄い箇所3dを長手方向に対して一様に形成したことで、電極群10を構成した際に内周側にある正極合剤層2bと外周側にある正極合剤層2aとの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和することができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【0247】
なお、実施例14においては表面の正極合剤層2aの厚みが薄い箇所3cと裏面の正極合剤層2bの厚みが薄い箇所3dを同位相で形成したが、正極板4の表裏面で位相をずらせて厚みが薄い箇所3c,3dを形成することも同様に可能である。
【実施例15】
【0248】
本発明の一実施例として、正極合剤層の肉薄部の幅を捲回方向に対して段階的に狭くした実施例について図面を参照しながら説明する。
【0249】
まず、図14に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に捲き始めからW1=5mm>W2=4.5mm>W3=4.0mmと順次幅を狭くした正極合剤層2aの肉薄部3cを等間隔で、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に表面と同位相で捲き始めからW1=5mm>W2=4.5mm>W3=4.0mmと順次幅を狭くした正極合剤層2bの肉薄部3dを等間隔で捲回方向に対して段
階的に設けて塗布し乾燥させた後に片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2a,2bの肉薄部3a,3bの厚みが75μmとなる正極板4を作製した。
【0250】
次いで、この正極板4を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが75μmで、かつ表面にW1=5mm>W2=4.5mm>W3=4.0mmの正極合剤層2aの肉薄部3cを、また裏面に表面と同位相でW1=5mm>W2=4.5mm>W3=4.0mmの正極合剤層2bの肉薄部3dを捲回方向に対して段階的に形成した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0251】
一方、図14に示したように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cu:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0252】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介してE方向に渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0253】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0254】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例15とした。
【0255】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0256】
これは、正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に捲き始めから順次幅を狭くした厚みが薄い箇所3cを等間隔で、また裏面に表面と同位相で捲き始めから順次幅を狭くした厚みが薄い箇所3dを等間隔で捲回方向に対して段階的に形成したことで、電極群10における巻き始めの正極合剤層2a,2bと捲き終わりの正極合剤層2a,2bとの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和することができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【0257】
なお、実施例15においては表面の正極合剤層2aの厚みが薄い箇所3cと裏面の正極合剤層2bの厚みが薄い箇所3dを同位相で形成したが、正極板4の表裏面で位相をずらせて厚みが薄い箇所3c,3dを形成することも同様に可能である。
【0258】
また、本発明の別の一実施例として、実施例14で示したように捲回した電極群10における正極板4の内周側にある正極合剤層2bの肉薄部3dの幅W5を外周側にある正極
合剤層2aの肉薄部3cの幅W4よりも広くするとともに、実施例15で示したように正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの幅を捲回方向に対してW1>W2>W3と段階的に狭くすることも同様に可能であり、これにより内周側にある正極合剤層2bと外周側にある正極合剤層2aとの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和する効果に加えて、巻き始めの正極合剤層2a,2bと捲き終わりの正極合剤層2a,2bとの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和する相乗効果を発揮することでより効果的に正極板4の伸縮度と負極板8の伸縮度とを近づけることができる。
【実施例16】
【0259】
本発明の一実施例として、捲回した電極群における正極板の内周側にある正極合剤層の肉薄部の間隔を外周側にある正極合剤層の肉薄部の間隔よりも狭くした実施例について図面を参照しながら説明する。
【0260】
まず、図15に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に幅が5mmの正極合剤層2aの肉薄部3cを30mmの間隔P4で、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に幅が5mmの正極合剤層2bの肉薄部3dを15mmの間隔P5で設けて塗布し、乾燥させた後に片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの厚みが75μmとなる正極板4を作製した。
【0261】
次いで、この正極板4を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが75μmで、かつ表面に幅が5mmの正極合剤層2aの肉薄部3cを30mmの間隔P4で、また裏面に幅が5mmの正極合剤層2bの肉薄部3dを15mmの間隔P5で形成した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0262】
一方、図15に示したように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフ間隔銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0263】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介してE方向に渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0264】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC、DMC、MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0265】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例16とした。
【0266】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り
返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0267】
これは、正極集電体1の表面に正極合剤層2aの肉薄部3cをP4の間隔で、裏面にP5<P4である間隔P5で正極合剤層2bの肉薄部3dを長手方向に対して一様に形成したことで、電極群10を構成した際に内周側にある正極合剤層2bと外周側にある正極合剤層2aとの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和することができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【0268】
なお、実施例16においては表面の正極合剤層2aの厚みが薄い箇所3cと裏面の正極合剤層2bの厚みが薄い箇所3dを同じ幅で形成したが、表裏面または同一面の長手方向で幅を変えることも同様に可能である。
【実施例17】
【0269】
本発明の一実施例として、正極合剤層の肉薄部の間隔を捲回方向に対して段階的に広くした実施例について図面を参照しながら説明する。
【0270】
まず、図16に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に幅が5mmの正極合剤層2aの肉薄部3cを捲き始めからP1=20mm<P2=30mm<P3=40mmの間隔で、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に表面と同位相で幅が5mmの正極合剤層2bの肉薄部3dを捲き始めからP1=20mm<P2=30mm<P3=40mmの間隔で設けて捲回方向に対して段階的に塗布し、乾燥させた後に片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの厚みが75μmとなる正極板4を作製した。
【0271】
次いで、この正極板4を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが75μmで、かつ表面に幅が5mmの正極合剤層2aの肉薄部3cをP1=20mm<P2=30mm<P3=40mmの間隔で、また裏面に表面と同位相で幅が5mmの正極合剤層2bの肉薄部3dをP1=20mm<P2=30mm<P3=40mmの間隔で捲回方向に対して段階的に形成した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0272】
一方、図16に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0273】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介してE方向に渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0274】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0275】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例17とした。
【0276】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0277】
これは、正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に肉薄部3cを捲き始めから順次間隔を広くして、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に表面と同位相で肉薄部3dを捲き始めから順次間隔を広くし捲回方向に対して段階的に形成したことで、電極群10における巻き始めの正極合剤層2a,2bと捲き終わりの正極合剤層2a,2bとの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和することができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【0278】
なお、実施例17においては表面の正極合剤層2aの肉薄部3cと裏面の正極合剤層2bの肉薄部3dを同位相で形成したが、正極板4の表裏面で位相をずらせて肉薄部3c,3dを形成することも同様に可能である。
【0279】
また、本発明の別の一実施例として、実施例16で示したように捲回した電極群10における正極板4の内周側にある正極合剤層2bの肉薄部3dの間隔P5を外周側にある正極合剤層2aの肉薄部2cの間隔P4よりも狭くするとともに、実施例17で示したように正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの間隔を捲回方向に対してP1<P2<P3と段階的に広くすることも同様に可能であり、これにより内周側にある正極合剤層2bと外周側にある正極合剤層2aとの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和する効果に加えて、巻き始めの正極合剤層2a,2bと捲き終わりの正極合剤層2a,2bとの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和する相乗効果を発揮することでより効果的に正極板4の伸縮度と負極板8の伸縮度とを近づけることができる。
【実施例18】
【0280】
本発明の一実施例として、正極合剤層の肉薄部の幅を捲回方向に対して段階的に狭くするとともに、正極合剤層の肉薄部の間隔を捲回方向に対して段階的に広くした実施例について図面を参照しながら説明する。
【0281】
まず、図17に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に捲き始めからW1=5mm>W2=4.5mm>W3=4.0mmと順次幅を狭くした正極合剤層2aの肉薄部3cを捲き始めからP1=20mm<P2=30mm<P3=40mmの間隔で、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に表面と同位相で捲き始めからW1=5mm>W2=4.5mm>W3=4.0mmと順次幅を狭くした正極合剤層2bの肉薄部3dを捲き始めからP1=20mm<P2=30mm<P3=40mmの間隔で捲回方向に対して段階的に設けて塗布し乾燥させた後に片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2a,2bの肉薄部3a,3bの厚みが75μmとなる正極板4を作製した。
【0282】
次いで、この正極板4を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが75μmで、かつ表面にW1=5mm>W2=4.5mm>W3=4.0mmの正極合剤層2aの肉薄部3cをP1=20mm<P2=30mm<
P3=40mmの間隔で、また裏面に表面と同位相でW1=5mm>W2=4.5mm>W3=4.0mmの正極合剤層2bの肉薄部3dをP1=20mm<P2=30mm<P3=40mmの間隔で捲回方向に対して段階的に形成した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0283】
一方、図17に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0284】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介してE方向に渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0285】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0286】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例18とした。
【0287】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0288】
これは、正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの幅を変えたことによる電極群10における巻き始めと捲き終わりの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和する効果に加えて、正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの間隔を変えたことによる電極群10における巻き始めと捲き終わりの曲率の差に起因した膨張収縮に伴う応力差を緩和する相乗効果によって、膨張収縮に伴う応力差をより効果的に緩和することができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例19】
【0289】
本発明の一実施例として、正極合剤層が負極合剤層よりも柔軟性を有する構成となるように形成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0290】
まず、活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2重量部、結着材として2―エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とアクリロニトリルの共重合体の水分散物(固形分40重量%)を活物質100重量部に対して5重量部(結着材の固形分換算で2重量部)、増粘剤Dとして1重量%水溶液のカルボキシメチルセルロースを40重量部(CMCの固形分換算で0.4重量部)とを適量の水と共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0291】
次いで、この正極合剤塗料を図2に示したように厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0292】
一方、図2に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0293】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0294】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0295】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例19とした。
【0296】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0297】
これは、正極板4の結着材に上述した2―エチルヘキシルアクリレートとアクリル酸とアクリロニトリルの共重合体などのゴム系バインダを用いることで柔軟性を付与し正極合剤層2a,2bが負極合剤層6a,6bよりも柔軟性を有する構成としたことで、正極板4を伸び易くし正極板4の伸縮度C,Dを負極板8の伸縮度A,Bに近づけることができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例20】
【0298】
本発明の一実施例として、正極集電体に長手方向に対して直交する肉薄部を設けるとともに、正極集電体の表面と裏面に長手方向に対して直交する正極合剤層の肉薄部を同位相で設けて構成した実施例について図面を参照しながら説明する。
【0299】
まず、図18に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を長手方向に対して垂直方向に等間隔で深さが2μmの肉薄部1aを設けた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の表面に幅が5mmの肉薄部3cを等間隔で、また正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の裏面に表面と同位相で幅が5mmの肉薄部3dを等間隔で長手方向に対して一様に設けて塗布し乾燥させた後に片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dの厚みが65μmとなる正極板4を作製した。
【0300】
次いで、この正極板4を総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面側の正極合剤層2a,2bの厚みが75μmで、かつ表面に幅が5mmで厚みが65μmの正極合剤層2aの肉薄部3cを、また裏面に表面と同位相に幅が5mmで厚みが65μmの正極合剤層2bの肉薄部3dを長手方向に対して一様に形成した。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0301】
一方、図18に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0302】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介してE方向に渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0303】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0304】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例20とした。
【0305】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0306】
これは、正極集電体1に長手方向に対して直交する肉薄部1aを設けたことで正極板4を伸び易くした効果に加えて、正極集電体1の表面と裏面に長手方向に対して直交する正極合剤層2a,2bの肉薄部3c,3dを同位相で設けた相乗効果によって、膨張収縮に伴う応力差をより効果的に緩和することができ、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【実施例21】
【0307】
本発明の一実施例として、正極集電体に長手方向に対して直交する肉薄部を設けるとともに、負極集電体に長手方向に対して直交する肉厚部を設ける構成とした実施例について図面を参照しながら説明する。
【0308】
まず、図19に示すように実施例1と同様の正極合剤塗料を長手方向に対して垂直方向に等間隔で深さが2μmの肉薄部1aを設けた厚みが15μmのアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0309】
一方、図19に示すように実施例1と同様の負極合剤塗料を長手方向に対して垂直方向
に等間隔で高さが1μmの肉厚部5aを有する厚みが10μmの無酸素銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、円筒形電池の規定されている幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0310】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を100個作製した。
【0311】
この電極群10を有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0312】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を実施例21とした。
【0313】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【0314】
これは、正極集電体1に長手方向に対して直交する肉厚部1aを設けたことで正極板1を伸び易くするとともに、負極集電体5に長手方向に対して直交する肉厚部5aを設けたことで負極板8を伸び難くし、負極板8の伸縮度を正極板4の伸縮度に近づけることができたことで、良好な電池特性を維持できたものと考えられる。
【0315】
なお、実施例21においては電極板の伸縮を抑制するための伸縮抑制機能として、負極集電体5に長手方向に対して直交する肉厚部5aを設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば負極集電体5を伸縮度の小さな合金で構成するか、または負極合剤層6a,6bの厚みを厚くして負極板8を伸び難くすることも同様に可能である。
【0316】
(比較例1)
まず、図20に示したように実施例1と同様の正極合剤塗料を厚みが15μm(基準厚み)のアルミニウム箔(Alの純度:99.85%)からなる正極集電体1に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の正極合剤層2a,2bの厚みを75μmとした。その後、56mmの幅(基準幅)にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0317】
次いで、図20に示したように実施例1と同様の負極合剤塗料を厚みが10μmのタフピッチ銅箔(Cuの純度:99.9%)からなる負極集電体5に塗布し乾燥させた後にプレスして片面側の負極合剤層6a,6bの厚みを85μmとした。その後、58mm幅(基準幅)にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0318】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを用いて、図21に示すような円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。より具体的には、正極板4と負極板8とを厚みが20μmのポリエチレン微多孔フィルムのセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電
極群10を100個作製した。
【0319】
この電極群10の中から10個を抜き出し有底円筒形の電池ケース11の内部に絶縁板12と共に収容し、電極群10の下部より導出した負極リード13を電池ケース11の底部に接続した。
【0320】
次いで、電極群10の上部より導出した正極リード14を封口板15に接続し、電池ケース11に所定量のEC,DMC,MEC混合溶媒にLiPFを1MとVCを3重量部だけ溶解させた非水系電解液(図示せず)を注液した。
【0321】
その後、電池ケース11の開口部に封口ガスケット16を周縁に取り付けた封口板15を挿入し、電池ケース11の開口部を内方向に折り曲げて、かしめ封口することにより作製した円筒形のリチウムイオン二次電池17を比較例1とした。
【0322】
上述のようにして作製した100個のリチウムイオン二次電池17の充放電を500サイクル繰り返した結果、100個のうち4個にサイクル劣化が認められた。そこで、この4個のリチウムイオン二次電池を解体したところ、正極板4が破断したものが1個、負極板8が挫屈したものが3個であった。
【0323】
上記比較例1のリチウムイオン二次電池17においては、充放電時の負極合剤層6a,6bの膨張収縮による負極板8の伸縮度A,Bに対して正極板4の伸縮度C,Dが追従できなかったために、正極板4の破断および負極板8の挫屈が発生したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0324】
本発明に係る非水系二次電池は、正極板と負極板の充放電時の伸縮度を互いに近くなるように構成したことにより、充放電時における正極板と負極板の膨張収縮による伸縮度の差に起因した正極板あるいは負極板に加わる応力を緩和することができ、電極板の破断または挫屈を抑制することが可能であり、これらに起因した内部短絡を抑制し安全性の高い非水系二次電池を提供することが可能であるため電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0325】
【図1】本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における捲回後の電極群の要部を示す非水系二次電池用の電極群の要部を示す部分断面図
【図2】本発明の一実施の形態に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図3】本発明の一実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図4】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図5】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図6】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における集電体を示す斜視図
【図7】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における集電体を示す斜視図
【図8】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における集電体を示す斜視図
【図9】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における集電体を示す斜視図
【図10】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における集電体を示す斜視図
【図11】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図12】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図13】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図14】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図15】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図16】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図17】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図18】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図19】本発明の別の実施例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図20】本発明の比較例に係る非水系二次電池における捲回前の電極群の要部を示す斜視図
【図21】本発明の一実施の形態に係る円筒形二次電池の一部切欠斜視図
【図22】(a)従来例における非水系二次電池用の電極群の要部を示す部分断面図、(b)従来例における非水系二次電池において電極板の破断が発生した場合の電極群の要部を示す部分断面図、(c)従来例における非水系二次電池において電極群の挫屈が発生した場合の電極群の要部を示す部分断面図
【図23】従来例における非水系二次電池の断面図
【図24】従来例における非水系二次電池の断面図
【符号の説明】
【0326】
1 正極集電体
1a 正極集電体の肉薄部
1b 正極集電体の折り曲げ部
1c,1d 正極集電体の切込み部
2a,2b 正極合剤層
3a,3b 露出部
3c,3d 厚みが薄い箇所
4 正極板
5 負極集電体
5a 負極集電体の肉厚部
6a,6b 負極合剤層
8 負極板
9 セパレータ
10 電極群
11 電池ケース
12 絶縁板
13 負極リード
14 正極リード
15 封口板
16 封口ガスケット
17 リチウムイオン二次電池
A,B 負極板の伸縮度
C,D 正極板の伸縮度
E 電極群の捲回方向
P1,P2,P3,P4,P5 厚みが薄い箇所の間隔
W1,W2,W3,W4,W5 厚みが薄い箇所の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布し正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質および結着材を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に塗布し負極合剤層を形成した負極板との間にセパレータを介在させ捲回または積層して構成した電極群を非水系電解液とともに電池ケースに封入した非水系二次電池であって、前記正極板と負極板の充放電時の伸縮度が小さい方に伸縮を促進する伸縮促進機能を設けた構成としたことを特徴とする非水系二次電池。
【請求項2】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に設けたことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。
【請求項3】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体を伸縮度の大きい合金を用いて構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項4】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体を調質処理により軟化させて構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項5】
前記伸縮抑制機能を正極集電体または負極集電体の厚みを薄くして構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項6】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体の幅を狭くして構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項7】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に長手方向に対して直交する肉薄部を設けて構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項8】
前記伸縮抑制機機能を正極集電体または負極集電体を伸縮度の大きい合金で構成する、または調質処理により軟化する、または厚みを薄くする、または幅を狭くする、または長手方向に対して直交する肉薄部を設けるかのいずれか二つ以上を組み合わせて構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項9】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に長手方向に対して直交する折り曲げ部を設けて構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項10】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に長手方向に対して直交する切込み部を設けて構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項11】
前記切込み部を正極集電体または負極集電体の幅方向の両端部に設けたことを特徴とする請求項10に記載の非水系二次電池。
【請求項12】
前記切込み部を正極集電体または負極集電体の幅方向に断続的に設けたことを特徴とする請求項10に記載の非水系二次電池。
【請求項13】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に千鳥状の切込みを設けて構成したことを特徴とする請求項10に記載の非水系二次電池。
【請求項14】
前記伸縮促進機能を前記折り曲げ部と前記切込み部を組み合わせて構成したことを特徴とする請求項2に記載の非水系二次電池。
【請求項15】
前記伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層に伸縮促進部を設けて構成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。
【請求項16】
前記伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層の表面または裏面の少なくともいずれか一方の面に長手方向に対して直交する肉薄部を少なくとも一箇所以上に形成して構成したことを特徴とする請求項15に記載の非水系二次電池。
【請求項17】
前記伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層の表面と裏面に長手方向に対して直交する肉薄部を同位相となるように形成して構成したことを特徴とする請求項16に記載の非水系二次電池。
【請求項18】
前記伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層の表面と裏面に長手方向に対して直交する肉薄部を異位相となるように形成して構成したことを特徴とする請求項16に記載の非水系二次電池。
【請求項19】
前記伸縮促進機能としての肉薄部を前記正極合剤層または負極合剤層に幅を変えて形成したことを特徴とする請求項16に記載の非水系二次電池。
【請求項20】
前記肉薄部を正極合剤層または負極合剤層の外周側と内周側で幅を変えて形成したことを特徴とする請求項19に記載の非水系二次電池。
【請求項21】
前記肉薄部を正極合剤層または負極合剤層の巻き始め側と巻き終わり側で幅を変えて形成したことを特徴とする請求項19に記載の非水系二次電池。
【請求項22】
前記肉薄部を外周側と内周側の幅と前記巻き始め側と巻き終わり側の幅を変えて形成したことを特徴とする請求項19に記載の非水系二次電池。
【請求項23】
前記肉薄部を正極合剤層または負極合剤層に間隔を変えて形成したことを特徴とする請求項16に記載の非水系二次電池。
【請求項24】
前記肉薄部を正極合剤層または負極合剤層の外周側と内周側で間隔を変えて形成したことを特徴とする請求項23に記載の非水系二次電池。
【請求項25】
前記肉薄部を正極合剤層または負極合剤層の巻き始め側と巻き終わり側で間隔を変えて形成したことを特徴とする請求項23に記載の非水系二次電池。
【請求項26】
前記肉薄部を外周側と内周側の間隔と巻き始め側と巻き終わり側の間隔を変えて形成したことを特徴とする請求項23に記載の非水系二次電池。
【請求項27】
前記肉薄部を正極合剤層または負極合剤層に幅を変えるとともに、正極合剤層または負極合剤層に間隔を変えて形成したことを特徴とする請求項16に記載の非水系二次電池。
【請求項28】
前記伸縮促進機能を正極合剤層または負極合剤層を形成する結着材の硬度を低くして構成したことを特徴とする請求項15に記載の非水系二次電池。
【請求項29】
前記伸縮促進機能を正極集電体または負極集電体に設けるとともに、正極合剤層または負極合剤層に設けて構成したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。
【請求項30】
前記伸縮促進機能を設けるとともに、前記正極板と負極板の充放電時の伸縮度が大きい
方に伸縮を抑制する伸縮抑制機能を設けたことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−61940(P2010−61940A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225525(P2008−225525)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】