説明

非水電解質二次電池の製造装置および製造方法

【課題】薄い長尺な被加工材料を加速、減速、停止を繰り返して加工する場合でも、加工済み被加工材料を一定の張力で巻き取ることができる製造装置、製造方法を提供する。
【解決手段】製造装置は、厚さ0.2mm以下の長尺な被加工材料を一定速度で連続して繰り出す送り出し装置40と、送り出された被加工材料を所定距離だけ間欠的に移動させ、被加工材料に加工を施す加工装置44と、加工装置から送り出された被加工材料を一定速度で連続して巻取る巻取り装置42と、被加工材料の長さ方向の張力が10N/m以下となる部分が生じるように被加工材料をガイドするガイド部71と、被加工材料の張力を所定の張力まで増大する張力増加装置68と、を備え、張力増加装置は、被加工材料を搬送する1本以上のローラ72を備え、ローラの表面と被加工材料の表面との摩擦係数が0.2以上、合成面粗さが1.8μm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、非水電解質二次電池の製造装置および製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド電気自動車用の電源、また太陽光や風力などの自然エネルギーを使った発電機用の蓄電装置として、非水電解質二次電池が注目されている。これらの用途では、負荷や発電量の時間変化が激しいため、瞬時に大電流を蓄えたり放出したりする能力の高い二次電池、すなわち、大電流特性の高い二次電池が要求される。
【0003】
大電流特性の高い二次電池は、大電流を流した時にも電圧の低下をできるだけ少なくするために、電池内部の電気抵抗をできるだけ小さくする必要がある。
【0004】
電池内部の電気抵抗を小さくするためには、電流が集中する部分である電極と外部端子とをつなぐ電極タブの断面積を大きくすることが有効である。そこで、例えばハイブリッド電気自動車用にも用いられるような大電流を放出できる二次電池では、電極を構成する集電箔の端部から複数のタブが突出するように集電箔を打抜き加工し、これらのタブを重ねて束ねることにより、断面積の大きな電極タブを構成し、電極タブの電気抵抗を下げる技術がある。
【0005】
電極は、捲回するに従って周長が長くなる。そのため、タブの間隔が一定になるように電極を加工すると、電極を捲回した際にタブの位置が重ならず、捲回した電極コイルの端からタブがばらばらに突出してしまう。捲回してもタブが一定の位置に揃うようにするためには、タブの間隔を周長の増加にあわせて少しずつ増加させる必要がある。
【0006】
ここで、集電箔からタブを一定の間隔で打ち抜く場合、例えば、円柱の側面に電極タブの形状に合わせた刃を形成あるいは貼り付け、この円柱を回転させながら集電箔を刃で打ち抜くことにより、タブを加工することができる。この時、円柱の回転速度は一定で良い。
【0007】
一方、タブの間隔を捲回する電極コイルの周長の増加にあわせて徐々に増加する場合、間隔を少しずつずらしながらタブを1本ずつ加工する必要がある。例えば、タブが形成される電極の表面に対して垂直な方向に動作するプレス装置に刃を取り付け、その刃でタブを打抜き、打ち抜いた後は電極をある間隔移動して停止し、停止した直後にプレス装置が動作して次のタブを打抜き加工し、更に、一つ前よりも長い距離だめ電極を移動させて停止し、プレス装置が動作して次のタブを打抜き加工する。これを、二次電池の捲回コイルの長さ分だけ繰り返した後、今度は最初の間隔だけ電極を移動させて停止し、プレス装置が動作してタブの打抜き加工する。これを、次々繰り返すことが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−87721号公報
【特許文献2】特開2006−139919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このような電極の間欠的な移動、停止、加工を繰り返すと、次のような問題が生じる。即ち、電極が加速−減速−停止を繰り返すために、電極に加わる張力が一定ではなくなってしまう。その結果、張力が一定ではない電極を巻き取ることになり、この場合、電極の捲き崩れることが発生する。捲き崩れが生じた電極は、次の加工工程で破断等の問題を引き起こす。
【0010】
本出願は上記の点に鑑みなされたもので、その目的は、薄い長尺な被加工材料を加速−減速−停止を繰り返して加工する場合でも、加工済みの被加工材料を一定の張力で巻き取ることができる製造装置および製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態によれば、製造装置は、ロール状に巻き取られた厚さ0.2mm以下の帯状の長尺な被加工材料を一定の速度で連続して送り出す送り出し装置と、前記送り出された被加工材料を所定距離だけ間欠的に移動させ、停止している間に前記被加工材料に加工を施す加工装置と、前記加工装置から送り出された前記被加工材料を一定の速度で連続して巻き取る巻取り装置と、前記加工装置と巻取り装置との間で、前記被加工材料の長さ方向の張力が10N/m以下となる部分が生じるように前記被加工材料をガイドするガイド部と、前記ガイド部と前記巻取り装置の間に設けられ、前記ガイド部から送られた前記被加工材料に長さ方向の張力を印加し、前記被加工材料の張力を所定の張力まで増大する張力増加装置と、を備え、
前記被加工材料は、前記送り出し装置から前記加工装置を通して前記巻取り装置まで、分断されることなく連続して送られ、
前記張力増加装置は、前記被加工材料と接して被加工材料を搬送する1本以上のローラを備え、前記ローラの表面と前記被加工材料の表面との摩擦係数が0.2以上であり、前記ローラと前記被加工材料の合成面粗さが1.8μm以上であり、
前記合成面粗さは、σr:ローラーラー表面の自乗平均平方根粗さ、σw :箔表面の自乗平均平方根粗さとすると、
【数1】

【0012】
で示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態に係る製造装置全体を概略的に示す図。
【図2】図2は、前記製造装置における打ち抜き装置を示す平面図。
【図3】図3は、前記製造装置の加工対象となる電極を備えた非水電解質二次電池の一例を示す斜視図。
【図4】図4は、前記非水電解質二次電池の電極体を一部展開して示す斜視図。
【図5】図5は、前記電極体を構成する正極、負極、セパレータをそれぞれ示す平面。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0015】
図1は、実施形態に係る製造装置全体を示し、図2は、製造装置の打ち抜き装置を示している。製造装置は、薄い帯状の長尺な被加工材料を加工して巻き取る装置であり、本実施形態では、例えば、二次電池の電極を被加工材料としている。
なお、各図は、実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の二次電池と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0016】
初めに、被加工材料となる電極を備えた非水二次電池の一例を説明する。図3に示すように、非水電解質二次電池は、例えば、リチウムイオン電池等の薄型の二次電池10として構成されている。この二次電池10は、外装部材として、扁平な矩形箱状の金属容器12を有し、その内部に、非水電解液と共に捲回型の電極体14が収納されている。金属容器12は、上端が開口した容器本体12aと、容器本体に固定され開口を閉塞した板状の蓋体12bとを有している。蓋体12bには、正極端子16aおよび負極端子16bが取り付けられ、外部に突出している。これらの正極端子16aおよび負極端子16bは、電極体14を構成する正極および負極にそれぞれ接続されている。
【0017】
図4および図5に示すように、電極体14は、帯状の正極18、帯状の負極20、および帯状のセパレータ22を有し、正極18と負極20とを、セパレータ22を挟んで重ね合わせ、これらを渦巻状に捲回した後、扁平な矩形状に成形されている。
【0018】
図5(a)に示すように、正極18は、アルミニウム等で形成された厚さ0.2mm以下の金属箔からなる帯状の正極集電体18aと、正極集電体18aの両面全体に担持された正極活物質層18bとを有している。正極集電体18aは、その長手方向に沿って延びる両側縁24a、24bを有している。正極18は、それぞれ正極集電体18aの一方の側縁24aから、この側縁に対してほぼ垂直に突出した複数の集電用の正極タブ18cを有している。各正極タブ18cは、正極集電体18aと同一材料により正極集電体と一体に成形され、切れ目や繋ぎ目なく正極集電体から延出している。
【0019】
複数の正極タブ18cは、正極集電体18aの長手方向に沿って所定の間隔、例えば、不等間隔(不等ピッチ)を置いて設けられている。正極タブ18c間の間隔d1、d2、d3、…は、徐々に広くなるように形成され、例えば、d1を100mm、d2を101mm、d2を102mmと、1mmずつ大きくなるように形成されている。
なお、複数の正極タブ18c間の間隔は、不等間隔に限らず、一定の間隔とすることも可能である。
【0020】
上記構成の正極18は、以下の工程により作られる。幅広のアルミニウム箔からなる帯状の正極集電体の両面に正極活物質層を塗工した後、正極活物質層を乾燥させ、更に、正極集電体および正極活物質層を所望の厚さに圧延する。続いて、後述する製造装置により、正極活物質層が形成された正極集電体をその長手方向に所定距離だけ間欠的に送りながら、打ちぬき型により、正極集電体の側縁部を所望の形状に打ち抜くことにより、複数の正極タブを切り出す。この際、正極活物質層が形成された正極集電体の送り量を順次増加させることにより、複数の正極タブを不等間隔で形成する。
【0021】
図3(c)に示すように、負極20は、銅やアルミニウム等により形成された厚さ0.2mm以下の金属箔からなる帯状の負極集電体20aと、負極集電体20aの両面全体に担持された負極活物質層20bとを有している。負極集電体20aは、その長手方向に沿って延びた両側縁28a、28bを有している。なお、負極集電体20aおよび負極活物質層20bの幅は、正極集電体18aおよび正極活物質層18bの幅よりも僅かに小さく形成されている。
【0022】
負極20は、それぞれ負極集電体20aの一方の側縁28aから、この側縁に対してほぼ垂直に突出した複数の集電用の負極タブ20cを有している。各負極タブ20cは、負極集電体20aと同一材料により正極集電体と一体に成形され、切れ目や繋ぎ目なく正極集電体から延出している。
【0023】
複数の負極タブ20cは、負極集電体20aの長手方向に沿って所定の間隔、例えば、不等間隔(不等ピッチ)を置いて設けられている。負極タブ20c間の間隔e1、e2、e3、…は、徐々に広くなるように形成され、例えば、e1を100mm、e2を101mm、e2を102mmと、1mmずつ大きくなるように形成されている。
なお、複数の負極タブ20c間の間隔は、不等間隔に限らず、一定の間隔とすることも可能である。
【0024】
上記構成の負極20は、以下の工程により作られる。幅広の金属箔からなる帯状の負極集電体の両面に負極活物質層を塗工した後、負極活物質層を乾燥させ、更に、負極集電体および負極活物質層を所望の厚さに圧延する。続いて、負極活物質層が形成された負極集電体をその長手方向に所定距離だけ間欠的に送りながら、打ちぬき型により、負極集電体の側縁部を所望の形状に打ち抜くことにより、複数の負極タブ20cを切り出す。この際、負極活物質層20bが形成された負極集電体20aの送り量を順次増加させることにより、複数の負極タブ20cを不等間隔で形成する。
【0025】
図5(b)に示すように、セパレータ22は、セルロース等により帯状に形成され、その幅は、正極集電体18aおよび正極活物質層18bの幅よりも僅かに大きく形成されている。
【0026】
図4に示すように、正極18および負極20は、セパレータ22を挟んで、重ね合わされている。この際、負極20は、負極タブ20cを除いて、その外縁が、正極18の正極活物質層18bの外縁の内側と対向するように配置されている。セパレータ22は、その外縁が、正極18の外側で、かつ、正極タブ18cおよび負極タブ20cを超えない範囲に重ねて配置されている。そして、これらの正極18、負極20、およびセパレータ22を、正極18の長手方向と直交する軸の周りで渦巻状に捲回し、扁平に成形することにより、電極体14が形成されている。捲回した状態において、複数の正極タブ18cは互いに重なって位置し、電極体14の一端から突出している。複数の負極タブ20cも互いに重なって位置し、電極体14の一端から突出している。
【0027】
このように形成された電極体14は、電解液と共に金属容器12内に収容され、正極タブ18cおよび負極タブ20cは、正極端子16a、負極端子16cにそれぞれ接続されている。
【0028】
次に、上述した正極あるいは負極を製造する本実施形態に係る製造装置について詳細に説明する。図1に示すように、製造装置100は、被加工材料を送り出す送り出し装置40と、加工後の被加工材料を巻き取る巻取り装置42と、これら送り出し装置と巻取り装置との間に位置し、被加工材料に所望の加工を施す加工装置44と、を備えている。
【0029】
送り出し装置40は、例えば、数千メートルの帯状の被加工材料46が捲回された加工材料ロール48とこの加工材料ロールを回転させる図示しない駆動部とを有し、被加工材料を5m/分以上の一定速度、例えば、10m/分で、かつ、一定の張力で連続して送り出す。加工材料ロール48の回転軸は、ほぼ水平に支持されている。
【0030】
巻取り装置42は、加工済みの被加工材料46を巻き取る巻取りロール50と、巻取りロールを回転させる図示しない駆動部とを有し、被加工材料を5m/分以上の一定速度、例えば、10m/分、および一定の張力で巻き取る。巻取りロール50の回転軸は、ほぼ水平に支持されている。
【0031】
製造装置100は、送り出し装置40と加工装置44との間に設けられた、張力減少ローラ部52、および、張力減少ローラ部から送り出された被加工材料46を鉛直方向下方に導く送り側ガイドローラ54を備えている。張力減少ローラ部52は、水平方向に並んでいるとともに、垂直方向に交互にずれて配置された複数のテンションローラ56を有している。これらのテンションローラ56は、互いに同一径に形成され、その回転軸は互いに平行に、かつ、水平に延びている。送り出しロール48から送り出された被加工材料46は、複数のテンションローラ56に順次巻き付けられ、徐々にその張力を低減させながら送り側ガイドローラ54へ送られる。
【0032】
送り側ガイドローラ54は、鉛直方向に並んで複数設けられている。これらのガイドローラ54は、互いに同一径に形成され、回転軸は互いに平行に、かつ、水平に延びている。張力減少ローラ部52から送り出された被加工材料46は、送り側ガイドローラ54により鉛直方向下方に導かれ、その際、ガイドローラにより揺れないようにガイドされる。
【0033】
被加工材料46は、送り側ガイドローラ54によって鉛直方向下方に導かれた後、ほぼ180度向きを変え、加工装置44に向かって鉛直方向上方に送られる。これにより、被加工材料46は、鉛直方向下端に位置する部分46aで、すなわち、加工装置44に入る直前で、張力が10N/m以下、例えば、ほぼゼロN/mとなるように設定されている。但し、本実施形態において、被加工材料46は、ほぼ鉛直方向に沿って垂れ下がった状態であり、部分46aの前後には、被加工材料46の自重分、例えば、1N/m程度の張力が作用する。
【0034】
図1および図2に示すように、加工装置44は、被加工材料46の搬送−停止−加工−搬送−停止−加工を繰り返し行う。すなわち、被加工材料46は加速−減速−停止を繰り返し、加工の間は加工装置44に対して静止している。
【0035】
加工装置44は、被加工材料46を間欠的に所定長さずつ搬送する間欠搬送機構58と、所定長さ搬送された被加工材料が停止している間、被加工材料を所定形状に打ち抜く打ち抜き型60と、被加工材料の搬送をガイドする複数の搬送ローラ61と、を有している。間欠搬送機構58は、例えば、被加工材料46の両側縁部をクランプする一対のクランパ62と、これらのクランパを搬送方向に沿って所定距離移動させる駆動部64と、を有する。間欠搬送機構58は、クランパ62で被加工材料46の両側縁部を挟持し、搬送方向に所定距離だけ引っ張ることにより、被加工材料を所定距離だけ送る。その後、間欠搬送機構58は、クランパ62による挟持を解除した後、クランパを初期位置に戻し、再び被加工材料46の両側縁部をクランパで挟持し、搬送方向に所定距離だけ引っ張ることにより、被加工材料を所定距離だけ送る。間欠搬送機構58は、上記の動作を繰り返すことにより、加工装置44内で、被加工材料46を所定距離ずつ間欠的に搬送、停止、搬送、停止を繰り返す。被加工材料46の搬送距離は、駆動部64により、任意に設定することができ、一定の距離を搬送し、あるいは、搬送距離を徐々に長くしていくこともできる。
【0036】
打ち抜き型60は、被加工材料46を挟んで対向する下型60aおよび上型60bと、例えば、上型を昇降する昇降駆動部66と、を有している。上型60bには、電極タブに対応した打ち抜き歯60cが形成されている。被加工材料46が停止した状態で、上型60bを下降させて下型60aとの間に被加工材料を挟持し、打ち抜き歯60cによって被加工材料の一側縁部に電極タブを打ち抜き形成する。打ち抜き型60は、1分間に50回以上、例えば、50〜200回の打ち抜きを行う。
【0037】
図1に示すように、製造装置100は、加工装置44と巻き取り装置42との間に設けられた、張力増加装置68、および、加工装置44から鉛直方向下方に送り出された被加工材料46を張力増加装置に向けて鉛直方向上方に導くガイド部71を備えている。
【0038】
ガイド部71は、鉛直方向に並んで設けられた複数の巻取り側ガイドローラ70を有している。これらのガイドローラ70は、互いに同一径に形成され、回転軸は互いに平行に、かつ、水平に延びている。加工装置44から送り出された被加工材料46は、鉛直方向下方に導かれた後、ほぼ180度向きを変え、巻取り側ガイドローラ70により鉛直方向上方に導かれ、その際、ガイドローラ70により揺れないようにガイドされる。これにより、被加工材料46は、鉛直方向下端に位置する部分46bで、すなわち、加工装置44と張力増加装置68との間で、張力が10N/m以下、例えば、ほぼゼロN/mになるように設定されている。このような張力が10N/m以下となる箇所を設けることにより、加工装置44内で生じる被加工材料46の脈動を吸収することができ、その後、一定の速度で被加工材料を巻き取ることが可能となる。但し、本実施形態において、被加工材料46は、ほぼ鉛直方向に沿って垂れ下がった状態であり、部分46aの前後には、被加工材料46の自重分、例えば、1N/m程度の張力が作用する。
【0039】
張力増加装置68は、水平方向に並んでいるとともに、垂直方向に交互にずれて配置された複数、例えば、8個のテンションローラ72を有している。これらのテンションローラ72は、互いに同一径に形成され、その回転軸は互いに平行に、かつ、水平に延びている。ガイドローラ70から送り出された被加工材料46は、複数のテンションローラ72に順次巻き付けられ、徐々にその張力を増大させながら巻取りロール50に巻き取られる。張力増加装置68において、被加工材料46は、各テンションローラ72に対して、例えば、180度巻き付けられた状態で搬送される。
【0040】
テンションローラ72の表面と被加工材料46の表面の摩擦係数は0.2以上であり、テンションローラ72と被加工材料46の合成面粗さは1.8μm以上に設定されている。合成面粗さは以下のように定義する:
合成面粗さσは、
【数2】

【0041】
σr : ローラ表面の自乗平均平方根粗さ
σw : 箔表面の自乗平均平方根粗さ
張力増加装置68により増加され最終的に被加工材料46に印加される張力、すなわち、巻取り装置42によって巻き取る際の被加工材料46の張力は、例えば、100〜300N/mに設定されている。この張力は、上述した摩擦係数、合成面粗さ、テンションローラ72の数、テンションローラへの被加工材料の巻付け角度(ラップ角度)を調整することにより、所望の値に設定することができる。
【0042】
各テンションローラ72について、被加工材料の入力側(巻き始め)の張力T1と、出力側(送り出し)の張力T2とは、オイラーベルトの公式から
【数3】

【0043】
で示される。
ここで、μは、摩擦係数、Θはラップ角度を示している。
【0044】
上記のように構成された製造装置100および製造方法によれば、送り出し装置40から繰り出された被加工材料(電極)は、加工装置44の加工位置に搬送される。加工位置では、搬送−停止−加工−搬送−停止−加工が繰り返される。即ち、被加工材料46は、加速−減速−停止を繰り返し、加工の間は加工装置44に対して静止している。加工された被加工材料46が加工装置44を出た後、搬送方向(長手方向)の張力が10N/m以下となる点が少なくとも1ヶ所存在する。この時、被加工材料46の張力が常に10N/m以下でなくとも、その後、被加工材料は張力増加装置68に搬送される。
【0045】
被加工材料46は、張力増加装置68の複数のテンションローラ72に順次巻き付くことにより、徐々にテンションが増加し、最終的に所望の張力が印加された状態で巻取りロール50に巻き取られる。張力増加装置68を出た被加工材料46は巻取り装置42によって10m/分の一定の速度で連続して巻き取られる。送り出し装置40から巻取り装置42までの間で、被加工材料46は切断されること無く連続して繋がっている。巻取りが常に5m/分以上のある一定の速度であるので、加工位置ではそれに間に合うように加工した被加工材料46を流品する。従って、加工位置では、搬送−停止する被加工材料の平均速度が巻取り速度に一致する。
【0046】
このことから、加工装置44において被加工材料46の搬送、停止を繰り返し、被加工材料を脈動させた場合でも、巻取りロール50では、所望の一定の張力で、かつ、一定の速度で連続して被加工材料を巻き取ることができる。被加工材料46が電極のような非常に薄い金属箔で形成されている場合でも、被加工材料の巻きずれや破断を生じることなく、安定して均一に巻き取ることが可能となる。これにより、二次電池製造の工程において、電極の巻きずれによる損失を低減することができる。
【0047】
次に、被加工材料および製造装置による製造方法について詳細に説明する。
(非水電解質二次電池の正極スラリーおよび正極)
被加工材料となる電極、例えば、正極は、厚さ0.1mm以下の金属箔(正極集電体)18aと、金属箔の表または裏の少なくも一方に形成された正極活物質層18bを有している。正極活物質層18bは正極スラリーを塗布することにより形成されている。正極スラリーは、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を混合して形成されている。正極スラリーに含まれる正極活物質としては、一般的なリチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。例えば、LiCoO2、LiNi1−xCoxO2(0<x<0.3)、LiMnxNiyCozO2(0<x<0.5、0<y<0.5、0≦z<0.5)、LiMn2−xMxO4(MはLi、Mg、Co、Al、Ni、0<x<0.2)、LiMPO4(MはFe,Co,Ni)などである。
【0048】
集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための正極導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素質物を挙げることができる。
【0049】
正極活物質と正極導電剤を結着させるための結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム等が挙げられる。
【0050】
正極活物質、正極導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質は80重量%以上95重量%以下、正極導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上17重量%以下の範囲にすることが好ましい。正極導電剤は、3重量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18重量%以下であることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤は、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、17重量%以下であることにより、電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0051】
これら正極活物質、導電剤、結着剤を適当な溶媒に懸濁させてスラリーを作るが、この溶媒としては例えばNメチルエチルピロリドンが挙げられる。正極活物質、導電剤、結着剤の総量と溶媒の重量比は50:50から80:20が望ましい。
【0052】
スラリーを塗布する支持体ともなる正極集電体は、アルミニウム箔若しくはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金箔が好ましい。
【0053】
正極は、例えば、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁し作製したスラリーを、正極集電体に塗布し、乾燥し、正極層を作製した後、前述した製造装置により電極の側縁部を打ち抜き加工することにより作成される。
【0054】
(負極スラリーおよび負極)
被加工材料となる電極、例えば、負極は、厚さ0.1mm以下の金属箔(負極集電体)20aと、金属箔の表または裏の少なくも一方に形成された負極活物質層20bとを有している。負極活物質層20bは負極スラリーを塗布することにより形成されている。負極スラリーは、負極活物質、負極導電剤及び結着剤を混合して形成されている。負極活物質として、例えばチタン含有金属複合酸化物を使うことができ、リチウムチタン酸化物、酸化物合成時はリチウムを含まないチタン系酸化物などを挙げることができる。
【0055】
リチウムチタン酸化物としては、例えばスピネル構造を有するLi4+xTi5O12(0≦x≦3)や、ラムステライド構造を有するLi2+yTi3O7(0≦y≦3)が挙げられる。
【0056】
チタン系酸化物としては、TiO2、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物などが挙げられる。TiO2はアナターゼ型で熱処理温度が300〜500℃の低結晶性のものが好ましい。TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物としては、例えば、TiO2−P2O5、TiO2−V2O5、TiO2−P2O5−SnO2、TiO2−P2O5−MeO(MeはCu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素)などを挙げることができる。
【0057】
この金属複合酸化物は、結晶相とアモルファス相が共存もしくは、アモルファス相単独で存在したミクロ構造であることが好ましい。このようなミクロ構造であることによりサイクル性能が大幅に向上することができる。中でも、リチウムチタン酸化物、TiとP、V、Sn、Cu、Ni、Co及びFeよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する金属複合酸化物が好ましい。
【0058】
負極導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
負極活物質と負極導電剤を結着させるための結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム等が挙げられる。
【0059】
負極活物質、負極導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質は70重量%以上96重量%以下、負極導電剤は2重量%以上28重量%以下、結着剤は2重量%以上28重量%以下の範囲にすることが好ましい。負極導電剤量が2重量%未満であると、負極層の集電性能が低下し、非水電解質二次電池の大電流特性が低下する。また、結着剤量が2重量%未満であると、負極層と負極集電体の結着性が低下し、サイクル特性が低下する。一方、高容量化の観点から、負極導電剤及び結着剤は各々28重量%以下であることが好ましい。
【0060】
これら負極活物質、導電剤、結着剤を適当な溶媒に懸濁させてスラリーを作るが、この溶媒としては例えばNメチルエチルピロリドンが挙げられる。負極活物質、導電剤、結着剤の総量と溶媒の重量比は50:50から80:20が望ましい。
【0061】
スラリーを塗布する支持体ともなる負極集電体は、アルミニウム箔または銅箔が好ましい。1.0Vよりも貴である電位範囲において電気化学的に安定であるアルミニウム箔若しくはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金箔がより好ましい。
【0062】
負極は、例えば、負極活物質、負極導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁し作製したスラリーを、負極集電体に塗布し、乾燥し、負極層を作製した後、前述した製造装置により電極の側縁部を打ち抜き加工することにより作製される。
【0063】
上述した電極の製造装置および製造方法の作用効果を確認するため、以下の実施例に係る電極製造を行い、その特性を比較した。
(実施例)
厚さ0.02mmのアルミ箔に、非水電解質二次電池の活物質層を両面に連続的に塗布した電極を準備した。活物質層は、LiCoO2、炭素導電剤、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)をそれぞれ100:5:5の割合で含む。このような電極を数千メートルだけ製造装置100の送り出しロール48に巻き付け、送り出し装置40に装着する。そして、送り出し装置40により、送り出しロール48から電極を平均速度10m/分で繰り出した。
【0064】
繰り出された電極を、加工装置44の加工位置で、10cm移動して停止、10cm移動して停止を繰り返した。ただし、平均の移動速度は10m/分と一致させた。加工装置44において、停止時、打ち抜き型により電極の一側縁部を打ち抜き加工し、電極タブを形成した。
【0065】
次に、電極を10cm移動して停止、10cm移動して停止しながら平均速度10m/分で加工装置44から電極を搬出した。加工装置44から搬出された電極は、そのまま鉛直方向に垂らした後、垂直に立ち上げてガイドローラ70により張力増加装置68に導いた。本実施例において、電極の単位面積当たり重量は200g/mで均一であり、1m垂直に垂らすことによって自重で2N/mの張力が電極の長さ方向に加わった。
【0066】
張力増加装置68の中には複数のテンションローラ72があり、これらのテンションローラの表面と電極の表面の摩擦係数は0.2、テンションローラと金属箔の合成面粗さは1.8μmとした。テンションローラの直径は15mmで、電極の搬送速度10m/分に合わせて一定の速度で自転している。このようなテンションローラを8本設置した。電極はテンションローラに接している面の角度を、入り口側の接点から出口側の接点へと測定すると、その角度(ラップ角度)が180度であった。
【0067】
張力増加装置68を出た電極は巻取り装置42に導かれ、巻取り装置で10m/分の一定速度で巻き取った。電極の張力、つまり、巻取り張力は張力増加装置68により300N/mまで増加したが、巻取り速度は一定に保たれていた。
【0068】
また、巻取り装置42での電極の巻取り速度を15m/分に上げ、それ以外の部分でもその巻取り速度に合わせて平均速度を上げた。そして、巻取り張力を200N/mとしたが、巻取り速度は一定に保たれていた。
【0069】
以上のように、電極は巻き取り装置44により捲きずれのない張力で巻き取られると同時に一定の速度で連続して巻き取ることができた。この電極を、次の加工工程で送り出し装置に設置して加工のために繰り出したところ、正常に繰り出して加工点に供給することができた。
【0070】
次に、巻取り装置42での電極の巻取り速度を20m/分に上げ、製造装置のそれ以外の部分でも、巻取り速度に合わせて電極の平均搬送速度を上げた。巻取り張力を50N/mまで上げたところ、巻取り速度が一定に保てなくなった。それでも巻取り装置42で巻き取ろうとすると、竹の子状に捲きずれが発生した。
また、電極の巻取り張力を30N/mまで上げて巻き取ると、20m/分で一定速度で巻き取れるようになったが、同様に竹の子状に捲きずれが発生した。
【0071】
このような、捲きずれた電極を後で取り扱うと、簡単に捲き芯からずれるようにして緩んでしまった。更に、次の加工工程において送り出し装置に設置して繰り出そうとしたが、捲きずれによって電極にシワが発生して加工できなかったり、シワの部分から破断したりして加工できなかった。
【0072】
以上の実施例から分かるように、電極の巻取り速度に上限は存在するものの、10m/分から15m/分の間の一定速度で捲きずれなく正常に巻き取れることが示された。
【0073】
(比較例)
厚さ0.02mmのアルミ箔に、非水電解質二次電池の活物質層を両面に連続的に塗布した電極を準備した。活物質層は、LiCoO2、炭素導電剤、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)をそれぞれ100:5:5の割合で含む。このような電極を数千メートルだけ製造装置100の送り出しロール48に巻き付け、送り出し装置40に装着する。そして、送り出し装置40により、送り出しロール48から電極を平均速度10m/分で繰り出した。
【0074】
繰り出された電極を、加工装置44の加工位置で、10cm移動して停止、10cm移動して停止を繰り返した。ただし、平均の移動速度は10m/分と一致させた。加工装置44において、停止時、打ち抜き型により電極の一側縁部を打ち抜き加工し、電極タブを形成した。
【0075】
次に、電極を10cm移動して停止、10cm移動して停止しながら平均速度10m/分で加工装置44から電極を搬出した。加工装置44から搬出された電極は、そのまま鉛直方向に垂らした後、垂直に立ち上げてガイドローラにより張力増加装置68に導いた。本比較例において、電極の単位面積当たり重量は200g/mで均一であり、1m垂直に垂らすことによって自重で2N/mの張力が電極の長さ方向に加わった。
【0076】
張力増加装置68の中には複数のテンションローラ72があり、これらのテンションローラの表面と電極の表面の摩擦係数は0.15、テンションローラと金属箔の合成面粗さは1.5μmとした。テンションローラの直径は15mmで、電極の搬送速度10m/分に合わせて一定の速度で自転している。このようなテンションローラを8本設置した。電極はテンションローラ72に接している面の角度を、入り口側の接点から出口側の接点へと測定すると、その角度が180度であった。
【0077】
張力増加装置68を出た電極は巻取り装置42に導かれ、巻取り装置で10m/分の一定速度で巻き取った。巻取り張力は100N/mまで上げたところ、巻取り速度が一定に保てなくなった。それでも巻取り装置で巻き取ろうとすると、竹の子状に捲きずれが発生した。
【0078】
また、巻取り装置42での電極の巻取り張力を60N/mまで上げて巻き取ると、10m/分の一定速度で巻き取れるようになったが、巻き取るにつれて次第に竹の子状に捲きずれが発生した。このような、捲きずれた電極を後で取り扱うと、簡単に捲き芯からずれるようにして緩んでしまった。更に、次の加工工程において送り出し装置に設置して繰り出そうとしたが、捲きずれによって電極にシワが発生して加工できなかったり、シワの部分から破断したりして加工できなかった。以上の比較例では、正常な巻取りができなかった。
【0079】
以上のことから、本実施形態に係る製造装置および製造方法によれば、非水電解質二次電池用の電極集電体を構成する金属箔あるいは電極を一定速度で繰り出し、加工点で金属箔または電極が移動−停止を繰り返しながら加工し、それを繰り出しから巻取りまで切断することなく連続し、金属箔または電極が巻き取り時に捲きずれのない張力で巻き取られると同時に一定の速度で連続して巻き取ることができる。その結果、巻取り後の製造工程において、電極まきずれによる損失が低減する。
【0080】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0081】
製造装置の被加工材料は、二次電池の電極、金属箔に限らず、厚さが0.2mm以下の非常に薄い長尺な材料の加工に利用することができる。製造装置の張力増加装置において、テンションローラの径、設置数は、実施形態に限定されることなく、適宜変更可能である。加工装置による加工は、打ち抜きに限らず、プレス、絞り等の他の加工としてもよい。
【符号の説明】
【0082】
10…二次電池、12…外装容器、14…電極体、16a…正極端子、
16b…負極端子、18…正極、18a…正極集電体、18b…正極活物質層、
18c…正極タブ、20…負極、20a…負極集電体、20b…負極活物質層、
20c…負極タブ、22…セパレータ、40…送り出し装置、42…巻取り装置、
44…加工装置、46…被加工材料、58…間欠搬送機構、60…打ち抜き型、
68…張力増加装置、70…巻取り側ガイドローラ、72…テンションローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻き取られた厚さ0.2mm以下の帯状の長尺な被加工材料を一定の速度で連続して送り出す送り出し装置と、
前記送り出された被加工材料を所定距離だけ間欠的に移動させ、停止している間に前記被加工材料に加工を施す加工装置と、
前記加工装置から送り出された前記被加工材料を一定の速度で連続して巻き取る巻取り装置と、
前記加工装置と巻取り装置との間で、前記被加工材料の長さ方向の張力が10N/m以下となる部分が生じるように前記被加工材料をガイドするガイド部と、
前記ガイド部と前記巻取り装置の間に設けられ、前記ガイド部から送られた前記被加工材料に長さ方向の張力を印加し、前記被加工材料の張力を所定の張力まで増大する張力増加装置と、を備え、
前記被加工材料は、前記送り出し装置から前記加工装置を通して前記巻取り装置まで、分断されることなく連続して送られ、
前記張力増加装置は、前記被加工材料と接して被加工材料を搬送する1本以上のローラを備え、前記ローラの表面と前記被加工材料の表面との摩擦係数が0.2以上であり、前記ローラと前記被加工材料の合成面粗さが1.8μm以上であり、
前記合成面粗さは、σr:ローラーラー表面の自乗平均平方根粗さ、σw :箔表面の自乗平均平方根粗さとすると、
【数1】

で示される製造装置。
【請求項2】
前記巻取り装置は、前記被加工材料をその長さ方向に5m/分以上の一定の速度で連続的に巻き取る請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記張力増加装置は、水平方向に並んでいるとともにそれぞれ前記被加工材料が巻付けられた複数のローラを有し、前記被加工材料の長さ方向の張力を100〜300N/mまで増大する請求項1又は2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記加工装置から送り出され鉛直方向下方に垂れ下がる前記被加工材料を前記張力増大装置に向けて鉛直方向上方にガイドする複数のガイドローラを備えている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項5】
前記加工装置は、前記被加工材料を所定形状に打ち抜く打ち抜き型を備え、一分間に50〜200回の打ち抜き加工を行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項6】
前記被加工材料は、表又は裏の少なくとも一方の一部が金属以外の物質で被覆された帯状の金属箔であり、前記張力増加装置のローラの表面と前記金属箔の被覆物の表面との摩擦係数0.2以上であり、前記ローラと前記被覆物の合成面粗さが1.8μm以上である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項7】
厚さ0.2mm以下の帯状の長尺な被加工材料を加工して巻き取る製造方法であって、
前記被加工材料をその長手方向に沿って一定の速度で連続して送り出し、
前記送り出された被加工材料を所定距離だけ間欠的に移動させ、停止している間に前記被加工材料に加工を施し、
前記加工された被加工材料を間欠的に送り出した後、前記被加工材料の長さ方向の張力が10N/m以下となる部分が生じるようにガイドして前記被加工材料の脈動を吸収し、
前記脈動が吸収された被加工材料に張力を印加して前記被加工材料の長さ方向の張力を所定の張力まで徐々に増大し、
前記所定の張力に増大された前記被加工材料を一定の速度および一定の張力で連続して巻き取る製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−136342(P2012−136342A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291299(P2010−291299)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】