非水電解質二次電池
【課題】充放電時の正極板の破断または負極板の挫屈を抑制した安全性の高い非水電解質二次電池を提供することにある。
【解決手段】正極集電体1の上に正極合剤層2a、2bが形成された正極板4、及び負極集電体5の上に負極合剤層6a、6bが形成された負極板8が、セパレータ9介して捲回または積層された電極群10を備え、正極合剤層2a、2bは、正極板4の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の肉薄部3a、3bが設けられている。
【解決手段】正極集電体1の上に正極合剤層2a、2bが形成された正極板4、及び負極集電体5の上に負極合剤層6a、6bが形成された負極板8が、セパレータ9介して捲回または積層された電極群10を備え、正極合剤層2a、2bは、正極板4の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の肉薄部3a、3bが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池に関し、特に安全性に優れた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウムイオン二次電池は、負極板にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極板にLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって高電位で高放電容量のリチウムイオン二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って、更なるリチウムイオン二次電池の高容量化が望まれている。
【0003】
ここで、高容量のリチウムイオン二次電池を実現するために、正極集電体及び負極集電体の上に活物質層を塗布、乾燥した後、プレス等により所定の厚みまで圧縮する方法が用いられており、これによって活物質密度が高くなり、一層の高容量化が可能となる。
【0004】
非水電解質二次電池は、正極板と負極板とが多孔質絶縁層を介して積層または捲回された電極群を電池ケースに収納した後、電池ケースに非水系電解液を注液し、その後、電池ケースの開口部を封口板で密封することにより製造される。
【0005】
ところで、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板とが内部短絡を起こすと、電池の急激な温度上昇が起こるおそれがあるため、非水電解質二次電池の安全性の向上が強く要求されている。特に、大型・高出力な非水電解質二次電池では、温度上昇がより急激に起こるため、安全性を向上させる工夫が必要である。
【0006】
非水電解質二次電池が内部短絡する要因としては、電池の内部に異物が混入する以外にも図16(a)に示すように、正極集電体21の両面に正極合剤層22a、22bを形成した正極板24と、負極集電体25の両面に負極合剤層26a、26bを形成した負極板28とを、多孔質絶縁層29を介して捲回して電極群30を構成する際、あるいは、非水電解質二次電池を充放電する際に電極板に加わる応力によって、電極板が破断あるいは挫屈することが考えられる。
【0007】
より詳しくは、渦巻状に捲回して電極群30を構成する際、正極板24、負極板28、及び多孔質絶縁層29には引張応力が加わり、このとき各構成要素の伸び率の差によって、最も伸び率が小さなものが優先的に破断することになる。また、非水電解質二次電池を充放電すると、電極板の膨張収縮による応力が電極板に加わり、充放電を繰り返すことによる応力により、各構成要素の伸び率の最も小さいものが優先的に破断してしまう。
【0008】
例えば、図16(b)に示すように、充電時の負極板28の伸びに正極板24が追従できない場合には、正極板24の破断(図中のF)が起こり、また、正極板24の破断が起きなくても、図16(c)に示すように、負極板24の挫屈により多孔質絶縁層29が引き伸ばされることで、多孔質絶縁層29の厚みが薄くなる箇所(図中のG)が発生する。
【0009】
さらに、正極板24もしくは負極板28が多孔質絶縁層29よりも先に破断した場合には、いずれかの電極板の破断部が多孔質絶縁層29を突き破り、正極板24と負極板28が短絡することになる。この短絡により大電流が流れ、その結果、非水電解質二次電池の温度が急激に上昇するおそれがある。
【0010】
そこで、正極板の破断を抑制するために、特許文献1には、図17に示すように、両面に正極合剤層を塗布形成した正極板33と、両面に負極合剤層を塗布形成した負極板34とを多孔質絶縁層35を介して扁平状に捲回した電極群32を非水系電解液と共に電池ケース36に収納した非水電解質二次電池31において、電極群32の内周側の面に形成された正極合剤層を、外周側の面に形成された正極合剤層よりも柔軟性を高く(引張破断伸びを大きく)する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−103263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の従来技術においては、電極群を構成する際に正極板に加わる曲げ応力による正極板の破断を抑制する効果は発揮するものの、非水電解質二次電池池を充放電する際の電極板の膨張収縮に伴う応力による電極板の破断または挫屈を抑制することは難しい。加えて、上記の従来技術では、正極板の表面と裏面に塗布する正極合剤塗料を二種類作製し、この二種類の正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布形成する必要があり、正極板を作製するプロセスが複雑になってしまう。
【0013】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、その主な目的は、非水電解質二次電池を充放電する際の負極板の膨張収縮による応力を緩和することによって、充放電時の正極板の破断または負極板の挫屈を抑制した安全性の高い非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、正極板の伸び率を向上させて、負極板の充放電時の伸縮に追従させることで、正極板及び負極板の充放電時の伸縮を互いに一致させるようにした構成を採用する。
【0015】
すなわち、本発明の一側面における非水電解質二次電池は、正極集電体上に正極合剤層が形成された正極板、及び負極集電体上に負極合剤層が形成された負極板が、セパレータを介して捲回または積層された電極群を備えた非水電解質二次電池であって、正極合剤層は、正極板の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の肉薄部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
このような構成により、正極板及び負極板の充放電時の伸縮を互いに一致させることができ、これにより、充放電時における正極板と負極板の伸縮度の差に起因した応力を緩和することができ、その結果、電極板の破断または挫屈を抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層の肉薄部は、集電体の両面のうち、少なくとも前記電極群の内周側の面に形成されているのが好ましい。
【0018】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層の肉薄部は、集電体の両面に形成されており、電極群の内周側の面に形成された肉薄部と、電極群の外周側の面に形成された肉薄部とは、位相をずらして形成されているのが好ましい。
【0019】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層の肉薄部は、集電体の両面に形成されており、電極群の内周側の面に形成された肉薄部の幅は、電極群の外周側の面に形成された肉薄部の幅よりも広く形成されているのが好ましい。また、正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部の幅を徐々に狭くしながら形成されていてもよい。
【0020】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、集電体の両面に形成されており、電極群の内周側の面に形成された肉薄部の間隔は、電極群の外周側の面に形成された肉薄部の間隔よりも狭く形成されているのが好ましい。また、正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部間の間隔を徐々に広くしながら形成されていてもよい。
【0021】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層の肉薄部は、少なくとも電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位に形成されているのが好ましい。
【0022】
本発明の他の側面において、上記肉薄部の代わりに、正極合剤層は、正極板の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の低密度活物質層が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、正極板及び負極板の充放電時の伸縮を互いに一致させるように構成したことにより、充放電時における正極板及び負極板の膨張収縮による伸縮度の差に起因した電極板に加わる応力を緩和することができ、これにより、電極板の破断または挫屈を抑制することができる。その結果、これらに起因した内部短絡を抑制した安全性の高い非水電解質二次電池を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるリチウムイオン二次電池の構成を示した一部切欠斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は、第1の本実施形態における電極群の構成の一部を示した断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、第1の実施形態における捲回前の電極群の構成の一部を示した斜視図である。
【図4】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図5】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図6】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図7】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図8】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図9】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態における正極板の製造方法を示した斜視図である。
【図11】第2の実施形態における正極板の構成の一部を示した斜視図である。
【図12】第2の実施形態における正極板の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図13】第2の実施形態における正極板の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図14】第2の実施形態における正極板の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図15】第2の実施形態における正極板の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図16】(a)〜(c)は、内部短絡の要因を説明するための電極群の構成を示した断面図である。
【図17】従来の非水電解質二次電池の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるリチウムイオン二次電池の構成を示した一部切欠斜視図である。
【0027】
図1に示すように、複合リチウム酸化物を活物質とする正極板4と、リチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板8とを、多孔質絶縁層(セパレータ)9を介して渦巻状に捲回して電極群10が構成されている。電極群10は、有底円筒形の電池ケース11内に、絶縁板12で電池ケース11と絶縁されて収容されている。電極群10の下部より導出した負極リード13は、電池ケース11の底部に接続され、電極群10の上部より導出した正極リード14は、封口板15に接続されている。電池ケース11内に非水電解液(図示せず)を注液した後、電池ケース11の開口部は、ガスケット16を介して封口板15で封口されている。
【0028】
図2(a)〜(c)は、本実施形態における電極群10の構成の一部を示した断面図である。正極集電体1の両面に正極合剤層2a、2bが形成された正極板4、及び負極集電体5の両面に負極合剤層6a、6bが形成された負極板8が、セパレータ9を介して捲回されて電極群10が構成されている。そして、正極合剤層2a、2bは、正極板4の長手方向に直交するように(紙面に対して垂直方向に)、少なくとも1以上の肉薄部が設けられている。この肉薄部は、正極集電体1の両面のうち、少なくとも一面に設けられていればよく、図2(a)には、正極集電体1の電極群10の外周側の面に肉薄部3aが設けられた例を、図2(b)には、正極集電体1の電極群10の内周側の面に肉薄部3bが設けられた例を、図2(c)には、正極集電体1の両面に肉薄部3a、3bが設けられた例を、それぞれ示す。
【0029】
図2(a)〜(c)に示すように、正極板4及び負極板8は、充電時には矢印A及びCの方向に伸び、放電時には矢印B及びDの方向に縮むが、正極合剤層2a、2bの一部に肉薄部3a、3bを設けることによって、正極板4の伸び率を向上させることができるため、正極板4及び負極板8の充放電時の伸縮を互いに一致させることができる。その結果、充放電時における正極板4と負極板8の伸縮度の差に起因した応力を緩和することができ、電極板4、8の破断または挫屈を抑制することが可能となる。
【0030】
ここで、正極合剤層2a、2bの一部に設ける肉薄部3a、3bの個数、あるいは形態(厚みや幅、間隔等)は特に制限されず、使用する負極板8の伸び率に応じて適宜決めればよい。
【0031】
以下、図3〜図9を参照しながら、正極合剤層2a、2bに設けられる肉薄部3a、3bの種々の実施形態について説明する。
【0032】
図3(a)、(b)は、捲回前の電極群の構成の一部を示した斜視図で、図3(a)は、正極集電体1の電極群10の外周側の面に肉薄部3aを設けた場合、図3(b)は、正極集電体1の電極群10の内周側の面に肉薄部3bを設けた場合をそれぞれ示す。
【0033】
ここで、肉薄部3a、3bは、正極集電体1の表面に正極合剤層を形成する一連の工程において形成することができる。すなわち、ダイコータを用いて正極集電体1の表面に正極合剤塗料を塗布する際、ダイのマニホールド内部の圧力を負圧に調整して、ダイ先端部から吐出する正極合剤塗料の量を調整することによって、通常の正極合剤層2a、2bの厚みよりも薄い肉薄部3a、3bを形成することができる。このとき、ダイのマニホールド内部を負圧にした後、圧力を開放し正極合剤塗料を再吐出するタイミングを調整することによって、正極板4の長手方向に直行する方向に、一定の幅を有する肉薄部3a、3bを形成することができる。
【0034】
その後、正極合剤塗料を乾燥させた後、正極合剤層2a、2bを、肉薄部3a、3bよりも薄くならない所定の厚みにプレスし、さらに、正極集電体1を、所定の幅および長さにスリッタ加工して長尺帯状の正極板4が得られる。
【0035】
ここで、正極合剤塗料は、正極活物質、導電材、結着材を分散媒中に入れて混合分散し、正極集電体1への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って作製する。
【0036】
正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物等を用いることができる。
【0037】
また、導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材等を用いることができる。この際、反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させてもよい。
【0039】
負極板8は、次のような通常の方法により作製することができる。
【0040】
まず、負極活物質、結着材を分散媒中に入れて混合分散し、負極集電体5への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って負極合剤塗料を作製する。
【0041】
ここで、負極用活物質としては、例えば、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、並びに各種合金組成材料を用いることができる。
【0042】
また、結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびその変性体を用いることができる。なお、リチウムイオンの受入れ性を向上させるという観点からは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)またはその変性体とカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等とを併用したものや、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子またはその変性体に上記セルロース系樹脂を少量添加したものを使用するのが好ましい。
【0043】
作製した負極合剤塗料を、負極集電体5の表面にダイコータを用いて塗布、乾燥させた後、所定の厚みまで圧縮するようにプレスして負極合剤層を形成し、その後、所定の幅および長さにスリッタ加工して長尺帯状の負極板8が得られる。
【0044】
図3(a)、(b)は、正極集電体1のいずれか一方の面に肉薄部3a、3bを設けた場合を示したが、図4に示すように、正極集電体1の両面に肉薄部3a、3bを設けてもよい。この場合も、上述した方法を用いて、正極集電体1の両面に肉薄部3a、3bを形成することができる。
【0045】
なお、図4に示すように、正極集電体1の両面に形成された肉薄部3a、3bは、正極板4の長手方向に対して同位相で形成された例を示したが、図5に示すように、位相をずらして形成してもよい。
【0046】
ところで、正極板4と負極板8とをセパレータ9を介して捲回して電極群を作製する際、曲率の違いにより負極板8における外周側の負極合剤層6aには引張応力が加わり、内周側の負極合剤層6bには圧縮応力が加わることになる。
【0047】
そこで、図6に示すように、外周側の負極合剤層6bと対峙する正極板4の内周側の正極合剤層2bに形成される肉薄部3bの幅W5を、外周側の正極合剤層2aに形成される肉薄部3aの幅W4よりも広く形成(W5>W4)することによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力をより緩和することができる。
【0048】
また、正極板4と負極板8とをセパレータ9を介して捲回して作製した電極群において、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、電極板の曲率は徐々に小さくなる。従って、上述した外周側の負極合剤層6aに加わる引張応力、及び内周側の負極合剤層6bに加わる圧縮応力も、徐々に小さくなる。
【0049】
そこで、図7に示すように、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部3a、3bの幅W1、W2、W3を徐々に狭くしながら形成(W1>W2>W3)することによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力を緩和しつつ、正極合剤層2a、2bの全体的な量を増やすことによって、肉薄部3a、3bを設けたことによる電池容量の低下を抑制することができる。
【0050】
なお、図6及び図7に示したような肉薄部3a、3bの幅を調整することによって得られる効果は、正極板4の長手方向に沿って形成される複数の肉薄部3a、3bの間隔を調整することによっても得ることができる。
【0051】
すなわち、図8に示すように、電極群の内周側の面に形成された正極合剤層2bの肉薄部3bの間隔P5を、電極群の外周側の面に形成された正極合剤層2aの肉薄部3aの間隔P4よりも狭く形成(P5<P4)することによって、図6に示した肉薄部3a、3bの構成(W5>W4)によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、図9に示すように、正極合剤層2a、2bに形成された複数の肉薄部3a、3bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部間の間隔P1、P2、P3を徐々に広くしながら形成(P1<P2<P3)することによって、図7に示した肉薄部3a、3bの構成(W1>W2>W3)によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、正極合剤層2a、2bの一部に肉薄部3a、3bを設けることによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力を緩和させたが、本実施形態では、正極合剤層2a、2bの一部に、活物質密度の小さい部位(以下、「低密度活物質層」という。)を設けることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0054】
すなわち、負極板8の膨張収縮は、負極活物質層へのリチウムの吸蔵、放出によって生じることから、負極板8に対峙する正極板4の正極合剤層2a、2bの一部に低密度活物質層を設けることによって、負極活物質層へのリチウムの吸蔵、放出の量を局所的に減らすことができる。これにより、負極板8の膨張収縮を抑制することができるため、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力を緩和することができる。
【0055】
図10(a)、(b)は、本実施形態における正極板4の製造方法を示した斜視図である。
【0056】
まず、図10(a)に示すように、正極合剤層2a、2bに、正極集電体1の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の肉薄部3a、3bを形成する。この肉薄部3a、3bは、第1の実施形態で説明した間欠塗布の方法を用いて形成することができる。
【0057】
次に、図10(b)に示すように、正極合剤層2a、2bを、肉薄部3a、3bよりも薄くなる所定の厚みにプレスする。これにより、肉薄部3a、3bが形成された部位における正極活物質の密度は、他の正極活物質の密度よりも小さくなり、正極合剤層2a、2bの一部に、低密度活物質層7a、7bが形成される。
【0058】
第1の実施形態では、正極合剤層2a、2bを、肉薄部3a、3bよりも薄くならない所定の厚みにプレスしたのに対し、本実施形態では、正極合剤層2a、2bを、肉薄部3a、3bよりも薄くなる所定の厚みにプレスした点が異なる。従って、本実施形態では、正極合剤層2a、2bの表面は平坦となっている。それ故に、本実施形態において、正極板4と負極板8とをセパレータ9を介して捲回して形成された電極群の径は、第1の実施形態における電極群の径よりも小さくすることができる。
【0059】
ここで、正極合剤層2a、2bの一部に設ける低密度活物質層7a、7bの個数、あるいは形態(厚みや幅、間隔等)は特に制限されず、使用する負極板8の伸縮度に応じて適宜決めればよい。
【0060】
以下、図11〜図15を参照しながら、正極合剤層2a、2bに設けられる低密度活物質層7a、7bの種々の実施形態について説明する。
【0061】
図11は、第1の実施形態における図5に対応したもので、正極集電体1の両面に形成された低密度活物質層7a、7bは、正極板4の長手方向に対して位相をずらして形成されている。このような構成にすることによって、低密度活物質層7a、7bと対峙する負極活物資層に吸蔵、放出されるリチウムの量を、負極板8の両面において異ならせたことにより、電極群全体における負極板8の膨張収縮をより効果的に抑制することができる。これにより、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力をより緩和することができる。
【0062】
図12は、第1の実施形態における図6に対応したもので、正極板4の内周側の正極合剤層2bに形成される低密度活物質層7bの幅W7を、外周側の正極合剤層2aに形成される低密度活物質層7aの幅W6よりも広く形成(W7>W6)することによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力をより緩和することができる。
【0063】
なお、図13に示すように、正極集電体1の両面に形成された低密度活物質層7a、7bを、正極板4の長手方向に対して位相をずらして形成してもよい。
【0064】
図14は、第1の実施形態における図7に対応したもので、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各低密度活物質層7a、7bの幅W8、W9、W10を徐々に狭くしながら形成(W8>W9>W10)することによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力を緩和しつつ、正極合剤層2a、2bの全体的な量を増やすことによって、低密度活物質層7a、7bを設けたことによる電池容量の低下を抑制することができる。
【0065】
図15は、第1の実施形態における図9に対応したもので、正極合剤層2a、2bに形成された複数の低密度活物質層7a、7bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各低密度活物質層7a、7bの間隔P6、P7、P8を徐々に広くしながら形成(P6<P7<P8)することによって、図14に示した低密度活物質層7a、7bの構成(W8>W9>W10)によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0066】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上記の実施形態においては、正極板および負極板がセパレータを介して捲回された電極群について説明したが、正極板および負極板がセパレータを介して積層された電極群であってもよい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明の構成及び効果をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
正極活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを2重量部を、適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0069】
次いで、図3(a)に示したように、正極合剤塗料を、厚み15μmのアルミニウム箔(Al純度99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の片面に、幅5mmの肉薄部3aを等ピッチに片方のみ塗布し、乾燥後に片面の正極合剤層2aまたは2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2aの肉薄部3aの厚みが65μmとなる正極板4を作製した。
【0070】
次いで、この正極板4を、総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面の正極合剤層2aまたは2bの厚みを75μmとし、その後、所定の幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0071】
一方、負極活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1重量部、および適量の水とともに攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0072】
次いで、負極合剤塗料を、厚み10μmの銅箔(Cu純度99.9%)からなる負極集電体5に塗布し、乾燥後に片面側の負極合剤層6a、6bの厚みが110μmとなる負極板8を作製した。さらに、この負極板8を総厚みが180μmとなるようにプレスした後、所定の幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0073】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを、厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムからなるセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を作製した。この電極群10を、有底円筒形の電池ケース11に収容し、所定量のEC、DMC、MEC混合溶媒にLiPF6を1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液を注液した。その後、電池ケース11の開口部を封口板15で封口して、図1に示した円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。
【0074】
(実施例2)
図4に示したように、正極集電体1の両面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3a、3bを、同位相、等ピッチで形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0075】
(実施例3)
図5に示したように、正極集電体1の両面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3a、3bを、異位相、等ピッチで形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0076】
(実施例4)
図6に示したように、正極集電体1の表面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3aを、正極集電体1の裏面に、幅6mm、厚さ65μmの肉薄部3bを、同位相、等ピッチで形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0077】
(実施例5)
図7に示したように、正極集電体1の両面に、厚さ65μmの肉薄部3a、3bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、肉薄部3a、3bの幅を、5mm、4.5mm、4.0mmと徐々に狭くしながら形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0078】
(実施例6)
図8に示したように、正極集電体1の表面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3aを30mmピッチで、また、正極集電体1の裏面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3bを15mmピッチで形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0079】
(実施例7)
図9に示したように、正極集電体1の両面に、厚さ65μmの肉薄部3a、3bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、肉薄部3a、3bの間隔を、20mm、30mm、40mmと徐々に広くしながら形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0080】
(実施例8)
図10(a)に示したように、実施例1と同様の方法で、正極集電体1の両面に、幅5mm、厚さ75μmの肉薄部3a、3bを、同位相、等ピッチで形成した。その後、正極合剤層2a、2bの厚みが75μmとなるようにプレスして、幅5mm、厚さ75μmの低密度活物質層7a、7bを同位相、等ピッチで作製した。その後、実施例1と同様の方法で、図1に示した円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0081】
(実施例9)
図11に示したように、正極集電体1の両面に、幅5mm、厚さ75μmの低密度活物質層7a、7bを、異位相、等ピッチで形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0082】
(実施例10)
図12に示したように、正極集電体1の表面に、幅3mm、厚さ75μmの低密度活物質層7aを、正極集電体1の裏面に、幅5mm、厚さ75μmの低密度活物質層7bを、同位相、等ピッチで形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0083】
(実施例11)
図13に示したように、正極集電体1の表面に、幅3mm、厚さ75μmの低密度活物質層7aを、正極集電体1の裏面に、幅5mm、厚さ75μmの低密度活物質層7bを、位相を1/2ずらして、等ピッチで形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0084】
(実施例12)
図14に示したように、正極集電体1の両面に、厚さ75μmの低密度活物質層7a、7bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、低密度活物質層7a、7bの幅を、5mm、4.5mm、4.0mmと徐々に狭くしながら形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0085】
(実施例13)
図15に示したように、正極集電体1の両面に、厚さ75μmの低密度活物質層7a、7bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、低密度活物質層7a、7bの間隔を、20mm、30mm、40mmと徐々に広くしながら形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0086】
上記実施例1〜13で、それぞれ100個のリチウムイオン二次電池17を作製し、充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等の電池に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 正極集電体
2a、2b 正極合剤層
3a、3b 肉薄部
4 正極板
5 負極集電体
6a、6b 負極合剤層
7a、7b 低密度活物質層
8 負極板
9 セパレータ
10 電極群
11 電池ケース
12 絶縁板
13 負極リード
14 正極リード
15 封口板
16 ガスケット
17 リチウムイオン二次電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池に関し、特に安全性に優れた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウムイオン二次電池は、負極板にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極板にLiCoO2等の遷移金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって高電位で高放電容量のリチウムイオン二次電池を実現している。しかし、近年の電子機器および通信機器の多機能化に伴って、更なるリチウムイオン二次電池の高容量化が望まれている。
【0003】
ここで、高容量のリチウムイオン二次電池を実現するために、正極集電体及び負極集電体の上に活物質層を塗布、乾燥した後、プレス等により所定の厚みまで圧縮する方法が用いられており、これによって活物質密度が高くなり、一層の高容量化が可能となる。
【0004】
非水電解質二次電池は、正極板と負極板とが多孔質絶縁層を介して積層または捲回された電極群を電池ケースに収納した後、電池ケースに非水系電解液を注液し、その後、電池ケースの開口部を封口板で密封することにより製造される。
【0005】
ところで、高容量化が進む一方で重視すべきは安全対策であり、特に正極板と負極板とが内部短絡を起こすと、電池の急激な温度上昇が起こるおそれがあるため、非水電解質二次電池の安全性の向上が強く要求されている。特に、大型・高出力な非水電解質二次電池では、温度上昇がより急激に起こるため、安全性を向上させる工夫が必要である。
【0006】
非水電解質二次電池が内部短絡する要因としては、電池の内部に異物が混入する以外にも図16(a)に示すように、正極集電体21の両面に正極合剤層22a、22bを形成した正極板24と、負極集電体25の両面に負極合剤層26a、26bを形成した負極板28とを、多孔質絶縁層29を介して捲回して電極群30を構成する際、あるいは、非水電解質二次電池を充放電する際に電極板に加わる応力によって、電極板が破断あるいは挫屈することが考えられる。
【0007】
より詳しくは、渦巻状に捲回して電極群30を構成する際、正極板24、負極板28、及び多孔質絶縁層29には引張応力が加わり、このとき各構成要素の伸び率の差によって、最も伸び率が小さなものが優先的に破断することになる。また、非水電解質二次電池を充放電すると、電極板の膨張収縮による応力が電極板に加わり、充放電を繰り返すことによる応力により、各構成要素の伸び率の最も小さいものが優先的に破断してしまう。
【0008】
例えば、図16(b)に示すように、充電時の負極板28の伸びに正極板24が追従できない場合には、正極板24の破断(図中のF)が起こり、また、正極板24の破断が起きなくても、図16(c)に示すように、負極板24の挫屈により多孔質絶縁層29が引き伸ばされることで、多孔質絶縁層29の厚みが薄くなる箇所(図中のG)が発生する。
【0009】
さらに、正極板24もしくは負極板28が多孔質絶縁層29よりも先に破断した場合には、いずれかの電極板の破断部が多孔質絶縁層29を突き破り、正極板24と負極板28が短絡することになる。この短絡により大電流が流れ、その結果、非水電解質二次電池の温度が急激に上昇するおそれがある。
【0010】
そこで、正極板の破断を抑制するために、特許文献1には、図17に示すように、両面に正極合剤層を塗布形成した正極板33と、両面に負極合剤層を塗布形成した負極板34とを多孔質絶縁層35を介して扁平状に捲回した電極群32を非水系電解液と共に電池ケース36に収納した非水電解質二次電池31において、電極群32の内周側の面に形成された正極合剤層を、外周側の面に形成された正極合剤層よりも柔軟性を高く(引張破断伸びを大きく)する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−103263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の従来技術においては、電極群を構成する際に正極板に加わる曲げ応力による正極板の破断を抑制する効果は発揮するものの、非水電解質二次電池池を充放電する際の電極板の膨張収縮に伴う応力による電極板の破断または挫屈を抑制することは難しい。加えて、上記の従来技術では、正極板の表面と裏面に塗布する正極合剤塗料を二種類作製し、この二種類の正極合剤塗料を正極集電体の上に塗布形成する必要があり、正極板を作製するプロセスが複雑になってしまう。
【0013】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、その主な目的は、非水電解質二次電池を充放電する際の負極板の膨張収縮による応力を緩和することによって、充放電時の正極板の破断または負極板の挫屈を抑制した安全性の高い非水電解質二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、正極板の伸び率を向上させて、負極板の充放電時の伸縮に追従させることで、正極板及び負極板の充放電時の伸縮を互いに一致させるようにした構成を採用する。
【0015】
すなわち、本発明の一側面における非水電解質二次電池は、正極集電体上に正極合剤層が形成された正極板、及び負極集電体上に負極合剤層が形成された負極板が、セパレータを介して捲回または積層された電極群を備えた非水電解質二次電池であって、正極合剤層は、正極板の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の肉薄部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
このような構成により、正極板及び負極板の充放電時の伸縮を互いに一致させることができ、これにより、充放電時における正極板と負極板の伸縮度の差に起因した応力を緩和することができ、その結果、電極板の破断または挫屈を抑制することが可能となる。
【0017】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層の肉薄部は、集電体の両面のうち、少なくとも前記電極群の内周側の面に形成されているのが好ましい。
【0018】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層の肉薄部は、集電体の両面に形成されており、電極群の内周側の面に形成された肉薄部と、電極群の外周側の面に形成された肉薄部とは、位相をずらして形成されているのが好ましい。
【0019】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層の肉薄部は、集電体の両面に形成されており、電極群の内周側の面に形成された肉薄部の幅は、電極群の外周側の面に形成された肉薄部の幅よりも広く形成されているのが好ましい。また、正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部の幅を徐々に狭くしながら形成されていてもよい。
【0020】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、集電体の両面に形成されており、電極群の内周側の面に形成された肉薄部の間隔は、電極群の外周側の面に形成された肉薄部の間隔よりも狭く形成されているのが好ましい。また、正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部間の間隔を徐々に広くしながら形成されていてもよい。
【0021】
本発明の他の側面において、上記正極合剤層の肉薄部は、少なくとも電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位に形成されているのが好ましい。
【0022】
本発明の他の側面において、上記肉薄部の代わりに、正極合剤層は、正極板の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の低密度活物質層が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、正極板及び負極板の充放電時の伸縮を互いに一致させるように構成したことにより、充放電時における正極板及び負極板の膨張収縮による伸縮度の差に起因した電極板に加わる応力を緩和することができ、これにより、電極板の破断または挫屈を抑制することができる。その結果、これらに起因した内部短絡を抑制した安全性の高い非水電解質二次電池を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるリチウムイオン二次電池の構成を示した一部切欠斜視図である。
【図2】(a)〜(c)は、第1の本実施形態における電極群の構成の一部を示した断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、第1の実施形態における捲回前の電極群の構成の一部を示した斜視図である。
【図4】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図5】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図6】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図7】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図8】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図9】第1の実施形態における捲回前の電極群の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図10】(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態における正極板の製造方法を示した斜視図である。
【図11】第2の実施形態における正極板の構成の一部を示した斜視図である。
【図12】第2の実施形態における正極板の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図13】第2の実施形態における正極板の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図14】第2の実施形態における正極板の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図15】第2の実施形態における正極板の他の構成の一部を示した斜視図である。
【図16】(a)〜(c)は、内部短絡の要因を説明するための電極群の構成を示した断面図である。
【図17】従来の非水電解質二次電池の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。さらに、他の実施形態との組み合わせも可能である。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるリチウムイオン二次電池の構成を示した一部切欠斜視図である。
【0027】
図1に示すように、複合リチウム酸化物を活物質とする正極板4と、リチウムを保持しうる材料を活物質とする負極板8とを、多孔質絶縁層(セパレータ)9を介して渦巻状に捲回して電極群10が構成されている。電極群10は、有底円筒形の電池ケース11内に、絶縁板12で電池ケース11と絶縁されて収容されている。電極群10の下部より導出した負極リード13は、電池ケース11の底部に接続され、電極群10の上部より導出した正極リード14は、封口板15に接続されている。電池ケース11内に非水電解液(図示せず)を注液した後、電池ケース11の開口部は、ガスケット16を介して封口板15で封口されている。
【0028】
図2(a)〜(c)は、本実施形態における電極群10の構成の一部を示した断面図である。正極集電体1の両面に正極合剤層2a、2bが形成された正極板4、及び負極集電体5の両面に負極合剤層6a、6bが形成された負極板8が、セパレータ9を介して捲回されて電極群10が構成されている。そして、正極合剤層2a、2bは、正極板4の長手方向に直交するように(紙面に対して垂直方向に)、少なくとも1以上の肉薄部が設けられている。この肉薄部は、正極集電体1の両面のうち、少なくとも一面に設けられていればよく、図2(a)には、正極集電体1の電極群10の外周側の面に肉薄部3aが設けられた例を、図2(b)には、正極集電体1の電極群10の内周側の面に肉薄部3bが設けられた例を、図2(c)には、正極集電体1の両面に肉薄部3a、3bが設けられた例を、それぞれ示す。
【0029】
図2(a)〜(c)に示すように、正極板4及び負極板8は、充電時には矢印A及びCの方向に伸び、放電時には矢印B及びDの方向に縮むが、正極合剤層2a、2bの一部に肉薄部3a、3bを設けることによって、正極板4の伸び率を向上させることができるため、正極板4及び負極板8の充放電時の伸縮を互いに一致させることができる。その結果、充放電時における正極板4と負極板8の伸縮度の差に起因した応力を緩和することができ、電極板4、8の破断または挫屈を抑制することが可能となる。
【0030】
ここで、正極合剤層2a、2bの一部に設ける肉薄部3a、3bの個数、あるいは形態(厚みや幅、間隔等)は特に制限されず、使用する負極板8の伸び率に応じて適宜決めればよい。
【0031】
以下、図3〜図9を参照しながら、正極合剤層2a、2bに設けられる肉薄部3a、3bの種々の実施形態について説明する。
【0032】
図3(a)、(b)は、捲回前の電極群の構成の一部を示した斜視図で、図3(a)は、正極集電体1の電極群10の外周側の面に肉薄部3aを設けた場合、図3(b)は、正極集電体1の電極群10の内周側の面に肉薄部3bを設けた場合をそれぞれ示す。
【0033】
ここで、肉薄部3a、3bは、正極集電体1の表面に正極合剤層を形成する一連の工程において形成することができる。すなわち、ダイコータを用いて正極集電体1の表面に正極合剤塗料を塗布する際、ダイのマニホールド内部の圧力を負圧に調整して、ダイ先端部から吐出する正極合剤塗料の量を調整することによって、通常の正極合剤層2a、2bの厚みよりも薄い肉薄部3a、3bを形成することができる。このとき、ダイのマニホールド内部を負圧にした後、圧力を開放し正極合剤塗料を再吐出するタイミングを調整することによって、正極板4の長手方向に直行する方向に、一定の幅を有する肉薄部3a、3bを形成することができる。
【0034】
その後、正極合剤塗料を乾燥させた後、正極合剤層2a、2bを、肉薄部3a、3bよりも薄くならない所定の厚みにプレスし、さらに、正極集電体1を、所定の幅および長さにスリッタ加工して長尺帯状の正極板4が得られる。
【0035】
ここで、正極合剤塗料は、正極活物質、導電材、結着材を分散媒中に入れて混合分散し、正極集電体1への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って作製する。
【0036】
正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウムおよびその変性体(コバルト酸リチウムにアルミニウムやマグネシウムを固溶させたものなど)、ニッケル酸リチウムおよびその変性体(一部ニッケルをコバルト置換させたものなど)、マンガン酸リチウムおよびその変性体などの複合酸化物等を用いることができる。
【0037】
また、導電材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、各種グラファイトを単独、あるいは組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデンの変性体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリレート単位を有するゴム粒子結着材等を用いることができる。この際、反応性官能基を導入したアクリレートモノマー、またはアクリレートオリゴマーを結着材中に混入させてもよい。
【0039】
負極板8は、次のような通常の方法により作製することができる。
【0040】
まず、負極活物質、結着材を分散媒中に入れて混合分散し、負極集電体5への塗布に最適な粘度に調整しながら混練を行って負極合剤塗料を作製する。
【0041】
ここで、負極用活物質としては、例えば、各種天然黒鉛および人造黒鉛、シリサイドなどのシリコン系複合材料、並びに各種合金組成材料を用いることができる。
【0042】
また、結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびその変性体を用いることができる。なお、リチウムイオンの受入れ性を向上させるという観点からは、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子(SBR)またはその変性体とカルボキシメチルセルロース(CMC)をはじめとするセルロース系樹脂等とを併用したものや、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子またはその変性体に上記セルロース系樹脂を少量添加したものを使用するのが好ましい。
【0043】
作製した負極合剤塗料を、負極集電体5の表面にダイコータを用いて塗布、乾燥させた後、所定の厚みまで圧縮するようにプレスして負極合剤層を形成し、その後、所定の幅および長さにスリッタ加工して長尺帯状の負極板8が得られる。
【0044】
図3(a)、(b)は、正極集電体1のいずれか一方の面に肉薄部3a、3bを設けた場合を示したが、図4に示すように、正極集電体1の両面に肉薄部3a、3bを設けてもよい。この場合も、上述した方法を用いて、正極集電体1の両面に肉薄部3a、3bを形成することができる。
【0045】
なお、図4に示すように、正極集電体1の両面に形成された肉薄部3a、3bは、正極板4の長手方向に対して同位相で形成された例を示したが、図5に示すように、位相をずらして形成してもよい。
【0046】
ところで、正極板4と負極板8とをセパレータ9を介して捲回して電極群を作製する際、曲率の違いにより負極板8における外周側の負極合剤層6aには引張応力が加わり、内周側の負極合剤層6bには圧縮応力が加わることになる。
【0047】
そこで、図6に示すように、外周側の負極合剤層6bと対峙する正極板4の内周側の正極合剤層2bに形成される肉薄部3bの幅W5を、外周側の正極合剤層2aに形成される肉薄部3aの幅W4よりも広く形成(W5>W4)することによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力をより緩和することができる。
【0048】
また、正極板4と負極板8とをセパレータ9を介して捲回して作製した電極群において、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、電極板の曲率は徐々に小さくなる。従って、上述した外周側の負極合剤層6aに加わる引張応力、及び内周側の負極合剤層6bに加わる圧縮応力も、徐々に小さくなる。
【0049】
そこで、図7に示すように、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部3a、3bの幅W1、W2、W3を徐々に狭くしながら形成(W1>W2>W3)することによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力を緩和しつつ、正極合剤層2a、2bの全体的な量を増やすことによって、肉薄部3a、3bを設けたことによる電池容量の低下を抑制することができる。
【0050】
なお、図6及び図7に示したような肉薄部3a、3bの幅を調整することによって得られる効果は、正極板4の長手方向に沿って形成される複数の肉薄部3a、3bの間隔を調整することによっても得ることができる。
【0051】
すなわち、図8に示すように、電極群の内周側の面に形成された正極合剤層2bの肉薄部3bの間隔P5を、電極群の外周側の面に形成された正極合剤層2aの肉薄部3aの間隔P4よりも狭く形成(P5<P4)することによって、図6に示した肉薄部3a、3bの構成(W5>W4)によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、図9に示すように、正極合剤層2a、2bに形成された複数の肉薄部3a、3bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部間の間隔P1、P2、P3を徐々に広くしながら形成(P1<P2<P3)することによって、図7に示した肉薄部3a、3bの構成(W1>W2>W3)によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、正極合剤層2a、2bの一部に肉薄部3a、3bを設けることによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力を緩和させたが、本実施形態では、正極合剤層2a、2bの一部に、活物質密度の小さい部位(以下、「低密度活物質層」という。)を設けることによっても、同様の効果を得ることができる。
【0054】
すなわち、負極板8の膨張収縮は、負極活物質層へのリチウムの吸蔵、放出によって生じることから、負極板8に対峙する正極板4の正極合剤層2a、2bの一部に低密度活物質層を設けることによって、負極活物質層へのリチウムの吸蔵、放出の量を局所的に減らすことができる。これにより、負極板8の膨張収縮を抑制することができるため、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力を緩和することができる。
【0055】
図10(a)、(b)は、本実施形態における正極板4の製造方法を示した斜視図である。
【0056】
まず、図10(a)に示すように、正極合剤層2a、2bに、正極集電体1の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の肉薄部3a、3bを形成する。この肉薄部3a、3bは、第1の実施形態で説明した間欠塗布の方法を用いて形成することができる。
【0057】
次に、図10(b)に示すように、正極合剤層2a、2bを、肉薄部3a、3bよりも薄くなる所定の厚みにプレスする。これにより、肉薄部3a、3bが形成された部位における正極活物質の密度は、他の正極活物質の密度よりも小さくなり、正極合剤層2a、2bの一部に、低密度活物質層7a、7bが形成される。
【0058】
第1の実施形態では、正極合剤層2a、2bを、肉薄部3a、3bよりも薄くならない所定の厚みにプレスしたのに対し、本実施形態では、正極合剤層2a、2bを、肉薄部3a、3bよりも薄くなる所定の厚みにプレスした点が異なる。従って、本実施形態では、正極合剤層2a、2bの表面は平坦となっている。それ故に、本実施形態において、正極板4と負極板8とをセパレータ9を介して捲回して形成された電極群の径は、第1の実施形態における電極群の径よりも小さくすることができる。
【0059】
ここで、正極合剤層2a、2bの一部に設ける低密度活物質層7a、7bの個数、あるいは形態(厚みや幅、間隔等)は特に制限されず、使用する負極板8の伸縮度に応じて適宜決めればよい。
【0060】
以下、図11〜図15を参照しながら、正極合剤層2a、2bに設けられる低密度活物質層7a、7bの種々の実施形態について説明する。
【0061】
図11は、第1の実施形態における図5に対応したもので、正極集電体1の両面に形成された低密度活物質層7a、7bは、正極板4の長手方向に対して位相をずらして形成されている。このような構成にすることによって、低密度活物質層7a、7bと対峙する負極活物資層に吸蔵、放出されるリチウムの量を、負極板8の両面において異ならせたことにより、電極群全体における負極板8の膨張収縮をより効果的に抑制することができる。これにより、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力をより緩和することができる。
【0062】
図12は、第1の実施形態における図6に対応したもので、正極板4の内周側の正極合剤層2bに形成される低密度活物質層7bの幅W7を、外周側の正極合剤層2aに形成される低密度活物質層7aの幅W6よりも広く形成(W7>W6)することによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力をより緩和することができる。
【0063】
なお、図13に示すように、正極集電体1の両面に形成された低密度活物質層7a、7bを、正極板4の長手方向に対して位相をずらして形成してもよい。
【0064】
図14は、第1の実施形態における図7に対応したもので、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各低密度活物質層7a、7bの幅W8、W9、W10を徐々に狭くしながら形成(W8>W9>W10)することによって、負極板8の膨張収縮に伴う正極板4に加わる応力を緩和しつつ、正極合剤層2a、2bの全体的な量を増やすことによって、低密度活物質層7a、7bを設けたことによる電池容量の低下を抑制することができる。
【0065】
図15は、第1の実施形態における図9に対応したもので、正極合剤層2a、2bに形成された複数の低密度活物質層7a、7bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各低密度活物質層7a、7bの間隔P6、P7、P8を徐々に広くしながら形成(P6<P7<P8)することによって、図14に示した低密度活物質層7a、7bの構成(W8>W9>W10)によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0066】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、上記の実施形態においては、正極板および負極板がセパレータを介して捲回された電極群について説明したが、正極板および負極板がセパレータを介して積層された電極群であってもよい。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明の構成及び効果をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
正極活物質としてコバルト酸リチウムを100重量部、導電材としてアセチレンブラックを2重量部、結着材としてポリフッ化ビニリデンを2重量部を、適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した。
【0069】
次いで、図3(a)に示したように、正極合剤塗料を、厚み15μmのアルミニウム箔(Al純度99.85%)からなる正極集電体1の長手方向に対して垂直方向の片面に、幅5mmの肉薄部3aを等ピッチに片方のみ塗布し、乾燥後に片面の正極合剤層2aまたは2bの厚みが100μmで、かつ正極合剤層2aの肉薄部3aの厚みが65μmとなる正極板4を作製した。
【0070】
次いで、この正極板4を、総厚みが165μmとなるようにプレスすることで、片面の正極合剤層2aまたは2bの厚みを75μmとし、その後、所定の幅にスリッタ加工して正極板4を作製した。
【0071】
一方、負極活物質として人造黒鉛を100重量部、結着材としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体(固形分40重量%)を2.5重量部(結着材の固形分換算で1重量部)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1重量部、および適量の水とともに攪拌し、負極合剤塗料を作製した。
【0072】
次いで、負極合剤塗料を、厚み10μmの銅箔(Cu純度99.9%)からなる負極集電体5に塗布し、乾燥後に片面側の負極合剤層6a、6bの厚みが110μmとなる負極板8を作製した。さらに、この負極板8を総厚みが180μmとなるようにプレスした後、所定の幅にスリッタ加工して負極板8を作製した。
【0073】
以上のようにして作製した正極板4と負極板8とを、厚み20μmのポリエチレン微多孔フィルムからなるセパレータ9を介して渦巻状に捲回した電極群10を作製した。この電極群10を、有底円筒形の電池ケース11に収容し、所定量のEC、DMC、MEC混合溶媒にLiPF6を1MとVCを3重量部溶解させた非水系電解液を注液した。その後、電池ケース11の開口部を封口板15で封口して、図1に示した円筒形のリチウムイオン二次電池17を作製した。
【0074】
(実施例2)
図4に示したように、正極集電体1の両面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3a、3bを、同位相、等ピッチで形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0075】
(実施例3)
図5に示したように、正極集電体1の両面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3a、3bを、異位相、等ピッチで形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0076】
(実施例4)
図6に示したように、正極集電体1の表面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3aを、正極集電体1の裏面に、幅6mm、厚さ65μmの肉薄部3bを、同位相、等ピッチで形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0077】
(実施例5)
図7に示したように、正極集電体1の両面に、厚さ65μmの肉薄部3a、3bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、肉薄部3a、3bの幅を、5mm、4.5mm、4.0mmと徐々に狭くしながら形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0078】
(実施例6)
図8に示したように、正極集電体1の表面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3aを30mmピッチで、また、正極集電体1の裏面に、幅5mm、厚さ65μmの肉薄部3bを15mmピッチで形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0079】
(実施例7)
図9に示したように、正極集電体1の両面に、厚さ65μmの肉薄部3a、3bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、肉薄部3a、3bの間隔を、20mm、30mm、40mmと徐々に広くしながら形成した以外は、実施例1と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0080】
(実施例8)
図10(a)に示したように、実施例1と同様の方法で、正極集電体1の両面に、幅5mm、厚さ75μmの肉薄部3a、3bを、同位相、等ピッチで形成した。その後、正極合剤層2a、2bの厚みが75μmとなるようにプレスして、幅5mm、厚さ75μmの低密度活物質層7a、7bを同位相、等ピッチで作製した。その後、実施例1と同様の方法で、図1に示した円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0081】
(実施例9)
図11に示したように、正極集電体1の両面に、幅5mm、厚さ75μmの低密度活物質層7a、7bを、異位相、等ピッチで形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0082】
(実施例10)
図12に示したように、正極集電体1の表面に、幅3mm、厚さ75μmの低密度活物質層7aを、正極集電体1の裏面に、幅5mm、厚さ75μmの低密度活物質層7bを、同位相、等ピッチで形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0083】
(実施例11)
図13に示したように、正極集電体1の表面に、幅3mm、厚さ75μmの低密度活物質層7aを、正極集電体1の裏面に、幅5mm、厚さ75μmの低密度活物質層7bを、位相を1/2ずらして、等ピッチで形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0084】
(実施例12)
図14に示したように、正極集電体1の両面に、厚さ75μmの低密度活物質層7a、7bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、低密度活物質層7a、7bの幅を、5mm、4.5mm、4.0mmと徐々に狭くしながら形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0085】
(実施例13)
図15に示したように、正極集電体1の両面に、厚さ75μmの低密度活物質層7a、7bを、電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、低密度活物質層7a、7bの間隔を、20mm、30mm、40mmと徐々に広くしながら形成した以外は、実施例8と同様の方法で円筒形リチウムイオン二次電池を作製した。
【0086】
上記実施例1〜13で、それぞれ100個のリチウムイオン二次電池17を作製し、充放電を500サイクル繰り返したが、サイクル劣化は生じなかった。また、充放電を500サイクル繰り返した後のリチウムイオン二次電池17の100個の中から20個を抜き出し電極群10を解体したところ、リチウム析出、電極板の破断、電極板の挫屈、電極合剤層の脱落などの不具合は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、電子機器および通信機器の多機能化に伴って高容量化が望まれている携帯用電源等の電池に有用である。
【符号の説明】
【0088】
1 正極集電体
2a、2b 正極合剤層
3a、3b 肉薄部
4 正極板
5 負極集電体
6a、6b 負極合剤層
7a、7b 低密度活物質層
8 負極板
9 セパレータ
10 電極群
11 電池ケース
12 絶縁板
13 負極リード
14 正極リード
15 封口板
16 ガスケット
17 リチウムイオン二次電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の上に正極合剤層が形成された正極板、及び負極集電体の上に負極合剤層が形成された負極板が、セパレータを介して捲回または積層された電極群を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極合剤層は、前記正極板の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の肉薄部が設けられている非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記正極合剤層の肉薄部は、前記正極集電体の両面のうち、少なくとも前記電極群の内周側の面に形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記正極合剤層の肉薄部は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された肉薄部と、前記電極群の外周側の面に形成された肉薄部とは、位相をずらして形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記正極合剤層の肉薄部は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された肉薄部の幅は、前記電極群の外周側の面に形成された肉薄部の幅よりも広く形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、前記電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部の幅を徐々に狭くしながら形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された肉薄部の間隔は、前記電極群の外周側の面に形成された肉薄部の間隔よりも狭く形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、前記電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部間の間隔を徐々に広くしながら形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記正極合剤層の肉薄部は、少なくとも前記電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位に形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記肉薄部の代わりに、前記正極合剤層は、前記正極板の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の低密度活物質層が設けられている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
前記正極合剤層の低密度活物質層は、前記正極集電体の両面のうち、少なくとも前記電極群の内周側の面に形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項11】
前記正極合剤層の低密度活物質層は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された低密度活物質層と、前記電極群の外周側の面に形成された低密度活物質層とは、位相をずらして形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項12】
前記正極合剤層の低密度活物質層は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された低密度活物質層の幅は、前記電極群の外周側の面に形成された低密度活物質層の幅よりも広く形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項13】
前記正極合剤層に形成された複数の低密度活物質層は、前記電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各低密度活物質層の幅を徐々に狭くしながら形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項14】
前記正極合剤層に形成された複数の低密度活物質層は、前記電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各低密度活物質層の間隔を徐々に広くしながら形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項15】
前記正極合剤層の低密度活物質層は、少なくとも前記電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位に形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項1】
正極集電体の上に正極合剤層が形成された正極板、及び負極集電体の上に負極合剤層が形成された負極板が、セパレータを介して捲回または積層された電極群を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極合剤層は、前記正極板の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の肉薄部が設けられている非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記正極合剤層の肉薄部は、前記正極集電体の両面のうち、少なくとも前記電極群の内周側の面に形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記正極合剤層の肉薄部は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された肉薄部と、前記電極群の外周側の面に形成された肉薄部とは、位相をずらして形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記正極合剤層の肉薄部は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された肉薄部の幅は、前記電極群の外周側の面に形成された肉薄部の幅よりも広く形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、前記電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部の幅を徐々に狭くしながら形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された肉薄部の間隔は、前記電極群の外周側の面に形成された肉薄部の間隔よりも狭く形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記正極合剤層に形成された複数の肉薄部は、前記電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各肉薄部間の間隔を徐々に広くしながら形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記正極合剤層の肉薄部は、少なくとも前記電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位に形成されている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記肉薄部の代わりに、前記正極合剤層は、前記正極板の長手方向に直行するように、少なくとも1以上の低密度活物質層が設けられている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項10】
前記正極合剤層の低密度活物質層は、前記正極集電体の両面のうち、少なくとも前記電極群の内周側の面に形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項11】
前記正極合剤層の低密度活物質層は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された低密度活物質層と、前記電極群の外周側の面に形成された低密度活物質層とは、位相をずらして形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項12】
前記正極合剤層の低密度活物質層は、前記正極集電体の両面に形成されており、前記電極群の内周側の面に形成された低密度活物質層の幅は、前記電極群の外周側の面に形成された低密度活物質層の幅よりも広く形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項13】
前記正極合剤層に形成された複数の低密度活物質層は、前記電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各低密度活物質層の幅を徐々に狭くしながら形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項14】
前記正極合剤層に形成された複数の低密度活物質層は、前記電極群の巻き始め側から巻き終わり側にかけて、各低密度活物質層の間隔を徐々に広くしながら形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【請求項15】
前記正極合剤層の低密度活物質層は、少なくとも前記電極群の巻き始め側にある曲率半径の小さい部位に形成されている、請求項9に記載の非水電解質二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−62136(P2010−62136A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144830(P2009−144830)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]