説明

非水電解質二次電池

【課題】電池の異常時において、多量のガスが発生した場合、そのガスが電池外部へ排出されることに伴い、電極群も封口板側へ移動し、封口板に形成されたガス排気孔を塞ぐ危険性があった。
【解決手段】電池ケースの内壁に、少なくとも一つの突起を形成し、電池群に当接して電池群を固定するように配置する。そのため、電極群が封口板の方向に移動する場合には、突起が電極群に食い込み、電極群の移動を抑制することができる。よって、ガス排出流路が確保され、速やかに電池ケース外部にガスを排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関し、特に安全性を向上させるための電池ケースの内壁の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒形電池は、一般に、有底円筒形の金属製の電池ケースに発電要素を電解質とともに収容し、その開口部を封口板(組立封口体を含む)により封口して密閉し構成される。リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池において、発電要素となる電極群は、例えば正極と負極との間にセパレータを配して渦巻き状に巻回して構成される。セパレータは、正極と負極との間を絶縁するとともに、電解質を保持する機能を有している。また、封口板と電池ケースには、それぞれ正極又は負極から導出された正極リード又は負極リードが接続され、正極又は負極の外部端子となっている。さらに、電池ケースに挿入された電極群と封口板との間には上部絶縁板が設けられ、電極群と電池ケースとの間には下部絶縁板が設けられることで、電極群は封口板や電池ケースと電気的に絶縁されている。
【0003】
上記、非水電解質二次電池(以下、単に「電池」と称すこともある)に用いられる電池ケースにおいては、様々な改良がなされている。例えば、電池ケースの内面に、線状に延びる複数の凸状膨出部を形成し、それぞれ傾斜させ且つ互いに交差させて格子状に配置することで、電池ケースの強度を向上することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、電池ケースの内壁に凹凸形状を形成し、電極群を挿入する際に、電池ケースと電極群との接触面積を少なくすることで、挿入時の摩擦抵抗を小さくすることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−123704号公報
【特許文献2】特開2010−113816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非水電解質二次電池では、過充電や内部短絡等の異常によって過熱状態となり、電池ケース内でガスが発生することがある。そのため、通常、電池ケースの内部圧力が所定値に達したときに作動するガス排気機構を封口板に備えている。
【0007】
しかしながら、電池の高容量化や高密度化が進む中、上記異常時に発生するガス量も多くなり、多量のガス排出に伴い、電極群が封口板側へ移動し、封口板に形成されたガス排気孔を塞ぐ危険性があった。
【0008】
そのような課題に対して、特許文献1、2のような電池ケースを用いても、電極群を固定することができず、電極群の移動を抑制することができなかった。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたもので、電池ケース内で多量のガスが発生した場合であっても、電極群の移動を抑制し、ガス排気孔からガスを速やかに排出することで、安全性に優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、正極と負極とをセパレータを介して巻回した電極群を、開口部を有する電池ケースに収容し、前記開口部をガス排気機構を有する封口板で封口した非水電解質二次電池であって、前記電池ケースの内壁には、少なくとも一つの突起が形成されており、前記突起は、前記電池群に当接して前記電池群を固定していることを特徴としている。
【0011】
このような構造によれば、電池ケース内で多量のガスが発生し、電極群に対して、電池ケースの開口部方向への力が加わった場合、上記の突起が電極群を押圧することで、その移動を抑制する。したがって、封口板に形成されたガス排気孔が電極群により塞がれることを防ぎ、ガスを速やかに電池外部へ排出することで、安全性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電池の異常により多量のガスが発生した場合においても、電極群の移動を抑制し、ガスを速やかに電池外部へ排出することで、安全性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る非水電解質二次電池の概略縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、正極と負極とをセパレータを介して巻回した電極群を、開口部を有する電池ケースに収容し、前記開口部をガス排気機構を有する封口板で封口した非水電解質二次電池であって、前記電池ケースの内壁には、少なくとも一つの突起が形成されており、前記突起は、前記電池群に当接して前記電池群を固定していることを特徴とする。
【0015】
上記したように、本発明によれば、電池の異常により多量のガスが発生した場合においても、突起が電極群を押圧し、電極群の移動を抑制することで、封口板に形成されたガス排気孔が電極群により塞がれることを防ぎ、ガスを速やかに電池外部へ排出することができる。
【0016】
ここで、「突起」とは、電池内壁から電極群方向へ突出している部分を指す。この突起は、電池ケースの作製と同時に形成してもよく、あらかじめ作製した突起を電池ケースの内壁に固定してもよい。電池ケースの作製と同時に突起を形成する方法としては、例えば、金属板を深絞り加工することで電池ケースを製造する際、電池ケースの内壁側の深絞り金型に、形成する突起の形状に対応する凹部を設けておくことで、容易に製造することができる。この場合、形成した突起によって、金型が電池ケースから抜けなくなるようなことが起こらないように、分割型の金型とし、電池ケースの形成後に、突起部分の金型を分離して抜くことが好ましい。また、あらかじめ作製した突起を電池ケース内壁に固定する場合は、作製した突起に接着材を塗布し、ガイドを用いて電池ケース内に挿入し、所定の位置に固定することで形成することができる。
【0017】
突起の材質は、電極群を損傷して内部短絡が発生することを抑制するために、絶縁物で構成することが好ましい。例えば、電池ケースの深絞り加工時に突起を形成する場合には、突起は電池ケースと同じ金属で構成されるため、突起を形成後、その表面を絶縁物で被覆することが好ましい。また、別途に突起を作製する場合は、全て絶縁物で作製してもよい。
【0018】
また、突起の大きさは限定されるものでなく、電極群と当接し固定できる大きさであれ
ばよい。したがって、より小さく形成することで、電池ケースの内容積の低下を抑えることができ、電池のエネルギー密度を上げることができる。具体的には、電池の高さ方向において、電極群の高さの3%〜20%程度の長さで形成することが好ましく、また幅は0.3mmから5mm程度の大きさで形成することが好ましい。
【0019】
本発明において、突起は、上部突出基部から先端部までを徐々に肉厚となるよう形成されることが好ましい。ここで、「上部突出基部」とは、突起の境界部分であり、電池ケースの高さ方向において最も上部に位置する部分を指す。また、「先端部」とは、突起の肉厚が最も厚くなる部分を指す。このような構成によれば、電極群を容易に収容することができる。また、上記の突起は、階段状に肉厚になっていてもよく、連続的に肉厚となっていてもよい。連続的に肉厚になるよう形成する場合は、上部突出基部と先端部とを含む面は平面でもよく、曲線状でもよい。なお、上記の突起は、突起の底部(下部突出基部)が最も肉厚になっている必要はない。すなわち、上部突出基部から先端部までを徐々に肉厚とし、先端部から下部突出基部までを徐々に肉薄となるように形成してもよい。また突起の先端部は、1つ或いは複数の点でもよく、また線状であってもよい。
【0020】
また、上記本発明の構成において、突起は、電池ケースの縦断面において、上部突出基部と先端部とを結ぶ直線が、電池ケース内壁と10°以上45°以下となるよう形成されることが好ましい。角度が大きすぎると電極群を電池ケースに挿入することが困難となり、角度が小さすぎると、本発明の効果を効果的に発揮することが困難となるためである。
【0021】
また、本発明において、電池ケースの内壁から先端部までの最短距離が、0.05mm以上1.5mm以下であることが望ましい。突起を高く形成すると、電極群を電池ケースに挿入することが難しく、また電池ケースの深絞り加工時に突起を形成する場合においては、その加工が困難となる。一方、突起が低すぎると、電極群の移動を抑制する効果を十分に得ることができなくなる。
【0022】
また、本発明は、電池ケースの底面から突起の先端部までの距離が、電池ケースの高さの1/10以上2/3以下とすることが好ましい。電極群を電池ケースに挿入する際、突起が電池ケースの上部に位置すると電極群の端部が突起に接触することにより変形しやすく、スムーズに挿入することが困難となる。しかしながら、電極群を電池ケースの1/3程度挿入した後に、電極群が突起に接触した場合は、電極群の端部は電池ケースの側壁によって固持されているため、スムーズに挿入することが可能となる。一方、突起を電池ケースの底面近くに形成した場合は、本発明の効果を十分発揮することが難しくなる。
【0023】
また、本発明において、突起は複数形成されており、その複数の突起は電池ケースの横断面において等間隔に配置されていることが好ましい。突起を複数形成することで、より強固に電極群を固定でき、移動をより確実に抑制することが可能となる。また電池ケースの横断面において等間隔に配置されることにより、電極群の中心部が電池ケースの中心に配置され、電極群の傾きがなくなるため、電池組立時の製造不良を低減することができる。
【0024】
なお、本発明において、突起の形状は限定されるものではなく、電極群の移動を食い止める効果が発揮できる形状であればよい。したがって、必ずしも先端が尖っている必要はない。
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0026】
図1は、本発明の一実施の形態に係る円筒形のリチウムイオン二次電池の概略縦断面図である。正極1と、負極2と、それらの間に介在するセパレータ3とを渦巻き状に巻回して構成された電極群4を備えている。電極群4は、非水電解質(不図示)とともに有底円筒形の金属製の電池ケース5に収納される。電池ケース5の開口部は、アウターガスケット9を介して封口板7により封口され、これにより電極群4および非水電解質は電池ケース5の内部に密閉される。
【0027】
また、電池ケース5の内部において、電極群4の上側には、上部絶縁板12が、電極群4の下側には下部絶縁板13が配設される。上部絶縁板12の外縁部は、図1に示すように電池ケースの溝部8で支持され、電極群4は、上部絶縁板12により固定される。
【0028】
封口板7は、導体からなるハット状の端子板71、環状のPTC(positive temperature coefficient: 正温度係数)サーミスタ板72、円形の上側弁板73と下側弁板75、基板76、及び絶縁体からなる環状のインナーガスケット74から構成される。インナーガスケット74は上側弁板73の周縁部と下側弁板75の周縁部との間に配設されて、上側弁板73の周縁部と下側弁板75の周縁部とが接触するのを防いでいる。また、インナーガスケット74は、基板76と端子板71の周縁部とが接触しないように、両者の間に介在される。
【0029】
端子板71、PTCサーミスタ板72、及び上側弁板73は、それらの周縁部で接続している。また、上側弁板73と下側弁板75とはそれらの中央部で接続されている。さらに下側弁板75と基板76とはそれらの周縁部で接続している。以上の結果、端子板71と基板76とは導通している。
【0030】
正極1は、正極リード10を介して基板76と接続され、端子板71が正極の外部端子となっている。一方、負極2は、負極リード11を介して電池ケース5の底面に接合され、電池ケース5が負極の外部端子となっている。
【0031】
上側弁板73と下側弁板75には、環状の溝が中央部に形成されおり、その溝が破断すると、そこに弁孔が形成される。例えば、電池100において、内部短絡等の異常によるガスが発生して、電池100内部の圧力が上昇すると、下側弁板75の溝が押し破られることで、下側弁板75と基板76との接続が断たれて、電流経路が遮断される。さらに電池100内の圧力が上昇すると、上側弁板73の溝が破断することで弁孔が形成される。これによって、電池100内に発生したガスは、基板76の内部ガス抜き孔76a、下側弁板75及び上側弁板73の弁孔、端子板71の外部ガス抜き孔71aを通って、電池外部へ排出される。このような構成とすることで、電池ケース5の内部圧力が所定値に達した時に作動するガス排気機構が封口板7に備えられる。
【0032】
上記のようなガス排気機構が作動する場合において、巻回された電極群4は、中央部に空間ができるためガスの排気がその空間に集中する。そして、電池ケース5の内部の圧力が異常に上昇すると、上部絶縁板12の貫通孔12aを通り、基板76の内部ガス抜き孔76aに向かってガスが排出される。
【0033】
従来の非水電解質二次電池によれば、上記のような異常時において、排出されるガスの圧力が高い場合、電極群4は、上部絶縁板12を押し上げて、上部絶縁板12と基板76との間にある空間へ変形しながら移動する。そのため、基板76の内部ガス抜き孔76aを塞いでしまうことがある。
【0034】
本実施形態では、図1に示すように、電池ケース5の内壁に複数の突起6が形成されている。この突起6は、上部突出基部62から先端部63まで徐々に肉厚となり、傾斜面6
1を形成している。したがって、電極群4を電池ケース5に挿入する際は、その傾斜面61に沿って挿入することで、容易に収容することができる。また、電池の異常時において、電極群4に上部へ移動する力が作用した場合、突起6の先端部63で、電極群4を固定し、その移動を抑制することができる。したがって、基板76の内部ガス抜き孔76aからのガス排出流路を確保することができ、電池の安全性を向上させることができる。ここで、本実施形態においては、下部突出基部64が最も肉厚となる形状としたが、それに限定されるものではく、上部突出基部62から先端部63までを徐々に肉厚とし、先端部63から下部突出基部64までを徐々に肉薄となるような形状としてもよい。
【0035】
なお、本発明において、電池100内に発生したガスを排出する機構は、図1に示した構造に限定されず、他の構造であってもよい。
【0036】
以上の実施形態の記述は限定事項ではなく、種々の改変が可能である。また、本発明の非水電解質二次電池が、リチウムイオン二次電池の場合は、構成材料として以下のものを用いることができる。
【0037】
正極1は、正極集電体上に正極活物質層を形成することで構成することができる。正極集電体は、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等を用いることができるが、中でもアルミニウムまたはアルミニウム合金とすることが電気化学的な溶出等が起こりにくいことから好ましい。
【0038】
正極活物質としては、リチウム含有遷移金属化合物、例えばコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムから選ばれる少なくとも一種の金属とリチウムとの複合金属酸化物が使用できる。中でも、特に、リチウムニッケル系複合酸化物を用いた場合には、本発明の効果がより発揮される。正極活物質としてリチウムニッケル系複合酸化物を用いた場合、異常時のガス発生量は、リチウムコバルト系複合酸化物に比べて、3倍程度大きくなるため、上記課題は顕在化する畏れがあるが、この場合でも、本発明により効果を得ることができる。
【0039】
また、正極活物質層は、正極活物質、結着剤、および導電剤を、分散媒とともに混練して分散させたスラリー状の合剤を調製し、この合剤を正極集電体に付着させることにより形成できる。
【0040】
負極2は、負極集電体上に負極活物質層を形成することで構成することができる。負極集電体は、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金等を用いることができるが、中でも銅、銅合金、ニッケルまたはニッケル合金とすることが電気化学的な溶出等が起こりにくいことから好ましい。負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵及び放出し得る黒鉛型結晶構造を有する材料、例えば、天然黒鉛や球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などの炭素材料や、酸化錫、酸化珪素等の金属酸化物材料、ケイ素、シリサイドなどのケイ素含有化合物などを用いることができる。負極活物質層は、負極活物質、結着剤、および分散媒、必要により導電材を含んだスラリー状の合剤を負極集電体に付着させることにより形成できる。
【0041】
セパレータ3としては、ポリオレフィン系材料を用いることができ、ポリオレフィン系材料と耐熱性材料を組み合わせたものを用いることが好ましい。ポリオレフィン多孔膜としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体の多孔膜などが例示できる。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。耐熱性材料としては、アラミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の耐熱性樹脂からなる膜、または、耐熱性樹脂と無機フィラーの混合体を用いることができる。
【0042】
また電解質は、非水溶媒にリチウム塩を溶解することにより調製される。非水溶媒は、例えば、環状カーボネートとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなど、また鎖状カーボネートとして、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなど、が用いられる。また、リチウム塩としては、電子吸引性の強いリチウム塩、例えば、LiPF、LiBF、LiClOなどが使用される。
【実施例】
【0043】
本発明の実施例を説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
以下のようにして、リチウムイオン二次電池からなる試験体を作製した。
【0045】
(実施例1)
(1)正極1の作製
正極活物質として、平均粒径が12μmであるLiNi0.8Co0.15Al0.05を使用した。正極活物質100重量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンフルオライド1.7重量部、及び導電剤としてアセチレンブラック2.5重量部を液状成分に混合させて正極合剤ペーストを調製した。
【0046】
その正極合剤ペーストを、アルミニウム箔からなる正極集電体の両面に、正極リード10の接続部分を除いて塗布し、乾燥することで、正極の前駆体を作製し、その後、それを圧延して、正極を得た。このとき、厚みが128μmとなるように正極の前駆体を圧延した。また、正極集電体として使用したアルミニウム箔の長さは667mm、幅は57mm、厚さは15μmであった。
【0047】
(2)負極2の作製
負極活物質として平均粒径が20μmのグラファイトを使用した。負極活物質100重量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデンフルオライド0.6重量部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース1重量部と、適量の水とを、双腕式練合機にて攪拌し、負極ペーストを得た。
【0048】
その負極合剤ペーストを、銅箔からなる負極集電体の両面に、負極リード11の接続部分を除いて塗布し、乾燥することで、負極の前駆体を作製し、その後、それを圧延して、負極を得た。このとき、厚みが155μmとなるように負極の前駆体を圧延した。また、負極集電体として使用した銅箔の長さは745mm、幅は58.5mm、厚さは8μmであった。
【0049】
(3)非水電解質の調整
非水電解質は、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを1対1の体積比で混合した混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの濃度で溶解することにより調製した。
【0050】
(4)電池ケース5の準備
電池ケース5は、鉄板の深絞りにより作製した。ここで、電池ケース5の内壁側の金型は、電池ケース5の突起6を形成するための凹部を有しており、深絞りにより電池ケース5を作製する工程において、その内壁に複数の突起6を形成した。この突起6は、その先端部63が電池ケース5の底面から10mmと15mmの位置の2段となるように形成し、それぞれの高さ位置において、円周方向に等間隔で4個ずつ配置させることで、全部で
8個を形成した。また、これらの突起6は、長さ5mm、幅2mm、電池ケース5の内壁面と先端部63との距離を1mmとし、上部突出基部62と先端部63とを結ぶ直線と電池ケース5の内壁面とのなす角度は、11.3°とした。
【0051】
作製された電池ケース5は、直径(外径)が18mm、高さが65mm、突起6を形成していない部分の側壁の厚みが0.15mmであった。
【0052】
(5)電池の組立
上述のようにして作製した正極1および負極2を、それらの間にセパレータ3を介在させて積層し、積層体を得た。セパレータ3には、厚さが20μmであるポリエチレン製の多孔膜を使用した。得られた積層体の正極1の巻き始めの部分に正極リード10を接続し、負極の巻き終わりの部分に負極リード11を接続した。その状態で、上記積層体を渦巻き状に巻回して電極群4を得た。そして、内部に突起を有する鉄製の電池ケース5に、ポリプロピレン製の下部絶縁板13を配置し、その上部に、この電極群4を収納した。
【0053】
次に、負極リードを電池ケースの底面に抵抗溶接法により溶接した。そして、電極群4の上部に、ポリプロピレン製の上部絶縁板12を載積し、正極リード10を、ポリプロピレン製のアウターガスケット9を取付けた封口板7の基板76にレーザー溶接法により溶接した。
【0054】
そして、電池ケース5内に非水電解質を注入した後、電池ケース5の開口端部から5mm下側の位置において、電池ケース5の周方向に一周するように、内側に突出する溝部8を形成し、これにより電極群4を電池ケース5の内部に上部絶縁板12を介して保持した。
【0055】
次に、電池ケースの溝部8の上に載せるように、アウターガスケット9を取り付けた封口板7を、電池ケース5の開口部に配置した後、電池ケース5の開口部を内側に曲げるようにかしめて、電池ケース5を封口した。以上のようにして、直径が18mm、高さが65mmである円筒形のリチウムイオン二次電池からなる試験体を10個作製した。このリチウムイオン二次電池の設計容量は2600mAhであった。
【0056】
(比較例1)
内壁に突起を形成していない電池ケースを使用したこと以外は、実施例1と同様にして10個のリチウムイオン二次電池からなる試験体を作製した。このリチウムイオン二次電池の設計容量も2600mAhであった。
【0057】
<加熱試験>
作製された各10個の試験体に対して、以下のような条件で加熱試験を実施した。まず、25℃の環境の下で1500mAの電流により電池電圧が4.25Vとなるまで充電した。充電後の試験体をホットプレートの上に置き、25℃から200℃まで毎秒1℃ずつ温度が上昇するように加熱した。そして、電池ケースに亀裂が発生した試験体の個数をカウントした。その結果を(表1)に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示したように、実施例1においては試験体に全く亀裂は生じなかった。この試作体を分解したところ、電池ケースの内壁に形成された突起により、電極群の迫り上がりを抑制できていることが確認できた。したがって、封口板の基板の内部ガス抜き孔が塞がれることなく、ガス排出流路が確保されたため、電池の内部圧力の上昇を防ぎ、電池ケースに亀裂が生じなかったと考えられる。
【0060】
これに対して、比較例1においては試験体に亀裂が生じたものが7個あった。この試作体を分解したところ、電極群が上部絶縁板を押し上げ、封口板のガス排出流路である基板の内部ガス抜き孔を塞いでいることが確認できた。したがって、電池ケースの内部圧力が過大となり、電池ケースに亀裂が生じてしまったと考えられる。
【0061】
以上の結果から、内壁に突起を有した電池ケースを用いることにより、電極群の迫上がりが大きく抑制され、封口板のガス排出流路である基板の内部ガス抜き孔が、電極群により塞がれてしまうのを防止することで、電池の安全性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、安全性がさらに向上された非水電解質二次電池を提供することができる。このような本発明の電池は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機器並びにビデオカメラ等の携帯用電子機器の電源として利用できる。また、ハイブリッドカー、電気自動車、燃料電池自動車等の交通用機器において、その電動機の駆動を補助する電源としても有用である。また、電動工具、掃除機、およびロボット等の駆動用電源としても有用であり、プラグインHEVの動力源としても利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 電極群
5 電池ケース
6 突起
61 傾斜面
62 上部突出基部
63 先端部
64 下部突出基部
7 封口板
71 端子板
71a 外部ガス抜き孔
72 PTCサーミスタ板
73 上側弁板
74 インナーガスケット
75 下側弁板
76 基板
76a 内部ガス抜き孔
8 溝部
9 アウターガスケット
10 正極リード
11 負極リード
12 上部絶縁板
12a 貫通孔
13 下部絶縁板
100 電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極とをセパレータを介して巻回した電極群を、開口部を有する電池ケースに収容し、前記開口部をガス排気機構を有する封口板で封口した非水電解質二次電池であって、
前記電池ケースの内壁には、少なくとも一つの突起が形成されており、
前記突起は、前記電池群に当接して前記電池群を固定していることを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記突起は、上部突出基部から先端部までを徐々に肉厚となるよう形成される請求項1記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記突起は、前記電池ケースの縦断面において、前記上部突出基部と前記先端部とを結ぶ直線が、電池ケース内壁と10°以上45°以下となるよう形成される請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記突起は、電池ケースの内壁から前記先端部までの最短距離が、0.05mm以上1.5mm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記電池ケースの底面から前記先端部までの距離は、前記電池ケースの高さの1/10以上2/3以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記突起は複数形成されており、前記電池ケースの横断面において等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2013−73788(P2013−73788A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212086(P2011−212086)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】