非水電解質電池および非水電解質電池の製造方法、並びに絶縁材および絶縁材の製造方法、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム
【課題】イオン伝導性の低下を抑制すると共に、充放電の繰り返しに伴う容量低下を抑制できる非水電解質電池および非水電解質電池の製造方法、並びに絶縁材および絶縁材の製造方法、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供する。
【解決手段】電解液保持層36は、多孔性高分子化合物および電解液を含む。多孔性高分子化合物の材料としては、フッ化ビニリデン単量体単位と、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位との質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が100:0〜95:5であり、重量平均分子量が50万以上150万未満であるフッ化ビニリデン重合体を用いる。
【解決手段】電解液保持層36は、多孔性高分子化合物および電解液を含む。多孔性高分子化合物の材料としては、フッ化ビニリデン単量体単位と、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位との質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が100:0〜95:5であり、重量平均分子量が50万以上150万未満であるフッ化ビニリデン重合体を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、非水電解質電池および非水電解質電池の製造方法、並びに絶縁材および絶縁材の製造方法、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。さらに詳しくは、電解液を保持する多孔性高分子化合物を備えた非水電解質電池および非水電解質電池の製造方法、並びに絶縁材および絶縁材の製造方法、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、一般的に、負極に炭素、正極にリチウム−遷移金属複合酸化物、電解液に炭酸エステルの混合物を使用する構成を有する。電解液に使用する炭酸エステルは、水や他の有機溶媒に対して酸化や還元に対し安定で、より高電圧を得ることができるため、リチウムイオン二次電池は、水系電池であるニッケル水素電池よりエネルギー密度が大きく高容量である。そのため、リチウムイオン二次電池は、ノートパソコンや携帯電話、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の二次電池として広く普及している。
【0003】
外装に、アルミラミネートフィルムなどのラミネートフィルムを使用するラミネート型リチウムイオン二次電池は、軽量であると共に、電池に於ける活物質の割合が大きいことからエネルギー密度が大きいため、広く使用されている。
【0004】
このラミネート型リチウムイオン二次電池では、金属製缶で外装した電池に比べて強度が弱いため、電池素子に印加される圧力が弱くなる。このため、電池の充放電の繰り返しに伴い電極が膨張収縮すると、その影響で、正極と負極との極間距離が不均一となり、これにより、イオン伝導性および電流密度が不均一となり、容量が低下する問題があった。
【0005】
この問題に対して、正極および負極間に、接着力を有する樹脂を設けることによって、極間距離を一定に保ち、充放電の繰り返しに伴う容量低下を抑制する技術が、提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、電極内の多孔質を有する吸熱性絶縁樹脂をスピノーダル分解またはミセル方式により電極表面に浮き上がらせることにより、電極表面に多孔質の樹脂が形成された電池が記載されている。この電池では、電極間に多孔質の樹脂が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4099969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電極間に、スピノーダル分解を用いて作製した多孔質の樹脂を配置した構成の電池では、この多孔質の樹脂の材料として、最適な材料種および組成の高分子材料を使用する必要がある。すなわち、多孔質の樹脂の材料に、最適な材料種および組成の高分子材料を使用しないと、最適な多孔性が得られないため、イオン伝導性が低下して、電池特性が低下する。また、電極間の接着性が低下し、充放電の繰り返しに伴い極間距離が不均一となるため、充放電の繰り返しに伴い容量が低下してしまう。
【0009】
したがって、本技術の目的は、イオン伝導性の低下を抑制すると共に、充放電の繰り返しに伴う容量低下を抑制できる非水電解質電池および非水電解質電池の製造方法、並びに絶縁材および絶縁材の製造方法、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本技術は、正極と、負極と、正極および負極の間にある絶縁層と、絶縁層を構成する、電解液および多孔性高分子化合物を含む電解液保持層とを有し、電解液が多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、電解液により多孔性高分子化合物が膨潤されており、多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池である。
【0011】
本技術は、多孔質基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、溶液が塗布された多孔質基材を、第1の溶媒に対して相溶性があり高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、多孔質基材上に、多孔性高分子化合物を形成する工程と、正極と、負極と、多孔質高分子化合物が形成された多孔質基材とを有し、多孔質高分子化合物が形成された多孔質基材が正極と負極との間にある電極体を作製する工程と、電極体を外装材に収納後、外装材の内部に電解液を注入し、その後、ヒートプレスする工程とを有し、高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池の製造方法である。
【0012】
本技術は、多孔性高分子化合物を含み、多孔性高分子化合物は、その空孔に電解液を保持可能であるとともに、電解液により膨潤可能であり、多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材である。
【0013】
本技術は、多孔性高分子化合物を含む絶縁材の製造方法であって、基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、溶液が塗布された基材を、第1の溶媒に対して相溶性があり高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、上記多孔性高分子化合物を形成する工程を有し、高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材の製造方法である。
【0014】
本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の非水電解質電池を備えることを特徴とする。
【0015】
本技術では、多孔性高分子化合物の材料として、質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が100:0〜95:5であり、重量平均分子量が50万以上150万未満であるフッ化ビニリデン重合体を用いる。これにより、良好なイオン伝導性および正極および負極間の良好な接着性を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本技術によれば、イオン伝導性の低下を抑制すると共に、充放電の繰り返しに伴う容量低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本技術の実施の形態による非水電解質電池の構成例を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1における巻回電極体のI−I線に沿った断面図である。
【図3】図3Aは、本技術の非水電解質電池の外観を示す斜視図である。図3Bは、非水電解質電池の構成を示す斜視分解図である。図3Cは、図3Aに示す非水電解質電池の下面の構成を示す斜視図である。
【図4】図4Aは、正極の構成例を示す斜視図である。図4Bは、正極の構成例を示す斜視図である。図4Cは、正極の構成例を示す斜視図である。図4Dは、正極の構成例を示す斜視図である。
【図5】図5Aは、本技術の電池素子の構成例を示す斜視図である。図6Bは、本技術の電池素子の構成例を示す断面図である。
【図6】図6は、図3Aの非水電解質電池のa−a’断面を示す断面図である。
【図7】図7は、ラミネートフィルムの構成例を示す断面図である。
【図8】図8A〜図8Eは、本技術の電池素子の電極タブのU字曲げ工程を示す工程図である。
【図9】図9A〜図9Eは、本技術の電池素子の電極タブのU字曲げ工程を示す工程図である。
【図10】図10A〜図10Cは、本技術の電池素子の電極タブと電極リードとの接続工程を示す工程図である。
【図11】図11A〜図11Dは、本技術の電池素子と接続した電極リードの折り曲げ工程を示す工程図である。
【図12】図12Aは、本技術の非水電解質電池の外観を示す斜視図である。図12Bは、非水電解質電池の構成を示す斜視分解図である。図12Cは、図12Aに示す非水電解質電池の下面の構成を示す斜視図である。
【図13】図13Aは、本技術の電池素子の構成例を示す斜視図である。図13Bは、本技術の電池素子の構成例を示す断面図である。
【図14】図14Aは、図12Aの非水電解質電池のb−b’断面を示す断面図である。図14Bは、図12Aの非水電解質電池のc−c’断面を示す断面図である。
【図15】図15は、本技術の実施の形態による電池パックの構成例を示すブロック図である。
【図16】図16は、本技術の非水電解質電池を用いた住宅用の蓄電システムに適用した例を示す概略図である。
【図17】図17は、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す概略図である。
【図18】図18は、サンプル1−4のヒートプレス後の絶縁層の表面のSEM写真である。
【図19】図19は、サンプル1−10のヒートプレス後の絶縁層の表面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(非水電解質電池の第1の例)
2.第2の実施の形態(非水電解質電池の第2の例)
3.第3の実施の形態(非水電解質電池の第3の例)
4.第3の実施の形態(非水電解質電池を用いた電池パックの例
5.第4の実施の形態(非水電解質電池を用いた蓄電システム等の例)
6.他の実施の形態(変形例)
【0019】
1.第1の実施の形態
(非水電解質電池の構成)
本技術の第1の実施の形態による非水電解質電池について説明する。図1は本技術の第1の実施の形態による非水電解質電池の分解斜視構成を示す。図2は図1に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面を拡大して示している。
【0020】
この非水電解質電池は、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収納されたものである。このフィルム状の外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
【0021】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料によって構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。これらの金属材料は、例えば、薄板状または網目状になっている。
【0022】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされたアルミラミネートフィルムによって構成されている。この外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁部同士が融着または接着剤によって互いに接着された構造を有している。
【0023】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料によって構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0024】
なお、外装部材40は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムによって構成されていてもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムによって構成されていてもよい。
【0025】
図1は、図2に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構成を表している。この巻回電極体30は、セパレータ35および電解液保持層36からなる絶縁層39を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37によって保護されている。巻回電極体30では、電解液保持層36が、セパレータ35の両面に形成されており、セパレータ35と正極33と、セパレータ35と負極34とが、それぞれ電解液保持層36を介して、接着している。また、正極33と負極34とが、絶縁層39を介して、接着している。正極33および負極34間に絶縁層39を設けることにより、正極33および負極34間の接着性を高めることで、充放電の繰り返しにより、極間距離が不均一になることを抑制する。なお、セパレータ35の片面のみに、電解液保持層36を形成するようにしてもよい。
【0026】
(正極)
正極33は、例えば、一対の面を有する正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層33Bは、正極集電体33Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0027】
正極集電体33Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。
【0028】
正極活物質層33Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上とを含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0029】
(正極材料)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、下記式(1)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、下記式(2)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、下記式(3)、下記式(4)もしくは下記式(5)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、下記式(6)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または下記式(7)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムまたはこれらの固溶体{Li(NixCoyMnz)O2(x、yおよびzの値は0<x<1、0<y<1、0≦z<1、x+y+z=1である。)、Li(NixCoyAlz)O2(x、yおよびzの値は0<x<1、0<y<1、0≦z<1、x+y+z=1である。)など}、マンガンスピネル(LiMn2O4)またはこれらの固溶体{Li(Mn2-vNiv)O4(vの値はv<2である。)}などのリチウム複合酸化物、またはリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LixFe1-yM2yPO4(式中、M2は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。xは、0.9≦x≦1.1の範囲内の値である。)などのオリビン構造を有するリン酸化合物が好ましい。高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0030】
LipNi(1-q-r)MnqM1rO(2-y)Xz ・・・(1)
(式中、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0031】
LiaM2bPO4 ・・・(2)
(式中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0032】
LifMn(1-g-h)NigM3hO(2-j)Fk ・・・(3)
(式中、M3は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0033】
LimNi(1-n)M4nO(2-p)Fq ・・・(4)
(式中、M4は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0034】
LirCo(1-s)M5sO(2-t)Fu ・・・(5)
(式中、M5は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0035】
LivMn2-wM6wOxFy ・・・(6)
(式中、M6は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0036】
LizM7PO4 ・・・(7)
(式中、M7は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0037】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウム、または二酸化マンガンなどの酸化物、二硫化鉄、二硫化チタンまたは硫化モリブデンなどの二硫化物、硫黄、ポリアニリンまたはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
【0038】
勿論、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、例示したもの以外のものであってもよい。
【0039】
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリフッ化ビニリデンが好ましい
【0040】
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0041】
(負極)
負極34は、例えば、一対の面を有する負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものである。ただし、負極活物質層34Bは、負極集電体34Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0042】
負極集電体34Aは、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。
【0043】
負極活物質層34Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。なお、結着剤および導電剤は、それぞれ正極で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0044】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料とは、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭またはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状または鱗片状のいずれでもよい。
【0045】
上述の炭素材料の他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような負極材料は、金属元素または半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、またはそれらの2種以上が共存するものがある。
【0046】
上記した金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種が好ましく、ケイ素がより好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0047】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0048】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0049】
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上記した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0050】
特に、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、スズ(Sn)を第1の構成元素とし、そのスズ(Sn)に加えて第2の構成元素と第3の構成元素とを含むものが好ましい。勿論、この負極材料を上記した負極材料と共に用いてもよい。第2の構成元素は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)およびケイ素(Si)からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素(B)、炭素(C)、アルミニウム(Al)およびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2の元素および第3の元素を含むことにより、サイクル特性が向上するからである。
【0051】
中でも、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を構成元素として含み、炭素(C)の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズ(Sn)およびコバルト(Co)の合計に対するコバルト(Co)の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られるからである。
【0052】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)などが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。容量特性またはサイクル特性がさらに向上するからである。
【0053】
なお、SnCoC含有材料は、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下は、スズ(Sn)などが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化が抑制されるからである。
【0054】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSでは、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、グラファイトであれば、炭素の1s軌道(C1s)のピークは284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば、炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素(C)の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0055】
なお、XPSでは、例えば、スペクトルのエネルギー軸の補正に、C1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPSにおいて、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0056】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物または高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物とは、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどであり、高分子化合物とは、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどである。
【0057】
さらに、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、チタンのようにリチウムと複合酸化物を形成する元素を含む材料でもよい。
【0058】
勿論、負極活物質として金属リチウムを用いて、金属リチウムを析出溶解させてもよい。リチウム以外のマグネシウムやアルミニウムを析出溶解させることも可能である。
【0059】
負極活物質層34Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、焼成法、または塗布のいずれにより形成してもよく、それらの2以上を組み合わせてもよい。なお、気相法としては、例えば、物理堆積法または化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法またはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金または無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0060】
負極活物質として金属リチウムを用いる場合には、負極活物質層34Bは、組み立て時から既に有するようにしてもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成されるようにしてもよい。また、負極活物質層34Bを集電体としても利用することにより、負極集電体34Aを省略するようにしてもよい。
【0061】
(絶縁層)
絶縁層39は、セパレータ35と、セパレータ35の少なくとも一面に形成された電解液保持層36とからなる。なお、セパレータ35を省略して、絶縁層39を電解液保持層36単独で構成してもよい。
【0062】
(セパレータ)
セパレータ35は、正極33と負極34とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる多孔質材である。このセパレータ35は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などによって構成されている。これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。セパレータ35には電解液が含浸されている。
【0063】
(電解液保持層)
電解液保持層36は、多孔性高分子化合物と、電解液とを含む。電解液保持層36では、電解液が多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、電解液により多孔性高分子化合物が膨潤されている。なお、電解液保持層36は、単独でまたはセパレータ35と共に、正極33と負極34とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる機能を有していてもよい。
【0064】
この電解液保持層36では、多孔性高分子化合物の材料として、最適な材料種および組成の高分子材料を使用する。これにより、電池製造工程のヒートプレス時に、多孔性高分子化合物が膨潤しすぎることにより、空孔構造が崩れて、空孔が閉じることが抑制される。そして、この電解液保持層36では、透過性が最適に調整されるため、イオン伝導性の低下が抑制され、これにより、電池特性の低下が抑制される。また、多孔性高分子化合物の材料として、最適な材料種および組成の高分子材料を使用することによって、正極および負極間の接着性を向上できるため、充放電の繰り返しに伴い、極間距離が不均一になることを抑制できる。
【0065】
多孔性高分子化合物は、例えば、以下のように形成する。すなわち、まず、高分子材料を、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させた溶液を調製し、この溶液をセパレータ35上に塗布する。次に、上記溶液が塗布されたセパレータ35を水、エチルアルコール、プロピルアルコールなど上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬する。このとき、溶媒交換が起こり、スピノーダル分解を伴う相分離が生じ、高分子材料は多孔構造を形成する。その後、乾燥することにより、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を得ることができる。なお、この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層36が形成される。
【0066】
第1の溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドンであることが好ましい。高分子材料として、後述する、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位の質量組成比が5%以下であるフッ化ビニリデン重合体を用いた場合でも、溶解性が低下せず、均一溶液を容易に調製することができるからである。
【0067】
セパレータ35上に形成される多孔性高分子化合物の面積密度は、例えば、0.1mg/cm2以上10mg/cm2以下であることが好ましい。0.1mg/cm2より小さいと、酸化分解反応に対する保護効果が発揮させづらくなるからである。10mg/cm2より大きいと、極間距離の増加によるイオン伝導経路長の冗長化により、エネルギー密度が低下する傾向にあるからである。
【0068】
高分子材料としては、フッ化ビニリデン単量体単位を含むフッ化ビニリデン重合体を用いることができる。このようなフッ化ビニリデン重合体としては、フッ化ビニリデン単独重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン二元系共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン3元系共重合体などが挙げられる。なお、フッ化ビニリデン重合体と共に、他の1種または2種以上の高分子材料を用いてもよい。
【0069】
フッ化ビニリデン重合体としては、フッ化ビニリデン単量体単位と、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位との質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が、100:0〜95:5の範囲内であるものを用いる。すなわち、フッ化ビニリデン単独重合体、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位の質量組成比が5%以下のフッ化ビニリデン共重合体を用いることができる。フッ化ビニリデン単量体単位と、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位との質量組成比が100:0〜95:5の範囲外、すなわち、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位の質量組成比が5%を超えると、高分子化合物が膨潤しやすくなり、電池製造工程のヒートプレス時に、多孔性高分子化合物の空孔構造が崩れて、空孔が閉じてしまい、これにより、透気度が高くなり、イオン伝導性が低下して、電池性能が低下する。
【0070】
フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上であることが好ましく、75万以上であることがより好ましい。このラミネートフィルム型電池では、正極と負極との間の極間距離を一定にして、良好なイオン伝導性を保つことが、重要である。極間距離を一定に保つという観点から、正極33および負極34間を絶縁層39を介して、強固に接着させることが重要である。したがって、良好な電極間の接着性を確保できる点から、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上であることが好ましく、75万以上であることがより好ましい。また、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、製造容易の点から、150万未満であることが好ましく、120万以下であることがより好ましく、100万以下であることがさらに好ましい。
【0071】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)により、測定溶媒:N−メチル−2−ピロリドン、ポリスチレン換算で測定する。
【0072】
多孔性高分子化合物の透気度としては、良好なイオン伝導性を確保できる点から、500秒/100cc以下であることが好ましく、300秒/100cc以下であることがより好ましい。また、透気度の下限は、絶縁層36の物理的な構造を考慮すると、0秒/100ccより大きい数値となる。
【0073】
電解液保持層36は、多孔性高分子化合物および電解液の他に、無機粒子を含有していてもよい。電解液保持層36に無機粒子が含有されることによって、連続フロート充電をしたときの電流の漏れをより抑制することが可能である。
【0074】
この場合、多孔性高分子化合物は、例えば、以下のように形成する。すなわち、まず、上記と同様の高分子材料(フッ化ビニリデン重合体)を、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させた溶液に、さらに極性有機溶媒に無機粒子を分散させた溶液を添加することにより塗布溶液を調製する。この溶液をセパレータ35上に塗布する。次に、上記溶液が塗布されたセパレータ35を水、エチルアルコール、プロピルアルコールなど上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬する。このとき、溶媒交換が起こり、スピノーダル分解を伴う相分離が生じ、高分子材料は多孔構造を形成する。その後、乾燥することにより、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を得ることができる。なお、この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層36が形成される。
【0075】
(無機粒子)
無機粒子としては、電気絶縁性を有する金属酸化物の粒子、金属窒化物の粒子、金属炭化物の粒子等を挙げることができる。金属酸化物としては、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)等を好適に用いることができる。これらの無機粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。フッ化ビニリデン重合体と無機粒子との質量比(フッ化ビニリデン重合体:無機粒子)としては、例えば、1:1〜1:10であり、無機粒子の添加量が多すぎると、正極および負極間の接着性が弱くなるため、1:1〜1:8が好ましく、1:2〜1:6であることがより好ましい。
【0076】
(電解液)
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解する電解質塩とを含む。
【0077】
(溶媒)
溶媒としては、例えば、高誘電率溶媒を用いることができる。高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(炭酸プロピル)などの環状炭酸エステルなどを用いることができる。高誘電率溶媒としては、環状炭酸エステルの代わりに、または環状炭酸エステルと併せて、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン、N−メチルピロリドンなどのラクタム、N−メチルオキサゾリジノンなどの環状カルバミン酸エステル、テトラメチレンスルホンなどのスルホン化合物を用いてもよい。
【0078】
溶媒としては、高誘電率溶媒と、低粘度溶媒とを混合して用いてもよい。低粘度溶媒としては、エチルメチルカーボネート(炭酸メチルエチル)、ジエチルカーボネート(炭酸ジエチレン)、ジメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル等の鎖状カルボン酸エステル、N,N−ジメチルアセトアミド等の鎖状アミド、N,N−ジエチルカルバミン酸メチル、N,N−ジエチルカルバミン酸エチル等の鎖状カルバミン酸エステル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル等が挙げられる。なお、溶媒は上記で例示した化合物に限定されるものではなく、従来提案されている化合物を広く用いることができる。
【0079】
(電解質塩)
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種または2種以上を含有している。
【0080】
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4)などの無機リチウム塩が挙げられる。また、リチウム塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3Li)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド((CF3SO2)2NLi)、リチウムビス(ペンタフルオロメタンスルホン)イミド((C2F5SO2)2NLi)、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホン)メチド((CF3SO2)3CLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体のリチウム塩、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、LiB(C2O4)2などのホウ素含有リチウム塩などが挙げられる。
【0081】
(非水電解質電池の製造方法)
この非水電解質電池は、例えば、以下の製造方法によって製造される。
【0082】
(正極の製造)
まず、正極33を作製する。例えば、正極材料と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードまたはバーコータなどによって正極集電体33Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して正極活物質層33Bを形成する。この場合には、圧縮成型を複数回に渡って繰り返してもよい。
【0083】
(負極の製造)
次に、負極34を作製する。例えば、負極材料と、結着剤と、必要に応じて導電剤とを混合して負極合剤としたのち、これを有機溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードまたはバーコータなどによって負極集電体34Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して負極活物質層34Bを形成する。
【0084】
(多孔性高分子化合物の形成)
まず、上述した高分子材料をセパレータ35の片面または両面に塗布する。この高分子材料を、N−メチル−2−ピロリドンやγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させ、セパレータ35上に塗布し、水、エチルアルコール、プロピルアルコールなど上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上述した高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬させた後、乾燥させる。これにより、片面または両面に多孔性高分子化合物が形成されたセパレータ35を作製する。
【0085】
次に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、片面または両面に多孔性高分子化合物が形成されたセパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。この巻回体を袋状の外装部材40の内部に収納する。
【0086】
電解液を調製して、外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後にヒートプレスを行う。すなわち、外装部材40に加重をかけながら加熱し、多孔性高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液保持層36が形成される。ヒートプレス時において、電解液保持層36では、多孔性高分子化合物が膨潤するが、多孔性高分子化合物の空孔構造は崩れずに、その空孔が維持されている。以上により、非水電解質電池が完成する。
【0087】
2.第2の実施の形態
(非水電解質電池の構成)
本技術の第2の実施による形態の非水電解質電池の構成例について説明する。図3Aは、本技術の第2の実施の形態による非水電解質電池の外観を示す斜視図である。図3Bは、本技術の第2の実施の形態による非水電解質電池の構成を示す斜視分解図である。また、図3Cは、図3Aに示す非水電解質電池の下面の構成を示す斜視図であり、なお、下記の説明では、非水電解質電池51のうち、正極リード53が導出される部分をトップ部、トップ部に対向し、負極リード54が導出される部分をボトム部、トップ部とボトム部とに挟まれた両辺をサイド部とする。また、電極、電極リード等について、サイド部−サイド部方向を幅として説明する。
【0088】
図3A〜図3Cに示すように、本技術の非水電解質電池51は、例えば、充電および放電可能な二次電池であり、電池素子60がラミネートフィルム52にて外装されたものであり、ラミネートフィルム52同士が封止された部分からは、電池素子60と接続された正極リード53および負極リード54が電池外部に導出されている。正極リード53および負極リード54は、互いに対向する辺から導出されている。
【0089】
(電池素子)
図4A〜図4Bは、電池素子を構成する正極の構成例を示す。図4C〜図4Bは、電池素子を構成する負極の構成例を示す。図5A〜図5Bは、ラミネートフィルムに外装される前の電池素子の構成例を示す。電池素子60は、図4Aまたは図4Bに示す矩形状の正極61と、図4Cまたは図4Dに示す矩形状の負極62とが、セパレータ63を介して積層された構成である。具体的には、図5Aおよび図5Bに示すように、正極61および負極62がつづら折りに折り曲げられたセパレータ63を介して交互に積層された構成である。第2の実施の形態では、電池素子60の最表層がセパレータ63となるように、セパレータ63、負極62、セパレータ63、正極61、・・・負極62、セパレータ63のように順に積層された電池素子60を用いる。なお、図5A〜図5Bにおいて、図示は省略するが、セパレータ63の両面には、多孔性高分子化合物が形成されている。この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層が形成される。
【0090】
図6は、図3Aの非水電解質電池のa−a’断面を示す断面図である。図6に示すように、電池素子60では、電解液保持層66が、セパレータ63の両面に形成されており、セパレータ63と正極61と、セパレータ63と負極62とが、それぞれ電解液保持層66を介して、接着している。また、正極61と負極62とが、絶縁層67を介して、接着している。正極61および負極62間に絶縁層67を設けることにより、正極61および負極62間の接着性を高めることで、充放電の繰り返しにより、極間距離が不均一になることを抑制する。なお、セパレータ63の片面のみに、電解液保持層66を形成するようにしてもよい。
【0091】
電池素子60からは、複数枚の正極61からそれぞれ延出される正極タブ61Cと、複数枚の負極62からそれぞれ延出される負極タブ62Cとが導出されている。複数枚重ねられた正極タブ61Cは、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた正極タブ61Cの先端部には、超音波溶接または抵抗溶接等の方法により正極リード53が接続されている。
【0092】
また、正極61と同様に、負極タブ62Cは、複数枚重ねられた上で、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた負極タブ62Cの先端部には、超音波溶接または抵抗溶接等の方法により負極リード54が接続されている。
【0093】
(正極リード)
正極タブ61Cと接続する正極リード53は、例えばアルミニウム(Al)等からなる金属リード体を用いることができる。本技術の大容量の非水電解質電池51では、大電流を取り出すために、従来に比して正極リード53の幅を太く、厚みを厚く設定する。
【0094】
正極リード53の幅は任意に設定可能であるが、大電流を取り出せるという点で、正極リード53の幅waが正極61の幅Waに対して50%以上100%以下であることが好ましい。
【0095】
正極リード53の厚みは、150μm以上250μm以下とすることが好ましい。正極リード53の厚みが150μm未満の場合、取り出せる電流量が小さくなってしまう。正極リード53の厚みが250μmを超える場合、正極リード53が厚すぎるため、リード導出辺におけるラミネートフィルム52の密封性が低下して、水分浸入が容易になる。
【0096】
なお、正極リード53の一部分には、ラミネートフィルム52と正極リード53との接着性を向上させるための密着フィルムであるシーラント55が設けられる。シーラント55は、金属材料との接着性の高い樹脂材料により構成され、例えば正極リード53が上述した金属材料から構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0097】
シーラント55の厚みは、70μm以上130μm以下とすることが好ましい。70μm未満では正極リード53とラミネートフィルム52との接着性に劣り、130μmを超えると熱融着時における溶融樹脂の流動量が多く、製造工程上好ましくない。
【0098】
(負極リード)
負極タブ62Cと接続する負極リード54は、例えばニッケル(Ni)等からなる金属リード体を用いることができる。本技術の大容量の非水電解質電池51では、大電流を取り出すために、従来に比して負極リード54の幅を太く、厚みを厚く設定する。負極リード54の幅は、後述する負極タブ62Cの幅と略同等とすることが好ましい。
【0099】
負極リード54の幅は任意に設定可能であるが、大電流を取り出せるという点で、負極リード54の幅wbが負極62の幅Wbに対して50%以上100%以下であることが好ましい。
【0100】
負極リード54の厚みは、正極リード53と同様に150μm以上250μm以下とすることが好ましい。正極リード53の厚みが150μm未満の場合、取り出せる電流量が小さくなってしまう。正極リード53の厚みが250μmを超える場合、正極リード53が厚すぎるため、リード導出辺におけるラミネートフィルム52の密封性が低下して、水分浸入が容易になる。
【0101】
負極リード54の一部分には、正極リード53と同様に、ラミネートフィルム52と負極リード54との接着性を向上させるための密着フィルムであるシーラント55が設けられる。
【0102】
なお、正極リード53の幅waと負極リード54の幅wbは通常同等の幅w(以下、正極リード53幅waおよび負極リード54幅wbが同等の場合には、正極リード53幅waおよび負極リード54幅wbを区別せずに電極リード幅wと適宜称する)とされる。そして、電極リード幅wは、正極61の幅Waと負極62の幅Wbが異なる場合には、正極61の幅Waと負極62の幅Wbのうち広い方の電極幅Wに対して50%以上100%以下であることが好ましい。
【0103】
(正極)
図4A〜図4Bに示すように、正極61は、正極活物質を含有する正極活物質層61Bが、正極集電体61Aの両面上に形成されてなる。正極集電体61Aとしては、例えばアルミニウム(Al)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔が用いられる。
【0104】
また、正極集電体61Aから一体に正極タブ61Cが延出されている。複数枚重ねられた正極タブ61Cは、断面が略U字状となるように折り曲げられ、先端部には超音波溶接または抵抗溶接等の方法により正極リード53と接続される。
【0105】
正極活物質層61Bは、正極集電体61Aの矩形状の主面部上に形成される。正極集電体61Aが露出した状態の延出部は、正極リード53を接続するための接続タブである正極タブ61Cとしての機能を備える。正極タブ61Cの幅は任意に設定可能である。特に、正極リード53および負極リード54を同一辺から導出する場合には、正極タブ61Cの幅は正極61の幅の50%未満とする必要がある。このような正極61は、矩形状の正極集電体61Aの一辺に、正極集電体露出部を設けるようにして正極活物質層61Bを形成し、不要な部分を切断することで得られる。
【0106】
正極活物質層61Bの構成は、第1の実施の形態の正極活物質層33Bと同様である。すなわち、正極活物質層61Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上とを含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。正極材料、結着剤、導電剤は、第1の実施の形態と同様である。
【0107】
(負極)
図4C〜図4Dに示すように、負極62は、負極活物質を含有する負極活物質層62Bが、負極集電体62Aの両面上に形成されてなる。負極集電体62Aとしては、例えば銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔により構成されている。
【0108】
また、負極集電体62Aから一体に負極タブ62Cが延出されている。複数枚重ねられた負極タブ62Cは、断面が略U字状となるように折り曲げられ、先端部には超音波溶接または抵抗溶接等の方法により負極リード54が接続される。
【0109】
負極活物質層62Bは、負極集電体62Aの矩形状の主面部上に形成される。負極集電体62Aが露出した状態の延出部は、負極リード54を接続するための接続タブである負極タブ62Cとしての機能を備える。負極タブ62Cの幅は任意に設定可能である。特に、正極リード53および負極リード54を同一辺から導出する場合には、負極タブ62Cの幅は負極62の幅の50%未満とする必要がある。このような負極62は、矩形状の負極集電体62Aの一辺に、負極集電体露出部を設けるようにして負極活物質層62Bを形成し、不要な部分を切断することで得られる。
【0110】
(負極活物質層)
負極活物質層62Bの構成は、第1の実施の形態の負極活物質層34Bと同様である。すなわち、負極活物質層34Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。負極材料、結着剤、導電剤は、第1の実施の形態と同様である。
【0111】
(絶縁層)
絶縁層67は、セパレータ63と、セパレータ63の少なくとも一面に形成された電解液保持層66とからなる。なお、セパレータ63を省略して、絶縁層67を電解液保持層66単独で構成してもよい。
【0112】
(セパレータ)
セパレータ63は、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の薄膜から構成されている。具体的には、例えばポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料からなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の多孔質膜を含むものは、正極61と負極62との分離性に優れ、内部短絡や開回路電圧の低下をいっそう低減できるので好適である。セパレータ63には、電解液が含浸されている。
【0113】
(電解液保持層)
電解液保持層66は、第1の実施の形態の電解液保持層36と同様である。すなわち、電解液保持層66は、第1の実施の形態と同様の多孔性高分子化合物と、第1の実施の形態と同様の電解液とを含む。電解液保持層66では、電解液が多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、電解液により多孔性高分子化合物が膨潤されている。なお、電解液保持層66は、単独でまたはセパレータ63と共に、正極61と負極63とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる機能を有していてもよい。
【0114】
本技術の大容量の非水電解質電池において、セパレータ63の厚みは5μm以上25μm以下が好適に使用可能であり、7μm以上20μm以下がより好ましい。セパレータ63は、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0115】
電解液保持層66は、多孔性高分子化合物および電解液の他に、第1の実施の形態と同様、無機粒子を含有していてもよい。電解液保持層66に無機粒子が含有されることによって、連続フロート充電をしたときの電流の漏れをより抑制することが可能である。
【0116】
電池素子60の厚みは、5mm以上20mm以下であることが好ましい。5mm未満であると、薄型であるため、蓄熱の影響が少なく、セル表面に凹凸がなくとも熱が逃げやすい傾向がある。一方、20mmを超えると、電池表面から電池中央部までの距離が大きくなりすぎて、電池表面からの放熱だけでは電池内に温度差ができてしまい、寿命性能に影響がでる傾向がある。
【0117】
また、電池素子60の放電容量は、3Ah以上50Ah以下であることが好ましい。3Ah未満であると、電池容量が小さいため、集電箔の厚みを厚くするなど電池容量を下げて抵抗を落とすなど他の手法でも発熱を抑えることができる傾向がある。50Ahを超えると、電池熱容量が大きくなり、放熱しにくくなってしまい、電池内での温度ばらつきも大きくなる傾向がある。ここで、上述の電池素子60の放電容量は、非水電解質電池1の公称容量であり、公称容量は、充電条件が上限電圧3.6V、充電電流0.2Cの定電圧定電流充電、放電条件が放電終止電圧2.0V、放電電流0.2Cの定電流放電の場合における放電容量から算出したものである。
【0118】
(ラミネートフィルム)
電池素子60を外装する外装材であるラミネートフィルム52は、金属箔からなる金属層52aの両面に樹脂層を設けた構成とされている。ラミネートフィルムの一般的な構成は、図7に示すように、外側樹脂層52b/金属層52a/内側樹脂層52cの積層構造で表すことができ、内側樹脂層52cが電池素子60に対向するように形成されている。外側樹脂層52bおよび内側樹脂層52cと、金属層52aとの間には、厚さ2μm以上7μm以下程度の接着層を設けても良い。外側樹脂層52bおよび内側樹脂層52cは、それぞれ複数層で構成されてもよい。
【0119】
金属層52aを構成する金属材料としては、耐透湿性のバリア膜としての機能を備えていれば良く、アルミニウム(Al)箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケル(Ni)箔およびメッキを施した鉄(Fe)箔などを使用することができる。なかでも、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウム箔を好適に用いることが好ましい。特に、加工性の点から、例えば焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)、(JIS A8079P−O)または(JIS A1N30−O)等を用いるのが好ましい。
【0120】
金属層52aの厚みは、30μm以上150μm以下とすることが好ましい。30μm未満の場合、材料強度に劣ってしまう。また、150μmを超えた場合、加工が著しく困難になるとともに、ラミネートフィルム52の厚さが増してしまい、非水電解質電池の体積効率の低下につながってしまう。
【0121】
内側樹脂層52cは、熱で溶けて互いに融着する部分であり、ポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0122】
内側樹脂層52cの厚みは、20μm以上50μm以下とすることが好ましい。20μm未満では接着性が低下するとともに、圧力緩衝作用が不十分となってしまい、短絡が発生しやすくなる。また、50μmを超えると、内側樹脂層52cを通じて水分が浸入しやすくなっていまい、電池内部でのガス発生およびそれに伴う電池膨れ、ならびに電池特性の低下が生じるおそれがある。なお、内側樹脂層52cの厚みは、電池素子60に外装前の状態における厚みである。電池素子60に対してラミネートフィルム52を外装し、封止した後は、2層の内側樹脂層52cが互いに融着されるため、内側樹脂層42cの厚みは上記範囲から外れる場合もある。
【0123】
なお、内側樹脂層52cは、例えば型押し等により表面に凹凸を付けても良い。これにより、電池素子60の最表層の電解液保持層66とラミネートフィルム52間での滑り性が悪くなり、電池素子60の移動抑制効果を高くすることができる。
【0124】
外側樹脂層52bとしては、外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル等が用いられる。具体的には、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0125】
なお、内側樹脂層52c同士を熱融着により溶融させてラミネートフィルム52間を接着するため、外側樹脂層52bは、内側樹脂層52cよりも高い融点を有することが好ましい。熱融着時に内側樹脂層52cのみを溶融させるためである。このため、外側樹脂層52bは、内側樹脂層52cとして選択された樹脂材料によって使用可能な材料を選択可能である。
【0126】
外側樹脂層52bの厚みは、25μm以上35μm以下とすることが好ましい。25μm未満では保護層としての機能に劣り、35μmを超えると非水電解質電池51の体積効率の低下につながってしまう。
【0127】
上述の様な電池素子60は、上述のラミネートフィルム52間にて外装される。このとき、正極タブ61Cと接続された正極リード53および負極タブ62Cと接続された負極リード54がラミネートフィルム52の封止部から電池外部に導出される。図3Bに示されるように、ラミネートフィルム52間には、予め深絞り加工により形成された電池素子収納部57が設けられている。電池素子60は、電池素子収納部57に収納される。
【0128】
本技術では、電池素子60の周辺部をヒータヘッドによって加熱することにより、電池素子60を両面から覆うラミネートフィルム52間同士を熱融着させて封止する。特に、リード導出辺においては、正極リード53および負極リード54を避ける形状に切り欠きが設けられたヒータヘッドによってラミネートフィルム52を熱融着することが好ましい。正極リード53および負極リード54にかかる負荷を小さくして電池を作製することができるためである。この方法により、電池作製時のショートを防ぐことができる。
【0129】
本技術の非水電解質電池51は、熱融着によるラミネートフィルム52間の封止後におけるリード導出部の厚みを制御することにより、高い安全性および電池特性を備えている。
【0130】
(非水電解質電池の製造方法)
上述の非水電解質電池51は、例えば、以下のような工程で作製することができる。
【0131】
(正極の作製)
正極材料と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを帯状の正極集電体61Aの両面に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層61Bを形成し、正極シートとする。この正極シートを所定の寸法に切断し、正極61を作製する。このとき、正極集電体61Aの一部を露出するようにして正極活物質層61Bを形成する。この正極集電体61A露出部分を正極タブ61Cとする。また、必要に応じて正極集電体露出部の不要な部分を切断して正極タブ61Cを形成してもよい。これにより、正極タブ61Cが一体に形成された正極61が得られる。
【0132】
(負極の作製)
負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体62Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層62Bを形成し、負極シートとする。この負極シートを所定の寸法に切断し、負極62を作製する。このとき、負極集電体62Aの一部を露出するようにして負極活物質層62Bを形成する。この負極集電体62A露出部分を負極タブ62Cとする。また、必要に応じて負極集電体露出部の不要な部分を切断して負極タブ62Cを形成してもよい。これにより、負極タブ62Cが一体に形成された負極62が得られる。
【0133】
(多孔性高分子化合物の形成)
セパレータ63の表面に多孔性高分子化合物を形成する。多孔性高分子化合物は、例えば、以下のように形成する。すなわち、まず、高分子材料を、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させた溶液を調製し、この溶液をセパレータ63上に塗布する。次に、上記溶液が塗布されたセパレータ63を水、エチルアルコール、プロピルアルコールなど上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬する。このとき、溶媒交換が起こり、スピノーダル分解を伴う相分離が生じ、高分子材料は多孔構造を形成する。その後、乾燥することにより、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を得ることができる。なお、この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層66が形成される。
【0134】
(積層工程)
次に、図5A〜図5Bに示すように、正極61と負極62とを、つづら折りにしたセパレータ63間に交互に挿入し、例えば、セパレータ63、負極62、セパレータ63、正極61、セパレータ63、負極62・・・セパレータ63、負極62、セパレータ63となるように重ね合わせて所定数の正極61および負極62を積層する。続いて、正極61、負極62およびセパレータ63が密着するように押圧した状態で固定し、電池素子60を作製する。電池素子60をより強固に固定するには、例えば接着テープ等の固定部材56を用いることができる。固定部材56を用いて固定する場合には、例えば電池素子60の両サイド部に固定部材56を設ける。
【0135】
次に、複数枚の正極タブ61Cおよび複数枚の負極タブ62Cを断面U字状となるように折り曲げる。電極タブは、例えば下記のようにして折り曲げられる。
【0136】
(第1のタブU字曲げ工程)
積層した正極61から引き出された複数の正極タブ61Cおよび積層した負極62から引き出された複数の負極タブ62Cを、断面略U字形状となるように折り曲げる。第1のU字曲げ工程は、予め正極タブ61Cおよび負極タブ62Cに最適なU字曲げ形状を持たせるための工程である。予め最適なU字曲げ形状を持たせることにより、後に正極リード53および負極リード54と接続後の正極タブ61Cおよび負極タブ62Cを折り曲げてU字曲げ部を形成する際に正極タブ61Cおよび負極タブ62Cに引張り応力などのストレスがかからないようにすることができる。
【0137】
図8A〜図8Eは、負極タブ62Cの第1のU字曲げ工程を説明する側面図である。図8A〜図8Eにおいては、負極タブ62Cについて行われる各工程を説明する。なお、正極集電体61Aについても同様にして第1のU字曲げ工程が行われる。
【0138】
まず、図8Aに示すように、U字曲げ用薄板71を有するワークセット台70aの上部に電池素子を配設する。U字曲げ用薄板71は、電池素子60の厚みよりもやや小さい分だけ、具体的には、少なくとも複数の負極タブ62C1〜負極タブ62C4の総厚分小さい分だけ、ワークセット台70aから突出するように設置されている。このような構成とすることにより、負極タブ62C4の曲げ外周側が電池素子60の厚みの範囲内に位置するため、非水電解質電池51の厚みの増大や外観不良が生じるのを防止することができる。
【0139】
続いて、図8Bに示すように、電池素子60を下降させるか、もしくはワークセット台70aを上昇させる。このとき、電池素子60とU字曲げ用薄板71との間隙が小さいほど非水電解質電池51のスペース効率が向上するため、例えば電池素子60とU字曲げ用薄板71との間隙が徐々に小さくなるようにする。
【0140】
図8Cに示すように、電池素子60がワークセット台70a上に載置され、負極タブ62Cに曲げ部を形成した後、図8Dおよび図8Eに示すようにローラ72を下降させて負極タブ62CがU字形状に折り曲げられる。
【0141】
U字曲げ用薄板71は、厚みが1mm以下、例えば0.5mm程度が好ましい。U字曲げ用薄板71には、このような薄さでも複数の正極タブ61Cまたは負極タブ62Cに曲げ形状を形成するために必要な強度を有する材料を用いることができる。U字曲げ用薄板71に必要な強度は、正極61および負極62の積層枚数や、正極タブ61Cおよび負極タブ62Cに用いる材料の硬度等によって変わる。U字曲げ用薄板71が薄いほど、曲げ最内周の負極タブ62C1の曲率を小さくすることができ、負極タブ62Cの折り曲げに必要なスペースを小さくすることができるため好ましい。U字曲げ用薄板71としては、例えばステンレス(SUS)、強化プラスティック材およびめっきを施した鋼材などを用いることができる。
【0142】
(集電体露出部切断工程)
次に、U字曲げ部を形成した負極タブ62Cの先端を切り揃える。集電体露出部切断工程では、予め最適な形状を有するU字曲げ部を形成し、そのU字曲げ形状に合わせて正極タブ61Cおよび負極タブ62Cの余剰分を切断する。図9A〜図9Eは、負極タブ62Cの切断工程を説明する側面図である。なお、正極タブ61Cについても同様にして集電体露出部切断工程が行われる。
【0143】
図9Aに示すように、第1のU字曲げ工程においてU字曲げ部が形成された電池素子60の上面と底面を反転させ、集電体たるみ用逃げ部73を有するワークセット台70b上に電池素子60を固定する。
【0144】
次に、図9Bに示すように、U字曲げ部が形成された負極タブ62C1〜負極タブ62C4のU字曲げ部から先端に至る先端部分がワークセット台70bに沿って略L字形状となるように先端部分を変形させる。このとき、再度U字曲げ部を形成するために必要な形状を維持することにより、曲げ外周側の負極タブ62C4ほど大きなたるみが生じる。このようなたるみがワークセット台70bの集電体たるみ用逃げ部33に入り込むことにより、負極タブ62C1〜負極タブ62C4をストレスなく変形させることができる。なお、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端部分を固定した状態で負極タブ62C1〜負極タブ62C4を変形させるようにしてもよい。
【0145】
続いて、図9Cに示すように、集電体押さえ74にて負極タブ62C1〜負極タブ62C4をワークセット台70bに押さえつけた後、図9Dおよび図9Eに示すように、例えば集電体押さえ74に沿うように設けられた切断用刃75で負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端を切り揃える。負極タブ62C1〜負極タブ62C4の切断箇所は、後に再度U字曲げを行った際に負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端が電池素子60の厚みの範囲内に位置するように、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端の余剰分を少なくとも切断するようにする。
【0146】
(電極リード接続工程)
続いて、負極タブ62C1〜負極タブ62C4と、負極リード54との接続を行う。タブ接続工程では、第1のU字曲げ工程で形成した最適なU字曲げ形状を維持しながら正極タブ61Cおよび負極タブ62Cと、正極リード53および負極リード54を固着する。これにより、正極タブ61Cおよび正極リード53と、負極タブ62Cおよび負極リード54が電気的に接続される。図10A〜図10Cは、負極タブ62C1〜負極タブ62C4と、負極リード54との接続工程を説明する側面図である。なお、図示はしないが、負極リード54にはあらかじめシーラント55が設けられているものとする。正極タブ61Cと正極リード53についても同様にして接続工程が行われる。
【0147】
図10Aに示すように、電極端子切断工程において負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端余剰分を切断した電池素子60の上面と底面を再度反転させる。次に、図10Bに示すように、集電体形成維持用板76を有するワークセット台70c上に電池素子60を固定する。負極タブ62C1の曲げ内周側には集電体形成維持用板76の先端が位置しており、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の曲げ形状を維持するとともに、固着装置から発生する例えば超音波振動などの外的要因による影響を防止する。
【0148】
続いて、図10Cに示すように、例えば超音波溶着により負極タブ62C1〜負極タブ62C4と負極リード54とを固着する。超音波溶着には、例えば、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の下部に備えられたアンビル77aと、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の上部に備えられたホーン77bが用いられる。アンビル77aには予め負極タブ62C1〜負極タブ62C4がセットされ、ホーン77bが下降してアンビル77aとホーン77bとで負極タブ62C1〜負極タブ62C4および負極リード54が挟持される。そして、アンビル77aとホーン77bとにより、負極タブ62C1〜負極タブ62C4および負極リード54に超音波振動が与えられる。これにより、負極タブ62C1〜負極タブ62C4および負極リード54が互いに固着される。
【0149】
なお、タブ接続工程においては、図10Cを参照して上述した内周側曲げしろRiが形成されるように負極リード54を負極タブ62Cに接続するとよい。なお、内周側曲げしろRiは、正極リード53および負極リード54の厚み以上とする。
【0150】
次に、負極タブ62C1〜負極タブ62C4と固着した負極リード54を所定の形状に折り曲げる。図11A〜図11Eは、負極リード54のタブ折り曲げ工程を説明する側面図である。また、正極タブ61Cと正極リード53についても同様にしてタブ折り曲げ工程・電極リード接続工程が行われる。
【0151】
図11Aに示すように、接続工程において負極タブ62C1〜負極タブ62C4と負極リード54とが固着された電池素子60の上面と底面を再度反転させて、集電体たるみ用逃げ部73を有するワークセット台70d上に電池素子60を固定する。負極タブ62C1〜負極タブ62C4と負極リード54との接続部分は、タブ折り曲げ台78a上に載置する。
【0152】
続いて、図11Bに示すように、負極タブ62C1〜負極タブ62C4と負極リード54との接続部分をブロック78bにて押さえ、図11Cに示すようにローラ79を降下させることにより、タブ折り曲げ台78aおよびブロック78bから突出した負極リード54を折り曲げる。
【0153】
(第2のタブU字曲げ工程)
続いて、図11Dに示すように、電池素子60と、負極タブ62C1〜負極タブ62C4とを押さえるブロック78bとの間に介在するようにU字曲げ用薄板71を配置する。続いて、図11Eに示すように、負極タブ62C1〜負極タブ62C4を図8A〜図8Eに示す第1のU字曲げ工程で形成したU字曲げ形状に沿って90°折り曲げ、電池素子60を作製する。このとき、上述したように、図10Cのように内周側曲げしろRiが形成されるように負極リード54と負極タブ62Cとを接続しておく。これにより、第2のタブU字曲げ工程において、負極リード54が積層された正極61および負極62に当接することなく負極タブ62Cを電極面と略垂直の方向にまで折り曲げることができる。
【0154】
このとき、負極リード54は予め熱溶着されたシーラント55と一緒に折り曲げるのが好ましい。負極リード54の折り曲げ部をシーラント55が被覆することになり、負極リード54とラミネートフィルム52とが直接接触しない構造とすることができる。この構造により、長期的な振動、衝撃などによるラミネートフィルム52内部の樹脂層と負極リード54との擦れ、ラミネートフィルム52の破損、ラミネートフィルム52の金属層との短絡の危険性を大幅に低減することができる。このようにして、電池素子60が作製される。
【0155】
(外装工程)
このあと、作製した電池素子60をラミネートフィルム52で外装し、サイド部の一方と、トップ部およびボトム部をヒータヘッドで加熱して熱融着する。正極リード53および負極リード54が導出されたトップ部およびボトム部は、例えば切り欠きを有するヒータヘッドで加熱して熱融着する。
【0156】
続いて、熱融着していない他のサイド部の開口から、電解液を注液する。最後に、注液を行ったサイド部のラミネートフィルム52を熱融着し、電池素子60をラミネートフィルム52内に封止する。この後、ラミネートフィルム52の外部から、電池素子60に対して、加圧するとともに加熱するヒートプレスを行い、電解液をセパレータ63の表面に形成された多孔性高分子化合物に保持させる。これにより、電解液保持層66が形成される。ヒートプレス時において、電解液保持層66では、多孔性高分子化合物が膨潤するが、多孔性高分子化合物の空孔構造は崩れずに、その空孔が維持されている。以上により、非水電解質電池51が完成する。
【0157】
3.第3の実施の形態
(非水電解質電池の構成)
本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池について説明する。図12Aは、本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池の外観を示す斜視図であり、図12Bは、本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池の構成を示す斜視分解図である。また、図12Cは、図12Aに示す非水電解質電池の下面の構成を示す斜視図である。
【0158】
第3の実施の形態の非水電解質電池は、電池素子の構成などが第2の実施の形態と異なる点以外は、第2の実施の形態と同様である。したがって、以下では、第2の実施の形態と異なる点を中心に説明し、第2の実施の形態と重複する部分の説明を適宜省略する。なお、図12〜図14において、第2の実施の形態の非水電解質電池と同一または対応する部分については、同一の符号を付す。また、下記の説明では、非水電解質電池81のうち、正極リード53および負極リード54が導出される部分をトップ部、トップ部に対向する部分をボトム部、トップ部とボトム部とに挟まれた両辺をサイド部とする。また、電極、電極リード等について、サイド部−サイド部方向を幅として説明する。
【0159】
図12A〜図12Cに示すように、第3の実施の形態の非水電解質電池81は、例えば、充電および放電可能な二次電池であり、電池素子90がラミネートフィルム52にて外装されたものであり、ラミネートフィルム52同士が封止された部分からは、電池素子90と接続された正極リード53および負極リード54が電池外部に導出されている。正極リード53および負極リード54は、同一辺から導出されている。
【0160】
正極リード53の幅waは、正極61の幅Waの50%未満である必要がある。正極リード53が、負極リード54と接触しない位置に設ける必要があるためである。また、この場合、ラミネートフィルム52の封止性と高電流充放電とを両立するために、正極リード53の幅waは正極61の幅Waの15%以上40%以下であることが好ましく35%以上40%以下であることがより好ましい。また、負極リード54の幅wbは、負極62の幅Wbの50%未満である必要がある。負極リード54が、正極リード53と接触しない位置に設ける必要があるためである。また、この場合、ラミネートフィルム52の封止性と高電流充放電とを両立するために、負極リード54の幅wbは負極62の幅Wbの15%以上40%以下であることが好ましく35%以上40%以下であることがより好ましい。
【0161】
(電池素子)
図13A〜図13Bは、ラミネートフィルムに外装される前の電池素子の構成例を示す。電池素子60は、略矩形状の正極61と、正極61と対向して配された略矩形状の負極62とが、略矩形状のセパレータ63を介して順に積層された構成である。具体的には、負極62、セパレータ63、正極61、セパレータ63・・・セパレータ63、負極62を介して交互に積層された積層型電極構造を有している。第3の実施の形態における正極61および負極62は、第2の実施の形態と同様の構成とされる。なお、図示は省略するが、セパレータ63の両面には、多孔性高分子化合物が形成されている。この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層66が形成される。
【0162】
図14Aは、図12Aの非水電解質電池のb−b’断面を示す断面図である。図14Bは、図12Aの非水電解質電池のc−c’断面を示す断面図である。図14A〜図14Bに示すように、電池素子60では、電解液保持層66が、セパレータ63の両面に形成されており、セパレータ63と正極61と、セパレータ63と負極62とが、それぞれ電解液保持層66を介して、接着している。また、正極61と負極62とが、絶縁層67を介して、接着している。正極61および負極62間に絶縁層67を設けることにより、正極61および負極62間の接着性を高めることで、充放電の繰り返しにより、極間距離が不均一になることを抑制する。なお、セパレータ63の片面のみに、電解液保持層66を形成するようにしてもよい。
【0163】
電池素子90からは、複数枚の正極61とそれぞれ電気的に接続された正極端子としての正極タブ61Cと、複数枚の負極62とそれぞれ電気的に接続された負極端子としての負極タブ62Cとが引き出されている。複数枚の正極タブ61Cおよび負極タブ62Cには、それぞれ正極リード53および負極リード54が抵抗溶接、超音波溶着等により接続されている。さらに、複数枚重ねた正極タブ61Cおよび負極タブ62Cの断面が略U字形状となるように折り曲げられて構成されている。正極タブ61Cおよび負極タブ62Cは、曲げ部分において適切なたるみを持った状態でU字形状に折り曲げられる。
【0164】
(非水電解質電池の製造方法)
上述の非水電解質電池81は、例えば、以下の工程で作製することができる。
【0165】
(正極および負極、多孔性高分子化合物の形成)
正極61および負極62は、第2の実施の形態と同様の方法により作製することができる。また、第2の実施の形態と同様の方法により、セパレータ63の表面に多孔性高分子化合物を形成する。
【0166】
(積層工程)
次に、図13A〜図13Bに示すように、正極61と負極62とを、例えば負極62、セパレータ63、正極61、セパレータ63・・・セパレータ63、負極62となるように矩形状のセパレータ63を介して重ね合わせて所定数の正極61および負極62を積層する。続いて、正極61、負極62およびセパレータ63が密着するように押圧した状態で固定し、電池素子90を作製する。
【0167】
このようにして作製した電池素子90は、第2の実施の形態と同様の方法により正極タブ61Cおよび負極タブ62CのU字曲げがなされる。
【0168】
(外装工程)
このあと、作製した電池素子90をラミネートフィルム52で外装し、サイド部の一方と、トップ部およびボトム部をヒータヘッドで加熱して熱融着する。正極リード53および負極リード54が導出されたトップ部およびボトム部は、例えば切り欠きを有するヒータヘッドで加熱して熱融着する。
【0169】
続いて、熱融着していない他のサイド部の開口から、電解液を注液する。最後に、注液を行ったサイド部のラミネートフィルム52を熱融着し、電池素子90をラミネートフィルム52内に封止する。この後、ラミネートフィルム52の外部から、電池素子90に対して加圧するとともに加熱するヒートプレスを行い、電解液を多孔性高分子化合物に保持させる。これにより、電解液保持層66が形成される。ヒートプレス時において、電解液保持層66では、多孔性高分子化合物が膨潤するが、多孔性高分子化合物の空孔構造は崩れずに、その空孔が維持されている。以上により、非水電解質電池81が完成する。
【0170】
4.第4の実施の形態
(電池パックの例)
図15は、本技術の非水電解質電池(以下、二次電池と適宜称する)を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池101、外装、充電制御スイッチ102aと、放電制御スイッチ103a、を備えるスイッチ部104、電流検出抵抗107、温度検出素子108、制御部110を備えている。
【0171】
また、電池パックは、正極端子121および負極端子122を備え、充電時には正極端子121および負極端子122がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子121および負極端子122がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0172】
組電池101は、複数の二次電池101aを直列および/または並列に接続してなる。この二次電池101aは本技術の二次電池である。なお、図15は、6つの二次電池101aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0173】
スイッチ部104は、充電制御スイッチ102aおよびダイオード102b、ならびに放電制御スイッチ103aおよびダイオード103bを備え、制御部110によって制御される。ダイオード102bは、正極端子121から組電池101の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子122から組電池101の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード103bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。尚、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けても良い。
【0174】
充電制御スイッチ102aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池101の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード102bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池101の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部110によって制御される。
【0175】
放電制御スイッチ103aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池101の電流経路に放電電流が流れないように制御部110によって制御される。放電制御スイッチ103aのOFF後は、ダイオード103bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池101の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部110によって制御される。
【0176】
温度検出素子108は例えばサーミスタであり、組電池101の近傍に設けられ、101組電池101の温度を測定して測定温度を制御部110に供給する。電圧検出部111は、組電池101およびそれを構成する各二次電池101aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部110に供給する。電流測定部113は、電流検出抵抗107を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部110に供給する。
【0177】
スイッチ制御部114は、電圧検出部111および電流測定部113から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部104の充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aを制御する。スイッチ制御部114は、二次電池101aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部104に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0178】
ここで、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0179】
充放電スイッチは、例えばMOSFET等の半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード102bおよび103bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部114は、充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aをON状態とする。
【0180】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aをOFF状態とする。
【0181】
メモリ117は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。メモリ117では、制御部110で演算された数値や 、製造工程の段階で測定された各二次電池101aの初期状態における電池の内部抵抗値等が予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。 (また、二次電池101aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部110とともに例えば残容量を算出することができる。
【0182】
温度検出部118では、温度検出素子108を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0183】
5.第5の実施の形態
上述した非水電解質電池およびこれを用いた電池パックは、例えば電子機器や電動車両、蓄電装置等の機器に搭載又は電力を供給するために使用することができる。
【0184】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、 エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられる。
【0185】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等が挙げられ、これらの駆動用電源又は補助用電源として用いられる。
【0186】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源等が挙げられる。
【0187】
以下では、上述した適用例のうち、上述した本技術の非水電解質電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0188】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0189】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0190】
(5−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の非水電解質電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図16を参照して説明する。例えば住宅201用の蓄電システム200においては、火力発電202a、原子力発電202b、水力発電202c等の集中型電力系統202から電力網209、情報網212、スマートメータ207、パワーハブ208等を介し、電力が蓄電装置203に供給される。これと共に、家庭内発電装置204等の独立電源から電力が蓄電装置203に供給される。蓄電装置203に供給された電力が蓄電される。蓄電装置203を使用して、住宅201で使用する電力が給電される。住宅201に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0191】
住宅201には、発電装置204、電力消費装置205、蓄電装置203、各装置を制御する制御装置210、スマートメータ207、各種情報を取得するセンサ211が設けられている。各装置は、電力網209および情報網212によって接続されている。発電装置204として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置205および/または蓄電装置203に供給される。電力消費装置205は、冷蔵庫205a、空調装置205b、テレビジョン受信機205c、風呂205d等である。さらに、電力消費装置205には、電動車両206が含まれる。電動車両206は、電気自動車206a、ハイブリッドカー206b、電気バイク206cである。
【0192】
蓄電装置203に対して、本技術の非水電解質電池が適用される。本技術の非水電解質電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ207は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網209は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0193】
各種のセンサ211は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種のセンサ211により取得された情報は、制御装置210に送信される。センサ211からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置205を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置210は、住宅201に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0194】
パワーハブ208によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置210と接続される情報網212の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0195】
制御装置210は、外部のサーバ213と接続されている。このサーバ213は、住宅201、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ213が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
【0196】
各部を制御する制御装置210は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置203に格納されている。制御装置210は、蓄電装置203、家庭内発電装置204、電力消費装置205、各種のセンサ211、サーバ213と情報網212により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0197】
以上のように、電力が火力202a、原子力202b、水力202c等の集中型電力系統202のみならず、家庭内発電装置204(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置203に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置204の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置203に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置203に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置203によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0198】
なお、この例では、制御装置210が蓄電装置203内に格納される例を説明したが、スマートメータ207内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム200は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0199】
(5−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、図17を参照して説明する。図17に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0200】
このハイブリッド車両300には、エンジン301、発電機302、電力駆動力変換装置303、駆動輪304a、駆動輪304b、車輪305a、車輪305b、バッテリー308、車両制御装置309、各種センサ310、充電口311が搭載されている。バッテリー308に対して、上述した本技術の非水電解質電池が適用される。
【0201】
ハイブリッド車両300は、電力駆動力変換装置303を動力源として走行する。電力駆動力変換装置303の一例は、モータである。バッテリー308の電力によって電力駆動力変換装置303が作動し、この電力駆動力変換装置303の回転力が駆動輪304a、304bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置303が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ310は、車両制御装置309を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ310には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等が含まれる。
【0202】
エンジン301の回転力は発電機302に伝えられ、その回転力によって発電機302により生成された電力をバッテリー308に蓄積することが可能である。
【0203】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両300が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置303に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置303により生成された回生電力がバッテリー308に蓄積される。
【0204】
バッテリー308は、ハイブリッド車両300の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口311を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0205】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置等がある。
【0206】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0207】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下のサンプルで用いた、高分子材料の重量平均分子量、膨潤度は以下のように測定したものである。
【0208】
(重量平均分子量の測定)
高分子材料の重量平均分子量を以下の方法で測定した。昭和電工製ゲル濾過クロマトグラフ(GPC)(製品名:Shodex GPC−101)を用い、検出器には、昭和電工製Shodex RI−71S(製品名)、送液溶媒にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、充填カラムに昭和電工製Shodex GPC KD−860M(製品名)を用いた。あらかじめ、標準ポリスチレンを用いて検出時間と分子量の相関を求めた検量線を作成し、これと同条件で、高分子材料の測定を行い、ポリスチレン換算の重量平均相対分子量を求めた。
【0209】
(膨潤度試験)
高分子材料をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、ガラス基板上に塗布コーターを用いて塗布し、90℃で1時間放置、60℃で24時間以上加熱真空乾燥し、N−メチル−2−ピロリドンを除去し、単一の膜を得た。得られた膜を20mmΦの円盤状に打ち抜き60℃の溶媒に24時間浸漬して、浸漬前後での体積の変化から膨潤度({[浸漬後の体積]/[浸漬前の体積]}×100(%))を求めた。
【0210】
<サンプル1−1>
以下のようにして、図1および図2に示すラミネートフィルム型電池を作製した。
【0211】
(正極の作製)
コバルト酸リチウム(LiCoO2)を85質量部と、導電剤である黒鉛5質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して正極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。
【0212】
続いて、この正極合剤スラリーを厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体33Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して正極活物質層33Bを形成し、正極33を作製した。そののち、正極33に正極リード31を取り付けた。
【0213】
(負極の作製)
粉砕した黒鉛粉末を負極活物質として用意し、この黒鉛粉末90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させ負極合剤スラリーとした。
【0214】
次に、この負極合剤スラリーを厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体34Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して負極活物質層34Bを形成し、負極34を作製した。その際、負極34の容量に対する正極33の容量の比率を1.1とした。続いて、負極34に負極リード32を取り付けた。
【0215】
(多孔性高分子化合物の作製)
高分子材料をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて溶液を調製した。この溶液を、セパレータ35の両面に塗布後、水に浸漬させた後、乾燥させた。これにより、セパレータ35の両面に多孔構造を有する多孔性高分子化合物を形成した。セパレータ35としては、ポリエチレン微多孔膜(透気度200秒/100cc)を用いた。
【0216】
高分子材料としては、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量単位)
=97:7
重量平均分子量:35万
【0217】
正極33と、負極34とを、両面に多孔性高分子化合物が形成されたセパレータ35を介して密着させた後、長手方向に巻回して、最外周に保護テープ37を貼付することにより、巻回電極体30を作製した。
【0218】
巻回電極体30を、外装部材40の間に挟み、3辺を熱融着した。なお、外装部材40には、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとを積層した構造を有する防湿性アルミラミネートフィルムを用いた。
【0219】
そののち、これに電解液を、セル内電解液質量が1.85gになるように注入し、減圧下で残りの1辺を熱融着し、密封した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を混合した溶媒に1.2mol/lの割合で六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたものを用いた。そして、鉄板に挟んで100℃で3分間加熱することで、電解液保持層36を介して、正極33および負極34にセパレータ35を接着させた。これにより、図1および図2に示すような、セルサイズ4×35×50mm(7cm3)のラミネートフィルム型電池を得た。
【0220】
<サンプル1−2>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)=97:3
重量平均分子量:50万
【0221】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−2のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0222】
<サンプル1−3>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)=97:3
重量平均分子量:75万
【0223】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−3のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0224】
<サンプル1−4>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=97:3
重量平均分子量:100万
【0225】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−4のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0226】
<サンプル1−5>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=95:5
重量平均分子量:35万
【0227】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−5のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0228】
<サンプル1−6>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=95:5
重量平均分子量:50万
【0229】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−6のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0230】
<サンプル1−7>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=95:5
重量平均分子量:75万
【0231】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−7のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0232】
<サンプル1−8>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=95:5
重量平均分子量:100万
【0233】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−8のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0234】
<サンプル1−9>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=93:7
重量平均分子量:35万
【0235】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−9のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0236】
<サンプル1−10>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=93:7
重量平均分子量:50万
【0237】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−10のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0238】
<サンプル1−11>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=93:7
重量平均分子量:75万
【0239】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−11のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0240】
<サンプル1−12>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=93:7
重量平均分子量:100万
【0241】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−12のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0242】
<サンプル1−13>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン単独重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=100:0
重量平均分子量:35万
【0243】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−13のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0244】
<サンプル1−14>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン単独重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=100:0
重量平均分子量:50万
【0245】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−14のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0246】
<サンプル1−15>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン単独重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=100:0
重量平均分子量:75万
【0247】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−15のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0248】
<サンプル1−16>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン単独重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=100:0
重量平均分子量:100万
【0249】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−16のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0250】
(評価)
サンプル1−1〜サンプル1−16のラミネートフィルム型電池について、以下の評価を行った。
【0251】
(負極/セパレータ間の剥離強度試験)
サンプル1−1〜サンプル1−16のラミネートフィルム型電池について、充放電1回行った後、解体し、引っ張り試験にて100mm/分の速度にて負極/セパレータ間の剥離強度を測定した。
【0252】
(ヒートプレス前およびヒートプレス後の多孔性高分子化合物の透気度測定)
透気抵抗度(透気度)は、JIS P−817準拠のガーレー式透気度計にて測定した。測定膜面積は、6.45cm2、透過空気量は、100ccとし、そのときの時間を透気度(秒/100cc)とした。
【0253】
(300サイクル後の容量維持率測定)
まず、各電池について、25℃の環境において、500mAの定電流定電圧充電を上限電圧4.2V、3時間まで行ったのち、160mAの定電流放電を終止電圧3Vまで行った。
次に、1000mAの定電流充電を上限電圧4.2Vまで、その後、定電圧充電をカットオフ電流を50mAまで、あるいは、定電圧充電時間が3時間になるまで行った。800mAの定電流放電を終止電圧3Vまで行い、このときの放電容量を測定し、これを1サイクル目の放電容量とした。
その後、同一の充放電条件で充放電を299回繰り返し行い、300サイクル目の放電容量を測定した。そして、1サイクル目の放電容量を100とした場合の300サイクル目の放電容量を、300サイクル後の容量維持率({300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量}×100(%))として求めた。
【0254】
(走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)による観察)
サンプル1−4およびサンプル1−10のラミネートフィルム型電池を解体して、セパレータ35に形成された電解液保持層36をSEMにより観察した。サンプル1−4のSEM写真を図18に示し、サンプル1−10のSEM写真を図19に示す。
【0255】
評価結果を表1に示す。
【0256】
【表1】
【0257】
表1に示すように、サンプル1−2〜サンプル1−4、サンプル1−6〜サンプル1−8、サンプル1−14〜サンプル1−16では、300サイクル後の容量維持率が良好であり、ヒートプレス後の多孔性高分子化合物の透気度も小さかった。
【0258】
一方、サンプル1−1、サンプル1−5、サンプル1−9、サンプル1−13では、高分子化合物の重量平均分子量が、最適値(50万)より小さいため、負極とセパレータ間の剥離強度が低下し、これにより、300サイクル後の容量維持率が低下した。また、ヒートプレス後の多孔性高分子化合物の透気度もやや大きかった。
【0259】
また、サンプル1−9〜サンプル1−12では、フッ化ビニリデン重合体の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が、100:0〜95:5の範囲外であるため、ヒートプレス後の多孔性高分子化合物の透気度が大きかった。これは、図19に示すサンプル1−10のように、フッ化ビニリデン重合体の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が100:0〜95:5の範囲外にあると、ヒートプレス時において、多孔性高分子化合物が膨潤しすぎるため、空孔構造が崩れており、空孔が閉じてしまうからである。また、サンプル1−9〜サンプル1−12では、フッ化ビニリデン重合体の膨潤度が高すぎて、フッ化ビニリデン重合体が電解液に溶解してしまうため、300サイクル後の容量維持率も低下した。なお、図18に示すサンプル1−4のように、フッ化ビニリデン重合体の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が100:0〜95:5の範囲内にあると、多孔性高分子化合物が膨潤しすぎずに、ヒートプレス後において、空孔構造が保持されるため、透気度が小さい。
【0260】
<サンプル2−1>
以下のようにして、図1および図2に示すラミネートフィルム型電池を作製した。
【0261】
(正極の作製、負極の作製)
サンプル1−1と同様にして、正極33、負極34を作製し、正極33に正極リード31を取り付け、負極34に負極リード32を取り付けた
【0262】
(多孔性高分子化合物の作製)
高分子材料をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液に、無機粒子をN−メチル−2−ピロリドンに分散させた溶液を加え溶液を調製した。この溶液を、セパレータ35の両面に塗布後、水に浸漬させた後、乾燥させた。これにより、セパレータ35の両面に、無機粒子を含有し、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を形成した。セパレータ35としては、ポリエチレン微多孔膜(透気度200秒/100cc)を用いた。
【0263】
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料としては、以下の材料を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)=97:3
重量平均分子量:100万
【0264】
無機粒子は、以下の材料を用いた。
無機粒子:アルミナ(平均粒径0.45μm)
高分子材料:無機粒子(質量比)=1:2
【0265】
正極33と、負極34とを、両面に、無機粒子を含有した多孔性高分子化合物が形成されたセパレータ35を介して密着させた後、長手方向に巻回して、最外周に保護テープ37を貼付することにより、巻回電極体30を作製した。
【0266】
巻回電極体30を、外装部材40の間に挟み、3辺を熱融着した。なお、外装部材40には、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとを積層した構造を有する防湿性アルミラミネートフィルムを用いた。
【0267】
そののち、これに電解液を、セル内電解液質量が1.85gになるように注入し、減圧下で残りの1辺を熱融着し、密封した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を混合した溶媒に1.2mol/lの割合で六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたものを用いた。そして、鉄板に挟んで100℃で3分間加熱することで、無機粒子を含有した電解液保持層36を介して、正極33および負極34にセパレータ35を接着させた。これにより、図1および図2に示すような、セルサイズ4×35×50mm(7cm3)のラミネートフィルム型電池を得た。電解液保持層36の厚みは3.1μm、面積密度は0.28mg/cm2に調整した。
【0268】
なお、電解液保持層36の厚みの影響を無視するために、以下に示す、サンプル2−1とアルミナの含有比率が異なるサンプル2−2〜2−5に関しては、面積密度を調整することにより、電解液保持層36の厚みは3μm前後とした。
【0269】
<サンプル2−2>
多孔性高分子化合物の作製において、高分子材料と無機粒子との質量比を、高分子材料:無機粒子(質量比)=1:4に変えた。電解液保持層36の厚みを3.3μm、面積密度を0.35mg/cm2に調整した。以上のこと以外は、サンプル2−1と同様にしてラミネートフィルム型電池を作製した。
【0270】
<サンプル2−3>
多孔性高分子化合物の作製において、高分子材料と無機粒子との質量比を、高分子材料:無機粒子(質量比)=1:6に変えた。電解液保持層36の厚みを2.9μm、面積密度を0.41mg/cm2に調整した。以上のこと以外は、サンプル2−1と同様にしてラミネートフィルム型電池を作製した。
【0271】
<サンプル2−4>
多孔性高分子化合物の作製において、高分子材料と無機粒子との質量比を、高分子材料:無機粒子(質量比)=1:8に変えた。電解液保持層36の厚みを3.0μm、面積密度を0.45mg/cm2に調整した。以上のこと以外は、サンプル2−1と同様にしてラミネートフィルム型電池を作製した。
【0272】
<サンプル2−5>
多孔性高分子化合物の作製において、高分子材料と無機粒子との質量比を、高分子材料:無機粒子(質量比)=1:10に変えた。電解液保持層36の厚みを3.1μm、面積密度を0.51mg/cm2に調整した。以上のこと以外は、サンプル2−1と同様にしてラミネートフィルム型電池を作製した。
【0273】
(評価)
サンプル2−1〜サンプル2−5のラミネートフィルム型電池について、以下の評価を行った。なお、フロート試験については、サンプル2−1〜サンプル2−5に加え、サンプル1−4についても行った。
【0274】
(負極/セパレータ間の剥離強度試験)および(300サイクル後の容量維持率測定)
サンプル1−1と同様に、「負極/セパレータ間の剥離強度試験」、「300サイクル後の容量維持率測定」を行った。
【0275】
(フロート試験)
ラミネートフィルム型電池を60℃に設定された恒温槽中において、1000mAの定電流で電池電圧が4.25Vに達するまで定電流充電を行った後、4.25Vで定電圧充電を行った。このとき、充電電流の変動が観測される(漏れ電流が発生する)時間を求めた。
【0276】
サンプル2−1〜サンプル2−5の評価結果を表2に示す。なお、比較対象として、サンプル1−4の表1で示した(負極/セパレータ間の剥離強度試験)、(300サイクル後の容量維持率測定)の評価結果、およびサンプル1−4のフロート試験の評価結果も表2に示す。
【0277】
【表2】
【0278】
表2に示すように、フッ化ビニリデン重合体とアルミナとの質量比が1:0〜1:8までは、「負極/セパレータ間の剥離強度」も5N/m以上あり、300サイクル後の容量維持率も80%以上と良好であった。一方、フッ化ビニリデン重合体とアルミナ比率が1:10となると、負極/セパレータ間の剥離強度も2N/mとなり、300サイクル後の容量維持率も55%と低下する傾向にあった。また、60℃−4.25Vフロート充電で漏れ電流が観測される時間は、フッ化ビニリデン重合体とアルミナとの質量比において、アルミナの比率が大きくなるほど、長くなり、フロート耐性が向上することが確認できた。以上のことを鑑みて、電解液保持層において、フッ化ビニリデン重合体に無機粒子を添加してもよく、この場合、フッ化ビニリデン重合体と無機粒子との質量比は、1:1〜1:8の範囲であることが好ましく、より好ましくは1:2〜1:6の範囲であるという結論に至った。
【0279】
5.他の実施の形態(変形例)
本技術は、上述した本技術の実施形態に限定されるものでは無く、本技術の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述の実施の形態および実施例では、ラミネートフィルム型の電池構造を有する電池、電極を巻回した巻回構造を有する電池、電極を積層した積層構造を有するスタック型電池について説明したが、これらに限定されるものではない。例えば、上述した電池構造や電極構造以外の他の電極構造や電池構造を有する電池等にも適用可能である。第2の実施の形態の非水電解質電池において、正極リード53および負極リード54を同一辺から導出した構成としてもよい。第3の実施の形態の非水電解質電池において、正極リード53および負極リード54を互いに対向する辺から導出した構成としてもよい。また、第2の実施の形態では、電池素子60の最表層がセパレータ63となるように構成したが、最表層が正極61または負極62になるように構成してもよい。また、電池素子60の一方の最表層がセパレータ63で他方の最表層が正極61または負極62となるように構成してもよい。第3の実施の形態では、電池素子90の最表層が負極62となるように構成したが、最表層がセパレータ63または正極61となるように構成してもよい。また、電池素子90の一方の最表層がセパレータ63で他方の最表層が正極61または負極62となるように構成してもよい。第2〜第3の実施の形態のラミネートフィルム52の構成を、第1の実施の形態の外装部材40に適用してもよい。
【0280】
上述した第2〜第3の実施の形態およびこれらの変形例において、電池素子60とラミネートフィルム52との間に多孔性重合体層を設けるようにしてもよい。多孔性重合体層とは、高分子材料に非水電解液を保持することにより構成されたものである。高分子材料としては、フッ化ビニリデンを成分として含む高分子材料を用いる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とを繰り返し単位に含む共重合体等が好適に用いられる。
【0281】
多孔性重合体層を構成する高分子材料としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いる場合には、重量平均分子量が50万以上150万以下のポリフッ化ビニリデンを用いることが好ましい。電池素子の移動の抑制効果が高いためである。
【0282】
また、多孔性重合体層には、無機粒子が混合されていてもよい。多孔性重合体層の強度が向上するとともに、多孔性重合体層に凹凸が生じ、電池素子とラミネートフィルムとのずれを抑制することができる。このため、内部抵抗の上昇をさらに抑制することができる。
【0283】
無機粒子としては、電気絶縁性を有する金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等を挙げることができる。金属酸化物としては、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)等を好適に用いることができる。これらの無機粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、無機粒子は耐熱性、耐酸化性に優れるため、電池温度の上昇時にも電池素子の移動抑制効果を損なわないため好ましい。
【0284】
また、本技術は、以下の構成を採ることができる。
【0285】
[1]
正極と、
負極と、
上記正極および上記負極の間にある絶縁層と、
上記絶縁層を構成する、電解液および多孔性高分子化合物を含む電解液保持層と
を有し、
上記電解液が上記多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、上記電解液により上記多孔性高分子化合物が膨潤されており、
上記多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池。
[2]
上記絶縁層は、
多孔質基材層と、
該多孔質基材層の少なくとも一面に形成された上記電解液保持層と
から構成された[1]記載の非水電解質電池。
[3]
上記多孔性高分子化合物の透気度は、500秒/100cc以下である[1]〜[2]の何れかに記載の非水電解質電池。
[4]
上記多孔質基材層は、多孔質のポリオレフィン系樹脂を含む[2]〜[3]の何れかに記載の非水電解質電池。
[5]
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、75万以上150万未満である[1]〜[4]の何れかに記載の非水電解質電池。
[6]
上記多孔性高分子化合物の透気度は、300秒/100cc以下である[1]〜[5]の何れかに記載の非水電解質電池。
[7]
上記電解液保持層は、無機粒子をさらに含み、
上記フッ化ビニリデン重合体と上記無機粒子との質量比(フッ化ビニリデン重合体の質量:無機粒子の質量)は、1:1〜1:10である[1]〜[6]の何れかに記載の非水電解質電池。
[8]
上記多孔性高分子化合物は、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に上記フッ化ビニリデン重合体を溶解した溶液を多孔質基材に塗布し、上記溶液が塗布された上記多孔質基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記フッ化ビニリデン重合体に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより形成されたものである[2]〜[7]の何れかに記載の非水電解質電池。
[9]
ラミネートフィルムで外装された[1]〜[8]の何れかに記載の非水電解質電池。
[10]
多孔質基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、上記溶液が塗布された上記多孔質基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、多孔質基材上に、多孔性高分子化合物を形成する工程と、
正極と、負極と、上記多孔質高分子化合物が形成された上記多孔質基材とを有し、上記多孔質高分子化合物が形成された上記多孔質基材が上記正極と上記負極との間にある電極体を作製する工程と、
上記電極体を外装材に収納後、外装材の内部に電解液を注入し、その後、ヒートプレスする工程と
を有し、
上記高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池の製造方法。
[11]
上記第1の溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルスルホキシドであり、
上記第2の溶媒は、水、エチルアルコールまたはプロピルアルコールである[10]記載の非水電解質電池の製造方法。
[12]
多孔性高分子化合物を含み、
上記多孔性高分子化合物は、その空孔に電解液を保持可能であるとともに、該電解液により膨潤可能であり、
上記多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材。
[13]
少なくとも一面に上記多孔性高分子化合物が形成された多孔質基材をさらに含む[12]記載の絶縁材。
[14]
多孔性高分子化合物を含む絶縁材の製造方法であって、
基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、上記溶液が塗布された上記基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、上記多孔性高分子化合物を形成する工程を有し、
上記高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材の製造方法。
[15]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装を有する電池パック。
[16]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける電子機器。
[17]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
[18]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
[19]
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う[18]記載の蓄電装置。
[20]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置若しくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。
【符号の説明】
【0286】
30・・・巻回電極体、31・・・正極リード、32・・・負極リード、33・・・正極、33A・・・正極集電体、33B・・・正極活物質層、34・・・負極、34A・・・負極集電体、34B・・・負極活物質層、35・・・セパレータ、36・・・電解液保持層、37・・・保護テープ、39・・・絶縁層、40・・・外装部材、41・・・密着フィルム、42c・・・内側樹脂層、51・・・非水電解質電池、52・・・ラミネートフィルム、52a・・・金属層、52b・・・外側樹脂層、52c・・・内側樹脂層、53・・・正極リード、54・・・負極リード、55・・・シーラント、56・・・固定部材、57・・・電池素子収納部、60・・・電池素子、61・・・正極、61A・・・正極集電体、61B・・・正極活物質層、61C・・・正極タブ、62・・・負極、62C・・・負極タブ、62A・・・負極集電体、62B・・・負極活物質層、63・・・セパレータ、66・・・電解液保持層、67・・・絶縁層、90・・・電池素子、101…組電池、101a・・・二次電池、102・・・充電制御スイッチ、102a・・・充電制御スイッチ、102b・・・ダイオード、103a・・・放電制御スイッチ、103b・・・ダイオード、104・・・スイッチ部、107・・・電流検出抵抗、108・・・温度検出素子、110・・・制御部、111・・・電圧検出部、113・・・電流測定部、114・・・スイッチ制御部、117・・・メモリ、118・・・温度検出部、121・・・正極端子、122・・・負極端子、200・・・蓄電システム、201・・・住宅、202・・・集中型電力系統、202a・・・火力発電、202b・・・原子力発電、202c・・・水力発電、203・・・蓄電装置、204・・・発電装置、205・・・電力消費装置、205a・・・冷蔵庫、205b・・・空調装置、205c・・・テレビジョン受信機、205d・・・風呂、206・・・電動車両、206a・・・電気自動車、206b・・・ハイブリッドカー、206c・・・電気バイク、207・・・スマートメータ、208・・・パワーハブ、209・・・電力網、210・・・制御装置、211・・・センサ、212・・・情報網、213・・・サーバ、300・・・ハイブリッド車両、301・・・エンジン、302・・・発電機、303・・・電力駆動力変換装置、304a・・・駆動輪、304b・・・駆動輪、305a・・・車輪、305b・・・車輪、308・・・バッテリー、309・・・車両制御装置、310・・・各種センサ、311・・・充電口
【技術分野】
【0001】
本技術は、非水電解質電池および非水電解質電池の製造方法、並びに絶縁材および絶縁材の製造方法、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。さらに詳しくは、電解液を保持する多孔性高分子化合物を備えた非水電解質電池および非水電解質電池の製造方法、並びに絶縁材および絶縁材の製造方法、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、一般的に、負極に炭素、正極にリチウム−遷移金属複合酸化物、電解液に炭酸エステルの混合物を使用する構成を有する。電解液に使用する炭酸エステルは、水や他の有機溶媒に対して酸化や還元に対し安定で、より高電圧を得ることができるため、リチウムイオン二次電池は、水系電池であるニッケル水素電池よりエネルギー密度が大きく高容量である。そのため、リチウムイオン二次電池は、ノートパソコンや携帯電話、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の二次電池として広く普及している。
【0003】
外装に、アルミラミネートフィルムなどのラミネートフィルムを使用するラミネート型リチウムイオン二次電池は、軽量であると共に、電池に於ける活物質の割合が大きいことからエネルギー密度が大きいため、広く使用されている。
【0004】
このラミネート型リチウムイオン二次電池では、金属製缶で外装した電池に比べて強度が弱いため、電池素子に印加される圧力が弱くなる。このため、電池の充放電の繰り返しに伴い電極が膨張収縮すると、その影響で、正極と負極との極間距離が不均一となり、これにより、イオン伝導性および電流密度が不均一となり、容量が低下する問題があった。
【0005】
この問題に対して、正極および負極間に、接着力を有する樹脂を設けることによって、極間距離を一定に保ち、充放電の繰り返しに伴う容量低下を抑制する技術が、提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、電極内の多孔質を有する吸熱性絶縁樹脂をスピノーダル分解またはミセル方式により電極表面に浮き上がらせることにより、電極表面に多孔質の樹脂が形成された電池が記載されている。この電池では、電極間に多孔質の樹脂が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4099969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、電極間に、スピノーダル分解を用いて作製した多孔質の樹脂を配置した構成の電池では、この多孔質の樹脂の材料として、最適な材料種および組成の高分子材料を使用する必要がある。すなわち、多孔質の樹脂の材料に、最適な材料種および組成の高分子材料を使用しないと、最適な多孔性が得られないため、イオン伝導性が低下して、電池特性が低下する。また、電極間の接着性が低下し、充放電の繰り返しに伴い極間距離が不均一となるため、充放電の繰り返しに伴い容量が低下してしまう。
【0009】
したがって、本技術の目的は、イオン伝導性の低下を抑制すると共に、充放電の繰り返しに伴う容量低下を抑制できる非水電解質電池および非水電解質電池の製造方法、並びに絶縁材および絶縁材の製造方法、並びに電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本技術は、正極と、負極と、正極および負極の間にある絶縁層と、絶縁層を構成する、電解液および多孔性高分子化合物を含む電解液保持層とを有し、電解液が多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、電解液により多孔性高分子化合物が膨潤されており、多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池である。
【0011】
本技術は、多孔質基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、溶液が塗布された多孔質基材を、第1の溶媒に対して相溶性があり高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、多孔質基材上に、多孔性高分子化合物を形成する工程と、正極と、負極と、多孔質高分子化合物が形成された多孔質基材とを有し、多孔質高分子化合物が形成された多孔質基材が正極と負極との間にある電極体を作製する工程と、電極体を外装材に収納後、外装材の内部に電解液を注入し、その後、ヒートプレスする工程とを有し、高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池の製造方法である。
【0012】
本技術は、多孔性高分子化合物を含み、多孔性高分子化合物は、その空孔に電解液を保持可能であるとともに、電解液により膨潤可能であり、多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材である。
【0013】
本技術は、多孔性高分子化合物を含む絶縁材の製造方法であって、基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、溶液が塗布された基材を、第1の溶媒に対して相溶性があり高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、上記多孔性高分子化合物を形成する工程を有し、高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材の製造方法である。
【0014】
本技術の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の非水電解質電池を備えることを特徴とする。
【0015】
本技術では、多孔性高分子化合物の材料として、質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が100:0〜95:5であり、重量平均分子量が50万以上150万未満であるフッ化ビニリデン重合体を用いる。これにより、良好なイオン伝導性および正極および負極間の良好な接着性を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本技術によれば、イオン伝導性の低下を抑制すると共に、充放電の繰り返しに伴う容量低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本技術の実施の形態による非水電解質電池の構成例を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、図1における巻回電極体のI−I線に沿った断面図である。
【図3】図3Aは、本技術の非水電解質電池の外観を示す斜視図である。図3Bは、非水電解質電池の構成を示す斜視分解図である。図3Cは、図3Aに示す非水電解質電池の下面の構成を示す斜視図である。
【図4】図4Aは、正極の構成例を示す斜視図である。図4Bは、正極の構成例を示す斜視図である。図4Cは、正極の構成例を示す斜視図である。図4Dは、正極の構成例を示す斜視図である。
【図5】図5Aは、本技術の電池素子の構成例を示す斜視図である。図6Bは、本技術の電池素子の構成例を示す断面図である。
【図6】図6は、図3Aの非水電解質電池のa−a’断面を示す断面図である。
【図7】図7は、ラミネートフィルムの構成例を示す断面図である。
【図8】図8A〜図8Eは、本技術の電池素子の電極タブのU字曲げ工程を示す工程図である。
【図9】図9A〜図9Eは、本技術の電池素子の電極タブのU字曲げ工程を示す工程図である。
【図10】図10A〜図10Cは、本技術の電池素子の電極タブと電極リードとの接続工程を示す工程図である。
【図11】図11A〜図11Dは、本技術の電池素子と接続した電極リードの折り曲げ工程を示す工程図である。
【図12】図12Aは、本技術の非水電解質電池の外観を示す斜視図である。図12Bは、非水電解質電池の構成を示す斜視分解図である。図12Cは、図12Aに示す非水電解質電池の下面の構成を示す斜視図である。
【図13】図13Aは、本技術の電池素子の構成例を示す斜視図である。図13Bは、本技術の電池素子の構成例を示す断面図である。
【図14】図14Aは、図12Aの非水電解質電池のb−b’断面を示す断面図である。図14Bは、図12Aの非水電解質電池のc−c’断面を示す断面図である。
【図15】図15は、本技術の実施の形態による電池パックの構成例を示すブロック図である。
【図16】図16は、本技術の非水電解質電池を用いた住宅用の蓄電システムに適用した例を示す概略図である。
【図17】図17は、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す概略図である。
【図18】図18は、サンプル1−4のヒートプレス後の絶縁層の表面のSEM写真である。
【図19】図19は、サンプル1−10のヒートプレス後の絶縁層の表面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本技術の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(非水電解質電池の第1の例)
2.第2の実施の形態(非水電解質電池の第2の例)
3.第3の実施の形態(非水電解質電池の第3の例)
4.第3の実施の形態(非水電解質電池を用いた電池パックの例
5.第4の実施の形態(非水電解質電池を用いた蓄電システム等の例)
6.他の実施の形態(変形例)
【0019】
1.第1の実施の形態
(非水電解質電池の構成)
本技術の第1の実施の形態による非水電解質電池について説明する。図1は本技術の第1の実施の形態による非水電解質電池の分解斜視構成を示す。図2は図1に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面を拡大して示している。
【0020】
この非水電解質電池は、主に、フィルム状の外装部材40の内部に、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30が収納されたものである。このフィルム状の外装部材40を用いた電池構造は、ラミネートフィルム型と呼ばれている。
【0021】
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの金属材料によって構成されており、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。これらの金属材料は、例えば、薄板状または網目状になっている。
【0022】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムがこの順に貼り合わされたアルミラミネートフィルムによって構成されている。この外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルムが巻回電極体30と対向するように、2枚の矩形型のアルミラミネートフィルムの外縁部同士が融着または接着剤によって互いに接着された構造を有している。
【0023】
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料によって構成されている。このような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0024】
なお、外装部材40は、上記したアルミラミネートフィルムに代えて、他の積層構造を有するラミネートフィルムによって構成されていてもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムまたは金属フィルムによって構成されていてもよい。
【0025】
図1は、図2に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構成を表している。この巻回電極体30は、セパレータ35および電解液保持層36からなる絶縁層39を介して正極33と負極34とが積層および巻回されたものであり、その最外周部は、保護テープ37によって保護されている。巻回電極体30では、電解液保持層36が、セパレータ35の両面に形成されており、セパレータ35と正極33と、セパレータ35と負極34とが、それぞれ電解液保持層36を介して、接着している。また、正極33と負極34とが、絶縁層39を介して、接着している。正極33および負極34間に絶縁層39を設けることにより、正極33および負極34間の接着性を高めることで、充放電の繰り返しにより、極間距離が不均一になることを抑制する。なお、セパレータ35の片面のみに、電解液保持層36を形成するようにしてもよい。
【0026】
(正極)
正極33は、例えば、一対の面を有する正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bが設けられたものである。ただし、正極活物質層33Bは、正極集電体33Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0027】
正極集電体33Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。
【0028】
正極活物質層33Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上とを含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
【0029】
(正極材料)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、下記式(1)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、下記式(2)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、下記式(3)、下記式(4)もしくは下記式(5)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、下記式(6)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または下記式(7)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。具体的には、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウムまたはこれらの固溶体{Li(NixCoyMnz)O2(x、yおよびzの値は0<x<1、0<y<1、0≦z<1、x+y+z=1である。)、Li(NixCoyAlz)O2(x、yおよびzの値は0<x<1、0<y<1、0≦z<1、x+y+z=1である。)など}、マンガンスピネル(LiMn2O4)またはこれらの固溶体{Li(Mn2-vNiv)O4(vの値はv<2である。)}などのリチウム複合酸化物、またはリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LixFe1-yM2yPO4(式中、M2は、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。xは、0.9≦x≦1.1の範囲内の値である。)などのオリビン構造を有するリン酸化合物が好ましい。高いエネルギー密度を得ることができるからである。
【0030】
LipNi(1-q-r)MnqM1rO(2-y)Xz ・・・(1)
(式中、M1は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)を除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素(O)以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0031】
LiaM2bPO4 ・・・(2)
(式中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0032】
LifMn(1-g-h)NigM3hO(2-j)Fk ・・・(3)
(式中、M3は、コバルト(Co)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0033】
LimNi(1-n)M4nO(2-p)Fq ・・・(4)
(式中、M4は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0034】
LirCo(1-s)M5sO(2-t)Fu ・・・(5)
(式中、M5は、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0035】
LivMn2-wM6wOxFy ・・・(6)
(式中、M6は、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0036】
LizM7PO4 ・・・(7)
(式中、M7は、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、タングステン(W)およびジルコニウム(Zr)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0037】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、酸化チタン、酸化バナジウム、または二酸化マンガンなどの酸化物、二硫化鉄、二硫化チタンまたは硫化モリブデンなどの二硫化物、硫黄、ポリアニリンまたはポリチオフェンなどの導電性高分子も挙げられる。
【0038】
勿論、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料は、例示したもの以外のものであってもよい。
【0039】
結着剤としては、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエンなどの合成ゴムや、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。中でも、ポリフッ化ビニリデンが好ましい
【0040】
導電剤としては、例えば、黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。
【0041】
(負極)
負極34は、例えば、一対の面を有する負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bが設けられたものである。ただし、負極活物質層34Bは、負極集電体34Aの片面だけに設けられていてもよい。
【0042】
負極集電体34Aは、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの金属材料によって構成されている。
【0043】
負極活物質層34Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。なお、結着剤および導電剤は、それぞれ正極で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0044】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、炭素材料が挙げられる。この炭素材料とは、例えば、易黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.37nm以上の難黒鉛化性炭素や、(002)面の面間隔が0.34nm以下の黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭またはカーボンブラック類などがある。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体とは、フェノール樹脂やフラン樹脂などを適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。炭素材料は、リチウムの吸蔵および放出に伴う結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られ、さらに導電剤としても機能するので好ましい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状または鱗片状のいずれでもよい。
【0045】
上述の炭素材料の他、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能であると共に金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として有する材料が挙げられる。高いエネルギー密度が得られるからである。このような負極材料は、金属元素または半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本技術における「合金」には、2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。この組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、またはそれらの2種以上が共存するものがある。
【0046】
上記した金属元素または半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)などである。中でも、ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種が好ましく、ケイ素がより好ましい。リチウムを吸蔵および放出する能力が大きいため、高いエネルギー密度が得られるからである。
【0047】
ケイ素およびスズのうちの少なくとも1種を有する負極材料としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0048】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ(Sn)以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0049】
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)または炭素(C)を含むものが挙げられ、スズ(Sn)またはケイ素(Si)に加えて、上記した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0050】
特に、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも1種を含む負極材料としては、例えば、スズ(Sn)を第1の構成元素とし、そのスズ(Sn)に加えて第2の構成元素と第3の構成元素とを含むものが好ましい。勿論、この負極材料を上記した負極材料と共に用いてもよい。第2の構成元素は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、インジウム(In)、セリウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)およびケイ素(Si)からなる群のうちの少なくとも1種である。第3の構成元素は、ホウ素(B)、炭素(C)、アルミニウム(Al)およびリン(P)からなる群のうちの少なくとも1種である。第2の元素および第3の元素を含むことにより、サイクル特性が向上するからである。
【0051】
中でも、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を構成元素として含み、炭素(C)の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内、スズ(Sn)およびコバルト(Co)の合計に対するコバルト(Co)の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%以上70質量%以下の範囲内であるCoSnC含有材料が好ましい。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られると共に優れたサイクル特性が得られるからである。
【0052】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて、さらに他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、リン(P)、ガリウム(Ga)またはビスマス(Bi)などが好ましく、それらの2種以上を含んでいてもよい。容量特性またはサイクル特性がさらに向上するからである。
【0053】
なお、SnCoC含有材料は、スズ(Sn)、コバルト(Co)および炭素(C)を含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、SnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素あるいは半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下は、スズ(Sn)などが凝集あるいは結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化が抑制されるからである。
【0054】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えば、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSでは、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、グラファイトであれば、炭素の1s軌道(C1s)のピークは284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば、炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素(C)の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0055】
なお、XPSでは、例えば、スペクトルのエネルギー軸の補正に、C1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPSにおいて、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0056】
また、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物または高分子化合物なども挙げられる。金属酸化物とは、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどであり、高分子化合物とは、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどである。
【0057】
さらに、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、チタンのようにリチウムと複合酸化物を形成する元素を含む材料でもよい。
【0058】
勿論、負極活物質として金属リチウムを用いて、金属リチウムを析出溶解させてもよい。リチウム以外のマグネシウムやアルミニウムを析出溶解させることも可能である。
【0059】
負極活物質層34Bは、例えば、気相法、液相法、溶射法、焼成法、または塗布のいずれにより形成してもよく、それらの2以上を組み合わせてもよい。なお、気相法としては、例えば、物理堆積法または化学堆積法、具体的には真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長(CVD;Chemical Vapor Deposition)法またはプラズマ化学気相成長法などが挙げられる。液相法としては、電気鍍金または無電解鍍金などの公知の手法を用いることができる。焼成法とは、例えば、粒子状の負極活物質を結着剤などと混合して溶剤に分散させることにより塗布したのち、結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。焼成法に関しても公知の手法が利用可能であり、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法が挙げられる。
【0060】
負極活物質として金属リチウムを用いる場合には、負極活物質層34Bは、組み立て時から既に有するようにしてもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により構成されるようにしてもよい。また、負極活物質層34Bを集電体としても利用することにより、負極集電体34Aを省略するようにしてもよい。
【0061】
(絶縁層)
絶縁層39は、セパレータ35と、セパレータ35の少なくとも一面に形成された電解液保持層36とからなる。なお、セパレータ35を省略して、絶縁層39を電解液保持層36単独で構成してもよい。
【0062】
(セパレータ)
セパレータ35は、正極33と負極34とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる多孔質材である。このセパレータ35は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂からなる多孔質膜や、セラミックからなる多孔質膜などによって構成されている。これらの2種以上の多孔質膜が積層されたものであってもよい。セパレータ35には電解液が含浸されている。
【0063】
(電解液保持層)
電解液保持層36は、多孔性高分子化合物と、電解液とを含む。電解液保持層36では、電解液が多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、電解液により多孔性高分子化合物が膨潤されている。なお、電解液保持層36は、単独でまたはセパレータ35と共に、正極33と負極34とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる機能を有していてもよい。
【0064】
この電解液保持層36では、多孔性高分子化合物の材料として、最適な材料種および組成の高分子材料を使用する。これにより、電池製造工程のヒートプレス時に、多孔性高分子化合物が膨潤しすぎることにより、空孔構造が崩れて、空孔が閉じることが抑制される。そして、この電解液保持層36では、透過性が最適に調整されるため、イオン伝導性の低下が抑制され、これにより、電池特性の低下が抑制される。また、多孔性高分子化合物の材料として、最適な材料種および組成の高分子材料を使用することによって、正極および負極間の接着性を向上できるため、充放電の繰り返しに伴い、極間距離が不均一になることを抑制できる。
【0065】
多孔性高分子化合物は、例えば、以下のように形成する。すなわち、まず、高分子材料を、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させた溶液を調製し、この溶液をセパレータ35上に塗布する。次に、上記溶液が塗布されたセパレータ35を水、エチルアルコール、プロピルアルコールなど上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬する。このとき、溶媒交換が起こり、スピノーダル分解を伴う相分離が生じ、高分子材料は多孔構造を形成する。その後、乾燥することにより、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を得ることができる。なお、この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層36が形成される。
【0066】
第1の溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドンであることが好ましい。高分子材料として、後述する、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位の質量組成比が5%以下であるフッ化ビニリデン重合体を用いた場合でも、溶解性が低下せず、均一溶液を容易に調製することができるからである。
【0067】
セパレータ35上に形成される多孔性高分子化合物の面積密度は、例えば、0.1mg/cm2以上10mg/cm2以下であることが好ましい。0.1mg/cm2より小さいと、酸化分解反応に対する保護効果が発揮させづらくなるからである。10mg/cm2より大きいと、極間距離の増加によるイオン伝導経路長の冗長化により、エネルギー密度が低下する傾向にあるからである。
【0068】
高分子材料としては、フッ化ビニリデン単量体単位を含むフッ化ビニリデン重合体を用いることができる。このようなフッ化ビニリデン重合体としては、フッ化ビニリデン単独重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン二元系共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−クロロトリフルオロエチレン3元系共重合体などが挙げられる。なお、フッ化ビニリデン重合体と共に、他の1種または2種以上の高分子材料を用いてもよい。
【0069】
フッ化ビニリデン重合体としては、フッ化ビニリデン単量体単位と、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位との質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が、100:0〜95:5の範囲内であるものを用いる。すなわち、フッ化ビニリデン単独重合体、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位の質量組成比が5%以下のフッ化ビニリデン共重合体を用いることができる。フッ化ビニリデン単量体単位と、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位との質量組成比が100:0〜95:5の範囲外、すなわち、ヘキサフルオロプロピレン単量体単位の質量組成比が5%を超えると、高分子化合物が膨潤しやすくなり、電池製造工程のヒートプレス時に、多孔性高分子化合物の空孔構造が崩れて、空孔が閉じてしまい、これにより、透気度が高くなり、イオン伝導性が低下して、電池性能が低下する。
【0070】
フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上であることが好ましく、75万以上であることがより好ましい。このラミネートフィルム型電池では、正極と負極との間の極間距離を一定にして、良好なイオン伝導性を保つことが、重要である。極間距離を一定に保つという観点から、正極33および負極34間を絶縁層39を介して、強固に接着させることが重要である。したがって、良好な電極間の接着性を確保できる点から、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上であることが好ましく、75万以上であることがより好ましい。また、フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、製造容易の点から、150万未満であることが好ましく、120万以下であることがより好ましく、100万以下であることがさらに好ましい。
【0071】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)により、測定溶媒:N−メチル−2−ピロリドン、ポリスチレン換算で測定する。
【0072】
多孔性高分子化合物の透気度としては、良好なイオン伝導性を確保できる点から、500秒/100cc以下であることが好ましく、300秒/100cc以下であることがより好ましい。また、透気度の下限は、絶縁層36の物理的な構造を考慮すると、0秒/100ccより大きい数値となる。
【0073】
電解液保持層36は、多孔性高分子化合物および電解液の他に、無機粒子を含有していてもよい。電解液保持層36に無機粒子が含有されることによって、連続フロート充電をしたときの電流の漏れをより抑制することが可能である。
【0074】
この場合、多孔性高分子化合物は、例えば、以下のように形成する。すなわち、まず、上記と同様の高分子材料(フッ化ビニリデン重合体)を、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させた溶液に、さらに極性有機溶媒に無機粒子を分散させた溶液を添加することにより塗布溶液を調製する。この溶液をセパレータ35上に塗布する。次に、上記溶液が塗布されたセパレータ35を水、エチルアルコール、プロピルアルコールなど上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬する。このとき、溶媒交換が起こり、スピノーダル分解を伴う相分離が生じ、高分子材料は多孔構造を形成する。その後、乾燥することにより、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を得ることができる。なお、この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層36が形成される。
【0075】
(無機粒子)
無機粒子としては、電気絶縁性を有する金属酸化物の粒子、金属窒化物の粒子、金属炭化物の粒子等を挙げることができる。金属酸化物としては、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)等を好適に用いることができる。これらの無機粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。フッ化ビニリデン重合体と無機粒子との質量比(フッ化ビニリデン重合体:無機粒子)としては、例えば、1:1〜1:10であり、無機粒子の添加量が多すぎると、正極および負極間の接着性が弱くなるため、1:1〜1:8が好ましく、1:2〜1:6であることがより好ましい。
【0076】
(電解液)
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解する電解質塩とを含む。
【0077】
(溶媒)
溶媒としては、例えば、高誘電率溶媒を用いることができる。高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(炭酸プロピル)などの環状炭酸エステルなどを用いることができる。高誘電率溶媒としては、環状炭酸エステルの代わりに、または環状炭酸エステルと併せて、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン、N−メチルピロリドンなどのラクタム、N−メチルオキサゾリジノンなどの環状カルバミン酸エステル、テトラメチレンスルホンなどのスルホン化合物を用いてもよい。
【0078】
溶媒としては、高誘電率溶媒と、低粘度溶媒とを混合して用いてもよい。低粘度溶媒としては、エチルメチルカーボネート(炭酸メチルエチル)、ジエチルカーボネート(炭酸ジエチレン)、ジメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチル、トリメチル酢酸エチル等の鎖状カルボン酸エステル、N,N−ジメチルアセトアミド等の鎖状アミド、N,N−ジエチルカルバミン酸メチル、N,N−ジエチルカルバミン酸エチル等の鎖状カルバミン酸エステル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン等のエーテル等が挙げられる。なお、溶媒は上記で例示した化合物に限定されるものではなく、従来提案されている化合物を広く用いることができる。
【0079】
(電解質塩)
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの軽金属塩のいずれか1種または2種以上を含有している。
【0080】
リチウム塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl4)などの無機リチウム塩が挙げられる。また、リチウム塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3SO3Li)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド((CF3SO2)2NLi)、リチウムビス(ペンタフルオロメタンスルホン)イミド((C2F5SO2)2NLi)、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホン)メチド((CF3SO2)3CLi)などのパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体のリチウム塩、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、LiB(C2O4)2などのホウ素含有リチウム塩などが挙げられる。
【0081】
(非水電解質電池の製造方法)
この非水電解質電池は、例えば、以下の製造方法によって製造される。
【0082】
(正極の製造)
まず、正極33を作製する。例えば、正極材料と、結着剤と、導電剤とを混合して正極合剤としたのち、有機溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードまたはバーコータなどによって正極集電体33Aの両面に正極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して正極活物質層33Bを形成する。この場合には、圧縮成型を複数回に渡って繰り返してもよい。
【0083】
(負極の製造)
次に、負極34を作製する。例えば、負極材料と、結着剤と、必要に応じて導電剤とを混合して負極合剤としたのち、これを有機溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、ドクタブレードまたはバーコータなどによって負極集電体34Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布して乾燥させる。最後に、必要に応じて加熱しながらロールプレス機などによって塗膜を圧縮成型して負極活物質層34Bを形成する。
【0084】
(多孔性高分子化合物の形成)
まず、上述した高分子材料をセパレータ35の片面または両面に塗布する。この高分子材料を、N−メチル−2−ピロリドンやγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させ、セパレータ35上に塗布し、水、エチルアルコール、プロピルアルコールなど上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上述した高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬させた後、乾燥させる。これにより、片面または両面に多孔性高分子化合物が形成されたセパレータ35を作製する。
【0085】
次に、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、片面または両面に多孔性高分子化合物が形成されたセパレータ35を介して正極33と負極34とを積層して巻回させたのち、その最外周部に保護テープ37を接着させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製する。この巻回体を袋状の外装部材40の内部に収納する。
【0086】
電解液を調製して、外装部材40の内部に注入したのち、その外装部材40の開口部を熱融着などで密封する。最後にヒートプレスを行う。すなわち、外装部材40に加重をかけながら加熱し、多孔性高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液保持層36が形成される。ヒートプレス時において、電解液保持層36では、多孔性高分子化合物が膨潤するが、多孔性高分子化合物の空孔構造は崩れずに、その空孔が維持されている。以上により、非水電解質電池が完成する。
【0087】
2.第2の実施の形態
(非水電解質電池の構成)
本技術の第2の実施による形態の非水電解質電池の構成例について説明する。図3Aは、本技術の第2の実施の形態による非水電解質電池の外観を示す斜視図である。図3Bは、本技術の第2の実施の形態による非水電解質電池の構成を示す斜視分解図である。また、図3Cは、図3Aに示す非水電解質電池の下面の構成を示す斜視図であり、なお、下記の説明では、非水電解質電池51のうち、正極リード53が導出される部分をトップ部、トップ部に対向し、負極リード54が導出される部分をボトム部、トップ部とボトム部とに挟まれた両辺をサイド部とする。また、電極、電極リード等について、サイド部−サイド部方向を幅として説明する。
【0088】
図3A〜図3Cに示すように、本技術の非水電解質電池51は、例えば、充電および放電可能な二次電池であり、電池素子60がラミネートフィルム52にて外装されたものであり、ラミネートフィルム52同士が封止された部分からは、電池素子60と接続された正極リード53および負極リード54が電池外部に導出されている。正極リード53および負極リード54は、互いに対向する辺から導出されている。
【0089】
(電池素子)
図4A〜図4Bは、電池素子を構成する正極の構成例を示す。図4C〜図4Bは、電池素子を構成する負極の構成例を示す。図5A〜図5Bは、ラミネートフィルムに外装される前の電池素子の構成例を示す。電池素子60は、図4Aまたは図4Bに示す矩形状の正極61と、図4Cまたは図4Dに示す矩形状の負極62とが、セパレータ63を介して積層された構成である。具体的には、図5Aおよび図5Bに示すように、正極61および負極62がつづら折りに折り曲げられたセパレータ63を介して交互に積層された構成である。第2の実施の形態では、電池素子60の最表層がセパレータ63となるように、セパレータ63、負極62、セパレータ63、正極61、・・・負極62、セパレータ63のように順に積層された電池素子60を用いる。なお、図5A〜図5Bにおいて、図示は省略するが、セパレータ63の両面には、多孔性高分子化合物が形成されている。この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層が形成される。
【0090】
図6は、図3Aの非水電解質電池のa−a’断面を示す断面図である。図6に示すように、電池素子60では、電解液保持層66が、セパレータ63の両面に形成されており、セパレータ63と正極61と、セパレータ63と負極62とが、それぞれ電解液保持層66を介して、接着している。また、正極61と負極62とが、絶縁層67を介して、接着している。正極61および負極62間に絶縁層67を設けることにより、正極61および負極62間の接着性を高めることで、充放電の繰り返しにより、極間距離が不均一になることを抑制する。なお、セパレータ63の片面のみに、電解液保持層66を形成するようにしてもよい。
【0091】
電池素子60からは、複数枚の正極61からそれぞれ延出される正極タブ61Cと、複数枚の負極62からそれぞれ延出される負極タブ62Cとが導出されている。複数枚重ねられた正極タブ61Cは、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた正極タブ61Cの先端部には、超音波溶接または抵抗溶接等の方法により正極リード53が接続されている。
【0092】
また、正極61と同様に、負極タブ62Cは、複数枚重ねられた上で、曲げ部分において適切なたるみを持った状態で断面が略U字状となるように折り曲げられて構成されている。複数枚重ねられた負極タブ62Cの先端部には、超音波溶接または抵抗溶接等の方法により負極リード54が接続されている。
【0093】
(正極リード)
正極タブ61Cと接続する正極リード53は、例えばアルミニウム(Al)等からなる金属リード体を用いることができる。本技術の大容量の非水電解質電池51では、大電流を取り出すために、従来に比して正極リード53の幅を太く、厚みを厚く設定する。
【0094】
正極リード53の幅は任意に設定可能であるが、大電流を取り出せるという点で、正極リード53の幅waが正極61の幅Waに対して50%以上100%以下であることが好ましい。
【0095】
正極リード53の厚みは、150μm以上250μm以下とすることが好ましい。正極リード53の厚みが150μm未満の場合、取り出せる電流量が小さくなってしまう。正極リード53の厚みが250μmを超える場合、正極リード53が厚すぎるため、リード導出辺におけるラミネートフィルム52の密封性が低下して、水分浸入が容易になる。
【0096】
なお、正極リード53の一部分には、ラミネートフィルム52と正極リード53との接着性を向上させるための密着フィルムであるシーラント55が設けられる。シーラント55は、金属材料との接着性の高い樹脂材料により構成され、例えば正極リード53が上述した金属材料から構成される場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されることが好ましい。
【0097】
シーラント55の厚みは、70μm以上130μm以下とすることが好ましい。70μm未満では正極リード53とラミネートフィルム52との接着性に劣り、130μmを超えると熱融着時における溶融樹脂の流動量が多く、製造工程上好ましくない。
【0098】
(負極リード)
負極タブ62Cと接続する負極リード54は、例えばニッケル(Ni)等からなる金属リード体を用いることができる。本技術の大容量の非水電解質電池51では、大電流を取り出すために、従来に比して負極リード54の幅を太く、厚みを厚く設定する。負極リード54の幅は、後述する負極タブ62Cの幅と略同等とすることが好ましい。
【0099】
負極リード54の幅は任意に設定可能であるが、大電流を取り出せるという点で、負極リード54の幅wbが負極62の幅Wbに対して50%以上100%以下であることが好ましい。
【0100】
負極リード54の厚みは、正極リード53と同様に150μm以上250μm以下とすることが好ましい。正極リード53の厚みが150μm未満の場合、取り出せる電流量が小さくなってしまう。正極リード53の厚みが250μmを超える場合、正極リード53が厚すぎるため、リード導出辺におけるラミネートフィルム52の密封性が低下して、水分浸入が容易になる。
【0101】
負極リード54の一部分には、正極リード53と同様に、ラミネートフィルム52と負極リード54との接着性を向上させるための密着フィルムであるシーラント55が設けられる。
【0102】
なお、正極リード53の幅waと負極リード54の幅wbは通常同等の幅w(以下、正極リード53幅waおよび負極リード54幅wbが同等の場合には、正極リード53幅waおよび負極リード54幅wbを区別せずに電極リード幅wと適宜称する)とされる。そして、電極リード幅wは、正極61の幅Waと負極62の幅Wbが異なる場合には、正極61の幅Waと負極62の幅Wbのうち広い方の電極幅Wに対して50%以上100%以下であることが好ましい。
【0103】
(正極)
図4A〜図4Bに示すように、正極61は、正極活物質を含有する正極活物質層61Bが、正極集電体61Aの両面上に形成されてなる。正極集電体61Aとしては、例えばアルミニウム(Al)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔が用いられる。
【0104】
また、正極集電体61Aから一体に正極タブ61Cが延出されている。複数枚重ねられた正極タブ61Cは、断面が略U字状となるように折り曲げられ、先端部には超音波溶接または抵抗溶接等の方法により正極リード53と接続される。
【0105】
正極活物質層61Bは、正極集電体61Aの矩形状の主面部上に形成される。正極集電体61Aが露出した状態の延出部は、正極リード53を接続するための接続タブである正極タブ61Cとしての機能を備える。正極タブ61Cの幅は任意に設定可能である。特に、正極リード53および負極リード54を同一辺から導出する場合には、正極タブ61Cの幅は正極61の幅の50%未満とする必要がある。このような正極61は、矩形状の正極集電体61Aの一辺に、正極集電体露出部を設けるようにして正極活物質層61Bを形成し、不要な部分を切断することで得られる。
【0106】
正極活物質層61Bの構成は、第1の実施の形態の正極活物質層33Bと同様である。すなわち、正極活物質層61Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上とを含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。正極材料、結着剤、導電剤は、第1の実施の形態と同様である。
【0107】
(負極)
図4C〜図4Dに示すように、負極62は、負極活物質を含有する負極活物質層62Bが、負極集電体62Aの両面上に形成されてなる。負極集電体62Aとしては、例えば銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔あるいはステンレス(SUS)箔などの金属箔により構成されている。
【0108】
また、負極集電体62Aから一体に負極タブ62Cが延出されている。複数枚重ねられた負極タブ62Cは、断面が略U字状となるように折り曲げられ、先端部には超音波溶接または抵抗溶接等の方法により負極リード54が接続される。
【0109】
負極活物質層62Bは、負極集電体62Aの矩形状の主面部上に形成される。負極集電体62Aが露出した状態の延出部は、負極リード54を接続するための接続タブである負極タブ62Cとしての機能を備える。負極タブ62Cの幅は任意に設定可能である。特に、正極リード53および負極リード54を同一辺から導出する場合には、負極タブ62Cの幅は負極62の幅の50%未満とする必要がある。このような負極62は、矩形状の負極集電体62Aの一辺に、負極集電体露出部を設けるようにして負極活物質層62Bを形成し、不要な部分を切断することで得られる。
【0110】
(負極活物質層)
負極活物質層62Bの構成は、第1の実施の形態の負極活物質層34Bと同様である。すなわち、負極活物質層34Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて、結着剤や導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。負極材料、結着剤、導電剤は、第1の実施の形態と同様である。
【0111】
(絶縁層)
絶縁層67は、セパレータ63と、セパレータ63の少なくとも一面に形成された電解液保持層66とからなる。なお、セパレータ63を省略して、絶縁層67を電解液保持層66単独で構成してもよい。
【0112】
(セパレータ)
セパレータ63は、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の薄膜から構成されている。具体的には、例えばポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料からなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の多孔質膜を含むものは、正極61と負極62との分離性に優れ、内部短絡や開回路電圧の低下をいっそう低減できるので好適である。セパレータ63には、電解液が含浸されている。
【0113】
(電解液保持層)
電解液保持層66は、第1の実施の形態の電解液保持層36と同様である。すなわち、電解液保持層66は、第1の実施の形態と同様の多孔性高分子化合物と、第1の実施の形態と同様の電解液とを含む。電解液保持層66では、電解液が多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、電解液により多孔性高分子化合物が膨潤されている。なお、電解液保持層66は、単独でまたはセパレータ63と共に、正極61と負極63とを隔離し、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させる機能を有していてもよい。
【0114】
本技術の大容量の非水電解質電池において、セパレータ63の厚みは5μm以上25μm以下が好適に使用可能であり、7μm以上20μm以下がより好ましい。セパレータ63は、厚すぎると活物質の充填量が低下して電池容量が低下するとともに、イオン伝導性が低下して電流特性が低下する。逆に薄すぎると、膜の機械的強度が低下する。
【0115】
電解液保持層66は、多孔性高分子化合物および電解液の他に、第1の実施の形態と同様、無機粒子を含有していてもよい。電解液保持層66に無機粒子が含有されることによって、連続フロート充電をしたときの電流の漏れをより抑制することが可能である。
【0116】
電池素子60の厚みは、5mm以上20mm以下であることが好ましい。5mm未満であると、薄型であるため、蓄熱の影響が少なく、セル表面に凹凸がなくとも熱が逃げやすい傾向がある。一方、20mmを超えると、電池表面から電池中央部までの距離が大きくなりすぎて、電池表面からの放熱だけでは電池内に温度差ができてしまい、寿命性能に影響がでる傾向がある。
【0117】
また、電池素子60の放電容量は、3Ah以上50Ah以下であることが好ましい。3Ah未満であると、電池容量が小さいため、集電箔の厚みを厚くするなど電池容量を下げて抵抗を落とすなど他の手法でも発熱を抑えることができる傾向がある。50Ahを超えると、電池熱容量が大きくなり、放熱しにくくなってしまい、電池内での温度ばらつきも大きくなる傾向がある。ここで、上述の電池素子60の放電容量は、非水電解質電池1の公称容量であり、公称容量は、充電条件が上限電圧3.6V、充電電流0.2Cの定電圧定電流充電、放電条件が放電終止電圧2.0V、放電電流0.2Cの定電流放電の場合における放電容量から算出したものである。
【0118】
(ラミネートフィルム)
電池素子60を外装する外装材であるラミネートフィルム52は、金属箔からなる金属層52aの両面に樹脂層を設けた構成とされている。ラミネートフィルムの一般的な構成は、図7に示すように、外側樹脂層52b/金属層52a/内側樹脂層52cの積層構造で表すことができ、内側樹脂層52cが電池素子60に対向するように形成されている。外側樹脂層52bおよび内側樹脂層52cと、金属層52aとの間には、厚さ2μm以上7μm以下程度の接着層を設けても良い。外側樹脂層52bおよび内側樹脂層52cは、それぞれ複数層で構成されてもよい。
【0119】
金属層52aを構成する金属材料としては、耐透湿性のバリア膜としての機能を備えていれば良く、アルミニウム(Al)箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケル(Ni)箔およびメッキを施した鉄(Fe)箔などを使用することができる。なかでも、薄く軽量で加工性に優れるアルミニウム箔を好適に用いることが好ましい。特に、加工性の点から、例えば焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)、(JIS A8079P−O)または(JIS A1N30−O)等を用いるのが好ましい。
【0120】
金属層52aの厚みは、30μm以上150μm以下とすることが好ましい。30μm未満の場合、材料強度に劣ってしまう。また、150μmを超えた場合、加工が著しく困難になるとともに、ラミネートフィルム52の厚さが増してしまい、非水電解質電池の体積効率の低下につながってしまう。
【0121】
内側樹脂層52cは、熱で溶けて互いに融着する部分であり、ポリエチレン(PE)、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が使用可能であり、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0122】
内側樹脂層52cの厚みは、20μm以上50μm以下とすることが好ましい。20μm未満では接着性が低下するとともに、圧力緩衝作用が不十分となってしまい、短絡が発生しやすくなる。また、50μmを超えると、内側樹脂層52cを通じて水分が浸入しやすくなっていまい、電池内部でのガス発生およびそれに伴う電池膨れ、ならびに電池特性の低下が生じるおそれがある。なお、内側樹脂層52cの厚みは、電池素子60に外装前の状態における厚みである。電池素子60に対してラミネートフィルム52を外装し、封止した後は、2層の内側樹脂層52cが互いに融着されるため、内側樹脂層42cの厚みは上記範囲から外れる場合もある。
【0123】
なお、内側樹脂層52cは、例えば型押し等により表面に凹凸を付けても良い。これにより、電池素子60の最表層の電解液保持層66とラミネートフィルム52間での滑り性が悪くなり、電池素子60の移動抑制効果を高くすることができる。
【0124】
外側樹脂層52bとしては、外観の美しさや強靱さ、柔軟性などからポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル等が用いられる。具体的には、ナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)が用いられ、これらから複数種類選択して用いることも可能である。
【0125】
なお、内側樹脂層52c同士を熱融着により溶融させてラミネートフィルム52間を接着するため、外側樹脂層52bは、内側樹脂層52cよりも高い融点を有することが好ましい。熱融着時に内側樹脂層52cのみを溶融させるためである。このため、外側樹脂層52bは、内側樹脂層52cとして選択された樹脂材料によって使用可能な材料を選択可能である。
【0126】
外側樹脂層52bの厚みは、25μm以上35μm以下とすることが好ましい。25μm未満では保護層としての機能に劣り、35μmを超えると非水電解質電池51の体積効率の低下につながってしまう。
【0127】
上述の様な電池素子60は、上述のラミネートフィルム52間にて外装される。このとき、正極タブ61Cと接続された正極リード53および負極タブ62Cと接続された負極リード54がラミネートフィルム52の封止部から電池外部に導出される。図3Bに示されるように、ラミネートフィルム52間には、予め深絞り加工により形成された電池素子収納部57が設けられている。電池素子60は、電池素子収納部57に収納される。
【0128】
本技術では、電池素子60の周辺部をヒータヘッドによって加熱することにより、電池素子60を両面から覆うラミネートフィルム52間同士を熱融着させて封止する。特に、リード導出辺においては、正極リード53および負極リード54を避ける形状に切り欠きが設けられたヒータヘッドによってラミネートフィルム52を熱融着することが好ましい。正極リード53および負極リード54にかかる負荷を小さくして電池を作製することができるためである。この方法により、電池作製時のショートを防ぐことができる。
【0129】
本技術の非水電解質電池51は、熱融着によるラミネートフィルム52間の封止後におけるリード導出部の厚みを制御することにより、高い安全性および電池特性を備えている。
【0130】
(非水電解質電池の製造方法)
上述の非水電解質電池51は、例えば、以下のような工程で作製することができる。
【0131】
(正極の作製)
正極材料と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーとする。続いて、この正極合剤スラリーを帯状の正極集電体61Aの両面に塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して正極活物質層61Bを形成し、正極シートとする。この正極シートを所定の寸法に切断し、正極61を作製する。このとき、正極集電体61Aの一部を露出するようにして正極活物質層61Bを形成する。この正極集電体61A露出部分を正極タブ61Cとする。また、必要に応じて正極集電体露出部の不要な部分を切断して正極タブ61Cを形成してもよい。これにより、正極タブ61Cが一体に形成された正極61が得られる。
【0132】
(負極の作製)
負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーとする。続いて、この負極合剤スラリーを負極集電体62Aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型して負極活物質層62Bを形成し、負極シートとする。この負極シートを所定の寸法に切断し、負極62を作製する。このとき、負極集電体62Aの一部を露出するようにして負極活物質層62Bを形成する。この負極集電体62A露出部分を負極タブ62Cとする。また、必要に応じて負極集電体露出部の不要な部分を切断して負極タブ62Cを形成してもよい。これにより、負極タブ62Cが一体に形成された負極62が得られる。
【0133】
(多孔性高分子化合物の形成)
セパレータ63の表面に多孔性高分子化合物を形成する。多孔性高分子化合物は、例えば、以下のように形成する。すなわち、まず、高分子材料を、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒からなる第1の溶媒に溶解させた溶液を調製し、この溶液をセパレータ63上に塗布する。次に、上記溶液が塗布されたセパレータ63を水、エチルアルコール、プロピルアルコールなど上記極性有機溶媒に対して相溶性があり、上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒中に浸漬する。このとき、溶媒交換が起こり、スピノーダル分解を伴う相分離が生じ、高分子材料は多孔構造を形成する。その後、乾燥することにより、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を得ることができる。なお、この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層66が形成される。
【0134】
(積層工程)
次に、図5A〜図5Bに示すように、正極61と負極62とを、つづら折りにしたセパレータ63間に交互に挿入し、例えば、セパレータ63、負極62、セパレータ63、正極61、セパレータ63、負極62・・・セパレータ63、負極62、セパレータ63となるように重ね合わせて所定数の正極61および負極62を積層する。続いて、正極61、負極62およびセパレータ63が密着するように押圧した状態で固定し、電池素子60を作製する。電池素子60をより強固に固定するには、例えば接着テープ等の固定部材56を用いることができる。固定部材56を用いて固定する場合には、例えば電池素子60の両サイド部に固定部材56を設ける。
【0135】
次に、複数枚の正極タブ61Cおよび複数枚の負極タブ62Cを断面U字状となるように折り曲げる。電極タブは、例えば下記のようにして折り曲げられる。
【0136】
(第1のタブU字曲げ工程)
積層した正極61から引き出された複数の正極タブ61Cおよび積層した負極62から引き出された複数の負極タブ62Cを、断面略U字形状となるように折り曲げる。第1のU字曲げ工程は、予め正極タブ61Cおよび負極タブ62Cに最適なU字曲げ形状を持たせるための工程である。予め最適なU字曲げ形状を持たせることにより、後に正極リード53および負極リード54と接続後の正極タブ61Cおよび負極タブ62Cを折り曲げてU字曲げ部を形成する際に正極タブ61Cおよび負極タブ62Cに引張り応力などのストレスがかからないようにすることができる。
【0137】
図8A〜図8Eは、負極タブ62Cの第1のU字曲げ工程を説明する側面図である。図8A〜図8Eにおいては、負極タブ62Cについて行われる各工程を説明する。なお、正極集電体61Aについても同様にして第1のU字曲げ工程が行われる。
【0138】
まず、図8Aに示すように、U字曲げ用薄板71を有するワークセット台70aの上部に電池素子を配設する。U字曲げ用薄板71は、電池素子60の厚みよりもやや小さい分だけ、具体的には、少なくとも複数の負極タブ62C1〜負極タブ62C4の総厚分小さい分だけ、ワークセット台70aから突出するように設置されている。このような構成とすることにより、負極タブ62C4の曲げ外周側が電池素子60の厚みの範囲内に位置するため、非水電解質電池51の厚みの増大や外観不良が生じるのを防止することができる。
【0139】
続いて、図8Bに示すように、電池素子60を下降させるか、もしくはワークセット台70aを上昇させる。このとき、電池素子60とU字曲げ用薄板71との間隙が小さいほど非水電解質電池51のスペース効率が向上するため、例えば電池素子60とU字曲げ用薄板71との間隙が徐々に小さくなるようにする。
【0140】
図8Cに示すように、電池素子60がワークセット台70a上に載置され、負極タブ62Cに曲げ部を形成した後、図8Dおよび図8Eに示すようにローラ72を下降させて負極タブ62CがU字形状に折り曲げられる。
【0141】
U字曲げ用薄板71は、厚みが1mm以下、例えば0.5mm程度が好ましい。U字曲げ用薄板71には、このような薄さでも複数の正極タブ61Cまたは負極タブ62Cに曲げ形状を形成するために必要な強度を有する材料を用いることができる。U字曲げ用薄板71に必要な強度は、正極61および負極62の積層枚数や、正極タブ61Cおよび負極タブ62Cに用いる材料の硬度等によって変わる。U字曲げ用薄板71が薄いほど、曲げ最内周の負極タブ62C1の曲率を小さくすることができ、負極タブ62Cの折り曲げに必要なスペースを小さくすることができるため好ましい。U字曲げ用薄板71としては、例えばステンレス(SUS)、強化プラスティック材およびめっきを施した鋼材などを用いることができる。
【0142】
(集電体露出部切断工程)
次に、U字曲げ部を形成した負極タブ62Cの先端を切り揃える。集電体露出部切断工程では、予め最適な形状を有するU字曲げ部を形成し、そのU字曲げ形状に合わせて正極タブ61Cおよび負極タブ62Cの余剰分を切断する。図9A〜図9Eは、負極タブ62Cの切断工程を説明する側面図である。なお、正極タブ61Cについても同様にして集電体露出部切断工程が行われる。
【0143】
図9Aに示すように、第1のU字曲げ工程においてU字曲げ部が形成された電池素子60の上面と底面を反転させ、集電体たるみ用逃げ部73を有するワークセット台70b上に電池素子60を固定する。
【0144】
次に、図9Bに示すように、U字曲げ部が形成された負極タブ62C1〜負極タブ62C4のU字曲げ部から先端に至る先端部分がワークセット台70bに沿って略L字形状となるように先端部分を変形させる。このとき、再度U字曲げ部を形成するために必要な形状を維持することにより、曲げ外周側の負極タブ62C4ほど大きなたるみが生じる。このようなたるみがワークセット台70bの集電体たるみ用逃げ部33に入り込むことにより、負極タブ62C1〜負極タブ62C4をストレスなく変形させることができる。なお、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端部分を固定した状態で負極タブ62C1〜負極タブ62C4を変形させるようにしてもよい。
【0145】
続いて、図9Cに示すように、集電体押さえ74にて負極タブ62C1〜負極タブ62C4をワークセット台70bに押さえつけた後、図9Dおよび図9Eに示すように、例えば集電体押さえ74に沿うように設けられた切断用刃75で負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端を切り揃える。負極タブ62C1〜負極タブ62C4の切断箇所は、後に再度U字曲げを行った際に負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端が電池素子60の厚みの範囲内に位置するように、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端の余剰分を少なくとも切断するようにする。
【0146】
(電極リード接続工程)
続いて、負極タブ62C1〜負極タブ62C4と、負極リード54との接続を行う。タブ接続工程では、第1のU字曲げ工程で形成した最適なU字曲げ形状を維持しながら正極タブ61Cおよび負極タブ62Cと、正極リード53および負極リード54を固着する。これにより、正極タブ61Cおよび正極リード53と、負極タブ62Cおよび負極リード54が電気的に接続される。図10A〜図10Cは、負極タブ62C1〜負極タブ62C4と、負極リード54との接続工程を説明する側面図である。なお、図示はしないが、負極リード54にはあらかじめシーラント55が設けられているものとする。正極タブ61Cと正極リード53についても同様にして接続工程が行われる。
【0147】
図10Aに示すように、電極端子切断工程において負極タブ62C1〜負極タブ62C4の先端余剰分を切断した電池素子60の上面と底面を再度反転させる。次に、図10Bに示すように、集電体形成維持用板76を有するワークセット台70c上に電池素子60を固定する。負極タブ62C1の曲げ内周側には集電体形成維持用板76の先端が位置しており、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の曲げ形状を維持するとともに、固着装置から発生する例えば超音波振動などの外的要因による影響を防止する。
【0148】
続いて、図10Cに示すように、例えば超音波溶着により負極タブ62C1〜負極タブ62C4と負極リード54とを固着する。超音波溶着には、例えば、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の下部に備えられたアンビル77aと、負極タブ62C1〜負極タブ62C4の上部に備えられたホーン77bが用いられる。アンビル77aには予め負極タブ62C1〜負極タブ62C4がセットされ、ホーン77bが下降してアンビル77aとホーン77bとで負極タブ62C1〜負極タブ62C4および負極リード54が挟持される。そして、アンビル77aとホーン77bとにより、負極タブ62C1〜負極タブ62C4および負極リード54に超音波振動が与えられる。これにより、負極タブ62C1〜負極タブ62C4および負極リード54が互いに固着される。
【0149】
なお、タブ接続工程においては、図10Cを参照して上述した内周側曲げしろRiが形成されるように負極リード54を負極タブ62Cに接続するとよい。なお、内周側曲げしろRiは、正極リード53および負極リード54の厚み以上とする。
【0150】
次に、負極タブ62C1〜負極タブ62C4と固着した負極リード54を所定の形状に折り曲げる。図11A〜図11Eは、負極リード54のタブ折り曲げ工程を説明する側面図である。また、正極タブ61Cと正極リード53についても同様にしてタブ折り曲げ工程・電極リード接続工程が行われる。
【0151】
図11Aに示すように、接続工程において負極タブ62C1〜負極タブ62C4と負極リード54とが固着された電池素子60の上面と底面を再度反転させて、集電体たるみ用逃げ部73を有するワークセット台70d上に電池素子60を固定する。負極タブ62C1〜負極タブ62C4と負極リード54との接続部分は、タブ折り曲げ台78a上に載置する。
【0152】
続いて、図11Bに示すように、負極タブ62C1〜負極タブ62C4と負極リード54との接続部分をブロック78bにて押さえ、図11Cに示すようにローラ79を降下させることにより、タブ折り曲げ台78aおよびブロック78bから突出した負極リード54を折り曲げる。
【0153】
(第2のタブU字曲げ工程)
続いて、図11Dに示すように、電池素子60と、負極タブ62C1〜負極タブ62C4とを押さえるブロック78bとの間に介在するようにU字曲げ用薄板71を配置する。続いて、図11Eに示すように、負極タブ62C1〜負極タブ62C4を図8A〜図8Eに示す第1のU字曲げ工程で形成したU字曲げ形状に沿って90°折り曲げ、電池素子60を作製する。このとき、上述したように、図10Cのように内周側曲げしろRiが形成されるように負極リード54と負極タブ62Cとを接続しておく。これにより、第2のタブU字曲げ工程において、負極リード54が積層された正極61および負極62に当接することなく負極タブ62Cを電極面と略垂直の方向にまで折り曲げることができる。
【0154】
このとき、負極リード54は予め熱溶着されたシーラント55と一緒に折り曲げるのが好ましい。負極リード54の折り曲げ部をシーラント55が被覆することになり、負極リード54とラミネートフィルム52とが直接接触しない構造とすることができる。この構造により、長期的な振動、衝撃などによるラミネートフィルム52内部の樹脂層と負極リード54との擦れ、ラミネートフィルム52の破損、ラミネートフィルム52の金属層との短絡の危険性を大幅に低減することができる。このようにして、電池素子60が作製される。
【0155】
(外装工程)
このあと、作製した電池素子60をラミネートフィルム52で外装し、サイド部の一方と、トップ部およびボトム部をヒータヘッドで加熱して熱融着する。正極リード53および負極リード54が導出されたトップ部およびボトム部は、例えば切り欠きを有するヒータヘッドで加熱して熱融着する。
【0156】
続いて、熱融着していない他のサイド部の開口から、電解液を注液する。最後に、注液を行ったサイド部のラミネートフィルム52を熱融着し、電池素子60をラミネートフィルム52内に封止する。この後、ラミネートフィルム52の外部から、電池素子60に対して、加圧するとともに加熱するヒートプレスを行い、電解液をセパレータ63の表面に形成された多孔性高分子化合物に保持させる。これにより、電解液保持層66が形成される。ヒートプレス時において、電解液保持層66では、多孔性高分子化合物が膨潤するが、多孔性高分子化合物の空孔構造は崩れずに、その空孔が維持されている。以上により、非水電解質電池51が完成する。
【0157】
3.第3の実施の形態
(非水電解質電池の構成)
本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池について説明する。図12Aは、本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池の外観を示す斜視図であり、図12Bは、本技術の第3の実施の形態による非水電解質電池の構成を示す斜視分解図である。また、図12Cは、図12Aに示す非水電解質電池の下面の構成を示す斜視図である。
【0158】
第3の実施の形態の非水電解質電池は、電池素子の構成などが第2の実施の形態と異なる点以外は、第2の実施の形態と同様である。したがって、以下では、第2の実施の形態と異なる点を中心に説明し、第2の実施の形態と重複する部分の説明を適宜省略する。なお、図12〜図14において、第2の実施の形態の非水電解質電池と同一または対応する部分については、同一の符号を付す。また、下記の説明では、非水電解質電池81のうち、正極リード53および負極リード54が導出される部分をトップ部、トップ部に対向する部分をボトム部、トップ部とボトム部とに挟まれた両辺をサイド部とする。また、電極、電極リード等について、サイド部−サイド部方向を幅として説明する。
【0159】
図12A〜図12Cに示すように、第3の実施の形態の非水電解質電池81は、例えば、充電および放電可能な二次電池であり、電池素子90がラミネートフィルム52にて外装されたものであり、ラミネートフィルム52同士が封止された部分からは、電池素子90と接続された正極リード53および負極リード54が電池外部に導出されている。正極リード53および負極リード54は、同一辺から導出されている。
【0160】
正極リード53の幅waは、正極61の幅Waの50%未満である必要がある。正極リード53が、負極リード54と接触しない位置に設ける必要があるためである。また、この場合、ラミネートフィルム52の封止性と高電流充放電とを両立するために、正極リード53の幅waは正極61の幅Waの15%以上40%以下であることが好ましく35%以上40%以下であることがより好ましい。また、負極リード54の幅wbは、負極62の幅Wbの50%未満である必要がある。負極リード54が、正極リード53と接触しない位置に設ける必要があるためである。また、この場合、ラミネートフィルム52の封止性と高電流充放電とを両立するために、負極リード54の幅wbは負極62の幅Wbの15%以上40%以下であることが好ましく35%以上40%以下であることがより好ましい。
【0161】
(電池素子)
図13A〜図13Bは、ラミネートフィルムに外装される前の電池素子の構成例を示す。電池素子60は、略矩形状の正極61と、正極61と対向して配された略矩形状の負極62とが、略矩形状のセパレータ63を介して順に積層された構成である。具体的には、負極62、セパレータ63、正極61、セパレータ63・・・セパレータ63、負極62を介して交互に積層された積層型電極構造を有している。第3の実施の形態における正極61および負極62は、第2の実施の形態と同様の構成とされる。なお、図示は省略するが、セパレータ63の両面には、多孔性高分子化合物が形成されている。この多孔性高分子化合物に電解液を含浸させることにより、電解液保持層66が形成される。
【0162】
図14Aは、図12Aの非水電解質電池のb−b’断面を示す断面図である。図14Bは、図12Aの非水電解質電池のc−c’断面を示す断面図である。図14A〜図14Bに示すように、電池素子60では、電解液保持層66が、セパレータ63の両面に形成されており、セパレータ63と正極61と、セパレータ63と負極62とが、それぞれ電解液保持層66を介して、接着している。また、正極61と負極62とが、絶縁層67を介して、接着している。正極61および負極62間に絶縁層67を設けることにより、正極61および負極62間の接着性を高めることで、充放電の繰り返しにより、極間距離が不均一になることを抑制する。なお、セパレータ63の片面のみに、電解液保持層66を形成するようにしてもよい。
【0163】
電池素子90からは、複数枚の正極61とそれぞれ電気的に接続された正極端子としての正極タブ61Cと、複数枚の負極62とそれぞれ電気的に接続された負極端子としての負極タブ62Cとが引き出されている。複数枚の正極タブ61Cおよび負極タブ62Cには、それぞれ正極リード53および負極リード54が抵抗溶接、超音波溶着等により接続されている。さらに、複数枚重ねた正極タブ61Cおよび負極タブ62Cの断面が略U字形状となるように折り曲げられて構成されている。正極タブ61Cおよび負極タブ62Cは、曲げ部分において適切なたるみを持った状態でU字形状に折り曲げられる。
【0164】
(非水電解質電池の製造方法)
上述の非水電解質電池81は、例えば、以下の工程で作製することができる。
【0165】
(正極および負極、多孔性高分子化合物の形成)
正極61および負極62は、第2の実施の形態と同様の方法により作製することができる。また、第2の実施の形態と同様の方法により、セパレータ63の表面に多孔性高分子化合物を形成する。
【0166】
(積層工程)
次に、図13A〜図13Bに示すように、正極61と負極62とを、例えば負極62、セパレータ63、正極61、セパレータ63・・・セパレータ63、負極62となるように矩形状のセパレータ63を介して重ね合わせて所定数の正極61および負極62を積層する。続いて、正極61、負極62およびセパレータ63が密着するように押圧した状態で固定し、電池素子90を作製する。
【0167】
このようにして作製した電池素子90は、第2の実施の形態と同様の方法により正極タブ61Cおよび負極タブ62CのU字曲げがなされる。
【0168】
(外装工程)
このあと、作製した電池素子90をラミネートフィルム52で外装し、サイド部の一方と、トップ部およびボトム部をヒータヘッドで加熱して熱融着する。正極リード53および負極リード54が導出されたトップ部およびボトム部は、例えば切り欠きを有するヒータヘッドで加熱して熱融着する。
【0169】
続いて、熱融着していない他のサイド部の開口から、電解液を注液する。最後に、注液を行ったサイド部のラミネートフィルム52を熱融着し、電池素子90をラミネートフィルム52内に封止する。この後、ラミネートフィルム52の外部から、電池素子90に対して加圧するとともに加熱するヒートプレスを行い、電解液を多孔性高分子化合物に保持させる。これにより、電解液保持層66が形成される。ヒートプレス時において、電解液保持層66では、多孔性高分子化合物が膨潤するが、多孔性高分子化合物の空孔構造は崩れずに、その空孔が維持されている。以上により、非水電解質電池81が完成する。
【0170】
4.第4の実施の形態
(電池パックの例)
図15は、本技術の非水電解質電池(以下、二次電池と適宜称する)を電池パックに適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パックは、組電池101、外装、充電制御スイッチ102aと、放電制御スイッチ103a、を備えるスイッチ部104、電流検出抵抗107、温度検出素子108、制御部110を備えている。
【0171】
また、電池パックは、正極端子121および負極端子122を備え、充電時には正極端子121および負極端子122がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子121および負極端子122がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0172】
組電池101は、複数の二次電池101aを直列および/または並列に接続してなる。この二次電池101aは本技術の二次電池である。なお、図15は、6つの二次電池101aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、n並列m直列(n,mは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0173】
スイッチ部104は、充電制御スイッチ102aおよびダイオード102b、ならびに放電制御スイッチ103aおよびダイオード103bを備え、制御部110によって制御される。ダイオード102bは、正極端子121から組電池101の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子122から組電池101の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード103bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。尚、例では+側にスイッチ部を設けているが、−側に設けても良い。
【0174】
充電制御スイッチ102aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池101の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチのOFF後は、ダイオード102bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池101の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部110によって制御される。
【0175】
放電制御スイッチ103aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池101の電流経路に放電電流が流れないように制御部110によって制御される。放電制御スイッチ103aのOFF後は、ダイオード103bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池101の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部110によって制御される。
【0176】
温度検出素子108は例えばサーミスタであり、組電池101の近傍に設けられ、101組電池101の温度を測定して測定温度を制御部110に供給する。電圧検出部111は、組電池101およびそれを構成する各二次電池101aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部110に供給する。電流測定部113は、電流検出抵抗107を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部110に供給する。
【0177】
スイッチ制御部114は、電圧検出部111および電流測定部113から入力された電圧および電流を基に、スイッチ部104の充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aを制御する。スイッチ制御部114は、二次電池101aのいずれかの電圧が過充電検出電圧もしくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部104に制御信号を送ることにより、過充電および過放電、過電流充放電を防止する。
【0178】
ここで、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0179】
充放電スイッチは、例えばMOSFET等の半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード102bおよび103bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部114は、充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DOおよびCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電および放電動作では、制御信号COおよびDOをローレベルとし、充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aをON状態とする。
【0180】
そして、例えば過充電もしくは過放電の際には、制御信号COおよびDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ102aおよび放電制御スイッチ103aをOFF状態とする。
【0181】
メモリ117は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等からなる。メモリ117では、制御部110で演算された数値や 、製造工程の段階で測定された各二次電池101aの初期状態における電池の内部抵抗値等が予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。 (また、二次電池101aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部110とともに例えば残容量を算出することができる。
【0182】
温度検出部118では、温度検出素子108を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行う。
【0183】
5.第5の実施の形態
上述した非水電解質電池およびこれを用いた電池パックは、例えば電子機器や電動車両、蓄電装置等の機器に搭載又は電力を供給するために使用することができる。
【0184】
電子機器として、例えばノート型パソコン、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、 エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられる。
【0185】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)等が挙げられ、これらの駆動用電源又は補助用電源として用いられる。
【0186】
蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源等が挙げられる。
【0187】
以下では、上述した適用例のうち、上述した本技術の非水電解質電池を適用した蓄電装置を用いた蓄電システムの具体例を説明する。
【0188】
この蓄電システムは、例えば下記の様な構成が挙げられる。第1の蓄電システムは、再生可能エネルギーから発電を行う発電装置によって蓄電装置が充電される蓄電システムである。第2の蓄電システムは、蓄電装置を有し、蓄電装置に接続される電子機器に電力を供給する蓄電システムである。第3の蓄電システムは、蓄電装置から、電力の供給を受ける電子機器である。これらの蓄電システムは、外部の電力供給網と協働して電力の効率的な供給を図るシステムとして実施される。
【0189】
さらに、第4の蓄電システムは、蓄電装置から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、蓄電装置に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう制御装置とを有する電動車両である。第5の蓄電システムは、他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報送受信部とを備え、送受信部が受信した情報に基づき、上述した蓄電装置の充放電制御を行う電力システムである。第6の蓄電システムは、上述した蓄電装置から、電力の供給を受け、または発電装置または電力網から蓄電装置に電力を供給する電力システムである。以下、蓄電システムについて説明する。
【0190】
(5−1)応用例としての住宅における蓄電システム
本技術の非水電解質電池を用いた蓄電装置を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図16を参照して説明する。例えば住宅201用の蓄電システム200においては、火力発電202a、原子力発電202b、水力発電202c等の集中型電力系統202から電力網209、情報網212、スマートメータ207、パワーハブ208等を介し、電力が蓄電装置203に供給される。これと共に、家庭内発電装置204等の独立電源から電力が蓄電装置203に供給される。蓄電装置203に供給された電力が蓄電される。蓄電装置203を使用して、住宅201で使用する電力が給電される。住宅201に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0191】
住宅201には、発電装置204、電力消費装置205、蓄電装置203、各装置を制御する制御装置210、スマートメータ207、各種情報を取得するセンサ211が設けられている。各装置は、電力網209および情報網212によって接続されている。発電装置204として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置205および/または蓄電装置203に供給される。電力消費装置205は、冷蔵庫205a、空調装置205b、テレビジョン受信機205c、風呂205d等である。さらに、電力消費装置205には、電動車両206が含まれる。電動車両206は、電気自動車206a、ハイブリッドカー206b、電気バイク206cである。
【0192】
蓄電装置203に対して、本技術の非水電解質電池が適用される。本技術の非水電解質電池は、例えば上述したリチウムイオン二次電池によって構成されていてもよい。スマートメータ207は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網209は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0193】
各種のセンサ211は、例えば人感センサ、照度センサ、物体検知センサ、消費電力センサ、振動センサ、接触センサ、温度センサ、赤外線センサ等である。各種のセンサ211により取得された情報は、制御装置210に送信される。センサ211からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置205を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置210は、住宅201に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0194】
パワーハブ208によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置210と接続される情報網212の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transceiver:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth、ZigBee、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBeeは、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0195】
制御装置210は、外部のサーバ213と接続されている。このサーバ213は、住宅201、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ213が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
【0196】
各部を制御する制御装置210は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置203に格納されている。制御装置210は、蓄電装置203、家庭内発電装置204、電力消費装置205、各種のセンサ211、サーバ213と情報網212により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0197】
以上のように、電力が火力202a、原子力202b、水力202c等の集中型電力系統202のみならず、家庭内発電装置204(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置203に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置204の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置203に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置203に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置203によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0198】
なお、この例では、制御装置210が蓄電装置203内に格納される例を説明したが、スマートメータ207内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム200は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0199】
(5−2)応用例としての車両における蓄電システム
本技術を車両用の蓄電システムに適用した例について、図17を参照して説明する。図17に、本技術が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0200】
このハイブリッド車両300には、エンジン301、発電機302、電力駆動力変換装置303、駆動輪304a、駆動輪304b、車輪305a、車輪305b、バッテリー308、車両制御装置309、各種センサ310、充電口311が搭載されている。バッテリー308に対して、上述した本技術の非水電解質電池が適用される。
【0201】
ハイブリッド車両300は、電力駆動力変換装置303を動力源として走行する。電力駆動力変換装置303の一例は、モータである。バッテリー308の電力によって電力駆動力変換装置303が作動し、この電力駆動力変換装置303の回転力が駆動輪304a、304bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置303が交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ310は、車両制御装置309を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ310には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサ等が含まれる。
【0202】
エンジン301の回転力は発電機302に伝えられ、その回転力によって発電機302により生成された電力をバッテリー308に蓄積することが可能である。
【0203】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両300が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置303に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置303により生成された回生電力がバッテリー308に蓄積される。
【0204】
バッテリー308は、ハイブリッド車両300の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口311を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0205】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置等がある。
【0206】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本技術は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本技術は有効に適用可能である。
【実施例】
【0207】
以下、実施例により本技術を具体的に説明するが、本技術はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下のサンプルで用いた、高分子材料の重量平均分子量、膨潤度は以下のように測定したものである。
【0208】
(重量平均分子量の測定)
高分子材料の重量平均分子量を以下の方法で測定した。昭和電工製ゲル濾過クロマトグラフ(GPC)(製品名:Shodex GPC−101)を用い、検出器には、昭和電工製Shodex RI−71S(製品名)、送液溶媒にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、充填カラムに昭和電工製Shodex GPC KD−860M(製品名)を用いた。あらかじめ、標準ポリスチレンを用いて検出時間と分子量の相関を求めた検量線を作成し、これと同条件で、高分子材料の測定を行い、ポリスチレン換算の重量平均相対分子量を求めた。
【0209】
(膨潤度試験)
高分子材料をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、ガラス基板上に塗布コーターを用いて塗布し、90℃で1時間放置、60℃で24時間以上加熱真空乾燥し、N−メチル−2−ピロリドンを除去し、単一の膜を得た。得られた膜を20mmΦの円盤状に打ち抜き60℃の溶媒に24時間浸漬して、浸漬前後での体積の変化から膨潤度({[浸漬後の体積]/[浸漬前の体積]}×100(%))を求めた。
【0210】
<サンプル1−1>
以下のようにして、図1および図2に示すラミネートフィルム型電池を作製した。
【0211】
(正極の作製)
コバルト酸リチウム(LiCoO2)を85質量部と、導電剤である黒鉛5質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して正極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて正極合剤スラリーとした。
【0212】
続いて、この正極合剤スラリーを厚み20μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体33Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して正極活物質層33Bを形成し、正極33を作製した。そののち、正極33に正極リード31を取り付けた。
【0213】
(負極の作製)
粉砕した黒鉛粉末を負極活物質として用意し、この黒鉛粉末90質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して負極合剤を調製し、さらにこれを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させ負極合剤スラリーとした。
【0214】
次に、この負極合剤スラリーを厚み15μmの銅箔よりなる負極集電体34Aの両面に均一に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形して負極活物質層34Bを形成し、負極34を作製した。その際、負極34の容量に対する正極33の容量の比率を1.1とした。続いて、負極34に負極リード32を取り付けた。
【0215】
(多孔性高分子化合物の作製)
高分子材料をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて溶液を調製した。この溶液を、セパレータ35の両面に塗布後、水に浸漬させた後、乾燥させた。これにより、セパレータ35の両面に多孔構造を有する多孔性高分子化合物を形成した。セパレータ35としては、ポリエチレン微多孔膜(透気度200秒/100cc)を用いた。
【0216】
高分子材料としては、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量単位)
=97:7
重量平均分子量:35万
【0217】
正極33と、負極34とを、両面に多孔性高分子化合物が形成されたセパレータ35を介して密着させた後、長手方向に巻回して、最外周に保護テープ37を貼付することにより、巻回電極体30を作製した。
【0218】
巻回電極体30を、外装部材40の間に挟み、3辺を熱融着した。なお、外装部材40には、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとを積層した構造を有する防湿性アルミラミネートフィルムを用いた。
【0219】
そののち、これに電解液を、セル内電解液質量が1.85gになるように注入し、減圧下で残りの1辺を熱融着し、密封した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を混合した溶媒に1.2mol/lの割合で六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたものを用いた。そして、鉄板に挟んで100℃で3分間加熱することで、電解液保持層36を介して、正極33および負極34にセパレータ35を接着させた。これにより、図1および図2に示すような、セルサイズ4×35×50mm(7cm3)のラミネートフィルム型電池を得た。
【0220】
<サンプル1−2>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)=97:3
重量平均分子量:50万
【0221】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−2のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0222】
<サンプル1−3>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)=97:3
重量平均分子量:75万
【0223】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−3のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0224】
<サンプル1−4>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=97:3
重量平均分子量:100万
【0225】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−4のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0226】
<サンプル1−5>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=95:5
重量平均分子量:35万
【0227】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−5のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0228】
<サンプル1−6>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=95:5
重量平均分子量:50万
【0229】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−6のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0230】
<サンプル1−7>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=95:5
重量平均分子量:75万
【0231】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−7のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0232】
<サンプル1−8>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=95:5
重量平均分子量:100万
【0233】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−8のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0234】
<サンプル1−9>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=93:7
重量平均分子量:35万
【0235】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−9のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0236】
<サンプル1−10>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=93:7
重量平均分子量:50万
【0237】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−10のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0238】
<サンプル1−11>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=93:7
重量平均分子量:75万
【0239】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−11のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0240】
<サンプル1−12>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=93:7
重量平均分子量:100万
【0241】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−12のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0242】
<サンプル1−13>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン単独重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=100:0
重量平均分子量:35万
【0243】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−13のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0244】
<サンプル1−14>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン単独重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=100:0
重量平均分子量:50万
【0245】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−14のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0246】
<サンプル1−15>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン単独重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=100:0
重量平均分子量:75万
【0247】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−15のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0248】
<サンプル1−16>
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料として、以下のフッ化ビニリデン重合体を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン単独重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)
=100:0
重量平均分子量:100万
【0249】
以上のこと以外は、サンプル1−1と同様にして、サンプル1−16のラミネートフィルム型電池を作製した。
【0250】
(評価)
サンプル1−1〜サンプル1−16のラミネートフィルム型電池について、以下の評価を行った。
【0251】
(負極/セパレータ間の剥離強度試験)
サンプル1−1〜サンプル1−16のラミネートフィルム型電池について、充放電1回行った後、解体し、引っ張り試験にて100mm/分の速度にて負極/セパレータ間の剥離強度を測定した。
【0252】
(ヒートプレス前およびヒートプレス後の多孔性高分子化合物の透気度測定)
透気抵抗度(透気度)は、JIS P−817準拠のガーレー式透気度計にて測定した。測定膜面積は、6.45cm2、透過空気量は、100ccとし、そのときの時間を透気度(秒/100cc)とした。
【0253】
(300サイクル後の容量維持率測定)
まず、各電池について、25℃の環境において、500mAの定電流定電圧充電を上限電圧4.2V、3時間まで行ったのち、160mAの定電流放電を終止電圧3Vまで行った。
次に、1000mAの定電流充電を上限電圧4.2Vまで、その後、定電圧充電をカットオフ電流を50mAまで、あるいは、定電圧充電時間が3時間になるまで行った。800mAの定電流放電を終止電圧3Vまで行い、このときの放電容量を測定し、これを1サイクル目の放電容量とした。
その後、同一の充放電条件で充放電を299回繰り返し行い、300サイクル目の放電容量を測定した。そして、1サイクル目の放電容量を100とした場合の300サイクル目の放電容量を、300サイクル後の容量維持率({300サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量}×100(%))として求めた。
【0254】
(走査型電子顕微鏡SEM(Scanning Electron Microscope)による観察)
サンプル1−4およびサンプル1−10のラミネートフィルム型電池を解体して、セパレータ35に形成された電解液保持層36をSEMにより観察した。サンプル1−4のSEM写真を図18に示し、サンプル1−10のSEM写真を図19に示す。
【0255】
評価結果を表1に示す。
【0256】
【表1】
【0257】
表1に示すように、サンプル1−2〜サンプル1−4、サンプル1−6〜サンプル1−8、サンプル1−14〜サンプル1−16では、300サイクル後の容量維持率が良好であり、ヒートプレス後の多孔性高分子化合物の透気度も小さかった。
【0258】
一方、サンプル1−1、サンプル1−5、サンプル1−9、サンプル1−13では、高分子化合物の重量平均分子量が、最適値(50万)より小さいため、負極とセパレータ間の剥離強度が低下し、これにより、300サイクル後の容量維持率が低下した。また、ヒートプレス後の多孔性高分子化合物の透気度もやや大きかった。
【0259】
また、サンプル1−9〜サンプル1−12では、フッ化ビニリデン重合体の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が、100:0〜95:5の範囲外であるため、ヒートプレス後の多孔性高分子化合物の透気度が大きかった。これは、図19に示すサンプル1−10のように、フッ化ビニリデン重合体の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が100:0〜95:5の範囲外にあると、ヒートプレス時において、多孔性高分子化合物が膨潤しすぎるため、空孔構造が崩れており、空孔が閉じてしまうからである。また、サンプル1−9〜サンプル1−12では、フッ化ビニリデン重合体の膨潤度が高すぎて、フッ化ビニリデン重合体が電解液に溶解してしまうため、300サイクル後の容量維持率も低下した。なお、図18に示すサンプル1−4のように、フッ化ビニリデン重合体の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)が100:0〜95:5の範囲内にあると、多孔性高分子化合物が膨潤しすぎずに、ヒートプレス後において、空孔構造が保持されるため、透気度が小さい。
【0260】
<サンプル2−1>
以下のようにして、図1および図2に示すラミネートフィルム型電池を作製した。
【0261】
(正極の作製、負極の作製)
サンプル1−1と同様にして、正極33、負極34を作製し、正極33に正極リード31を取り付け、負極34に負極リード32を取り付けた
【0262】
(多孔性高分子化合物の作製)
高分子材料をN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶液に、無機粒子をN−メチル−2−ピロリドンに分散させた溶液を加え溶液を調製した。この溶液を、セパレータ35の両面に塗布後、水に浸漬させた後、乾燥させた。これにより、セパレータ35の両面に、無機粒子を含有し、多孔構造を有する多孔性高分子化合物を形成した。セパレータ35としては、ポリエチレン微多孔膜(透気度200秒/100cc)を用いた。
【0263】
多孔性高分子化合物を作製する際の高分子材料としては、以下の材料を用いた。
高分子材料:フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体
質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)=97:3
重量平均分子量:100万
【0264】
無機粒子は、以下の材料を用いた。
無機粒子:アルミナ(平均粒径0.45μm)
高分子材料:無機粒子(質量比)=1:2
【0265】
正極33と、負極34とを、両面に、無機粒子を含有した多孔性高分子化合物が形成されたセパレータ35を介して密着させた後、長手方向に巻回して、最外周に保護テープ37を貼付することにより、巻回電極体30を作製した。
【0266】
巻回電極体30を、外装部材40の間に挟み、3辺を熱融着した。なお、外装部材40には、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとを積層した構造を有する防湿性アルミラミネートフィルムを用いた。
【0267】
そののち、これに電解液を、セル内電解液質量が1.85gになるように注入し、減圧下で残りの1辺を熱融着し、密封した。電解液には、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を混合した溶媒に1.2mol/lの割合で六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたものを用いた。そして、鉄板に挟んで100℃で3分間加熱することで、無機粒子を含有した電解液保持層36を介して、正極33および負極34にセパレータ35を接着させた。これにより、図1および図2に示すような、セルサイズ4×35×50mm(7cm3)のラミネートフィルム型電池を得た。電解液保持層36の厚みは3.1μm、面積密度は0.28mg/cm2に調整した。
【0268】
なお、電解液保持層36の厚みの影響を無視するために、以下に示す、サンプル2−1とアルミナの含有比率が異なるサンプル2−2〜2−5に関しては、面積密度を調整することにより、電解液保持層36の厚みは3μm前後とした。
【0269】
<サンプル2−2>
多孔性高分子化合物の作製において、高分子材料と無機粒子との質量比を、高分子材料:無機粒子(質量比)=1:4に変えた。電解液保持層36の厚みを3.3μm、面積密度を0.35mg/cm2に調整した。以上のこと以外は、サンプル2−1と同様にしてラミネートフィルム型電池を作製した。
【0270】
<サンプル2−3>
多孔性高分子化合物の作製において、高分子材料と無機粒子との質量比を、高分子材料:無機粒子(質量比)=1:6に変えた。電解液保持層36の厚みを2.9μm、面積密度を0.41mg/cm2に調整した。以上のこと以外は、サンプル2−1と同様にしてラミネートフィルム型電池を作製した。
【0271】
<サンプル2−4>
多孔性高分子化合物の作製において、高分子材料と無機粒子との質量比を、高分子材料:無機粒子(質量比)=1:8に変えた。電解液保持層36の厚みを3.0μm、面積密度を0.45mg/cm2に調整した。以上のこと以外は、サンプル2−1と同様にしてラミネートフィルム型電池を作製した。
【0272】
<サンプル2−5>
多孔性高分子化合物の作製において、高分子材料と無機粒子との質量比を、高分子材料:無機粒子(質量比)=1:10に変えた。電解液保持層36の厚みを3.1μm、面積密度を0.51mg/cm2に調整した。以上のこと以外は、サンプル2−1と同様にしてラミネートフィルム型電池を作製した。
【0273】
(評価)
サンプル2−1〜サンプル2−5のラミネートフィルム型電池について、以下の評価を行った。なお、フロート試験については、サンプル2−1〜サンプル2−5に加え、サンプル1−4についても行った。
【0274】
(負極/セパレータ間の剥離強度試験)および(300サイクル後の容量維持率測定)
サンプル1−1と同様に、「負極/セパレータ間の剥離強度試験」、「300サイクル後の容量維持率測定」を行った。
【0275】
(フロート試験)
ラミネートフィルム型電池を60℃に設定された恒温槽中において、1000mAの定電流で電池電圧が4.25Vに達するまで定電流充電を行った後、4.25Vで定電圧充電を行った。このとき、充電電流の変動が観測される(漏れ電流が発生する)時間を求めた。
【0276】
サンプル2−1〜サンプル2−5の評価結果を表2に示す。なお、比較対象として、サンプル1−4の表1で示した(負極/セパレータ間の剥離強度試験)、(300サイクル後の容量維持率測定)の評価結果、およびサンプル1−4のフロート試験の評価結果も表2に示す。
【0277】
【表2】
【0278】
表2に示すように、フッ化ビニリデン重合体とアルミナとの質量比が1:0〜1:8までは、「負極/セパレータ間の剥離強度」も5N/m以上あり、300サイクル後の容量維持率も80%以上と良好であった。一方、フッ化ビニリデン重合体とアルミナ比率が1:10となると、負極/セパレータ間の剥離強度も2N/mとなり、300サイクル後の容量維持率も55%と低下する傾向にあった。また、60℃−4.25Vフロート充電で漏れ電流が観測される時間は、フッ化ビニリデン重合体とアルミナとの質量比において、アルミナの比率が大きくなるほど、長くなり、フロート耐性が向上することが確認できた。以上のことを鑑みて、電解液保持層において、フッ化ビニリデン重合体に無機粒子を添加してもよく、この場合、フッ化ビニリデン重合体と無機粒子との質量比は、1:1〜1:8の範囲であることが好ましく、より好ましくは1:2〜1:6の範囲であるという結論に至った。
【0279】
5.他の実施の形態(変形例)
本技術は、上述した本技術の実施形態に限定されるものでは無く、本技術の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述の実施の形態および実施例では、ラミネートフィルム型の電池構造を有する電池、電極を巻回した巻回構造を有する電池、電極を積層した積層構造を有するスタック型電池について説明したが、これらに限定されるものではない。例えば、上述した電池構造や電極構造以外の他の電極構造や電池構造を有する電池等にも適用可能である。第2の実施の形態の非水電解質電池において、正極リード53および負極リード54を同一辺から導出した構成としてもよい。第3の実施の形態の非水電解質電池において、正極リード53および負極リード54を互いに対向する辺から導出した構成としてもよい。また、第2の実施の形態では、電池素子60の最表層がセパレータ63となるように構成したが、最表層が正極61または負極62になるように構成してもよい。また、電池素子60の一方の最表層がセパレータ63で他方の最表層が正極61または負極62となるように構成してもよい。第3の実施の形態では、電池素子90の最表層が負極62となるように構成したが、最表層がセパレータ63または正極61となるように構成してもよい。また、電池素子90の一方の最表層がセパレータ63で他方の最表層が正極61または負極62となるように構成してもよい。第2〜第3の実施の形態のラミネートフィルム52の構成を、第1の実施の形態の外装部材40に適用してもよい。
【0280】
上述した第2〜第3の実施の形態およびこれらの変形例において、電池素子60とラミネートフィルム52との間に多孔性重合体層を設けるようにしてもよい。多孔性重合体層とは、高分子材料に非水電解液を保持することにより構成されたものである。高分子材料としては、フッ化ビニリデンを成分として含む高分子材料を用いる。具体的には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とを繰り返し単位に含む共重合体、フッ化ビニリデン(VdF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とクロロトリフルオロエチレン(CTFE)とを繰り返し単位に含む共重合体等が好適に用いられる。
【0281】
多孔性重合体層を構成する高分子材料としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いる場合には、重量平均分子量が50万以上150万以下のポリフッ化ビニリデンを用いることが好ましい。電池素子の移動の抑制効果が高いためである。
【0282】
また、多孔性重合体層には、無機粒子が混合されていてもよい。多孔性重合体層の強度が向上するとともに、多孔性重合体層に凹凸が生じ、電池素子とラミネートフィルムとのずれを抑制することができる。このため、内部抵抗の上昇をさらに抑制することができる。
【0283】
無機粒子としては、電気絶縁性を有する金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物等を挙げることができる。金属酸化物としては、アルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)等を好適に用いることができる。これらの無機粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、無機粒子は耐熱性、耐酸化性に優れるため、電池温度の上昇時にも電池素子の移動抑制効果を損なわないため好ましい。
【0284】
また、本技術は、以下の構成を採ることができる。
【0285】
[1]
正極と、
負極と、
上記正極および上記負極の間にある絶縁層と、
上記絶縁層を構成する、電解液および多孔性高分子化合物を含む電解液保持層と
を有し、
上記電解液が上記多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、上記電解液により上記多孔性高分子化合物が膨潤されており、
上記多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池。
[2]
上記絶縁層は、
多孔質基材層と、
該多孔質基材層の少なくとも一面に形成された上記電解液保持層と
から構成された[1]記載の非水電解質電池。
[3]
上記多孔性高分子化合物の透気度は、500秒/100cc以下である[1]〜[2]の何れかに記載の非水電解質電池。
[4]
上記多孔質基材層は、多孔質のポリオレフィン系樹脂を含む[2]〜[3]の何れかに記載の非水電解質電池。
[5]
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、75万以上150万未満である[1]〜[4]の何れかに記載の非水電解質電池。
[6]
上記多孔性高分子化合物の透気度は、300秒/100cc以下である[1]〜[5]の何れかに記載の非水電解質電池。
[7]
上記電解液保持層は、無機粒子をさらに含み、
上記フッ化ビニリデン重合体と上記無機粒子との質量比(フッ化ビニリデン重合体の質量:無機粒子の質量)は、1:1〜1:10である[1]〜[6]の何れかに記載の非水電解質電池。
[8]
上記多孔性高分子化合物は、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に上記フッ化ビニリデン重合体を溶解した溶液を多孔質基材に塗布し、上記溶液が塗布された上記多孔質基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記フッ化ビニリデン重合体に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより形成されたものである[2]〜[7]の何れかに記載の非水電解質電池。
[9]
ラミネートフィルムで外装された[1]〜[8]の何れかに記載の非水電解質電池。
[10]
多孔質基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、上記溶液が塗布された上記多孔質基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、多孔質基材上に、多孔性高分子化合物を形成する工程と、
正極と、負極と、上記多孔質高分子化合物が形成された上記多孔質基材とを有し、上記多孔質高分子化合物が形成された上記多孔質基材が上記正極と上記負極との間にある電極体を作製する工程と、
上記電極体を外装材に収納後、外装材の内部に電解液を注入し、その後、ヒートプレスする工程と
を有し、
上記高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池の製造方法。
[11]
上記第1の溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルスルホキシドであり、
上記第2の溶媒は、水、エチルアルコールまたはプロピルアルコールである[10]記載の非水電解質電池の製造方法。
[12]
多孔性高分子化合物を含み、
上記多孔性高分子化合物は、その空孔に電解液を保持可能であるとともに、該電解液により膨潤可能であり、
上記多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材。
[13]
少なくとも一面に上記多孔性高分子化合物が形成された多孔質基材をさらに含む[12]記載の絶縁材。
[14]
多孔性高分子化合物を含む絶縁材の製造方法であって、
基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、上記溶液が塗布された上記基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、上記多孔性高分子化合物を形成する工程を有し、
上記高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材の製造方法。
[15]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装を有する電池パック。
[16]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける電子機器。
[17]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
[18]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
[19]
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う[18]記載の蓄電装置。
[20]
[1]〜[9]の何れかに記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置若しくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。
【符号の説明】
【0286】
30・・・巻回電極体、31・・・正極リード、32・・・負極リード、33・・・正極、33A・・・正極集電体、33B・・・正極活物質層、34・・・負極、34A・・・負極集電体、34B・・・負極活物質層、35・・・セパレータ、36・・・電解液保持層、37・・・保護テープ、39・・・絶縁層、40・・・外装部材、41・・・密着フィルム、42c・・・内側樹脂層、51・・・非水電解質電池、52・・・ラミネートフィルム、52a・・・金属層、52b・・・外側樹脂層、52c・・・内側樹脂層、53・・・正極リード、54・・・負極リード、55・・・シーラント、56・・・固定部材、57・・・電池素子収納部、60・・・電池素子、61・・・正極、61A・・・正極集電体、61B・・・正極活物質層、61C・・・正極タブ、62・・・負極、62C・・・負極タブ、62A・・・負極集電体、62B・・・負極活物質層、63・・・セパレータ、66・・・電解液保持層、67・・・絶縁層、90・・・電池素子、101…組電池、101a・・・二次電池、102・・・充電制御スイッチ、102a・・・充電制御スイッチ、102b・・・ダイオード、103a・・・放電制御スイッチ、103b・・・ダイオード、104・・・スイッチ部、107・・・電流検出抵抗、108・・・温度検出素子、110・・・制御部、111・・・電圧検出部、113・・・電流測定部、114・・・スイッチ制御部、117・・・メモリ、118・・・温度検出部、121・・・正極端子、122・・・負極端子、200・・・蓄電システム、201・・・住宅、202・・・集中型電力系統、202a・・・火力発電、202b・・・原子力発電、202c・・・水力発電、203・・・蓄電装置、204・・・発電装置、205・・・電力消費装置、205a・・・冷蔵庫、205b・・・空調装置、205c・・・テレビジョン受信機、205d・・・風呂、206・・・電動車両、206a・・・電気自動車、206b・・・ハイブリッドカー、206c・・・電気バイク、207・・・スマートメータ、208・・・パワーハブ、209・・・電力網、210・・・制御装置、211・・・センサ、212・・・情報網、213・・・サーバ、300・・・ハイブリッド車両、301・・・エンジン、302・・・発電機、303・・・電力駆動力変換装置、304a・・・駆動輪、304b・・・駆動輪、305a・・・車輪、305b・・・車輪、308・・・バッテリー、309・・・車両制御装置、310・・・各種センサ、311・・・充電口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
上記正極および上記負極の間にある絶縁層と、
上記絶縁層を構成する、電解液および多孔性高分子化合物を含む電解液保持層と
を有し、
上記電解液が上記多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、上記電解液により上記多孔性高分子化合物が膨潤されており、
上記多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池。
【請求項2】
上記絶縁層は、
多孔質基材層と、
該多孔質基材層の少なくとも一面に形成された上記電解液保持層と
から構成された請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項3】
上記多孔性高分子化合物の透気度は、500秒/100cc以下である請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項4】
上記多孔質基材層は、多孔質のポリオレフィン系樹脂を含む請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項5】
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、75万以上150万未満である請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項6】
上記多孔性高分子化合物の透気度は、300秒/100cc以下である請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項7】
上記電解液保持層は、無機粒子をさらに含み、
上記フッ化ビニリデン重合体と上記無機粒子との質量比(フッ化ビニリデン重合体の質量:無機粒子の質量)は、1:1〜1:10である請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項8】
上記多孔性高分子化合物は、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に上記フッ化ビニリデン重合体を溶解した溶液を多孔質基材に塗布し、上記溶液が塗布された上記多孔質基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記フッ化ビニリデン重合体に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより形成されたものである請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項9】
ラミネートフィルムで外装された請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項10】
多孔質基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、上記溶液が塗布された上記多孔質基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、多孔質基材上に、多孔性高分子化合物を形成する工程と、
正極と、負極と、上記多孔質高分子化合物が形成された上記多孔質基材とを有し、上記多孔質高分子化合物が形成された上記多孔質基材が上記正極と上記負極との間にある電極体を作製する工程と、
上記電極体を外装材に収納後、外装材の内部に電解液を注入し、その後、ヒートプレスする工程と
を有し、
上記高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池の製造方法。
【請求項11】
上記第1の溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルスルホキシドであり、
上記第2の溶媒は、水、エチルアルコールまたはプロピルアルコールである請求項10記載の非水電解質電池の製造方法。
【請求項12】
多孔性高分子化合物を含み、
上記多孔性高分子化合物は、その空孔に電解液を保持可能であるとともに、該電解液により膨潤可能であり、
上記多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材。
【請求項13】
少なくとも一面に上記多孔性高分子化合物が形成された多孔質基材をさらに含む請求項12記載の絶縁材。
【請求項14】
多孔性高分子化合物を含む絶縁材の製造方法であって、
基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、上記溶液が塗布された上記基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、上記多孔性高分子化合物を形成する工程を有し、
上記高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材の製造方法。
【請求項15】
請求項1記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装を有する電池パック。
【請求項16】
請求項1記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項17】
請求項1記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
【請求項18】
請求項1記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項19】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う請求項18記載の蓄電装置。
【請求項20】
請求項1記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置若しくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。
【請求項1】
正極と、
負極と、
上記正極および上記負極の間にある絶縁層と、
上記絶縁層を構成する、電解液および多孔性高分子化合物を含む電解液保持層と
を有し、
上記電解液が上記多孔性高分子化合物の空孔に保持されると共に、上記電解液により上記多孔性高分子化合物が膨潤されており、
上記多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池。
【請求項2】
上記絶縁層は、
多孔質基材層と、
該多孔質基材層の少なくとも一面に形成された上記電解液保持層と
から構成された請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項3】
上記多孔性高分子化合物の透気度は、500秒/100cc以下である請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項4】
上記多孔質基材層は、多孔質のポリオレフィン系樹脂を含む請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項5】
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、75万以上150万未満である請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項6】
上記多孔性高分子化合物の透気度は、300秒/100cc以下である請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項7】
上記電解液保持層は、無機粒子をさらに含み、
上記フッ化ビニリデン重合体と上記無機粒子との質量比(フッ化ビニリデン重合体の質量:無機粒子の質量)は、1:1〜1:10である請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項8】
上記多孔性高分子化合物は、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に上記フッ化ビニリデン重合体を溶解した溶液を多孔質基材に塗布し、上記溶液が塗布された上記多孔質基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記フッ化ビニリデン重合体に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより形成されたものである請求項2記載の非水電解質電池。
【請求項9】
ラミネートフィルムで外装された請求項1記載の非水電解質電池。
【請求項10】
多孔質基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、上記溶液が塗布された上記多孔質基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、多孔質基材上に、多孔性高分子化合物を形成する工程と、
正極と、負極と、上記多孔質高分子化合物が形成された上記多孔質基材とを有し、上記多孔質高分子化合物が形成された上記多孔質基材が上記正極と上記負極との間にある電極体を作製する工程と、
上記電極体を外装材に収納後、外装材の内部に電解液を注入し、その後、ヒートプレスする工程と
を有し、
上記高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である非水電解質電池の製造方法。
【請求項11】
上記第1の溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミドまたはN,N−ジメチルスルホキシドであり、
上記第2の溶媒は、水、エチルアルコールまたはプロピルアルコールである請求項10記載の非水電解質電池の製造方法。
【請求項12】
多孔性高分子化合物を含み、
上記多孔性高分子化合物は、その空孔に電解液を保持可能であるとともに、該電解液により膨潤可能であり、
上記多孔性高分子化合物の材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材。
【請求項13】
少なくとも一面に上記多孔性高分子化合物が形成された多孔質基材をさらに含む請求項12記載の絶縁材。
【請求項14】
多孔性高分子化合物を含む絶縁材の製造方法であって、
基材上に、極性有機溶媒からなる第1の溶媒に高分子材料を溶解した溶液を塗布し、上記溶液が塗布された上記基材を、上記第1の溶媒に対して相溶性があり上記高分子材料に対して貧溶媒である第2の溶媒に浸漬することにより、上記多孔性高分子化合物を形成する工程を有し、
上記高分子材料は、フッ化ビニリデン重合体を含み、
上記フッ化ビニリデン重合体は、フッ化ビニリデン単独重合体またはフッ化ビニリデン単量体単位およびヘキサフルオロプロピレン単量体単位を含む共重合体であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の単量体単位の質量組成比(フッ化ビニリデン単量体単位:ヘキサフルオロプロピレン単量体単位)は、100:0〜95:5であり、
上記フッ化ビニリデン重合体の重量平均分子量は、50万以上150万未満である絶縁材の製造方法。
【請求項15】
請求項1記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池について制御する制御部と、
上記非水電解質電池を内包する外装を有する電池パック。
【請求項16】
請求項1記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項17】
請求項1記載の非水電解質電池と、
上記非水電解質電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
上記非水電解質電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を有する電動車両。
【請求項18】
請求項1記載の非水電解質電池を有し、
上記非水電解質電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項19】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え
上記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、上記非水電解質電池の充放電制御を行う請求項18記載の蓄電装置。
【請求項20】
請求項1記載の非水電解質電池から電力の供給を受け、または、発電装置若しくは電力網から上記非水電解質電池に電力が供給される電力システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−74367(P2012−74367A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187781(P2011−187781)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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