説明

非水電解質電池用活物質、非水電解質電池および電池パック

【課題】 本発明は、サイクル特性に優れた活物質ならびにそれを用いた非水電解質電池および電池パックを提供する。
【解決手段】 本発明の非水電解質電池用活物質は、Cr, Fe, Ni, Cu, Zr, Ge, Sn, Znから選ばれるM2が添加された、Ti, Mo, Wから選ばれるM1の二酸化金属酸化物であり、X線回折パターンにおいて最も強度の大きいピークの半値幅が1°以上4°未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン非水電解質電池用活物質、非水電解質電池および電池パックにかかわる。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンが負極と正極とを移動することにより充放電が行われる非水電解質電池は、高エネルギー密度電池として盛んに研究開発が進められている。
【0003】
近年、非水電解質電池は、ハイブリッド自動車や、電気自動車、携帯電話基地局の無停電電源用などの電源として期待されており、3年から10年程度の長期信頼性等、従来進められてきた高エネルギー密度化とは異なる特性が求められている。
【0004】
信頼性向上のためには、電解液と電極活物質との間の副反応による劣化を低減することが鍵となる。副反応を大幅に抑制する方法として、負極の充電電位を上げることが挙げられる。従来においては、黒鉛など、Li金属のイオン化電位に近い電位(0.01〜0.4 V vs. Li/Li+)でLiの脱挿入反応が行われる活物質を負極に用いてきた。これに対し、より高い電位(0.5〜2V vs. Li/Li+程度)でLiの脱挿入反応が行われる活物質を負極に用いることで、充電時の負極の電位を高くして電解液の副反応を進み難くすることが出来る。
【0005】
Li4Ti5O12、TiO2、MoO2、WO2などの酸化物は、0.4〜2.5V vs. Li/Li+の範囲の電位でリチウムの脱挿入が可能であるが、容量密度あるいはサイクル特性が不十分である。
【0006】
チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)はリチウムの脱挿入反応において非常に高い信頼性を有しているが、重量容量密度は黒鉛の約2分の1にとどまり、従来のリチウム二次電池と比較してエネルギー密度の低下は避けられない。一方、チタン酸リチウムより大きい重量容量密度を持つTiO2、体積容量密度が大きいMoO2、WO2は、いずれもサイクル特性に劣る。特に、TiO2は絶縁体であるために充放電反応が進み難かった。
【0007】
TiO2、MoO2、WO2の活物質について、他金属元素の添加によるサイクル特性の向上が開示されている(特許文献1〜3参照。)。
【0008】
特許文献1に、アナタ−ゼ型TiO2にFe、Ni等の酸化物を加え、700℃で10時間焼成することにより、活物質を合成することが示されている。特許文献2に、MoO2にFe、Ni等の酸化物を加え、700℃で12時間焼成することにより、活物質を合成することが示されている。特許文献3に、WO2にFe、Ni等の酸化物を加え、1000℃で10時間焼成することにより、活物質を合成することが示されている。
【0009】
しかしながら、これらの活物質は、未だ十分なサイクル特性を得るには至っていない。
【特許文献1】特開2000-268822公報
【特許文献2】特開2000-277113公報
【特許文献3】特開2000-277111公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、サイクル特性に優れた活物質ならびにそれを用いた非水電解質電池および電池パックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の非水電解質電池用活物質は、Cr, Fe, Ni, Cu, Zr, Ge, Sn, Znから選ばれるM2が添加された、Ti, Mo, Wから選ばれるM1の二酸化金属酸化物であり、X線回折パターンにおいて最も強度の大きいピークの半値幅が1°以上4°未満であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の非水電解質電池は、正極と、Cr, Fe, Ni, Cu, Zr, Ge, Sn, Znから選ばれるM2が添加された、Ti, Mo, Wから選ばれるM1の二酸化金属酸化物であり、X線回折パターンにおいて最も強度の大きいピークの半値幅が1°以上4°未満である活物質を有する負極と、非水電解質と、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電池パックは、上述の非水電解質電池の組電池を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、サイクル特性に優れた活物質ならびにそれを用いた非水電解質電池および電池パックを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0016】
まず、第一の実施の形態にて非水電解質電池用活物質について説明し、次に、第二の実施の形態にて非水電解質電池について説明し、最後に、第三の実施の形態にて電池パックについて説明する。
【0017】
(第一の実施の形態)
第一の実施の形態に係る非水電解質電池用活物質について説明する。
【0018】
第一の実施の形態に係る非水電解質電池用活物質は、Ti, Mo, Wから選ばれるM1の二酸化金属酸化物であり、Cr, Fe, Ni, Cu, Zr, Ge, Sn, Znから選ばれるM2が、二酸化金属酸化物に添加されており、X線回折パターンにおいて最も強度の大きいピークの半値幅が1°以上4°未満であることを特徴とする。
【0019】
第一の実施の形態においては、Ti, Mo, Wから選ばれるM1の二酸化金属酸化物にM2を添加し後述する製造方法で製造することで、結晶構造を低結晶化することによりリチウムの挿入脱離に対する結晶構造の破壊を低減し、サイクル特性を向上できる。
【0020】
これは、低結晶化により構造中に空隙が多く生じ、リチウムの挿入脱離による結晶格子の体積変化に対する耐性が高まったためと考えられる。さらに、添加金属元素が結晶構造中に欠陥、空孔、非晶質部分を生じ結晶構造のリチウム挿入脱離に対する耐性の維持に貢献していると考えられる。
【0021】
副次的効果として、結晶中に多くの空孔が存在することにより、リチウムの吸蔵サイトが増加し充放電容量が増加することが挙げられる。
【0022】
なお、本実施の形態でいう低結晶化とは、X線回折パターンがブロード化した状態をいい、X線回折パターンにおいて全くピークが見えなくなるような非晶質状態とは異なる。具体的には、低結晶化とは、X線回折パターンにおいて最も強度の大きいピークの半値幅が1°以上4°未満であるように調製した活物質のことを指す。
【0023】
したがって、第一の実施の形態においては、活物質の粉末X線回折測定における最強回折ピークの半値幅を、1°以上4°未満に調製することが大切である。1°以上であると、低結晶化による活物質の膨張収縮に伴う劣化低減の効果が顕在化する。4°未満であると、焼成不十分で残留している原材料等により生じる副反応、溶出に起因するサイクル劣化が顕在化しがたい。
【0024】
また、これらの添加金属元素は、活物質への導電性の付与にも寄与する。なお、これらの添加金属元素は0.5〜2V vs. Li/Li+の電位範囲で酸化物として安定で充放電に悪影響を与えないものである。
【0025】
特に、M1がTiである二酸化チタンについては、導電性の向上が著しく、アナターゼ型、ルチル型のいずれにおいても十分な充放電容量およびサイクル特性を得ることが出来る。したがって、ルチル型TiO2もしくはアナターゼ型TiO2を主相とすることが好ましい。なお、主相とは、X線回折パターンにおいて最も強度の高い回折ピークを有する相のことを指すものとする。
【0026】
さらに、実施例にて後述するように、アナターゼ型TiO2を主相とする二酸化チタンは、ルチル型TiO2を主相とする二酸化チタンに比して、第一の実施の形態のサイクル特性向上の効果が顕著であり、本発明に特に適合する。
【0027】
一方、M1がMo、Wである二酸化モリブデンおよび二酸化タングステンについては、単斜晶系であり空間群P21/nに属する結晶相が主相であることが好ましい。Liの可逆吸蔵量が大きく酸化物としては導電性も高いためである。
【0028】
第一の実施の形態の活物質は、X線回折パターンにおいて最も強度の大きいピークの半値幅を1°以上4°未満であるように調製するために、比較的低温で焼成することが重要である。最適な焼成温度は添加元素M2に応じて変化するが、二酸化金属酸化物の主相と好ましい焼成条件との関係については次のとおりである。
【0029】
アナターゼ型TiO2:350℃以上600℃以下、2時間以上20時間以下
ルチル型TiO2:500℃以上1000℃以下、2時間以上20時間以下
MoO2・WO2:400℃以上600℃以下、2時間以上20時間以下
これに対し、特許文献1〜3のように焼成温度が高いと、活物質の結晶性が増し、X線回折パターンの半値幅を上述の範囲に調整できず、本実施の形態のサイクル特性向上の効果が期待できない。
【0030】
なお、この製造方法において、固体内拡散により均一な材料を得るためには長時間を要するため、前駆体は液相で混合あるいは反応させて作製することが好ましい。水溶液から共沈法により前駆体を得る方法、ゾルゲル法により添加元素を含んだ前駆体ゲルを得る方法などが特に好ましい。
【0031】
M1およびM2は、モル比が0.03≦M2/(M1+M2)≦0.2を満たすことが好ましい。この範囲より小さいとサイクル特性向上、容量増加の効果が十分でない恐れがあり、この範囲を超えると充放電容量が小さくなるためである。
【0032】
活物質の平均粒径は、20nm以上10μm以下であることが好ましい。活物質の粒径および比表面積はリチウムの挿入脱離反応の速度に影響し、負極特性に大きな影響をもつが、この範囲の値であれば安定して特性を発揮することができる。
【0033】
さらに、活物質の平均粒径は、1μm以下であることが好ましい。活物質の利用率の向上および電池の大電流特性の向上のためである。
【0034】
活物質の平均粒径の分析方法としては、レーザー回折法が挙げられる。例えば、レーザー回折式分布測定装置(島津SALD-300)を用い、まず、ビーカーに試料を約0.1gと界面活性剤と1〜2mLの蒸留水を添加して十分に攪拌した後、攪拌水槽に注入し、2秒間隔で64回光度分布を測定し、粒度分布データを解析するという方法にて測定する。
【0035】
(第二の実施の形態)
第二の実施の形態に係る非水電解質電池は、第一の実施形態の活物質を負極活物質として用いることを特徴とする。
【0036】
第二の実施の形態に係る電池単体(非水電解質電池)の一例について、図1、図2を参照してその構造を説明する。図1に、第二の実施の形態に係わる扁平型非水電解質二次電池の断面模式図を示す。図2は、図1のAで示した円で囲われた部分を詳細に表す部分断面模式図を示す。
【0037】
図1に示すように、外装部材7には、扁平状の捲回電極群6が収納されている。捲回電極群6は、正極3と負極4をその間にセパレータ5を介在させて渦巻状に捲回された構造を有する。非水電解質は、捲回電極群6に保持されている。
【0038】
図2に示すように、捲回電極群6の最外周には負極4が位置しており、この負極4の内周側にセパレータ5、正極3、セパレータ5、負極4、セパレータ5、正極3、セパレータ5というように正極3と負極4がセパレータ5を介して交互に積層されている。負極4は、負極集電体4aと、負極集電体4aに担持された負極活物質含有層4bとを備えるものである。負極4の最外周に位置する部分では、負極集電体4aの片面のみに負極活物質含有層4bが形成されている。正極3は、正極集電体3aと、正極集電体3aに担持された正極活物質含有層3bとを備えるものである。
【0039】
図1に示すように、帯状の正極端子1は、捲回電極群6の外周端近傍の正極集電体3aに電気的に接続されている。一方、帯状の負極端子2は、捲回電極群6の外周端近傍の負極集電体4aに電気的に接続されている。正極端子1及び負極端子2の先端は、外装部材7の同じ辺から外部に引き出されている。
【0040】
以下、負極、非水電解質、正極、セパレータ、外装部材、正極端子、負極端子について詳細に説明する。
【0041】
1)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体の片面若しくは両面に担持され、負極活物質、負極導電剤および結着剤を含む負極層とを有する。
【0042】
負極活物質としては、上述した第一の実施形態の活物質を用いる。
【0043】
集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための負極導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
【0044】
負極活物質と負極導電剤を結着させるための結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム等が挙げられる。
【0045】
負極活物質層の厚さは1.0〜150μmの範囲であることが望ましい。従って負極集電体の両面に担持されている場合は負極活物質層の合計の厚さは20〜300μmの範囲となる。片面の厚さのより好ましい範囲は30〜100μmである。この範囲であると大電流放電特性とサイクル寿命は大幅に向上する。
【0046】
負極活物質、負極導電剤及び結着剤の配合比については、負極活物質は70重量%以上96重量%以下、負極導電剤は2重量%以上28重量%以下、結着剤は2重量%以上28重量%以下の範囲にすることが好ましい。負極導電剤量が2重量%未満であると、負極層の集電性能が低下し、非水電解質二次電池の大電流特性が低下する。また、結着剤量が2重量%未満であると、負極層と負極集電体の結着性が低下し、サイクル特性が低下する。一方、高容量化の観点から、負極導電剤及び結着剤は各々28重量%以下であることが好ましい。
【0047】
負極集電体は、負極活物質のLi吸蔵放出電位にて電気化学的に安定である銅、ニッケルもしくはステンレスが好ましい。負極集電体の厚さは5〜20μmであることが望ましい。この範囲であると電極強度と軽量化のバランスがとれるからである。
【0048】
負極は、例えば、負極活物質、負極導電剤及び結着剤を汎用されている溶媒に懸濁し作製したスラリーを、負極集電体に塗布し、乾燥し、負極層を作製した後、プレスを施すことにより作製される。その他、負極活物質、負極導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、負極層として用いても良い。
【0049】
2)非水電解質
非水電解質としては、電解質を有機溶媒に溶解することにより調整される液状非水電解質、液状電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質等が挙げられる。
【0050】
液状非水電解質は、電解質を0.5mol/l以上2.5mol/l以下の濃度で有機溶媒に溶解することにより、調製される。
【0051】
電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミトリチウム[LiN(CFSO]等のリチウム塩、あるいはこれらの混合物を挙げることができる。高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPFが最も好ましい。
【0052】
有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)等の鎖状カーボネートや、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)等の環状エーテルや、ジメトキシエタン(DME)、ジエトエタン(DEE)等の鎖状エーテルや、γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等の単独若しくは混合溶媒を挙げることができる。
【0053】
高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0054】
なお、非水電解質として、リチウムイオンを含有した常温溶融塩(イオン性融体)、高分子固体電解質、無機固体電解質等を用いてもよい。
【0055】
常温溶融塩(イオン性融体)は、有機物カチオンとアニオンの組合せからなる有機塩の内、常温(15℃〜25℃)で液体として存在しうる化合物を指す。常温溶融塩としては、単体で液体として存在する常温溶融塩、電解質と混合させることで液体となる常温溶融塩、有機溶媒に溶解させることで液体となる常温溶融塩等が挙げられる。なお、一般に、非水電解質電池に用いられる常温溶融塩の融点は、25℃以下である。また、有機物カチオンは、一般に、4級アンモニウム骨格を有する。
【0056】
高分子固体電解質は、電解質を高分子材料に溶解し固体化し調製する。
【0057】
無機固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する固体物質である。
【0058】
3)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体の片面若しくは両面に担持され、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を含む正極活物質含有層とを有する。
【0059】
正極活物質としては、酸化物、硫化物、ポリマー等が挙げられる。
【0060】
例えば、酸化物としては、Liを吸蔵した二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、及び、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoyO2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnyCo1-yO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4等)、硫酸鉄(Fe2(SO4)3)、バナジウム酸化物(例えばV2O5)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。
【0061】
例えば、ポリマーとしては、ポリアニリンやポリピロール等の導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料等が挙げられる。その他に、イオウ(S)、フッ化カーボン等も使用できる。
【0062】
高い正極電圧が得られる正極活物質としては、リチウムマンガン複合酸化物(LixMn2O4)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LixNi1-yCoyO2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiyO4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-yO2)、リチウムリン酸鉄(LixFePO4)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等が挙げられる。なお、x、yは0〜1の範囲であることが好ましい。
【0063】
中でも、常温溶融塩を含む非水電解質を用いる際には、リチウムリン酸鉄、LixVPO4F、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物を用いることが、サイクル寿命の観点から好ましい。これは、上記正極活物質と常温溶融塩との反応性が少なくなるためである。
【0064】
また、一次電池用の正極活物質には、例えば、二酸化マンガン、酸化鉄、酸化銅、硫化鉄、フッ化カーボンなどが挙げられる。
【0065】
正極活物質の一次粒子径は、100nm以上1μm以下であると好ましい。100nm以上であると、工業生産上扱いやすい。1μm以下であると、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることができる。
【0066】
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上であると、リチウムイオンの吸蔵・放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下であると、工業生産上扱いやすく、良好な充放電サイクル性能を確保できる。
【0067】
集電性能を高め、集電体との接触抵抗を抑えるための正極導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素質物を挙げることができる。
【0068】
正極活物質と正極導電剤を結着させるための結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム等が挙げられる。
【0069】
正極活物質層の片面の厚さは1.0μm〜150μmの範囲であることが、電池の大電流放電特性とサイクル寿命の保持の点から望ましい。従って正極集電体の両面に担持されている場合は正極活物質層の合計の厚さは20μm〜300μmの範囲となることが望ましい。片面のより好ましい範囲は30μm〜120μmである。この範囲であると大電流放電特性とサイクル寿命は向上する。
【0070】
正極活物質、正極導電剤及び結着剤の配合比については、正極活物質は80重量%以上95重量%以下、正極導電剤は3重量%以上18重量%以下、結着剤は2重量%以上17重量%以下の範囲にすることが好ましい。正極導電剤については、3重量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18重量%以下であることにより、高温保存下での正極導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。結着剤については、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、17重量%以下であることにより、電極の絶縁体の配合量を減少させ、内部抵抗を減少できる。
【0071】
正極は、例えば、正極活物質、正極導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、この懸濁し作製したスラリーを、正極集電体に塗布し、乾燥し、正極活物質含有層を作製した後、プレスを施すことにより作製される。その他、正極活物質、正極導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、正極活物質含有層として用いても良い。
【0072】
前記正極集電体は、アルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。
【0073】
アルミニウム箔およびアルミニウム合金箔の厚さは、5μm以上20μm以下、より好ましくは15μm以下である。アルミニウム箔の純度は99%以上が好ましい。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素、などの元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。
【0074】
4)セパレータ
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン又はポリプロピレンからなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であり、安全性向上の観点から好ましい。
【0075】
5)外装部材
外装部材としては、肉厚0.2mm以下のラミネートフィルムや、肉厚0.5mm以下の金属製容器が挙げられる。金属製容器の肉厚は、0.2mm以下であるとより好ましい。
【0076】
形状としては、扁平型、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型等が挙げられる。なお、無論、携帯用電子機器等に積載される小型電池の他、二輪乃至四輪の自動車等に積載される大型電池でも良い。
【0077】
ラミネートフィルムは、金属層と金属層を被覆する樹脂層とからなる多層フィルムである。軽量化のために、金属層はアルミニウム箔若しくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂層は、金属層を補強するためのものであり、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより成形する。
【0078】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金等が挙げられる。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。一方、鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属の含有量は1%以下にすることが好ましい。これにより、高温環境下での長期信頼性、放熱性を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0079】
6)負極端子
負極端子は、上述の負極活物質のLi吸蔵放出電位にて電気化学的に安定であり、かつ導電性を備える材料から形成することができる。具体的には、銅、ニッケル、ステンレスが挙げられる。接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料が好ましい。
【0080】
7)正極端子
正極端子は、リチウムイオン金属に対する電位が3V以上5V以下の範囲における電気的安定性と導電性とを備える材料から形成することができる。具体的には、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金、アルミニウムが挙げられる。接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料が好ましい。
【0081】
第二の実施形態に係る非水電解質電池は、前述した図1及び図2に示す構成のものに限らず、例えば、図3及び図4に示す構成にすることができる。図3は第二の実施形態に係る別の扁平型非水電解質二次電池を模式的に示す部分切欠斜視図で、図4は図3のB部の拡大断面図である。
【0082】
図3に示すように、ラミネートフィルム製の外装部材8内には、積層型電極群9が収納されている。積層型電極群9は、図4に示すように、正極3と負極4とをその間にセパレータ5を介在させながら交互に積層した構造を有する。正極3は複数枚存在し、それぞれが正極集電体3aと、正極集電体3aの両面に担持された正極活物質含有層3bとを備える。負極4は複数枚存在し、それぞれが負極集電体4aと、負極集電体4aの両面に担持された負極活物質含有層4bとを備える。それぞれの負極4の負極集電体4aは、一辺が正極3から突出している。正極3から突出した負極集電体4aは、帯状の負極端子2に電気的に接続されている。帯状の負極端子2の先端は、外装部材8から外部に引き出されている。また、ここでは図示しないが、正極3の正極集電体3aは、負極集電体4aの突出辺と反対側に位置する辺が負極4から突出している。負極4から突出した正極集電体3aは、帯状の正極端子1に電気的に接続されている。帯状の正極端子1の先端は、負極端子2とは反対側に位置し、外装部材8の辺から外部に引き出されている。
【0083】
(第三の実施の形態)
第三の実施の形態に係る電池パックは、第二の実施の形態に係る電池単体を複数有する。各々の電池単体は電気的に直列もしくは並列に配置され、組電池を為している。
【0084】
電池単体には、図1または図3に示す扁平型電池を使用することができる。
【0085】
図5の電池パックにおける電池単体21は、図1に示す扁平型非水電解質電池から構成されている。複数の電池単体21は、正極端子1と負極端子2が突出している向きを一つに揃えて厚さ方向に積層されている。図6に示すように、電池単体21は、直列に接続されて組電池22をなしている。組電池22は、図5に示すように、粘着テープ23によって一体化されている。
【0086】
正極端子1および負極端子2が突出する側面に対しては、プリント配線基板24が配置されている。プリント配線基板24には、図6に示すように、サーミスタ25、保護回路26および外部機器への通電用の端子27が搭載されている。
【0087】
図5及び図6に示すように、組電池22の正極側配線28は、プリント配線基板24の保護回路26の正極側コネクタ29に電気的に接続されている。組電池22の負極側配線30は、プリント配線基板24の保護回路26の負極側コネクタ31に電気的に接続されている。
【0088】
サーミスタ25は、電池単体21の温度を検知するためのもので、検知信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路と外部機器への通電用端子との間のプラス側配線31a及びマイナス側配線31bを遮断できる。所定の条件とは、例えば、サーミスタの検出温度が所定温度以上になったとき、電池単体21の過充電、過放電、過電流等を検知したとき等である。この検知方法は、個々の電池単体21もしくは電池単体21全体について行われる。個々の電池単体21を検知する場合、電池電圧を検知してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検知してもよい。後者の場合、個々の電池単体21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図6の場合、電池単体21それぞれに電圧検知のための配線32を接続し、これら配線32を通して検知信号が保護回路26に送信される。
【0089】
組電池22について、正極端子1および負極端子2が突出する側面以外の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート33が配置される。正極端子1および負極端子2が突出する側面とプリント配線基板24との間には、ゴムもしくは樹脂からなるブロック状の保護ブロック34が配置される。
【0090】
この組電池22は、各保護シート33、保護ブロック34およびプリント配線基板24と共に収納容器35に収納される。すなわち、収納容器35の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート33が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池22は、保護シート33及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。収納容器35の上面には、蓋36が取り付けられる。
【0091】
なお、組電池22の固定には、粘着テープ23に代えて、熱収縮テープを用いても良い。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮チューブを周回させた後、該熱収縮チューブを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0092】
なお、図5,6に示した電池単体21は直列に接続されているが、電池容量を増大させるためには並列に接続しても良い。無論、組み上がった電池パックを直列、並列に接続することもできる。
【0093】
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。
【0094】
第三の実施の形態の電池パックの用途としては、デジタルカメラの電源用や、掃除機用、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車載用等が挙げられる。特に、サイクル特性とエネルギー密度の両立が望まれるものが好ましく、具体的には、電気自動車用、掃除機用が好適である。
【実施例】
【0095】
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0096】
(実施例1)チタニウムテトライソプロポキシド23g、エタノール50g、塩化鉄(FeCl2・H2O)2.4gを溶解したゾルゲル反応液にエタノール20gと水1gの混合液を滴下して室温で一晩放置してゲルを得た。これを100℃で12時間乾燥した後、大気中で400℃で6時間の焼成を行い負極活物質の粉末を得た。
【0097】
(実施例2)焼成温度を550℃とした他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例2の負極活物質の粉末を得た。
【0098】
(実施例3)塩化鉄の代わりに塩化クロム(CrCl2)2.3gを加えた他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例3の負極活物質の粉末を得た。
【0099】
(実施例4)塩化鉄の代わりに塩化クロム(CrCl2)2.3gを加え、焼成温度を600℃とした他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例4の負極活物質の粉末を得た。
【0100】
(実施例5)塩化鉄の代わりに塩化ニッケル(NiCl2)2.4gを加えた他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例5の負極活物質の粉末を得た。
【0101】
(実施例6)塩化鉄の代わりに塩化ニッケル(NiCl2)2.4gを加え、焼成温度を600℃とした他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例6の負極活物質の粉末を得た。
【0102】
(実施例7)塩化鉄の代わりに塩化銅(CuCl2)2.4gを加えた他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例7の負極活物質の粉末を得た。
【0103】
(実施例8)塩化鉄の代わりに塩化ニッケル(CuCl2)2.4gを加え、焼成温度を520℃とした他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例8の負極活物質の粉末を得た。
【0104】
(実施例9)塩化鉄の代わりにジルコニウムテトライソプロポキシド3.6gを加えた他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例9の負極活物質の粉末を得た。
【0105】
(実施例10)塩化鉄の代わりにジルコニウムテトライソプロポキシド3.6gを加え、焼成温度を600℃とした他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例10の負極活物質の粉末を得た。
【0106】
(実施例11)塩化鉄の代わりにゲルマニウムテトライソエトキシド3.3gを加えた他は、実施例11と同じ方法で合成を行い実施例11の負極活物質の粉末を得た。
【0107】
(実施例12)塩化鉄の代わりにゲルマニウムテトライソエトキシド3.3g gを加え、焼成温度を650℃とした他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例12の負極活物質の粉末を得た。
【0108】
(実施例13)塩化鉄の代わりに塩化錫(SnCl2)3.1gを加えた他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例13の負極活物質の粉末を得た。
【0109】
(実施例14)塩化鉄の代わりに塩化錫(SnCl2) 3.1gを加え、焼成温度を650℃とした他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例14の負極活物質の粉末を得た。
【0110】
(実施例15)塩化鉄の代わりに塩化亜鉛(ZnCl2)2.2gを加えた他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例15の負極活物質の粉末を得た。
【0111】
(実施例16)塩化鉄の代わりに塩化亜鉛(ZnCl2) 2.2gを加え、焼成温度を600℃とした他は、実施例1と同じ方法で合成を行い実施例16の負極活物質の粉末を得た。
【0112】
(実施例17)MoO2粉末8gに、エタノール50gに塩化ニッケル(NiCl2)2.5gを溶解した溶液を加え乳鉢で湿式混合し。これを100℃で12時間乾燥した後、アルゴン気流中で450℃で18時間の焼成を行い実施例17の負極活物質の粉末を得た。
【0113】
(実施例18)WO2粉末8gに、エタノール50gに塩化ニッケル(NiCl2)2.5gを溶解した溶液を加え乳鉢で湿式混合し。これを100℃で12時間乾燥した後、アルゴン気流中で450℃で18時間の焼成を行い実施例18の負極活物質の粉末を得た。
【0114】
(実施例19)実施例1と同様の方法で合成した粉末を、さらにトルエン蒸気を含有するアルゴン気流中で400℃3時間の熱処理を行い表面が炭素で被覆された黒灰色の負極活物質粉末を得た。
【0115】
(実施例20)実施例9と同様の方法で合成した粉末を、さらにトルエン蒸気を含有するアルゴン気流中で400℃3時間の熱処理を行い表面が炭素で被覆された黒灰色の負極活物質粉末を得た。
【0116】
(実施例21)実施例10と同様の方法で合成した粉末を、さらにトルエン蒸気を含有するアルゴン気流中で500℃3時間の熱処理を行い表面が炭素で被覆された黒灰色の負極活物質粉末を得た。
【0117】
(比較例1)チタニウムテトライソプロポキシド23g、エタノール50gを溶解したゾルゲル反応液にエタノール20gと水1gの混合液を滴下して室温で一晩放置してゲルを得た。これを100℃で12時間乾燥した後、大気中で400℃で6時間の焼成を行い比較例1の負極活物質の粉末を得た。
【0118】
(比較例2)焼成温度を700℃とした他は比較例1と同様に合成を行い比較例2の活物質を得た。
【0119】
(比較例3)比較例1のゾルゲル反応液に塩化鉄FeCl2・H2O)2.4gを溶解し、焼成温度を700℃とした他は比較例1と同様に合成を行い比較例3の活物質を得た。
【0120】
(比較例4)比較例1のゾルゲル反応液に塩化銅(CuCl2)2.4gを溶解し、焼成温度を700℃とした他は比較例1と同様に合成を行い比較例4の活物質を得た。
【0121】
(比較例5)焼成温度を250℃とした他は、比較例1と同様に合成を行い比較例5の負極活物質の粉末を得た。
【0122】
(比較例6)市販のMoO2粉末(300mesh, 99.5%)を活物質として用いた。
【0123】
(比較例7)市販のWO2粉末(100mesh, 99.9%)を活物質として用いた。
【0124】
(比較例8)焼成温度を350℃とした他は、比較例1と同様に合成を行い比較例5の負極活物質の粉末を得た。
【0125】
実施例1〜21および比較例1〜8により得られた試料について、以下に述べる組成分析、X線回折測定、充放電試験を行った。
【0126】
(組成分析)
得られた試料についてICP発光分析により元素組成を調べた。
【0127】
(X線回折測定)
得られた粉末試料について粉末X線回折測定を行い、活物質の最も強度の大きいピークの半値幅を測定した。測定は株式会社マック・サイエンス社製X線回折測定装置(型式M18XHF22)を用い、以下の条件で行った。
【0128】
対陰極:Cu
管電圧:50kv
管電流:300mA
走査速度:1°(2θ)/min
時定数:1sec
受光スリット:0.15mm
発散スリット:0.5°
散乱スリット:0.5°
回折パターンより、d=1.92Å(2θ=47.2°)に現れるSiの面指数(220)のピークの半値幅(°(2θ))を測定した。また、Si(220)のピークが活物質中に含有される他の物質のピークと重なりをもつ場合には、ピークを単離し半値幅を測定した。
【0129】
測定した回折パターンについて、バックグラウンドの除去およびKα2線による影響の補正を行い、目的のピークの半値幅(°(2θ))を測定した。
【0130】
(充放電試験)
得られた試料に平均径6μmのグラファイト7wt%、ポリフッ化ビニリデン3wt%を分散媒としてN-メチルピロリドンを用いて混練し、厚さ12μmの銅箔上に塗布して圧延した後、100℃で12時間真空乾燥し試験電極とした。対極および参照極を金属Li、電解液を1MLiPFのEC・MEC(体積比1:2)溶液とした電池をアルゴン雰囲気中で作製した。
【0131】
充放電試験の条件は、参照極と試験電極間の所定の電位差(充電電位)まで1mA/cmの電流密度で充電、さらに8時間の定電圧充電を行い、放電は1mA/cmの電流密度で所定の放電電位まで行った。
【0132】
充放電試験において、充電容量および放電容量は、充電または放電の開始から終了するまでに流れた電気量とした。この放電容量を初回放電容量とする。
【0133】
次に、同様に所定の充電電位まで1mA/cmの電流密度で充電、さらに8時間の定電圧充電を行い、放電を10mA/cmの電流密度で放電電位まで行うサイクルを100回行い1サイクル目に対する100サイクル目の放電容量の維持率を測定した。
【0134】
表1に、各実施例および比較例について、組成分析、X線回折測定、充放電試験の結果を示す。
【表1】

【0135】
表1に示すように、実施例1〜21は、比較例1〜8に比して、100サイクル後の容量維持率に優れる。したがって、本実施の形態の活物質は、サイクル特性に優れることがわかる。
【0136】
また、実施例19は実施例1に比して、実施例20は実施例9に比して、実施例21は実施例10に比して、100サイクル後の容量維持率に優れる。したがって、本実施の形態の二酸化金属酸化物の表面に炭素を被覆させると、サイクル特性により優れることがわかる。
【0137】
また、100サイクル後の容量維持率について、実施例1は比較例1の4倍程度であるのに対し、実施例2は比較例2の2倍程度である。したがって、アナターゼ型TiO2を主相とする二酸化チタンは、ルチル型TiO2を主相とする二酸化チタンに比して、サイクル特性向上の効果が顕著であり、本発明に特に適合することがわかる。
【0138】
なお、比較例8について、初回充放電容量が低いのは、焼成温度が低い(350℃)ため反応液中の不純物(アルコール分、水分、カーボン等)が残留しており、Li充電時に副反応が起こるためであると考えられる。
【0139】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限られず、特許請求の範囲に記載の発明の要旨の範疇において様々に変更可能である。また、本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】第一の実施の形態に係わる扁平型非水電解質二次電池の断面模式図。
【図2】図1のAで示した円で囲われた部分を詳細に表す部分断面模式図。
【図3】第一の実施の形態に係わる別の扁平型非水電解質二次電池を模式的に示した部分切欠斜視図。
【図4】図3のB部の拡大断面図。
【図5】第二の実施形態に係る電池パックの分解斜視図。
【図6】図5の電池パックの電気回路を示すブロック図。
【符号の説明】
【0141】
1…正極端子、2…負極端子、3…正極、3a…正極集電体、3b…正極活物質含有層、4…負極、4a…負極集電体、4b…負極活物質含有層、5…セパレータ、6…捲回電極群、7,8…外装部材、9…積層電極群、21…電池単体、22…組電池、23…粘着テープ、24…プリント配線基板、28…正極側配線、29…正極側コネクタ、30…負極側配線、31…負極側コネクタ、33…保護ブロック、35…収納容器、36…蓋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cr, Fe, Ni, Cu, Zr, Ge, Sn, Znから選ばれるM2が添加された、Ti, Mo, Wから選ばれるM1の二酸化金属酸化物であり、
X線回折パターンにおいて最も強度の大きいピークの半値幅が1°以上4°未満であることを特徴とする非水電解質電池用活物質。
【請求項2】
前記二酸化金属酸化物は、前記M1がTiであり、ルチル型TiO2を主相とすることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池用活物質。
【請求項3】
前記二酸化金属酸化物は、前記M1がTiであり、アナターゼ型TiO2を主相とすることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池用活物質。
【請求項4】
前記M1およびM2は、モル比が0.03≦M2/(M1+M2)≦0.2を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の非水電解質電池用活物質。
【請求項5】
正極と、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の活物質を有する負極と、
非水電解質と、を具備することを特徴とする非水電解質電池。
【請求項6】
請求項5に記載の非水電解質電池の組電池を具備することを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−227322(P2007−227322A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50402(P2006−50402)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】