説明

非浸出持続性抗菌ポリマー化合物を形成する抗菌ナノ粒子添加剤

本発明は、化学結合して抗菌活性四級アンモニウム基を有する少なくとも一つの脂肪族ポリマーを含む粒子を提供する。本発明の粒子は、微生物の集団および生物膜を阻害するのに用いられうる。このような粒子の製造方法および微生物を阻害するためのその使用もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌活性粒子、該粒子を含むマトリックス、該粒子の製造に有益なポリマー、該粒子の製造方法および該マトリックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な物質、特にポリマーで作られた移植可能な用具において抗菌剤を蓄積させ、普及させる傾向にある医学においては特に、抗菌表面が重要な目標となってきた。例えば、留置カテーテルは細菌が蓄積するため、投与直後に時々取り除かれなければならない。人工股関節のような整形用インプラントについては、細菌の蓄積によってインプラント直後、または数ヶ月後にひどい感染症がもたらされうるが、それにより次々とインプラントの除去が必要となり、再インプラント前に治癒させるために高用量の抗細菌剤の投与が必要となる。導尿カテーテルもまた、カテーテルを通して侵入してきた細菌の膀胱感染をもたらす。歯の修復物質もまた細菌を蓄積する傾向があり、それは隣接する軟部組織および硬組織、例えば歯ぐきおよび象牙質に感染するにつれ、修復物質の劣化をもたらす。
【0003】
多くの報告によって、細菌の増殖を阻害するために抗細菌剤を物質の中に組み込んだ実験が記載されている。しかしながら、これらの物質の抗細菌活性は、様々な放出速度による抗細菌剤の周囲の環境への放出に依存することが明らかとなった。
【0004】
Homolaらの米国特許番号5,980,868によって、脂肪酸分子の単層と反応したPEIの歯のコーティングが記載され、その脂肪酸はそのカルボキシル基を通してPEI層に結合する。本発明の物質は、歯の塗布器、例えば、デンタルフロス、テープ、スワブおよび棒によって歯の表面に塗布されるといわれている。公開PCT出願番号WO 93/20775によって、ポリエチレンイミンでコーティングされたポリ(フルオロエチレン)の粒子を含む歯のコーティング物質が紹介されている。
【0005】
細菌の細胞膜に相互作用して破壊することによって、ポリカチオンが抗細菌特性を有することが報告されてきた。本目的のために抗細菌特性を示す多数のポリマーが開発されており、それは例えば、表面のコーティングに関与する可溶性および不溶性ピリジニウム型ポリマー、医療用具の細菌接着を妨げるのに用いられうるアジ化ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン表面を修飾し、また細菌の生体材料表面への初期の接着も妨げうるPEGポリマー、並びに抗細菌活性および抗真菌活性を示すキトサンポリエチレンイミンである。
【0006】
多数の公報によって、抗菌性化合物としての四級アンモニウム基を有するカチオン性ポリマーの有用性が示されてきた。例えば、Godfroidの米国特許番号6,559,116によって、アルキルトリメチルアンモニウムハライドおよび窒素含有ポリマー、例えばポリエチレンイミンを含むカチオン性抗菌活性成分からなる、硬表面洗浄のための抗菌性組成物が開示されている。Linら(Lin J, Qiu S, Lewis K, Klibanov M. Bacterial properties of flat surfaces and ナノ粒子 derivatized with alkylated polyethylenimines. Biotechnol Prog 2002; 18:1082-1086)によって、N−アルキル化ポリ(エチレンイミン)(PEI)で共有結合的にコーティングした表面が、いくつかの空中または水中グラム陽性およびグラム陰性細菌に対して有効でありうることが確認された。NH基を含み、アルキル化ポリエチレンイミンで誘導体化されたマグネトフェリック(Magnetoferic)(Fe)ナノ粒子もまた抗細菌特性を有する。抗細菌活性は共役複合体の分子量に依存していた。その結果、例えば、2および0.8kDaのN−アルキル化PEIが弱い殺菌活性を有することが示された。他方では、ポリカチオン性薬剤の高活性は、750−25kDaN−アルキル化PEIによって達成されうる。
【0007】
抗細菌作用は、細菌の負に帯電した細胞表面に、正に帯電したポリマーが吸収されることに起因すると示唆されている。この過程が、細胞透過性の増加および細胞膜の破壊の原因であると考えられた(Kawabata N, Nishiguchi M. Antibacterial activity of soluble pyridinium-type polymers. Appl Environ Microbiol 1988; 54:2532-2535)。
【0008】
Imazatoらの米国特許番号5,733,949、5,408,022、および5,494,987によって、3つの重合可能なビニルの基礎となる、抗菌活性の化学基を有するモノマー、カルボン酸基、およびヒドロキシル基を有するモノマーを含む組成物が開示されている。該組成物は、カルボン酸基およびヒドロキシル基の細菌細胞への透過特性のため、有効な抗菌活性を有しうる。これらの特許によれば、該活性は、活性化合物が周囲へ浸出することで1月後に減衰している。
【0009】
Imazatoら(J. Dentisty 28. 2000, 61-67)によって、アクリル酸デンタルプライマー(acrylate dental primer)におけるモノマーとして12−メタシクロイルオキシドデシルピリジニウムブロミド(12-methacycloyloxydodecylpyridinium bromide)(MDPB)の使用が開示されている。本研究の過程で、該モノマーがヒト歯髄細胞への細胞傷害性に寄与しないことが明らかとなった。別の論文で(Eur. J. Oral Sci. 110, 2002, 168-174)、Imazatoによって、傷害をもつ人工根の細菌感染を治療するためのMDPBを含む3つの象牙質接着剤(dentine-bonding agent)の使用について報告され、それが接着組成物(bonding composition)におけるモノマーとして組み込まれた場合に有効であることが明らかとなった。さらに別の論文において(Biomaterials, 24. 2003, 3605-9)、粉砕した重合MDPBは強い抗ストレプトコッカスミュータンス(S. mutans)活性を示した。本研究において、非重合モノマーが、粉砕した重合MDPBから浸出することもまた明らかとなった。
【0010】
Newらの米国特許番号5,798,117によって、抗菌表面として作用しうるホスファチジルコリン(O−POO−CH−CH−N−R)誘導体を有する表面が開示される。同様に、米国特許番号6.562,330によって、双性イオンの官能基、例えばホスファチジルコリン(O−POO−CH−CH−N−R)誘導体、アミノ酸誘導体などに基づく抗菌物質の特定の組成物が開示されている。
【0011】
(発明の概要)
驚くべきことに、このような微生物の増殖が自然に起こりうる表面に接触させた場合に、四級アンモニウム基で置換されたカチオン性ポリマーを含むナノ粒子が、抗菌活性、例えば抗細菌活性および抗真菌活性の広域スペクトルを示すことが、現在明らかになってきた。したがって、このような抗菌活性は、例えば生物膜形成を妨げる。これらのナノ粒子が、浸出せず、ホストマトリックスの特性を変えずに、長い間にわたって高抗菌特性を維持することがさらに決定された。
【0012】
本発明のある態様において、化学結合して抗菌活性四級アンモニウム基を有し、以下の特徴の少なくとも一つまたは組合せを有する、少なくとも一つの脂肪族ポリマーを含む粒子が提供される:
1.抗菌活性四級アンモニウム基が、1nmあたり少なくとも一つの抗菌活性四級アンモニウム基の表面密度である;
2.前記抗菌活性四級アンモニウム基が、ポリマー中のアミン基の少なくとも10%に達する;
3.前記抗菌活性四級アンモニウム基が、該窒素原子に結合した一つの長いアルキル基を含む。
【0013】
ある態様において、前記粒子は、化学結合して抗菌活性四級アンモニウム基を有する少なくとも一つの脂肪族ポリマーを含み、前記抗菌活性四級アンモニウム基は該窒素原子に結合した一つの長いアルキル基を含む。好ましくは、該粒子は1nmあたり少なくとも一つの抗菌活性四級アンモニウム基の表面密度を有する。
【0014】
別の態様において、該粒子は1nmあたり少なくとも一つの抗菌活性四級アンモニウム基の表面密度を有する。好ましくは、前記粒子は化学結合して抗菌活性四級アンモニウム基を有する少なくとも一つの脂肪族ポリマーを含み、前記抗菌活性四級アンモニウム基は該窒素原子に結合した一つの長いアルキル基を含む。
【0015】
さらに別の態様において、前記粒子は化学結合して抗菌活性四級アンモニウム基を有する少なくとも一つの脂肪族ポリマーを含み、1nmあたり少なくとも一つの抗菌活性四級アンモニウム基の表面密度を有し、前記抗菌活性四級アンモニウム基は該窒素原子に結合した一つの長いアルキル基を含む。
【0016】
少なくとも一つの脂肪族ポリマーは、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン(PVA)、ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリ(アクリル酸アミノエチル)、アミノメチル化スチレンポリマー、アルキルアミノ基がぶら下がっているポリペプチド、およびキトサンから選択される。
【0017】
脂肪族ポリマーは好ましくは架橋されている。架橋の程度は1%から20%でありうる。
【0018】
本発明の粒子は、10から10,000nmの間のサイズでありうる。好ましくは、それは30から150nmの間のサイズである。
【0019】
別の態様において、本発明の粒子を作るポリマー中の少なくとも10%アミン基は、前記抗菌活性四級アンモニウム基である。本発明の粒子は、ホストポリマーまたはそのモノマーと反応して、該粒子を該ホストポリマーに化学結合させることができる官能基をさらに含みうる。
【0020】
本発明の粒子は、液体媒体または固体媒体中に固定されうる。好ましくは、前記媒体はポリマーマトリックスである。
【0021】
本発明の別の態様に従って、本発明の粒子を固定したポリマーホストを含むポリマーマトリックスが提供される。本発明の粒子は、1μmあたり約1から約100個の粒子の表面濃度でマトリックスの外表面に好ましくは均一に分布する。
【0022】
好ましい態様において、本発明のポリマーマトリックスは、平均して、マトリックスの外表面の1μmあたり少なくとも一つの活性部分を有し、このような活性部分のサイズが少なくとも100nmであって;前記活性部分が、1nmあたり少なくとも1個の抗菌活性四級アミンの表面濃度を有する。好ましくは、本発明のポリマー粒子はポリマーマトリックスに化学結合している。
【0023】
本発明のさらに別の態様において、生物種(例えば細菌類、寄生虫類、真菌類またはウイルス類)の阻害(例えば死滅)方法であって、前記生物種を本発明のポリマーマトリックスに接触させることによる方法が提供される。
【0024】
本発明に使用するためのポリマーは、一つだけが前記ポリマーへ結合し、3つが非ポリマー基へ結合(該非ポリマー基の一つが4つまたはそれ以上の炭素原子を有するアルキル鎖である)している窒素原子からなる四級アンモニウム基を有するポリマーである。好ましい態様において、少なくとも90%の前記四級アンモニウム基は抗菌活性を有し、前記4つまたはそれ以上の炭素原子を有するアルキルでない非ポリマー基の一つまたはそれ以上は、3つまたはそれ以下の炭素原子を有する短いアルキル基、例えばメチル基である。
【0025】
このようなポリマーは、
(a)ポリマーに一級アミン基を提供し、
(b)各一級アミン上の一つの水素原子を少なくとも4つの炭素原子を含むアルキル基で選択的に置換し;並びに
(c)他のアミンの水素原子(存在するなら)を1つ、2つ、または3つの炭素原子を有する短いアルキル基で置換することによって得られうる。
【0026】
生じたポリマー、並びにいずれの他の合成方法または市販品としても得られる本発明のいずれの他の脂肪族ポリマーも、ホストの中に固定され、従ってポリマーマトリックスを供給しうる。このようなマトリックスの製造方法には、ホストポリマーに界面活性化合物および本発明の粒子を加え、混合して均一なポリマーマトリックスを得ることが含まれる。
【0027】
(発明の詳細な説明)
ナノ粒子
ポリマー粒子は連続および均一である内側部分および外側部分を有する。本発明の粒子の内側部分および外側部分は、内側部分が外側部分から解離できないように、二つの部分が連続して互いに一体となっているような、実質的に同一の化合物で作られている。
【0028】
本発明のポリマー粒子は、10−10,000nmのサイズである。好ましいのは1,000nm以下のサイズの粒子であり、最も好ましいのは150nmまでのサイズの粒子である。30nm以上のサイズの粒子もまた好ましい。粒子のサイズは、もし粒子が球状であればその直径の表現で与えられ、または粒子が球状でない場合には同等の表現で与えられる。同等の表現は、粒子の主軸の長さの平均、またはその体積の三乗根でありうる。
【0029】
好ましくは、脂肪族ポリマーは架橋されている。
架橋は、有機合成および高分子科学の技術分野の当業者に公知でありうるので、当該技術分野でそれ自体公知である様々な薬剤および反応によって作用されうる。例えば、架橋は、ジハロアルカン、例えばジブロモエタン、ジブロモシクロヘキサン、またはビスブロモメチルベンゼンによるポリマー鎖のアルキル化によって作用されうる。
【0030】
あるいは、還元的アミノ化による架橋が用いられうる。本方法において、一級アミンを有するポリアミンはジケトンまたはアルカンジアルデヒドと反応してイミン架橋を形成し、それは次いで対応するアミンへとさらに水素化される。このアミンはさらに反応して、抗菌性の有効な四級アンモニウム基を形成しうる。このような方法において、ジハロアルカンまたはジアルデヒドの代わりに、トリあるいはポリハロアルカンまたはポリアルデヒドもしくはポリケトンが用いられうる。
【0031】
さらに別の方法に従って、架橋はジカルボン酸または多カルボン酸によるアミド化によって作用されうる。さらにもう一つの方法として、架橋されたポリアミンは、架橋剤が重合混合物へ加えられる場合のモノマーから製造されうる。例えば、架橋されたポリエチレンイミン(PEI)は、架橋剤として役立つビスアジリジンの低い割合の存在下で、アジリジンの重合によって製造されうる。
【0032】
様々なポリマー鎖の組成物は、それ自身が様々なポリマー特性の蓄積でありうる様々な特性を提供しうるが、予期しない相乗的な特性を提供しやすいことが注意されるべきである。このような混合ポリアミンナノ粒子の例には:
脂肪族および芳香族ポリアミン、例えばポリエチレンイミンとポリ(4−ビニルピリジン)のジハロアルカンを通した架橋;
ポリエチレンイミンとポリビニルアミン;
短い直鎖および分枝鎖の高分子量ポリエチレンイミンの混合物;
ポリアミンスキャフォールド(scaffold)の中のポリアミンの相互貫入組成物、例えば架橋ポリビニルピリジンナノ粒子の中に固定されたポリエチレンイミン、あるいは
低密度非アミンスキャフォールド(scaffold)、例えばポリスチレンナノ粒子の中のポリアミンでさえ含まれる。言い換えれば、ナノ粒子を形成させるためにポリアミンの組合せを使用することで、化学架橋または物理架橋(相互貫入ネットワーク)によって、様々な特性の構造が与えられうる(例えば、別の型の細菌に対して、ある細菌をより多く殺すことができる)。このような特性は、本来、付加的または相乗的でありうる。
【0033】
好ましい架橋の程度は1%から20%であり、その場合、約2%から約5%の架橋が好ましい。架橋はポリマーのアンフォールディングおよび粒子を形成する様々なポリマーの分離を妨げうる。
【0034】
本発明の粒子を製造するのに有用な好ましいポリマーは、10%以下の架橋剤を用いて架橋されうる30モノマー単位、好ましくは100モノマー単位でできている鎖を有するものである。ポリマーが長ければ長いほど、不溶性ナノ粒子を得るのに必要な架橋結合は少なくなる。分枝鎖のポリマーは、不溶性ナノ粒子を形成させるのに必要な架橋が少量でよいので架橋に好まれる。
【0035】
本発明の範囲内で用いられるような「脂肪族ポリマー」とは、様々な側鎖、例えば(これに限らないが)ピリジン側鎖を有する芳香族側鎖に置換されうる非ピリジンモノマーでできているポリマーをいう。本発明の粒子に含まれうる脂肪族ポリマーにはまた、ポリマー骨格の部分としての窒素原子(並びに他のヘテロ原子)も含まれうる。これらに限らないが、脂肪族ポリマーの例は、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン(PVA)、ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリ(アクリル酸アミノエチル)、アミノメチルスチレンポリマー、アルキルアミノ基がぶら下がっているポリペプチド、およびキトサンである。
【0036】
用語「四級アンモニウム基」とは、結合して4つのアルキル基を有する窒素原子からなる原子群をいい、その中で各アルキル基は炭素原子を通して窒素原子に結合している。アルキル基のいずれの数も(0、1、2、3、または4)ポリマー骨格の部分でありうる。用語「長いアルキル基」または鎖とは、四級アンモニウム基の窒素原子上で置換され、4から10個の炭素原子を有するようなアルキル基または鎖をいう。このような用語にはまた、4から10個の炭素原子を有するアルキル基または鎖も含まれ、それは折れ曲がって環状構造を形成し、その中で結合点または閉環点は四級アンモニウム基の窒素原子である。
【0037】
「短いアルキル基」または鎖は、1から3個の炭素原子を有する。
【0038】
好ましくは、アンモニウム基は脂肪族ポリマーに化学結合しており、すなわちそれらは前記ポリマーに共有結合を通して結合している。
【0039】
本発明のポリマー粒子にはまた、抗菌活性がない四級アンモニウム基、例えば、長いアルキル基を有さない化学基または一つ以上の長いアルキル基を有する化学基も含まれうる。しかしながら、抗菌活性基があればあるほどポリマーは好ましく、本発明の粒子は、ポリマー鎖あたり少なくとも一つこのような化学基を有するポリマーで作られている。
【0040】
四級アンモニウム基は正に帯電しているので、その電荷はアニオンと対をなしているはずである。好ましくは、本発明の粒子において、このアニオンはハロゲン化物、例えばフッ化物、塩化物、臭化物またはヨウ化物であり、フッ化物が最も好まれる。他の可能なアニオンには、これらに限らないが、水素化ホウ素、炭酸水素、硝酸、リン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸および硫酸が含まれる。
【0041】
好ましい態様において、粒子の表面には1nmあたり少なくとも1個の抗菌活性四級アンモニウム基が含まれる。
【0042】
このような架橋PEIでできている粒子の1nmあたりの活性四級アンモニウム基の計算密度は約16である。もしすべてのイミン基がアルキル化されて抗菌活性があるなら、1nmあたり約16の四級アンモニウム基の密度が得られる。架橋PEIの場合、1nmあたり少なくとも一つの抗菌活性四級アンモニウム基には、少なくとも約5−10%のイミンをアルキル化して抗菌活性アンモニウム基を得ることが必要である。
【0043】
好ましい態様において、本発明のポリマー粒子は、ホストポリマーまたはそれのモノマーと反応することができる官能基を有する。このような官能基は、該粒子をホストマトリックスに化学結合させるようにデザインされる。
【0044】
ホストマトリックス中に固定されたナノ粒子
本発明の別の態様に従って、本発明の最初の態様のポリマー粒子を固定しているポリマーホストを含むポリマーマトリックスが提供される。
【0045】
これに限らないが、ホストとして役立ちうる物質の例は、セラミックス、ポリマー物質および無機固体の混合物でできているセメント、固体物品に圧縮されたプラントパウダー(plant powder)および粒子、並びに有機および無機接着剤である。他の物質は、金属被膜および他の固体、半固体もしくはゲル状物質から選択されうる。
【0046】
好ましい態様において、本発明の粒子は、1μmあたり約1から約100個の粒子の表面濃度でマトリックスの外表面に均一に分布する。外表面から離れた粒子の分布、すなわちそれのバルク濃度は、外表面上のものに類似しうる。一般に、粒子の全表面は、好ましくはマトリックスの表面の多くとも約20%、好ましくは1%から15%、より好ましくは1%から5%、最も好ましくはマトリックスの表面の約1%から約3%を占有する。
【0047】
本発明の好ましいマトリックス物質を構築する際に助けとなりうる他のルールは、平均して、マトリックスの外表面の1μmごとに、1nmあたり1個の抗菌活性四級アミンの表面濃度である少なくとも一つの部分を有し、このような部分のサイズが少なくとも100nmであることである。
【0048】
ポリマー粒子は、マトリックスの中に物理的に捕捉され、それに化学的に結合し、またはその両方でありうる。もし粒子がポリマーホストに化学結合するなら、該粒子はホストポリマーまたはそれのモノマーと反応することができる官能基を有する。
【0049】
好ましい態様によれば、本発明のポリマーマトリックスはポリマーホストのものと同程度の光学特性を有する。これは十分に小さなサイズの粒子を用いることによって得られ、典型的には光の波長より小さなサイズを有する粒子を用いることによって得られ、その場合、光学特性はマトリックス中とホスト中とで同一であるはずである。300nmまでのサイズの粒子が本目的に好ましい。もしマトリックスおよびホストが10%まで、好ましくは5%までの許容範囲内で同一の屈折率(n)、および/または、与えられたすべての波長の範囲、好ましくは400−700nmの範囲の可視光において、10%まで、好ましくは5%までの許容範囲内で同一の吸収係数(μ)を有するなら、マトリックスおよびホストの光学特性は同程度であるといわれる。
【0050】
好ましい態様において、本発明のマトリックスにはまた、強還元剤または強酸化剤(以下これらをまとめて酸化還元剤と呼ぶ)、例えば水素化ホウ素、ヨウ素なども含まれる。酸化還元剤の存在によって、短期間の極めて強い消毒効果が与えられ、一方、ポリマー粒子の抗菌活性四級アンモニウム基によって持続的効果が達成される。
【0051】
生物種の阻害方法
本発明の別の態様に従って、「生物種」、例えば細菌類、寄生虫類、真菌類、酵母、原生動物およびウイルス類を本発明のポリマーマトリックスに接触させることによる、前記生物種の阻害方法が提供される。用語「阻害」は、破壊、すなわち少なくとも95%の生物種、好ましくは99%、最も好ましくは99.99%の生物種の死滅;
前記生物種の増殖速度の減少;
前記生物種の集団のサイズの減少;
前記種の増殖の防止;
このような種に回復不能な損傷を与えること;
前記生物種の生物膜の破壊;
存在している生物膜の部分または全体への短期間または長期間の損傷の誘導;
このような生物膜の形成の防止;
生物膜処理(biofilm management)の誘導;あるいは
このような集団または生物膜に効果があり、それらに即時または長期間の損傷(部分または全体)を負わせうる他のいずれの型の結果をもたらすことを示すためにも用いられる。
【0052】
用語「集団」とは、特定の種またはその組合せの少なくとも二つのメンバーの共同体をいう。しかしながら、この定義によってこのような集団の単一メンバーを処理する本発明の粒子の能力を反映するとは意図されないことは、注意されるべきである。
【0053】
用語「生物膜」とは、固体表面に結合した生物種の集団をいう。生物膜の集団には、細菌類、真菌類、酵母、原生動物、および他の微生物が含まれうる。
【0054】
好ましい態様において、阻害は、該生物種を5重量%まで、より好ましくは1%までのポリマー粒子を含むマトリックスに接触させることによって達成される。
【0055】
したがって、本発明のポリマーマトリックスによって、生物種の汚染除去または増殖防止が必要となる場合の広範囲の適用における有用性が見いだされうるが、それは例えば組織の医学人工置換(medicine artificial replacement)において、例えば骨、骨セメントおよび関節(整形)、レンズ(眼科学)、血管およびステント、人工心臓弁(心臓病学)、人工皮膚、インプラント(形成外科)、子宮内器具(産婦人科)、神経外科的シャント、尿管ステント、皮下インプラント(インスリンポンプ、避妊薬、ペースメーカー)のためのコーティング、静脈内注入に用いられるチューブおよびカニューレ、透析に用いられるチューブおよびカニューレ、外科用ドレナージチューブ(surgical drainage tubing)、導尿カテーテル、気管内チューブ、傷被覆物質(wound covering material)、縫合、血管並びに泌尿器系において一時的に挿入されるあらゆる種類のカテーテル、脳への適用に使用するためのシャント、手術用手袋、耳の診察のための先端(tip)、医療関係者によって用いられる微気圧計の末端(statoscope end)および他の要素;
歯学において:歯科用接着剤、歯科の修復物質、例えば、歯、虫歯の穴を充填するためのすべての型の複合材料、根管治療における根管腔(root canal space)を充填するための歯周部充填物質(endodontic filling material)(セメントおよび充填剤)、仮および最終の歯牙修復または歯牙交換に用いられる物質、例えば、これに限らないが、インレー、アンレー、歯冠、部分義歯(固定またはリムーバブル)、歯科インプラント、並びに様々な既知の目的のための歯学に用いられるパーマネントセメント(permanent cement)およびテンポラリーセメント(temporary cement);
医学研究所のためのプラスチックウェア;
主に乳製品および新鮮な肉のための食品包装;
生物膜の成長を防ぐ船の塗料、浴室の塗料、並びに他の多くのものである。
【0056】
抗菌特性は、患者から患者または患者から試験者への相互汚染から、患者および医療スタッフを保護しうる。手術室に入る薬および用具のための自己滅菌包装(self sterilizing packaging)もまた有益である。医療分野以外の適用は、例えば細菌が集まりやすい競技用の靴または靴の内側、ヒトの体に接触する歯ブラシおよびいずれのブラシ、ペットのケージ並びに他の獣医の用具などにおいてでありうる。
【0057】
好ましいポリマー
本発明の別の態様に従って、本発明の粒子を生成するのに適当な脂肪族ポリマーが提供される。それ自体が当該技術分野で公知である他のポリマーはまた、本発明の粒子を生成するのに有用でありうることも指摘されるべきである。本発明のポリマーは、実質的に抗菌活性である四級アンモニウム基を運ぶ。
【0058】
好ましくは、本発明のポリマーの四級アンモニウム基は、一つだけが前記ポリマーへ結合し(言い換えれば、該四級基はポリマー骨格に結合しているが鎖の中にはなく)、3つが非ポリマー基へ結合している窒素原子であり、正確には、その一つは少なくともC4脂肪族基であり、多くともC18基、好ましくは多くともC10基、最も好ましくはC8基である。
【0059】
好ましくは、窒素原子に結合している他の非ポリマー基はC1−3脂肪族基である。四級アンモニウム基はポリマー骨格に直接結合し(それはポリマー鎖あたり一つまたは二つのこのような化学基を与える)、あるいは各モノマーまたはいくつかのモノマーに結合しうるリンカーを通して結合しうる。
【0060】
本発明のポリマーにおける四級アンモニウム基は正電荷を有し、それは好ましくはハロゲン化物、最も好ましくはフッ化物と対をなしている。
【0061】
好ましい態様において、本発明のポリマーは、粒子を生成するように架橋されている。
【0062】
可能な架橋剤および架橋方法、並びに可能な対イオンは上記で議論された。
【0063】
マトリックスの生成方法
本発明のさらに別の態様に従って、本発明のポリマー粒子を固定しているポリマーホストを含むポリマーマトリックスを得るための方法、特にホスト中の粒子の分布が実質的に均一であるようなマトリックスを得るための方法が提供される。用語「実質的に均一な分布」は、1μmあたり(per sq. μm)の粒子数の標準偏差がわずか1/4mあたり(per sq. 1/4m)の平均粒子数であるという点で特徴化される分布を示すのに用いられる。均一分布は、再現性および明細書の作成のために必要である。もし分布が一様でなければ、生成物は異なった場で異なった特性を示しうる。
【0064】
本発明のある方法に従って、該粒子の抗菌効果に不利な影響を及ぼす量で、界面活性化合物とともに該粒子がホストに加えられるが、ホスト中の粒子の均一分布が与えられる。該粒子に加えられうる界面活性化合物の典型的な量は、0.1から約3重量%の粒子の範囲内、好ましくは1重量%である。この量は該化合物および該粒子の性質、これらの粒子が組み込まれる高分子複合材料および方法に依存する。疎水性ポリマー組成物については、疎水性界面活性化合物、例えばスパン、脂肪酸、または脂肪酸PEG誘導体が有用であり;親水性ポリマー組成物については、ポロクサマー、PEG、またはトゥイーン(Tween)類が、ポリマーマトリックス中のナノ粒子の適合性を増加させるのに用いられうる。
【0065】
本発明の別の方法に従って、該ポリマーは、該粒子よりも最初に相溶化剤と混合される。これに限らないが、相溶化剤の例は、ホストポリマーのモノマー;該粒子が作られるポリマーのモノマー;このようなモノマーのオリゴマーである。
【0066】
本発明のポリマー粒子に化学結合したポリマーホストを得るための、別の好ましい方法は、ポリマー粒子の存在下でホストのモノマーを重合することである。
【0067】
好ましいポリマーを作る方法
本発明のさらに別の態様に従って、すべてが抗細菌活性である四級アンモニウム基を運ぶ脂肪族ポリマーを得るための方法が提供される。該方法には:各一級アミン上の一つの水素原子をC4−10アルキルで選択的に置換すること;および、次いで他のアミンの水素原子(存在するなら)をC1−3アルキルで置換することが含まれる。
【0068】
(例示的態様の詳細な説明)
図1は、本発明のいくつかの好ましい態様の粒子2を図式的に示す。粒子2は、内部4および外部6を有し、その中で内部および外部の両方は同一の脂肪族ポリマーでできている。粒子2の内部4および外部6は、内部が外部から解離できないように、二つの部分が連続して互いに一体となっているような実質的に同一の化合物でできている。したがって、内部4を外部6から分離する破線8は想像上のものであり、いずれの建設的な重要性または意味も有さない。
【0069】
図2は、抗菌活性四級アンモニウム基12、14、16、および18を有するポリマー10を図式的に示し、そのそれぞれは、その上で化学的に置換された窒素原子Nからなり、またはポリマー鎖10の一部と3つの他のアルキル基を有する。四級アンモニウム12の窒素原子はポリマー鎖20へ一つの結合を有し、四級アンモニウム14の窒素原子はポリマー鎖へ二つの結合を有し、アンモニウム16の窒素原子は、ポリマー骨格20よりもむしろポリマー10の側鎖22に結合し、アンモニウム18の窒素原子は、三つのポリマー鎖20、20’および20’’に結合し、全体がポリマー10の部分を形成する。各窒素原子Nは、正確には長いアルキル基である一つのアルキル基Rを有する。他の化学基Wは短いアルキル基である。
【0070】
図3は、ポリマー粒子34を固定しているポリマーホスト32を含む、ポリマーマトリックス30の概略図を示す。図4は、アーティストの目で見た単一の該粒子を示す。粒子34は、そこから突出する多くの長いアルキル鎖36を有する。アルキル鎖36は、粒子34を形成するポリマーの抗菌活性四級アンモニウム基において窒素原子を置換する化学基である。しかしながら、実際には粒子の1nmあたりに少なくとも一つのこのような長いアルキル鎖があることは注意されるべきであり、そのためもし粒子34が直径100nmであるなら、それは少なくとも約36,000個の突出する長いアルキル鎖で覆われており、図に描かれたほど少なくはない。
【0071】
図3に示されるように、粒子34はマトリックス30の外表面38上に均一に分布する。図中に示される例において、マトリックス物質32から突出する長いアルキル鎖で覆われた全表面は、マトリックス30の外表面38の約1%である。
【0072】
図5は、本発明のポリマー50を図式的に示す。ポリマー50は四級アンモニウム基52および54を有し、それぞれは一つだけがポリマー骨格56へ結合し、3つが非ポリマー基へ結合(正確には、その一つ(R)が長いアルキル鎖である)している窒素原子からなる。他の化学基(W)はメチル基である。
【0073】
四級アンモニウム基52は、ポリマー骨格56に直接結合している(それによってポリマー鎖あたり一つまたは二つのこのような化学基が与えられる)。四級アンモニウム基54は、リンカー56を通してポリマー骨格に結合している。
【0074】
ポリマー50のようなポリマーは、一級アミンのみをアルキル化する条件下で、長いアルキル基でそのアルキル化を行い、次いで四級アミンへと変換させる条件下で、生じた二級アミンをメチル化することによって、一級アミンを含むポリマーから得られうる。
【0075】
実施例:
実施例1.化合物の抗菌活性についてのアルキル鎖の効果
PEIの抗細菌活性は、四級アミンの質および量に依存する。そのため、本発明へと導く調査の過程において、アミノ基の置換度を増加させるための様々な長さのハロゲン化アルキルによるアルキル化、続いてメチル化の両方によって増加することが決定された。アルキル化剤は親水性のPEIに疎水性の性質を加える。このN−アルキル化によってポリマーがより疎水的になるはずであり、メチル化はまた、PEIの一級、二級および三級アミノ基をカチオン性四級アミノ基へと変換することによって、その正電荷を上げる。臭化アルキルに基づく様々なアルキル化剤で修飾したPEIナノ構造サンプルについての研究を、アルキル基の長さの機能として、これらの抗細菌特性を評価するために行った。PEIナノ構造物質をジブロモペンタンによる架橋を経て製造し、続いて臭化アルキルによるアルキル化およびヨウ化メチルによるメチル化を行った。2から8個のメチレン基のアルカンジハライドが好ましい。1,5−ジブロモペンタンは適当な架橋剤として選択され、1,4−ジブロモブタンおよび1,6−ジブロモヘキサンもまた安定な架橋剤として用いられうる。
【0076】
A.ジブロモペンタンによるポリエチレンイミン(PEI)の架橋
PEI水溶液を、使用前に乾燥するまで凍結乾燥した。PEI(18.65g、0.434mol、1.000.000−600.000Da)を186mlの無水エタノールに溶解した。ジブロモペンタン(17.35mmol、2.4ml)を、1:0.04のモル比(PEIモノマー/ジブロモペンタン)で加えた。架橋反応を還流条件で24時間実行した。次いでメタノールに溶解した過剰の水酸化ナトリウム(1g)を加えて、放出したHBrを集めた。反応を同じ条件でさらに24時間続けた。室温まで冷却した後、生じた残留物を重力ろ過によってNaBrから精製した。ろ液を減圧下で乾燥するまで蒸発し、エタノール中に混合すると非常に細かい粉末を形成する黄色粘性残留物を生じた。ジブロモペンタンによる架橋の程度を微量分析によって決定し、100%であることが分かった。微量分析:%C=48.05、%N=21.20。
1H-NMR (CDCl3): 1.43 ppm (m, 2H, alkyl hydrogens), 1.58 ppm (m, 4H, alkyl hydrogens), 2.1-3 ppm (m, 4H of PEI hydrogens and 4H of alkyl hydrogens). ALV (radius, nm): 27nm (97%).
【0077】
B.ブロモオクタンによる架橋PEIベースのナノ粒子のアルキル化
架橋PEI(1.9g、45mmol)を20mlの無水エタノール中に分散した。ブロモオクタン(7.73ml、45mmol、1等モル)を架橋PEIナノ粒子の1等モル量を含む懸濁液に加えた。アルキル化反応を還流条件で24時間実行した。次いでメタノール中に溶解した過剰の水酸化ナトリウム(2g)を加えて、放出したHBrを集めた。反応を同じ条件でさらに24時間続けた。室温まで冷却した後、生じた残留物を重力ろ過によってNaBrから精製した。ろ液を減圧下で乾燥するまで蒸発し、黄色粘性液体を生じた。生じたクルードをアセトンおよびDDWで洗浄して、残りのブロモオクタンおよびNaOHをそれぞれ除去した。
【0078】
同一の手順を、様々な臭化アルキル類、例えばブロモブタン、ブロモヘキサン、ブロモオクタン、ブロモデカンおよびブロモヘキサデカンによって繰り返した。
【0079】
より長い臭化アルキル類、例えばブロモデカンおよびブロモヘキサデカンによるアルキル化に基づく化合物を、メタノール中の沈殿によって精製した。ブロモアルカン類によるアルキル化の程度を微量分析によって決定し、80%であることが分かった。
1H-NMR (CDCl3): 0.86 ppm (t, 3H, CH3, octane hydrogens), 1.24 ppm (m, 10H, -CH2-, octane hydrogens), 1.39 ppm (m, 2H, -CH2-, octane hydrogens), 2.36-2.7 ppm (m, 4H, -CH2-, PEI hydrogens and 2H of octane hydrogens).
【0080】
C.アルキル化PEIベースのナノ粒子の四級化
先に得られたオクタンアルキル化PEI(730mg、4.7mmol)を、10mlの無水エタノール中に分散した。過剰のヨウ化メチル(24mmol)を加えた。反応を60℃で48時間実行した。等モル量の炭酸水素ナトリウム(0.4g)を加えて、メチル化段階の間に放出したHIを集めた。中和を同じ条件でさらに24時間続けた。NaI塩をろ過によって捨て、ろ液を減圧下で蒸発した。残りの反応しなかったヨウ化メチルを蒸発によって除去した。生じた黄色クルードをNaOHで終夜真空乾燥して、660mgの生成物を得た。同一の手順を、先に言及したすべてのアルキル化PEIナノ粒子で繰り返した。メチル化の程度を微量分析(%I)によって決定し、90%であることが分かった。
FT-IR (KBr): 3400 cm-1 (N-H), 2950 cm-1 and 2850 cm-1 (C-H), 1617 cm-1 (N-H2), 1460 cm-1 (C-H), 967 cm-1 quaternary nitrogen.
1H-NMR (DMSO): 0.845 ppm (t, 3H, CH3, octane hydrogens), 1.24 ppm (m, 10H, -CH2-, octane hydrogens), 1.65 ppm (m, 2H, CH, octane hydrogens), 3.2-3.6 ppm (m, CH3 of quaternary amine, 4H of PEI and 2H of the octane chain).
【0081】
D.歯科用複合材料における架橋四級PEIナノ粒子
四級化PEIベースのナノ粒子を、市販品として入手可能な歯科用複合材料(フィルテックフロー(Filtek Flow) 47%ジルコニア/シリカ 平均粒子サイズ0.01−6.0μ;BIS−GMA、TEGDMA;3M デンタルセントポール、MN)の中に加えることによって、実験試料を製造した。該添加を、流動可能な複合材料に対して1重量%を基準に実行した。さまざまなアルキル化剤で修飾された四級化PEIナノ構造物質の抗細菌効果を、ストレプトコッカスミュータンス(Streptoccocus mutans)(ATCC#27351)に対して、細菌に直接接触させて試験した。強い抗細菌的な細菌の減衰が、様々なアルキル化剤、例えばブロモブタン、ブロモヘキサン、ブロモオクタンおよびブロモデカンでアルキル化した1重量%PEIナノ粒子と結合したすべての複合材料樹脂サンプルによって、図6に示されるような市販品の複合材料樹脂に対して示され、ここで流動可能な複合材料をネガティブコントロールとして用いた。
【0082】
化合物の抗細菌安定性を数週間試験した。長鎖アルキル、例えばヘキサン、オクタンおよびデカン鎖で修飾したPEIナノ構造サンプルによって、図7A−Bに示されるように、ストレプトコッカスミュータンス(Streptoccocus mutans)に対する安定な抗細菌活性が4週間以上示され、ここで流動可能な複合材料をネガティブコントロールとして用いた。
【0083】
試験化合物の強い抗菌特性は、長鎖アルキル化剤による修飾による、PEIナノ粒子の疎水性の性質に起因する。
【0084】
実施例2.抗細菌活性によって評価されるナノ粒子の安定性に対する架橋の効果
ナノ粒子の安定性への架橋の寄与を調べるため、架橋および非架橋PEIナノ粒子を製造した。非架橋PEIナノ構造化合物は、架橋PEIナノ粒子のように製造し、例えばブロモオクタンによるアルキル化段階に続いてヨウ化メチルによって四級化を行い、ジブロモペンタンによって架橋段階を回避した。この段階の目的は、架橋の機能としてナノ粒子形成および安定性を評価し、細菌との接触時およびその後の継続した期間のその殺菌力を評価することである。
【0085】
A.ブロモオクタンによるPEIのアルキル化
ブロモオクタンによるPEIのアルキル化は、実施例1において先に記載された方法に従った。
【0086】
ブロモオクタンによるアルキル化の程度を微量分析によって決定し、71%であることが分かった。
1H-NMR (CDCl3): 0.86 ppm (t, 3H, CH3, octane hydrogens), 1.24 ppm (m, 10H, -CH2-, octane hydrogens), 1.39 ppm (m, 2H, -CH2-, octane hydrogens), 2.36-2.7 ppm (m, 4H, -CH2-, PEI hydrogens and 2H of octane hydrogens).
【0087】
B.アルキル化PEIの四級化
アルキル化PEIの四級化は、実施例1において先に記載された方法に従った。
【0088】
メチル化の程度を微量分析(%I)によって決定し、90%であることが分かった。
FT-IR: 3400 cm-1 (N-H), 2950 cm-1 and 2850 cm-1 (C-H), 1617 cm-1 (N-H2), 1460 cm-1 (C-H), 967 cm-1quaternary nitrogen.
1H-NMR (DMSO): 0.845 ppm (t, 3H, CH3, ocatne hydrogens), 1.24 ppm (m, 10H, -CH2-, octane hydrogens),1.65 ppm (m, 2H, CH, octane hydrogens), 3.2-3.6 ppm (m, CH3 of quaternary amine, 4H of PEI and 2H of the octane chain).
【0089】
架橋PEIベースのナノ粒子(実施例1におけるオクタンアルキル化PEIベースのサンプル参照)と対照的に、非架橋四級化PEI化合物は、各溶媒中で安定なナノ粒子を形成させることができない。しかしながら、これらはその疎水性の性質のため、水溶液中でナノ構造の形状を形成した。架橋の効果を、ストレプトコッカスミュータンス(Streptoccocus mutans)細菌に対する抗細菌の評価によって試験した。
【0090】
実施例3.ナノ粒子サイズにおける架橋の程度の効果
この段階の目的は、様々な架橋の程度でPEIベースのナノ粒子を製造して、架橋の程度の機能としてこれらのサイズを評価し、これらの抗細菌力を調査することである。
【0091】
A.ジブロモペンタンによるポリエチレンイミン(PEI)の架橋
PEI水溶液を、使用前に乾燥するまで凍結乾燥した。PEI(18.65g、0.434mol、1.000.000−600.000Da)の3つのサンプルを186mlの無水エタノールに溶解した。ジブロモペンタンを1:0.01、1:0.05、1:0.2のモル比(PEIモノマー/ジブロモペンタン)で加えた。架橋反応を還流条件で24時間実行した。次いでメタノールに溶解した過剰の水酸化ナトリウム(1g)を加えて、放出したHBrを集めた。反応を同じ条件でさらに24時間続けた。室温まで冷却した後、生じた残留物を重力ろ過によってNaBrから精製した。ろ液を減圧下で乾燥するまで蒸発し、黄色粘性液体を生じた。ジブロモペンタンによる架橋の程度を微量分析によって決定し、99%であることが分かった。
1H-NMR (CDCl3): 1.43 ppm (m, 2H, alkyl hydrogens), 1.58 ppm (m, 4H, alkyl hydrogens), 2.1-3 ppm (m, 4H of PEI hydrogens and 4H of alkyl hydrogens).
【0092】
B.ブロモオクタンによるPEIベースのナノ粒子のアルキル化
ブロモオクタンによるPEIのアルキル化は、実施例1において先に記載された方法に従った。
【0093】
ブロモオクタンによるアルキル化の程度を微量分析によって決定し、75%であることが分かった。
1H-NMR (CDCl3): 0.86 ppm (t, 3H, CH3, alkyl hydrogens), 1.24 ppm (m, 10H, -CH2-, alkyl hydrogens), 1.39 ppm (m, 2H, -CH2-, alkyl hydrogens), 2.36-2.7 ppm (m, 4H, -CH2-, PEI hydrogens and 2H of alkyl hydrogens).
【0094】
C.アルキル化PEIベースのナノ粒子の四級化
アルキル化PEIの四級化は、実施例1において先に記載された方法に従った。
【0095】
メチル化の程度を微量分析(%I)によって決定し、90%であることが分かった。
FT-IR: 3400 cm-1 (N-H), 2950 cm-1 and 2850 cm-1 (C-H), 1617 cm-1 (N-H2), 1460 cm-1 (C-H), 967 cm-1quaternary nitrogen.
1H-NMR (DMSO): 0.845 ppm (t, 3H, CH3, octane hydrogens ), 1.24 ppm (m, 10H, -CH2-, octane hydrogens),1.65 ppm (m, 2H, CH, octane hydrogens), 3.2-3.6 ppm (m, CH3 of quaternary amine, 4H of PEI and 4H of the octane chain).
【0096】
実施例4.ナノ粒子サイズについてのPEI濃度効果
この段階の目的は、異なったPEI濃度で架橋ナノ粒子を製造して、濃度の機能としてこれらの得られたサイズを評価し、これらの抗細菌力を調査することである。
【0097】
A.ジブロモペンタンによるポリエチレンイミン(PEI)の架橋
PEI水溶液を、使用前に乾燥するまで凍結乾燥した。PEI(18.65g、0.434mol、1.000.000−600.000Da)の3つのサンプルを、それぞれ93ml、186mlおよび372mlの無水エタノールに溶解した。ジブロモペンタン(17.35mmol、2.4ml)を1:0.04のモル比(PEIモノマー/ジブロモペンタン)で加えた。架橋反応を還流条件で24時間実行した。次いでメタノールに溶解した過剰の水酸化ナトリウム(1g)を加えて、放出したHBrを集めた。反応を同じ条件でさらに24時間続けた。室温まで冷却した後、生じた残留物を重力ろ過によってNaBrから精製した。ろ液を減圧下で乾燥するまで蒸発し、黄色粘性液体を生じた。ジブロモペンタンによる架橋の程度を微量分析によって決定し、100%であることが分かった。
1H-NMR (CDCl3): 1.43 ppm (m, 2H, alkyl hydrogens), 1.58 ppm (m, 4H, alkyl hydrogens), 2.1-3 ppm (m, 4H of PEI hydrogens and 4H of alkyl hydrogens).
【0098】
B.ブロモオクタンによる架橋PEIのアルキル化
ブロモオクタンによるPEIのアルキル化は、実施例1において先に記載された方法に従った。
【0099】
ブロモアルカン類によるアルキル化の程度を微量分析によって決定し、78%であることが分かった。
1H-NMR (CDCl3): 0.86 ppm (t, 3H, CH3, alkyl hydrogens), 1.24 ppm (m, 10H, -CH2-, alkyl hydrogens), 1.39 ppm (m, 2H, -CH2-, alkyl hydrogens), 2.36-2.7 ppm (m, 4H, -CH2-, PEI hydrogens and 2H of alkyl hydrogens).
【0100】
C.アルキル化PEIベースのナノ粒子の四級化
アルキル化PEIの四級化は、実施例1において先に記載された方法に従った。
【0101】
メチル化の程度は微量分析(%I)によって決定し、85%であることが分かった。
FT-IR: 3400 cm-1 (N-H), 2950 cm-1 and 2850 cm-1 (C-H), 1617 cm-1 (N-H2), 1460 cm-1 (C-H), 967 cm-1quaternary nitrogen.
1H-NMR (DMSO): 0.845 ppm (t, 3H, CH3, alkyl hydrogens), 1.24 ppm (m, 10H, -CH2-, alkyl hydrogens), 1.65 ppm (m, 2H, CH, alkyl hydrogens), 3.2-3.6 ppm (m, CH3 of quaternary amine, 4H of PEI and 2H of the alkyl chain).
【0102】
ALV(半径、nm)分析に従って、架橋段階の間、PEI濃度の機能として、架橋PEIナノ粒子のサイズについてのごくわずかな効果が検出された。高濃縮溶液および低濃縮溶液によって、生じたナノ粒子サイズ:それぞれ46nmおよび32nmの小さな違いがもたらされた。ブロモオクタンでさらにアルキル化し、続いてヨウ化メチルで四級化することによって、同様のサイズのナノ粒子を生じた。これらの殺菌力もまた調査した。1重量%で修復物質と結合した場合に、これらの両方によって高細菌作用が示された。アルキル化剤もまた、最終的なナノ粒子サイズにおいて重要な役割を果たしうるが、この段階においてはブロモオクタンのみをアルキル化剤として用いた。
【0103】
実施例5.出発物質の分子量効果
アルキル化PEIの殺菌力は周知であり、様々なグラム陽性およびグラム陰性細菌に対して非常に有効であることが分かる。作用の抗細菌の方法はまた、アルキル化PEIの様々な分子量にも起因しうる。実際、PEI鎖はその殺菌効果を働かせるためにポリマーでなければならない。本実験において、1000−、25kDaおよび600DaのPEI出発物質を合成し、その抗細菌力をPEI分子量の機能として評価した。
【0104】
A.ジブロモペンタンによるポリエチレンイミン(PEI)の架橋
ジブロモペンタンによるポリエチレンイミンの架橋は、実施例1において先に記載された方法に従った。
【0105】
ジブロモペンタンによる架橋の程度を微量分析によって決定し、96%であることが分かった。
1H-NMR (CDCl3): 1.43 ppm (m, 2H, alkyl hydrogens), 1.58 ppm (m, 4H, alkyl hydrogens), 2.1-3 ppm (m, 4H of PEI hydrogens and 4H of alkyl hydrogens).
【0106】
B.ブロモオクタンによる架橋PEIのアルキル化およびヨウ化メチルによるメチル化
アルキル化およびメチル化反応を実施例1に言及されたように実行した。アルキル化PEIナノ粒子のメチル化の程度を微量分析によって決定し、90%であることが分かった。
【0107】
製造された四級化PEIベースのナノ粒子をH−NMR分析、微量分析、ALV(サイズ定義)およびゼータ測定によって特徴化した。PEIベースのナノ粒子抗菌活性の評価のために、歯科材料を試験ナノ粒子に1重量%で結合した。接触時の効果および数週間試験された後の継続した殺菌活性によって該試験が与えられた。予想どおり、高分子量ベースのPEIナノ粒子は長期間の殺菌活性を有し、一方、低分子量サンプルは中程度の抗細菌効果を示すか、または抗細菌効果を全く示さない。これらの結果によって、PEIが殺菌性であるためにポリマーでなければならないことが示された。
【0108】
実施例6.アルキル化PEIナノ粒子のビニル基置換
塩化アクリロイルによってアルキル化PEIナノ粒子を置換し、続いて歯科用複合材料でさらに重合するためにメチル化段階を行った。修復物質によるPEIベースのナノ粒子の重合によって、周囲の環境へのナノ粒子の移行が最小化され、その抗細菌効果が延長されうる。
【0109】
A.ジブロモペンタンによるポリエチレンイミン(PEI)の架橋
PEI水溶液を、使用前に乾燥するまで凍結乾燥した。PEI(18.65g、0.434mol、1.000.000−600.000Da)を186mlの無水エタノール中に溶解した。ジブロモペンタン(1.2ml、8.675mmol)を1:0.02のモル比(PEIモノマー/ジブロモペンタン)で加えた。架橋反応を還流条件で24時間実行した。次いでメタノールに溶解した過剰の水酸化ナトリウム(1g)を加えて、放出したHBrを集めた。反応を同じ条件でさらに24時間続けた。室温まで冷却した後、生じた残留物を重力ろ過によってNaBrから精製した。ろ液を減圧下で乾燥するまで蒸発し、黄色粘性液体を生じた。
【0110】
B.ブロモヘキサンによる架橋PEIのアルキル化
架橋PEIベースのナノ粒子(1.9g、45mmol)を20mlの無水エタノール中に分散した。7.73mlのブロモヘキサン(45mmol、1等モル)を1等モル量の架橋PEIナノ粒子を含む懸濁液に加えた。アルキル化反応を還流条件で24時間実行した。次いでメタノールに溶解した過剰の水酸化ナトリウム(2g)を加えて、放出したHBrを集めた。反応を同じ条件でさらに24時間続けた。室温まで冷却した後、生じた残留物を重力ろ過によってNaBrから精製した。ろ液を減圧下で乾燥するまで蒸発し、黄色粘性液体を生じた。反応しなかった残余のブロモヘキサンを、油ポンプによって減圧留去した。ブロモヘキサンによるアルキル化の程度を微量分析によって決定し、72%であることが分かった。微量分析:%C=67.94、%N=13.81。
FT-IR: 3300 cm-1 (N-H); 2950 cm-1, 2930 cm-1 and 2850 cm-1 (C-H); 1460 cm-1 (C-H).
1H-NMR (CDCl3): 0.88 ppm (t, 3H, CH3, alkyl hydrogens), 1.27 ppm (m, 6H, -CH2- alkyl hydrogens), 1.4 ppm (m, 2H, -CH2-, alkyl hydrogens), 3.2-3.4 ppm (m, 4H, -CH2-, PEI hydrogens and 2H of alkyl hydrogens).
【0111】
C.アルキル化PEIベースのナノ粒子への塩化アクリロイルの共役複合
ヘキサンアルキル化PEIベースのナノ粒子(1.37g、6.59mmol)を50mlの無水THF中に分散し、0.69gの無水2%架橋4−ビニルピリジン(6.6mmol)をプロトンスポンジとして加えて、共役複合の間に放出したHClを集めた。塩化アクリロイル(1等モル、0.5ml、6.59mmol)を加えた。反応を40℃で、暗くして、勢いよく混合して窒素雰囲気で24時間実行した。4−ビニルピリジニウム塩をろ過によって捨て、ろ液を減圧下で乾燥するまで蒸発した。反応しなかった残余の塩化アクリロイルを蒸発によって除去して1.16gの黄色固形物を生じ、それをNaOHで終夜真空乾燥した。塩化アクリロイルによる置換度を1H−NMRによって決定し、4.5%であることが分かった。
1H-NMR (DMSO): 0.9 ppm (m, 3H, hexane hydrogens), 1.3 ppm (m, hexane hydrogens, 6H), 1.7 ppm( m, aliphatic hydrogens of hexane, 2H), 3.1-3.4 ppm (m, a 4H hydrogens of PEI and 2Hof the hexane chain), 5.9 ppm (d, olefin hydrogen, 1H), 6.1 ppm (d,olefin hydrogen, 1H) and 6.3 ppm (d,olefin hydrogen, 1H).
FT-IR : 3400 cm-1 (N-H); 2950 cm-1, 2930 cm-1 and 2850 cm-1 (C-H); 1650 cm -1 (amide vibration) and 1460 cm-1 (C-H).
【0112】
D.アルキル化PEIの四級化
アルキル化PEI(105mg、0.5mmol)を50mlの無水THF中に懸濁し、無水ジイソプロピルエチルアミン(0.26ml、1.53mmol)を加えてメチル化の間に放出したHIを集めた。過剰のヨウ化メチル(0.1ml、1.53mmol)を加えた。反応を40℃で、暗くして、勢いよく混合して窒素雰囲気で40時間実行した。アンモニウム塩をろ過によって捨て、ろ液を減圧下で乾燥するまで蒸発した。反応しなかった残余のヨウ化メチルを蒸発によって除去した。生じた黄色クルードをNaOHによって終夜真空乾燥し、100mgの生成物を生じた。メチル化の程度を微量分析によって決定し、90%であることが分かった。微量分析:%C=46.8;%N=7.21。
1H-NMR (DMSO): 0.83 ppm (m, 3H, hexane hydrogens), 1.18 ppm (m, hexane hydrogens, 6H), 1.27 ppm (m, aliphatic hydrogens of hexane, 2H), 3.1-3.4 ppm (m, 4H hydrogens of PEI, 3H of the methyl of the quaternary amine and 2H of the hexane chain), 5.9 ppm (d,olefin hydrogen, 1H), 6.0 ppm (d,olefin hydrogen, 1H) and 6.1 ppm (d,olefin hydrogen, 1H).
【0113】
H−NMR分析に従って、アルキル化PEIナノ粒子を、PEIモノマーの量に対して4.5%(mol/mol)の塩化アクリロイルで置換した。化合物の四級化をヨウ化メチルで完了させた。得られた化合物を、UV照射による試験前に歯科用複合材料で重合し、その抗細菌効果を、ストレプトコッカスミュータンス(Streptoccocus mutans)に対して細菌に直接接触させて試験した。データ分析を吸光測定によって評価した。試験化合物の抗細菌特性の喪失は、修復物質とともに抗細菌剤を重合させることによって防止し、その有効性は長期間保たれうる。
【0114】
実施例7.ピリジニウム型ベースのナノ粒子との比較および対イオン効果
有効に細菌を減衰させるのに適当な候補として、ピリジニウム型ベースのナノ粒子の試験を次に行った。
【0115】
A.4−ビニルピリジン(4−VP)の懸濁重合
4VPおよびジビニルベンゼン(DVB)(4VPに対し1%(mol/mol))の重合反応を、窒素注入口および還流冷却器を備えた三つ口丸底フラスコ中で実行した。4VP(1.08ml、9.9mmol)およびDVB(0.01等モル、0.099mmol)を0.5mlのN−メチルピロリドンに溶解した。100mlのDDW中、10mgのAIBNを開始剤として用い、ポリビニルアルコール(0.8%)を分散剤として用い、80℃で、暗くして、窒素雰囲気下で重合を実行した。白色懸濁液を7時間以内に得た。重合された架橋粒子をろ過によって集め、続いてエタノールで洗浄してN−メチルピロリドンを除去し、DDWで洗浄してポリビニルアルコールを除去した。生成物をNaOHで終夜真空乾燥した。
FT-IR (KBr): 1418cm-1 (symmetric C-N stretching vibration) and 825cm-1 (C-H out of plane bending vibration).
【0116】
B.ピリジン環の四級化
ピリジン環の三級アミン基の四級化を過剰のブロモオクタンによって実行した。重合した4VP(0.2gr、1.9mmol)30mlの無水エタノール中に分散し、ブロモオクタン(2.85mmol、1.5等モル)を加えた。反応を、還流条件で48時間勢いよく混合して実行した。生成物をろ過によって集め、続いてエタノールで洗浄して反応しなかったブロモオクタンおよびDDWを除いた。茶色クルードをNaOHで終夜真空乾燥した。ブロモオクタンによる四級化の程度を微量分析(%Br)によって決定し、84%であることが分かった。
FT-IR (KBr): 1418cm-1 (symmetric C-N stretching vibration) and 1637cm-1 (quaternized pyridine rings).
【0117】
C.ピリジニウムポリマーのフッ素化
四級化p−4VP(0.2g、1.7mmol)を無水エタノール中に分散し、過剰のNaF(50等モル、0.084mol)を加えた。フッ化物型への変換を還流条件で72時間実行した。該手順を別のNaF(50等モル)で繰り返し、反応を同じ条件でさらに24時間続けた。生じた生成物をろ過によって集め、エタノールおよびDDWで洗浄して反応しなかったNaFおよびNaBrを除いた。得られた濃緑色クルードをNaOHで終夜真空乾燥した。フッ素化の程度を微量分析(%F)によって決定し、81%であることが分かった。微量分析:%F=6.39、残余の臭化物を検出した。
【0118】
4VPに対して1から始めて30%(mol/mol)まで、DVBによる異なった架橋の程度で4VPの懸濁重合を行い、続いてブロモオクタンおよびブロモヘキサンによって四級化し、直径400nmから1ミクロンの範囲のナノ粒子をもたらした。得られたピリジニウム型ナノ粒子を、ボルハード滴定(volhard titration)、微量分析、コールターカウンター(サイズ測定)およびゼータ分析によって特徴化した。すべての製造されたナノ粒子は、約45mVの一定の正電荷を示した。不運にも、5%までの組み込みでさえ、修復物質中に組み込まれた場合にはこれらのナノ粒子が完全に不活性であることが分かったが、遊離のナノ粒子としては抗細菌的に有効であることが分かった。臭化物型ピリジニウム型ナノ粒子のフッ化物型への変換によって、その特性の交換がもたらされた。歯科修復組成物に組み込んだフッ化物塩ベースのナノ粒子によって、細菌の大きな減衰がもたらされた。
【0119】
実施例8.1%で製造したPEIナノ粒子の修復複合材料への組み込みは、接触した細菌に対して有効である
本段階の目的は、1重量%で歯科組成物の中に組み込んだ、先に記載されたPEIナノ粒子の抗細菌活性を調査することであった。
【0120】
A.細菌の調製
歯垢から元来単離された菌株であるストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)(ATCC#27351)を、本研究に用いた。5mlのブレインハートインフュージョン培地(brain-heart infusion broth)(BHI)(ディフコ、デトロイト、MI.、USA)中、37℃で細菌を終夜培養した。大きな細菌凝集(bacterial aggregate)または長いストレプトコッカス鎖を回避するため、上層4mlの撹拌していない(undisturbed)細菌培養液を新しいテストチューブの中に移して、10分間3175xgで遠心分離した。上澄みを捨て、細菌を5mlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(シグマ、セントルイス、MO.、USA)中で再懸濁し、10秒間穏やかにボルテックスした。各細菌懸濁液を、650nmで光学密度1に調整した。10回の段階希釈からの10マイクロリットルをBHI寒天上に蒔いて(プレートして)、1ミリリットルあたりのコロニー形成単位を決定した。BHIおよびPBSをバシトラシン0.0625gr/ml(シグマ、セントルイス、MO.、USA)で補充して、外部汚染を最小化した。
【0121】
B.用いた材料の組成
合成ポリマーをフィルテックフロー(Filtek Flow)(47%ジルコニア/シリカ 平均粒子サイズ0.01−6.0μ;BIS−GMA、TEGDMA;3M デンタル セントポール、MN)という市販品の修復複合樹脂に加えることによって、実験の試料を製造した。該添加を1重量%を基準に実行した。該ポリマーを複合樹脂に加えた後、スパチュラで均一に混合した。
【0122】
C.マイクロタイタープレートの準備
1重量%で市販品の複合樹脂の中に組み込んだ、様々な合成PEIポリマーの22個のサンプルの試験を行った。
【0123】
マイクロタイタープレート(96穴平底ヌンクロン(Nunclon)、ノンク(Nonc)、コペンハーゲン、デンマーク)を垂直に置いた。底の平らな歯科用器具(デンタルスパチュラ)を用いて、7ウェルの側壁を、等量の同一の試験試料で均一にコーティングした。インキュベーションの間、分光光度計の誤った読み取りを回避するため、ウェルの底に着かないよう特に注意を払った。製造業者の取扱説明書に従って、該物質を重合した。合成ポリマーなしに市販品の複合樹脂のみでコーティングした同一のマイクロタイタープレートにおける7つのウェルは、ポジティブコントロールとして用いた。
【0124】
D.細菌と試験物質の直接接触
10μlの細菌懸濁液(約10個の細菌)を、7ウェルのセットにおける各試験物質サンプル上に置き、プレートを37℃で1時間垂直に置いてインキュベーションした。このインキュベーションの間、該懸濁液を蒸発し、走査型電子顕微鏡によって示されるように、全細菌と試験表面の間の直接接触を確実にする細菌の薄層を得た(データは示さない)。
【0125】
プレートを次いで水平に置き、220μlのブレインハートインフュージョン培地(brain-heart infusion broth)を、該物質を含む各ウェルに加えた。
【0126】
E.細菌増殖の動態測定
マイクロタイタープレートを温度制御マイクロプレート分光光度計(ベルサマックス(VERSAmax)、モレキュラーデバイスコーポレーション、メンロオークスコーポレートセンター、メンロパーク、CA、USA)中に置き、それを37℃にセットし、各読み取りの前に5秒ボルテックスした。細菌の増殖を、12−24時間、20分ごとの、650nmでの各ウェルにおけるその後のOD変化によって評価した。
【0127】
F.データ分析
吸光測定をプロットし、マイクロタイタープレート中のウェルごとの細菌増殖曲線を得た。対数増殖期の直線部分について統計解析を行った。結果は、細菌増殖曲線の上昇区域から導かれた一次関数ax+b=yの二つのパラメータ;
(a)傾き(slop)
(b)定数
で表現される。(a)傾き(slop)および(b)定数は、それぞれ増殖速度および初期値と相関している。データを一元配置分散分析(one way ANOVA)およびチューキー多重比較法(Tukey multiple comparison test)によって解析した。統計的有意さの水準をp<0.05で決定した。
【0128】
G.寒天拡散試験
先に調製したストレプトコッカスミュータンス(S. mutans)の200μlの細菌懸濁液を、バシトラシン0.0625gr/ml(シグマ、セントルイス、MO.、USA)で補充したミティス・サリバリウス寒天(Mitis salivarius agar)(MSB)(ディフコ、デトロイト、MI.、USA)上に散布し、各試験物質の3つの軽い重合試料を表面上に置いた。プレートを48時間、37℃でインキュベーションした。インキュベーション後、各試料の周囲の阻止帯を観察した。
【0129】
H.結果
四級アンモニウム基を有するこれらのカチオン性ポリマーナノ粒子を、低濃度(1%)で歯科用修復複合材料の中に組み込んでおいた。試験化合物の大部分は、接触時に非常に有効であり(図6、7Aおよび7B)、表1にまとめた。
【表1】

【0130】
表1:歯科用複合材料の中に組み込んだ様々な化合物の抗菌活性
抗細菌アッセイを、試験微生物としてストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)を用いて行った。
【0131】
表1において:
寒天拡散試験(ADT)−試験物質から寒天への抗細菌組成物の拡散に基づく。寒天プレート上の菌叢における阻止帯の外観検査によって抗菌活性を評価した。各実験を8つの等しく調製したサンプルにおいて実行した。物質サンプルを試験の
(A)24時間前
(A)30日前
にPBS中で経過させた。
− 阻止帯なし
+ 1mmの阻止帯
++ 2mmまたはそれ以上の阻止帯;
直接接触試験(DCT)−不溶性物質の抗細菌特性を決定する。約10個の細菌と試験物質の接触後、残余の生育可能な細菌の存在は、温度制御分光光度計を用いて決定される。増殖のパーセント阻害として結果を表現する。100%阻害=全細菌の死滅(少なくとも10個);0%阻害=コントロール。
【0132】
各実験を8つの等しく調製したサンプルにおいて実行した。物質サンプルを試験の
(B)24時間前
(B)30日前
にPBS中で経過させた。上記の表1に示される抗細菌化合物は、以下の表2に列挙されるものであり、それぞれその中に示されるように特徴化される:
【0133】
表2:表1に用いられた抗細菌化合物の特徴化
【表2】

【表3】

PEI25kDa=25kDaのポリエチレンイミン。
PEI600kDa=600kDaから1000kDaのポリエチレンイミン。
Alkyl.=アルキル化剤:C=ブロモブタン、C=ブロモヘキサン、C=ブロモオクタン、C10=ブロモデカン。
Crossl.=架橋剤:C=ジブロモブタン、C=ジブロモペンタン。
D.crossl.=架橋の程度(アミン基に対して2%、4%および20%(mol/mol))。
元素分析=パーキンエルマー2400/II CHNアナライザーを用いて窒素(%N)並びに炭素(%C)および(%I)の元素微量分析によって評価された置換度。
ゼータ=粒子のゼータ測定(ゼータポテンシャル、mV)。全粒子は正のゼータポテンシャルを与え、それは表面上のPEIの四級アンモニウム基の存在に起因しうる。
R(nm)=高性能パーティクルサイザー(High performance Particle Sizer)(ALV−NIBS/HPPS、ランゲン、ドイツ)を用いて動的光散乱法によって決定された、nmでの粒子サイズ(R=半径)。
−=まだ決定されていない。
【0134】
実施例9.0.1−10重量%PEIナノ粒子の修復複合材料への組み込みは、接触した細菌に対して有効である
この段階の目的は、齲蝕原性細菌(cariogenic bacteria)について、歯科用組成物中の様々な量(重量%)での、先に記載されたPEIナノ粒子の抗細菌活性を調査することであった。
【0135】
A.用いられた物質の組成
合成ポリマーをフィルテックフロー(Filtek Flow)(47%ジルコニア/シリカ 平均粒子サイズ0.01−6.0μ;BIS−GMA、TEGDMA;3M デンタル セントポール、MN)という市販品の修復複合樹脂に加えることによって、実験の試料を調製した。該添加を0.1−10重量%で行った。該ポリマーを複合樹脂に加えた後、それをスパチュラで均一に混合した。
【0136】
細菌懸濁液の調製、マイクロタイタープレートの準備、細菌と試験物質の直接接触、細菌増殖の動態測定、データ分析および寒天拡散試験を上記に記載されたように実行した。
【0137】
B.結果
四級アンモニウム基を有するカチオン性ポリマーナノ粒子を、低濃度(0.0001%−2%)で歯科用修復複合材料の中に組み込んでおいた。試験化合物の大部分は、0.1%の濃度から接触時に非常に有効であり、表3にまとめた細菌の完全な減衰を示す。
【表4】

【0138】
表3:抗細菌活性において様々な量のPEIナノ粒子を歯科用複合材料に加える効果
PEIナノ粒子(Uでコード化された抗細菌化合物)の様々なパーセント−重量%−で補充した流動可能な複合材料のサンプルを、ADTおよびDCT(詳細については表1への脚注を参照)を用いて試験した。
【0139】
新たな複合材料によって、本来の複合材料としての力学的特性(試験ナノ粒子の修復物質への組み込み前および後に得られたものと類似の係数および降伏強度)および化学特性が示されたが、広範囲の抗菌活性スペクトルとともにも示された。数ヶ月の接触後でさえもナノ粒子が浸出しないことが観察された。
【0140】
実施例10:歯科用複合材料の中に加えた化合物の抗細菌活性についての経過効果
A.細菌の調製
ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)を上記に記載されたように培養した。5mlのブレインハートインフュージョン培地(brain-heart infusion broth)(BHI)(ディフコ、デトロイト、MI.、USA)中、37℃でエンテロコッカスフェカリス(Enterococcus feacalis)を終夜培養した。大きな細菌凝集(bacterial aggregate)または長いストレプトコッカス鎖を回避するため、上層4mlの撹拌していない(undisturbed)細菌培養液を新しいテストチューブの中に移して、10分間3175xgで遠心分離した。上澄みを捨て、細菌を5mlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(シグマ、セントルイス、MO.、USA)中で再懸濁し、10秒間穏やかにボルテックスした。各細菌懸濁液を、650nmで光学密度1に調整した。10回の段階希釈からの10マイクロリットルをBHI寒天上に蒔いて(プレートして)、1ミリリットルあたりのコロニー形成単位を決定した。BHIおよびPBSをストレプトマイシン0.005g/ml(シグマ、セントルイス、MO.、USA)で補充して、外部汚染を最小化した。
【0141】
B.用いられた物質の組成
合成ポリマーをフィルテックフロー(Filtek Flow)(47%ジルコニア/シリカ 平均粒子サイズ0.01−6.0μ;BIS−GMA、TEGDMA;3M デンタル セントポール、MN)という市販品の修復複合樹脂に加えることによって、実験の試料を調製した。UおよびVでコード化した1重量%の二つのサンプルを基準に該添加を行った。該ポリマーを複合樹脂に加えた後、それをスパチュラで均一に混合した。
【0142】
マイクロタイタープレートの準備、細菌と試験物質の直接接触、細菌増殖の動態測定、データ分析を、すべて上記に記載されたように実行した。
【0143】
C.寒天拡散試験
ストレプトコッカスミュータンス(S. mutans)およびエンテロコッカスフェカリス(Enterococcus feacalis)を先に開示されたように培養した。200μlの細菌懸濁液を、バシトラシン0.0625gr/ml(シグマ、セントルイス、MO.、USA)で補充したミティス・サリバリウス寒天(Mitis salivarius agar)(MSB)(ディフコ、デトロイト、MI.、USA)およびストレプトマイシン0.005g/ml(シグマ、セントルイス、MO.、USA)で補充したBHI寒天上にそれぞれ散布した。各試験物質の3つの軽い重合試料を表面上に置いた。プレートを48時間、37℃でインキュベーションした。インキュベーション後、各試料の周囲の阻止帯を観察した。
【0144】
D.物質の経過
類似のマイクロタイタープレートを試験物質とともに準備し、130および180日間経過させた。この間に各ウェルを、48時間ごとに交換する250μlのPBSで満たし、該プレートを37℃でインキュベーションした。次に、該PBSを吸引し、該プレートを無菌条件下で乾燥した。
【0145】
E.結果
該結果は、以下の表4に示されるように、樹脂ベースの物質に固定されたアルキル化ポリエチレンイミンナノ粒子が、少なくとも180日の期間をかけて接触させたストレプトコッカスミュータンス(S. mutans)およびエンテロコッカスフェカリス(E. feacalis)の両方において、強い抗菌活性を有することを示す。
【表5】

【0146】
表4:歯科用複合材料の中に加えた化合物の抗細菌活性についての経過効果
抗細菌特性を試験する前に、実験ごとに8個のサンプルをPBS中で1日間、30日間および180日間経過させた。UまたはVでコード化される1重量%の抗細菌化合物で補充した複合材料のサンプル(流動可能な)を、ADTおよびDCTを用いて試験した。添加物なしの複合材料のサンプルは、コントロールとして用いた。詳細については表1への脚注を参照。
【0147】
実施例11:グラム陽性、グラム陰性微生物について、およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)についての歯科用複合材料の中に組み込んだ抗細菌化合物の効果
A.細菌の調製
大腸菌(Eschrichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、緑膿菌(Pseudomonas aeroginosa)、エンテロコッカスフェカリス(Enterococcus feacalis)およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)を本研究に用いた。5mlのブレインハートインフュージョン培地(brain-heart infusion broth)(BHI)(ディフコ、デトロイト、MI.、USA)中、37℃で細菌を終夜培養した。大きな細菌凝集(bacterial aggregate)または長いストレプトコッカス鎖を回避するため、上層4mlの撹拌していない(undisturbed)細菌培養液を新しいテストチューブの中に移して、10分間3175xgで遠心分離した。上澄みを捨て、細菌を5mlリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(シグマ、セントルイス、MO.、USA)中で再懸濁し、10秒間穏やかにボルテックスした。各細菌懸濁液を、650nmで光学密度1に調整した。10回の段階希釈からの10マイクロリットルをBHI寒天上に蒔いて(プレートして)、1ミリリットルあたりのコロニー形成単位を決定した。
【0148】
B.用いられた物質の組成
合成ポリマーをフィルテックフロー(Filtek Flow)(47%ジルコニア/シリカ 平均粒子サイズ0.01−6.0μ;BIS−GMA、TEGDMA;3M デンタル セントポール、MN)という市販品の修復複合樹脂に加えることによって、実験の試料を調製した。2重量%を基準に該添加を行った。該ポリマーを複合樹脂に加えた後、それをスパチュラで均一に混合した。
【0149】
マイクロタイタープレートの準備、細菌と試験物質の直接接触、細菌増殖の動態測定およびデータ分析を、すべて上記に記載されたように実行した。
【0150】
C.寒天拡散試験
細菌を先に開示されたように調製した。200μlの細菌懸濁液を、BHI寒天(ディフコ、デトロイト、MI.、USA)上に散布した。各試験物質の3つの軽い重合試料を表面上に置いた。プレートを48時間、37℃でインキュベーションした。インキュベーション後、各試料の周囲の阻止帯を観察した。
【0151】
D.結果
合成ポリマーを2重量%加えた市販品のポリマーの強い抗細菌効果を、試験された全細菌で観察した。表5にまとめたように、グラム陽性、グラム陰性微生物において、並びにカンジダアルビカンス(Candida albicans)において、増殖阻害が寒天拡散試験に見られなかった。
【表6】

【0152】
表5:グラム陽性、グラム陰性微生物について、およびカンジダアルビカンス(Candida albicans)についての歯科用複合材料の中に組み込んだ抗細菌化合物の効果
Uでコード化された2重量%の抗細菌化合物で補充した流動可能な複合材料のサンプルを、ADTおよびDCT(詳細については表1への脚注を参照)を用いて試験した。それぞれの試験微生物を用いた抗細菌特性を試験する前に、実験ごとに8個のサンプルをPBS中で1日間(A、B)または7日間(A、B)それぞれ経過させた。
【0153】
実施例12:様々な複合樹脂物質に組み込まれたアルキル化ポリエチレンイミンの抗細菌活性
抗細菌特性を控えた樹脂複合材料は、再発性齲蝕を防ぐのに有益でありうる。本実施例において、ボンディング(結合する)、流動可能およびハイブリッド複合樹脂の中に組み込まれたアルキル化ポリエチレンイミンの抗細菌効果を評価した。新しいサンプルと一週間経過したサンプルについて、該試験を実行した。市販品として入手可能なボンディング、流動可能およびハイブリッド複合樹脂に1重量%で加えたアルキル化ポリエチレンイミンを、光重合によって共重合した。合成ポリマーを組み込んだ実験サンプルを、拡散および直接接触の両方で、抗細菌特性について試験した。ストレプトコッカスミュータンス(Streptoccocus mutans)に対する抗細菌特性を、2つの試験:(i)寒天拡散試験、および(ii)直接接触試験によって評価した。すべての三つの型の複合樹脂で、DCTにおいてのみ統計的に明らかな(p<0.001)抗菌特性を検出した。該効果は少なくとも一週間続いた。
【0154】
該結果は、本研究で合成されたアルキル化ポリエチレンイミン型ポリマーが抗細菌表面特性を有し、そのため樹脂ベースの物質の中に固定される可能性を有しており、生物膜形成を減少させるのに有益であることを示す。
【0155】
樹脂修復複合材料は、インビトロおよびインビボで他の修復物質よりも多くの細菌および歯垢を蓄積させる傾向がある。口腔生物膜は健全な環境で自然に存在するが、それはまた虫歯および歯周病にも関連する。ヒトの歯垢にしばしば見られる細菌の一つがストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)である。ストレプトコッカスミュータンス(S. mutans)は修復複合樹脂の表面に結合し、歯と修復複合樹脂(restoration)の間の界面に結合する。細菌接着および歯垢形成の結果として、二次齲蝕がこれらの修復複合樹脂(restoration)の周りに展開しうる。
【0156】
抗細菌物質の通常の製造方法は、時間とともに次第に放出される抗細菌剤、例えば抗生物質、銀イオン、ヨウ素および四級アンモニウム化合物をそれらにしみ込ませることである。しかしながら、このような抗細菌剤は複合樹脂から浸出する傾向がある。典型的には、このような浸出は、特定の使用への適応性に影響を及ぼしうる不利益をもたらす。このような不利益は:時間の経過による担体物質の力学特性の減少、短期の効力、並びに(もし放出が適当に制御されなければ)ヒトの健康に起こりうる毒性でありうる。
【0157】
したがって、本発明はまた、作用機序が消毒薬の放出に基づかない抗細菌複合材料およびコーティング剤を開発する手段も提供し、そのため歯学における適用性も有しうる。抗細菌特性によって、これらの修復材料(restoration)の寿命が延長されうる。
【0158】
本研究によって、合成アルキル化ポリエチレンイミンの抗細菌効果が評価した。この共重合は、試験された両方の細菌の細菌増殖における有意な減少をもたらした。この観察は少なくとも一週間続けた。
【0159】
試験物質
1重量%の合成ポリマーで補充した三つの複合樹脂材料のZ250、フィルテックフロー(Filtek Flow)および3M シングルボンド接着剤(single bond adhesive)のストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)(ATCC#27351)における抗細菌効果を試験した。細菌懸濁液を上記に記載されたように調製した。マイクロタイタープレートの準備、細菌と試験物質の直接接触、細菌増殖の動態測定およびデータ分析および寒天拡散試験を、すべて上記に記載されたように実行した。
【0160】
24時間の実験中、試験物質をすぐに直接接触させた後の、7ウェルのストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)増殖の平均光学密度測定を図9に示す。この図によって、ポリマーを加えた場合と加えない場合にストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)に直接接触させたときの三つの市販材料の抗細菌効果が比較される。合成ポリマーを加えた市販品のポリマーのすべての三つの型において、強い抗細菌効果が見られる。図10によって、一週間の経過過程後に行われた同一の実験が図示される。一週間の経過過程の後、ポリマーを加えた市販品の複合樹脂の抗細菌効果は保たれていた。
【0161】
寒天拡散試験において、すべての試験サンプルで阻止帯が検出されなかった。
【0162】
キャリブレーションの結果は、図11に示されるように再現性があることが分かった。光学密度のゆるやかな減少は、段階希釈に相関していた。キャリブレーションの結果に見られるように、DCT系は、定常期の細菌増殖速度または最終の光学密度には影響がなかった。
【0163】
修復複合樹脂について、ポリマーを該材料の足場の中に組み込むことによって、最終的な効果であるゆっくりと放出される薬剤が解決され、抗細菌特性が有意に延長されうる。組み込まれたアルキル化ポリエチレンイミンの阻害性抗細菌効果は、これらは培地中で不溶性で、複合材料から合成ポリマーは放出していなかったので、おそらく試験細菌に直接接触させたためであり、ポリマーが放出したためではない。これらの材料の抗細菌効果の詳細なメカニズムは決定されていないし、いずれの考えられる理論にも結びついていないが、四級アンモニウム化合物が細胞壁成分に結合すること、および細胞質物質の漏出を引き起こすことによって細菌細胞の溶解をもたらすことがこれにより示唆されている。合成ポリマーは、それが加えられた市販品の複合樹脂に関係なく、二つの試験細菌に対して強い抗細菌効果を示した。該効果は少なくとも一週間続いた。
【0164】
実施例13:抗細菌活性が細菌の物質への直接接触のみによって表わされる表面現象であることの説明
抗菌活性は、培地に放出される生理活性成分のためであるという可能性を除くために、三つの試験を行った:(A)寒天拡散試験−ADT、(B)複合材料を浸す培地の抗菌効果、および(C)培地の化学分析。
【0165】
寒天拡散試験(ADT)−試験物質からの抗細菌成分の拡散に基づく半定量的な試験であり、寒天プレート上で成長した菌叢における阻止帯の外観検査である。
【0166】
試験物質から放出した溶離成分の抗細菌特性を評価した。ストレプトコッカスミュータンス(S. mutans)の細菌増殖曲線は、1重量%および5%加えたナノ粒子についての適当なコントロールのものに類似していた。溶離成分の試験を行う前に一週間経過させたサンプルで繰り返された実験は、同様の結果をもたらした。
【0167】
複合材料を浸した培地のUVおよびGPC分析によって、有機分子またはポリマーは示されなかった。
【0168】
ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)(ATCC #27351)細菌懸濁液および寒天拡散試験を、上記に記載されたように実行した。
【0169】
A.マイクロタイタープレートの準備
1重量%および5重量%の合成ポリマーで補充した三つの複合樹脂材料のZ250、フィルテックフロー(Filtek Flow)および3M シングルボンド接着剤(single bond adhesive)の試験を行った。底の平らな歯科用器具(デンタルスパチュラ)を用いて、マイクロタイタープレート(96穴平底ヌンクロン(Nunclon)、ノンク(Nonc)、コペンハーゲン、デンマーク)における7ウェルの側壁を、等量の同一の試験試料で均一にコーティングした。インキュベーションの間、分光光度計の誤った読み取りを回避するため、ウェルの底に着かないよう特に注意を払った。製造業者の取扱説明書に従って、該物質を重合した。試験物質なしの同一のマイクロタイタープレートにおける7つのウェル、および合成ポリマーなしに市販品の複合樹脂でコーティングした別の7つのウェルは、ポジティブコントロールとして用いた。
【0170】
B.溶離挙動
各ウェルを230μlのBHIで補充し、24時間、37℃でインキュベーションした。各ウェルからの220μlの体積を隣接するセットのウェルに移し、上記に記載されたように調製した10μlの接種細菌液を加え、このようにしてブロスの中へ溶離した成分の効果を試験した。該プレートを温度制御マイクロプレート分光光度計の中に置き、37℃にセットし、各読み取りの前に5秒混合した。細菌の増殖を、24時間、20分ごとのOD650における変化に従って評価した。
【0171】
類似のマイクロタイタープレートを試験物質とともに準備し、1および4週間経過させた。この間に各ウェルを、48時間ごとに交換する250μlのPBSで満たし、該プレートを37℃でインキュベーションした。最後の24時間において、PBSをBHIブロスと交換し、即時のサンプル(immediate sample)についてのものと同様の試験を行った。補足的な実験において、複合材料を脱イオン水に浸し(一例としては102mgの複合材料を1mlの水に37℃で浸し)、7日、溶液を凍結乾燥によって濃縮した。水中に放出された分子についての試験を200から600ナノメーターのUVスキャンによって行い、ポンプ、カラム(ショウデックス(Shodex) KB−803)および屈折率(RI)検出器、1ml/分で溶出剤としての0.05M NaNOを含む、GPC−スペクトル物理装置(GPC-Spectra Physics instrument)(ダルムシュタット、ドイツ)によって行った。
【0172】
細菌と試験物質の直接接触試験、細菌増殖の動態測定およびデータ分析を、すべて上記に記載されたように実行した。
【0173】
試験物質から放出した溶離成分の抗細菌特性を評価した。寒天拡散試験において、すべての試験サンプルで阻止帯は検出されなかった。ストレプトコッカスミュータンス(S. mutans)の細菌増殖曲線は、調製したばかりのサンプル(表4)並びに一週間および4週間経過したサンプルの両方について、1重量%および5重量%加えたナノ粒子についての適当なコントロールのものに類似していた。フィルテックフロー(Filtek Flow)とシングルボンド接着剤(single bond adhesive)の両方で、経過させないサンプルにおける細菌増殖が減少し、それは一週間以上続かなかった。
【0174】
さらに、複合材料を浸した培地のUVおよびGPC分析によって、有機分子またはポリマーは示されなかった。結果を表6に示す。
【表7】

【0175】
表6:複合材料から浸出可能な抽出物の起こりうる抗菌効果
寒天拡散試験を、表1への脚注に記載したように実行した。
細菌増殖の阻害−この試験によって、Uでコード化した様々な程度のPEIナノ粒子サンプル(w/w)で補充した複合樹脂材料の溶離における細菌増殖を定量的に評価した。結果を細菌増殖のパーセント阻害で示す。このアッセイによって、経過したサンプルを試験した(1および7日)。
UVおよびGPC分析−有機分子またはポリマーは残っていなかった。
【0176】
これらの実験によって、これらの複合材料の生理活性が複合材料から培地への化合物の放出を経ていないこと、および該活性が表面接触に関係していることが示される。
【0177】
実施例14:還元的アミノ化による四級アンモニウムの形成
長鎖ハロゲン化アルキルによってポリアミンを直接アルキル化し、続いてハロゲン化メチルによってメチル化することで四級アンモニウム基を提供しうるが、アルキル化はランダムであり、一つより多い長鎖アルキルがアミノ基に結合しうる。ポリアミンの制御された四級化のためのもう一つの方法は、最初に還元的アミノ化によって長鎖アルキル基を一級アミンに結合させることである。この方法において、ポリアミン、例えば平均25%の一級アミンを有する分枝鎖のポリエチレンイミンを、4−15個の炭素原子の鎖を有するアルカナールと反応させて、一級アミンのみを有する対応するイミン誘導体を形成させる。該イミンを、次いで還元して対応する二級アミンを得る。次の段階において、二級アミンおよび三級アミンを過剰のハロゲン化メチルでアルキル化して、対応する四級アミンを形成させる。この方法によって、再現性のある四級化ポリアミンが生じた。
【0178】
実施例15:ハライド基をヒドロキシ対イオンと交換
クロロまたはヨード対イオンを有する、生じた四級アミンポリマーを、AgClまたはAgIが形成される塩基性条件下でAgOと反応させ、溶液から沈殿させてOHアンモニウム誘導体を形成させる。粒子をHFの溶液と反応させることによって、該ヒドロキシル基を、次いでフッ化物イオンに変換しうる。
【0179】
実施例16:多糖四級アンモニウム粒子
可溶性または不溶性粒子の多糖の四級アンモニウム塩は;
多糖を酸化してポリアルデヒドを形成させ、それを次の段階において、一つが還元的アミノ化によって酸化多糖と共役複合した一級アミンであって、他のアミンが抗菌活性のための長いアルキル鎖を有する四級アミンである少なくとも二つのアミノ基を有するオリゴアミン誘導体と反応させることによって得られ;または
先の実施例に記載されたアルキル化によって製造される生物反応性四級アンモニウム基へと変換されたアミンによって得られる。
【0180】
実施例17:6月経過後の活性
図12は、1重量%の架橋PEI四級アンモニウムを組み込んだ複合材料サンプルの6月経過後の十分な抗細菌活性を示す。
【0181】
実施例18:カチオン性多糖粒子
アラビノガラクタン(AG、分枝鎖の多糖、MW=25,000)デキストラン(Dex、直鎖の1,6−ポリグルコース、MW=30,000)またはプルラン(Pul、直鎖の1,4ポリグルコース(polyglucoser)、MW=50,000)と共役複合させた様々なポリエチレンイミン(PEI、MW=600)、スペルミンおよびスペルミジンを製造した。多糖のポリアルデヒドへの酸化後、オリゴアミンをアミンまたはイミン結合によって共役複合させた。生物活性について試験を行ったポリマー間の違いは:
1.PEI、スペルミンまたはスペルミジンを用いたオリゴアミン;
2.多糖、AG、プルランまたはDexの型;
3.結合、アミンまたはイミンの型;並びに
4.糖あたりのオリゴアミンの含有量
である。
【0182】
本明細書に用いられる略号は:
−AG(1:1):1モルの糖単位と1モルの過ヨウ素酸(35%の糖単位をジアルデヒドに変換した)の反応によって生成した酸化アラビノガラクタン;
−AG(1:5):1モルの糖単位と0.2モルの過ヨウ素酸(8%の糖をジアルデヒドに変換した)の反応によって生成した酸化アラビノガラクタン;
−D(1:1):1モルの糖と1モルの過ヨウ素酸(50%の糖単位をジアルデヒドに変換した)の反応によって生成した酸化デキストラン;
−P(1:1):1モルの糖単位と1モルの過ヨウ素酸(酸化の程度は決定しなかった)の反応によって生成した酸化プルラン;
−PEI:ポリエチレンイミン(MW=600);
−Red:還元型共役複合体(アミン結合);
−Unred:非還元型共役複合体(イミン結合)
である。
【0183】
実施例19:カチオン性多糖共役複合体の合成
多糖−PEI架橋共役複合体を還元的アミノ化によって製造した。多糖を過ヨウ素酸のような酸化剤と反応させることによって、多糖を酸化した。酸化された多糖を、次いで濃縮された溶液下でオリゴアミンと反応させて架橋を誘導した。典型的な態様において、0.5gの酸化アラビノガラクタン(1:5、〜0.5mmolのアルデヒド)および0.18gのPEI(0.625mmol)を、2mlホウ酸緩衝剤(0.1M、pH=11)に溶解した。溶液を室温で48時間混合した。溶液の半分(10ml)を、12,000カットオフのセルロースチューブを用いてDDWに対して透析し、凍結乾燥して水中で不溶性のイミン共役複合体を得た。残り半分を過剰の水素化ホウ素ナトリウムと室温で終夜反応させ、DDWに対して透析し、凍結乾燥して水中で可溶性のアミン共役複合体を得た。
【0184】
アルデヒド/PEI(1:1.25、モル比):AGを対応する多糖と交換することによって、デキストランおよびプルラン共役複合体を同様に製造した。また、本方法を用いてスペルミン、スペルミジンおよび他のオリゴアミンを様々な多糖と共役複合させた。オリゴアミン共役複合体を、キトサンおよびポリエチレンイミンについて上記に記載された方法を用いて四級化した。ある実験において、オリゴアミン−多糖共役複合体を1−ブロモオクタンと反応させ、続いて臭化メチルと反応させて、目的の四級アンモニウム粒子を得た。該粒子は、細菌を殺すのに非常に効果的であった。
【0185】
実施例20:抗菌樹脂ベースの四級アンモニウムメチルスチレン
A.ブロモオクタンによるポリ(スチレンメチルアミン)のアルキル化:N−アルキル化を以下のように実行した:100mlの無水エタノールに分散した架橋ポリ(スチレンメチルアミン)(10g、74.5mmolのモノマー単位)を、1:1.5のモル比(ポリ(スチレンメチルアミン)単位/ブロモオクタン)で過剰のブロモオクタン(110mmol、19.3ml)と反応させた。アルキル化段階を還流条件下で24時間実行した。最小限のメタノールに溶解した過剰のNaOH(2等モル)を加えて、放出したHBrを中和した。中和反応をさらに24時間、同一条件で続けた。室温まで冷却した後、得られた生成物をろ過して取り除き、アセトンおよびDDWで洗浄して残余のブロモオクタンおよびNaBrをそれぞれ除去し、Pで真空乾燥した。あるいは、アミノメチル化された化学基へのモノアルキル化は、4つまたはそれ以上の長さの炭素鎖を有するアルカナールで還元的アミノ化することによって達成した。元素分析:C(%)=58.32、H(%)=7.79、N(%)=4.01、Br(%)=20.78。
【0186】
B.オクタンアルキル化ポリ(スチレンメチルアミン)のメチル化
20mlの無水エタノールに分散した先のアルキル化ポリ(スチレンメチルアミン)(2.01g、8.1mmolのモノマー単位)を、1:2.5のモル比(モノマー単位/ヨウ化メチル)で1.27mlのメチルと反応させた。メチル化段階を48時間、60℃(600C)で続けた。等モル量の炭酸水素ナトリウム(0.02mol、2g)を加えて、メチル化段階の間に放出したHIを集めた。中和を同一条件でさらに24時間続けた。得られた生成物をろ過によって捨て、アセトンおよびDDWで洗浄して残余のヨウ化メチルおよび炭酸水素ナトリウムをそれぞれ除去し、Pで真空乾燥した。元素分析:C(%)=54.85、H(%)=6.77、N(%)=3.50、I(%)=31.14。
【0187】
C.キトサンナノ粒子の製造
トリポリリン酸水溶液をキトサン溶液に加えてナノ粒子を自発的に得た。キトサンを0.25%の濃度で0.05%(w/v)酢酸溶液に溶解し、0.5%(w/v)NaOH溶液でpHを5.5に調整した。トリポリリン酸を0.2%(w/v)の濃度で精製水に溶解した。その後、0.8mlのトリポリリン酸溶液を2.5mlのキトサン溶液に加え、これによりナノ粒子の形成に至った。ナノ粒子懸濁液の最終的なpHは6.4であった。キトサンとトリポリリン酸の比を調整することによって、異なる平均サイズのナノ粒子を得た。
【0188】
D.様々な臭化アルキルによるキトサンのアルキル化
2gのキトサンを40mLの2-プロパノール/4N 水酸化ナトリウム溶液の中に加え、70℃で30分間撹拌した。臭化ブチル、臭化オクチル、臭化ドデシル、および臭化ヘキサデシルからの臭化アルキルを、混合物に液滴で加え、4時間反応させ、次いで該反応混合物を遠心分離した。得られた沈殿をエタノールで洗浄し、次いで真空乾燥してアルキル化キトサン誘導体を得た。生じたアルキル化キトサン誘導体を、水に対してセル(Cellu) SepH1膜(MWCO=12 000)を用いて3日間透析した。置換度を電位差滴定によって決定した。
【図面の簡単な説明】
【0189】
本発明を理解し、実際にどのように実行されうるのかを理解するために、添付図面を参照して、これに限らないが例のみによって好ましい態様がこれから記載され、その中で:
【図1】図1は、本発明のある態様の粒子の概略図であり;
【図2】図2は、本発明のいくつかの態様の粒子を生成するのに有用でありうるポリマーの概略図であり;
【図3】図3は、本発明のある態様のマトリックスの概略図であり;
【図4】図4は、本発明のある態様の粒子のアーティストの視点であり;
【図5】図5は、本発明のある態様のポリマーの概略図であり;
【図6】図6によって、1重量%PEIナノ粒子に組み込まれ、様々なアルキル化剤でアルキル化された複合樹脂サンプルによって示される抗細菌的な細菌の減衰が図示され(コントロール−市販品の複合樹脂に対して)、この場合、流動可能な複合材料をネガティブコントロールとして用いた。PEIサンプルの略号は表1の脚注の中にある。
【図7A】図7Aによって、一週間かけて(図7A)長鎖のアルキルで修飾したPEIナノ構造サンプルのストレプトコッカスミュータンス(Streptoccocus mutans)に対する抗細菌安定性が図示される(市販品の流動可能な複合材料をコントロールとして用いた)。
【図7B】図7Bによって、1月かけて(図7B)長鎖のアルキルで修飾したPEIナノ構造サンプルのストレプトコッカスミュータンス(Streptoccocus mutans)に対する抗細菌安定性が図示される(市販品の流動可能な複合材料をコントロールとして用いた)。
【図8】図8は、 (A)流動可能な複合材料および1%PEIナノ粒子で処理する前の細菌表面 (B)流動可能な複合材料および1%PEIナノ粒子で処理した後の細菌表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】図9によって、PEIナノ粒子(コントロール−市販品の複合樹脂に対して;複合材料なしの細菌増殖=Co+)に組み込んだ様々な複合樹脂材料(Z250=ハイブリッド;フィルテックフロー(Filtek Flow)=流動可能、および3M シングルボンド接着剤(single bond adhesive)=ボンディング(Bonding))に直接接触させた直後の、7ウェルのストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)の増殖の平均光学密度測定が図示される。
【図10】図10によって、1月の経過過程後に行われた図9と同一の実験が図示される。
【図11】図11によって、すべての直接接触テスト実験に含まれるストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)の増殖の検量線が図示される。各増殖曲線は、細菌阻害の計算を与える細菌懸濁液の5回の段階希釈から生成される。
【図12】図12によって、流動可能な複合樹脂の中に1重量%の架橋PEI四級アンモニウムを組み込んだ修復サンプルの、6月経過後の十分な抗細菌活性が図示される。PEIサンプルの略号は表1の脚注の中にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1nmあたり少なくとも一つの抗菌活性四級アンモニウム基の表面密度で化学結合して抗菌活性四級アンモニウム基を有する少なくとも一つの脂肪族ポリマーを含む粒子。
【請求項2】
化学結合して抗菌活性四級アンモニウム基を有する少なくとも一つの脂肪族ポリマーを含む粒子であって、その中で前記抗菌活性四級アンモニウム基が該窒素原子に結合した一つの長いアルキル基を含む粒子。
【請求項3】
前記抗菌活性四級アンモニウム基が該窒素原子に結合した一つの長いアルキル基を含む、請求項1の粒子。
【請求項4】
前記抗菌活性四級アンモニウム基が、1nmあたり少なくとも一つの抗菌活性四級アンモニウム基の表面密度である、請求項2の粒子。
【請求項5】
1nmあたり少なくとも一つの抗菌活性四級アンモニウム基の表面密度で化学結合して抗菌活性四級アンモニウム基を有する少なくとも一つの脂肪族ポリマーを含む粒子であって、その中で前記抗菌活性四級アンモニウム基が該窒素原子に結合した一つの長いアルキル基を含む粒子。
【請求項6】
前記の少なくとも一つの脂肪族ポリマーが、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアミン(PVA)、ポリ(アリルアミン)(PAA)、ポリ(アクリル酸アミノエチル)、アミノメチル化スチレンポリマー、アルキルアミノ基がぶら下がっているポリペプチド、およびキトサンから選択される、請求項1から5のいずれか一つに記載の粒子。
【請求項7】
10から10000nmの間のサイズを有する、請求項1から6のいずれか一つに記載の粒子。
【請求項8】
150nmまたはそれ以下のサイズを有する、請求項7の粒子。
【請求項9】
30nmまたはそれ以上のサイズを有する、請求項7の粒子。
【請求項10】
前記の少なくとも一つの脂肪族ポリマーが架橋されている、請求項1から9のいずれか一つに記載の粒子。
【請求項11】
架橋の程度が1%から20%である、請求項10の粒子。
【請求項12】
前記の長いアルキル基が4つまたはそれ以上の炭素原子を有する、請求項1から11のいずれか一つに記載の粒子。
【請求項13】
前記の長いアルキル基が4から10個の炭素原子を有する、請求項12の粒子。
【請求項14】
前記の長いアルキル基が6、7、または8個の炭素原子を有する、請求項13の粒子。
【請求項15】
前記四級アンモニウム基がフッ化物アニオンと対をなしている、請求項1から14のいずれか一つに記載の粒子。
【請求項16】
ポリマー中の少なくとも10%のアミノ基が前記抗菌活性四級アンモニウム基である、請求項1から15のいずれか一つに記載の粒子。
【請求項17】
ホストポリマーまたはそれのモノマーと反応して、該粒子を該ホストポリマーに化学結合させることができる官能基を有する、請求項1から16のいずれか一つに記載の粒子。
【請求項18】
液体媒体または固体媒体中に固定された、請求項1から17のいずれか一つに記載の粒子。
【請求項19】
前記媒体がポリマーマトリックスである、請求項18の粒子。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一つに記載の粒子を固定したポリマーホストを含むポリマーマトリックス。
【請求項21】
1μmあたり約1から約100個の粒子の表面濃度でマトリックスの外表面に該粒子が均一に分布する、請求項20のポリマーマトリックス。
【請求項22】
平均して、マトリックスの外表面の1μmあたり少なくとも一つの活性部分を有し、このような活性部分のサイズが少なくとも100nmであって;前記活性部分が、1nmあたり少なくとも1個の抗菌活性四級アミンの表面濃度を有する、請求項20または21のポリマーマトリックス。
【請求項23】
ポリマー粒子がポリマーマトリックスに化学結合している、請求項20から22のいずれか一つに記載のポリマーマトリックス。
【請求項24】
強還元剤または強酸化剤をさらに含む、請求項20から23のいずれか一つに記載のポリマーマトリックス。
【請求項25】
生物種を請求項20から24のいずれか一つに記載のポリマーマトリックスと接触させることによる、前記生物種の阻害方法。
【請求項26】
接触された生物種の少なくとも95%を死滅させる、請求項25の方法。
【請求項27】
接触された生物種の少なくとも99%を死滅させる、請求項26の方法。
【請求項28】
前記生物種が細菌類、寄生虫類、真菌類およびウイルス類から選択される、請求項25から27のいずれか一つの方法。
【請求項29】
前記ポリマーマトリックスに多くとも5重量%のポリマー粒子が含まれる、請求項25の方法。
【請求項30】
一つだけが前記ポリマーへ結合し、3つが非ポリマー基へ結合(正確には、該非ポリマー基の一つが4つまたはそれ以上の炭素原子を有するアルキル鎖である)している窒素原子からなる四級アンモニウム基を有するポリマーである、請求項1から19のいずれか一つに記載の粒子に使用するための脂肪族ポリマー。
【請求項31】
少なくとも90%の前記四級アンモニウム基が抗菌活性を有する、請求項30のポリマー。
【請求項32】
前記4つまたはそれ以上の炭素原子を有するアルキルでない非ポリマー基の一つまたはそれ以上が、3つまたはそれ以下の炭素原子を有する短いアルキル基である、請求項30または31のポリマー。
【請求項33】
前記の短いアルキル基がメチル基である、請求項32のポリマー。
【請求項34】
四級アンモニウム基がフッ化物アニオンと対をなしている、請求項30から33のいずれか一つに記載のポリマー。
【請求項35】
架橋されている、請求項30から34のいずれか一つに記載のポリマー。
【請求項36】
請求項20から24のいずれか一つに記載のポリマーマトリックスを得るための方法であって、ホストポリマーに界面活性化合物および請求項1から19のいずれか一つに記載の粒子を加え、混合して均一なポリマーマトリックスを得ることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項20から24のいずれか一つに記載のポリマーマトリックスを得るための方法であって、ホストポリマーを相溶化剤と混合し、次いで請求項1から19のいずれか一つに記載の粒子と混合することを特徴とする方法。
【請求項38】
前記相溶化剤が、ホストポリマーのモノマー、該粒子が作られるポリマーのモノマー、ホストポリマーのモノマーのオリゴマー、該粒子のポリマーのモノマーのオリゴマー、および両方の種類のモノマーから作られるオリゴマーから選択される、請求項37の方法。
【請求項39】
ポリマー粒子の存在下でホストのモノマーの重合をさらに含むことを特徴とする、請求項20から24のいずれか一つに記載のポリマーマトリックスを得るための方法。
【請求項40】
請求項30から35のいずれか一つに記載の脂肪族ポリマーを得るための方法であって、
(a)ポリマーに一級アミン基を提供し、
(b)各一級アミン上の一つの水素原子を少なくとも4つの炭素原子を含むアルキル基で選択的に置換し;並びに
(c)他のアミンの水素原子(存在するなら)を1つ、2つ、または3つの炭素原子を有する短いアルキル基で置換することを特徴とする方法。
【請求項41】
抗菌活性ポリマーが浸出せず、活性が6月以上の期間残存する、請求項1から40のいずれか一つに記載の組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2008−527068(P2008−527068A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548966(P2007−548966)
【出願日】平成18年1月1日(2006.1.1)
【国際出願番号】PCT/IL2006/000005
【国際公開番号】WO2006/070376
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500388981)ハダシット メディカル リサーチ サーヴィシーズ アンド ディヴェロップメント リミテッド (6)
【出願人】(500155660)イッサム リサーチ ディヴェロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティー オブ エルサレム (5)
【Fターム(参考)】