説明

非生理学的レベルの微小管結合PP2Acと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患の治療に用いる手段

本発明は,非生理学的に増加した細胞内レベルのの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2A(PP2Ac)触媒サブユニットと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患を予防または治療する方法に関し,該方法は,前記疾患に罹患しているかまたは前記疾患を発症する危険のある被験者に薬学的有効量のMID1またはMID2の群より選択される蛋白質または前記蛋白質をコードする核酸を投与することを含む。本発明はさらに,非生理学的に減少した細胞内レベルの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2A(PP2Ac)の触媒サブユニットと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患を予防または治療する方法に関し,該方法は,前記疾患に罹患しているかまたは前記疾患を発症する危険のある被験者に,薬学的有効量のMID1またはMID2のペプチド性フラグメントであって,MID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメント,または,α4に対する結合部位を含む有効量のPP2Acのフラグメント,または,有効量のアミノ酸236−279を含むα4のペプチドフラグメント,または,有効量の前記ペプチドフラグメントをコードする核酸分子,または,有効量のMID1とα4との相互作用を妨害する分子,または,有効量のMID1および/またはα4の発現または活性を妨害する分子を投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書においては種々の文献が引用される。これらの従来技術文献および製造元のマニュアルの開示内容は,その全体を本明細書の一部としてここに引用する。ただし,これらの文献が本発明の特許性に関連する従来技術を構成すると認めるものと解釈すべきではない。
【0002】
発明の背景
種々の疾患が蛋白質の過剰リン酸化または過少リン酸化に関連することが知られている。これらの蛋白質は,構造蛋白質であってもよく制御蛋白質であってもよい。
【0003】
構造的蛋白質の過剰リン酸化が観察される疾患の一例はアルツハイマー病である。この場合には,微小管結合タウ蛋白質は非生理学的に高い量のリン酸化残基を含み,これは対になった螺旋フィラメントの形成の原因となりうる。非生理学的レベルのリン酸化微小管結合蛋白質が観察される別の疾患には,脳回欠損Iおよびオピッツ症候群が含まれる。
【0004】
オピッツG/BBB症候群(MIM300000)は,主として腹側正中に影響を及ぼす先天的な疾患である。顕著な症状発現には,脳梁,両眼隔離症,唇裂および口蓋の形成異常を伴う精神遅滞,気管食道のフィステルおよび尿生殖器欠陥が含まれる。さらに,無孔肛門および処女膜および心臓奇形,例えば,ファロー四徴候が記載されている(1)。条件は遺伝的に不均質である:X連鎖(Xp22.3)および常染色体座(22q11.2;MIM145410)の両方が記述されている(2)。2つの型の疾患は臨床的に区別できない。我々は先に,ポジショナルクローニング法を用いてX連鎖型の候補遺伝子を同定してMID1と命名し,これがOSを有する個体において選択的に変異していることを見出した(3)。
【0005】
MID1によりコードされる蛋白質は,RINGフィンガー蛋白質ファミリーに共通する5つの別々のドメインを含む。第6のC末端B30.2ドメインはこれらの蛋白質のサブセットで生ずる。これまでに患者で同定されている変異のほとんどは,MID1遺伝子のその部分のOSクラスターと連鎖している。最近,MID1が微小管と結合することが示され,このことは,これが微小管の動力学において生理学的役割を果たすことを示す。変異型のMID1は微小管と結合しないが,その代わりに細胞質クロットを形成する(4)。
【0006】
MID1のN末端は,4つの独立したドメイン,すなわち,RINGフィンガー,2つのB−boxおよびコイルドコイルドメインから構成されるモチーフ(RBCC)を特徴とする。このドメイン構造は,RINGフィンガー蛋白質の拡大しつつあるファミリーの間で保存されている。これらの蛋白質のいくつかにおいて高分子蛋白質複合体の形成が記述されており(5,6),一方,異種蛋白質−蛋白質相互作用は,RBCCモチーフに起因する(7)。RINGフィンガードメインにより媒介される標的蛋白質のユビキチン化は,多くの蛋白質の翻訳後制御において重要である(8−11)。
【0007】
MID1をおとりとして用いる酵母ツーハイブリッドスクリーニングにより,蛋白質ホスファターゼ2A(PP2A)(12)の制御サブユニットであるα4蛋白質(Sontag,E..;2001)がMID1のN末端領域と相互作用することが示された。さらに,OSを有する個体に由来する胚性線維芽細胞株において微小管結合PP2A(13)が著しくアップレギュレートされることが示された。我々のデータは,MID1がその制御サブユニットα4に結合することによりPP2Aに向かうユビキチン化機構をターゲティングすることに関与していること,および,微小管結合蛋白質のSer/Thr過少リン酸化がオピッツ症候群の病因に極めて重要であるかもしれないことを示す。
【0008】
さらに,MID1およびMID2は,ホモおよびヘテロ二量体化してα4を微小管につなげることができ,このことにより,MID1およびMID2のB−boxがα4との相互作用を媒介しうることが示されている(Short et al.)。MID1の微小管との結合は,MAPキナーゼおよび蛋白質ホスファターゼが関与する動的リン酸化により制御されている(Lin et al.)。
【0009】
従来技術は,MID1がα4を介してPP2Acと相互作用することを確立したが,これまでのところ,どのようにして微小管と結合するPP2Acの細胞内の量を有効に変化させることができるかの手がかりはない。上述したように,多くの疾患が非生理学的レベルの微小管結合PP2Acと関連するかまたはこれにより引き起こされるため,そのような疾患を治癒するための有効な方法を得るために,PP2Acのこのような非生理学的細胞内レベルを生理学的レベルに有効に変化させるための手段および方法を提供することが求められている。
【0010】
この技術的課題は,特許請求の範囲にその特徴が示される態様を提供することにより解決される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の概要
本発明は,非生理学的に増加した細胞内レベルの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2A(PP2Ac)の触媒サブユニットと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患を予防または治療する方法に関する。該方法は,前記疾患に罹患しているかまたは前記疾患を発症する危険のある被験者に,薬学的有効量の,MID1またはMID2の群より選択される蛋白質または前記蛋白質をコードする核酸を投与することを含む。本発明はさらに,非生理学的に減少した細胞内レベルの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2A(PP2Ac)の触媒サブユニットと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患を予防または治療する方法に関する。該方法は,前記疾患に罹患しているかまたは前記疾患を発症する危険のある被験者に,薬学的有効量のMID1またはMID2のペプチド性フラグメントであって,MID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメント,または,α4に結合するが固有のホスファターゼ活性を有しない有効量のPP2Acのフラグメント,または,PP2Acに対する結合部位を含むα4のペプチド性フラグメント(好ましくは,アミノ酸111−202),または,アミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメント,または,前記ペプチドフラグメントをコードする有効量の核酸分子,または,MID1またはMID2とα4との相互作用を妨害するか,またはα4とPP2Acとの間の相互作用を妨害する有効量の分子,または,これらの相互作用の制御を妨害する有効量の分子を投与することを含む。さらに,本発明は,MID1またはMID2とα4との相互作用を妨害する分子を同定する方法に関し,該方法は,適当な条件下で,候補分子またはMID1,MID2および/またはα4の活性の発現を妨害する有効量の分子の存在下で,MID1またはMID2またはMID1もしくはMID2のペプチド性フラグメントであって,MID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメントを,α4またはα4のペプチドフラグメントと接触させ;そして,前記候補分子が前記相互作用を妨害するか否かを評価する,ことを含む。最後に,本発明は,上述の蛋白質またはそのペプチドフラグメントまたは対応する核酸の1またはそれ以上を含む組成物,好ましくは医薬組成物に関する。
【0012】
発明の詳細な説明
本発明は,非生理学的に増加した細胞内レベルの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2A(PP2Ac)の触媒サブユニットと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患を予防または治療する方法に関する。該方法は,前記疾患に罹患しているかまたは前記疾患を発症する危険のある被験者に,薬学的有効量の,MID1またはMID2の群より選択される蛋白質または前記蛋白質をコードする核酸を投与することを含む。
【0013】
本発明における,"・・・と関連するかまたはこれにより引き起こされる"との用語は,一方は,表現型として観察される,細胞内で増加したレベルの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2Aの触媒サブユニットと疾患との相関の現象と(ただし,この疾患が,前記増加したレベルの酵素により引き起こされると結論づける必要はない(増加したレベルが原因であることを排除するものではないが)),他方は,増加したレベルのPP2Acが疾患の発症に及ぼす原因となる影響との間を区別する。したがって,場合によっては,相関関係は原因となる影響に基づくが,別の場合には,原因となる影響はPP2Acの増加したレベルまたは活性とは異なるかもしれない。
【0014】
"非生理学的に増加した細胞内レベル"との用語は,レベルが,上述した疾患に罹患していない被験者の細胞に見いだされるレベルより増加していることを表す。PP2Acレベルは,標的蛋白質のリン酸化のレベルを評価することにより慣用的に測定することができる。しかし,多くの例においては,PP2Acレベルの直接測定は必要ではない。これは,ある種の疾患に伴って非生理学的レベルが生ずることは確立されているかまたは少なくとも疑われているためである。非生理学的に増加したレベルは,同じタイプの同じ発生段階の細胞における蛋白質の正常な生理学的レベルと比較して,少なくとも20%,好ましくは少なくとも30%,より好ましくは少なくとも50%,さらにより好ましくは少なくとも80%,最も好ましくは少なくとも100%の増加であり,ここで,測定は両方の細胞において本質的に同じ条件下で行う。
【0015】
本発明にしたがえば,"PP2Ac"との用語は,蛋白質ホスファターゼ2Aの触媒サブユニットのアルファおよびベータアイソフォームの両方を表す(Stone et al.,1988;Hemmings et al.,1988;添付の参考資料にさらに記載される)。
【0016】
好ましくは哺乳動物であり最も好ましくはヒトである被験者への投与は,担当医師の推奨にしたがって行う。通常は,上述した蛋白質または前記蛋白質をコードする核酸は,薬学的に許容しうる担体または希釈剤と一緒に処方する。本明細書において用いる場合,"組成物"との用語は,上で簡単に述べた少なくとも1つの蛋白質および/または少なくとも1つの核酸分子を含む。
【0017】
組成物は,固体,液体または気体のいずれの形態であってもよく,とりわけ,粉体,錠剤,溶液またはエアロゾルの形であることができる。
【0018】
適当な薬学的担体,賦形剤および/または希釈剤の例は当該技術分野においてよく知られており,例えば,リン酸緩衝化食塩水溶液,水,乳濁液,例えば油/水乳濁液,種々のタイプの湿潤剤,滅菌溶液等が含まれる。そのような担体を含む組成物は,よく知られる慣用的な方法により処方することができる。これらの医薬組成物は,適当な投与量で被験者に投与することができる。適当な組成物の投与は,種々の方法により,例えば,静脈内,腹腔内,皮下,筋肉内,局所,皮膚内,鼻腔内または気管支内投与により行うことができる。前記投与は,脳動脈内の部位に,または脳組織内に直接,注射および/またはデリバリーすることにより行うことが特に好ましい。本発明にしたがって製造される組成物はまた,例えば,脳等の外部または内部標的部位へのバイオリスティックデリバリーにより,標的部位に直接投与してもよい。投与計画は,担当の医師および臨床的因子により決定されるであろう。医療の分野においてよく知られているように,任意の1人の患者についての投与量は,多くの因子,例えば,患者のサイズ,表面積,年齢,投与すべき特定の化合物,性別,投与の時間および経路,一般的健康状態,および同時に投与される他の薬剤により異なる。蛋白質性の薬学的に活性な物質は,1回投与あたり1ng−25mg/kg体重の量で存在することができる。しかし,特に上述因子を考慮して,この例示的範囲の下または上の投与量も想定される。また,投与計画が連続注入である場合,体重1kgあたり1分あたり1μg−25mgユニットの範囲内であるべきである。核酸分子,好ましくはDNA分子の投与量,特に静脈内投与における投与量は約106−1012である。DNAはまた,標的部位に直接投与してもよく,例えば,バイオリスティックデリバリーにより内部または外部標的部位に,またはカテーテルにより動脈内の部位に投与してもよい。
【0019】
定期的な評価により進行をモニターすることができる。本発明の組成物は,局所的に投与してもよく,全身的に投与してもよい。非経口投与用の製剤には,滅菌した水性または非水性の溶液,懸濁液,および乳濁液が含まれる。非水性溶媒の例は,プロピレングリコール,ポリエチレングリコール,植物油,例えばオリーブ油,および注射可能な有機エステル,例えばオレイン酸エチルである。水性担体には,水,アルコール性/水性溶液,乳濁液または懸濁液,例えば,食塩水および緩衝化媒体が含まれる。非経口用ベヒクルには,塩化ナトリウム溶液,リンゲルデキストロース,デキストロースおよび塩化ナトリウム,乳酸化リンゲルまたは固定油が含まれる。静脈内用ベヒクルには,液体および栄養補給剤,電解質補給剤(例えば,リンゲルデキストロース系のもの)等が含まれる。また,保存剤および他の添加剤,例えば,抗微生物剤,抗酸化剤,キレート剤,および不活性ガス等が存在していてもよい。さらに,本発明にしたがって製造される医薬組成物は,医薬組成物の意図される特定の用途に応じて,さらに別の薬剤を含んでいてもよい。そのようなさらに別の薬剤は,細胞レベルで作用する薬剤であってもよい。前記医薬組成物がさらに別の薬剤,例えば,アセチルコリン,コリン作用性アゴニスト,非ステロイド性抗炎症剤,エストロゲン,抗酸化剤,ビタミンおよびコレステロール低下剤を含むことがさらに好ましい。
【0020】
"前記疾患を発症する危険のある"との用語は,疾患に対する素因があると担当の医師が診断するであろうことを表す。そのような素因は,オピッツ症候群,ミラー・ディーカー型のI型脳回欠損およびX連鎖二重皮質症候群等の遺伝に基づくものであってもよく,患者で観察されるある種の症状に基づいてその発症が予測されるものであってもよい。
【0021】
"MID1"との用語は,微小管結合PP2Acのα4サブユニットと相互作用する蛋白質を表す。この蛋白質は,Quaderiら(1997)に,アミノ酸配列を含む生物物理学/パラメータが記述されている。
【0022】
"MID2"との用語は,Buchnerら(1999)に,そのアミノ酸配列を含む生物物理学的/パラメータに関して記述されている蛋白質を表す。
【0023】
α4蛋白質は,添付の文献,例えばTrockenbacherら,およびこれらに引用される文献に記載されている。
【0024】
本発明にしたがえば,驚くべきことに,MID1および/またはMID2が微小管と結合しているPP2Acのレベルに制御的な影響を有することが見い出された。MID1/2蛋白質のN末端領域は,本発明にしたがって検出されたように,α4蛋白質と相互作用する。さらに,MID1は,その制御サブユニットα4に結合することにより,PP2Acに向かうユビキチン化機構のターゲティングに関与することが示された。機能的MID1のE3リガーゼ活性の標的特異性は,RINGフィンガー蛋白質ファミリーに共通する5つの別々のドメインの1つであるB−box1ドメインのα4への選択的結合により規定され,これは次にPP2Acへの結合を媒介する。
【0025】
PP2Acはこれまで,中心的細胞レギュレータとして,その細胞内レベルを外部から操作することができなかったため,本発明にしたがうこの知見は特に驚くべきものでありかつ有益である。さらに,MID1またはMID2の投与は,微小管結合PP2Acレベルの特異的ターゲティングを可能とするため,本発明は驚くべきものでありかつ有益である。これまでのところ,細胞内の他の場所におけるPP2A活性の妨害はない。これは,鍵となる細胞レギュレータとしてのPP2Aの全体的活性を妨害することなく,非生理学的レベルの微小管結合PP2Acに伴う疾患を標的とすることができるという効果を有する。
【0026】
ある種の態様においては,異種蛋白質との融合蛋白質の形であってもよい蛋白質またはペプチド部分を,医薬組成物の処方中で用いることができるが,別の態様においては,核酸分子,好ましくはDNA分子を投与のために用いることができる。前記核酸分子をこれを必要とする患者に投与するための種々の方法が存在する。これらの方法には,粒子衝撃(遺伝子銃技術),弾道法,および/またはベクター,例えばウイルスベクターをベヒクルとして用いる方法が含まれる。有利には,前記蛋白質をコードするDNAをベクター,好ましくは発現ベクター中に含ませる。
【0027】
前記ベクターは,例えば,ファージ,プラスミド,ウイルスまたはレトロウイルスベクターでありうる。レトロウイルスベクターは,複製可能であっても複製不可能であってもよい。後者の場合,ウイルス増殖は一般に補足性の宿主/細胞においてのみ生ずるであろう。
【0028】
ポリヌクレオチドまたは遺伝子は,宿主中での増殖のために選択マーカーを含むベクターに連結させることができる。一般に,プラスミドベクターは,沈殿,例えばリン酸カルシウム沈殿または塩化ルビジウム沈殿中で,または荷電脂質を有する複合体中で,または炭素系クラスター,例えばフラーレン中で導入する。ベクターがウイルスである場合には,宿主細胞に適用する前に,適当なパッケージング細胞株を用いてインビトロでパッケージングすることができる。
【0029】
ベクターのより好ましい態様においては,ポリヌクレオチドを発現制御配列に動作可能なように連結させて,原核生物または真核生物細胞またはその単離された画分中で発現しうるようにする。前記ポリヌクレオチドの発現には,ポリヌクレオチドの転写,好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写が含まれる。真核生物細胞,好ましくは,哺乳動物細胞における発現を確実にするための制御要素は当業者によく知られている。これらは通常は,転写の開始を確実にするための制御配列,および任意に転写の終止および転写産物の安定化を確実にするためのポリAシグナルを含む。追加の制御要素としては,転写のおよび翻訳のエンハンサーが含まれる。原核生物の宿主細胞における発現を可能とする制御要素には,例えば,E.coliにおけるlac,trpまたはtacプロモーターが含まれ,真核生物宿主細胞における発現を可能とする制御要素の例は,酵母におけるAOX1またはGAL1プロモーター,または哺乳動物および他の動物細胞におけるCMV−,SV40−,RSV−プロモーター(ラウス肉腫ウイルス),CMV−エンハンサー,SV40−エンハンサー,またはグロビンイントロンである。転写の開始を担う要素に加え,そのような制御要素にはまた,ポリヌクレオチドの下流の転写終止シグナル,例えばSV40ポリA部位またはtkポリA部位が含まれる。この点に関して,適当な発現ベクターとしては,Okayama−Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia),pCDM8,pRc/CMV,pcDNA1,pcDNA3(In−vitrogene),pSPORT1(GIBCO BRL)等が当該技術分野において知られている。好ましくは,前記ベクターは発現ベクターおよび/または遺伝子移転またはターゲティングベクターである。ウイルス,例えばレトロウイルス,ワクチニアウイルス,アデノ随伴ウイルス,ヘルペスウイルス,またはウシパピローマウイルスに由来する発現ベクター等を,ポリヌクレオチドまたはベクターを標的細胞集団にデリバリーするために用いることができる。当業者によく知られる方法を用いて,組換えウイルスベクターを構築することができる。例えば,Sambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)N.Y.およびAusubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)に記載される手法を参照。あるいは,標的細胞へのデリバリーのために,本発明のポリヌクレオチドおよびベクターをリポソーム中に再構築することができる。
【0030】
本発明はさらに,非生理学的に減少した細胞内レベルの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2A(PP2Ac)の触媒サブユニットと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患を予防または治療する方法に関する。該方法は,前記疾患に罹患しているかまたは前記疾患を発症する危険のある被験者に,薬学的有効量のMID1またはMID2のペプチド性フラグメントであって,MID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメント,または,α4に結合するが固有のホスファターゼ活性を有しない有効量のPP2Acのフラグメント,または,PP2Acに対する結合部位を含むα4のペプチド性フラグメント(好ましくは,アミノ酸111−202)またはアミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメント,または,前記ペプチドフラグメントをコードする有効量の核酸分子,または,MID1/MID2とα4との相互作用を妨害するか,またはα4とPP2Acとの間の相互作用を妨害する有効量の分子,または,これらの相互作用の制御を妨害する有効量の分子,例えばラパマイシンを投与することを含む。
【0031】
"非生理学的に減少した細胞内レベル"との用語は,レベルが,言及される疾患に罹患していない被験者の細胞に見出される正常なレベルと比較して減少していることを表す。PP2Acのレベルは,標的蛋白質のリン酸化のレベルを評価することにより慣用的に測定することができる。ただし,ある種の疾患に伴って非生理学的レベルが生ずることは確立されているかまたは少なくとも推測されているため,多くの場合にはPP2Acレベルの直接の測定は必要ではない。非生理学的に減少したレベルは,同じタイプの同じ発達段階の細胞における蛋白質の正常な生理学的レベルと比較して,少なくとも20%,好ましくは少なくとも30%,より好ましくは少なくとも50%,さらにより好ましくは少なくとも80%,最も好ましくは90,95,98,99または100%減少しており,ここで,測定は両方の細胞について本質的に同じ条件下で行う。
【0032】
"ペプチド性フラグメント"(または"ペプチドフラグメント")との用語は,全長蛋白質の対応する部分と同じまたは実質的に同じアミノ酸配列を有する,完全な蛋白質のフラグメントを表す。ペプチド性フラグメントは種々の長さのものでありうるが,最小の長さは好ましくは上述した長さであり,好ましくは上述した長さおよびアミノ酸組成を有する。本発明はまた,変更された一次アミノ酸配列を有するが,本発明に必要な機能を保持しているかまたは本質的に保持している,これらのペプチドフラグメントの変種を含む。改変は,DNAレベルで,例えば部位特異的変異誘発を行い,続いて変異した配列を発現させることにより行うことができる。次に,発現した配列の結合を,例えば,下記の実施例に記載される方法論を用いて確認することができる。
【0033】
上述の態様および本明細書に記載されるさらに別の態様の全体の変形として,疾患はまた,PP2Acのレベルの低下ではなく,PP2Acの活性の低下と関連するかまたはこれにより引き起こされるものであってもよい。本発明の種々の方法,組成物および用途は,必要な変更を加えて,前記減少した活性と関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患に適用される。
【0034】
本発明のこの態様は,医学療法において広範な用途を有すると予測される。すなわち,本発明にしたがえば,それぞれの結合パートナーとの相互作用,すなわちMID1−α4,MID2−α4,およびα4−PP2Acの相互作用を可能とする,MID1,MID2およびα4,ならびにPP2Acのフラグメントを同定することができる。驚くべきことに,上述のペプチド性フラグメントは,対応する全蛋白質の投与と逆の効果を有することを示すことができた。したがって,MID1/MID2,α4またはPP2Acの上述のいずれかのフラグメントの投与は,細胞内部における微小管結合PP2Acレベルの増強につながると予測される。したがって,本発明のこの態様は,減少したPP2Acレベルにより引き起こされるかまたはこれと関連する疾患の予防または治療に適している。本発明のこの驚くべき観点はまた,MID1/MID2がPP2Acをαサブユニットを介してユビキチン関連分解経路に入るようにするという知見にも基づくことに注目すべきである。
【0035】
あるいは,MID1とα4またはα4とPP2Acとの間の相互作用は,これらの2つの細胞成分の相互作用を妨害する分子により妨げるかまたは破壊することができる。また,MID1および/またはα4の発現または活性を妨害する有効量の分子,例えば,RNAiまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドヌクレオチドを,本発明の方法にしたがって,前記被験者に投与することができる。これらの種々の投与モードはすべて,微小管結合PP2Acの細胞内レベルに対するMID1/MID2の制御的役割に影響を及ぼすため,同じ結果,すなわち,細胞内微小管結合PP2Acレベルの増加をもたらすであろう。
【0036】
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが,現在のところ,全蛋白質および上述の(その蛋白質の)ペプチド性フラグメントの投与により得られる逆の効果は,ペプチド性フラグメントが,全蛋白質構造中に含まれ,PP2Acのユビキチン関連分解を担う構造的成分(MID1/2の場合には環構造)の完全な構成を含まないためであると仮定される。その結果,上述のペプチド性フラグメントは,完全な対応する全長蛋白質とその結合パートナーについて競合し,前記全長蛋白質に勝つ。これらのペプチド性フラグメント中ではユビキチン関連分解経路に入る正常なターゲティングを担う必須の蛋白質構造が欠失しているため,微小管結合PP2Acは細胞内で蓄積される。最も重要なことには,かつ本発明の第1の態様にしたがえば,細胞内の他の場所のPP2Aレベルは,上述の化合物の投与により影響を受けない。さらにこのことにより,細胞内におけるPP2Aの全体的活性を妨害することなく,減少したレベルの微小管結合PP2Acにより引き起こされるかまたはこれに関連する疾患を標的とする治療が可能となる。
【0037】
上述の態様の変形においては,α4に対する結合部位を含むPP4CまたはPP6Cのフラグメントを投与してもよい。これらのPP2Ac関連ホスファターゼの結合部位は著しく異なりうるため,これはPP2AcまたはPP4CまたはPP6C分解のいずれかを特異的に妨害することを可能とし,これらのホスファターゼは異なる細胞機能を有するため,このことはより特異的な効果につながりうる。
【0038】
本発明の方法の好ましい態様においては,前記疾患はオピッツ病である(増加したレベル)。
【0039】
本発明の方法の別の好ましい態様においては,前記疾患は神経変性性疾患または骨粗鬆症である(減少したレベル)。
【0040】
"神経変性性疾患"との用語は,異常なアポトーシスまたはパーキンソン病におけるような毒性の事象によるニューロンの変性を伴う疾患を表す。
【0041】
本発明の方法の特に好ましい態様においては,前記疾患はアルツハイマー病またはタウロパシーである。
【0042】
"タウロパシー"との用語は,主として遺伝的に変化した形のタウ蛋白質または変化したレベルのタウ蛋白質を伴う(ただしこれらに限定されない)疾患を表す。
【0043】
本発明の方法の別の好ましい態様においては,前記疾患は転移を含む癌である。PP2Acは腫瘍サプレッサーの候補であり,多くの発癌経路および細胞運動性の強力な拮抗剤であるため,この酵素のレベルまたは活性の上昇は,一般に腫瘍疾患に予防的にまたは治療的に適用しうる可能性がある。
【0044】
この点に関して,PP2Ac/MID1複合体が,ソニックヘッジホッグシグナリング経路,すなわち最も重要な発癌性経路の1つであると仮定されている経路(Wicking and McGlinn,2001)の制御に関与することを実験的に示すことができた。
【0045】
shh/Gli3経路を介するオンコジンGli1の過剰発現につながるshh/Gliシグナリングの過剰活性は,従来技術において,基底細胞癌および多様な脳腫瘍の発達の原因であることが示されている(Ruizi Altaba,2002)。さらに,前立腺癌腫および黒色腫の進行における重要な役割を有することが示されている(Mullor et al.,2002)。オピッツBBB/G症候群とグレーグ脳症の患者を比較すると,いずれの症候群も隔離症および広い鼻梁により特徴づけられるため,これらの2つの患者群の脳顔面頭蓋の類似性は印象的である。ソニックヘッジホッグ経路の中心的シグナリング分子であるGli3遺伝子における変異は,グレーグ脳障害を有する患者における遺伝的障害の基礎をなす。さらにGli3蛋白質のショウジョウバエのホモログであるcubitus interruptusは微小管結合蛋白質である。前記蛋白質の亜細胞局在化および転写活性は,多様な工程のセリン/トレオニンリン酸化を介して制御されている。これらの知見から出発して,MID1/PP2A複合体がGli3機能に,したがってソニックヘッジホッグ経路に及ぼす制御的影響についての仮説を立てた。
【0046】
微小管結合PP2A(中心的セリン/トレオニンホスファターゼ)の活性は,PP2AとMID1との相互作用を妨害する種々の分子(例えば,ラパマイシン,MID1とα4との相互作用ドメインに由来する小ペプチド,RNAiおよびアンチセンス分子等,下記も参照)により影響されうる。さらに,免疫蛍光実験において,Gli3転写因子の細胞内局在化がこれらの分子により影響されうることを示すことができた。
【0047】
α4結合を担うMID1ドメインに由来するペプチドであるB−Box1の過剰発現,ならびにGFPタグ付きGli3を過剰発現するHeLa細胞のラパマイシン処理およびRNAiによるα4のダウンレギュレーションにより,サイトゾルにおける活性型のGli3の顕著な停留が生じたことを示すことができた。GFP−Gli3およびB−Boxを過剰発現する細胞をPP2A特異的阻害剤であるフォストリエシンで処理すると,観察された効果が逆転し,Gli3の局在化がPP2A活性に依存することが確認された。
【0048】
さらに,一方では,α4の過剰発現によりGFP−Gli3が核に有意に放出されることが示された。
【0049】
Gli3転写因子の最も重要な標的の1つはパッチド遺伝子である。HeLa細胞を別の分子で処理した後のGli3活性について分析するために,B−Box1およびα4蛋白質を過剰発現する細胞の半定量的RT−PCRを行った。HeLa細胞を,Gli3,Gli1(これはGli3転写因子の別の標的である)およびパッチドの発現について試験した。予測されたように,B−Box1の発現によりパッチドのメッセージが有意に減少し,一方α4の過剰発現によりパッチドのメッセージが増加した。
【0050】
したがって,MID1/PP2A相互作用を妨害し,PP2Acの蓄積をもたらす分子がソニックヘッジホッグ経路のネガティブエフェクターであることを示すことができた。したがって,この知見は,この中心的発癌経路を妨害する抗発癌剤の開発の有望な標的を提供する。
【0051】
MID1/PP2A複合体の特異的妨害が推定的な抗発癌性効果を示すことを調べるために,HeLa細胞を特異的抗α4RNAi分子でトランスフェクトした。曝露時間に依存して,抗α4RNAi分子を含む細胞において,疑似トランスフェクト細胞および非特異的RNAi分子で処理した細胞と比較して,これらの通常は急速に成長する腫瘍細胞の増殖の劇的な減少が検出された。BrdU標識および続くFACS分析により,細胞数の減少はアポトーシスの増加ではなくG1期停止によるものであることが明らかとなった。
【0052】
これに対し,MID1蛋白質のダウンレギュレーション,例えばRNAiによるダウンレギュレーションにより,アポトーシスの顕著な誘導が生じた。
【0053】
すなわち,MID1/PP2A複合体を妨害することにより,少なくとも2つの異なる抗発癌性メカニズム(細胞の停止およびアポトーシス)を誘導することができる。
【0054】
したがって,MlD1/PP2Ac複合体の機能を妨害する分子によりPP2Acの蓄積(下記も参照)を薬理学的に誘導することは,新規な強力な抗癌剤の開発の有力な経路である。
【0055】
この点に関して,ヘッジホッグシグナリング経路に関与し,Gli3の核移行を誘発しうるキナーゼ様蛋白質であるhFusedが,MID1/PP2A複合体の標的であることを示すこともできた。MID1/α4/PP2A複合体を介する微小管結合PP2Aの活性の操作により,hFusedのリン酸化状態に影響を及ぼしうることを明らかに示すことができた。
【0056】
本発明の方法の別の好ましい態様においては,前記疾患は炎症性疾患である。炎症性疾患には,急性炎症性状態,例えば,敗血症および急性肺障害が含まれる。
【0057】
本発明はまた,前記蛋白質または前記ペプチドフラグメントが,インビボで蛋白質を細胞内に直接導入することを可能とするTATまたは機能的に類似するペプチド性フラグメントに融合されている,本発明の方法に関する(Schwarze et al.,2000)。
【0058】
TATは,HIV1−TAT蛋白質のペプチド性フラグメントである。このペプチドを別の蛋白質と融合させると,これはこの蛋白質を生きた細胞に効率的に直接伝達することを誘発することができ,したがって,本発明にしたがって投与される特に有益な活性成分である。
【0059】
本発明の方法のさらに別の好ましい態様においては,MID1および/またはα4の発現を妨害する分子はRNAiである。
【0060】
RNAiは,例えば,WO01/75164またはWO99/32619に記載されている干渉RNA分子である。本発明にしたがって用いられるRNAi分子は,好ましくは,標的遺伝子の約19−23,より好ましくは約21−23個の連続するヌクレオチドと相同の領域を有する。ヌクレオチドは,この相同の領域中で,標的遺伝子の対応する領域と同一であるか,または本質的に同一である。RNAi分子の投与は,当該技術分野において記述されている。例えば,先に引用した参考文献を参照。
【0061】
本発明の方法の別の好ましい態様においては,MID1とα4の相互作用を妨害する前記分子は小分子である。
【0062】
小分子は,無機小分子であっても有機小分子であってもよい。小分子のライブラリは市販されている。
【0063】
好ましい態様においては,小分子はラパマイシンである。
【0064】
α4とPP2Acとの相互作用は,キナーゼmTORにより制御されているようである。活性なmTORシグナリングは,α4とPP2Acとの間の相互作用を促進し,ラパマイシンによりmTORを阻害すると,α4がPP2Acから解離し,PP2Ac活性が増加する(Peterson et al.,1999)。α4−PP2Ac相互作用がPP2Acの分解に重要であるという本発明の知見にしたがえば,観察されたPP2Ac活性の増加は,ユビキチン依存性分解の傷害によるPP2Acのレベルの増加により引き起こされたものであるかもしれない。すなわち,ラパマイシンまたはその密接な類似体は,PP2Acの分解経路を妨害する候補分子であり,これは親油性分子であるため血液脳関門を容易に通過し,ほとんど全身的毒性を示さないため,これはアルツハイマー病において治療的に用いて,タウの脱リン酸化を増強しうるかもしれない。興味深いことに,ラパマイシンの既知の効果のいくつか(抗増殖,抗運動)は,PP2Ac分解を妨害する化合物のプロファイルによく適合する。
【0065】
本発明の方法の別の好ましい態様においては,前記疾患は,アポトーシスと関連するかまたはこれにより引き起こされる。これらの疾患には,特に,特定の細胞のアポトーシスの増強が関与する発達性疾患等の疾患のみならず,円錐角膜,網膜変性,変性性関節炎,中毒,ハンチントン病およびパーキンソン病等の変性性疾患が含まれる。
【0066】
本発明はさらに,MID1またはMID2の群より選択される蛋白質または前記蛋白質をコードする核酸を含む組成物に関する。
【0067】
本発明の組成物は,1またはそれ以上の容器の中に上述の成分を単独でまたは組み合わせで含む。蛋白質性物質は,凍結乾燥形であってもよく,水性の,好ましくは緩衝化溶液中に含まれていてもよい。適当な緩衝液としては生理学的食塩水が挙げられる。いずれの場合も,本発明の組成物の成分を無菌的環境中で維持することが好ましい。核酸分子はまた,凍結乾燥して,または水性の,好ましくは,緩衝化溶液中の組成物中で維持してもよい。
【0068】
本発明はまた,MID1またはMID2のペプチド性フラグメントであって,MID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメント,または,α4に結合するが固有のホスファターゼ活性を有しない有効量のPP2Acのフラグメント,または,PP2Acへ結合部位のを含むα4のペプチド性フラグメント(好ましくは,アミノ酸111−202),または,アミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメント,または,前記ペプチドフラグメントをコードする有効量の核酸分子,または,MID1/MID2とα4との相互作用を妨害するか,またはα4とPP2Acとの間の相互作用を妨害する有効量の分子,または,これらの相互作用の制御を妨害する有効量の分子,好ましくは,ラパマイシン,または,MID1,MID2および/またはα4の発現または活性を妨害する有効量の分子を含む組成物に関する。
【0069】
本発明の方法の好ましい態様においては,前記組成物は医薬組成物である。
【0070】
医薬組成物と任意のさらに別の成分との特定の処方に関しては,上述の記述を参照のこと。
【0071】
さらに,本発明は,MID1とα4と,またはα4とPP2ac(またはPP4C/PP6C)とのいずれかの間の相互作用を妨害する分子を同定する方法に関する。該方法は,
(a)候補分子の存在下で,適当な条件下で,MID1またはMID2またはMID1もしくはMID2のペプチド性フラグメントであって,MID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメントを,α4または好ましくはアミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメントと接触させ,または,α4または好ましくはアミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメントを,PP2AcまたはPP4CまたはPP6C,またはPP2AcもしくはPP4CもしくはPP6cのペプチド性フラグメントと接触させ;そして
(b)前記候補分子が前記相互作用を妨害するか否かを評価する,
ことを含む。
【0072】
"適当な条件"との用語は,種々の分子の相互作用を可能とする条件を表す。そのような条件の一例は,生理学的条件,例えば,50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.0)および150mMの塩化ナトリウム,または同様のイオン強度およびpHの溶液である。さらに,適当な条件とは,ペプチドまたは化合物のいずれかが固相に結合することができる可能性を表す。工程(b)の評価は,任意の適当な出力システムを用いて行うことができる。例えば,酵母においてツーハイブリッドシステムを用いて蛋白質−蛋白質相互作用を分析することが可能である。この場合の出力は,通常はそれぞれの相互作用蛋白質を含む酵母細胞の成長である。同様に,2つの所与の(通常は相互作用する)蛋白質がもはや相互作用しない場合に成長することを出力として有するツーハイブリッドシステムが存在する。すなわち,これらの酵母細胞を種々の化合物とともにインキュベーションすることにより,この化合物の存在下における酵母細胞の成長により,所与の相互作用を妨害する化合物を同定することが可能である(Vidal and Endoh,1999)。別の可能性は,ペプチドが化合物と相互作用したときにそのレーザービーム反射が変化することを出力として用いるウルトラハイスループットスクリーニングにより,例えばMID1のペプチド性フラグメント108−165(好ましくは,110−165)と相互作用する化合物をスクリーニングすることである。次に,そのような化合物を,MID1とα4との相互作用を妨害するか否かについて試験することができる。
【0073】
本発明の方法にしたがって同定された分子は,医薬組成物として処方し,上述したようにして用いることができる。あるいは,これらの分子は,上述した疾患を治療するのに有用な薬剤を開発するためのリード化合物として働くことができる。そのような下流の開発を行う適当な方法もまた本発明に含まれ,以下に説明される。
【0074】
すなわち,本発明はさらに,上述の方法により同定された化合物を洗練する方法に関し,この方法は,前記方法の各工程,および
(1)部位特異的変異誘発またはキメラ蛋白質実験により化合物とDNAまたはmRNA分子の結合部位を同定し;
(2)化合物の結合部位およびDNAまたはmRNA分子の結合部位の両方の分子モデリングを行い;そして
(3)化合物を改変してDNAまたはmRNAに対するその結合特異性を改良する,
ことを含む。
【0075】
本発明の方法の種々の工程において用いられるすべての手法は,慣用的なものであるか,または当業者が慣用の手法からさらなる苦心を要することなく導くことができる。すなわち,本発明において同定された性質の蛋白質/(ポリ)ペプチドに基づく生物学的アッセイを用いて,薬剤の特異性または効力を評価することができ,ここでは,蛋白質/(ポリ)ペプチドの1またはそれ以上の活性の増加を用いて前記特異性または効力をモニターすることができる。工程(1)および(2)は,慣用のプロトコルにしたがって実施することができる。部位特異的変異誘発のプロトコルは,Ling M M,Robinson B H.(1997)Anal.Biochem.254:157−178に記載されている。構造−機能相関の分析のためにホモロジーモデリングを部位特異的変異誘発と組み合わせて使用することは,Szklarz and Halpert(1997)Life Sci.61:2507−2520に概説されている。キメラ蛋白質は,Sambrook(1989)(上記引用文中)に記載される慣用のクローニング手法を用いて,ユニーク制限部位を介して対応するDNAフラグメントをライゲーションさせることにより生成する。2つのDNAフラグメントを融合させてキメラ蛋白質をコードするキメラDNAフラグメントを生成することはまた,ゲートウエー−システム(Life technologies),すなわち組換えによるDNA融合に基づくシステムを用いて行うことができる。分子モデリングの顕著な例は,HIVリバーストランスクリプターゼに結合する化合物の構造に基づく設計であり,これはMao,Sudbeck,Venkatachalam and Uckun(2000).Biochem.Pharmacol.60:1251−1265に概説されている。
【0076】
例えば,部位特異的変異誘発およびキメラ蛋白質実験による前記薬剤の結合部位の同定は,(ポリ)ペプチドの一次配列中で薬剤親和性に影響を及ぼす改変を行うことにより,実施することができる。このことにより,通常は薬剤の結合ポケットを詳細にマッピングすることができる。
【0077】
工程(2)に関しては,以下のプロトコルが考えられる:いったん,薬剤のためのエフェクター部位がマッピングされれば,変異誘発実験(工程(1))から得られた情報と,薬剤の詳細な三次元構造が既知の場合には結合部位の構造のコンピュータシミュレーションとを組み合わせることにより(そうでない場合には,コンピュータシミュレーションにより推定することができる),薬剤の種々の部位と相互作用する詳細な残基を同定することができる。前記薬剤がそれ自体ペプチドである場合,これを変異させて,いずれの残基が目的とする(ポリ)ペプチド中の他の残基と相互作用するかを判定することもできる。
【0078】
最後に,工程(3)においては,薬剤を修飾して,その結合親和性またはその効力および特異性を改善することができる。例えば,目的とする(ポリ)ペプチドの特定の残基と薬剤分子のある領域との間に静電的相互作用がある場合,その領域の全体的電荷を改変してその特定の相互作用を増加させることができる。
【0079】
結合部位の同定は,コンピュータプログラムの支援により行うことができる。すなわち,適当なコンピュータプログラムを用いて,相補的な構造モチーフについてのコンピュータ支援検索により,推定阻害剤と(ポリ)ペプチドとの相互作用部位を同定することができる(Fassina,Immunomethods 5(1994),114−120)。蛋白質およびペプチドのコンピュータ支援設計のためのさらに別の適当なコンピュータシステムは,先行技術文献,例えば,Berry,Biochem.Soc.Trans.22(1994),1033−1036;Wodak,Ann.N.Y.Acad.Sci.501(1987),1−13;Pabo,Biochemistry 25(1986),5987−5991に記載されている。薬剤の修飾は,例えばペプチド模倣体により行うことができ,また他の阻害剤も,一連の化学的修飾によりペプチド模倣体コンビナトリアルライブラリを合成し,得られた化合物を試験することにより同定することができる。ペプチド模倣体コンビナトリアルライブラリの生成および使用の方法は,先行技術文献,例えば,Ostresh,Methods in Enzymology 267(1996),220−234およびDorner,Bioorg.Med.Chem.4(1996),709−715に記載されている。さらに,本発明の(ポリ)ペプチドの発現のアクチベータの三次元および/または結晶構造を,例えば,本発明の(ポリ)ペプチドと組み合わせて,ペプチド模倣体アクチベータの設計に用いることができる(Rose,Biochemistry 35(1996),12933−12944;Rutenber,Bioorg.Med.Chem.4(1996),1545−1558)。
【0080】
上述にしたがえば,本発明の方法の好ましい態様においては,前記化合物はペプチド模倣体によりさらに洗練される。
【0081】
本発明はさらに,本明細書に記載される方法により同定または洗練された化合物を改変して以下を達成する方法に関し,該方法は,リード化合物として上述した方法の工程を任意に含んでいてもよい:(i)作用部位,活性スペクトル,臓器特異性の変更,および/または(ii)効力の改善,および/または(iii)毒性の低下(治療指数の改善),および/または(iv)副作用の低下,および/または(v)治療作用の開始,効果の持続の変更,および/または(vi)薬物動力学的パラメータ(再吸収,分布,代謝および排出)の改変,および/または(vii)物理化学的パラメータ(溶解性,吸湿性,色,味,臭い,安定性,状態)の改変,および/または(viii)一般的特異性,臓器/組織特異性の改善,および/または(ix)適用および経路の最適化。これは以下の方法により行う:(i)カルボキシル基のエステル化,または(ii)カルボン酸によるヒドロキシル基のエステル化,または(iii)ヒドロキシル基のエステル化による,例えば,リン酸,ピロホスフェートまたは硫酸またはヘミスクシネートの形成,または(iv)薬学的に許容しうる塩の形成,または(v)薬学的に許容しうる複合体の形成,または(vi)薬学的に活性なポリマーの合成,または(vii)親水性成分の導入,または(viii)芳香族または側鎖の置換基の導入/交換,置換基パターンの変更,または(ix)等比体積のまたは生物学的等比体積の成分の導入による改変,または(x)類似化合物の合成,または(xi)分枝鎖側鎖の導入,または(xii)アルキル置換基の環状類似体への変換,または(xiii)ヒドロキシル基のケタール,アセタールへの誘導,または(xiv)アミド,フェニルカルバメートへのN−アセチル化,または(xv)マンニッヒ塩基,イミンの合成,または(xvi)ケトンまたはアルデヒドの,シッフ塩基,オキシム,アセタール,ケタール,エノールエステル,オキサゾリジン,チオゾリジンまたはこれらの組み合わせへの変換。前記方法は任意に上述の方法の工程をさらに含む。上述した種々の工程は当該技術分野において一般に知られている。これらには,定量的構造−作用相関(QSAR)分析(Kubinyi,"Hausch−Analysis and Related Approaches",VCH Verlag,Weinheim,1992),コンビナトリアル生化学,伝統的化学および他のもの(例えば,Holzgrabe and Bechtold,Deutsche Apotheker Zeitung140(8),813−823,2000を参照)が含まれるかまたはそれに依存する。
【0082】
本発明はまた,組成物,好ましくは医薬組成物の製造に関し,妨害分子を同定するか,または同定された分子を洗練させるかまたは修飾するための上述の方法の工程,および,得られた分子を薬学的に許容しうる担体または希釈剤とともに処方する工程を含む。
【0083】
(医薬)組成物の製造は,とりわけ,上に提供される教示にしたがって,標準的なプロトコルにしたがって行うことができる。
【0084】
最後に,本発明は,MID1またはMID2とα4との相互作用,またはα4とPP2Acとの相互作用を妨害する上述の蛋白質またはペプチド性フラグメント,そのペプチド模倣体,または分子,またはMID1および/またはα4の発現または活性を妨害する分子,またはそれらの修飾されたまたは洗練された誘導体のいずれかを,上述の疾患の治療用の医薬組成物を製造するために用いることに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
図面
図1:MID1とポリユビキチン化蛋白質との結合
a),プロテオソーム阻害剤LLnLの存在下(レーン2,4および6)または非存在下(レーン1,3および5)において,V5タグ付きMID1(レーン5および6),V5タグ付き蛋白質キナーゼC(PKC)(レーン1および2)または空ベクター(レーン3および4)でトランスフェクトした細胞からのCOS7細胞抽出物を抗V5で沈殿させ,SDS−PAGEで分離し,示される抗体で免疫ブロッティングした。アスタリスクはIgG重鎖を示す。
b),ラクタシスチンの存在下(レーン2および4)または非存在下(レーン1および3)において,mycタグ付きMID1(レーン3および4)または空ベクター(レーン1,2)を過剰発現する細胞からのCOS7抽出物を,抗mycで沈殿させ,抗ユビキチン(上パネル),次に抗myc(下パネル)を用いるウエスタンブロットにより分析した。先に議論されているように(20),抗mycおよび抗V5は,いずれもC末端にタグ付けされたMID1を示す異なるサイズの2つの特異的バンドを検出する。アスタリスクはIgG重鎖を示す。
【0086】
図2a),MID1をおとりとして用いた酵母ツーハイブリッドスクリーニングにおいて見出された胎児脳ライブラリ中のポジティブクローン。β−Galレポーター遺伝子活性により定量した相互作用の強度は,3回の独立した実験の平均および標準偏差により右に示される。比較のために全長α4が示されている。’PP2Ac−bs’は報告されているα4上のPP2Ac結合部位を表す。すべてのポジティブクローンに残基172−290が存在する。
b),欠失変異体をおとりとして用いるMID1上のα4の結合部位のマッピング。略号:RF,RINGフィンガー;BB1,B−box1;BB2,B−box2;FNIII,フィブロネクチンタイプIIIドメイン;B30.2,保存C末端ドメイン。
c),α4とMID1およびMID2とのツーハイブリッドの組み合わせでは選択的成長が見られ,3つの他のRINGフィンガー蛋白質との組み合わせでは成長が見られないことを示す酵母his-leu-trp-プレート。p53/SV−40T抗原は,組み合わせた2つの融合蛋白質の間の強い相互作用の陽性対照として働く。
【0087】
図3:COS7細胞におけるMID1−α4相互作用。
a),過剰発現したmycタグ付きα4(myc/α4)の細胞質分布。抗mycを用いる免疫蛍光により検出した。
b,c),mycタグ付きα4と野生型GFP−MID1(b)または変異体GFP−MID1(c)との共発現。抗myc(左列,赤色パターン),GFP(中列,緑色パターン)または両方(右列,黄色パターン)の免疫蛍光検出。
d),myc−MID1(レーン1),myc−MID1およびV5−α4(レーン2),myc−MID1およびV5−MID1(レーン3)またはMID1(ex1)のmycタグ付きRBドメインおよびV5−α4(α4/V5,レーン4)でトランスフェクトしたCOS7抽出物におけるV5タグ付きα4(α4/V5)の免疫沈殿(IP)。沈殿物を7.5%ポリアクリルアミドゲルで分離し,抗myc(上パネル)で,次に抗V5(下パネル)でブロットした。
e),MID1(ex1)のmycタグ付きRBドメインおよびV5−α4(α4/V5,レーン1),MID1のmycタグ付きB−box1およびV5−α4(α4/V5,レーン2),空pBudベクター(レーン3),myc−MID1およびV5−α4(α4/V5,レーン4),またはmycタグ付きMID1単独(レーン5)でトランスフェクトしたCOS7抽出物におけるmycタグ付きMID1の免疫沈殿。沈殿をPAGEにより分離し,ブロットし,抗α4(抗α4,上パネル)および次に抗myc(下パネル)でプローブした。アスタリスクはIgG重鎖および軽鎖を表す。
f),抗体特異性対照:内因性α4を含む細胞溶解物を,α4(f,レーン1)の最初の40アミノ酸を検出するポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティングにより分析した。シグナルは,抗原性ペプチドを添加することにより抑制される(f,レーン2)。アスタリスクは,内因性α4の変異型蛋白質の特異的検出を示す。
【0088】
図4:胚性線維芽細胞におけるユビキチン媒介性蛋白質溶解によるPP2Aの制御。
a),プロテオソーム阻害剤LLnLの存在下(レーン2および4)または非存在下(レーン1および3)における,V5タグ付きMID1を発現する293細胞(レーン1,2),ならびに対照細胞(レーン3,4)における,PP2AのCサブユニットに対する抗体を用いるPP2Aの検出。各レーンには52μgの蛋白質が負荷された。蛋白質負荷量が同等であることを確認するための対照として,同じブロット上のアクチンの検出(下パネル)を用いた。
【0089】
b),胚性線維芽細胞株18/98を増加する量のLLnL(上部に示される)に曝露した後に溶解した。PP2Aの触媒サブユニットを検出する抗体を用いてウエスタンブロッティングを行った(中パネル)。同じブロットを延長して曝露すると(上パネル),ポリユビキチン化されたPP2Ac種が認められた。蛋白質負荷量が同等であることを確認するためにアクチン検出(下パネル)を用いた(50μg/レーン)。下の棒はPP2Ac対アクチンの密度比を示す。
【0090】
c),OSを有する年齢のマッチした胎児に由来する胚性線維芽細胞株からの細胞を用いて(b)と同じ実験を行った。
【0091】
d),(b)において用いた胚性線維芽細胞株18/98を,変異体MID1(del4)または空pMACSKk.IIベクター(模擬)でトランスフェクトした。ポジティブにトランスフェクトした細胞を,コトランスフェクトしたH−2Kkを用いるMACSソーティングにより濃縮した。トランスフェクトし,LLnLで処理していない(左)または処理した(右)細胞を,抗PP2Acを用いてウエスタンブロッティングにより分析した(中パネル)。H−2Kk(上パネル)のウエスタンブロット検出は,トランスフェクションおよび細胞ソーティングの成功を示す。アクチン検出(下パネル)を用いて蛋白質負荷量(10μg/レーン)が同等であることを確認した。
【0092】
e),(c)で用いたものと同じOS由来細胞株を用いて,野生型MID1または空PMACSKk.IIベクター(模擬)でトランスフェクトして(d)と同じ実験を行った。
【0093】
f),LLnLで処理した(右)または処理していない(左),対照胚性線維芽細胞(a,bおよびdにおけるものと同じ)およびOS由来胚性線維芽細胞(cおよびeにおけるものと同じ)の溶解物からの,モノクローナル抗ユビキチンを用いるユビキチンの免疫沈殿
抗PP2Ac(上パネル)および次に抗ユビキチン(下パネル)を用いて沈殿物をウエスタンブロッティングにより分析して,免疫沈殿が成功したことを確認した。
【0094】
図5:MID1発現に対するPP2Ac量の依存。
a),OS由来胚性線維芽細胞(17/98;左)または年齢のマッチした対照細胞株(18/98;右)から一連の遠心分離(方法を参照)により調製した亜細胞画分の抗PP2Acを用いるウエスタンブロット分析。ペレットP1は核コンパートメントが濃縮されており,一方,ペレットP2は主として膜結合画分を表し,P3は不溶性細胞成分を含み,S3はサイトゾル画分である。抗アクチンブロッティング(下パネル)を用いてレーン間の蛋白質量を標準化した。棒グラフはPP2Ac/アクチン密度シグナルの比を示す。アスタリスクで示されるバンドは抗PP2Acの非特異的交叉反応,または,ペレットP1およびP2においては触媒サブユニットのダイマー形成のいずれかを表す。
b),同じ抗PP2Ac(上パネル)を用いる(a)と同じ細胞の精製微小管のウエスタンブロット分析。同様の蛋白質負荷(2μg/レーン)を確認するためにチューブリンの検出(下パネル)を含めた。
c),各画分におけるバンド強度のアクチンに対する比率を,3回の独立した実験の平均およびSDとして計算した。
【0095】
図6:OS由来胚性線維芽細胞におけるサイトゾルおよび微小管結合蛋白質の過少リン酸化。年齢のマッチした3つの対照に由来する細胞株およびOSを有する胎児からの精製微小管(20μg蛋白質/ブロット)の,プールしたリン酸化残基特異的抗体4H4および16B4を用いる2次元ウエスタンブロット(上の3つのパネル)。ブロットをアルカリホスファターゼでプレインキュベーションして,リン酸化残基に対する抗体の特異性を確認した(下パネル)。蛋白質負荷量が同様であることを確認するため,アクチンも検出した(右の拡大図)。
【0096】
図7:PP2AのMID1媒介性ユビキチン依存性制御経路およびOSにおけるその破壊の仮想モデル。微小管およびまだ明確にされていない結合しているリン酸化された(P)蛋白質(MAPx,y)が下に示されている。Pi,無機リン酸;Ub,ユビキチン;RING,RINGフィンガードメイン;BB1,B−box1;AおよびB,微小管結合PP2Aとともに見いだされるPP2Aサブユニット(タイプの都合により一定の縮小率で描かれていない);ユビキチントランスフェラーゼ,ユビキチンコンジュゲート化酵素およびおそらくは他の補助的蛋白質を有する蛋白質複合体。アスタリスクはMID1のC末端における変異を示す。
【0097】
図8:培養U373MG細胞におけるGFP−GLI3の局在化。U373MG細胞を,GFP−GLI3,GFP−GLI3およびmycタグ付きMID1で,およびGFP−GLI3およびmycタグ付きB−BOX1でトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後にGFP−GLI3の局在を調べた。実験1回あたり100個の細胞を計数した。B−BOX1とともに共発現させたとき,GFP−GLI3の核からサイトゾルへの有意な変化が観察された。
【0098】
図9:Tau−1免疫反応性は,出生後交感神経ニューロンにおいて,インビトロでB−BOX1をコードするプラスミドでトランスフェクションした後に有意に増加する(*p<0.0001,アンペアドt検定,トランスフェクトしていないニューロンの平均神経蛍光強度=100%)。不活性な変異型のB−BOX1をコードするプラスミドでトランスフェクトした,EGFPのみを発現するニューロンは,トランスフェクトしていないニューロンと比較して,異なる蛍光レベルを示さない。pan−Tau免疫反応性の強度は調べたすべての群において変化していない。
【0099】
図10:減少したPP2Ac分解が転写因子Gli3の局在化に及ぼす影響。
左上:HeLa細胞におけるGFPタグ付きGli3の発現。棒は細胞の数を示し,それぞれ,核,サイトゾルまたはその両方におけるGFP蛍光の細胞局在化を示す;右上:前と同様に処理した細胞と,siRNA処理のためより少ないα4を発現する細胞におけるGli3局在化の比較;中段左:上段左と同様,ただしα4−siRNAの代わりに優性ネガティブに作用するBbox1の過剰発現によりPP2Acのアップレギュレーションが誘導されている;中段右:中段左と同様に,ただし,高度に特異的なPP2Ac阻害剤であるフォストリエシンの存在下で処理したHeLa細胞;下段:免疫抑制剤ラパマイシンの存在下におけるGli3発現。これは,おそらくはPP2Ac−α4結合を間接的に阻害することにより,PP2Ac活性を誘導することが知られている。
【0100】
図11:RNAiによるα4のダウンレギュレーションがHeLa細胞の増殖に及ぼす影響。Hela細胞を抗α4RNAi分子でトランスフェクトし,成長条件下で24,48および72時間インキュベーションした後に細胞を計数した。対照としては,未処理細胞,対照siRNAで処理した細胞,および模擬トランスフェクト細胞を用いた。
【0101】
図12:HeLa細胞における過剰発現したGFP−タグ付きGli3の局在に及ぼすα4の過剰発現の影響。棒は細胞の数を示し,これはそれぞれ核,サイトゾルまたは両方におけるGFP蛍光の細胞の局在を示す。すべての実験は,Gli3のC末端およびN末端にタグ付けしたGFP,ならびにGli3のC末端およびN末端にタグ付けしたV5抗原を用いて行った。
【0102】
図13:Gli3の局在化の変化がパッチド遺伝子の転写に及ぼす影響。α4(レーン1)またはBbox1(レーン2)または模擬トランスフェクト(レーン3)を過剰発現するHeLa細胞のパッチド特異的半定量的RT−PCR分析。
【0103】
図14:−humanFused−リン酸化(hFused−Phosphorylation):
a),V5タグ付きhFusedを過剰発現する細胞のサイトゾルをフォストリエシンの非存在下(レーン1)および存在下(レーン2)で30℃で4時間インキュベートした。次に,蛋白質をSDS−Pageで分離し,ブロットし,抗V5抗体とともにインキュベートした。フォストリエシンとインキュベーションした後,脱リン酸化されたバンドと比較して,リン酸化されたhFusedバンド(上のバンド)の明らかな濃縮が見られた。
【0104】
b),aに示されるウエスタンブロットのImage−quant定量。対照(フォストリエシンなしでインキュベーション)においては,リン酸化された形およびリン酸化されていない形のhFusedの比率は,フォストリエシン処理サンプルと明らかに異なる。
【0105】
c),リン酸化された形およびリン酸化されていない形のhFusedの比率は,対照(フォストリエシンなしでインキュベーション)におけるものと1.8倍の相違を示したが,フォストリエシン処理の後には18倍の相違が測定された。
【0106】
図15:−hFused−リン酸化。
a),hFusedのみ(con)およびhFusedとB−Box1(+B−Box1)とを一緒に発現する細胞の細胞溶解物をSDS−Pageで分離し,ブロットし,抗V5−抗体とともにインキュベートした。細胞溶解直後にすべてのキナーゼおよびホスファターゼを停止させるために,SDSおよび尿素を含有する緩衝液中で細胞を溶解した。ウエスタンブロットにおいては,hFusedとB−Box1とを共発現する細胞において,対照(hFusedのみを発現)と比較して,脱リン酸化した形のhFusedの明らかな濃縮を検出することができる。
【0107】
b),aに示されるウエスタンブロットのImage−quant分析。対照におけるリン酸化された形およびリン酸化されていない形のhFusedの比率は,hFusedとB−Box1とを共発現する細胞において検出された比率と明らかに異なる。
【0108】
c),対照(con−a,hFusedのみを過剰発現する細胞)におけるリン酸化された形およびリン酸化されていない形のhFusedの比率は10.3であり,hFusedとB−Box1とを共発現する細胞におけるリン酸化された形およびリン酸化されていない形のhFusedの比率は3である。
【0109】
図16:−hfused−リン酸化:図15の実験の再現。c:対照(con−a,hFusedのみを発現する細胞)におけるリン酸化された形およびリン酸化されていない形のhFusedの比率は8.3であり,hFusedとB−Box1とを共発現する細胞におけるリン酸化された形およびリン酸化されていない形のhFusedの比率は3である。
【0110】
方法:
酵母ツーハイブリッドスクリーニング
酵母ツーハイブリッドスクリーニングのためには,全長MID1 cDNAをpBTM116ベクター中にクローニングした。次に,これをpGAD10ベクター(Clontech)中のヒト胎児脳cDNAマッチマーカー(Matchmaker)ライブラリとともに酵母L40株にコトランスフェクションした。ヒスチジン,ロイシンおよびトリプトファンを欠失し(his-leu-trp-),3−アミノ−1,2,4,トリアゾールを含む合成培地に形質転換体を播種し,プレートを30℃で5日間インキュベートした。フィルターアッセイ(47)を用いて,ヒスチジン陽性コロニーをβ−ガラクトシダーゼ活性についてアッセイした。β−ガラクトシダーゼ陽性クローンからプラスミドDNAを単離し,これを再びMlD1−pBTM116および対照とともにL40酵母にコトランスフェクションした。MID1−pBTM116との組み合わせにおいてのみ選択プレート上での成長を与えたプラスミド(MID1と相互作用する物質をコードすると想定される)を選択し,配列決定した。
【0111】
酵母液体培養物におけるβ−ガラクトシダーゼの活性
細胞をo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(ONPG)法(47)によりβ−ガラクトシダーゼ活性についてアッセイした。
【0112】
組織培養
胚性線維芽細胞はthe Max−Planck Institute for Cell Biology(Ladenburg,Germany)から入手し,COS7細胞はthe American Type Culture Collection(ATCC)から購入した。OSに罹患した胎児からの胚性線維芽細胞株の樹立は先に記載されている(4)。COS7細胞はLipofectACEを用いてClontechのプロトコルにしたがってトランスフェクトした。発現はトランスフェクションの24−48時間後に最適であった。細胞はIP1緩衝液(150mM NaCl,10mM Tris,1%Nonidet P−40(NP−40),pH7.0)またはRIPA緩衝液(1xPBS,1%NP−40,0.5%デオキシコール酸ナトリウム,0.1%SDS)および阻害剤(Roche)中で溶解し,次に溶解物を一連の遠心分離(17,500g,次に100,000g)により透明にした。Clontech Tet−offシステムを用いて安定に発現する細胞株を樹立した。インテグレーションのコピー数はサザンブロット分析により決定した。胚性線維芽細胞は,Bio−Rad Gene Pulserで200Vおよび12.5μFdでトランスフェクトした。
【0113】
プロテオソーム阻害のためには,胚性線維芽細胞を種々の濃度(10−50μM)のLLnL(Sigma)とともに2時間,または10μMのラクタシスチン(Sigma)とともに5時間インキュベートした。1.6x107個の初代胚性線維芽細胞(OSを有する個人に由来する細胞株から,および年齢のマッチした対照から)の亜細胞画分を,先に記載されたようにして3回の異なる遠心分離工程(1,000g,17,500g,および100,000g)により調製した(47)。蛋白質濃度はブラッドフォードアッセイを用いて決定した。
【0114】
コンストラクト
MID1−V5 cDNAの安定なゲノムインテグレーションのために,MID1 cDNA(オープンリーディングフレーム)をpcDNA4.1−V5−HISベクター(Invitrogen)中にクローニングし,次にこれをV5−HISタグで再増幅した。次に,融合コンストラクトをpTREベクター(Clontech)にクローニングした。単一のベクターから2つの蛋白質を同時に発現させるために,pBudCE4ベクター(Invitrogen)を用いた。MID1 cDNAをHindIIIおよびSalIを用いてPCMVプロモーターのマルチクローニング部位にクローニングし,MID1,α4およびPKCcDNAをNotIおよびBglIを用いてPEF-1αプロモーターのマルチクローニング部位にライゲーションした。GFP−MID1は先に記載されるようにして発現させた(4)。C末端にpCMV−Tag3ベクター(Stratagene)からのmycペプチドをタグ付けしたα4蛋白質を発現させた。MACSについては,EcoRIおよびSalIを用いてMID1をpMACSKk.IIベクター中にクローニングした。
【0115】
細胞ソーティング
pMACSKk.IIでトランスフェクトした2x107個の胚性線維芽細胞から出発して,MidiMACS分離ユニットおよびMACSelect Kkマイクロビーズを用いて製造元の指針にしたがって細胞ソーティングを行った。
【0116】
免疫沈殿,ウエスタンブロッティングおよび免疫蛍光
COS7細胞については,それぞれのcDNAを有するpBudCE4ベクターでトランスフェクトした8x106個の細胞をIP1緩衝液中で溶解した。溶解物を50μlのプロテインA−アガロース(スラリー)で予備洗浄した後,上清を2μgの抗V5とともに4℃で一晩,次に75μl(スラリー)のプロテインA−アガロースとともに2時間インキュベートした。IP1緩衝液で3回洗浄した後,蛋白質を1xLaemmli緩衝液で95℃で溶出した。MID1−V5発現は,293tet−off細胞株からドキシサイクリンを除去して48時間後に最適であった。次に細胞をIP1緩衝液中で溶解し,2μgの抗V5を用いて免疫沈殿を行った。蛋白質を1xSDS−PAGE緩衝液中で煮沸し,10%および12%SDSゲルで分離し,PVDF膜(Roche)にブロットし,ブロッキングし,製造元の指針にしたがってそれぞれの一次抗体とともにインキュベートした。
【0117】
胚性線維芽細胞については,8x106個の細胞をIP1緩衝液中で溶解した。溶解物を50μlのプロテインG−アガロースで予備洗浄した後,上清を2μgのモノクローナル抗ユビキチンとともに4℃で一晩,次に75μl(スラリー)のプロテインG−アガロースとともに4℃で2時間インキュベートした。溶出および蛋白質分析は上述のようにして行った。密度の定量はPCBコンピュータプログラムを用いて行った。
【0118】
1.5x105個のCOS7細胞をカバースリップ上で成長させ,それぞれのベクターでトランスフェクトし,PEM緩衝液中4%パラホルムアルデヒドで固定した。抗体インキュベーションは標準的な方法にしたがって行った。
【0119】
抗体
ポリクローナル抗PP2AcはCalbiochemから,抗ホスホセリンおよび抗ホスホトレオニンはBiomolから,モノクローナル抗V5はInvitrogenから,モノクローナル抗c−mycはClontechから,抗ユビキチンはSanta Cruz Biotechnologyから,抗アクチンはSigmaから購入した。抗MID1は先に記載されるように(3)可視化した。ブロットを腸アルカリホスファターゼ(200U/ml;Gibco−BRL)とともにプレインキュベートすることにより抗体特異性を試験した。
【0120】
α4に対するポリクローナル抗血清は,2匹のウサギを蛋白質のN末端に由来するペプチドAAEDELQLPRLPELFETGRQLLDEVEVATEPAGSRIVQEKCで免疫することにより調製した。3週間の間隔で4回ブーストした後,免疫の12週間後に高タイターの血清を回収した。Sulfolinkカップリングゲル(Pierce)に結合させた固定化ペプチドのアフィニティークロマトグラフィーにより抗体を精製した。抗体は約40kDの特定のバンドを認識し,これは抗原性ペプチドを加えることにより特異的に抑制された。ウエスタンブロット用にはアフィニティー精製抗体を1:100希釈で用いた。
【0121】
微小管のインビトロでのアセンブリ
微小管アセンブリは先に記載されるようにして行った(4)。簡単には,1.6x107個の胚性線維芽細胞を微小管アセンブリ緩衝液(0.1mM PIPES,pH6.8,1mM MgSO4,2mM EGTA,2mM DTT,0.1mM GTP)中で溶解し,溶解物を超遠心分離(60,000g,4℃,1時間)により透明とした。次に,上清をGTPおよびタキソールとともに37℃で30分間インキュベートし,40,000gで37℃で30分間遠心分離した。ペレットをタキソールを含むアセンブリ緩衝液で1回洗浄し,微小管をタキソールを含まないアセンブリ緩衝液に4℃で再溶解した。
【0122】
二次元ウエスタンブロッティング
二次元電気泳動は,以下のようにして両性電解質法により行った(48)。20mgの尿素(最終濃度9M),1.4μlの1MDTT(最終濃度70mM)および2μlの両性電解質(pH2−4)をIP1緩衝液中に再懸濁した20μlの免疫沈殿蛋白質と混合した。サンプルを5分間脱気した後に負荷した。先の記載(49)に正確にしたがってゲル溶液を調製し,0.9mm幅の2Dチューブ(Bio−Rad)でゲルを重合させた。脱気したサンプルを重合したゲルに直接負荷し,25μlのサンプル保護溶液(49)を重層した。以下の勾配を用いて等電点電気泳動を行った:100Vで45分間,200Vで1時間,400Vで1時間,600Vで1時間,800Vで10分間,1,000Vで5分間。次に,平衡溶液(39)で10分間ゲルを平衡化し,0.98mm厚の10%SDSミニゲル(Bio−Rad)に重層し,アガロース緩衝液(49)中の1%アガロースを重層した。第二次元ゲルは,標準的な方法にしたがって,セミドライブロッター(Bio−Rad)中で15Vで30分間平衡化し,ブロットし,次に上述したようにして抗体インキュベーションを行った。
【0123】
細胞培養
末梢交感神経は出生後1−3日のラットから得た。上頸神経節(SCG)を切除し,0.25%のトリプシンで37℃で20分間処理した。細胞懸濁液を機械的に分離した後,40μmのナイロンメッシュを通して濾過し,前プレーティングの目的で未被覆のFalconディッシュに6SCG/ウエルで播種した。4時間後,ニューロンをポリ−D−リジン/ラミニンで被覆したガラス床ディッシュ(Willco Wells B.V.,gwst 3522,3.8cm2面積/ディッシュ)に移した。ニューロンは,抗生物質,N2添加物(Invitrogen)および100ng/ml神経成長因子(NGF;Sigma)を含むRPMI培地で,5%CO2を含む湿潤雰囲気中で37℃で維持した。
【0124】
ニューロンのトランスフェクション
ニューロンは,バイオリスティック法を応用して,播種の2時間後にトランスフェクションした。この方法では,DNAを負荷したミクロンのサイズの高速の金粒子を,解離させたニューロンに手持ち型銃を用いて射撃した。金粒子のDNAでのコーティングは,製造元の指針(Bio−Rad Laboratories)を改変して行った。35個のカートリッジを調製するために,25mgの金粒子(直径1.6μm)を50μlの0.05Mスペルミジンに懸濁した。ボルテックスし,5秒間超音波処理した後,50μlのTE緩衝液に溶解した50μgのプラスミドDNAを加えた(コトランスフェクション実験用,80μg,すなわち,40μgのプラスミド1+40μgのプラスミド2を用いた)。金粒子およびDNAの量は,1回のトランスフェクション実験について,約0.7(mg/カートリッジ)のマイクロキャリア負荷量(MLQ)および2(μg/mg)のDNA負荷比(DLR)に対応する。次に,DNA,スペルミジンおよび金を速度可変のボルテクサーで5秒間混合した。低いボルテックス速度で,50μlの1MCaCl2を混合物に滴加して,DNAを金粒子と結合させ,次に,室温で10分間沈殿させた。上清を除去し,ペレットを800μlの100%エタノールですすいだ。洗浄は2回行い,各洗浄工程の間に3000gでの遠心分離工程を行った。最後に,ペレットを500μlのPVP溶液(100%エタノール中0.05mgのポリビニルピロリドン)に再懸濁し,2mlのPVP溶液を含む15mlのFalconチューブに移した。金粒子を特別のTefzelチューブ(Bio−Rad)に入れ,これを窒素ガスを用いて少なくとも15分間乾燥させた後に負荷した。マイクロキャリア/DNA懸濁液を10秒間ボルテックスし,10ccのシリンジを用いてチューブに入れた。金粒子は3分間着定させた。管からエタノールを除去した後,管の内表面を粒子で被覆するために,管を一定の窒素流の下で5分間回転させた。Bio−Rad製の切断道具を用いて管を小片(カートリッジ)に切断し,乾燥環境下で4℃で保存した。
【0125】
ニューロンのトランスフェクションのためには,培地を吸引し,銃のバレル・ライナーをディッシュの上部に直接置き,不活性ヘリウムガス(圧力120psi)を用いて金粒子を加速した。衝撃波により誘導される障害を制限し,均一な粒子分布を得るために,遺伝子銃とバレル・ライナー培養ディッシュとの間に40μmのナイロンメッシュを置いた。
【0126】
免疫蛍光
トランスフェクションの2日後,細胞培養物を4%パラホルムアルデヒドで4℃で10分間固定し,PBS中0.5% Triton X−100で5分間透過性とした。ヒトタウ(マウスモノクローナル,1:50,州北部)または過少リン酸化した形のタウ(マウスモノクローナル,1:100)に対する一次抗体を,0.3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSに溶解し,37℃で2時間培養物に加えた。ニューロンは,PBS中で3回洗浄した後,Cy3コンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG(Dianova,Hamburg,Germany)とともに室温で1時間インキュベートし,次にPBSで3回洗浄した。
【0127】
顕微鏡および形態計測学的分析
ニューロンの可視化には反転させた蛍光を備えた完全電動Zeiss Axiovert 100M顕微鏡蛍光を用いた。相互に排他的な励起/放出特性を有する適当なフィルターセットはChromaから入手した(EGFPについては#41017,Cy3については#41002C)。ディッシュ全体を蛍光細胞について系統的にスクリーニングし,各実験について,すべてのトランスフェクションしたニューロンを同一の曝露時間で記録した。画像はPCに接続したデジタルカメラ(SpotRT)を用いて40倍で取得し,Metamorph(商標)ソフトウエア(version4.5r5,Visitron Systems,Munich,Germany)で分析した。各画像のトランスフェクションしていないまたはトランスフェクションしたニューロンの平均免疫蛍光強度は,細胞質上にランダムに配置した円領域を用いて決定した。それぞれの無傷のニューロン細胞体について3回の測定を行い,平均±平均の標準誤差(S.E.M.)を決定した(最大強度=256)。トランスフェクションしたニューロンの蛍光強度は,各実験において種々のTau抗体の1つとともにインキュベートして,すべてのトランスフェクションしていないニューロンの平均蛍光強度(=100%)に対して標準化した。
【0128】
クローニング
MID1 Bbox1(アミノ酸108−165)は,piRES2−EGFP(Clontech)のEcoRIおよびSalI制限部位にクローニングした。それぞれのDNA−フラグメントは,以下のオリゴデオキシヌクレオチドプライマー:
5’:TCGAATTCGCAATGGCCAACACCATGACCTCCGCC
3’:ACCGTCGACTCAAATTGGCTCAATCAGACGATGG
を用いて,PCRによりヒトMID1−cDNAから生成した。
【0129】
MID1 Bbox変異体は,PCRのテンプレートとして,アラニン130をトレオニンに交換した(コドン変化:GCTからACT)MlD1−cDNAを用いて,同様にクローニングした。この変異は,すべての種類の疾患を有するオピッツ患者において見出されたものであり,MID1のBbox1とα4蛋白質との正常な結合を破壊することが示されている(未発表所見)。
【0130】
以下の実施例は,本発明を例示するために提供され,本発明を制限するものと解釈すべきではない。特に,本発明の教示に基づいて,上述の疾患の治療において医薬品として処方するためのペプチド性または蛋白質性化合物,またはこれらから誘導される化合物を,その薬学的活性を失うことなく改変しうることが理解されるであろう。実施例に対するこれらの改変および変種は,本発明の精神および範囲の範囲内であると考えられる。
【0131】
方法
Gli3−実験:
COS7,HELA,およびU373MG細胞は,Poly Fect Transfection Reagent(Qiagen,cat.no.301107)を用いて,製造元の指針にしたがってトランスフェクトした。Gli3 cDNAは,それぞれpEGFP−C1およびpEGFP−N3ベクター(Clontech)にクローニングした。1回の実験(Gli3−GFP,GFP−Gli3,Gli3GFP+myc−MID1,GFP−Gli3+myc−MID1,Gli3−GFP+myc−BBox1,GFP−Gli3+myc−BBox1)あたり100個のトランスフェクトした細胞を計数し,Gli3の局在について分析した。実験は2回繰り返して行った。BBox1とコトランスフェクションしたとき,GFP−Gli3およびGli3−GFPの両方について,核からサイトゾルへの顕著な変化が認められた。myc−MID1およびmyc−BBox1の過剰発現にはStratageneのPCMV−Tag3ベクターを用いた。
【0132】
免疫蛍光II
6ウエルプレートのウエルあたり1x105個のHELA細胞を,Qiagen Polyfectトランスフェクション試薬を用いて製造元の指針にしたがってトランスフェクトした。polyfectトランスフェクション試薬の量に対するDNAの量の比率は3μgDNA/10μl Polyfectであった。HELAにおける発現に用いたコンストラクトは以下のとおりであった:GFP−GLI3(aa18−1549),GLI3−GFP(aa1−1522),MYC−GLI3(aa18−1596),FLAG−GLI3(aa18−1596),MYC−B−BOX1(MID1蛋白質のaa110−167),ALPHA4−V5(aa1−339)。トランスフェクションの24時間後に免疫蛍光を行った。GFPコンストラクトはSchweigerら(1999)に記載されるようにして処理した。MYCタグ付きおよびFLAGタグ付きコンストラクトを用いる免疫蛍光は,Trockenbacherら(2001)にしたがって行った。FLAGタグ付きコンストラクトは1:500に希釈した抗FLAG−抗体で検出し,二次抗体FITC−抗マウスは1:1000に希釈した。MYCタグ付きコンストラクト用には,抗MYC−抗体(1:300)およびCY3−抗ウサギ(1:1000)を用いた。
【0133】
ウエスタンブロットおよびフォストリエシンとのインビトロインキュベーション
Qiagen Polyfectトランスフェクション試薬を用いて製造元の指針にしたがって,8x105個の細胞をhFused−V5(aa1−1335)でトランスフェクトした。hFused−V5を過剰発現する細胞のサイトゾルを,フォストリエシン(500nM)の存在下または非存在下で30℃で4時間インキュベートした。蛋白質(200μg蛋白質/レーン)を6%SDSゲルで分離し,PVDF膜にブロットし,抗V5−抗体(1:3000)とともにインキュベートした。二次HRP抗マウス抗体は1:2000で希釈した。
【0134】
ウエスタンブロット:hFusedリン酸化
Qiagen polyfectトランスフェクション試薬を用いて,製造元の指針にしたがって,8x105個の細胞を,MYC−B−BOX1(MID1蛋白質のaa110−167)の存在下および非存在下で,hFused−V5(aa1−1335)でトランスフェクトした。細胞ペレットをmagic mix(48%尿素,15mM Tris−HCI,8,7%グリセリン,1%SDS,0,004%ブロモフェノールブルー,143mMβ−メルカプトエタノール)に再懸濁した。超音波処理した後,hFusedおよびhFusedとB−Box1とを発現する細胞の細胞溶解物を6%SDS−ゲル(各レーンにつき200μgの蛋白質を負荷)で分離し,PVDF−膜にブロットし,抗V5−抗体(1:3000)とともにインキュベートした。二次HRP抗マウス抗体は1:2000に希釈した。
【0135】
α4ノックダウン
Oligofectamine(Invitrogen)を用いて製造元の指針にしたがって,6ウエルプレートのウエルあたり5x104個のHeLa細胞をウエルあたり2,6μgの合成siRNA(Dharmacon)でトランスフェクトした。α4mRNAを標的とするsiRNAの配列は,GUACCUUUUGGUGCCAGCGdTdT(センス)およびCGCUGGCACCAAAAGGUACdTdT(アンチセンス)であった。各一本鎖siRNAの3’末端の最後の2つのヌクレオチドは,デスオキシチミジン(dT)であった。対照実験のためには,先に公表されたラミンA/Cを標的とするsiRNA(Elbashir et al.)および配列UUCUCCGAACGUGUCACGUdTdT(センス)およびACGUGACACGUUCGGAGAAdTdT(アンチセンス)を有する非標的対照siRNA(Xeragon)を用い,上述のようにしてトランスフェクトした。トランスフェクト効率は,FITC標識対照siRNA(Xeragon)を用いてモニターした。約95%の細胞がsiRNAの取り込みを示し,慣用の蛍光顕微鏡で見ることができた。
【0136】
siRNAでトランスフェクションした24時間後,QiagenPolyfectトランスフェクション試薬を用いて製造元の指針にしたがって,細胞をGFP−GLI3でトランスフェクトした。免疫蛍光はSchweigerら(1999)に記載されるようにして行った。
【0137】
α4のノックダウンを確認するために,20μgの総蛋白質をSDS−PAGE(10%)で分離し,PVDF膜(Roche)にブロッティングした。膜をウサギポリクローナル抗α4抗体(1:300希釈)とともにインキュベートした。二次HRP−抗ウサギ抗体は1:2000に希釈した。
【0138】
実施例
実施例1:ポリユビキチン化蛋白質はMID1免疫複合体中に蓄積する
いくつかのRINGフィンガー蛋白質は標的蛋白質と相互作用し,このことによりそのユビキチン依存性分解を引き出すため,MID1とポリユビキチン化蛋白質との相互作用を調べた。それぞれMID1 cDNAまたは対照として蛋白質キナーゼC(PKC)のいずれかをコードするcDNA(いずれもC末端V5エピトープがタグ付けされている)または空ベクターでCOS7細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に細胞を25μMのLLnL(プロテオソーム阻害剤)で処理して,ユビキチン化蛋白質を濃縮させた。細胞抽出物を抗V5で沈殿させ,SDS−PAGEおよび抗ユビキチンを用いるウエスタンブロッティングを行った。プロテオソーム阻害剤で前処理した細胞からのMID1含有沈殿物は,種々の程度にユビキチン化された豊富な量の蛋白質を含み,これは免疫ブロッティングで高分子量蛋白質スメアとして見られた(図1a,レーン6)。この蛋白質スメアは,疑似トランスフェクト細胞またはV5タグ付きPKCを発現する細胞からの沈殿物には見られなかった(図1a,レーン1−4)。
【0139】
MlD1−myc−過剰発現細胞および模擬トランスフェクト細胞を第2の阻害剤として20Sプロテオソーム特異的阻害剤であるラクタシスチン(14)で処理することにより,この結果を確認した。この場合も,ラクタシスチンとインキュベーションした後にMID1−myc−含有沈殿物において高分子量の蛋白質の蓄積が検出されたが,模擬トランスフェクト細胞では検出されなかった(図1b)。
【0140】
実施例2:MID1は,PP2Aの制御サブユニットであるα4と相互作用する
MID1媒介性蛋白質ユビキチン化の標的を同定するために,ヒト胎児脳ライブラリの106個のコロニーの酵母ツーハイブリッドスクリーニングにおいて,全長MID1蛋白質コーディング領域をおとりとして用いた。異なる長さの2つの挿入物を含む4つの独立したポジティブクローン(a−d)が得られた。すべてのクローンは,PP2Aと結合することが既に示されているα4−a蛋白質(12,15,16)をコードするヒトIGBP1遺伝子に対応する配列を含む。クローンaおよびbは,C末端の168アミノ酸(aa)をコードしており,クローンcおよびdは,N末端配列を含む。この配列はコドン290の後でイントロンにより中断されているため,α4とは無関係の17個の追加のアミノ酸の後に翻訳が未成熟に停止する。すなわち,MID1と相互作用するα4蛋白質ドメインは,両方のタイプのクローンに共通の残基172−290(図2a)にわたる119アミノ酸にマップされる。図2cはMID1−α4相互作用の特異性を示す。ツーハイブリッドアッセイにおいて試験した別の蛋白質のうちでは,アミノ酸配列がMID1と高度に類似する(83%)MID2(文献17)のみがα4と結合するが,3つの別のRINGフィンガー蛋白質,すなわち,RBCC728(文献18),HHARI(文献19)およびPARKIN(文献10)は結合しない。
【0141】
実施例3:MID1上のα4結合部位のマッピング
MID1は,RINGフィンガー,2つのB−box,コイルドコイル領域,フィブロネクチンタイプIドメインおよびB30.2ドメイン(これらはすべて特異的蛋白質−蛋白質相互作用の候補領域である)を有するマルチドメイン蛋白質である(3)。いずれのドメインがα4に特異的に結合するかを明らかにするために,酵母ツーハイブリッドシステムにおいてMID1のいくつかの欠失変異体をα4との相互作用について試験した。結果は,α4との強い相互作用にはB−box1(残基110−165)で十分であることを示す(図2b)。実際,他のドメインを含むより長いコンストラクトは,より弱くα4に結合する(図2a,b)。
【0142】
実施例4:無傷の細胞においてMID1はα4とともに局在化する
次に,COS7細胞においてグリーン蛍光蛋白質(GFP)タグ付きMID1(文献4)およびN末端mycタグ付きα4を過剰発現させることにより,無傷の細胞においてMID1およびα4の局在化を調べた。α4は,単独で発現させたとき,拡散した細胞質分布を示す(図3a)。両方の蛋白質を共発現させると,α4は野生型GFP−MID1蛋白質とともに局在化し,細胞骨格構造に沿って100%重複した(図3b)。OSを有する個体を模倣するC末端の変異を有する変異体GFP−MID1を発現させると,両方の蛋白質を含む細胞質クランプが形成される(図3c)。
【0143】
実施例5:MID1はα4とともに免疫沈殿する
独立した方法として免疫沈殿を用いて,観察された蛋白質相互作用を確認した。2つの異なるプロモーターから両方の蛋白質を発現する単一のベクターを用いて,MID1およびα4のcDNAをCOS7細胞で過剰発現させた。続くウエスタンブロットおよび免疫沈殿実験におけるシグナルの検出のために,MID1にはC末端mycタグ(MID1−myc)を付け,α4はC末端V5タグと融合させた(α4−V5)。トランスフェクトした溶解物のウエスタンブロッティングは,予測されたサイズにバンドを示した(MID1−mycについては75kD,α4−V5については45kD;データ示さず)。次に,α4−V5およびMlD1−myc発現細胞の溶解物を抗mycおよび抗V5で沈殿させた。それぞれの補足抗体による沈殿物のウエスタンブロット分析は,MID1がV5タグ付きα4と共沈殿したことを示した(図3d,レーン2;図3e,レーン3)。さらに,mycタグ付きおよびV5タグ付きMID1の両方を発現する細胞を抗V5で免疫沈殿させ,次に抗mycを用いるウエスタンブロット分析を行うと,特異的MID1バンドおよび75kDのバンドが生じ(図3d,レーン3),このことからMID1がホモダイマーを形成することができるという先の知見(20)が確認された。MID1−mycのみを発現する細胞からの抗V5沈殿物は,特異的MID1のサイズを示さなかった(図3d,レーン1)。これに対し,内因性α4蛋白質を検出する抗体は,MlD1−mycおよび内因性α4蛋白質が共沈殿することを確認した(図3e,レーン5)。すなわち,MID1−mycとα4−V5蛋白質との共発現により,過剰発現されたα4−V5により内因性α4はMID1結合部位から置き換えられる(図3e,レーン4)。
【0144】
α4結合を担うMID1蛋白質ドメインをより詳細に同定し,酵母ツーハイブリッド実験からの結果を確認するために,V5タグ付きα4を,それぞれmycタグ付きRBドメイン(RINGフィンガーおよび2つのB−box)と,およびMID1蛋白質のmycタグ付きB−box1と共発現させた。抗mycによる沈殿および続く抗α4によるウエスタンブロッティングは,α4(V5タグ付きおよび内因性)と,RBドメイン(図3e,レーン1)および第1のB−box(図3e,レーン2)の両方との強い相互作用を示した。逆の実験,すなわちV5タグ付きα4の沈殿においては,ウエスタンブロットでmycタグ付きRBドメインが検出された(図3d,レーン4)。用いた電気泳動条件ではB−box1含有ポリペプチドを分離することはできなかったが,これはおそらくその分子量が非常に低い(5kD)ためである。
【0145】
実施例6:PP2AのMID1依存性ユビキチン化
MID1蛋白質のユビキチンリガーゼ活性およびそのα4との特異的相互作用が観察されたため,α4のユビキチン特異的分解について調べた。胚性線維芽細胞のサイトゾル抽出物はLLnLによる前処理の後にα4の濃縮を示さず,α4のユビキチン特異的修飾の証拠もなかった(データ示さず)。同様に,ウエスタンブロット分析に特異的抗MID1を用いた類似の実験は,MID1蛋白質のユビキチン特異的修飾の証拠を示さなかった(データ示さず)。
【0146】
α4はPP2Aの制御サブユニットとして機能することが示されているため(15),この酵素がMID1−α4ユビキチンリガーゼ活性の標的であると推測することができる。そうであれば,MID1発現の増加はサイトゾルPP2Aの減少と同時に生ずるはずである。この仮説を調べるために,MID1−V5を発現する293細胞(図4a,レーン1)および対照細胞(図4a,レーン3)からの等量の蛋白質を含む溶解物を,PP2AのCサブユニットを検出するポリクローナル抗体を用いるウエスタンブロッティングにより分析した。結果は,MID1−V5を発現する細胞においてサイトゾルのホスファターゼ2Aが実際にダウンレギュレートされていることを示した。プロテオソーム阻害剤LLnLで前処理すると(図4a,レーン2),このPP2Aのダウンレギュレーションは完全にブロックされ,このことは,この効果がユビキチン依存性分解により生ずることを示す。
【0147】
サイトゾルPP2Aのユビキチン依存性制御の直接の証拠を得るために,大量の内因性MID1を含むことが先に示されている(文献2)胚性線維芽細胞において,プロテオソーム阻害剤LLnL(図4b)で処理した後のサイトゾルPP2Aの量を分析した。LLnLの濃度を増加させると,ユビキチン修飾により制御される蛋白質について予測されるように,PP2A(図4b,中パネル)およびポリユビキチン化形の酵素(図4b,上パネル)が濃縮された。対照として,機能不全MID1を発現するOS由来線維芽細胞(上述を参照)にLLnLを加えたところ,PP2Aの濃縮もポリユビキチン化形の酵素の蓄積も引き起こされなかった(図4c)。このことは,OSを有する個人においては,MID1変異のためにPP2AのCサブユニットの蛋白質溶解が減少することを示す。
【0148】
実施例7:MID1の過剰発現によるOS由来細胞におけるPP2Ac分解のレスキュー
対照細胞株を変異体MID1でトランスフェクションすることにより,これらの知見を確認した。ここでは,PP2Acのユビキチン特異性分解が根絶され(図4d),このことは,大量の変異体MID1蛋白質が優性ネガティブ効果を有することを示す。OS由来細胞を野生型MID1でトランスフェクションし,ただしユビキチン媒介性蛋白質ターンオーバーは復帰させることにより,PP2Acの量を標準化した(図4e)。
【0149】
PP2Acのユビキチン化をさらに確認するために,対照またはOS由来細胞のいずれかのサイトゾル抽出物を抗ユビキチンで免疫沈殿した。抗PP2Acで検出すると,対照細胞株においてモノユビキチン化PP2Acの予測サイズである44kDに特異的バンドが生成した。このバンドはLLnLで前処理した後に濃縮された(図4f)。これに対し,OS由来の個体の細胞の対応する沈殿物においては,同じサイズの明確なバンドは認められなかった(図4f)。
【0150】
実施例8:OS由来細胞における微小管結合PP2Aのアップレギュレーション
変異体MID1がOS由来胚性線維芽細胞中に蓄積するため,MID1が内因性PP2Aの量に影響を及ぼすか否かを試験するために,これらの細胞を用いることとした。OS由来胚性線維芽細胞株および年齢のマッチした対照細胞株を用いて一連の細胞分画実験を行った。OS由来細胞のサイトゾル画分においてPP2A濃度が増加したことが認められ(図5a,S3),これはデンシトメトリ分析により定量して2.6倍であったが(図5c),他の細胞画分では増加しなかった(図5c,P1−P3)。PP2A亜画分をさらに特性決定するために,両方の細胞株から微小管を精製し,等量(2μg)をSDS−PAGEにより分離し,ウエスタンブロッティングを行ってPP2Acを検出した(図5b)。OS由来細胞と対照細胞との間のPP2A発現の相違は(比率4.4,図5c),これらの亜画分においてサイトゾルにおけるよりさらに顕著であった。すなわちOS由来細胞における微小管結合PP2Aのターンオーバーの欠陥は,サイトゾル酵素の量の観察された相違の大きな原因であるようである。
【0151】
実施例9:OS由来細胞における蛋白質リン酸化の変化
さらに,OS由来線維芽細胞において検出された増加したPP2A発現の生物学的重要性を調べた。上昇したPP2Aにより標的蛋白質のリン酸化が変化するはずである。蛋白質リン酸化パターンを調べるために,OS由来線維芽細胞株および3つの異なる年齢のマッチした対照細胞株の細胞から,2次元PAGEにより精製した微小管を分離し,抗ホスホセリンおよび抗ホスホトレオニンの組み合わせを用いてウエスタンブロッティングを行った。OS由来線維芽細胞は,微小管結合蛋白質の顕著な全体的過少リン酸化を示す(図6)。アルカリホスファターゼで前処理することにより,この知見および抗体の特異性を確認したところ,すべての関連するスポットは消失した。
【0152】
実施例10:PP2Acの分解に及ぼす優性ネガティブ効果
上述の実施例では,PP2Acのユビキチン特異的分解が胚性線維芽細胞における変異体MID1蛋白質の異所性発現により影響されうることが示されたが(Trockenbacher et al.,2001),ここでは,真核生物細胞系において単離されたB−box1を導入することにより,PP2Acの分解に及ぼす顕著な優性ネガティブ効果が得られることを示す。
【0153】
まず,MID1ペプチドのα4親和性を比較する酵母ツーハイブリッド実験は,単離されたB−Box1の親和性が全長MID1蛋白質と比較して10倍増加することを示し(Trockenbacher et al.,2001),したがって細胞における全長MID1−α4相互作用に及ぼす顕著な優性ネガティブ効果が推定される。このため,単離されたBbox1の過剰発現により蓄積されたPP2Acが特異的標的蛋白質,すなわち転写因子Gli3に及ぼす影響を分析した。Gli3は,遺伝的ヒト疾患,すなわち,興味深いことにオピッツ症候群表現型と重複する表現型を表すグレーグ頭部多合趾症(cephalopolysyntactyly)症候群において変異しており,このことは,類似の経路が影響を受けていることを示唆する。Gli3は,ヘッジホッグシグナリング経路に関与するショウジョウバエ蛋白質cubitus interruptusと相同の転写因子であり(Shin et al.,1999),細胞増殖および細胞の運命の詳細を制御する。Gli3は通常は微小管装置への直接アンカリングにより細胞質内に隔離されている。興味深いことに,ヘッジホッグシグナリングの非存在下では,このGli3はリン酸化され,次にプロセシングされて核に移行し,ここで特定の標的遺伝子の転写を抑制する。Gli3の微小管結合およびPP2Acのレベルの増加が活性なヘッジホッグシグナリングを模倣することが示されているため(Krishnan et al.,1997),Bbox1過剰発現によるPP2acの上昇が全長Gli3の局在化に及ぼす影響を分析しようとした。U373MG細胞において細胞内Gli3を検出する免疫蛍光実験においては,実際にGli3の局在化の変化の有意なBbox1依存性を見出すことができ,このことは,単離されたB−Box1が過剰発現された後にPP2A活性が増加することを明らかに象徴する(図8)。野生型MID1蛋白質を過剰発現する細胞においては変化は検出されなかった。
【0154】
これらのデータは,PP2Acレベルのみならず,標的蛋白質のPP2Ac依存性修飾も,記載されるメカニズムをブロックすることにより影響を受けることができることを示す。ヘッジホッグ経路の中心的標的遺伝子であるGli3を用いたこの結果はまた,Gli3により影響を受ける経路が知られているため,骨の発達および骨粗鬆症における微小管結合PP2Acの重要な役割を指摘する。
【0155】
実施例11:PP2Ac活性およびアルツハイマーとの密接な関係
PP2Ac活性はまた,最も頻繁に生ずる神経変性性疾患の1つであることが示されているアルツハイマー病と重要な密接な関係を有する(Trojanowski and Lee,1995)。アルツハイマー病患者の脳においては,細胞内(対螺旋フィラメント)および細胞外(ベータアミロイド)プラークが見出されている。2種類のプラークの間の種々の相互作用が見出されているが,アルツハイマー病に特徴的な事象はなお議論されている(Maccioni et al.,2001)。しかし,ニューロン特異的微小管結合蛋白質であるタウ蛋白質の過リン酸化により,タウが微小管から放出され,細胞内プラークが形成されることが示されている。
【0156】
タウの種々の変種を過剰発現し,また過リン酸化されたタウ蛋白質から構成される細胞内プラークを示すトランスジェニックマウスは,興味深いことに,アルツハイマー病患者の表現型と非常に重複する表現型を示す(Richardson and Burns,2002)。これらのマウスから,細胞内プラークの出現がアルツハイマー病の発達の決め手となる現象であると結論づけることができる。さらに,これらの細胞内タウ−プラークは細胞外プラーク形成を誘導しうることが示されている。最近の報告は,言及されるタウの過リン酸化がセリン−トレオニンのリン酸化に基づくものであり,セリン−トレオニンホスファターゼ2Aにより影響を受けることができることを示しており,インビトロでPP2Aで処理すると細胞内タウ−プラークは解離しうることが示されている(Iqbal et al.,2000)。さらに,タウはベータ−アミロイド誘導性神経毒性に必須であることが最近報告されたため(Rapoport et al.,2002),PP2Aが細胞において生理学的レベルを越えて上昇することは,予防的ならびに治療的なアルツハイマー病の治療に広範な密接な関係を有する。PP2Aは細胞の主要なレギュレータであるため,そのレベルおよび活性は厳密に制御されており,このため過剰発現は実際上は不可能である。我々は,上述のメカニズムを阻害することにより,亜画分,すなわち微小管結合PP2Acのレベルを実質的に増加させうることを初めて示すことができた。微小管結合タウの脱リン酸化に必要なものは,確かにPP2Acのこの亜画分であることに言及する価値がある。このPP2Ac分解を妨害する別の可能性も考えられる。
【0157】
U373MG細胞において過剰発現したBbox1の優性ネガティブ効果のため,初代ニューロンにおける同様の過剰発現によっても微小管結合PP2Acが蓄積され,次にタウ蛋白質の脱リン酸化が生ずことが推測された。そのような効果を分析するために,出生後1−3日のラットからの末梢交感神経ニューロンを用いた。これらのニューロンをBbox1およびEGFPをコードする2シストロンRNAを生成する高発現ベクターでトランスフェクトした("遺伝子銃"方法を用いて,Klimaschewski et al.,2002)。次に,トランスフェクトした細胞は,そのEGFP蛍光により容易に識別することができる。タウおよび脱リン酸化されたタウは,それぞれpan−TauまたはTau1抗体を用いる免疫蛍光により可視化することができる(Tau1は脱リン酸化タウを特異的に認識する)。Tau1でトランスフェクトされた細胞の免疫蛍光強度は,トランスフェクトされていない,または模擬トランスフェクトされた細胞と比較して,Bbox1を発現する細胞における蛍光の明白な増加を示した(図9)。さらに,OSの原因であると認識されα4−Bbox1相互作用に障害を与える変異を有するBbox1を用いた類似の実験はこの効果を示さない。すなわち,初代ニューロン組織培養において,MID1蛋白質のα4結合部位を含むペプチドの過剰発現により,明らかにタウの脱リン酸化が生ずることを示すことができた。MID1またはα4のアミノ酸配列に由来する他のペプチド,ならびに細胞のMID1複合体と相互作用し,MID1のユビキチンリガーゼ機能を制御する他の蛋白質を適用することにより,同様の効果を誘導することが可能であるはずである。α4を用いる欠失実験からの予備的データは,α4の小さい部分(44アミノ酸)がBbox1に結合するのに十分であり,Bbox1の場合と同様に,酵母ツーハイブリッドシステムで観察された相互作用が全長α4の10倍以上強く,したがって,これも強力な優性ネガティブエフェクターとしての有力な候補であることを示す。これらの知見は,α4およびBbox1およびこれらの複合体の3D構造の決定とともに,α4−Bbox1相互作用を妨害する分子の構築にコンピュータモデリングを使用することを可能とする。MID1複合体の成分またはレギュレータに結合することによりPP2A分解を妨害する分子のウルトラハイスループットスクリーニングにより,他の妨害物質を検出することができる。
【0158】
実施例12:PP2Acが転写因子Gli3の局在化に及ぼす影響
MlD1−α4−PP2Ac複合体および続くPP2Acの分解が,発癌経路,特にソニックヘッジホッグシグナリング経路に関与することを示すために,過剰発現させたGFPタグ付きGli3のHeLa細胞における局在化を分析した(図10)。過剰発現させたGli3は主として核に局在していた(図10,左上)。
【0159】
MID1ドメインに由来する,α4結合を担うペプチドであるB−Box1の過剰発現(図10,左中),ならびにラパマイシン処理(図10,下),およびGFPタグ付きGli3を過剰発現するHeLa細胞のRNAiを介するα4のダウンレギュレーション(図10,右上)により,活性型のGli3がサイトゾル中に有意に保持された。GFP−Gli3およびB−Boxを過剰発現する細胞をPP2A特異的阻害剤であるフォストリエシンで処理すると(図10,右中),観察された結果を逆転させることができた。一方,α4の過剰発現により,GFP−Gli3が核に有意に放出された(図12)。すべての実験は,Gli3のC末端およびN末端にタグ付けしたGFP,ならびにGli3のC末端およびN末端にタグ付けしたV5−抗原を用いて行った。
【0160】
すなわち,Gli3の局在化はPP2A活性に依存することを示すことができた。
【0161】
実施例13:HeLa細胞のGIi3活性の分析
Gli3転写因子の最も重要な標的の1つはパッチド遺伝子である。HeLa細胞を種々の分子で処理した後にGli3活性について分析するために,B−Box1およびα4蛋白質を過剰発現する細胞の半定量的RT−PCRを行った(図13)。HeLa細胞は先にGli3,Gli1(Gli3転写因子の別の標的)およびパッチドの発現について試験した。予測されたように,B−Box1の発現(図13,レーン2)は,パッチドのメッセージを有意に減少させたが,α4の過剰発現(図13,レーン1)は模擬トランスフェクト細胞と比較してPCR産物の量を増加させた(レーン3)。
【0162】
すなわち,α4/MID1複合体の阻害によるPP2Acの蓄積により誘発されるGli3の細胞分布の変化により,既知のGli3標的遺伝子,すなわちパッチドの発現が減少することを示すことができた。
【0163】
実施例14:MID1/PP2A複合体による妨害は細胞の停止を引き起こす
推定される抗発癌性効果のためにMID1/PP2A複合体の特異的妨害を調べるために,HeLa細胞を特異的抗α4RNAi分子でトランスフェクトした(図11)。抗α4RNAi分子を含む細胞においては,模擬トランスフェクトした細胞および非特異的RNAi分子で処理した細胞と比較して,曝露の時間に依存して,これらの通常は急速に成長する腫瘍細胞の増殖の劇的な減少が検出された。
【0164】
BrdU標識および続くFACS分析は,細胞数の減少がアポトーシスの増加ではなくG1期停止によるものであることを明らかにした。これに対し,例えばRNAiによるMID1蛋白質のダウンレギュレーションにより,アポトーシスの劇的な誘導が生じた。
【0165】
すなわち,MID1/PP2A複合体を妨害することにより,少なくとも2つの異なる抗発癌性メカニズム(細胞停止およびアポトーシス)を誘導することができた。
【0166】
実施例15:hFuはPP2Aのインビトロ標的である
hFusedが微小管結合PP2A(ホスファターゼ2A)の標的であることを示すために,インビトロでフォストリエシンの存在下および非存在下で,hFusedのリン酸化を分析した(図14)。フォストリエシンはPP2A活性の高度に特異的な阻害剤である。
【0167】
V5タグ付きhFusedを過剰発現する細胞のサイトゾルをフォストリエシンの非存在下(レーン1)および存在下(レーン2)で30℃で4時間インキュベートした。次に,蛋白質をSDS−Pageで分離し,ブロッティングし,抗V5抗体とともにインキュベートした。フォストリエシンとのインキュベーションの後に,脱リン酸化バンドと比較してリン酸化されたhFusedのバンド(上方のバンド)の明らかな濃縮が見られる(図14a)。
【0168】
aに示されるウエスタンブロットのImage−quant定量。対照(フォストリエシンなしでインキュベーション)においては,リン酸化されたhFusedと脱リン酸化されたhFusedとの間の比率は,フォストリエシン処理サンプルとは明らかに異なる(図14b)。
【0169】
リン酸化された形と脱リン酸化された形のhFusedの比率は,対照(フォストリエシンなしでインキュベーション)において1.8倍の相違を示すが,フォストリエシン処理の後には18倍の相違が測定された(図14c)。
【0170】
これらのインビトロ実験は,フォストリエシンによりインビトロでhFusedの脱リン酸化を阻害しうること,したがって,hFusedはPP2Aの標的であることを明確に示した。
【0171】
実施例16:B−Box1の過剰発現によりhFusedが脱リン酸化される
hFusedのリン酸化がMID1/PP2A複合体を妨害することにより調節しうることを示すために,V5タグ付きhFusedをMID1蛋白質のα4結合部位を含むB−Box1とともに共発現させた。MID1/α4の阻害につながるB−Box1−ペプチドの優性ネガティブ効果は,微小管結合PP2Aのユビキチン化を誘導し,微小管結合PP2Aの濃縮が生ずることは先に示されている。
【0172】
hFusedのみを発現する細胞(con)およびB−Box1とともにhFusedを発現する細胞(+B−Box1)の細胞溶解物をSDS−Pageで分離し,ブロットし,抗V5−抗体とともにインキュベートした。細胞溶解直後にすべてのキナーゼおよびホスファターゼを停止させるために,SDSおよび尿素を含有する緩衝液中で細胞を溶解した。ウエスタンブロットにおいては,hFusedおよびB−Box1を共発現する細胞において,対照(hFusedのみを発現)と比較して,脱リン酸化された形のhFusedの明らかな濃縮を検出することができる(図15a)。
【0173】
aに示されるウエスタンブロットのImage−quant分析。対照におけるリン酸化された形と脱リン酸化された形のhFusedの比率は,hFusedおよびB−Box1を共発現する細胞において検出された比率と明らかに異なっていた(図15b)。
【0174】
対照(con−a,hFusedのみを過剰発現する細胞)におけるリン酸化された形と脱リン酸化された形のhFusedの比率は10.3であり,一方,hFusedとB−Box1を共発現する細胞におけるリン酸化された形と脱リン酸化された形のhFusedの比率は3であった(図15c)。
【0175】
これらの結果は再現性があった(図16)。
【0176】
対照(con−a,hFusedのみを過剰発現する細胞)におけるリン酸化された形と脱リン酸化された形のhFusedの比率は8.3であり,hFusedおよびB−Box1を共発現する細胞におけるリン酸化された形と脱リン酸化された形のhFusedの比率は3であった(図16c)。
【0177】
参考文献:
1. Robin, H. N. , Opitz, J. M. & Muenke, M. OpitzG/BBB syndrome: clinical comparisons of families linked to Xp22 and 22q, a review of the literature. Am. J. Med. Genet. 62,305-317 (1996).
2. Robin, H. N. etal. Opitz syndrome is genetically heterogenous, with one locus on Xp22, and a second locus on22ill. 2. Nature Genet 11,459-461 (1995).
3. Quaderi, N. A. et al. Opitz G/BBB syndrome, a defect of midline development, is due to mutations in a new RING finger gene on Xp22. Nature Genet. 17,285-291 (1997).
4. Schweiger, S. etal. The Opitz syndrome gene product,MID1, associates with microtubules.Proc. NatlAcad. Sci. USA 96,2794-2799 (1999).
5. Wu, L. C. etal. Identification of a RING protein that can interact in vivo with the BRCA1 gene product. Nature Genet. 14,430-440 (1996).
6. Borden, K. L. B., Lally, J. M. , Martin, S. R., O'Reilly, N. J., Solomon, E. & Freemont, P. S. In vivo and in vitro characterization of the B1 and B2 zinc-binding domains from the acute promyelocytic leukemia protooncoprotein PML. Proc. Natl Acad. Sci. USA 93,1601-1606 (1996).
7. Dyck, J. A., Maul, G. G, Miller Jr. , W. H. , Chen, J. D. , Kakizuka, A. & Evans R. M. A novel macromolecular structure is a target of the promyelocyte-retinoic acidreceptor oncoprotein. Ce//76, 333-243 (1994).
8. Fang, S. , Jensen, J. P. , Ludwig, R.L., Vousden, K. H. & Weissman, A. M. Mdm2 is a RING finger-dependent ubiquitin protein ligase for itself and p53. J. Biol. Chem. 275,8945-8951 (2000).
9. Fang, D. , Wang, H. Y. , Fang, N.,Altman, Y. , Elly, C. & Liu, Y. C. Cbl-b, a RING-type E3 ubiquitin ligase, targets phosphatidylinositol 3-kinase for ubiquitination in T cells. J. Biol. Chem. 276, 4872-4878 (2001).
10. Shimura, H. eta/. Ubiquitination of a new form of a-synuclein by parkin from human brain: implications for Parkinson's disease. Science 293,263-269 (2001).
11. Tyers, M & Jorgensen, P. Proteolysis and the cell cycle : with this RING I do thee destroy. Curr. Opin. Genet. Dev. 10,54-64 (2000). Review
12. Murata, K. , Wu, J. & Brautigan, D. L. B cell receptor-associated protein a4 displays rapamycin sensitive binding directly to the catalytic subunit of protein phosphatase 2A.Proc. NaVAcad. Sci. 94,10624-10629 (1997).
13. Price, N. E. , Wadzinski, B. & Mumby, M. C. An anchoring factor targets protein phosphatase 2A to brainmicrotubules. Mol. Brain Res. 73,68-77 (1999).
14. Dick, L. R.,Cruikshank, A. A. , Grenier, L., Melandri, F. D. , Nunes, S. L. & Stein, R. L. Mechanistic studies on the inactivation of the proteasome by lactacystin. J.Biol Chem.271, 7273-7276 (1996).
15. Chen, J. , Peterson, R. T. & Schreiber, S. L.a4 associates with protein phosphatase 2A, 4, and 6.Biochem. Biophys. Res. Commun. 247,827-832 (1998).
16.Inui, S. eta/. Molecular cloning of acDNA clone encoding a phosphoprotein component related to the Igreceptor-mediated signal transduction. J. Immunol. 154,2714-2723 (1995).
17. Buchner, G. et al. MID2, a homologue of the Opitz syndrome gene MID1 : similarities insubcellular localization and differences in expression during development. Hum. Mol. Genet. 8,1397-1407 (1999).
18. Reymond, A. eta/. The tripartite motif family identifies cell compartments. EMBO J. 20,2140-2151 (2001).
19. Moynihan, T. P. eta/. The ubiquitin-conjugating enzymes UbcH7 and UbcH8 interact with RINGfinger/IBR motif-containing domains ofHHARI and H7-AP1. J. Biol. Chem. 274,30963-30968 (1999).
20. Cainarca, S.,Messali, S. , Ballabio, A. & Meroni, G. Functional characterization of the Opitz syndrome gene product (midin): evidence for homodimerization and association withmicrotubules throughout the cell cycle. Hum. Mol. Genet. 8,1387-1396 (1999).
21. Sontag, E. , Nunbhakdi-Craig, V., Bloom, G. S. & Mumby, M. C. A novel pool of protein phosphatase 2A is associated withmicrotubules and is regulated during the cell cycle. J. Cell Biol. 128, 1131-1144 (1995).
22. Baharians, Z. &Schonthal, A. H.Autoregulation of protein phsphatase type2A expression. J. Biol. Chem. 273,19019-19024 (1998).
23. Zolnierowsicz, S. Type 2A protein phosphatase, the complex regulator of numerous signaling pathways. Biochem. Pharmacol. 60,1225-1235 (2000).
24. Wera, S. & Hemmings, B. A. Serine/threonine protein phosphatases. Biochem. J. 311,17-29 (1995).
25.Goldberg, Y. Protein phosphatase 2A: who shall regulate the regulator ? Biochem. Pharmacol. 57,321-328 (1999).
26. Trojanowski, J. Q. & Lee, V. M. Y. Phosphorylation of paired helical filament tau in Alzheimer's disease neurofibrillary lesions : focusing on phosphatases. FASEB J. 9,1570-1576 (1995).
27. Baharians, Z. &Schnthal, A. H. Reduction of Ha-ras-induced cellular transformation by elevated expression of protein phosphatase type 2A. Mol. Carcinogenesis 24,246-254 (1999).
28. Kawabe, T., Muslin, A. J. , &Korsmeyer, S. J.HOX11 interacts with protein phosphatases PP2A and PP1 and disrupts a G2/M cell-cycle checkpoint. Nature 385,454-458
29. Hsu, W. , Zeng, L. & Constantini, F. Identification of a domain of axin that binds to theserine/threonine protein phosphatase 2A and a self-binding domain. J. Biol. Chem. 274,3439-3445 (1999).
30. Uemura, T. , Shiomi, K, Togashi, S & Takeichi, M. Mutation of twins encoding a regulator of protein phosphatase 2A leads to pattern duplication in Drosophila imaginal disks. Genes. Dev. 7,429-440 (1993).
31. Deng, X. , Takahiko, I., Carr. , B. , Mumby, W. & May, W. S. Reversible phosphorylation of bcl2 followinginterleukin 3 or bryostatin 1 is mediated by direct interaction with protein phosphatase 2A. J. Biol. Chem. 273,34157-34163(1998).
32. Santoro, M. F. etal. Regulation of protein phosphatase 2A activity by caspase-3 during apoptosis. J. Biol. Chem. 273,13119-13128 (1998).
33. Maier, G. D. et al. Regulation of cytoskeletal organization in tumor cells by protein phosphatase-1 and-2A. Int. J.Cancer61, 54-61 (1995).
34. Ito, A. etal. Truncated isoform of the PP2A B56 subunit promotes cell motility through paxillin phosphorylation. EMBO J. 19,562-571 (2000).
35. Kobayashi, N. , Reiser, J. , Schwarz, K. , Sakai, T., Kriz, W. & Mundel, P. Process formation of podocytes: morphogenetic activity of microtubules and regulation by protein serine/threonine phosphatase PP2A.Histochem. Cell Biol. 115,255-266 (2001).
36. Gong, C. etal. Regulation of phosphorylation of neuronal microtubule- associated proteins MAP1b and MAP2 by protein phosphatase-2A and-2B in rat brain. Brain Res. 853,299-309 (2000).
37. Avila, J. , Dominguez, J. & Diaz, N. J. Regulation of microtubule dynamics by microtubule-associated protein expression and phosphorylation during neuronal development. Int. J. Dev. Biol. 38,13-25 (1994).
38. Sapir, T. , Cahana, A. , Seger, R. , Nekhai, S. & Reiner,O. LIS1 is a microtubule-associated phosphoprotein. Eur. J. Biochem. 265, 181-188 (1999).
39. Liu, J.,Prickett, T. D., Elliott, E. , Meroni, G. & Brautigan, D. L. Phosphorylation and microtubule association of the Opitz syndrome protein mid-1 is regulated by protein phosphatase 2A via binding to the regulatory subunita4. Proc. Natl Acad. Sci. USA 98,6650-6655 (2001).
40. Jackson, P. K. etal. The lore of the RINGs : substrate recognition and catalysis by ubiquitin ligases. Trends Cell Biol. 10,429-439 (2000).
41. Freemont, P. S. RING for destruction? Curr. Biol. 10, R84-R87 (2000). Review
42. Joazeiro, C. A. & Weissman, A. M. RING finger proteins: mediators of ubiquitin ligase activity.Cell 102, 549-552 (2000). Review
43. Nanahoshi, M. eta/. Regulation of protein phosphatase 2A catalytic activity bya4 protein and its yeast homologue Tap42. Biochem. Biophys. Res. Commun. 251,520-526 (1998).
44.Briault, S. et al. A gene for FG syndrome maps in theXq12-q21. 31 region. Am. J. Med. Genet. 73,87-90 (1997).
45. Graham, J. M. et aL Report of three new families with linkage toXq12- q22.1. Am. J. Med. Genet. 80,145-156 (1998).
46. Opitz, J. M. & Kaveggia, E. G. The FG syndrome: anX-linked recessive syndrome of multiple congenital anomalies and mental retardation.Z. Kinderheilk. 117,1-18 (1974).
47. Fields, S. &Sternglanz, R. The two-hybrid system: an assay for protein- protein interactions. Trends Genet. 10,286-292 (1994). Review
48. Klose, J. & Kobalz, U. Two-dimensionalelectrophoresis of proteins: an updated protocol and implications for a functional analysis of the genome. Electrophoresis 16,1034-1059 (1995).
【0178】
Bosher, J. M. , Labouessse, M. RNA interference: genetic wand and genetic watchdog. Nat.Cel/Biol. 2, E31-E36 (2001)
Iqbal, K. , Alonso, A. D., Gondal, J. A. , Gong, C. X. , Haque, N. , Khatoon, S., Sengupta, A. , Wang, J. , Z.,Grundke-lqbal, I. Mechanism of neurofibrillary degeneration and pharmacologic therapeutic approach.J. Neural Transm. Suppl 59,213-222 (2000)
Klimaschewski, L. , Nindl, Pimpl, M. , Waltinger, P. , Pfaller, K. Biolistic transfection and morphological analysis of cultured sympathetic neurons. J.Neurosc. Meth. 113,63-71 (2002)
Krishnan, V. , Pereira, F. A. , Qui, Y. , Chen, C. -H., Beachy, P. A. , Tsai, S. , Y. , Tsai, M. -J. Mediation of sonoc hedgehog-induced expression of COUP-TFII by a protein Phosphatase. Science 278,1947-1950 (1997)
Maccioni, R. B. , Munos, J. P. , Barbeito, L. The molecular basis of Alzheimer's disease and other neurodegenerative disorders. Arch. Med. Res. 32,367-381 (2001)
Rapoport, M. , Dawson, H. N. , Binder, L. I., Vitek, M-P. , Ferreira, A. Tau is essential to beta-amyloid-induced neurotoxicity. Proc.Natl. Acad. Sci. USA 99, 6364-6369 (2002) Richardson, J. A. , Burns, D. K. Mouse models of Alzheimer's disease: a quest for plaques andtangles. ILARJ 43,89-99 (2002)
Schwarze, S. R. , Ho, A. , Vocero-Akbani, A. , Dowdy, S. F. In vivo protein transduction: Delivery of a biologically active protein into the mouse. Science 285,1569-1572 (1999)
Schwarze, S. R. , Hruska, K. A. , Dowdy, S. F. Protein transduction: unrestricted delivery into all cells ? Trends Ce//. Biol. 10,290-295 (2000)
Sanely, T. P. , Vasi, N. , Denenberg, A. , Wong, H. R. The serine/threonine phosphatase PP2A, endogenous regulator of inflammatory cell signaling. J. Immunol. 166,966-972
Bastians H, Krebber H, Hoheisel J, Ohl S, Lichter P,Ponstingl H and Joos S. " Assignment of the human serine/threonine protein phosphatase 4 gene (PPP4CC) to chromosome16p11-p12 by fluorescence in situ hybridization " JOURNAL Genomics 42 (1), 181-182 (1997)
Bastians, H. , Krebber, H. , Vetrie, D. , Hoheisel, J. , Lichter, P., Ponstingl, H. and Joos,S. " Localization of the novel serine/threonine protein phosphatase 6 gene (PPP6C) to human chromosome Xq22. 3 " JOURNAL Genomics 41 (2), 296-297 (1997)
Stone, S. R., Mayer, R. , Wernet, W. , Maurer, F. , Hofsteenge, J. and Hemmings, B. A. " The nucleotide sequence of thecDNA encoding the human lung protein phosphatase 2A alpha catalytic subunit " JOURNAL Nucleic Acids Res. 16 (23), 1365 (1988)
Hemmings, B. A., Wernet, W. , Mayer, R. , Maurer, F. , Hofsteenge, J. and Stone, S. R. " The nucleotide sequence of thecDNA encoding the human lung protein phosphatase 2A beta catalytic subunit " JOURNAL Nucleic Acids Res. 16 (23), 11366 (1988)
Quaderi, N. , Schweiger, S. , Gaudenz, K. , Franco, B., Rugarli, E. I., Berger, W. , Feldman, G. J., Volta, M. , Andolfi, G. , Gilgenkrantz, S. , Marion, R. W.,Hennekam, R. C. M. , Opit, J. M. , Muenke, M. , Ropers, H. H. andBallabio, A. " Opitz G/BBB syndrome, a defect of midline development, is due to mutations in a new RING finger gene on Xp22 " JOURNAL Nat. Genet. 17 (3),285-291 (1997)
Buchner, G. , Montini, E. , Andolfi, G. , Quaderi, N. , Cainarca, S., Messali, S. , Bassi, M. T., Ballabio, A. , Meroni, G. and Franco, B. " MID2, a homologue of the Opitz syndrome gene MID1 : similarities in subcellular localization and differences in expression during development " JOURNAL Hum. Mol. Genet. 8 (8), 1397-1407 (1999)
Onda, M., Inui, S. , Maeda, K. , Suzuki, M. , Takahashi, E. and Sakaguchi, N. " Expression and chromosomal localization of the human alpha 4/IGBP1 gene, the structure of which is closely related to the yeast TAP42 protein of the rapamycin-sensitive signal transduction pathway " JOURNAL Genomics 46 (3), 373-378 (1997)
Liu Jun et. al., " Phosphorylation and microtubule association of the Opitz syndrome proteinmid-1 is regulated by protein phosphatase 2A via binding to the regulatory subunit a4 " , PNAS, 6650-6655, vol 98 (2001)
Estelle Sontag, " Protein phosphatase 2A: the Trojan Horse of cellular signaling " , Cellular Signaling 13,7-16 (2001)
Short, Kieran M. et al., " MID1 and MID2 homo-and heterodimerise to tether the reapamycin-sensitive PP2A regulatory subunit... " , BMC Cell Biology 3 (2002)
Trockenbacher etal., " MID1, mutated in Opitz syndrome, encodes an ubiquitin ligase that targets phosphates 2A for degradation " , Nature Genetics, vol. 29,287- 294 (2001)
Wicking C andMcGlinn E. , " The role of hedgehog signaling in tumorigenesis " , Cancer Lett.; 173(1) : 1-7 (2001)
Ruiz i Altaba A. et al., " Gli and hedgehog in cancer: tumours, embryos and stem cells " , Nat Rev Cancer 2 (5): 361-372 (2002)
Mullor et al., " Pathways and consequences: Hedgehog signaling in human disease " , Trends Cell Biol. 12 (12): 562-569
Elbashir et al., " Duplexes of 21-nucleotide RNAs mediate RNA intererence in cultured mammalian cells " , Nature 411 (6836): 494-498 (2001)
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は,MID1とポリユビキチン化蛋白質との結合を示す。
【図2】図2は,MID1をおとりとして用いた酵母ツーハイブリッドスクリーニングにおいて見出された胎児脳ライブラリ中のポジティブクローンおよび欠失変異体をおとりとして用いるMID1上のα4の結合部位のマッピングを示す。
【図3】図3は,COS7細胞におけるMID1−α4相互作用を示す。
【図4】図4は,胚性線維芽細胞におけるユビキチン媒介性蛋白質溶解によるPP2Aの制御を示す。
【図5】図5は,MID1発現に対するPP2Ac量の依存を示す。
【図6】図6は,OS由来胚性線維芽細胞におけるサイトゾルおよび微小管結合蛋白質の過少リン酸化を示す。
【図7】図7は,PP2AのMID1媒介性ユビキチン依存性制御経路およびOSにおけるその破壊の仮想モデルを示す。
【図8】図8は,培養U373MG細胞におけるGFP−GLI3の局在化を示す。
【図9】図9は,Tau−1免疫反応性を示す。
【図10】図10は,減少したPP2Ac分解が転写因子Gli3の局在化に及ぼす影響を示す。
【図11】図11は,RNAiによるα4のダウンレギュレーションがHeLa細胞の増殖に及ぼす影響を示す。
【図12】図12は,HeLa細胞における過剰発現したGFP−タグ付きGli3の局在に及ぼすα4の過剰発現の影響を示す。
【図13】図13は,Gli3の局在化の変化がパッチド遺伝子の転写に及ぼす影響を示す。
【図14】図14は,−humanFused−リン酸化を示す。
【図15】図15は,−hFused−リン酸化を示す。
【図16】図16は,−hfused−リン酸化を示す図15の実験の再現である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非生理学的に増加した細胞内レベルの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2A(PP2Ac)の触媒サブユニットと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患を予防または治療する方法であって,前記疾患に罹患しているかまたは前記疾患を発症する危険のある被験者に,薬学的有効量のMID1またはMID2の群より選択される蛋白質または前記蛋白質をコードする核酸を投与することを含む方法。
【請求項2】
非生理学的に減少した細胞内レベルの微小管結合蛋白質ホスファターゼ2A(PP2Ac)の触媒サブユニットと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患を予防または治療する方法であって,前記疾患に罹患しているかまたは前記疾患を発症する危険のある被験者に,薬学的有効量のMID1またはMID2のペプチド性フラグメントであって,MID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメント,または,α4に結合するが固有のホスファターゼ活性を有しない有効量のPP2Acのフラグメント,または,PP2Acに対する結合部位を含むα4のペプチド性フラグメント(好ましくは,アミノ酸111−202),または,アミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメント,または,前記ペプチドフラグメントをコードする有効量の核酸分子,または,MID1またはMID2とα4との相互作用を妨害するか,またはα4とPP2Acとの間の相互作用を妨害する有効量の分子,または,これらの相互作用の制御を妨害する有効量の分子,または,MID1および/またはα4の発現または活性を妨害する有効量の分子を投与することを含む方法。
【請求項3】
前記疾患が骨粗鬆症である,請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記疾患が神経変性性疾患であるか,またはアポトーシスと関連するかまたはこれにより引き起こされる疾患である,請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記疾患がアルツハイマー病またはタウロパシーである,請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記疾患が癌または転移である,請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記疾患が炎症性疾患である,請求項2記載の方法。
【請求項8】
前記蛋白質または前記ペプチドフラグメントがTATに融合されている,請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
MID1および/またはα4の発現を妨害する分子がRNAiである,請求項2記載の方法。
【請求項10】
MID1とα4との相互作用を妨害する前記分子が小分子である,請求項2記載の方法。
【請求項11】
前記疾患がオピッツ疾患である,請求項1記載の方法。
【請求項12】
MID1またはMID2の群より選択される蛋白質または前記蛋白質をコードする核酸を含む組成物。
【請求項13】
MID1またはMID2のペプチド性フラグメントであってMID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメント,または,α4に結合するが固有のホスファターゼ活性を有しない有効量のPP2Acのフラグメント,または,PP2Acに対する結合部位を含むα4のペプチド性フラグメント(好ましくは,アミノ酸111−202),または,アミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメント
または前記ペプチドフラグメントをコードする有効量の核酸分子,または,MID1またはMID2とα4との相互作用を妨害するか,または,α4とPP2Acとの間の相互作用を妨害する有効量の分子,または,これらの相互作用の制御を妨害する有効量の分子,またはMID1および/またはα4の発現または活性を妨害する有効量の分子を含む組成物。
【請求項14】
医薬組成物である,請求項12または13に記載の組成物。
【請求項15】
MID1とα4との相互作用を妨害する分子を同定する方法であって,
(a)候補分子の存在下で,適当な条件下で,MID1またはMID2,またはMID1もしくはMID2のペプチド性フラグメントであって,MID1のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)またはMID2のアミノ酸108−165(好ましくは,110−165)を含むペプチド性フラグメントを,α4または好ましくはアミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメントと接触させ,または,α4または好ましくはアミノ酸236−279を含むα4のペプチド性フラグメントを,PP2AcまたはPP4CまたはPP6C,またはPP2AcもしくはPP4CもしくはPP6cのペプチド性フラグメントと接触させ;そして
(b)前記候補分子が前記相互作用を妨害するか否かを評価する,
ことを含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公表番号】特表2006−501152(P2006−501152A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−504963(P2004−504963)
【出願日】平成15年5月15日(2003.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/005124
【国際公開番号】WO2003/096964
【国際公開日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(390040420)マックス−プランク−ゲゼルシャフト・ツア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・エー・ファオ (54)
【住所又は居所原語表記】Berlin,BRD
【Fターム(参考)】