説明

非直線状の脚を伴うパイ形プリフォームおよびその製造方法

【課題】強化コンポジット材料のための織りプリフォーム(200)であり、平らに織り所定の形にするものの提供。
【解決手段】プリフォームは、三次元の織り構造をもち、横糸繊維(214)の織りによって、各層内の繊維をインターロックするだけでなく、縦糸繊維(216)の層について層と層とをインターロックするようにしている。ベース(200)から1または2以上の脚(225,235)が伸び、それらベース(200)および脚(225,235)は、それぞれ少なくとも2層の縦糸繊維(216)を含む。脚は、縦糸方向におよび/または横糸方向に正弦波を描くように動き、それらは互いに平行か斜めになっている。ベースおよび/または脚の外側の端部は、縦糸繊維の層が段のあるパターンで終わるテーパをもたせることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般的には、織りプリフォームに関し、特には、強化コンポジット材料に用いる織りプリフォームに関し、平坦に織り、最終形状に折ることができる技術に関する。
【引用による組み入れ】
【0002】
ここで引用するすべての特許、特許出願、文書、文献、製造者の使用説明書、解説、製品仕様書、およびここで述べる製品についての製品説明書を引用によってここに組み入れ、しかもまた、この発明を実施する上で使用する。
【背景技術】
【0003】
構造的な構成要素あるいは部品を製造するために、強化コンポジット材料を用いることは、今や一般的である。特に、重さが軽いこと、強固、丈夫、耐熱性、自らを支える能力、および形作る上で適合するという、好ましい特性が求められるところでは広く普及している。そのような構成要素あるいは部品は、たとえば、航空、航空宇宙産業、人工衛星、レクレーション分野(レース艇やレーシングカーなど)、およびその他の分野で用いられる。
【0004】
そのような構成要素あるいは部品は、典型的に、マトリックス材料の中に埋め込んだ強化素材から構成される。強化の構成部分は、ガラス、炭素、セラミックス、アラミド、ポリエチレン、および/または、物理的、熱的、化学的および/またはその他の好ましい特性、第1には応力に対する大きな耐久性を示すその他の材料から構成される。そのような強化材料、それらは結局は完成品の構成要素になるのであるが、それらを使用するとき、たとえば非常に大きな強度のようなそれら強化素材の望ましい特性が、完成したコンポジット部品に授けられることになる。構成要素である強化材料は、典型的には、織られたり編まれたり、あるいはその他のやり方で強化プリフォームのための好ましい形状および形に形成される。通常、選択理由である強化材料の特性が最大限に活用されるように注意が図られる。また、そのような強化プリフォームについては、マトリックス材料と組み合わせることにより必要な完成品を得、あるいは、完成品の最終生産のために役立つ在庫品を得る。
【0005】
必要な強化プリフォームを構成した後、そのプリフォームをマトリックス材料中に含浸させるようにする。それにより、強化プリフォームは、マトリックス材料で包まれ、マトリックス材料は強化プリフォームの構成要素の間のすき間部分を埋める。マトリックス材料としては、たとえば、エポキシ、ポリエステル、ビニル−エステル、セラミックス、炭素および/またはその他の材料で、必要とする物理的、熱的、化学的および/または他の特性を示すものなど、いろいろな材料を広く適用することができる。マトリックスとして用いる材料としては、強化プリフォームの材料と同じものでも良いし、異なるものでも良く、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似したものでも良いし、類似しないものでも良い。しかし、通常、それらは強化プリフォームと同じ材料ではなく、また、物理的、化学的、熱的あるいは他の特性が類似しない。なぜなら、第1にコンポジットを用いる通常の目的は、ただ一つの構成材料だけでは得ることができない組合せ特性を完成品で得ることにあるからである。強化プリフォームおよびマトリックス材料は、そのように組み合わされた後、熱硬化処理あるいは他の公知の方法で同じ作業工程において硬化および安定化され、さらに、目的とする構成部品を製造するための他の作業工程に入る。ここで、そのように硬化した時点において、マトリックス材料の固体化したものが、通常、強化材料(たとえば、強化プリフォーム)に非常に強く付着していることに気付くことが大事である。結局、完成品上の応力が、繊維間の接着剤として機能するそのマトリックス材料を特に通して、補強された強化プリフォームの構成材料に有効に移され保持される。
【0006】
構成要素あるいは部品にしばしば求められることは、たとえば平板、薄板、長方形あるいは正方形の立体などの幾何学的に単純な形状以外の形状のものを製造することである。これに応えるための一つの方法は、そのような基本的な幾何学形状を組み合わせることにより、求められる複雑な形態にすることである。そのような典型的な組合せの一つは、上で述べたようにして作った強化プリフォームを互いに角度をもって(典型的には、直角)接合することにより作ったものである。そのような角度をもって強化プリフォームを接合し配列する普通の目的は、1または2以上の端壁やたとえば「T」交差を含む強化プリフォームを形作る狙いとする形を作り出すこと、あるいは、強化プリフォームの組合せで得たものおよびコンポジット構造について、圧力や張力などの外力を受けた場合でもたわみや破損に耐えられるように強化することである。とにかく、関連する動機は、構成する構成要素間の各連結をできるだけ強固にすることである。強化プリフォームの構成要素それ自体に求められる非常に大きな強度が与えられるとき、構造上の「チェーン」における「弱いリンク」となるのが、実際上、連結における弱さである。
【0007】
交差する構成の一例について、USP第6,103,337号が示している。その文献に示す内容は、参照によってこの中に含ませる。その文献においては、2つの強化板(補強プレート)をT型に結合する有効な方法を示している。
【0008】
今まで、そのような結合を作るために他のいろいろな方法が提案されている。パネル構成要素と、角度をもって置く強化のための構成要素とを互いに別々に作り硬化することが提案されている。後者の構成要素は、単一のパネル接触面をもつか、あるいは、一端が二股に分かれて分岐した同一平面上の2つのパネル接触面をもっている。そして、2つの構成要素は、熱硬化接着剤あるいは他の接着材料を用いて、強化のための構成要素のパネル接触面を他の構成要素の接触面に接着によって結合する。しかし、硬化したパネルに対しあるいは複合構造の外皮に対し張力がかかると、結合の有効な強度が接着剤のそれではなく、マトリックス材料のそれであることから、受け入れることができないような小さな値の負荷が「はがし(ピ−ル)」力となり、それが強化のための構成要素をパネルとの界面でパネルから分離してしまう。
【0009】
そのような両構成要素の界面に金属ボルトやリベットを用いることはできない。なぜなら、そのような付加をすれば、複合構造自体の完全な形の少なくとも一部を破壊し弱めてしまうし、重さを増すことになるし、そのような構成要素と周囲の材料との熱膨張係数に違いを生じてしまうからである。
【0010】
この問題を解決する他の方法では、結合領域の全域に高い強度の繊維を加えるという考え方を基礎にしている。すなわち、2つの構成要素の一方を他方に縫い、縫い糸によってそのような強化繊維が結合に加わるようにしている。USP第4,331,495号がそのような方法の一つを示し、また、USP第4,256,790号がそれを分割したものである。これらの特許は、繊維層を接着によって結合した第1および第2の複合パネル間の接合について示している。第1のパネルは、一端で二股に分かれ、従来技術のように同一平面上の2つのパネル接触面をもつ。その第1のパネルと第2のパネルとを結合するため、両パネルを通して未硬化のフレキシブルな複合糸を縫い込んでいる。その後、両パネルおよび縫い込んだ糸は、「共に硬化」、つまり同時に硬化される。また、USP第5,429,853号が、結合強度を改良する他の方法を示している。
【0011】
今までも強化のための複合物を構造的に一体化しようとする改良がなされ成功しているが、特にUSP第6,103,337号のものでは、接着剤あるいは機械的な結合部材を用いる場合とは異なる方法における問題に取り組みそれを改良するという要求がある。この点から、特殊化した専用の機械によって、三次元(「3D」)の織り構造を作り出す方法が考えられる。しかし、それにはかなりの費用がかかるし、しかも、織機で単純な構造を作り出すという要求が強く求められるところである。この事実にもかかわらず、繊維強化コンポジットの構成要素に加工することができる3Dプリフォームは、魅力的である。なぜなら、それらの構成要素は、今までの二次元の積層コンポジットよりも大きな強度を提供するからである。それらのプリフォームは、面外荷重を支えるコンポジットを必要とする用途に特に有用である。しかし、上に述べた今までのプリフォームでは、大きな面外荷重に耐える上、自動織機で織る上で、およびプリフォームに厚さの異なる部分を得る上で能力的な制限がある。
【0012】
他の方法として、二次元(「2D」)の構造に織り、それを所定の3D形に折り込むことが考えられる。しかし、その方法では、プリフォ−ムを折り込むときに、一般にところどころゆがめてひずみを生じてしまうことになる。ひずみが生じる原因は、織られた繊維の長さがプリフォ−ムを折り込むときの長さと異なるからである。これによって、織られた繊維の長さが短すぎる領域には、くぼみや波状を生じ、また、織られた繊維の長さが長すぎる領域には、曲げを生じる。3Dプリフォーム織り構造物の一例、そのものでは、プリフォームを折ったとき領域に波状あるいはループを生じるだろうが、USP第6,874,543号がその一例を示す。そのすべての内容を参照によってここに組み込む。たとえば、「T」、「I」、「H」あるいは「パイ」断面のような特定の構造による形を伴う繊維プリフォームは、今までの有ひ織機で織ることができる。存続するいくつかの特許(たとえば、USP第6,446,675号やUSP第6,712,099号)がそのような構造を織る方法を示す。しかし、今までのすべての技術は、プリフォームの断面を縦糸および横糸の繊維方向に同様に構成している。すなわち、フランジと直立した脚との間の交差部分が、プリフォームの幅および長さにわたって常に同じ所に位置している。
【発明の概要】
【0013】
より複雑な形が求められる用途においては、縦糸および/または横糸の繊維方向に異なる断面をもつプリフォームを作り出す方法およびシステムが求められる。ある用途において、それらの複雑な形を作るために、プリフォームのフランジあるいは脚が縦糸および/または横糸の繊維方向に動くようにすることが必要である。
【0014】
この発明は、多数の脚を伴う繊維プリフォームを織るに際し、それらの脚が必ずしも縦糸および/または横糸の方向に直線にならないように織る方法である。この発明の典型的な実施例は、正弦波の脚、すなわち、直立した複数の脚が縦糸および/または横糸の方向に正弦曲線を描くように動く脚を伴う「パイ」プリフォームである。
【0015】
正弦波については、たとえば、直立した脚の一つを形作るプリフォームの部分からいくつかの縦糸繊維を選択的に外し(目落ちさせ)、同時に他の直立した脚に縦糸繊維を加えることによって作り出す。たとえば、脚を横糸方向に左側に動かすため、直立した脚の一つのベース部分で縦糸繊維を外し、同時に隣接する直立した脚のベース部分で加える。同様に、脚を右側に動かすために、逆のことを行う。
【0016】
この発明は、また、他の断面の形、たとえば「T」形あるいは「T」の上部に関して正弦曲線を描くように走る「T」のブレードをもつ「T」スチフナ、または3あるいはそれより多い脚をもつプリフォームのような他の形を作るためにも用いることができる。
【0017】
この発明の方法は、可変の厚さあるいは可変の長さ、または互いに平行あるいは斜めになった高さのある脚を伴うプリフォームを織るために用いることができる。プリフォームの脚は、同様幅のクレビスあるいは可変幅のクレビスによって分離することができる。プリフォームは、縦糸繊維に対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。炭素繊維が好ましいが、この発明は、たとえばガラス、セラミック、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの他のタイプの繊維にも実際上適用することができる。
【0018】
したがって、この発明の一つの目的は、脚が必ずしも縦糸および/または横糸の方向に直線にならないような、1または2以上の直立した脚を伴う3D織りプリフォームを提供することである。
【0019】
この発明の別の目的は、2または3以上の直立した脚であり、脚の間に可変の幅のクレビスをもつ3D織りプリフォームを提供することである。
【0020】
この発明の他の目的は、現存するプリフォームおよび/または今までの強化コンポジット構造物に代わるもの、および/またはそれらの改良を目指した3D織りプリフォームを提供することである。
【0021】
また、この発明の他の目的は、3Dプリフォームを構成する繊維に歪みを生じることなく、所定の形に折ることができる一体織りの3D織りプリフォームを提供することである。
【0022】
さらに、この発明の別の目的は、パイ形あるいはT形の強化コンポジットを形成する上で特に有用な一体織りの3D織りプリフォームを提供することである。
【0023】
これらならびに他の目的および利点を得るため、この発明では、樹脂を注入するに先立ち、平坦に織った後で所定の形に折るようにした織り3Dプリフォ−ムを提供することにより、繊維に好ましくないひずみを生じることがないようにする。これを達成するため、織りをする間に繊維の長さを調節し、プリフォ−ムをなめらかな折り目をもつ形に折り込むとき、繊維の長さが一様になるようにする。この技術は、パイ形の織りプリフォ−ムに特に適しているが、たとえば「T」形または3もしくは4以上の直立した脚をもつプリフォームなど、いろいろな形のものに利用することができる。
【0024】
この発明の一実施例は、三次元の織り構造をもつ機械的あるいは構造上のジョイント用プリフォームであり、横糸繊維の織りによって、各層内の繊維を組み合わせる(インターロックする)だけでなく、縦糸繊維の層について層と層とを組み合わせるようにしている。この中で述べる典型的な実施例は、層と層とのインターロックを含むが、この発明を実施する上で、そのことは必ずしも必要ではない。プリフォームのいくつかの層は、層と層とのインターロックを行わない。その織りプリフォームは、規制された繊維によって面外荷重を伝達し、層間の張力(応力)を最小にする。そのプリフォームは、ベースと、そのベースから広がる1または2以上の脚とを備え、ベースおよびその(それらの)脚は、それぞれ縦糸繊維による少なくとも2つの層を含む。
【0025】
横糸繊維の織りシーケンスといえば、次のとおりである。横糸繊維は、ベースの一部分を通った後で脚に入り、最後にベースの向かい側の部分を通る。複数の脚は、脚間に位置する縦糸繊維の偶数あるいは奇数の番号のコラムによって、対称的あるいは非対称的に分布したコラムの交差部分で結びつけることができる。プリフォームは、等しいか等しくない脚長さおよび/または高さをもつ。複数の脚は、ベースに対して垂直にすることもできるし、非垂直あるいは斜めにすることもできる。また、複数の脚は、互いに平行にすることができるし、斜めにすることもできるし、間に可変幅のクレビスをもたせることもできる。1または2以上の脚は、縦糸および/または横糸の方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に動くことができる。ベースおよび/または脚の外側の端については、縦糸繊維の層が段のあるパターンで終わるテーパをもたせることが好ましい。
【0026】
この発明の別の実施例は、強化コンポジット材料に用いるプリフォームの形成方法である。プリフォームは、三次元の織り構造をもち、横糸繊維の織りによって、各層内の繊維を組み合わせる(インターロックする)だけでなく、縦糸繊維の層について層と層とを組み合わせるようにしている。この中で述べる典型的な実施例は、層と層とのインターロックを含むが、この発明を実施する上で、そのことは必ずしも必要ではない。プリフォームのいくつかの層は、層と層とのインターロックを行わない。その織りプリフォームは、規制された繊維によって面外荷重を伝達し、層間の張力(応力)を最小にする。そのプリフォームは、ベースと、そのベースから広がる1または2以上の脚とを備え、ベースおよびその(それらの)脚は、それぞれ縦糸繊維による少なくとも2つの層を含む。横糸繊維の織りシーケンスは、次のとおりである。横糸繊維は、ベースの一部分を通った後で脚に入り、最後にベースの向かい側の部分を通る。複数の脚は、脚間に位置する縦糸繊維の偶数あるいは奇数の番号のコラムによって、対称的あるいは非対称的に分布したコラムの交差部分で結びつけることができる。プリフォームは、等しいか等しくない脚長さおよび/または高さをもつ。複数の脚は、ベースに対して垂直にすることもできるし、非垂直あるいは斜めにすることもできる。また、複数の脚は、互いに平行にすることができるし、斜めにすることもできるし、間に可変幅のクレビスをもたせることもできる。1または2以上の脚は、縦糸および/または横糸の方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に動くことができる。ベースおよび/または脚の外側の端については、縦糸繊維の層が段のあるパターンで終わるテーパをもたせることが好ましい。
【0027】
この発明、ならびに、それを使用することによって得る作用効果および特定の目的について良く理解するため、詳細な説明を参照されたい。そこには、この発明の好ましい実施形態(これに限定されない)が図面に示されている。
【0028】
この中で用いる用語「備えている(comprising)」および「備える(comprises)」は、「含んでいる(including)」および「含む(includes)」という意味になるし、あるいは米国特許法におけるそれらの意味にもなる。また、「本質的に有している(consisting essentially of)」および「本質的に有する(consists essentially of)」の用語は、クレームで用いるときには、米国特許法におけるそれらの意味である。この発明の他の考え方(形態)については、以下の説明に記載されているか、その記載から自明である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の典型的な一実施例のパイ形プリフォームの模式的な側面図であり、フルピックおよび繊維構造の形成を示す。
【図2(a)】この発明の典型的な一実施例によるプリフォームを示す写真である。
【図2(b)】今までのプリフォームを示す写真である。
【図3】この発明の典型的な一実施例のパイ形プリフォームの模式的な側面図であり、その中の繊維構造を示す。
【図4】この発明の典型的な一実施例のパイ形プリフォームの模式的な断面図であり、プリフォームは直立状態の脚を伴う。
【図5】この発明の典型的な一実施例のパイ形プリフォームの模式的な側面図であり、プリフォームの織りパターンあるいは繊維構造を示す。
【図6(a)】この発明の典型的な一実施例によるパイ形プリフォームの模式的な断面図であり、平らに織った状態を示す。
【図6(b)】この発明の典型的な一実施例によるパイ形プリフォームの模式的な断面図であり、脚を折り上げた状態を示す。
【図6(c)】この発明の典型的な一実施例による織りプリフォームの模式的な上面図であり、プリフォームは直立状態の正弦波の脚を伴う。
【図7(a)】この発明の典型的な一実施例による正弦波の脚を伴うパイ形プリフォームを示す図であり、トリミング前の状態を示す。
【図7(b)】この発明の典型的な一実施例による正弦波の脚を伴うパイ形プリフォームを示す図であり、トリミング前の状態を示す。
【図7(c)】この発明の典型的な一実施例による正弦波の脚を伴うパイ形プリフォームを示す図であり、トリミング後の状態を示す。
【図7(d)】この発明の典型的な一実施例による正弦波の脚を伴うパイ形プリフォームを示す図であり、トリミング後の状態を示す。
【図8】この発明の典型的な一実施例のコンポジットIビームの模式的な断面図であり、ビームは二つのパイ形プリフォームを用いて形成している。
【図9】この発明の典型的な一実施例による織りパイ形プリフォームの模式的な上面図であり、プリフォームはジグザグ形の脚を伴う。
【図10】この発明の典型的な一実施例による織りパイ形プリフォームの模式的な上面図であり、プリフォームは斜めの脚を伴う。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1、2a、3および4は、三次元のプリフォーム100の好ましい実施例を示す。プリフォーム100は、面に垂直に伸びる多数の縦糸繊維116によるパターンの中に1または2以上の横糸繊維を織ることによって形作る。図1および3には、パイ形のプリフォーム100を形作るための完全なパターンを示し、そこには、横糸繊維114を紙面に沿う方向に示し、また、縦糸繊維116を紙面に垂直な方向に示す。模式的な図には繊維あるいは糸114,116を間隔を置いて示すが、完全なプリフォーム100を実際に織るときには、繊維あるいは糸114,116は、ぎっしり詰まっている。
【0031】
さて、図1を参照すると、プリフォーム100の縦糸繊維116のすべてが、一般的に互いに平行であり、各繊維116は長さ方向に沿って少しうねっており、縦の(垂直な)支柱の中に配列されている。プリフォーム100は、代表的なコンポジット構造物に用いる材料、たとえば、ガラス繊維、アラミドおよび炭素繊維から織るのが好ましい。一つの典型的な実施例は、織ることにより、ベース120、およびベース120から伸びる2つの脚125,135をもつようにし、パイ形の外形にする。脚125,135については、ベース120に対して垂直にすることもできるし、非垂直で角度をもたせるようにすることもできる。ベース120と脚125,135とは、それぞれ少なくとも2層の縦糸繊維116を含み、図には任意の端が先細となったものを示す。脚125,135は、使用時には直立させ、たとえば図4に示すようなクレビス150を形作るが、織りを容易にするため、脚125,135をベース120上に横にするようにプリフォーム100を織る。図には、ベース120が8層の縦糸繊維116を含み、脚125,135が4層の縦糸繊維116を含む例を示す。この例では、ベースおよび脚に対しそれぞれ8層および4層を用いているが、この発明は、それに限定されるわけではなく、ベースおよび脚に対してどのような数の層をも用いることができる。
【0032】
選択可能なことであるが、図に示すように、ベース120の縦糸繊維116を、脚125,135の縦糸繊維116よりも断面積が小さなものにすることができる。脚125,135ではなく、ベース120の縦糸繊維116についてのみ細い縦糸繊維116を用いることにより、縦糸繊維116でたくさんのインターロックを行い、プリフォーム100のベース120強度を高めたとしても、織機で織るのに必要な時間増を最小限にすることができる。
【0033】
図1を再び参照すると、プリフォーム100は、ベース120の一端105、それは図のベース120の左側であるが、その一端から始まる織りパターンを備える。織りシーケンスの代表的な部分において、横糸繊維114は、右に向かって通るとき、一つの層の縦糸繊維116の上と下とを交互に通り、その層の繊維116をインターロックする。また、織りシーケンスの代表的な部分において、横糸繊維114は、左に向かって通るとき、2つの隣接する層の縦糸繊維116の上と下とを交互に通り、隣接した層を互いにインターロックする。この中で述べる典型的な実施例は、層と層とのインターロックを含むが、この発明を実施する上で、そのことは必ずしも必要ではない。プリフォームのいくつかの層は、層と層とのインターロックを行わない。図に示し、しかも、次に説明するように、脚125,135の内部、プリフォーム100の端および外側面を含む各部分の織りシーケンスは、この織りシーケンスとは異なる。
【0034】
図1に示すように、一般的な織りシーケンスの始点は横糸繊維114の位置Aであり、そこからベース120の中央に向かって伸び、それから位置B1で脚の一つ135の外側112に入っていく。横糸繊維114は、その後、脚135の右のはるか右の位置Cに伸びる。位置Cから、横糸繊維114は、同じラインに沿って織り戻り、ベース120の中央に向かい、その位置から横糸繊維114はベース120の中を下方に伸び、脚125のほとんど左端の位置Dに向かって他方の脚125の外側112の中に戻る。横糸繊維114は、その後、同じラインに沿って織り戻り、ベース120の中央に向かい、位置B2でベース120の中に戻るように伸び、脚125,135の間に位置する、縦糸繊維116による中央支柱を通過する。そして、横糸繊維114は、位置Eでベース120に戻り、ベース120の他方の端115の位置Fに到達する。これが、横糸繊維114の完全な織りシーケンスを構成し、図1に示すように、そのシーケンスは、基本的に、3つのフルピックと一緒に4つのハーフピックを結合する。段のあるパターンで縦糸繊維116の層を終えると、たとえば、ベース120の左側端のテーパ124および脚125上のテーパ126のように、ベース120および脚125,135上に先細の端を形作る。
【0035】
一つのユニットセル、あるいは垂直部分を完結するため、縦糸繊維116の隣接する層に対して、プリフォーム100を横切って横糸繊維114を通すことを繰り返し、すべての層をインターロックする。横糸パターンを繰り返し行い、隣接する垂直部分を形作り、連続した長さをもつプリフォームを作り出す。しかし、層のインターロックは必ずしも必要ではなく、プリフォーム100のベース120および/または脚125,135は、分離した層の中に分岐することができる。
【0036】
図3は、特に、パイ形のプリフォーム100における脚125,135およびベース120を形作るために用いる織りパターンを示す。ベース120には、縦糸繊維116の8つの層を伴い、また、脚125,135には、縦糸繊維116の4つの層を伴う。勿論、このパターンについては、ベース120および脚125,135における縦糸繊維の層をより多くあるいはより少なくすることができる。言い換えると、ベース120は、脚125,135のそれぞれよりも多くの層をもつようにすることができるし、その逆にすることもできる。この織りパターンによって、一層の中の縦糸繊維116をインターロック、および、縦糸繊維の層間のインターロックを行う。隣接する層は、第1の支柱の第1の層では、横糸繊維114の一部が縦糸繊維116上を走ることにより、また、隣接する第2の支柱の第2の層では、縦糸繊維の下を走ることにより、インターロックされる。ここで、第2の層は第1の層の下に位置する。パターンを織るとき、脚125,135は、図に示すように、横になった水平位置で織る。取付けの際には、脚125,135のそれぞれを垂直な立ち位置に動かす。直立した各脚125,135の幅は、4つの層を含む。
【0037】
プリフォーム100は、今までの織りプリフォームを改良し、ベース120を伴う脚125,135の交差について高い対称的な分布を生み出す。ベース120は、縦糸繊維による3つの中央支柱、および縦糸繊維による2つの分離支柱を備える。分離支柱は、中央支柱の両方の側面に隣接する支柱である。奇数の数の中央支柱を用いることによって、中央支柱を二分する対称面の両側面にほぼミラーイメージ(鏡像)を形作るように織り、ベース120内部の荷重分布の対称性を高めることができる。中央支柱が3つのものを示しているが、プリフォーム100の好ましい実施例において、中央支柱がどのような数をももつようにすることができる。中央支柱の数は、脚125,135を直立させたときに形作られるクレビス150の名目上の幅で決まる。脚125,135は、ベース120に対して垂直にすることができるし、非垂直の角度をもたせるようにすることもできる。同様に、脚125,135は、互いに平行あるいは斜めにすることができるし、そして/また、等しいか等しくない長さおよび/または高さをもつようにすることができる。
【0038】
脚125,135からの荷重、たとえば、直立した脚125,135の間に結合した部材(図示しない)からの荷重をベース120に対称的に伝えるために、脚125,135を連結する横糸繊維114の部分は、等しいか実質的に等しい数の繊維部分のグループに分割する。各グループは、分離支柱の一つと中央支柱との間、あるいは、分離支柱の一つとその分離支柱に隣接する残りの右か左の側面の支柱との間で交差する。たとえば、図3に示すように、グループ29は、脚125の層2および4とベース120との間に伸び、ベース120との交差は支柱cとdとの間である。同様に、グループ31とベース120との交差は支柱dとeとの間、グループ33とベース120との交差は支柱gとhとの間、そして、グループ37とベース120との交差は支柱hとiとの間である。図には対称的な幾何学的配列を示すが、この発明の方法は、対称でない形態で製造することにも利用することができることに留意されたい。
【0039】
プリフォーム100のほぼ中央部の好ましい配置を示すが、中央支柱は、プリフォーム100の中央から横あるいは側部に位置する縦糸繊維116で構成することができる。たとえば、支柱b、cおよびdを中央支柱とし、支柱aおよびeを分離支柱とすることができる。これによって、脚125,135は中心から外れてベース120の外側の端の方に位置する。それでも、支柱b、cおよびdについてのベース120の織りには対称性があるし、脚125,135からベース120への荷重の分布にも対称性がある。たとえば、ベース120の左側端のテーパ124および脚125上のテーパ126のようなテーパは、縦糸繊維による連続的な層の長さを前のものよりも短く終えることによって、プリフォームの外側の端に形作る。たとえば、図3において、層6が支柱tで終わっているのに対し、層5は支柱sで終わり、層5は層6よりも縦糸繊維116一つ分だけ短い。同様に、層6は層7よりも短く、このパターンが隣接する下の層ごとに繰り返し生じる。ベースあるいは直立した脚のいずれか一方にテーパをもつプリフォームは、縦糸の層がすべて同じ長さで終えるプリフォームに比べて、剥離荷重に対して耐性が高い。それに加えて、縦糸繊維に対して細い径の繊維を用いることによって、プリフォームからそれに結合する構成成分への移り変わりをよりスムーズに、かつ、よりゆるやかにすることができる。図3の織りパターンは、ベース120の縦糸繊維116が8層である。
【0040】
図4には、織りを完成したパイ形のプリフォーム100を示し、それは、直立した脚125,135を含み、それらの脚125,135間にクレビス150を形作っている。しかし、脚125,135は、ベース120に対して垂直にすることもできるし、非垂直で角度をもたせるようにすることもできる。プリフォーム100を織るとき、プリフォーム100の長さ方向に沿う隣接する垂直部分を形作る完全な織りシーケンスを繰り返し行う。その織りを進行させることによって、連続した長さをもつプリフォーム100を生み出し、その後、取付けに必要な長さに切断する。図2(a)および図2(b)は、この発明によって形成したプリフォームの一例と、直立した脚の間にループ30を伴う先行プリフォーム10とを比較して示す。
【0041】
典型的な一例による発明は、多数の脚225,235を伴い、それらの脚が縦糸および/または横糸方向に必ずしも直線とならないプリフォーム200を織る方法である。典型的な一例において、脚は、縦糸および/または横糸方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に、またはそれらの組み合わせによって動くことができる。クレビス250の幅は、用途に応じて異なる。いくつかの例では、プリフォームは、ゼロ幅のクレビスをもつ。すなわち、プリフォームを形作る複数の層は、位置を変える所で互いに交差するが、プリフォームのどの部分でもそれらの層が必ずしも一緒に織り込まれることがないのである。しかし、この特徴は、この発明の機能を適切に得る上で本質的なものではなく、プリフォームの最終用途に応じて使用することもあり、使用しないこともある。この例による脚位置のシフト(移し替え)を行う場合、直立する脚225,235を形作るプリフォーム部分からいくつかの縦糸繊維216を選択的に外し(目落ちさせ)、同時に他の領域で縦糸繊維216を加える。たとえば、脚を横糸方向に左側に動かすため、直立した脚225の一つのベース部分で縦糸繊維216を外し、同時に隣接する直立した脚235のベースで加える。同様に、脚を右側に動かすために、逆のことを行う。この中で述べる典型例は縦糸方向に形成した脚を含むが、脚については、1または2以上の脚から横糸繊維を選択的に加えあるいは外すことにより横糸方向に形成することができる。そのような場合、横糸繊維の代わりに、縦糸繊維を用いることにより層と層とのインターロックを提供する。しかし、そのことは、この発明を実施するために不可欠ではない。
【0042】
図5は、縦糸繊維216に垂直なプリフォーム200の繊維構造を示す断面図である。個々の縦糸繊維216を円(丸)で示し、連続する横糸繊維214の経路を実線で示す。ここで留意すべきは、直立する脚225,235を形成する繊維の大部分がプリフォーム200の全長を通して連続していることである。端の繊維240だけが非連続である。それらの繊維240は、プリフォーム200の織り部分の上あるいは下に浮き織りになり、そして、プリフォームを織機から取り外した後で取り除かれる。この例による直立する脚225,235は、支持フランジあるいはベース220のどの位置へも動かすことができ、しかも、横糸繊維214によってフランジあるいはベース220に結合する。しかし、その位置については、一段ずつ変えなければならない。その一段の最小幅は一つの縦糸支柱の幅である。プリフォーム200は、縦糸繊維に対する今までのパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。
【0043】
一実施例の発明は、多数の脚305,310,315,320を伴う繊維プリフォーム300を織る方法である。それらの脚の配列を見ると、プリフォームが等しい幅のフランジをもち、フランジはプリフォーム300の長さを通してまっすぐであり、1または2以上の脚315,320はフランジに直交するが、プリフォーム300の長さを通して湾曲した経路が続く。縦糸繊維および横糸繊維は、上述した実施例で述べたように織ることができるし、単純に平織りパターンに織り異なる層を形成することもできる。この中で述べる典型例は縦糸方向に形成した脚を含むが、脚については、1または2以上の脚から横糸繊維を選択的に加えあるいは外すことにより横糸方向に形成することができる。そのような場合、横糸繊維の代わりに、縦糸繊維を用いることにより層と層とのインターロックを提供する。しかし、そのことは、この発明を実施するために不可欠ではない。プリフォームのいくつかの層は、層と層とのインターロックを行わないようにすることができる。
【0044】
この発明の典型的な一実施例を、図6(a)〜6(c)に示す。図6(a)は、この実施例による織りプリフォーム300の断面図を示す。プリフォーム300は、最初に互いの上に層になり、図6(a)に示すようにXY面に平行な4つの脚305,310,315および320を伴って平らに織る。脚315および320は、それぞれ脚305および310に関して折り、脚315および320が図6(b)に示すように直立状態にし、それによって「パイ」構成にすることができる。この例において、脚305および310はまっすぐなフランジあるいはベースを形成し、脚315および320が、図6(c)に示すように、まっすぐなフランジに関して、結果としてたとえば正弦波の経路をとる。
【0045】
層と層の構造であって縦糸方向の正弦波に沿って動く脚を伴うパイ形のプリフォームの異なる絵を図7(a)〜(d)に示す。図7(a)は、織りプリフォーム300の上面図であり、浮き織り繊維を取り除く前であり、上に脚315および320がある。図7(b)は、織りプリフォーム300の上面図であり、浮き織り繊維を取り除く前であり、上に脚305および310がある。図7(c)は、プリフォーム300の上面図であり、浮き織り繊維を取り除いた後であり、折りによる脚315および320が直立している。図7(d)は、プリフォーム300の上面図であり、浮き織り繊維を取り除いた後であり、折りによる脚305および310がフランジを形成している。
【0046】
この発明の一つの典型的な実施例は、縦糸繊維を横糸繊維と織り、ベースおよびベースから伸びる1または2以上の脚を形成する織りプリフォームの形成方法であって、第1の脚から1または2以上の横糸繊維を選択的に外し、および/または第1の脚に1または2以上の横糸繊維を選択的に加え、それによって、第1の脚を予め定めた距離だけ縦糸方向に動かすようにする。その方法は、また、第2の脚の横糸繊維を同時に加えおよび/または取り除き、それによって、第2の脚を予め定めた距離だけ縦糸方向に動かすことをも含む。横糸繊維を加えたり取り除くこのプロセスは、横糸方向の曲線に沿う1または2以上の脚を形成するために繰り返し行う。その1または2以上の脚については、横糸方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に、またはそれらの組み合わせになるように形成する。
【0047】
また、この発明の一つの典型的な実施例は、縦糸繊維の層と織った横糸繊維を含み、ベースおよびベースから伸びる1または2以上の脚を形成する織りプリフォームであって、第1の脚を形作るプリフォームの第1の部分から1または2以上の横糸繊維を選択的に外し、および/またはプリフォームの第1の部分に1または2以上の横糸繊維を選択的に加え、それによって、第1の脚を予め定めた距離だけ縦糸方向に動かすようにしている。その1または2以上の脚は、横糸方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に、またはそれらの組み合わせになるようになっている。
【0048】
上の実施例では正弦波のパイ形プリフォームを説明しているが、この発明はそのような形のものに限定されるわけではない。たとえば、プリフォームは、直立する脚315および320をもち、それらが縦糸方向および/または横糸方向にジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に、またはそれらの組み合わせになるように動くものとすることができる。図9および10に、それらの形のいくつかの例を示す。
【0049】
以上のようなプリフォームは、コンポジット構造に用いてジョイントを強化したり、そしてまた、航空機の桁やリブなどのより複雑な構造用のものに用いることができる。図8には、パイ形プリフォーム300を用いてコンポジットIビーム350を構築する例を示す。
【0050】
図8に示す構造物が破損あるいは故障する主要なモードは、ビーム350を曲げたり、あるいはZ方向に圧縮したとき、2つのパイフランジ300間のウェブ340が座屈することである。このタイプの構造物の座屈強度を改善する好ましい方法は、この発明の一実施例にしたがって、ウェブ340をX方向に正弦波形に形成することである。それによって、幾何学的な強固さをもたらし、重さをわずかに増すだけで座屈負荷をかなり増大させることができる。今までのプレプレッグから作ったコンポジット正弦波の桁やリブが、航空機の組み立てに用いられている。しかし、それらには、上部および下部のフランジにウェブからくるむ層を動かし織り込むことにかなりの労力が必要である。そこで、この発明は、パイ形の物の直立脚を正弦波形に織ることによって、その問題を解消する。ウェブ340は、長方形の細長い片から作ることができ、その片を正弦波形に容易に形作って、フランジあるいはベースに結合した直立する脚315,320の間に取り付けることができる。
【0051】
この発明の方法は、また、他の断面の形、たとえば「T」形あるいは「T」の上部に関して正弦曲線を描くように走る「T」のブレードをもつ「T」スチフナ、または3あるいはそれより多い脚をもつプリフォームのような他の形を作るためにも用いることができる。この発明の方法は、可変の厚さあるいは可変の長さ/高さの脚であり、1あるいは2以上の面上互いに平行あるいは斜めになった脚を伴うプリフォームを織るために用いることができる。プリフォームは、今までの織りパターン、すなわち、プライ対プライ、厚さ方向アングルインターロック、直交その他のパターンを用いて織ることができる。炭素繊維が好ましいが、この発明は、たとえばガラス、セラミック、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの他のタイプの繊維にも実際上適用することができる。図1、2(a)、3および7(a)〜(d)に示すように、横糸繊維は、たとえば平織りパターンで織ることができるが、プリフォームを形成する上で用いることができるどのような織りパターンでも織ることができる。横糸よりもむしろ、縦糸繊維がインターロックを与える。この中で述べる典型的な実施例は、層と層とのインターロックを含むが、この発明を実施する上で、そのことは必ずしも必要ではない。プリフォームのいくつかの層は、層と層とのインターロックを行わない。また、実施する上で、脚は、どのような層数のインターロックファブリックで構成することができるし、平らな端部に代えて傾斜する端部を含むよう、すなわち、ベースおよび/または脚の外側端部について縦糸繊維の層が段差状のパターンで終わるテーパをもつようにすることができる。
【0052】
一般に、プリフォームを織るときには、縦糸および横糸繊維に対して一つのタイプの繊維、たとえば、炭素(グラファイト)繊維を用いる。しかし、プリフォームは、また、たとえば炭素とガラス繊維のような多様な材料で形作るハイブリッド織りパターンにすることができる。そのような織りパターンにすれば、大きな強度、コスト低減、そして、最適化した熱膨張特性を得ることができる。織りパターンは、すべての縦糸をあるタイプで、しかも、すべての横糸繊維を別のタイプで構成することができるし、あるいはまた、たとえば、層の全体にわたって「チエッカー盤(市松模様)」のように、縦糸および/または横糸繊維に対し、二種のものを交互に配列することができる。
【0053】
この発明による効果には、大きな強度の織りを得ることができること、および構成部分を構造物に組み付けることが容易なプリフォームであることを含む。改良された織りにより、各層の縦糸をインターロックし、しかも、各層を互いにインターロックし、と同時に、プリフォームの荷重を高い対称性をもって分布させる。そこで、この発明は、縦糸方向および/または横糸方向に必ずしも直線ではない多数の脚を伴うプリフォーム技術、すなわち、3Dプリフォームおよび/または強化コンポジット構造について既存のものに代わる提案技術および/または改良方法を提供する。
【0054】
以上のように、この発明によれば、その目的および利点を実現することができる。この発明の好ましい実施例について詳しく述べたが、この発明は、それらに限定されるわけではない。この発明の考え方の範囲は、特許請求の範囲の記載によって定まる。
【符号の説明】
【0055】
100,200,300 プリフォーム
114 横糸繊維
115 他方の端
116 縦糸繊維
120 ベース
124,126 ベースのテーパ
125,135 脚
126 脚のテーパ
150 クレビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織りプリフォームを形成する方法であり、次の(a)、(b)および(c)の各工程を備える、織りフォームの形成方法。
(a)各層が複数の縦糸繊維を含み、それらの縦糸繊維が互いに平行である、隣接する複数の層を支給する工程。
(b)前記の縦糸繊維による層に複数の横糸繊維を織り、ベースおよびそのベースから伸びる1または2以上の脚を形作る工程。
(c)第1の脚を形作るプリフォームの第1の部分から1または2以上の縦糸繊維を選択的に外し、および/またはプリフォームの第1の部分に1または2以上の縦糸繊維を選択的に加え、それによって、第1の脚を予め定めた距離だけ横糸方向に動かす工程。
【請求項2】
第2の脚を形作るプリフォームの第2の部分の縦糸繊維を同時に加えおよび/または取り除き、それによって、第2の脚を予め定めた距離だけ横糸方向に同時に動かす工程をさらに備える、請求項1の方法。
【請求項3】
縦糸繊維を加えるか取り除く工程を繰り返し、それによって、縦糸方向の前記1または2以上の脚を形成する工程をさらに備える、請求項1の方法。
【請求項4】
前記1または2以上の脚は、縦糸の方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に、またはそれらの組み合わせになるように形成される、請求項3の方法。
【請求項5】
前記1または2以上の脚を前記ベースに関して折り、それによって、直立する脚を形成する工程をさらに備える、請求項1の方法。
【請求項6】
前記ベースは、それぞれの脚よりも多くの層を含むか、あるいはその逆である、請求項2の方法。
【請求項7】
前記ベースおよび/または脚の端部は、先細に形成されている、請求項2の方法。
【請求項8】
前記脚は、前記ベースに対して垂直、あるいは非垂直または斜めになっている、請求項2の方法。
【請求項9】
前記縦糸繊維および横糸繊維は、ガラス、炭素、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはそれらの組み合わせによって作られる、請求項1の方法。
【請求項10】
前記複数の脚は、等しいか等しくない長さおよび/または高さである、請求項2の方法。
【請求項11】
2または3以上の脚は、予め定めた幅のクレビスによって分離している、請求項2の方法。
【請求項12】
2または3以上の脚は、ゼロ幅のクレビスによって分離している、請求項2の方法。
【請求項13】
2または3以上の脚は、可変幅のクレビスによって分離している、請求項2の方法。
【請求項14】
強化コンポジット構造物用の織りプリフォームであり、次の各構成を備える、織りフォーム。
・各層が複数の縦糸繊維を含み、それらの縦糸繊維が互いに平行である、隣接する複数の層。
・前記の縦糸繊維による層に織った複数の横糸繊維であり、ベースおよびそのベースから伸びる1または2以上の脚を形作るもの。
・第1の脚を形作るプリフォームの第1の部分から1または2以上の縦糸繊維を選択的に外し、および/またはプリフォームの第1の部分に1または2以上の縦糸繊維を選択的に加え、それによって、第1の脚を予め定めた距離だけ横糸方向に動かすこと。
【請求項15】
前記1または2以上の脚は、縦糸の方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に、またはそれらの組み合わせになるように形成される、請求項14のプリフォーム。
【請求項16】
前記1または2以上の脚を前記ベースに関して折り、それによって、直立する脚を形成する、請求項14のプリフォーム。
【請求項17】
前記プリフォームは、2または3以上の脚を含む、請求項14のプリフォーム。
【請求項18】
2または3以上の脚は、予め定めた幅のクレビスによって分離している、請求項17のプリフォーム。
【請求項19】
2または3以上の脚は、ゼロ幅のクレビスによって分離している、請求項17のプリフォーム。
【請求項20】
前記ベースは、それぞれの脚よりも多くの層を含むか、あるいはその逆である、請求項17のプリフォーム。
【請求項21】
前記ベースおよび/または脚の端部は、先細に形成されている、請求項17のプリフォーム。
【請求項22】
前記脚は、前記ベースに対して垂直、あるいは非垂直または斜めになっている、請求項17のプリフォーム。
【請求項23】
前記縦糸繊維および横糸繊維は、ガラス、炭素、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはそれらの組み合わせによって作られる、請求項14のプリフォーム。
【請求項24】
前記複数の脚は、等しいか等しくない長さおよび/または高さである、請求項17のプリフォーム。
【請求項25】
前記の脚は、可変幅のクレビスによって分離している、請求項17のプリフォーム。
【請求項26】
織りプリフォームを形成する方法であり、次の(a)、(b)および(c)の各工程を備える、織りフォームの形成方法。
(a)各層が複数の縦糸繊維を含み、それらの縦糸繊維が互いに平行である、隣接する複数の層を支給する工程。
(b)前記の縦糸繊維による層に複数の横糸繊維を織り、ベースおよびそのベースから伸びる1または2以上の脚を形作る工程。
(c)第1の脚を形作るプリフォームの第1の部分から1または2以上の横糸繊維を選択的に外し、および/またはプリフォームの第1の部分に1または2以上の横糸繊維を選択的に加え、それによって、第1の脚を予め定めた距離だけ横糸方向に動かす工程。
【請求項27】
第2の脚を形作るプリフォームの第2の部分の横糸繊維を同時に加えおよび/または取り除き、それによって、第2の脚を予め定めた距離だけ縦糸方向に同時に動かす工程をさらに備える、請求項26の方法。
【請求項28】
横糸繊維を加えるか取り除く工程を繰り返し、それによって、横糸方向の曲線に沿う前記1または2以上の脚を形成する工程をさらに備える、請求項26の方法。
【請求項29】
前記1または2以上の脚は、横糸の方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に、またはそれらの組み合わせになるように形成される、請求項28の方法。
【請求項30】
前記1または2以上の脚を前記ベースに関して折り、それによって、直立する脚を形成する工程をさらに備える、請求項26の方法。
【請求項31】
前記ベースは、それぞれの脚よりも多くの層を含むか、あるいはその逆である、請求項27の方法。
【請求項32】
前記ベースおよび/または脚の端部は、先細に形成されている、請求項27の方法。
【請求項33】
前記脚は、前記ベースに対して垂直、あるいは非垂直または斜めになっている、請求項27の方法。
【請求項34】
前記縦糸繊維および横糸繊維は、ガラス、炭素、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはそれらの組み合わせによって作られる、請求項26の方法。
【請求項35】
前記複数の脚は、等しいか等しくない長さおよび/または高さである、請求項27の方法。
【請求項36】
2または3以上の脚は、予め定めた幅のクレビスによって分離している、請求項27の方法。
【請求項37】
2または3以上の脚は、ゼロ幅のクレビスによって分離している、請求項27の方法。
【請求項38】
前記の脚は、可変幅のクレビスによって分離している、請求項27の方法。
【請求項39】
強化コンポジット構造物用の織りプリフォームであり、次の各構成を備える、織りフォーム。
・各層が複数の縦糸繊維を含み、それらの縦糸繊維が互いに平行である、隣接する複数の層。
・前記の縦糸繊維による層に織った複数の横糸繊維であり、ベースおよびそのベースから伸びる1または2以上の脚を形作るもの。
・第1の脚を形作るプリフォームの第1の部分から1または2以上の横糸繊維を選択的に外し、および/またはプリフォームの第1の部分に1または2以上の横糸繊維を選択的に加え、それによって、第1の脚を予め定めた距離だけ縦糸方向に動かすこと。
【請求項40】
前記1または2以上の脚は、横糸の方向に正弦曲線を描くように、ジグザグ形に、斜めに、曲線状あるいは非直線状に、またはそれらの組み合わせになるように形成される、請求項39のプリフォーム。
【請求項41】
前記1または2以上の脚を前記ベースに関して折り、それによって、直立する脚を形成する、請求項39のプリフォーム。
【請求項42】
前記プリフォームは、2または3以上の脚を含む、請求項39のプリフォーム。
【請求項43】
2または3以上の脚は、予め定めた幅のクレビスによって分離している、請求項42のプリフォーム。
【請求項44】
2または3以上の脚は、ゼロ幅のクレビスによって分離している、請求項42のプリフォーム。
【請求項45】
前記ベースは、それぞれの脚よりも多くの層を含むか、あるいはその逆である、請求項42のプリフォーム。
【請求項46】
前記ベースおよび/または脚の端部は、先細に形成されている、請求項42のプリフォーム。
【請求項47】
前記脚は、前記ベースに対して垂直、あるいは非垂直または斜めになっている、請求項42のプリフォーム。
【請求項48】
前記縦糸繊維および横糸繊維は、ガラス、炭素、アラミド、ポリエチレン、ポリプロピレンあるいはそれらの組み合わせによって作られる、請求項39のプリフォーム。
【請求項49】
前記複数の脚は、等しいか等しくない長さおよび/または高さである、請求項42のプリフォーム。
【請求項50】
前記の脚は、可変幅のクレビスによって分離している、請求項42のプリフォーム。

【図1】
image rotate

【図2(a)】
image rotate

【図2(b)】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6(a)−6(b)】
image rotate

【図6(c)】
image rotate

【図7(a)】
image rotate

【図7(b)】
image rotate

【図7(c)】
image rotate

【図7(d)】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2012−507640(P2012−507640A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534669(P2011−534669)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/062159
【国際公開番号】WO2010/053750
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(508135080)アルバニー エンジニアード コンポジッツ インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】