説明

非石綿系ジョイントシートの製造方法

【解決手段】(i)カーボン繊維を含む非石綿系基材繊維、(ii)ゴム材、(iii)ゴム薬品および(iv)充填材を含むジョイントシート形成用組成物から形成されているジョイントシートの製造方法であって、(i)カーボン繊維を含む非石綿系基材繊維、(ii)ゴム材、(iii)ゴム薬品および(iv)充填材を、比率R(nm)が10〜25(nm)となるように含むジョイントシート形成用組成物を混練し、得られた混練物を、熱ロールと冷却ロールとからなる一対のロール間に挿入し、加熱圧延して熱ロール側に積層させ、次いで熱ロールに積層されたシート状物を剥離することを特徴とするジョイントシートの製造方法:
式[I]:
比率R(nm)={ゴムの量G(m3)/ΣA(m2)}×109・・・・・[I]
【効果】カーボン繊維が多量に配合され、しかも耐熱性、耐蒸気特性などに優れた非石綿系ジョイントシートを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工業、自動車、船舶などの広範な産業分野において、各種機器・装置にガスケットの基材として利用されるジョイントシートの製造方法に関し、さらに詳しくは、カーボン繊維を含有し、かつ耐熱特性と耐蒸気特性に優れた非石綿系ジョイントシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジョイントシートとしては、石綿ジョイントシートが広く用いられてきた。この石綿ジョイントシートは、基材繊維としての石綿と、ゴムなどの結合剤を溶剤で膨潤させたものと、充填材と、ゴム薬品などの配合剤とをゴムミキサーにて充分に混練して得られるジョイントシート形成用組成物(以下、混練材料とも言う。)を調製し、次いで、この混練材料を熱ロール(約140℃)と冷ロール(約20℃)とからなる一対のカレンダーロール間に供給して加熱圧縮し、熱ロール側に積層させながら、溶剤の蒸発および加硫を行い、最後に積層したシートを熱ロール表面から剥離することによって製造されてきた。
【0003】
この石綿ジョイントシートは、石綿繊維の優れた強度、耐熱性や耐薬品性を利用して、水、油、空気、蒸気などの輸送管、機器用のガスケットとして使用されてきた。この石綿ジョイントシートは、無機物でありながら、非常に柔軟で、高度にフィブリル化している細く表面積の大きな石綿繊維を50〜85重量%程度含んでおり、ジョイントシート中で石綿繊維が充分に分散し絡み合った状態となっているため引張強度が大きく、なおかつ柔軟で圧縮性が良いために良好なシール性を保持していた。
【0004】
しかしながら石綿繊維は天然鉱物であり、資源の枯渇、採掘費および輸送費の高騰により入手が困難であり、環境への悪影響があるなどの状況があり、最近では石綿繊維を全く使用せずに、石綿以外の繊維を使用したノンアスベストジョイントシート(非石綿系ジョイントシート)が使用されるようになっている。
【0005】
この非石綿系ジョイントシートは、使用される基材繊維が石綿以外の無機繊維や有機繊維であり、石綿繊維と比較して繊維径が太く剛直であるため繊維の絡み合いが充分でなく、また添加量も石綿のように50〜85重量%までの多量で配合しようとしてもジョイントシートへの成形性の点から困難であり、引張強さが石綿ジョイントシートに比べて劣った非石綿系ジョイントシートしか得られなかった。
【0006】
さらに、基材繊維として用いられる有機繊維は、石綿繊維に比して耐熱性に劣り、また有機繊維のうちでは比較的耐熱性に優れたアラミドパルプは、水蒸気下において加水分解するという特性を有しており、耐蒸気性の点で問題がある。
【0007】
そのため、アラミドパルプが配合された非石綿系ジョイントシートを、フランジ部などに当接してガスケットとして用いた場合、(高)熱や(高温)蒸気などの環境下においては、ガスケット中のアラミドパルプが劣化し、その結果、ジョイントシートの強度低下や亀裂の発生、シール性の低下が生ずるという問題点があった。
【0008】
石綿以外の無機繊維は、石綿よりも環境への安全性に優れ、また上記アラミドパルプに比して無機繊維の1種であるカーボン繊維等はより耐熱性に優れるが、フィブリル化されているものが少なく、どちらかというと棒状(針状)で折れやすく、弾性に欠けるため、ジョイントシート用基材繊維の主成分として使用されることは少なかった。
【0009】
なお、(1)特開平1−295839号公報には、本体と、繊維ベースと、充填材からな
り、前記本体は、本体中に10〜25重量%の量の弾性結合剤と、35〜80重量%の充填材とを含み、繊維ベースは、繊維ベース中の少なくとも75%の量の炭素繊維から形成された高温圧縮非アスベスト・シートが開示されている。
【0010】
また、該炭素繊維の炭素含量が95〜97%で、その弾性率が約35万〜49万kg/cm2の態様、また炭素繊維含量が高温圧縮非アスベスト・シートの少なくとも20重量
%(具体例では20〜52.2%)である態様も開示され、アラミド繊維とこのような量の炭素繊維との併用例も示されている。
【0011】
また、このような高温圧縮非アスベスト・シートは、一対の熱ロールと冷ロールからなるシーター機にて製造されると記載されている。
また(2)特開平5−239439号公報には、ゴムと、非アスベスト系繊維と、充填剤と、ゴム薬品を主成分とするコンパウンドからなり、前記非アスベスト系繊維として少なくともピッチ系極細炭素繊維と有機繊維を含有し、かつ該ピッチ系極細炭素繊維の含有率が1〜30重量%であるシール用組成物が開示されている。
【0012】
また、該炭素繊維は、繊維径φが0.5〜3μm程度のものが好ましく、繊維長が100mm以下、とくに0.5〜50mmの範囲にあればよい旨記載されている。
また、該シール用組成物は、ガスケットやジョイントシートなどのうち、特に高温高圧に晒される用途や、水、油が関与する用途に好適と記載されている。
【0013】
このように、これら公報(1)〜(2)に記載のジョイントシート(シート)では、石綿以外の無機繊維のうちで比較的弾力性のあるカーボン(炭素)繊維が何れも含まれているが、このカーボン繊維は、表面の濡れ性が悪く、このカーボン繊維を非石綿系ジョイントシート用繊維として用いるには、様々な表面処理を施す必要があり、また、カーボン繊維を用いると得られるジョイントシートのシール性が低下する傾向もある。
【0014】
またカーボン繊維は石綿やアラミド繊維などに比して、熱伝導率が高く、ジョイントシート中に含まれているバインダーであるゴムを高温時に分解・消失させ易くするという問題点もある。
【0015】
このため、カーボン繊維を基材繊維として含む非石綿系ジョイントシートであって、耐熱性、耐蒸気特性等に優れ、これら特性のバランスの点でも優れたものの出現が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、カーボン繊維を基材繊維として用いつつ、耐熱性、耐蒸気特性に優れ、これら特性のバランスの点でも優れた非石綿系ジョイントシートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る非石綿系ジョイントシートは、(i)カーボン繊維を含む非石綿系基材繊維
、(ii)ゴム材、(iii)ゴム薬品および(iv)充填材を含むジョイントシート形成用組成物か
ら形成されているジョイントシートであって、該ジョイントシート形成用組成物中に含まれる上記非石綿系基材繊維(i)と充填材(iv)それぞれの重量(g)と比表面積Hssa(m2
/g)との積により求められる表面積A(m2)の総和であるΣA(m2)と、ゴムの量G(m3)とから下記式[I]
比率R(nm)={ゴムの量G(m3)/ΣA(m2)}×109・・・・・・[I]
により算出される比率R(nm)が、10〜25(nm)であることを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、カーボン繊維が多量(例:3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%)で含まれているにも拘わらず、耐熱性、耐蒸気性に優れ、ゴムの消失量が少なく、高温下(例:180〜215℃程度)で使用しても寿命が長いジョイントシートが提供される。
【0019】
このジョイントシートは、化学工業、自動車、船舶などの広範な産業分野において、各種機器・装置に耐熱用、耐高温蒸気用、化学装置用などのガスケットの基材として利用できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るジョイントシートは、上記比率Rが特定の範囲にあるため、カーボン繊維が多量(例:3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%)で含まれているにも拘わらず、耐熱性、耐蒸気性に優れ、ゴムの消失量が少なく、高温下(例:180〜215℃程度)で使用しても寿命が長い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る非石綿系ジョイントシートについて具体的に説明する。
<非石綿系ジョイントシート>
本発明に係る非石綿系ジョイントシートは、(i)カーボン繊維を含む非石綿系基材繊維
、(ii)ゴム材、(iii)ゴム薬品および(iv)充填材を含むジョイントシート形成用組成物か
ら形成されているジョイントシートであって、該ジョイントシート形成用組成物中に含まれる上記非石綿系基材繊維(i)と充填材(iv)それぞれの重量(g)と比表面積Hssa(m2
/g)との積により求められる表面積A(m2)の総和であるΣA(m2)と、ゴムの量G(m3)とから下記式[I]
比率R(nm)={ゴムの量G(m3)/ΣA(m2)}×109・・・・・・[I]
により算出される比率R(nm)が、10〜25(nm)、好ましくは12〜20(nm)である。
【0022】
このような比率Rの非石綿系ジョイントシート形成用組成物からなるジョイントシートは、カーボン繊維を主な基材繊維として含有し、かつ耐熱特性と耐蒸気特性などに優れ、これら特性のバランスの点でも優れており、化学工業、自動車、船舶などの広範な産業分野において、各種機器・装置に耐熱用、耐高温蒸気用、化学装置用などのガスケットの基材として利用できる。
【0023】
このように、本発明によれば、カーボン繊維が多量(例:3〜20重量%、好ましくは5〜15重量%)で含まれているにも拘わらず、耐熱性、耐蒸気性に優れ、ゴムの消失量が少なく、高温下(例:180〜215℃程度)で使用しても寿命が長いジョイントシートが提供される。
【0024】
このように本件ジョイントシート形成用組成物では、この比率Rが10(nm)以上〜25(nm)以下であるため、ジョイントシート中のカーボン繊維量が多いにも拘わらず、ジョイントシート中のゴム消失を抑制でき、ジョイントシートの長寿命化を図ることができるという技術的意義を有する。
次に、このようなジョイントシート形成用組成物、ジョイントシートの製造方法、及び得られたジョイントシートについて詳述する。
【0025】
<ジョイントシート形成用組成物>
本発明においては、上記ジョイントシート形成用組成物としては、(i)カーボン繊維を
含む非石綿系基材繊維、(ii)ゴム材、(iii)ゴム薬品および(iv)充填材を含んでいる、以
下に詳述するようなジョイントシート形成用組成物が好ましく用いられる。
【0026】
カーボン繊維を含む非石綿系基材繊維(i)には、カーボン繊維を含む無機基材繊維(イ)
と、有機基材繊維(ロ)とが挙げられる。
本発明で用いられる基材繊維(i)には、これらのうち、カーボン繊維を含む無機基材繊
維(イ)が含まれていればよいが、好ましくは(イ)と(ロ)の両者が含まれていることが耐熱性とシート成形性のバランスの点から望ましい。
【0027】
上記カーボン繊維を含む無機基材繊維(イ)は、シートの形状保持性に寄与し、このような無機基材繊維(イ)としては、人体や環境への安全性の観点から非石綿系のものが好ましく用いられ、具体的には、カーボン繊維(炭素繊維)の他に、例えば、ロックウール繊維(岩綿)、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、セピオライト繊維、ワラストナイト、鉱さい綿、溶融石英繊維、化学処理高シリカ繊維、溶融珪酸アルミナ繊維、アルミナ連続繊維、安定化ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウイスカー、ボロン繊維などが挙げられる。
【0028】
これらの無機基材繊維としては、必須のカーボン繊維の他は、必要により1種または2種以上組み合わせて用いられる。上記有機基材繊維(ロ)としては、合成繊維のアラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)、フェノール樹脂繊維、ポリイミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリフェニレンオキシド繊維、フッ素化ポリマー系繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維;ポリ塩化ビニル系繊維;などが挙げられる。
これらの有機基材繊維(ロ)のうちでは、アラミド繊維が耐熱性の点で好ましい。これらの有機繊維は1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
<ゴム材(ii)>
ゴム材(未加硫ゴム)(ii)は、上記の有機基材繊維、無機基材繊維などの基材繊維類(i)を結合する役割等を果たしており、このようなゴム材としては、天然ゴム(NR)、ニ
トリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴム(ANM、ACM)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン―プロピレンゴム(EPM、EPDM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコーンゴム(VMQ、PMQ、FVMQ)、クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)、エチレン酢ビゴム(EVA)、塩化ポリエチレン(CPE)、塩化ブチルゴム(CIR)、エピクロルヒドリンゴム(CD、ECO)、ニトリルイソプレンゴム(NIR)などが挙げられる。
【0030】
これらのゴム材のうちでは、天然ゴム、SBR、NBR、HNBR、BR、IR、IIR、CR、EPDM、ACM(ANM)、シリコンゴム、フッ素ゴムが好ましい。
特に高ニトリルゴムは、熱ロールと冷却ロールとからなる一対のロールを供えたシーター装置を用いてジョイントシート形成用組成物からジョイントシートを製造する際に、冷却ロール側に原料の上記組成物が密着し被着してしまう現象である「取られ現象」が少なく、加工性に優れた組成物が得られる。
【0031】
なお、本発明では、これらのゴム材例えばSBRにナフテン系のプロセス油が配合された油展ゴムを用いることもできる。さらにまた、このような油展ゴムと上記のような種々のゴム材とを組合せて用いることもできる。
【0032】
<ゴム薬品(iii)>
ゴム薬品(iii)としては、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、加硫助剤(架橋助剤)、分
散剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、可塑剤、顔料など、耐熱性、耐油性、耐酸性、耐光
性、色調など目的に応じて選択使用される。
【0033】
<充填材(iv)>
充填材(iv)としては、無機繊維を除き、膨張性黒鉛、カオリン、クレー、タルク、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸鉛、酸化マグネシウム、トリポリ石、アルカリ土類金属塩(例:硫酸バリウム)、含水ケイ酸類、水酸化物類などが挙げられる。
【0034】
<ジョイントシートの製造>
本発明では、上記ジョイントシート形成用組成物を用いて下記のジョイントシートを製造している。以下、好ましい態様について述べる。
【0035】
本発明の好ましい態様においては、(i)カーボン繊維を含む非石綿系基材繊維、(ii)ゴ
ム材、(iii)ゴム薬品および(iv)充填材を含む以下に詳述するようなジョイントシート形
成用組成物を混練し、得られた混練物を、「熱ロールと冷却ロールとからなる一対のロール間に挿入して加熱圧延し、圧延されたジョイントシート形成用組成物を熱ロール側に積層させ、次いで熱ロールに積層されたシート状物を剥離することによってジョイントシートを製造する方法」である「シーター製法」(カレンダーロール製法とも言う。)によってジョイントシートを製造する。
【0036】
なお、上記「シーター製法」(カレンダーロール製)は、本願出願人が先に提案した特許公開2001−181452号公報等に記載されており公知であり、また、この際に好ましく用いられるシート製造装置も同公報等に記載されているように「シーター装置」として公知である。
【0037】
本発明においては、上記のようにジョイントシート形成用組成物中に基材繊維(i)とし
て配合されているカーボン繊維などの基材繊維等は、用いられたジョイントシート形成用組成物中に均一分散しており、上記製法により得られたジョイントシート表面に偏在して浮き出たりしないから、ジョイントシート表面の凹凸がなく平滑であり、ジョイントシートと各種相手部材との接面シール性が良好となる。
【0038】
特にカーボン繊維が前記ピッチ系のものであり、前記諸条件(式[I]など)満たしてい
ると、上記効果は顕著に表れる。
また、本発明では、用いられたジョイントシート形成用組成物中の各種材料同士は、充分に良好に練り込まれており、繊維同士は一様な密度で互いに絡み合い、また粒状物などは繊維間などに良好に分散・保持され、繊維や結合剤(ゴム)などと結合しているから、上記製法により得られたジョイントシートが積層シート(多層シート)であっても、シート層間に層間剥離が生じにくく、引張強度も高く、浸透漏洩も殆どなく、シール性も良好になるという効果が得られる。
【0039】
具体的には、このジョイントシートの製法を詳説すると、本発明では、上記のジョイントシート形成用組成物(組成物)を熱ロールと冷却ロールとからなる一対のロール間に挿入して加熱圧延する。
【0040】
この際、熱ロールは一般的には120〜160℃の温度に設定する。また冷却ロール(冷ロール)は50℃以下の温度に保たれていることが好ましい。
上記組成物を、このような温度条件に設定されたシーター装置に挿通させた場合には、該組成物中の繊維は、その形状を実質上保った状態で該組成物は加熱圧延され、シート状に成形される。
【0041】
また、この加熱圧延操作により、ゴム材は加硫されても加硫されなくともよいが、好ま
しい態様においては、ゴム材の少なくとも一部は、ゴム薬品特に加硫剤と反応して加硫(架橋)される。
【0042】
その加硫の程度は、ロール回転速度、各ロールの設定温度、ロール間隙あるいはロール圧、シート厚などにもよるが、熱ロールと冷却ロールがそれぞれ上記温度に設定されていることにより熱ロール側と冷却ロール側で異なっており、シート状物の熱ロール側表面から冷却ロール側表面にかけて次第に低下・減少している。
【0043】
換言すれば、得られるシート中の結合材に着目すると、該シートには、通常、未加硫のゴム材およびゴム薬品と共に、加硫されたゴム材が通常含まれている。
上記のようにジョイントシート形成用組成物を一対のロール間に挿入すると、該組成物は加熱圧延されて熱ロール側にシート状に積層(巻回)される。次いで、このシート状の加硫物を熱ロールから剥離させると、所望のジョイントシートが得られる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明に係るジョイントシートの製造方法について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は、係る実施例により何ら制限されるものではない。
[実施例1]
以下の組成を有するジョイントシート形成用組成物を、以下のようにして調製した。
(i)(イ)アラミド繊維[商品名:トワロン1091、帝人(株)製、その非表面積Hssa1
2.6m2/g]を5.1×103g(ジョイントシート形成用組成物中の固形分中5.0重量%、表面積A=5.1×103g×12.6m2/g=64.5×1032)、(ロ)カーボン繊維[商品名:ドナカーボS231、(株)ドナック製、その比表面積Hssa0.
2m2/g]を13.7×103g(同13.3重量%、同2.7×1032)、(ハ)ロックウール[商品名:ロックシールRS440、ラピナス社製、その比表面積Hssa0.2
2/g]を16.4×103g(同15.9重量%、同3.3×1032)、(ii)ゴム(NBR、日本ゼオン(株)製)をゴム量13.7×10-33(13.7×103g、同13.3重量%)、(iii)ゴム薬品を2.9×103g(同2.9重量%)、および(iv)充填材として「クレー」(その比表面積Hssa3.5m2/g)を34.1×103g(同33
.1重量%、同119.5×1032)、および充填材として「含水ケイ酸」(その比表面積Hssa119m2/g)を3.4×103g(同3.3重量%、同406.1×1032)、および充填材として「炭酸カルシウム」(その比表面積Hssa51m2/g)を13
.7×103g(同13.3重量%、同696.2×1032)および(v)トルエン…上記(i)〜(iv)の混合物1Kgに対して0.3リットルの割合で配合して、ジョイントシート
形成用組成物(配合物)を調製した。
【0045】
その結果、非石綿系基材繊維(i)と充填材(iv)それぞれの重量(g)と比表面積Hssa(m2/g)との積により求められる表面積A(m2)の総和であるΣA(m2)は1292
.3×1032となり、このΣA値とゴムの量G(13.7×10-33)とから下記式
[I]により算出される比率R(nm)が、10.6nmとなった。
式[I]: 比率R(nm)={ゴムの量G(m3)/ΣA(m2)}×109・・・・・・[I]
次いで、得られたジョイントシート形成用組成物をヘンシェルミキサーを用いて混練した。
【0046】
カーボン繊維などの基材繊維は、ジョイントシート形成用混練物中に、良好に分散していた。
次いで、この混練物を、熱ロール(130℃)と冷却ロール(30℃)との間に投入して加熱圧延した。そして、該加熱圧延の結果、熱ロール側に巻付いたシート状体を、ドクターブレードにより剥離してジョイントシート(厚み:1.5mm)を得た。
【0047】
次いで得られたジョイントシートからガスケットを形成し、このガスケットについて下記の特性を測定した。<残存ゴム比率の分析方法>直径φが25mmで円盤状の試験片(ガスケット)を作製し、電気炉内で4日間加熱したのち、熱重量分析装置(TG)により以下の条件にて測定し、250〜550℃付近に見られる重量減少率を残存しているゴム比率(A)とした。
【0048】
同様に未焼成品における配合ゴム比率を測定(B)し、これより残存ゴム比率を算出した(C=(A/B)×100[%])。
試験条件 使用装置:DTA6200(セイコーインスツルメント社製)
試験温度:30〜600℃ 昇温速度:10℃/分 雰囲気 :窒素ガス
これらの結果を表1に示す。
【0049】
[実施例2〜3、比較例1]
実施例1において、配合組織を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にした。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)カーボン繊維を含む非石綿系基材繊維、(ii)ゴム材、(iii)ゴム薬品および(iv)充填材を含むジョイントシート形成用組成物から形成されているジョイントシートの製造方法であって、
(i)カーボン繊維を含む非石綿系基材繊維、(ii)ゴム材、(iii)ゴム薬品および(iv)充填材を、ジョイントシート形成用組成物中に含まれる上記非石綿系基材繊維(i)と充填材(iv)それぞれの重量(g)と比表面積Hssa(m2/g)との積
により求められる表面積A(m2)の総和であるΣA(m2)と、ゴムの量G(m3)とか
ら下記式[I]により算出される比率R(nm)が10〜25(nm)となるように含むジョイントシート形成用組成物を混練し、
得られた混練物を、熱ロールと冷却ロールとからなる一対のロール間に挿入して加熱圧延し、圧延されたジョイントシート形成用組成物を熱ロール側に積層させ、
次いで熱ロールに積層されたシート状物を剥離することを特徴とするジョイントシートの製造方法:
式[I]:
比率R(nm)={ゴムの量G(m3)/ΣA(m2)}×109・・・・・[I]

【公開番号】特開2008−303395(P2008−303395A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181293(P2008−181293)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【分割の表示】特願2002−92730(P2002−92730)の分割
【原出願日】平成14年3月28日(2002.3.28)
【出願人】(000229564)日本バルカー工業株式会社 (145)
【Fターム(参考)】